(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】レーザビームを用いてワークを加工するためのレーザ加工システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2021507693
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070903
(87)【国際公開番号】W WO2020035332
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】102018119703.9
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュールマン ベルト
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0059350(US,A1)
【文献】特開2012-236196(JP,A)
【文献】特開2013-48183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビーム(10)を用いてワーク(1)を加工するためのレーザ加工システム(100)であって、
前記レーザビーム(10)を加工ヘッド(101)から放出するための開口部(212)を有するハウジング(210)と、測定ビームを反射するための少なくとも1つの反射性参照体(214)とを備えた加工ヘッド(101)と、
評価ユニット(130)を備え、光測定ビーム(13)を、前記開口部(212)を通じて前記ワーク(1)上および前記反射性参照体(214)上に方向付けるように構成された測定デバイス(120)であって、前記光測定ビーム(13)は、前記レーザビーム(10)
に実質的に平行に前記開口部(212)を通過し、前記光測定ビーム(13)は、円形の断面を有する連続測定ビームであり、前記光測定ビーム(13)の直径は、前記反射性参照体(214)からの前記光測定ビーム(13)の第1の反射(A)、前記ワーク(1)からの前記光測定ビーム(13)の第2の反射(B)、および前記レーザビーム(10)の加工点からの前記光測定ビーム(13)の第3の反射(C)を同時に取得するために、前記ハウジング(210)の前記開口部(212)の直径よりも大きい、測定デバイス(120)と、
を備え、
前記
評価ユニット(130)は、
前記第1の反射(A)および前記第2の反射(B)に基づいて前記加工ヘッド(101)と前記ワーク(1)との間の距離(d1)を決定し、前記第1の反射(A)
および前記第3の反射(C
)に基づい
て加工グラウンドに対する距離を決定するよう
に構成されることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記測定デバイス(120)は、前記反射性参照体(214)と、前記開口部(212)を含む前記加工ヘッド(101)の端部(216)との間の既知のオフセット(z)を考慮に入れながら、前記端部(216)と前記ワーク(1)との間の前記距離(d1)を決定するように構成されることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記反射性参照体(214)は、前記ハウジング内にかつ/または前記開口部(212)に隣接して配設されることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記光測定ビーム(13)は、前記開口部(212)を通じて前記レーザビーム(10)と同軸に方向付けられることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記ハウジング(210)は、前記開口部(212)および前記反射性参照体(214)を含むノズルを備えることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記測定デバイス(120)は光干渉断層計を備えることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、
前記測定デバイス(120)は、前記反射性参照体(214)からの前記光測定ビーム(13
)の前記第1の反射(A
)と、前記
ワーク(1)からの前記光測定ビーム(13)の第2の反射(B)
とを重畳するように更に構成されることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項8】
レーザビーム(10)を用いてワーク(1)を加工するための方法(400)であって、
前記レーザビーム(10)を加工ヘッド(101)から放出するための開口部(212)を有するハウジング(210)と、測定ビームを反射するための少なくとも1つの反射性参照体(214)とを備えた加工ヘッド(101)を
設けること
(410)と、
光測定ビーム(13)を、前記開口部(212)を通じて前記ワーク(1)上および前記反射性参照体(214)上に方向付けること(420)であって、前記光測定ビーム(13)は、前記レーザビーム(10)に少なくとも部分的に平行で
あり、円形の断面を有する連続測定ビームであり、前記光測定ビーム(13)の直径は、前記少なくとも1つの反射性参照体(214)からの前記光測定ビーム(13)の第1の反射(A
