(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220414BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220414BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/44
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020548937
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2018081054
(87)【国際公開番号】W WO2019183876
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ストランド
(72)【発明者】
【氏名】シ、ユンミン
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106075545(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0133194(KR,A)
【文献】特表2014-507399(JP,A)
【文献】特表2013-523730(JP,A)
【文献】特開平02-117611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 6/00- 6/90
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一スズイオン源と、酸性アミノ酸と、を含む、
口腔ケア組成物。
【請求項2】
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の酸性アミノ酸と、
を含
む、請求項1項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記第一スズイオン源が、前記組成物の0.05重量%~4重量
%の量で存在し、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、クロロフッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され
る、請求項1又は2に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記酸性アミノ酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びこれらの組み合わせから選択され
、前記酸性アミノ酸が、前記組成物の0.05重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記組成物の0.1重量%~5重量
%の亜鉛イオン源を更に含
む、前記亜鉛イオン源が、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され
る、請求項1~4のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記組成物の0.05重量%~4重量
%のフッ素イオン源を更に含み、前記フッ素イオン源は
、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項7】
前記組成物の0.01重量%~5重量%の増粘剤を更に含み、前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記組成物の1重量%~35重量
%の研磨剤を更に含み、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択され
る、請求項1~7のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記組成物の1重量%~60重量
%の湿潤剤を更に含み
、前記湿潤剤がポリオールであ
る、、請求項1~8のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項10】
前記組成物が、9.0以下のp
Hを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物。
【請求項11】
口腔ケア組成物であって、
(i)塩化第一スズ、フッ化第一スズ、又はこれらの組み合わせから選択される、前記組成物の0.1重量%~2重量%の第一スズイオン源と、
(ii)アスパラギン酸、グルタミン酸、又はこれらの組み合わせから選択される、前記組成物の0.1重量%~2重量%の酸性アミノ酸と、
(iii)クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、又はこれらの組み合わせから選択される、前記組成物の0.2重量%~2重量%の亜鉛イオン源と、
(iv)フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択される、前記組成物の0.5重量%~1.5重量%のフッ素イオン源と、
(v)増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される、前記組成物の0.01重量%~5重量%の増粘剤であって
、前記増粘ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カラギーナン、キサンタンガム、又はこれらの組み合わせから選択される、増粘剤と、
(vi)前記組成物の5重量%~25重量%のシリカ研磨剤と、
(vii)ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される、前記組成物の30重量%~55重量%の湿潤剤と、を含み、
歯磨剤組成物である、口腔ケア組成物。
【請求項12】
対象における歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物を製造するための、
第一スズイオン源および酸性アミノ酸の使用。
【請求項13】
歯肉健康を促進することが、
(i)口腔内の歯肉創傷治癒を改善することと、
(ii)口腔内の細菌活性の低減を改善することと、
を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記歯肉健康の促進が、
a)0時間~72時間の期間、
b)0時間~48時間の期間、
c)0時間~24時間の期間、
からなる群から選択される期間内で行なわれ、
ただし、時間の0時間は、前記口腔ケア組成物が投与される時である、請求項12又は13に記載の使用。
【請求項15】
対象における歯肉健康を促進する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の
口腔ケア組成物を、前記対象の口腔に投与することを含
む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歯肉健康を促進するための、第一スズイオン源と、酸性アミノ酸と、を含む、口腔ケア組成物に関する。特に、このような口腔ケア組成物は、歯肉創傷治癒を改善し、使用者の口腔内の細菌活性の低減を改善するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
歯肉炎及び/又は歯周炎などの歯肉疾患は、口腔内で急性及び慢性の歯肉炎症を引き起こす。「歯肉炎」は、この疾患のより穏やかな形態である。歯肉炎の症状としては、歯肉出血、及び発赤、膨潤、又は圧痛歯肉を挙げることができる。未処置のままである場合、歯肉炎は、「歯周炎」に進行し得る。歯周炎により、歯肉は歯から引き離され、病原性細菌に感染し得る「歯周ポケット」と呼ばれる空間を形成する。細菌は、バイオフィルムとして歯根表面上に存在する。バイオフィルム内の細菌は、歯肉及び下層の歯槽骨支持歯を攻撃し得る。これらの攻撃は、歯を支持する軟組織及び骨に対する主要な損傷を引き起こす可能性がある。歯肉疾患の後期段階(すなわち、「進行した歯周炎」)では、歯の緩み及び最終的な歯の損失というより深刻な問題が生じ得る。
【0003】
いくつかの市販の口腔ケア組成物は、主に、早期段階の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)の1つ以上の症状を緩和することを目的とし、これらとしては、発赤、膨潤した、若しくは圧痛歯肉の緩和、及び/又は茎部歯肉の出血を含む。典型的には、これらの組成物は、使用者に対する「歯肉ケア」、「口腔ケア」、「口腔衛生」、「歯科ケア」、又は「歯科衛生」などの効果を主張する。このような組成物の例は、「歯肉炎又は出血性歯肉」として定義される「歯肉疾患の第1段階の低減を助ける」ことを主張する、「Colgate(登録商標)Total」練り歯磨きである(http://www.colgatetotal.com/total-benefits/whole-mouth-health/gingivitis-controlを参照されたい)。本発明と比較して市販の口腔ケア組成物の効果を区別するのを助けるために、本発明者らは、本明細書では、これらの市販の口腔ケア組成物の前述の効果を総じて「歯肉ケア」と称する。これは、これらの市販の口腔ケア組成物が、主に歯肉をケアし、早期段階の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)に関連する症状(例えば、歯肉の出血、及び/又は発赤、膨潤、若しくは圧痛歯肉)を緩和するために配合されているからである。
