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特許7058344歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20220414BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220414BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/44
A61Q11/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020549064
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2018081109
(87)【国際公開番号】W WO2019183888
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ストランド
(72)【発明者】
【氏名】シ、ユンミン
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511796(JP,A)
【文献】特表2011-522049(JP,A)
【文献】特表2005-510538(JP,A)
【文献】特表2011-510094(JP,A)
【文献】特開平02-117611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 6/00- 6/90
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記口腔ケア組成物が亜鉛イオン源を本質的に含まない、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸が、アルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アスパラギン、グルタミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記アミノ酸が、前記組成物の0.1重量%~5重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記第一スズイオン源が、前記組成物の0.05重量%~4重量%の量で存在し、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、塩化フッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記組成物が、9.0以下のpHを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含み、前記フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
前記増粘剤が、前記組成物の0.01重量%~5重量%の量で存在し、前記増粘が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記研磨剤が、前記組成物の1重量%~35重量%の量で存在し、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールである、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
口腔ケア組成物であって、
(i)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、又はこれらの組み合わせから選択される第一スズイオン源と、
(ii)前記組成物の0.3重量%~3重量%の、アルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アスパラギン、グルタミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸と、
(iii)前記組成物の0.5重量%~1.5重量%の、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択されるフッ化物イオン源と、
(iv)前記組成物の0.01重量%~5重量%の、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される増粘であって、前記増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カラギーナン、キサンタンガム、又はこれらの組み合わせから選択される増粘と、
(v)前記組成物の5重量%~25重量%のシリカ研磨剤と、
(vi)前記組成物の30重量%~55重量%の、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される保湿剤と、
を含み、
亜鉛イオン源を含まず、
歯磨き組成物である、口腔ケア組成物。
【請求項11】
対象における歯肉健康を促進するための増粘剤および/または研磨剤を含有する口腔ケア組成物を製造するための、第一スズイオン源およびアミノ酸の使用。
【請求項12】
歯肉健康の促進が、
(i)口腔内の歯肉創傷治癒を改善することと、
(ii)口腔内の細菌活性の低減を改善することと
を含む、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記歯肉健康の促進が、
a)0時間~72時間、
b)0時間~48時間、
c)0時間~24時間、
からなる群から選択される期間内に生じ、0時間が、前記口腔ケア組成物を投与する時間である、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物を対象の口腔に投与することを含む、対象における歯肉健康を促進する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの歯肉健康を促進するための、第一スズイオン源とアミノ酸とを含み、亜鉛イオン源は存在しない、口腔ケア組成物に関する。具体的に言えば、このような口腔ケア組成物は、歯肉創傷治癒を改善し、ユーザーの口腔内の細菌活性の低減を改善するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
歯肉炎及び/又は歯周炎などの歯肉疾患は、口腔内で急性及び慢性の歯肉炎症を引き起こす。「歯肉炎」は、この疾患の軽症の状態である。歯肉炎の症状としては、歯肉の出血、並びに歯肉の発赤、腫脹、又は柔らかくなってしまっていることを挙げることができる。未処置のまま放置した場合、歯肉炎は、「歯周炎」に進行し得る。歯周炎により、歯肉と歯の間が空き、病原性細菌により感染され得る「歯周ポケット」と呼ばれる空間が形成される。細菌は、バイオフィルムとして歯根表面上に存在する。バイオフィルム内の細菌は、歯肉と、歯肉の内側に存在している支持歯槽骨とを攻撃し得る。このような攻撃は、歯を支持する軟組織及び骨に対して重度の損傷を与える可能性がある。歯肉疾患の後期段階(すなわち、「進行した歯周炎」)では、歯の動揺、そして最終的には歯の脱落という、より深刻な問題が生じ得る。
【0003】
いくつかの市販の口腔ケア組成物は、主に、歯肉の発赤、腫脹、若しくは柔らかくなってしまっている状態、及び/又は歯肉茎部(stem gum)の出血、の緩和が挙げられる、初期の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)の症状のうちの1つ以上を緩和することを目的としている。典型的には、これらの組成物は、ユーザーに対し、「歯肉ケア」、「口腔ケア」、「口腔衛生」、「歯科ケア」、又は「歯科衛生」などの効果を謳っている。このような組成物の例には、「歯肉疾患の第1段階(「歯肉炎又は歯肉の出血」として定義される)を低減するよう働く」ものであると謳われている練り歯磨きの「Colgate(登録商標)Total」がある(http://www.colgatetotal.com/total-benefits/whole-mouth-health/gingivitis-controlを参照されたい)。市販の口腔ケア組成物の効果を本発明によるものと比較して区別するにあたって、判別しやすくするために、本発明者らは、本明細書では、これらの市販の口腔ケア組成物に関する前述の効果を総じて「歯肉ケア」と称呼する。このように称呼するのは、これらの市販の口腔ケア組成物が、主に歯肉をケアし、初期段階の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)に関連する症状(例えば、歯肉の出血、及び/又は発赤、膨潤、若しくは圧痛歯肉)を緩和するために配合されているからである。
【0004】
しかしながら、本明細書で使用するとき、より広い用語であり、前述の歯肉ケア効果の少なくとも一部を包含すること、並びに歯肉炎、歯周炎、又はこれらの両方を含む歯肉疾患に関係する細菌による有害な影響を軽減する更なる抗菌効果を提供することを意図する、総合的な「歯肉健康」効果を提供する必要がある。
【0005】