)、前記ワーク(1)からの前記光測定ビーム(13)の第2の反射(B)
、および前記レーザビーム(10)の加工点からの前記光測定ビーム(13)の第3の反射(C)を同時に取得するために、前記ハウジング(210)の前記開口部(212)の直径よりも大きいことと、
前記第1の反射(A)および前記第2の反射(B)に基づいて前記加工ヘッド(101)と前記ワーク(1)との間の距離(d1)を決定し、前記第1の反射(A)
および前記第3の反射(C
)に基づい
て加工グラウンドに対する距
離を決定すること(430)と、
を含むことを特徴とする、方法(400)。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記反射性参照体(214)からの前記光測定ビーム(13)の前記第1の反射(A)と、前記ワーク(1)からの前記光測定ビーム(13)の前記第2の反射(B)とを重畳するステップを更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法であって、前記光測定ビーム(13)は、前記開口部(212)を通じて前記レーザビーム(10)に対し同軸に方向付けられることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザビームを用いてワークを加工するように構成されたレーザ加工システム、およびレーザビームを用いてワークを加工するための方法に関する。特に、本開示は、ワークに対する距離の測定のための光干渉断層計を備えた、例えば、レーザ溶接またはレーザ切断のためのレーザ加工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザを用いて材料を加工するためのデバイス、例えば、レーザ溶接またはレーザ切断のためのレーザ加工ヘッドにおいて、レーザ光源またはレーザファイバーの端部から放射されるレーザビームは、ビームガイドおよび集束光学素子によって、加工されるワーク上に集束またはコリメートされる。
【0003】
材料のレーザ加工のために、特に、レーザ切断またはレーザ溶接のために、加工ヘッドとワーク表面との間の距離、または加工ヘッドの端部に配置されたノズルとワーク表面との間の距離は一定に保たれなくてはならない。加工中に距離を一定に保つことができるほど、加工プロセスの実行が安定する。通例、距離測定のために、容量型の測定方法が用いられる。ここで、ワーク表面および切断ノズルの表面が、共振回路の一部であるキャパシタを形成する。しかしながら、ワーク、および輪郭切削マシンの3爪チャック等の切削マシンの他の部分がグラウンド電位にあるため、力線は、切断ノズルとワークとの間に形成されるのみでなく、切断ノズルと、切断ノズルに隣接して配置された3爪チャックとの間にも形成される。ノズルが3爪チャックに近づくほど、測定距離信号に対する影響が大きくなる。金属シートからの切断部、多くの場合、レーザビームによって切り取られた部分が、金属シートから落ちることなく詰まり、したがって金属シートから突出する場合があるときに同様の状況が生じる。このため、3爪チャックがない平台切断においても、容量型の距離測定が影響を受ける場合がある。そうでない場合、切断部分は金属シートから落ちることができる。切断が切り取られた輪郭に非常に近接して行われる場合、キャパシタ表面が孔を含むため、容量型の距離測定は影響を受ける場合がある。
【0004】
したがって、容量型の測定方法において、切断ノズルの下のワーク表面に対する距離の測定において大きな横感度が存在する。このため、容量型の測定方法を用いたワークに対する距離の測定は不正確となる場合がある。
【0005】
DE 10 2014 011569 B4は、光干渉断層撮影によって、ワークと、レーザ加工デバイスの加工ヘッドとの間の距離を測定するための方法を開示している。WO2018/136622A1は、干渉計距離測定が、例えば溶接等のレーザ材料処理に関連して使用されるシステムおよび方法を開示している。DE 10 2014 011569 B4は、レーザ加工装置に関連するOCT距離測定を開示している。DE 10 2013 015 656 A1およびUS2016/0039045A1は、レーザ材料の処理中にワークピースのレーザビームの侵入深さを測定するための方法とデバイスを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ワークに対する距離の厳密で誤りのない測定を可能にする、レーザビームを用いてワークを加工するように構成されたレーザ加工システムのための加工ヘッド、およびレーザビームを用いてワークを加工するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な実施形態が従属請求項において指定される。
【0008】