【0004】
しかしながら、全体的な「歯肉健康」効果を提供する必要性が存在し、これは、本明細書で使用するとき、より広範な用語であり、前述の歯肉ケア効果の少なくとも一部を包含すること、並びに歯肉炎、歯周炎、又はその両方を含む歯肉疾患に関連する細菌の有害な影響を軽減するための付加的な抗菌効果を提供することを意図する。
【0005】
上記の従来の手法には、いくつかの欠点のうちの少なくとも1つが存在する。第1に、これらの市販の口腔ケア組成物は、歯肉ケアを促進し得るが、歯肉健康も促進するのに十分な程度にはならない。実際に、これらの市販の口腔ケア組成物は、一般に、歯肉ケア効果(例えば、抗出血及び/又は抗膨潤)に加えて、いずれの著しい抗菌効果も提供することができない。これは、バイオフィルム中の細菌が制御されない場合、歯周炎につながる歯周ポケットのサイズを増加させ得るため、問題である。第2に、歯肉健康は、全身の健康に相関し得る。換言すれば、個人の歯肉健康は、その人物の全身の健康の指標であり得る。研究は、全体的な歯肉健康が減少するにつれて、例えば、心臓疾患及び脳卒中、糖尿病、腎臓疾患、早産、並びに/又は骨粗鬆症などのこれらの潜在的な生命の脅威状態のうちのいずれか1つ(又は2つ以上)を発症する危険性が、増加し得ることを示唆している(米国特許第6,846,478号、Doyle,M.J.、及び米国特許第8,283,135号、Doyle,M.J.を参照されたい)。したがって、より良好な全身の健康を確実にするために、歯肉ケアだけでなく、全体的な歯肉の健康を改善することが望ましい。
【0006】
フッ化第一スズなどの第一スズ塩は、抗菌効果、歯肉炎の低減、歯周病への進行の減少、象牙質過敏症の低減、並びに歯冠及び歯根の虫歯及び酸食の低減をはじめとする、歯肉健康効果をもたらすために、口腔ケア組成物に使用されてきた。しかし、従来の第一スズ含有組成物には欠点がある。有効なフッ化第一スズ製剤の使用中に、日常的に直面する第1の副作用は、容認できない配合の収れん性である。第2に、第一スズイオンを安定的に配合することによりまた、スズ(II)イオンがスズ(IV)に酸化しやすいこと、及び水酸化第一スズとして水溶液から沈殿しやすいことから、課題も提起される。第3に、第一スズ塩は、口腔ケア組成物を変色させ、これらを黄色から暗褐色にする傾向がある。この問題を克服するために、これらの従来の第一スズ含有組成物は、例えば、TiO2、葉酸、又は風味混合物(例えば、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、及びシネオール)などの追加の成分を更に含み、第一スズ塩の安定性及び活性を著しく減少させることなく、保存における上記の変色を防止する。したがって、費用効果及び有効な練り歯磨き並びに他の口腔ケア製剤を提供するために、製剤及び加工ステップを単純化することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6,846,478号
【文献】米国特許第8,283,135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、使用者に歯肉健康効果を提供する、又は少なくとも、市販の組成物よりも良好な関連する歯肉健康効果(例えば、歯肉創傷治癒及び抗菌効果)を提供する、口腔ケア組成物を提供する必要性が引き続き存在している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも部分的に、口腔ケア組成物中のアスパラギン酸又はグルタミン酸などの酸性アミノ酸と第一スズイオン源との組み合わせが、少なくとも歯肉創傷治癒及び抗菌効果を含む、歯肉健康効果を促進するという驚くべき発見に基づいて、この必要性に対処しようとするものである。特に、口腔ケア組成物は、歯肉創傷治癒のための酸性アミノ酸と、口腔内の細菌活性の望ましくない効果に対抗するための抗菌剤としての第一スズイオン源と、を含む。
【0010】
本発明の1つの利点は、「より深いバイオフィルム浸透及び/又は細菌死滅」である。この目的のために、更に驚くべきことに、酸性アミノ酸と組み合わせて使用されるとき、バイオフィルムへの第一スズイオンの浸透深さ及び/又は浸透速度を増加させることができることが見出された。要するに、口腔ケア組成物中の酸性アミノ酸と第一スズイオン源との相乗的な組み合わせは、歯肉健康効果の改善が達成されるようなものであり得る。更に、本発明の口腔ケア組成物の使用により、使用者に改善された歯肉健康効果を提供することができる。
【0011】
本発明の別の利点は、歯肉炎、歯周炎又はその両方に関連する症状の全体性に関連するため、歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物を提供することである。本発明の口腔ケア組成物が、改善された歯肉健康効果を有することは、なおも更なる利点である。本発明のなおも更なる利点は、バイオフィルム内への抗菌剤(複数可)の改善された浸透深さを有する口腔ケア組成物を提供することである。本発明のなおも更なる利点は、バイオフィルム内への抗菌剤(複数可)の改善された浸透速度を有する口腔ケア組成物を提供することである。更に、驚くべきことに、本発明における、塩基性アミノ酸ではなく酸性アミノ酸の使用は、バイオフィルム内への抗菌剤の浸透深さ及び/又は浸透速度の改善を促進することが見出された。
【0012】
本発明のなおも更なる利点は、歯肉健康を促進するための費用効果及び有効な口腔ケア組成物を提供することである。なおも更なる利点は、口腔ケア組成物が歯磨剤であり、好ましくは心地よい味及び口当たりの経験を提供することである。なおも更なる利点は、口腔ケア組成物が、製造、取り扱い、及び保管状態の範囲にわたって物理的及び化学的安定性を有することである。なおも更なる利点は、40℃で3ヶ月保管した後であっても、口腔ケア組成物が安定した品質の最終製品(例えば、一貫した視覚的外観及び変色なし、歯肉創傷治癒性能など)を有することである。またなおも更なる利点は、本発明の口腔ケア組成物が、抗菌剤の使用を最小限に抑えることである。またなおも更なる利点は、本発明の口腔用組成物が、上述の不安定性及び/又は変色問題を低減及び/又は排除するための酸性アミノ酸の量を最小限に抑えることである。この目的のために、驚くべきことにまた、酸性アミノ酸と第一スズとの組み合わせを使用することにより、塩基性アミノ酸と第一スズとの組み合わせを使用するよりも、不安定性及び/又は変色の問題をより効率的に低減及び/又は排除することも見出された。本発明の口腔ケア組成物が、比較的低いpH(例えば、7.5以下)を有することは、更に別の利点である。
【0013】
一態様では、本発明は、第一スズイオン源と、酸性アミノ酸と、を含む、組成物に関する。好ましくは、組成物は口腔ケア組成物である。より好ましくは、組成物は、a)組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%の第一スズイオン源と、b)組成物の0.01重量%~10重量%、好ましくは0.05重量%~5重量%の酸性アミノ酸と、を含む。好ましくは、酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。あるいは、本発明の組成物は第一スズイオン源と酸性アミノ酸とを含み、酸性アミノ酸は2つ以上のアミノ酸の組み合わせであり、好ましくは、アスパラギン酸とグルタミン酸との組み合わせである。
【0014】
本発明の別の態様では、上述の口腔ケア組成物は、c)組成物の0.1重量%~1重量%未満、又は、より好ましくは0.2重量%~0.5重量%の亜鉛イオン源を更に含む。好ましくは、亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
本発明の更に別の態様では、上述の口腔ケア組成物は、9.0以下、好ましくは4.0~8.5、より好ましくは5.5~7.5のpHを有する。
【0016】
本発明のなおも更なる別の態様では、本発明の口腔ケア組成物を、対象の口腔に投与することを含む、対象における歯肉健康を促進するための方法が提供される。
【0017】
本発明のなおも更に別の態様では、対象における歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物を製造するための、酸性アミノ酸の使用が提供される。
【0018】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲と併せて検討することで当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書は、本発明を特定して指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、添付図面の以下の説明からより良く理解されると考えられる。
【
図1】ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite、「HA」)ディスクが取り付けられた口腔スプリントの斜視図である。
【
図2】溝を内部に有するHAディスクの斜視図である。
【
図3】内部にバイオフィルムを有する溝の断面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書で使用するとき、「a」及び「an」などの冠詞は、特許請求の範囲で使用する場合、請求又は記載されているもののうちの1つ以上を意味するものと理解される。
【0021】