上記の従来の手法には、いくつか存在している欠点のうちの少なくとも1つが存在する。第1に、これらの市販の口腔ケア組成物は、歯肉ケアを促進し得るが、歯肉健康も促進するのに十分な程度には至らない。実際に、これらの市販の口腔ケア組成物は、一般に、何らかの顕著な抗菌効果を歯肉ケア効果(例えば、抗出血及び/又は抗腫脹)と合わせて提供することができない。バイオフィルム内の細菌が調節されないと、歯周ポケットのサイズが増加し、歯周炎につながる恐れがあることから、抗菌効果が提供されないことは問題である。第2に、歯肉健康は、全身の健康に相関し得る。換言すれば、個人の歯肉健康は、その人物の全身の健康の指標であり得る。総合的な歯肉健康が低下するにつれて、例えば、心臓疾患及び脳卒中、糖尿病、腎臓疾患、早産、及び/又は骨粗鬆症などといった、生命を脅かす可能性のある状態のうちのいずれか1つ(又はそれ以上)を発症する危険性が増加し得ることが、複数の研究により示唆されている(米国特許第6,846,478号、Doyle,M.J.、及び米国特許第8,283,135号、Doyle,M.J.を参照されたい)。したがって、より良好な全身の健康を確保にするために、歯肉ケアだけでなく、総合的な歯肉の健康を改善することが望ましい。
【0006】
フッ化第一スズなどの第一スズ塩は、抗菌効果、歯肉炎の低減、歯周病への進行の減少、象牙質知覚過敏の低減、並びに歯冠及び歯根のう歯及び酸蝕の低減といった歯肉健康上の利益を提供するために、口腔ケア組成物において使用されている。しかしながら、従来の第一スズ含有組成物には問題点がある。有効なフッ化第一スズ製剤の使用中に通常生じる副次的な作用としては、第1に、当該製剤のもつ許容できないほどの渋みがある。第2に、スズ(II)イオンは、スズ(IV)に酸化しやすく、かつ水酸化第一スズとして水溶液から沈殿しやすいので、第一スズイオンの安定的な配合も課題を提示する。第3に、第一スズ塩は、口腔ケア組成物を黄色~暗褐色に変色させる傾向がある。この問題を克服するために、従来の第一スズ含有組成物は、第一スズ塩の安定性及び活性を著しく低下させることなく保存中の上記変色を防止するための、例えば、TiO、葉酸、又は風味料混合物(例えば、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、及びシネオール)などの追加の成分を更に含む。したがって、費用効率が高くかつ効果的な練り歯磨き及びその他の口腔ケア製剤を提供するために、配合及び加工の工程を単純化することが望ましい。
【0007】
これまでに、第一スズ塩及び亜鉛イオン源を含有する口腔ケア組成物が報告されている。クエン酸亜鉛などの可溶性亜鉛塩は、歯磨き組成物に使用されているが、いくつかの問題点を有する。遊離亜鉛イオンは、フッ化物イオンと反応してフッ化亜鉛を生成する可能性があり、当該フッ化亜鉛は不溶性であることから、亜鉛及びフッ化物の両方の有効性を低下させる。更に溶液中の亜鉛イオンは、不快で渋い口当たりを付与することから、有効な濃度の亜鉛を提供し、かつ許容可能な感覚刺激特性も有する製剤は、実現が困難であった。最後に、亜鉛イオンは、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤と反応し、結果として発泡及びクリーニングに影響する。したがって、製剤中の亜鉛の使用を最適化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6,846,478号
【文献】米国特許第8,283,135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ユーザーに歯肉健康上の利益を提供するか、又は市販の組成物よりも優れた関連する歯肉健康上の利益(例えば、歯肉創傷治癒及び抗菌効果)を少なくとも提供する、口腔ケア組成物を提供することが継続して必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、口腔ケア組成物における、亜鉛イオン源の非存在でのアミノ酸と第一スズイオン源との組み合わせが、少なくとも歯肉創傷治癒及び抗菌効果を含む、歯肉健康上の利益を促進するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいて、この必要性に対処することを試みる。具体的に言えば、口腔ケア組成物は、口腔内の細菌活性の望ましくない効果に対抗するために、亜鉛イオン源は存在させず、歯肉創傷治癒のためのアミノ酸と、抗菌剤としての第一スズイオン源とを含む。
【0011】
本発明の1つの利点は、「バイオフィルムへのより深い浸透及び/又は細菌の死滅」である。この目的に関し、更に驚くべきことに、特に亜鉛イオンの非存在下において、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透深さ及び/又は浸透速度は、アミノ酸と組み合わせて使用した場合に増加させることができることが見出されている。要するに、口腔ケア組成物において、亜鉛イオン源を存在させずに、アミノ酸と第一スズイオン源とを相乗効果があるように組み合わせることは、歯肉健康上の利益の改善が達成されるようなものであり得る。更に、本発明の口腔ケア組成物の使用は、改善された歯肉健康上の利益をユーザーに提供することができる。
【0012】
本発明の別の利点は、歯肉炎、歯周炎又はこれらの両方に関連する症状全体に関連する歯肉健康を促進するための、口腔ケア組成物を提供することである。本発明の口腔ケア組成物が、改善された歯肉健康上の利益を有することは、なおも更なる利点である。本発明のなおも更なる利点は、バイオフィルム内への抗菌剤(複数可)の浸透深さが改善された口腔ケア組成物を提供するというものである。本発明のなおも更なる利点は、バイオフィルム内への抗菌剤(複数可)の浸透速度が改善された口腔ケア組成物を提供することである。本発明のなおも更なる利点は、高費用効率と、歯肉健康を促進するのに有効な口腔ケア組成物とを提供することである。なおも更なる利点は、口腔ケア組成物が歯磨剤であり、好ましくは心地よい味及び口当たりの体験を提供するというものである。なおも更なる利点は、口腔ケア組成物が、広範な製造条件、取り扱い条件、及び保管条件にわたって物理的安定性及び化学的安定性を有するというものである。なおも更なる利点は、40℃で3ヶ月保管した後でさえも、口腔ケア組成物が最終製品の安定した品質(例えば、外観が一定でありかつ変色しない、及び歯肉創傷治癒能など)を有することである。またなおも更なる利点は、本発明の口腔ケア組成物が、抗菌剤の使用を最小限に抑えるというものである。またなおも更なる利点は、本発明の口腔用組成物が、上述の不安定性及び/又は変色の問題を低減及び/又は排除するためのアミノ酸の量を最小限に抑えるというものである。
【0013】
一態様では、本発明は、(a)組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、(b)組成物の0.01重量%~10重量%の遊離又は塩形態のアミノ酸と、を含み、亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物を目的とする。好ましくは、口腔ケア組成物は、亜鉛イオン源を本質的に含まない。より好ましくは、口腔ケア組成物は、亜鉛イオン源を含まない。
【0014】
好ましくは、本発明で使用されるアミノ酸は、アルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アスパラギン、グルタミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、当該アミノ酸は、組成物の0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%の量で存在する。アミノ酸は、その遊離形態又は塩形態であり得る。
【0015】
本発明のなお更なる別の態様では、ヒト対象における歯肉健康を促進するための方法であって、本発明の口腔ケア組成物を当該対象の口腔に投与することを含む方法が提供される。
【0016】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲と併せて検討することで当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書は、本発明を特定して指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、添付図面についての以下の説明からより良く理解されると考えられる。
図1】ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite、「HA」)ディスクが取り付けられた口腔スプリントの斜視図である。
図2】内部に溝を有するHAディスクの斜視図である。
図3】内部にバイオフィルムを有する溝の断面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書で使用するとき、「a」及び「an」などの冠詞は、特許請求の範囲で使用する場合、請求又は記載されているもののうちの1つ以上を意味するものと理解される。
【0019】
「緩和する(alleviate)」及び「緩和する(alleviating)」という用語は、互換的に使用され、歯肉疾患の少なくとも1つの症状を予防、遅延、治療、及び/又は最小限に抑え、ユーザーに好ましい変化(すなわち、利益)をもたらすことを意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、「バイオフィルム」という用語は、マトリックスに封入された細菌集団の、互いに対する及び/又は口腔内の表面若しくは界面に対する付着を意味する。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」とは、特に言及したもの以外の工程及び成分を付加することができることを意味する。この用語は、「~からなる(consisting of)」及び「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を包含する。本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の必須要素及び制限事項、並びに本明細書に記載されるあらゆる追加若しくは任意の成分、構成要素、工程、又は制限事項を含み、これらからなり、あるいは、これらから本質的になることができる。
【0022】
本明細書で使用するとき、「歯磨剤」という用語は、特に指定されない限り、口腔表面を清掃するために使用されるペースト、ゲル、粉剤、錠剤、又は液体製剤を意味する。
【0023】
本明細書で使用するとき、「歯肉ケア」という用語は、主に、早期段階の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)に関連する1つ以上の症状を緩和することを対象とする、口腔ケア組成物が備え持つ又は促進された利益を指す。かかる症状には、例えば、歯肉の出血、及び歯肉の発赤、腫脹又は柔らかくなってしまっている状態を含み得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、「歯肉健康」という用語は、歯肉創傷治癒を少なくとも改善することを含む「歯肉ケア」上の利益を提供する、並びに歯肉炎、歯周炎又はこれらの両方を含む歯肉疾患に関し細菌の有害な影響を軽減するように細菌活性の低減の更なる改善を提供する、口腔ケア組成物の固有の又は促進された利益を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、「細菌活性の低減を改善する」という用語は、実施例Bに記載のアッセイによって評価されるとおり、口腔内の細菌活性を低減することを意味する。
【0026】
本明細書で使用するとき、「歯肉創傷治癒を改善する」という用語は、実施例Cに記載の創傷治癒アッセイによって評価されるとおり、口腔内の歯肉の出血を低減することを意味する。
【0027】
本明細書で使用するとき、「口腔ケア組成物(「oral care composition」又は「oral care compositions」)という用語は、通常の使用過程で、口腔作用の目的のために、一部又は全ての歯科表面及び/又は口腔組織に接触するのに十分な時間にわたって、口腔内で保持される製品を意味する。一例では、組成物は、口腔内で使用されたときに歯肉ケア上の利益を提供する。本発明の口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯科用ゲル、歯磨き粉、錠剤、すすぎ剤、マウスウォッシュ、歯肉下用ゲル、発泡体、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、予防ペースト、ワセリンゲル、義歯用接着剤、又は義歯用製品を含む各種形態であってもよい。一例では、口腔用組成物は、ペースト又はゲルの形態である。別の例では、口腔用組成物は、歯磨きの形態である。また、口腔用組成物は、口腔表面に直接塗布するか若しくは装着するために、又はフロス内に組み込むために、ストリップ片若しくはフィルム上に組み込まれてもよい。
【0028】
本発明の本明細書で使用される用語「アミノ酸」は、遊離形態及び塩形態の両方を含むアミノ酸を指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「部分的に水溶性」という用語は、化合物が25℃で1g/1000mL以上の溶解度を有することを意味する。
【0030】
本明細書で使用するとき、「有効量」という用語は、当業者の妥当な判断の範囲内で、化合物又は組成物の好ましい利益、つまり口腔の健康の利益、を誘導するのに十分な量であり、かつ/又は重篤な副作用を回避するのに十分低い量である量、すなわち妥当な利益対リスク比を提供する量を意味する。一例では、「有効量」は、組成物の少なくとも0.01重量%の、あるいは少なくとも0.1重量%の材料を意味する。
【0031】
本明細書で使用するとき、単語「好ましい」、「好ましくは」、及びその変形は、一定の条件下において一定の利益をもたらす本発明の実施形態に関する。しかしながら、同じ、又は他の状況下においては、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0032】
本明細書で使用するとき、「促進する」という用語は、口腔内で本発明の口腔ケア組成物を使用することに関連する歯肉健康上の利益を促進及び/又は増強することを意味する。
【0033】
本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」という用語は、意図的な量のその材料が組成物に添加されないか、又は材料の量が組成物の0.05%、0.01%、若しくは0.001%未満であることを指す。本明細書で使用するとき、「本質的に含まない」という用語は、記載の材料が組成物に意図的に添加されたものでないこと、又は好ましくは分析によって検出可能な濃度では存在しないことを意味する。すなわち、指示材料が、意図的に添加されたその他の材料のうちのいずれかの不純物としてのみ存在する、組成物を包含することを意味する。本明細書で使用するとき、「含まない」という用語は、合理的に検出可能な量の材料が組成物中に存在しないことを指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、「相乗的な歯肉健康上の利益」という用語は、添加剤によるものを上回る、少なくとも歯肉創傷治癒の改善と口腔内の細菌活性の低減の改善とを含む、任意の2つの歯肉健康上の利益における、分析により測定可能な増加を意味する。
【0035】
本明細書で使用するとき、「歯」という用語は、天然歯並びに人工歯、又は歯科補綴物を意味する。
【0036】
本明細書で使用するとき、「総含水量」という用語は、遊離水、及び口腔ケア組成物中の他の成分によって結合される水、の両方を意味する。
【0037】
全ての百分率、部及び比率は、別途指定されない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。列挙されている成分に関するとき、こうした重量は全て、活性レベルに基づき、このため、特に指定されない限り、市販の材料に含まれている可能性のある溶媒又は副生成物を含まない。
【0038】
特に指定しない限り、本明細書で言及される測定は全て、25℃(すなわち、室温)で行われる。
【0039】
口腔ケア組成物
驚くべきことに、口腔ケア組成物における、亜鉛イオン源の非存在での第一スズイオン(すなわち、抗菌剤)とアミノ酸との組み合わせが、ユーザーに対する歯肉健康上の利益を促進するのに特に有用であることが発見された。具体的に言えば、アミノ酸と組み合わせたときに、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透が著しく改善されるという驚くべき発見があった。理論に束縛されるものではないが、アミノ酸は、カルボン酸基及びアミン基の両方を含有する。第一スズイオンは、アミノ酸上のこれらの分子の部分に強く結合して、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透に好ましい影響を及ぼし得ると考えられる。
【0040】
驚くべきことに、特に、亜鉛を存在させずにアミノ酸と共に配合された場合に、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透深さ及び/若しくは浸透速度が増加し得ること、又は著しく増加し得ることも判明した。要するに、口腔ケア組成物における、亜鉛イオン源の非存在、及び第一スズイオン源と組み合わせたアミノ酸の存在は、歯肉上のバイオフィルム内の細菌による有害な作用の媒介に対する、当該組成物の有効性を支援する。
【0041】
一態様では、本発明は、a)組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%、より好ましくは0.1重量%~2重量%の第一スズイオン源と、b)組成物の0.01重量%~10重量%、好ましくは0.05重量%~5重量%、より好ましくは0.1重量%~2重量%のアミノ酸と、c)組成物の0重量%~0.01重量%の亜鉛イオン源と、を含む。
【0042】
第一スズイオン源