「緩和する(alleviate)」及び「緩和する(alleviating)」という用語は、互換的に使用され、歯肉疾患の少なくとも1つの症状を最小化、予防、遅延及び/又は治療して、使用者に正の変化(すなわち、効果)をもたらすことを意味する。
【0022】
本明細書で使用するとき、「バイオフィルム」という用語は、マトリックス封入された細菌集団が互いに接着性であり、及び/又は口腔内の表面若しくは界面を意味する。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」とは、特に言及したもの以外の工程及び成分を付加することができることを意味する。この用語は、「~からなる(consisting of)」及び「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を包含する。本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の必須要素及び制限事項、並びに本明細書に記載されるあらゆる追加若しくは任意選択の成分、構成要素、工程、又は制限事項を含み、これらからなり、及びこれらから本質的になることができる。
【0024】
本明細書で使用するとき、「歯磨剤」という用語は、特に指定されない限り、口腔表面を清掃するために使用されるペースト、ゲル、粉剤、錠剤、又は液体製剤を意味する。
【0025】
本明細書で使用するとき、「歯肉ケア」という用語は、主に、早期段階の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)に関連する1つ以上の症状を緩和することを対象とする、口腔ケア組成物の固有の又は促進された効果を指す。このような症状は、例えば、出血性歯肉、及び発赤、膨潤又は圧痛歯肉を含んでもよい。
【0026】
本明細書で使用するとき、「歯肉健康」という用語は、歯肉創傷治癒を少なくとも改善することを含む「歯肉ケア」効果をもたらす、並びに歯肉炎、歯周炎又はその両方を含む歯肉疾患に関することから、細菌の有害な影響を軽減するように細菌活性の低減の更なる改善をもたらす、口腔ケア組成物の固有の又は促進された効果を指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、「細菌活性の低減を改善する」という用語は、実施例Bに記載のアッセイによって決定されるように、口腔内の細菌活性を低減することを意味する。
【0028】
本明細書で使用するとき、「歯肉創傷治癒を改善する」という用語は、実施例Cに記載の創傷治癒アッセイによって決定されるように、口腔内の歯肉の出血を低減することを意味する。
【0029】
本明細書で使用するとき、「口腔ケア組成物(「oral care composition」又は「oral care compositions」)という用語は、通常の使用過程で、口腔作用の目的のために、一部又は全ての歯科表面及び/又は口腔組織に接触するのに十分な時間にわたって、口腔内で保持される製品を意味する。一例では、組成物は、口腔内で使用される場合に歯肉ケア効果をもたらす。本発明の口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯科用ゲル、歯磨き粉、錠剤、すすぎ剤、マウスウォッシュ、歯肉下用ゲル、発泡体、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、予防ペースト、ワセリンゲル、義歯用接着剤、又は義歯用製品を含む各種形態であってもよい。一例では、口腔用組成物は、ペースト又はゲルの形態である。別の例では、口腔用組成物は、歯磨剤の形態である。また、口腔用組成物は、口腔表面に直接塗布するか若しくは装着するために、又はフロス内に組み込むために、ストリップ片若しくはフィルム上に組み込まれてもよい。
【0030】
本明細書で使用するとき、「酸性アミノ酸」という用語は、アスパラギン酸、グルタミン酸などの天然に存在する酸性アミノ酸及びその塩だけでなく、pH2.0~5.0の範囲に等電点を有する生物学的に許容可能なアミノ酸も包含する。生物学的に好ましい許容可能なアミノ酸は、分子中又は本明細書の機能性誘導体中に、例えば、側鎖が変化しているが同様の若しくは実質的に同様の物理化学的特性を有する機能性誘導体中に、アミノ基及びカルボキシル基、好ましくは2つのカルボキシル基を有する。更なる実施形態では、酸性アミノ酸は、最低でもわずかに水溶性であり、水溶液(25℃で1g/1000mL)に7未満のpHを提供する。
【0031】
本明細書で使用される「アミノ酸」又は「酸性アミノ酸」という用語は、遊離形態及び塩形態の両方を含むアミノ酸を指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、「部分的に水溶性」という用語は、25℃で1g/1000mL以上の溶解度を有する化合物を意味する。
【0033】
本明細書で使用するとき、「有効量」という用語は、当業者の妥当な判断の範囲内にある、化合物又は組成物の正の効果、つまり口腔の健康の効果、を誘導するのに十分な量であり、かつ/又は重篤な副作用を回避するのに十分低い量である量、すなわち合理的な効果対リスク比をもたらす量を意味する。一例では、「有効量」は、組成物の少なくとも0.01重量%の、あるいは少なくとも0.1重量%の材料を意味する。
【0034】
本明細書で使用するとき、単語「好ましい」、「好ましくは」、及びその変形は、一定の条件下において一定の効果をもたらす本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ、又は他の状況下においては、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0035】
本明細書で使用するとき、「促進する」という用語は、口腔内で本発明の口腔ケア組成物を使用することに関連する歯肉健康効果を促進及び/又は増強することを意味する。
【0036】
本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」という用語は、意図的な量のその材料が組成物に添加されないか、又は組成物の0.05%、0.01%、若しくは0.001%未満の材料の量を指す。本明細書で使用するとき、「~を本質的に含まない(essentially free of)」という用語は、指示物質が組成物に意図的に添加されたものでなく、又は好ましくは分析によって検出可能な濃度で存在しないことを意味する。それは、指示材料が意図的に添加されたその他の材料の1つの、不純物としてのみ存在する、組成物を含むことを意味する。本明細書で使用するとき、「含まない(free)」という用語は、その材料の妥当に検出可能な量が組成物中に存在しないことを指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、「相乗的な歯肉健康効果」という用語は、少なくとも歯肉創傷治癒を改善し、口腔内の細菌活性の低減を改善することを含む、添加剤よりも多くの任意の2つの歯肉健康効果における分析的に測定可能な増加を意味する。
【0038】
本明細書で使用するとき、「歯」という用語は、天然歯並びに人工歯、又は歯科補綴物を意味する。
【0039】
本明細書で使用するとき、「総含水量」という用語は、遊離水及び口腔ケア組成物中の他の成分によって結合される水の両方を意味する。
【0040】
全ての百分率、部及び比率は、別途指定されない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。列挙されている成分に関するとき、こうした重量は全て、活性レベルに基づき、このため、特に指定されない限り、市販の材料に含まれている可能性のある溶媒又は副生成物を含まない。
【0041】
別段の指定がない限り、本明細書で言及される測定は全て、25℃(すなわち、室温)で行われる。
【0042】
口腔ケア組成物
驚くべきことに、口腔ケア組成物中の第一スズイオン(すなわち、抗菌剤)と酸性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)との組み合わせが、使用者の歯肉健康効果を促進するのに特に有用であることが見出された。特に、驚くべき発見は、酸性アミノ酸と組み合わせたときに、バイオフィルムへの第一スズイオンの浸透が著しく改善されていることであった。理論に束縛されることを望むものではないが、酸性アミノ酸は、カルボン酸基及びアミン基の両方を含有する。第一スズイオンは、アミノ酸上のこれらの化学部分に強く結合して、バイオフィルムへの第一スズイオンの浸透に正の影響を及ぼし得ると考えられる。
【0043】
驚くべきことに、酸性アミノ酸と共に製剤されたときに、バイオフィルム中への第一スズイオンの浸透深さ及び/若しくは浸透速度を増加させるか、又は著しく増加させることができることも見出された。要するに、口腔ケア組成物中の第一スズイオン源と組み合わせた酸性アミノ酸の存在は、歯肉上のバイオフィルム中の細菌の有害な効果を媒介する組成物の有効性を補助する。
【0044】
一態様では、本発明は、口腔ケア組成物であって、a)組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%、より好ましくは0.1重量%~2重量%の第一スズイオン源と、b)組成物の0.01重量%~10重量%、好ましくは0.05重量%~5重量%、より好ましくは0.1重量%~2重量%の酸性アミノ酸と、を含む、組成物に関する。
【0045】
第一スズイオン源
本発明は、好ましい例では、抗菌効果を提供するために、組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%又はより好ましくは0.1重量%~2重量%の量で存在する第一スズイオン源を含む、上述の口腔ケア組成物に関する。本明細書で使用されるスズイオン源は、任意の安全かつ有効な第一スズ塩を含み得る。第一スズイオン源の好適な例は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、クロロフッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、第一スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ及びこれらの組み合わせから選択される。好ましい一例では、第一スズイオン源は、塩化第一スズを含む。別の好ましい例では、スズイオン源は、フッ化第一スズを含む。
【0046】
酸性アミノ酸
本発明の口腔ケア組成物は、酸性アミノ酸を含む。好ましくは、酸性アミノ酸は、pH2.0~5.0の範囲に等電点を有し、最低でも水溶性であり、水溶液(25℃で1g/1000mL)に7未満のpHをもたらす。好ましくは、酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、その塩、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。あるいは、酸性アミノ酸は、最低でも部分的に水溶性であり、1g/1000mLの水溶液中、pH2.0~5.0の範囲に等電点を有する、例えば、25℃で4.9、又は4.8、又は4.7、又は4.6、又は4.5、又は4.4、又は4.3、又は4.2、又は4.1、又は4.0、又は3.9、又は3.8、又は3.7、又は3.6、又は3.5、又は3.4、又は3.3、又は3.2、又は3.1、又は3.0などの等電点を有する、生物学的に許容可能なアミノ酸であってもよい。好ましくは、酸性アミノ酸は、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、より好ましくはその遊離形態である。酸性アミノ酸がその塩形態である場合、好適な塩としては、提供される量及び濃度において生理学的に許容可能であるとみなされる医薬的に許容可能な塩であることが当該技術分野において既知の塩が挙げられる。このような塩の非限定的な例としては、カリウム及びナトリウムなどのアルカリ金属、又はカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属から誘導されるものが挙げられる。好ましくは、酸性アミノ酸は、組成物の0.01重量%~10重量%、0.05重量%~5重量%、更により好ましくは0.1重量%~2重量%、あるいは0.2重量%~3重量%の量で存在する。好ましい一例では、酸性アミノ酸はアスパラギン酸である。別の好ましい例では、酸性アミノ酸はグルタミン酸である。
【0047】
あるいは、本発明の口腔ケア組成物は、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、その塩、又はこれらの組み合わせから選択される、少なくとも2つの酸性アミノ酸を含んでもよい。好ましい一例では、本発明の口腔ケア組成物は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。
【0048】
上述の安定性及び変色の問題は、組成物中の酸性アミノ酸濃度を調整することによって解決され得ることが発見された。驚くべきことに、酸性アミノ酸濃度の低減(例えば、1%対5%)は、本発明の好ましい口腔ケア組成物において、それを第一スズイオンと組み合わせるという効果、潜在的に相乗効果に起因して、歯肉創傷治癒の活性及び/又は有効性に悪影響を及ぼさない。理論に束縛されることを望むものではないが、第一スズイオンは、アミノ酸上のこれらの化学部分に強く結合して、より低い濃度で十分な有効性を維持するために浸透に正の影響を及ぼし得ると考えられる。
【0049】
驚くべきことに、第一スズと共に酸性アミノ酸を使用することにより、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン)を使用した場合と比較して、安定した品質(例えば、一貫した外観及び変色なし)が最終口腔ケア製品にもたらされることが発見された。理論に束縛されるものではないが、酸性アミノ酸は、塩基性アミノ酸よりも分子中に少ないアミノ基を有し、したがって、糖(例えばソルビトール)とのアミノ基の反応活性が低減され、これが口腔ケア組成物(例えば、歯磨剤)の望ましくない経時的な褐変を引き起こす理由と考えられる。
【0050】
更に、アミノ酸の導入により、歯肉の治癒効果がもたらされ、ひいては、他の止血剤、例えば、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、及びp-アミノメチル安息香酸の使用を最小限に抑えることが可能になる。いくつかの好ましい例では、本発明の口腔ケア組成物は、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、及びp-アミノメチル安息香酸を実質的に含まず、好ましくは本質的に含まず、より好ましくは含まない。
【0051】
亜鉛イオン源
任意選択的に、しかし好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の0.1~5重量%、好ましくは0.2~2重量%の亜鉛イオン源を更に含んでもよい。好ましくは、亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0052】
あるいは、口腔ケア組成物は、組成物の0.1重量%~1.5重量%、好ましくは0.15重量%~1重量%、より好ましくは0.2重量%~0.5重量%の亜鉛イオンを供給するのに十分な亜鉛イオン源を含んでもよい。酸化亜鉛又は炭酸亜鉛などの不溶性又は微溶性の亜鉛化合物をこの亜鉛源として使用することができる。ただし、好ましい亜鉛源は、塩化亜鉛又は硫酸亜鉛などの水溶性亜鉛源である。より好ましい亜鉛源は、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛及びグリシン酸亜鉛など、亜鉛がすでに塩又はその他の錯体の形態で好適なキレート化剤と結合しているものである。特に好ましい亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛及びこれらの混合物である。
【0053】
本発明の口腔ケア組成物はまた、任意選択的に、好ましくは、組成物の0.035重量%以上、0.05重量%~2重量%、0.1重量%~1重量%の量で存在する他の抗菌剤を含んでもよい。これらの他の抗菌剤の例としては、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール及びその同族体を含むフェノール化合物、モノアルキル及びポリアルキル並びに芳香族ハロフェノール、レゾルシノール及びその誘導体、キシリトール、ビスフェノール化合物及びハロゲン化サルチルアニリド、安息香酸エステル並びにハロゲン化カルバニリドなどの非カチオン性抗菌剤を挙げることができる。他の有用な抗菌剤は、エンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ムタナーゼ及びこれらの組み合わせなどを含む酵素である。別の例では、他の抗菌剤としては、トリクロサン(5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール)を挙げることができる。
【0054】
増粘剤
本発明の口腔ケア組成物には増粘剤が含まれていてもよい。好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の0.1重量%~5重量%、好ましくは0.8重量%~3.5重量%、より好ましくは1重量%~3重量%、なおも更により好ましくは1.3重量%~2.6重量%の増粘剤を含んでいてもよい。
【0055】
好ましくは、増粘剤は、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせを含む。更により好ましくは、増粘剤が増粘ポリマーを含む場合、増粘ポリマーは、荷電カルボキシメチルセルロース、非イオン性セルロース誘導体、直鎖サルフェート化多糖類、天然ガム、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0056】
一例では、増粘シリカは、非常に細かい粒子を生成するように酸により不安定化させることによって、ケイ酸ナトリウム溶液から得られる。市販されている一例としては、Huber Engineered Materialsの商品名ZEODENT(登録商標)(例えば、ZEODENT(登録商標)103、124、113、115、163、165、167)のシリカである。
【0057】
好ましくは、直鎖サルフェート化多糖類はカラギーナン(カラギーニンとしても知られる)である。カラギーナンの例としては、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
一例では、CMCは、セルロースから、アルカリ及びモノクロロ酢酸又はそのナトリウム塩で処理することによって調製される。異なる種は、商業上、粘度によって特徴付けられる。市販されている一例は、Ashland Special Ingredientsの商品名Aqualon(商標)のCMC(例えば、Aqualon(商標)7H3SF;Aqualon(商標)9M3SF Aqualon(商標)TM9A;Aqualon(商標)TM12A)である。