本発明は、好ましい例において、抗菌効果を提供するために、組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%、又はより好ましくは0.1重量%~2重量%の量で存在する第一スズイオン源を含む、上述の口腔ケア組成物に関する。本明細書で使用されるスズイオン源は、任意の安全かつ有効な第一スズ塩を含み得る。第一スズイオン源の好適な例は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、塩化フッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、第一スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ及びこれらの組み合わせから選択される。好ましい一例では、第一スズイオン源は、塩化第一スズを含む。別の好ましい例では、第一スズイオン源は、フッ化第一スズを含む。
【0043】
アミノ酸
本明細書で使用するとき、用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸だけでなく、提供される量及び濃度において生理学的に許容できると考えられ、水溶性かつ薬剤として許容される、分子中にアミノ基及びカルボキシル基を有する任意のアミノ酸も含む。
【0044】
本発明で使用される好適なアミノ酸としては、アルギニン、リジン、セリン、ヒスチジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸;アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、シトルリン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどの中性アミノ酸;若しくはアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸;又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記アミノ酸のそれぞれは、その遊離形態若しくはその塩形態、又はこれらの組み合わせであり得る。アミノ酸がその塩形態である場合、好適な塩としては、提供される量及び濃度において生理学的に許容できると考えられ、薬剤として許容される塩であることが当該技術分野において既知である、塩が挙げられる。
【0045】
好ましくは、本発明で使用されるアミノ酸は、アルギニン、リジン、シトルリン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0046】
いくつかの例では、アミノ酸は、遊離形態若しくは塩形態のアルギニン、リジン、シトルリン、又はこれらの組み合わせから選択される。いくつかの例では、アミノ酸は、遊離形態若しくは塩形態のアスパラギン、グルタミン、若しくはグリシン、又はこれらの組み合わせから選択される。いくつかの他の例では、アミノ酸は、遊離形態若しくは塩形態のアスパラギン酸、グルタミン酸、又はこれらの組み合わせから選択される。アミノ酸がその塩形態のアスパラギン酸又はグルタミン酸である場合、このような塩の非限定的な例としては、カリウム及びナトリウムなどのアルカリ金属、又はカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属に由来するものが挙げられる。
【0047】
好ましくは、アミノ酸は、組成物の0.01重量%~10重量%、0.05重量%~5重量%、更により好ましくは0.1重量%~2重量%、あるいは0.2重量%~3重量%の量で存在する。
【0048】
亜鉛イオン源を含まない
好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~0.01重量%の亜鉛イオン源を含む。好ましくは、亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、亜鉛イオン源は、組成物の0重量%~0.005重量%未満、又は好ましくは0重量%~0.001重量%の量で存在し;より好ましくは、口腔ケア組成物は、亜鉛イオン源を含まない。
【0049】
増粘剤
本発明の口腔ケア組成物は、増粘剤を含んでいてよい。好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の0.1重量%~5重量%、好ましくは0.8重量%~3.5重量%、より好ましくは1重量%~3重量%、更により好ましくは1.3重量%~2.6重量%の増粘剤を含む。
【0050】
好ましくは、増粘剤は、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせを含む。更により好ましくは、増粘剤が増粘ポリマーを含む場合、増粘ポリマーは、荷電カルボキシメチルセルロース、非イオン性セルロース誘導体、直鎖硫酸化多糖類、天然ガム、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0051】
一例では、増粘シリカは、超微粒子を得るために酸で不安定化することによって、ケイ酸ナトリウム溶液から得られる。市販されている一例は、Huber Engineered MaterialsのZEODENT(登録商標)ブランドのシリカ(例えば、ZEODENT(登録商標)103、124、113、115、163、165、167)である。
【0052】
好ましくは、直鎖硫酸化多糖類は、カラギーナン(カラギーニンとしても知られている)である。カラギーナンの例としては、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
一例では、CMCは、アルカリ及びモノクロロ酢酸又はそのナトリウム塩で処理することによって、セルロースから調製される。異なる種は、商業上、粘度によって特徴付けられる。市販されている一例は、Ashland Special Ingredients製のAqualon(商標)ブランドのCMC(例えば、Aqualon(商標)7H3SF;Aqualon(商標)9M3SF Aqualon(商標)TM9A;Aqualon(商標)TM12A)である。
【0054】
好ましくは、天然ガムは、カラヤガム、アラビアガム(アカシアガムとしても知られている)、トラガカントガム、キサンタンガム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、天然ガムは、キサンタンガムである。キサンタンガムは、細菌キサントモナス・カメストリス(Xanthomonas camestris)によって分泌される多糖類である。一般に、キサンタンガムは、それぞれ2:2:1のモル比でグルコース、マンノース、及びグルクロン酸を含む、五糖繰り返し単位から構成される。(モノマーの)化学式は、C354929である。一例では、キサンタンガムは、CP Kelco Inc(Okmulge,US)製である。
【0055】
好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、50,000~1,300,000ダルトンの平均分子量範囲、好ましくは300~4,800の平均重合度を有する。より好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、「HEC」)である。
【0056】
好ましくは、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマーは、30,000~1,000,000ダルトンの分子量を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリルとのコポリマーからなる群から選択される。
【0057】
無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーは、Gantrez AN139(M.W.500,000ダルトン)、Gantrez AN119(M.W.250,000ダルトン)又はS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)のうちの少なくとも1つであり、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーが、Acusol 445、Acusol 445N、Accusol 531、Acusol 463、Acusol 448、Acusol 460、Acusol 465、Acusol 490、Sokalan CP5、Sokalan CP7、Sokalan CP45、又はSokalan CP12Sのうちの少なくとも1つである。並びに(v)これらの組み合わせ。
【0058】
実施例では、GANTREZ(商標)シリーズのポリマーは、30,000ダルトン~1,000,000ダルトンの分子量(M.W.)を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GANTREZ(商標)AN139(M.W.500,000ダルトン)、AN119(M.W.250,000ダルトン)及びS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)として、Ashland Chemicals(Kentucky,USA)から入手可能である。
【0059】