【0059】
好ましくは、天然ガムは、カラヤガム、アラビアゴム(アカシアガムとしても知られる)、トラガカントガム、キサンタンガム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、天然ガムはキサンタンガムである。キサンタンガムは、細菌のXanthomonas campestrisによって分泌される多糖類である。概して、キサンタンガムは、グルコース、マンノース、及びグルクロン酸をそれぞれ2:2:1のモル比で含む、五糖繰り返し単位から構成される。化学式(モノマーの式)は、C35H49O29である。一例では、キサンタンガムは、CP Kelco(Okmulgee,US)製である。
【0060】
好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、50,000~1,300,000ダルトンの平均分子量範囲、及び好ましくは300~4,800の平均重合度を有する。より好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)である。
【0061】
好ましくは、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマーは、30,000~1,000,000ダルトンの分子量を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリルとのコポリマーからなる群から選択される。
【0062】
無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーは、Gantrez AN139(M.W.500,000ダルトン)、Gantrez AN119(M.W.250,000ダルトン)又はS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)のうちの少なくとも1つであり、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーが、Acusol 445、Acusol 445N、Accusol 531、Acusol 463、Acusol 448、Acusol 460、Acusol 465、Acusol 490、Sokalan CP5、Sokalan CP7、Sokalan CP45、又はSokalan CP12S並びに(v)これらの組み合わせのうちの少なくとも1つである。
【0063】
ある例では、GANTREZ(商標)シリーズのポリマーは、30,000ダルトン~1,000,000ダルトンの分子量(M.W.)を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GANTREZ(商標)AN139(M.W.500,000ダルトン)、AN119(M.W.250,000ダルトン)及びS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)として、Ashland Chemicals(Kentucky,USA)から入手可能である。
【0064】
別の実施例では、ACUSOL(商標)及びSOKALANシリーズのポリマーには、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーが含まれる。その例は、約2,000~約1,000,000の分子量(M.W.)を有するマレイン酸とアクリル酸との0:1000~1000:0コポリマーである。これらのコポリマーは、Dow Chemicals(Michigan,USA)からACUSOL(商標)445及び445N、ACUSOL(商標)531、ACUSOL(商標)463、ACUSOL(商標)448、ACUSOL(商標)460、ACUSOL(商標)465、ACUSOL(商標)497、ACUSOL(商標)490として、またBASF(New Jersey,USA)からSokalan(登録商標)CP5、Sokalan(登録商標)CP7、Sokalan(登録商標)CP45、及びSokalan(登録商標)CP12 Sとして市販されている。
【0065】
別の例では、架橋ポリアクリル酸(PAA)ポリマーは、アクリル酸の合成高分子量ポリマーの総称である。これらは、アクリル酸のホモポリマーであってもよく、アリルエーテルペンタエリスリトール、スクロースのアリルエーテル、又はプロピレンのアリルエーテルにより架橋されていてもよい。また、中性pHの水溶液中、PAAはアニオン性ポリマーであり、すなわちPAAの側鎖の多くがプロトンを失い、負電荷を獲得する。Carbopol(登録商標)型ポリマー、例えばCarbopol(登録商標)、Pemulen(登録商標)及びNoveon(登録商標)は、ポリアルケニルエーテル又はジビニルグリコールにより架橋されたアクリル酸のポリマーである。Carbomerの市販コード、例えば940(商標)は、ポリマーの分子量及び特定の成分を示すものである。
【0066】
抗齲蝕剤
任意選択的に、しかし好ましくは、口腔ケア組成物は、有効量の抗齲蝕剤を含んでもよい。一態様では、抗齲蝕剤は、フッ素イオン源である。フルオリドイオンの好適な例は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(「MFP」)、フッ化インジウム、フッ化アミン、フッ化亜鉛及びこれらの混合物を含む供給源から選択され得る。好ましくは、フッ素イオン源は、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、MFP又はこれらの組み合わせから選択される。フッ素イオン源は、抗齲蝕効果をもたらすために、組成物の0.0025重量%~10重量%若しくは0.05重量%~4重量%若しくは0.1重量%~2重量%、又は、好ましくは0.2重量%~1.5重量%の量で存在し得る。特定の例では、フッ素イオン源は、組成物中で25ppm~25,000ppm、概して少なくとも500ppm~1600ppm、例えば1100ppm又は1450ppmのフッ素イオン濃度をもたらすのに十分な量で存在し得る。フッ化物の適切な濃度は、具体的な用途に依存する。一般的な使用者の練り歯磨きは、典型的には約1000~1500ppmを有し、小児用練り歯磨きでは幾分少ない。
【0067】
pH
本発明の口腔ケア組成物のpHは、4.5~11、好ましくはpH5~10であり得る。いくつかの好ましい実施例では、口腔ケア組成物のpHは、pH5.0~7.2であり得る。あるいは、口腔ケア組成物は、7.5~9、又は8~10のpHを有してもよい。いくつかの実施例では、pHは、5.0~7.0、あるいはpH5.5~pH7.0未満、例えば、pH6.9、又はpH6.8、又はpH6.7、又はpH6.6、又はpH6.5、又はpH6.4、又はpH6.3、又はpH6.2、又はpH6.2、又はpH6.1、又はpH6.0、又はpH5.9、又はpH5.8、又はpH5.7、又はpH5.6、又はpH5.5である。
【0068】
pHは、典型的には、1:3のペースト:水の比を使用して測定され、これにより1グラムの口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き)を3グラムの脱イオン水に混合し、次いで、周囲条件下で較正された業界で受け入れられているpHプローブでpHを評価する。pHは、自動温度補償(Automatic Temperature Compensating、ATC)プローブを用いてpHメータによって測定される。明確化のために、分析方法には、新たに調製されたときに口腔ケア組成物を試験することが記載されているが、本発明を権利主張する目的で、pHは、製品の妥当な寿命期間中(製品を店舗から購入する時間と使用者の居所に運ぶ時間とを含むが、これらに限定されない)、いつでも取得し得る。
【0069】
各使用後、電極を試料溶液から水で洗浄しなくてはならない。キムワイプ又は同等物などのティッシュで拭き取ることによって、余分な水を除去する。電極が使用されていないときには、pH7の緩衝液又は電極保管液に電極の先端を浸漬させた状態を維持する。機器の詳細は以下のとおりである。
【0070】
【0071】
pH調整剤
本明細書の口腔ケア組成物は、任意選択的に、有効量のpH調整剤を含んでもよく、あるいはこのpH調整剤はpH緩衝剤である。本明細書で使用するとき、pH調整剤は、口腔ケア組成物のpHを上記で特定されたpH範囲に調整するために使用することができる薬剤を指す。pH調整剤としては、塩酸、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
特定のpH調整剤としては、リン酸一ナトリウム(リン酸一塩基性ナトリウム)、リン酸三ナトリウム(リン酸三塩基性ナトリウム十二水和物又はTSP)、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩の直鎖及び環式の両方の形態、グルコン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸が挙げられる。
【0073】
一例では、組成物の0.01重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%のTSP、及び組成物の0.001重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~0.3重量%のリン酸一ナトリウムが使用される。理論に束縛されることを望むものではないが、TSP及びリン酸一ナトリウムは、カルシウムイオンキレート活性を有してもよく、このため、(モノフルロリン酸塩を含有するこれらの製剤中に)若干のモノフルオロリン酸塩の安定化をもたらす。
【0074】
水
水は、その多くの利点により、口腔ケア組成物中の担体材料として一般的に使用される。例えば、水は加工助剤として有用であり、口腔に対して害が無く、練り歯磨きの迅速な発泡を助ける。水は、それ自体で成分として添加されてもよく、又は例えば、ソルビトール及びラウリル硫酸ナトリウムなどの他の一般的な原料中の担体として存在してもよい。
【0075】
いくつかの例では、本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の10重量%~70重量%、又は好ましくは15重量%~30重量%の総含水量を含んでもよい。本明細書で使用するとき、「総含水量」という用語は、別個に添加された、又は、他の原材料のための溶媒若しくは担体として、口腔ケア組成物中に存在する水の総量を意味するが、ある特定の無機塩の結晶化の水として存在し得るものを除く。好ましくは、水は、USP水である。
【0076】
あるいは、他の例では、本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~5重量%の総含水量を含んでもよい。例えば、口腔ケア組成物は、水を実質的に含まなくてもよく、好ましくは水を含まなくてもよい。
【0077】
界面活性剤
任意選択的に、しかし好ましくは、口腔ケア組成物は界面活性剤を含む。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせから選択されてもよく、好ましくは、界面活性剤はアニオン性であり、より好ましくは、アニオン性界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム(SLS)である。双性イオン性界面活性剤の例は、コカミドプロピルベタインである。口腔ケア組成物は、1つ、2つ、又はそれ以上の界面活性剤を含有してもよい。組成物は、全組成物の0.1重量%~20重量、好ましくは1重量%~10重量%の濃度で界面活性剤を含んでもよい。
【0078】
湿潤剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~70重量%、又は15重量%~55重量%の量で存在する湿潤剤を含んでもよい。湿潤剤は、口腔ケア組成物の空気への曝露による硬化を回避し、ある特定の湿潤剤はまた、口腔ケア組成物に所望の甘味風味を付与することができる。湿潤剤の好適な例としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、キシリトール、トリメチルグリシン、及びこれらの混合物を挙げることができる。他の例としては、他の食用多価アルコールを挙げることができる。いくつかの例では、湿潤剤は、ソルビトール、グリセリン、及びこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、湿潤剤はソルビトールである。ある例では、組成物は、組成物の10重量%~66重量、あるいは30重量%~55重量の湿潤剤を含む。
【0079】
研磨剤
口腔ケア組成物は、有効量の研磨剤を含む。研磨剤の例としては、カルシウム含有研磨剤、シリカ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。カルシウム含有研磨剤を含有する場合、カルシウム含有研磨剤は、好ましくは、炭酸カルシウム、リン酸ニカルシウム、リン酸三カルシウム、カルシウムオルトリン酸塩、カルシウムメタリン酸塩、カルシウムポリリン酸塩、カルシウムオキシアパタイト、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。シリカの場合、好ましくは、シリカは、沈殿シリカ(例えば、ケイ酸ナトリウム溶液を酸により不安定化させ、非常に細かい粒子としたもの)、例えば、Huber Engineered MaterialsのZEODENT(登録商標)シリーズ(例えば、ZEODENT(登録商標)103、124、113 115、163、165、167)である。これらのシリカ(例えば、合成非晶質シリカ)の一部は、研磨機能及び増粘機能の両方を発揮することができることが認められるが、本明細書では、本発明の目的のために「研磨剤」という用語のうちに含まれる。好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の1重量%~35重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の研磨剤を含む。
【0080】
風味剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%の風味剤を含んでもよい。口腔ケア組成物中で使用され得る好適な風味剤の例としては、米国特許第8,691,190号(Haught,J,C)、第7欄第61行~第8欄第21行に記載されているものが挙げられる。いくつかの例では、風味剤は、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、及びシネオールから選択されてもよい。いくつかの例では、口腔ケア組成物は、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、及びシネオールを含まない、又は実質的に含まない、風味混合物を含んでもよい。
【0081】
甘味剤
本明細書の口腔ケア組成物は、甘味剤を含んでもよい。甘味剤は、一般に、組成物の0.005重量%~5重量%の濃度で口腔ケア組成物中に存在する。甘味剤の好適な例としては、サッカリン、デキストロース、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、レブロース、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物が挙げられる。甘味剤の他の好適な例は、米国特許第8,691,190号(Haught,J,C)、第9欄第18行~第10欄第18行に記載されている。
【0082】
着色剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0.001重量%~0.01重量%の量で存在する着色剤を含んでもよい。着色剤は、水溶液、好ましくは水溶液中1%の着色剤の形態であってもよい。着色剤の好適な例としては、顔料、パール剤(pealing agent)、充填剤粉末、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、及び口腔ケア組成物に視覚的変化を生みだすことができる他の物質を挙げることができる。他の好適な例としては、二酸化チタン(TiO2)を挙げることができる。二酸化チタンは、組成物に不透明度を添加し、一般に組成物の0.25重量%~5重量%の濃度で口腔ケア組成物中に存在する白色粉末である。
【0083】
他の成分
本発明の口腔ケア組成物は、当業者に既知の通常及び従来の補助成分を含むことができる。任意選択による成分としては、例えば、歯垢防止剤、抗過敏剤、ホワイトニング剤及び酸化剤、炎症防止剤、歯石防止剤、キレート剤、歯牙実質剤、鎮痛剤、及び麻酔剤が挙げられるが、これらに限定されない。口腔ケア組成物のために選択された成分は、互いに、化学的かつ物理的に適合性でなければならないことが理解されよう。
【0084】
使用方法
一態様では、本発明は、対象の歯を清浄化又は研磨するための方法に関する。本明細書の清浄化又は研磨方法は、対象の歯を、本発明による口腔ケア組成物と接触させることを含む。
【0085】
別の態様では、本発明はまた、本発明による口腔ケア組成物を対象の口腔に投与することを含む、対象における歯肉健康を促進する方法であって、好ましくは投与することが、少なくとも1日1回、より好ましくは少なくとも1日2回行われる、方法に関する。
【0086】
本発明の更に別の態様では、対象における歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物を製造するための、酸性アミノ酸の使用に関する。好ましくは、歯肉健康を促進する方法は、少なくとも、以下からなる群から選択される期間内で行われる。
a)0時間~72時間の期間、
b)0時間~48時間の期間、
c)0時間~24時間の期間、
ここで時間の0時間は、本発明による口腔ケア組成物が投与される時である。
【0087】
更に別の態様では、本発明はまた、歯肉健康を促進する方法にも関し、歯肉健康を促進することは、
(i)口腔内の歯肉創傷治癒を改善することと、
(ii)口腔内の細菌活性の低減を改善することと、を含む。
【0088】
上記の方法は、口腔ケア組成物(例えば、歯磨剤)を用いたブラッシング(例えば、歯磨き)、又は口腔ケア組成物(例えば、歯磨剤スラリー若しくは口内リンス剤)ですすぐことによるものであり得る。口腔ケア組成物は、未希釈で、又は例えば歯ブラシなどの送達装置を介して適用されてもよい。他の方法は、局所口腔用ゲル、口中スプレー、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨ゲル、歯磨き粉、タブレット、歯肉縁下用ゲル、フォーム、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、ペトロラタムゲル、若しくは義歯製品、又は他の形態物を、対象者の歯及び口腔粘膜に接触させることを含む。実施形態に応じて、口腔ケア組成物は、練り歯磨きと同じく頻繁に使用されてもよく、又はより少ない頻度、例えば週単位で使用されてもよく、又は歯面研磨ペースト若しくは他の集中治療の形態で、専門家により使用されてもよい。