別の実施例では、ACUSOL(商標)及びSOKALANシリーズのポリマーには、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーが含まれる。その例は、約2,000~約1,000,000の分子量(M.W.)を有するマレイン酸とアクリル酸との0:1000~1000:0コポリマーである。これらのコポリマーは、Dow Chemicals(Michigan,USA)からACUSOL(商標)445及び445N、ACUSOL(商標)531、ACUSOL(商標)463、ACUSOL(商標)448、ACUSOL(商標)460、ACUSOL(商標)465、ACUSOL(商標)497、ACUSOL(商標)490として、またBASF(New Jersey,USA)からSokalan(登録商標)CP5、Sokalan(登録商標)CP7、Sokalan(登録商標)CP45、及びSokalan(登録商標)CP12 Sとして市販されている。
【0060】
別の例では、架橋ポリアクリル酸(polyacrylic acid、PAA)ポリマーは、アクリル酸の合成高分子量ポリマーの総称である。これらは、アリルエーテルペンタエリスリトール、スクロースのアリルエーテル、又はプロピレンのアリルエーテルで架橋された、アクリル酸のホモポリマーであってもよい。また、中性pHの水溶液では、PAAはアニオン性ポリマーであり、すなわちPAAの側鎖の多くがそのプロトンを失い、負電荷を獲得する。Carbopol(登録商標)、Pemulen(登録商標)及びNoveon(登録商標)などのCarbopol(登録商標)型ポリマーは、ポリアルケニルエーテル又はジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のポリマーである。Carbomerのコマーシャルコード、例えば940(商標)は、ポリマーの分子量及び特定の成分を示す。
【0061】
抗齲蝕剤
任意選択で、しかし、好ましくは、口腔ケア組成物は、有効量の抗齲蝕剤を含んでいてもよい。一態様では、抗齲蝕剤は、フッ化物イオン源である。フッ化物イオンの好適な例は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸(monofluorophosphate、「MFP」)ナトリウム、フッ化インジウム、フッ化アミン、フッ化亜鉛、及びこれらの混合物を含む供給源から選択され得る。好ましくは、フッ化物源は、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、MFP、及びこれらの組み合わせから選択される。フッ化物イオン源は、抗齲蝕効果を提供するために、組成物の0.0025重量%~10重量%、又は0.05重量%~4重量%、又は0.1重量%~2重量%、又は好ましくは0.2重量%~1.5重量%の量で存在していてよい。特定の例では、フッ化物イオン源は、25ppm~25,000ppm、一般的には少なくとも500ppm~1600ppm、例えば1100ppm又は1450ppmの濃度のフッ化物イオン濃度を組成物中に提供するのに十分な量で存在し得る。フッ化物の適切な濃度は、具体的な用途によって異なる。一般的なユーザーの練り歯磨きは、典型的には、約1000~1500ppmを有し、小児用練り歯磨きは幾分少ない。
【0062】
pH
本発明の口腔ケア組成物のpHは、4~11、好ましくはpH5~9、又はより好ましくはpH5.0~7.2であり得る。好ましくは、pHは7.2未満であり、より好ましくは、pHは7.0以下であり、更により好ましくは、pHはpH5.3~7.0であり、あるいはpHはpH6.0~7.0未満、例えば、pH6.9、又はpH6.8、又はpH6.7、又はpH6.6、又はpH6.5、又はpH6.4、又はpH6.3、又はpH6.2、又はpH6.2、又はpH6.1、又はpH6.0である。本発明の組成物の比較的低いpHは、変色を緩和し、任意選択で第一スズの沈殿を回避するためのものである。理論に束縛されるものではないが、pH7.3超では、第一スズイオンが、変色の可能性を増加させ得る。したがって、変色を緩和するために、口腔ケア組成物のpHは7.0未満とすることが望ましい。
【0063】
pHは、典型的には、1グラムの口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き)を3グラムの脱イオン水に混合し、次いで、周囲条件下で較正した、業界で受け入れられているpHプローブでpHを測定するという段取りで、1:3比のペースト:水を使用して測定した。pHは、自動温度補償(Automatic Temperature Compensating、ATC)プローブを用いてpHメータによって測定する。明確化のために、分析方法は、本発明を請求する目的で、新たに調製されたときの口腔ケア組成物の試験について説明しているが、pHは、製品の妥当なライフサイクル(製品が店舗から購入され、ユーザーの自宅に運ばれる時間を含むが、これらに限定されない)中の任意の時点で測定してよい。
【0064】
各使用後には、水で電極から試料溶液を洗い流す必要がある。余分な水は、キムワイプ又は同等物などのティッシュで拭き取って除去する。電極を使用していないときには、pH7の緩衝液又は電極保管液に電極の先端を浸漬させた状態を維持する。機器の詳細は以下のとおりである。
pHメータ:pH0.01又は0.001単位で読み取りが可能なメータ。
電極:Orion Ross Sure-Flowコンビネーション:ガラス体-VWR#34104-834/Orion#8172BN又はVWR#10010-772/Orion#8172BNWP。
エポキシ体-VWR#34104-830/Orion#8165BN又はVWR#10010-770/Orion#8165BNWP。
セミミクロエポキシ体-VWR#34104-837/Orion#8175BN又はVWR#10010-774/Orion#3175BNWP。
Orion PerpHectコンビネーション:VWR#34104-843/Orion#8203BNセミミクロガラス体。
ATCプローブ:Fisher Scientific,Cat.#13-620-16。
【0065】
pH調整剤
本明細書における口腔ケア組成物は、任意選択で有効量のpH調整剤を含んでいてもよく、あるいはpH調整剤はpH緩衝剤である。本明細書で使用するとき、pH調整剤は、口腔ケア組成物のpHを上記のpH範囲に調整するために使用することができる剤を指す。pH調整剤としては、塩酸、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
特定のpH調整剤としては、リン酸一ナトリウム(リン酸ナトリウム一塩基性)、リン酸三ナトリウム(リン酸ナトリウム三塩基性十二水和物又はTSP)、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、直鎖及び環状の両形態のピロリン酸塩、グルコン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸が挙げられる。
【0067】
一例では、組成物の0.01重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%のTSP、及び組成物の0.001重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~0.3重量%のリン酸一ナトリウムが使用される。理論に束縛されるものではないが、TSP及びリン酸一ナトリウムは、カルシウムイオンキレート活性を有し得るので、(モノフルロリン酸塩を含有する製剤において)若干のモノフルオロリン酸塩の安定化をもたらす。
【0068】

水は、その多くの利点により、口腔ケア組成物中の担体材料として一般的に使用される。例えば、水は加工助剤として有用であり、口腔に対して害がなく、練り歯磨きの迅速な発泡を助ける。水は、そのものが成分として添加されてもよく、又は例えば、ソルビトール及びラウリル硫酸ナトリウムなどの他の一般的な原料中に担体として存在してもよい。
【0069】
幾つかの例では、本明細書における口腔ケア組成物は、組成物の10重量%~70重量%、又は好ましくは15重量%~30重量%の総含水量を含んでいてよい。本明細書で使用するとき、「総含水量」という用語は、別個に添加された、又は、他の原材料のための溶媒若しくは担体として、口腔ケア組成物中に存在する水の総量を意味するが、ある特定の無機塩の結晶化に伴う水として存在し得るものを除く。好ましくは、水は、USP水である。
【0070】
あるいは、他の例では、本明細書における口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~5重量%の総含水量を含んでいてよい。例えば、口腔ケア組成物は、水を実質的に含んでいなくてもよく、好ましくは水を含んでいなくてよい。
【0071】
界面活性剤