【実施例】
【0089】
以下の実施例及び説明は、本発明の範囲内にある実施形態を更に明らかにする。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの多くの変形例が発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく可能であるので、本発明の制限として解釈されるべきではない。
【0090】
実施例A:実施例1~8
実施例1~8は、以下に示す歯磨剤組成物であり、成分の量は、重量%である。これらは、製剤者によって選択される従来の方法によって好適に調製されてもよい。実施例1~2及び4~6は、それぞれ異なる濃度で、第一スズイオン源と単一の酸性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)とで作製された、本発明による発明の製剤である。実施例3及び7は、塩化第一スズと2つの酸性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)の組み合わせとで作製された、発明の製剤である。並行して、酸性アミノ酸なしの比較例製剤8が調製される。全ての組成物は、指示された比率の表1及び2の成分の混和によって調製される。
【0091】
【0092】
【0093】
実施例B:バイオフィルム中の抗菌剤の浸透の改善を測定するためのアッセイ
バイオフィルム中の抗菌剤の浸透の改善を判定するために、以下のアッセイを使用して、本発明の発明の口腔ケア組成物及び対照の、in situでの歯垢バイオフィルムにおける共局在化率の測定を介して、第一スズイオンと細菌との浸透有効性を評価する。アッセイの詳細を以下に説明する。
【0094】
(a)バイオフィルム増殖のための基質
ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite、HA)ディスクは、バイオフィルムのin situ増殖に使用される。HAディスクは、各ディスクに3つの平行な溝(すなわち、2つの側方溝の幅200μm、深さ200μm、中央溝の幅500μm及び深さ500μm)を有するように設計される。対象の口にディスクを取り付けるとき、一般に歯垢が蓄積する傾向がある清浄困難な領域である、歯間の隣接歯間間隙を模倣するように、これらの溝を垂直に維持する。このモデルにより、溝からの円滑な歯垢の収集が可能にする。HAディスクは、Shanghai Bei’erkang biomedicine limited companyによって製造される。
【0095】
(b)スプリントを着用する
ヒト対象は、スプリントを着用する。各対象は、少なくとも9HAディスクが48時間後に利用可能であることを確実にするために、スプリント上に最大12HAディスクを着用する。このようなスプリント及びHAディスクの非限定例を
図1に示す。
図1を参照すると、デバイス(1)は、複数のHAディスク(2a~2d)を保持する。特定の例では、
図2を参照すると、HAディスク(201)は、3つの平行な溝(203)を有する(2つの側方の溝(203a及び203c)は、幅300μm及び深さ300μmであり、中間の溝(203b)(2つの側面の溝の間にある)は、幅500μm及び深さ500μmである)。中間溝は、HAディスクがヘッド対ヘッドの比較目的のために2つの同一の半ディスクに、より容易に分離することができるように、2つの側方溝よりも広くかつ深く設計されている。
図3は、内部にバイオフィルム(2005)を有する溝(2003)の断面図の概略図である。HAディスクの更なる詳細は、米国特許出願公開第2017/0056531号(例えば、段落[0019]~[0020])に記載されている。
【0096】
図3には示されていないが、ディスクは、歯間の歯間空間に後退が生じるように位置付けられ得る(この位置は歯垢を生じやすいため(清浄化の困難さ等を考慮して))。対象は、食事中のみにスプリントを取り外し(不透明な容器内に湿った状態でスプリントを保存する)、口腔衛生処置を実施する。その後すぐに、スプリントを再び着用する。対象は、飲用時にストローを使用するように依頼される。
【0097】
(c)HAディスクからのin situバイオフィルム放出
全てのHAディスクは、ピンセットによって48時間でスプリントから除去される。ピンセットを使用して、HAチップの縁部を保持し、HAディスクを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を含有する2mL遠心管に移す。毎回ディスクを移す前に、ピンセットを十分に洗浄する(水、75%アルコール、次いで脱イオン水)。
【0098】
(d)練り歯磨き上清の調製
15グラムの脱イオン水を5グラムの練り歯磨きに添加する(本発明の組成物の実施例1~7、比較組成物の実施例8のいずれか1つを使用)。完全に撹拌した後、混合物を12,000RPMで20分間遠心分離する。上清を使用の1日前に調製し、4℃で保管する。
【0099】
(e)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
HAディスクをスプリントから除去した後。HAディスクは、異なる発明の組成物及び比較例の組成物によるex vivo処置に使用される。対象の上清で処置し、微生物蛍光プローブ及び第一スズ蛍光プローブ(例えば、Shiらの米国特許出願公開第2018/0072944(A1)号、に記載されている)で標識した後、溝内のバイオフィルムを、共焦点レーザー走査顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)(以下に記載される)によって測定する。好ましくは、第一スズ蛍光プローブは、tert-ブトキシ-カルボキサミド、N-[3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[1H-イソインドール-1,9’-[9H]キサンテン]-H)-イル](Dr.Tao Yi、Fudan University,Shanghai,Chinaから入手可能)である。好ましくは、微生物蛍光プローブは、Molecular Probes(商標)LIVE/DEAD(登録商標)BacLight(商標)システム(Thermo Fisherから入手可能)である。
【0100】
(f)ディスクの調製
HAディスクをPBS溶液ですすぎ、各HAディスクをピンセットで2つの半分に分割する。その後、各半ディスクを500~1000μLのPBS溶液に1分間静置する。各ディスクを、PBS溶液又は練り歯磨き上清のいずれかによって2分間処理する。各ディスクをピンセットで保持することによって各ディスクを洗浄し、1mLのPBS溶液中で前後に10回振盪し、次いでこの洗浄サイクルを繰り返す。次いで、各ディスクを500~1000μLのPBS溶液に5分間静置する。
【0101】
(g)蛍光染色及び顕微鏡検査
処理及び浸漬後、各半ディスクを、Syto-9プローブと共にSnプローブ(5μMのSyto-9及び5μMのSnのプローブを含む)により、暗所で30分間染色する。染色後、各ディスクを、500~1000μLのPBS溶液に浸漬して、2分間静置する。各ディスクをピンセットで保持することによって再度洗浄し、1mLのPBS溶液中で前後に5回振盪し、それを繰り返す。SYTO-9/Sn染料染色した試料について、以下のパラメータを使用する:λex=488nm/543nm、λem=500/580nm、20倍対物レンズ、及び表面細菌の底部から60μmにわたってステップサイズ=3μmで走査する。
【0102】
(h)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
Leica(商標)TCS SP8 AOBS分光共焦点顕微鏡を使用する。共焦点システムは、Leica(商標)DM6000B直立顕微鏡及びLeica(商標)DMIRE2反転顕微鏡からなる。直立スタンドは、スライド載置した標本を含む用途に使用されるが、37℃のインキュベーションチャンバ及びCO2富化付属品を有する反転スタンドは、生細胞用途を提供する。顕微鏡は、交換可能なレーザー走査ヘッド、及びそれ自体の電気モータ駆動ステージに加えて、焦点(Z)平面における急速撮像を容易にする、ガルバノメータ駆動型高精度Zステージを共有する。落射蛍光に加えて、顕微鏡は、明視野、偏光光及び差動干渉コントラストを含む様々な透過光コントラスト方法を支持し、5倍、20倍、40倍、63倍(オイル及びドライ)並びに100倍(オイル)Leica(商標)対物レンズを装備している。
【0103】
レーザー走査及び検出システムについて説明する。TCS SP8 AOBS共焦点システムには、4つのレーザー(1つのダイオード、1つのアルゴン及び2つのヘリウムネオンレーザー)が供給され、それにより電磁スペクトルのUV、可視及び遠隔赤色範囲内の広範な蛍光色素の励起を可能にする。音響光学的調整可能フィルタ(acousto-optical tunable filter、「AOTF」)、音響光学ビームスプリッタ(acousto-optical beam splitter、「AOBS」)及び4つのプリズム分光光度計検出器を組み込むレーザー走査ヘッドの設計は、3つの蛍光色素の同時励起及び検出を可能にする。直立型顕微鏡はまた、透過光検出器を有し、透過光画像を蛍光記録上に重ね合わせることが可能である。