口腔ケア組成物は、任意選択で、しかし好ましくは界面活性剤を含む。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性の界面活性剤、又はこれらの組み合わせから選択してよく、好ましくは、界面活性剤はアニオン性であり、より好ましくは、アニオン性界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SLS)である。双性イオン性界面活性剤の例は、コカミドプロピルベタインである。口腔ケア組成物は、1つ、2つ、又はそれ以上の界面活性剤を含有していてよい。組成物は、全組成物の0.1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~10重量%の濃度の界面活性剤を含んでいてよい。
【0072】
湿潤剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~70重量%、又は15重量%~55重量%の量で存在する湿潤剤を含んでもよい。湿潤剤は、空気への曝露時に口腔ケア組成物が硬化するのを防ぎ、また特定の湿潤剤は、口腔ケア組成物に所望の甘味風味を付与することもできる。湿潤剤の好適な例としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、キシリトール、トリメチルグリシン、及びこれらの混合物を挙げることができる。他の例としては、他の食用多価アルコールを挙げることができる。幾つかの例では、保湿剤は、ソルビトール、グリセリン、水、及びこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、保湿剤はソルビトールである。一例では、組成物は、組成物の10重量%~66重量%、あるいは30重量%~55重量%の保湿剤を含む。
【0073】
研磨剤
本発明の口腔ケア組成物は、有効量の研磨剤を含む。研磨剤の例としては、カルシウム含有研磨剤、シリカ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。カルシウム含有研磨剤を含有する場合、カルシウム含有研磨剤は、好ましくは、炭酸カルシウム、リン酸ニカルシウム、リン酸三カルシウム、オルトリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、カルシウムオキシアパタイト、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。シリカの場合、好ましくは、シリカは、例えば、Huber Engineered Materials製のZEODENT(登録商標)シリーズのもの(例えば、ZEODENT(登録商標)103、124、113、115、163、165、167)などの沈殿シリカ(例えば、超微粒子を得るために酸で不安定化することによるケイ酸ナトリウム溶液)である。これらのシリカ(例えば、合成非晶質シリカ)の一部は、研磨及び増粘の機能の両方を発揮することができるが、本明細書では、本発明の目的のために「研磨剤」という用語に含まれることが認められる。好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の1重量%~35重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の研磨剤を含む。
【0074】
着香剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%の着香剤を含み得る。口腔ケア組成物で使用することができる好適な着香剤の例としては、米国特許第8,691,190号;Haught,J.C.のカラム7、61行~カラム8、21行に記載されているものが挙げられる。いくつかの例では、着香剤は、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、及びシネオールから選択してよい。いくつかの例では、口腔ケア組成物は、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、及びシネオールを含まないか又は実質的に含まない風味料混合物を含んでいてよい。
【0075】
甘味剤
本明細書の口腔ケア組成物は、甘味剤を含んでもよい。甘味剤は、一般に、組成物の0.005重量%~5重量%の濃度で口腔ケア組成物中に存在する。甘味剤の好適な例としては、サッカリン、デキストロース、スクロース、ラクトース、キシリトール、麦芽糖、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物が挙げられる。甘味剤の他の好適な例は、米国特許第8,691,190号;Haught,J.C.のカラム9、18行~カラム10、18行に記載されている。
【0076】
着色剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0.001重量%~0.01重量%の量で存在する着色剤を含んでもよい。着色剤は、水溶液、好ましくは1%着色剤水溶液の形態であってよい。着色剤の好適な例としては、顔料、パール剤(pealing agent)、充填剤粉末、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、及び口腔ケア組成物に視覚的変化を生みだすことができる他の物質を挙げることができる。他の好適な例としては、二酸化チタン(TiO)を挙げることができる。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加え、一般に組成物の0.25重量%~5重量%の濃度で口腔ケア組成物中に存在する白色粉末である。
【0077】
他の成分
本発明の口腔ケア組成物は、当業者に既知の通常及び従来の補助成分を含むことができる。任意成分としては、例えば、抗歯垢剤、抗知覚過敏剤、ホワイトニング及び酸化剤、抗炎症剤、抗結石剤、キレート剤、歯質剤(tooth substantive agent)、鎮痛剤、及び麻酔剤が挙げられるが、これらに限定されない。口腔ケア組成物のために選択された成分は、互いに、化学的かつ物理的に適合するものでなければならないことが理解されよう。
【0078】
使用方法
一態様では、本発明は、ヒト対象の歯をクリーニング又は研磨するための方法に関する。本明細書のクリーニング又は研磨方法は、対象の歯を、本発明による口腔ケア組成物と接触させることを含む。
【0079】
別の態様では、本発明はまた、本発明による口腔ケア組成物を対象の口腔に投与することを含む、ヒト対象における歯肉健康を促進する方法であって、好ましくは、当該投与が、少なくとも1日1回、より好ましくは少なくとも1日2回行われる方法に関する。
【0080】
更に別の態様では、本発明は、ヒト対象における歯肉健康を促進するための、第一スズを含有し、特に亜鉛は含有しない口腔ケア組成物を製造するための、アミノ酸の使用に関する。好ましくは、歯肉健康を促進する方法は、少なくとも、以下からなる群から選択される期間内で行われる。
a)0時間~72時間の時間、
b)0時間~48時間の時間、
c)0時間~24時間の時間、
ここで0時間は、本発明による口腔ケア組成物を投与する時間である。
【0081】
更に別の態様では、本発明はまた、歯肉健康を促進する方法であって、
(i)口腔内の歯肉創傷治癒を改善することと、
(ii)口腔内の細菌活性の低減を改善することと、
を含む方法に関する。
【0082】
上記の方法は、口腔ケア組成物(例えば、歯磨き)を用いてブラッシング(例えば、歯磨き)すること、又は口腔ケア組成物(例えば、歯磨きスラリー又は口内洗浄剤)ですすぐことによるものであってよい。口腔ケア組成物は、未希釈で、又は例えば歯ブラシなどの送達装置を介して適用されてもよい。他の方法としては、局所口腔用ゲル、口中スプレー、練り歯磨き、歯磨き、歯磨きゲル、歯磨き粉、タブレット、歯肉下用ゲル、フォーム、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、ペトロラタムゲル、若しくは義歯製品、又は他の形態を、対象の歯及び口腔粘膜と接触させることを含む。実施形態に応じて、口腔ケア組成物は、練り歯磨きと同じく頻繁に使用されてもよく、又はより少ない頻度、例えば週単位で使用されてもよく、又は歯面研磨ペースト若しくは他の集中治療の形態で、専門家により使用されてもよい。
【実施例
【0083】
以下の実施例及び説明は、本発明の範囲内にある実施形態を更に明らかにする。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの多くの変形例が発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく可能であることから、本発明の制限として解釈されるべきではない。
【0084】
実施例A:実施例1~17
実施例1~17は、以下に示す歯磨き組成物であり、成分の量は、重量%である。これらは、処方者によって選択される従来の方法によって好適に調製されてもよい。実施例1~8は、それぞれ亜鉛イオン源が存在しない、第一スズイオン源(例えば、塩化第一スズ)及び単一のアミノ酸(例えば、アルギニン、シトルリン、グルタミン、又はグルタミン酸)を用いて製造された本発明による本発明の製剤である。並行して、比較製剤例9~17を調製する。実施例9~16は、第一スズ、単一のアミノ酸、並びに2とおりの濃度の亜鉛イオン源(クエン酸亜鉛)を用いて製造され、一方、対照例17は、アミノ酸も亜鉛イオン源も用いずに製造される。全ての組成物は、指示された比率の表1及び2の成分の混和によって調製される。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
実施例B:抗菌剤によるバイオフィルム中の内毒素の中和の改善について測定するためのアッセイ
抗菌剤によるバイオフィルム中の内毒素の中和の改善を判定するために、以下のアッセイを使用して、インサイツで歯垢バイオフィルムにおいてLPSのリピドAに結合した蛍光色素を測定することにより、第一スズイオンのLPS結合効率について本発明の口腔ケア組成物及び対照を評価する。アッセイの詳細を以下に説明する。
【0088】
(a)バイオフィルムの増殖のための基質
インサイツでのバイオフィルムの増殖にはヒドロキシアパタイト(HA)ディスクを使用する。HAディスクは、各ディスクに3つの平行な溝(すなわち、2つの側方溝の幅200μm、深さ200μm、中央溝の幅500μm及び深さ500μm)を有するように設計される。対象の口にディスクを取り付けるとき、一般に歯垢が蓄積する傾向がありクリーニングが困難な領域である、歯間の隣接歯間間隙を模倣するように、これらの溝を垂直に維持する。このモデルは、溝からのそのままの状態での歯垢の収集を可能にする。HAディスクは、Shanghai Bei’erkang biomedicine limited companyによって製造される。
【0089】
(b)スプリントを着用する
ヒト対象は、スプリントを着用する。各対象は、48時間後に少なくとも9枚のHAディスクを確実に利用可能にするために、スプリント上に最大12枚までのHAディスクを装着する。このようなスプリント及びHAディスクの非限定例を図1に示す。図1を参照すると、デバイス(1)は、複数のHAディスク(2a~2d)を保持する。特定の例では、図2を参照すると、HAディスク(201)は、3本の平行な溝(203)を有する(2本の側方溝(203a及び203c)は、幅300μm及び深さ300μmであるが、中間溝(203b)(2つの側面溝の間にある)は、幅500μm及び深さ500μmである)。中間溝は、HAディスクがヘッド対ヘッドの比較目的のため、2つの同一の半ディスクに、より容易に分離することができるように、2つの側方溝よりも広くかつ深く設計されている。図3は、内部にバイオフィルム(2005)を有する溝(2003)の断面図の概略図である。HAディスクの更なる詳細は、米国特許出願公開第2017/0056531号(例えば、段落[0019]~[0020])に記載されている。
【0090】
図3には示されていないが、ディスクは、歯間の歯間空間に後退が生じるように位置付けられ得る(この位置は歯垢を生じやすいため(クリーニングの困難さなどを考慮して))。対象は、食事中にのみスプリントを取り外し(不透明な容器内に湿った状態でスプリントを保存する)、口腔衛生処置を実施する。その後すぐに、スプリントを再び着用する。対象は、飲用時にはストローを使用するように求められる。
【0091】
(c)HAディスクからのインサイツバイオフィルムの放出
全てのHAディスクは、48時間でピンセットによってスプリントから除去される。ピンセットを使用してHAチップの縁部を保持し、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)溶液を入れた2mL遠心管にHAディスクを移す。ディスクを移す前には、毎回ピンセットを十分に洗浄する(水、75%アルコール、次いで脱イオン水)。
【0092】
(d)練り歯磨き上清の調製
15グラムの脱イオン水を5グラムの練り歯磨き(本発明の組成物の実施例1~8、比較組成物例9~17のいずれか1つを使用)に添加する。完全に撹拌した後、混合物を12,000RPMで20分間遠心分離する。上清を使用の1日前に調製し、4℃で保管する。
【0093】
(e)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
HAディスクをスプリントから除去した後。様々な本発明の組成物及び対照組成物によるエクスビボ処理に、HAディスクを使用する。対象の上清で処理し、微生物蛍光プローブ及び第一スズ蛍光プローブ(例えば、PCT公開第2015/139263号、Shi et al.に記載されている)で標識した後、溝内のバイオフィルムを、共焦点レーザー走査顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)(以下に記載される)によって測定する。好ましくは、中和されるLPS蛍光プローブは、BODIPY-TR-カダベリン(BC)(Thermo Fisherから入手可能)である。好ましくは、微生物蛍光プローブは、Molecular Probes(商標)LIVE/DEAD(登録商標)BacLight(商標)システム(Thermo Fisherから入手可能)である。
【0094】
(f)ディスクの調製
HAディスクをPBS溶液ですすぎ、各HAディスクをピンセットで半分に分割し2つにする。その後、半分のディスクのそれぞれを500~1000μLのPBS溶液に1分間静置する。各ディスクを、PBS溶液又は練り歯磨き上清のいずれかによって2分間処理する。各ディスクをピンセットで保持し、1mLのPBS溶液中で前後に10回揺り動かして洗浄し、次いでこの洗浄サイクルを繰り返す。次いで、各ディスクを500~1000μLのPBS溶液に5分間静置する。
【0095】
(g)蛍光染色及び顕微鏡検査
リピドAに結合する蛍光色素BODIPY-TR-カダベリン(BC)を用いることで、その蛍光を抑制する、LPS中和効果を評価した。BCは、このリピドに対して親和性を有する剤によって置換される。LPSが他のイオン、例えば、第一スズに結合したとき、BCがLPSから放出され、その蛍光は、存在する遊離(非結合)BCの量に比例する。したがって、蛍光強度は、中和された(結合している)LPS量対遊離(非結合)LPSの量、及びバイオフィルムの毒性の低減における抗菌剤の有効性を示す。結合しているLPSの量が多いほど、毒性が低い。
【0096】
処理及び浸漬後、半分のディスクのそれぞれを、暗所で30分間、Syto-9プローブと共にBODIPY-TR-カダベリン(BC)プローブで(5μMのBCプローブ及び5μMのSnプローブを含有する)染色する。染色後、各ディスクを、500~1000μLのPBS溶液に浸漬して、2分間静置する。各ディスクをピンセットで保持し、1mLのPBS溶液中で前後に5回揺り動かして再度洗浄し、この作業を繰り返す。SYTO-9/BC染料で染色した試料について、以下のパラメータを使用する:λex=488nm/543nm、λem=500/580nm、20倍対物レンズ、及び表面細菌の底部から60μmにわたってステップサイズ=3μmで走査する。
【0097】
(h)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
Leica(商標)TCS SP8 AOBS分光共焦点顕微鏡を使用する。共焦点システムは、Leica(商標)DM6000B直立顕微鏡及びLeica(商標)DMIRE2反転顕微鏡からなる。直立スタンドは、スライド載置した標本を含む用途に使用されるが、37℃のインキュベーションチャンバ及びCO富化用の付属品を有する反転スタンドには、生細胞向けの用途がある。この顕微鏡は、交換可能なレーザー走査ヘッド、及びそれ自体の電気モータ駆動段階に加えて、焦点(Z)平面における急速撮像を容易にする、ガルバノメータ駆動型高精度Zステージを共有する。更に当該顕微鏡は、落射蛍光に加えて、明視野、偏光光及び微分干渉コントラストを含む様々な透過光コントラスト方法に対応しており、5倍、20倍、40倍、63倍(油浸及び乾燥)並びに100倍(油浸)Leica(商標)対物レンズを装備している。
【0098】
レーザー走査及び検出システムについて説明する。TCS SP8 AOBS共焦点システムには、4とおりのレーザー(1つのダイオード、1つのアルゴン及び2つのヘリウムネオンレーザー)が供給され、これにより電磁スペクトルのUV、可視及び近赤外範囲内の広範な蛍光色素を励起させることが可能である。レーザー走査ヘッドに音響光学的調整可能フィルタ(acousto-optical tunable filter、AOTF)、音響光学ビームスプリッタ(acousto-optical beam splitter、AOBS)及び4つのプリズム分光光度計検出器を組み込むという設計により、3とおりの蛍光色素の同時励起及び検出が可能である。正立顕微鏡も、透過光検出器を有しており、透過光画像を蛍光記録上に重ね合わせることが可能である。
【0099】
Leica(商標)共焦点ソフトウェアを使用する。共焦点は、デュアルモニターを接続した標準Pentium PC及びLeica(商標)共焦点ソフトウェアを介して制御する。Leica共焦点ソフトウェアは、3Dの再構成及び測定、生理学的記録及び解析、タイムラプス、蛍光色素の共局在、FRAP及びFRETなどの光退色技術、スペクトル不混合及び多色回復(multicolour restoration)を含む、多次元での一連の画像の取得、処理及び解析のためのインターフェースを提供する。画像解析に関しては、SYTO-9/BCプローブで染色した試料を選択して、赤色及び緑色の画素の蛍光強度を定量する。ソフトウェアを使用して、結合しているLPS/細菌細胞の蛍光強度比(FIR)を計算した。この蛍光強度の比は、細菌単位当たりの結合している(中和された)LPSの相対量と、バイオフィルムの毒性の低減における剤の有効性とを示す。蛍光強度比が大きいほど、LPSの内毒素の中和の有効性が高い。