【0104】
Leica(商標)共焦点ソフトウェアが使用される。共焦点は、デュアルモニターを装備した標準Pentium PC及びLeica(商標)共焦点ソフトウェアを介して制御される。Leica共焦点ソフトウェアは、3D再構成及び測定、生理学的記録及び分析、時間経過、蛍光クロム共局在、FRAP及びFRETなどの光漂白技術、スペクトル不混合及び多色回復を含む、多次元画像系列取得、処理及び分析のためのインターフェースを提供する。画像解析に関して、Syto-9/Sn染料染色サンプルを選択して、赤色及び緑色画素の重複効率を定量化する。ソフトウェアを使用して、「緑色」細菌プローブと「赤色」第一スズプローブとの画素重複が特定され、次いでこの値は、全ての非黒色画素(非重複第一スズプローブを含む)で除算されて、細菌中の第一スズの共局在化率を提供する。概して、この共局在化率が高いほど、口腔ケア製品は、細菌中に第一スズを送達するのに有効である。(Xiang J,Li H,Pan B,Chang J,He Y,He T,Strand R,Shi Y,Dong W.(2018)Penetration and Bactericidal Efficacy of Two Oral Care Products in an Oral Biofilm Model.Am J Dent,Vol.31,Issue1:53-60を参照されたい)。
【0105】
結果:対象を発明の組成物の実施例1(すなわち、Sn+2.00%のグルタミン酸)、実施例2(すなわち、Sn+2.00のアスパラギン酸)、比較組成物の実施例8(すなわち、Snのみ)及び陰性対照として対照例(PBS)で処置した。結果を表3に提示する。
【0106】
【0107】
結果は、本発明の組成物の実施例1(35.4%)、発明の組成物の実施例2(77.7%)による共局在化率が、対照組成物の例8(25.7%)及び対照例PBS(0%)よりも顕著に高いことを示した。実際には、このデータは、酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸及びアスパラギン酸)と組み合わせたときに、バイオフィルムへの第一スズイオンの浸透が、酸性アミノ酸なしの比較例よりも改善されることを支持する。
【0108】
実施例C.ヒト歯肉線維芽細胞の改善された創傷治癒を測定するためのアッセイ
in vitroでヒト歯肉線維芽細胞を使用して、発明の組成物及び比較組成物による処置の結果として、創傷治癒移行の効果を評価する。この方法は、3つの段階を含む。
【0109】
段階1一次ヒト歯肉線維芽細胞(Human Gingival Fibroblast、「HGF」)を培養する
ヒト歯肉線維芽細胞を、抜歯患者から採取し、5mLのPBSで洗浄する。組織を小片に刻んで、15mLの遠心管に入れる。試料を、等量の1mLの8%ディスパーゼ及び1mLの6%コラゲナーゼで1時間、37℃で消化し、その間、試料を15分毎に振盪する必要がある。消化プロセスが完了すると、管を室温で6分間、1100RPMで遠心分離する。遠心分離後、細胞のペレットが管の底に形成される。これらを上清溶液から分離する。次いで上清を廃棄し、細胞ペレットを3mLの新鮮な最小必須培地(Minimum Essential Medium、「MEM」、Thermo Fisherから入手可能)培養培地に懸濁させた後、ペトリ皿に移す。細胞を有するペトリ皿を、37℃、5% CO2のインキュベータ内に約10日間置く。ペトリ皿を、2日毎に培地の色の変化について確認する。培地の色の変化が生じた場合、新鮮な培養培地を交換する。
【0110】
段階2-ヒト歯肉線維芽細胞の継代培養
ペトリ皿の80~90%の細胞単層被覆率である場合、本培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。1mLの0.25%トリプシン-EDTA溶液を添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面からいかなる粘着性の細胞も除去するために、ペトリ皿をタップすることが必要であり得る。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMにて6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、同じ遠心管中の4mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。4つのペトリ皿をそれぞれ、ペトリ皿上の80~90%細胞単層被覆が観察されるまで、1mLの細胞懸濁液及び9mLの新鮮なMEM培養培地と共に、37℃、5% CO2のインキュベータ内に約3~5日間にわたって置く。この段階は、最も高い細胞生存率を達成するために創傷治癒アッセイ前に2~4回繰り返されるべきである。
【0111】
段階3-創傷治癒アッセイ
ペトリ皿の80~90%の細胞単層被覆である場合、本培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。1mLの0.25%トリプシン-EDTA溶液を添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面からいかなる粘着性細胞も除去するために、培養ペトリ皿をタップすることが必要であり得る。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMにて6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、6mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。1mLの細胞懸濁液及び1mLの新鮮なMEM培養培地を、それぞれ6ウェルプレートの各ウェルに添加する。プレートを、50~70%細胞単層被覆が形成されるまで、37℃、5% CO2でインキュベートする。次いで画像取得中に、ウェルの外側底部を、基準線として中間線でマーキングする。滅菌した1mLのピペットチップでセル単層の右半分をこすり取ることによって、創傷が手作業で作製される。細胞を2mLのPBSで洗浄して、懸濁された細胞が見えなくなるまで、いかなる懸濁細胞も除去する。2mLの培養培地、及び1%の比較組成物を含有する2mLの培養培地又は1%の発明の組成物を含有する2mLの培養培地をウェルに添加する。
【0112】
HGFの高密度デジタル画像は、Olympus(登録商標)UIS2 WHN10倍対物レンズを有するOlympus(登録商標)IX71デジタルSLRカメラを用いて撮影する。第1の画像は、プレート上の中間線マーキングを基準線として使用することによって、時間0時間(すなわち、ベースライン)で取得される。次いでプレートを、以下に記載されるように、37℃、5% CO2で様々な時間間隔にわたってインキュベートする。一致した撮影領域は以前に取得され、画像は、ベースライン後の後述の時間間隔(例えば、24時間、48時間、72時間等)で取得され、異なる処置脚部の下での創傷治癒性能の指標として、細胞被覆率(%)を評価する。画像は、Wimasis(登録商標)WimScratchソフトウェア(Wimasis GmbH,Germanyから入手可能)によって評価され、際立った創傷治癒を通過して、各試料のマッチングベースライン画像と比較して、HGF細胞の被覆度(すなわち、創傷治癒)の程度(すなわち、割合)を判定する。WimScratchソフトウェアは、高度なエッジ検出及びオーバーレイ技法を利用して、細胞及びブランク領域を認識し、すなわち、画像内の緑色オーバーレイが特定の画像の細胞被覆領域、及び灰色領域が創傷領域を表す。読み出しは、両方の領域に対して提示され、総面積のパーセントとして正規化される。
【0113】
結果:以下の表4を参照すると、結果は、2.00%のグルタミン酸を含有する発明の組成物の実施例1及び2.00%のアスパラギン酸を含有する実施例2が、酸性アミノ酸なしの比較組成物の実施例8で処理されたHGFについて、ベースラインにおける標識された創傷境界線(8.00%=58.00%の総被覆度-50.00%のベースライン)の後、細胞被覆度の増加(すなわち、14.93%=64.93%の総被覆度-50.00%のベースライン)により、創傷治癒を効果的に改善することを示す。
【0114】
【0115】
実施例D:口内洗浄剤組成物
本発明による口内洗浄剤組成物を、表5の実施例9~12として以下に示す。これらの組成物は、第一スズイオン源と酸性アミノ酸とを含有する。好ましくは、これらの組成物は、これらの成分を含まない市販の製剤と比較して改善された歯肉健康効果を示す。
【0116】
【0117】
本明細書にて開示された寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0118】
相互参照される又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本願に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのような発明全てを教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0119】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図されている。