【0100】
結果:対象を本発明の組成物の実施例1~4(すなわち、Sn+2.00%アミノ酸、亜鉛を含まない)、比較組成物例9~16(すなわち、Sn+2.00%アミノ酸、亜鉛を含む)、比較組成物例17(すなわち、アミノ酸も亜鉛も含まないSn)、及び陰性対照としてのPBSで処理する。結果を表3に提供する。
【0101】
【表3】
【0102】
結果は本発明の組成物の実施例1(0.73)、本発明の組成物の実施例2(0.79)、本発明の組成物の実施例3(0.8)、本発明の組成物の実施例4(0.83)の方が、比較組成物例9~17(0.6~0.69)及び対照PBS(0)よりも、結合しているLPS/細菌細胞の、蛍光強度比(FIR)が著しく高いことを実証する。実際に、このデータは、アミノ酸(例えば、アルギニン、シトルリン、グルタミン、及びグルタミン酸)と組み合わせられ、かつZnを含まない場合に、アミノ酸(例えば、アルギニン、シトルリン、グルタミン、及びグルタミン酸)及びZn塩を含む対照よりも、第一スズイオンによるバイオフィルムにおける内毒素中和が改善されることを支持する。更に、本発明の組成物の実施例1~4を比較組成物例17と比較すると、データは、アミノ酸と組み合わせた場合に、アミノ酸を含まない第一スズイオンのみの場合と比較して、第一スズイオンのバイオフィルムにおける内毒素中和の改善を示す(0.73~0.83対0.63)。
【0103】
実施例C:ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒の改善を測定するためのアッセイ
インビトロでヒト歯肉線維芽細胞を使用して、本発明の組成物及び比較組成物による処置の結果として得られる、創傷治癒に関わる遊走に関する効果を評価する。この方法は、3つの段階を含む。
【0104】
段階1-初代ヒト歯肉線維芽細胞(Human Gingival Fibroblast、HGF)を培養する
ヒト歯肉線維芽細胞を、抜歯患者から採取し、5mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄する。この組織を小片に刻んで、15mLの遠心管に入れる。試料を、37℃で1時間、等量の8%ディスパーゼ1mL及び6%コラゲナーゼ1mLで消化する。この消化の間、試料を15分毎に振盪する必要がある。消化プロセスが完了したら、管を室温で6分間、1100RPMで遠心分離する。遠心分離後、管の底には上清液から分離された細胞のペレットが形成されている。次いでこの上清液を廃棄し、細胞ペレットを3mLの新鮮な最小必須培地(Minimum Essential Medium、MEM、Thermo Fisherから入手可能)培養培地に懸濁させた後、ペトリ皿に移す。細胞を入れたペトリ皿を、37℃、5% COのインキュベータ内に約10日間入れる。培地の変色について2日毎にペトリ皿を確認する。培地の変色が生じた場合、新鮮な培養培地に交換する。
【0105】
段階2-ヒト歯肉線維芽細胞を継代培養する
ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。0.25%トリプシン-EDTA溶液1mLを添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、当該細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がするために、ペトリ皿をタップすることが必要な場合もある。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMで6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、同じ遠心管内で、4mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。それぞれペトリ皿上に観察される細胞単層被覆が80~90%になるまで、細胞懸濁液1mL及び新鮮なMEM培養培地9mLを入れた4枚のペトリ皿を37℃、5% COのインキュベータ内に約3~5日間入れる。最も高い細胞生存率を達成するためにも、この段階は創傷治癒アッセイ前に2~4回繰り返す必要がある。
【0106】
段階3-創傷治癒アッセイ
ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。0.25%トリプシン-EDTA溶液1mLを添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、当該細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がすために、培養ペトリ皿をタップする必要がある場合もある。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMで6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、6mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。1mLの細胞懸濁液及び1mLの新鮮なMEM培地を、それぞれ6ウェルプレートの各ウェルに添加する。細胞単層被覆率が50~70%になるまで、プレートを37℃、5% COでインキュベートする。次いで画像取得の間、ウェルの外側底部の中央に、基準線として線をマーキングする。滅菌した1mLのピペットチップで細胞単層の右半分をこすり取ることによって、創傷を手作業で作製する。細胞を2mLのPBSで洗浄して、懸濁された細胞が全く観察されなくなるまで、懸濁細胞を除去する。培養培地2mLと、1%の比較組成物を含有する培養培地2mL又は1%の本発明の組成物を含有する培養培地2mLとをウェルに添加する。
【0107】
HGFの高密度デジタル画像は、Olympus(登録商標)UIS2 WHN対物レンズ(10倍)を有するOlympus(登録商標)IX71デジタルSLRカメラを用いて撮影する。第1の画像は、プレート上の中央線のマーキングを基準線として使用して、時間0時間(すなわち、ベースライン)で取得する。次いで、プレートを、以下に記載されるように、37℃、5% COで様々な時間間隔にわたってインキュベートする。予め一致させて撮影領域を取得し、またベースライン以降の時間間隔(例えば、24時間、48時間、72時間等)で画像を取得し、異なる処置下での創傷治癒性能の指標として、細胞被覆率(%)を評価する。Wimasis(登録商標)WimScratchソフトウェア(Wimasis GmbH,Germanyから入手可能)によって画像を評価して、各試料について一致するベースライン画像と比較して、創傷についてマークをつけた境界を超えるHGF細胞の被覆(すなわち、創傷治癒)の程度(すなわち、割合)を求める。WimScratchソフトウェアは、高度なエッジ検出及びオーバーレイ技法を利用して、細胞及びブランクの領域を認識し、すなわち、画像内の緑色のオーバーレイは、特定の画像の細胞被覆領域を表し、灰色の領域は創傷領域を表す。読み出しは、両方の領域に対して提示され、総面積のパーセントとして正規化される。
【0108】
結果:表4を参照すると、結果は、アルギニンを含有する本発明の組成物の実施例1及びシトルリンを含有する実施例2では、創傷についてマークした後の細胞被覆率が、アミノ酸及び亜鉛を含まない比較組成物例17で処理されたHGFについて示された低い細胞被覆率(6.40%=56.40%全被覆率-50.00%ベースライン)と比較して増加(すなわち、8.70%=58.70%全被覆率-50.00%ベースライン)しており、この増加により創傷治癒を効果的に改善することを示す。
【0109】
【表4】
【0110】
D:口内洗浄剤組成物
本発明による口内洗浄剤組成物を、表5中実施例18~20として以下に示す。これらの組成物は、亜鉛は存在せず、スズイオン源及びアミノ酸を含有する。好ましくは、これらの組成物は、これらの成分を含まない市販の製剤と比較して改善された歯肉健康上の利益を示す。
【0111】
【表5】
【0112】
本明細書にて開示された寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0113】
相互参照される又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本願に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとは見なされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのような発明全てを教示、示唆又は開示するとは見なされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0114】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図されている。
図1
図2
図3