本開示の態様によれば、レーザビームを用いてワークを加工するための、好ましくはレーザビームを用いてワークを切断するためのレーザ加工システムが開示される。レーザ加工システムは、レーザビームを加工ヘッドから放出するための開口部を有するハウジングと、測定ビームを反射するための少なくとも1つの反射性参照体(reflective reference)とを備えた加工ヘッドを備える。換言すれば、開口部は、レーザ加工システムの動作中、レーザビームが開口部を出てワークに当たるように形成することができる。少なくとも1つの反射性参照体をハウジング内に配置することができる。レーザ加工システムは、測定ビームを開口部および少なくとも1つの反射性参照体に方向付けるように構成された測定デバイスを更に備える。測定デバイスは、(i)少なくとも1つの反射性参照体からの光測定ビームの第1の反射、および(ii)ワークからの光測定ビームの少なくとも1つの第2の反射に基づいて、加工ヘッド(または加工ヘッドの端部)とワークとの間の距離を決定するように更に構成される。端部は、開口部を含み、かつ/または加工中にワークの(正)反対にある、加工ヘッドの一部とすることができる。反射性参照体は、端部にまたは端部に隣接して位置することができる。加工ヘッドにおいて、少なくとも開口部の領域において、光測定ビームおよびレーザビームは互いに実質的に平行に、特に同軸に進むことができる。換言すれば、光測定ビームおよびレーザビームのビーム軸は、好ましくは、実質的に平行にまたは同軸に開口部を通って延びる。このため、光測定ビームおよびレーザビームは、ワーク表面に同軸にかつ/または直交して当たることができる。光測定ビームは、角度を成して反射性参照体に当たることができる。したがって、反射ビームまたは第1の反射は、光測定ビームおよび/またはレーザビームと平行でも同軸でもない場合もある。
【0009】
測定デバイスの評価ユニットは、加工ヘッドと加工グラウンドとの間の距離を、レーザビームの加工グラウンドまたは加工点からの第3の反射に基づいて決定するように更に構成される。加工は、例えば、止まり孔を形成するために材料が除去される、溶接プロセス、切断プロセス、穿孔プロセス、またはアブレーションプロセスとすることができる。したがって、加工点は、溶接点、切断点、穿孔点またはアブレーション点とすることができる。換言すれば、端部、例えばノズルとワーク表面との間の距離を決定することができるのみでなく、例えば、ワークの表面と加工グラウンドとの間の距離を決定することによって、加工深度、すなわち、切断深度、穿孔深度、アブレーション深度または溶接深度を決定することができる。このため、ワークに対する距離と、加工深度または加工グラウンドに対する距離とを同時に決定することができる。この目的で、好ましくは、円形断面および開口部の直径よりも大きな直径を有する連続測定ビームが用いられ、それによって、第1の反射および第2の反射と、第3の反射との双方が生成される。
【0010】
本開示の別の態様によれば、レーザビームを用いてワークを加工するための方法が提供される。方法は、加工ヘッドからレーザビームを放出するための開口部を有するハウジングを備えた加工ヘッドを提供することと;レーザビームを開口部に方向付けることと;光測定ビームを、ハウジングにおける開口部および少なくとも1つの反射性参照体に方向付けること;(i)少なくとも1つの反射性参照体からの光測定ビームの第1の反射、および(ii)ワークからの光測定ビームの少なくとも1つの第2の反射に基づいて、加工ヘッドまたは加工ヘッドの端部とワークとの間の距離を決定することとを含む。加工ヘッドにおいて、少なくとも開口部の領域において、光測定ビームおよびレーザビームは互いに実質的に平行に進むことができる。加えて、距離を決定するとき、少なくとも1つの反射性参照体と端部との間のオフセットを考慮に入れることができる。方法は、本開示の加工ヘッドによって実施することができる。加えて、加工ヘッドは、本開示による方法を実行するように構成することができる。
【0011】
本発明によれば、少なくとも2つの光測定信号を用いて、および任意選択で、少なくとも1つの反射性参照体と加工ヘッドの端部との間のオフセットを用いて、切断ノズル等の加工ヘッドの端部と、ワークとの間の距離が決定される。これによって、ワークに対する距離の厳密で誤りのない測定が可能になる。加えて、レーザ放射を用いて切断するとき、ワークの表面に対する加工ヘッド、特にノズルまたは切断ノズルの距離は一定に保つことができる。切断中の一定の距離に起因して、加工プロセスはより安定している。
【0012】
光測定ビームおよびレーザビームの平行なまたは同軸の進行に起因して、特に長距離において、距離決定の精度も上げることができる。より長い距離では、開口部を通って斜めに放射される測定ビームが、金属シートにおける隣接した切り取られた輪郭内に当たり、このため、加工ヘッドとワーク表面との間の距離に関する情報を提供しない場合がある。同様に、開口部を通って斜めに放射された測定ビームが、詰まった切り取られた部分に当たり、このため、距離に関する誤った情報を提供する場合がある。
【0013】
これらの態様による方法およびレーザ加工システムは、以下の好ましい特徴を単独でまたは組み合わせで有することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、光測定ビームおよびレーザビームは、加工ヘッドにおいて、少なくとも開口部の領域において、互いに同軸である。この開口部の領域において、光測定ビームまたはそのビーム軸は、レーザ加工ヘッドの光軸と同軸または平行とすることができる。光測定ビームおよびレーザビームは異なる波長を有することができる。このようにして、レーザビームの反射部分は、光測定ビームの反射と区別または分離することができる。
【0015】
好ましくは、測定デバイスは、オフセットを考慮に入れて、少なくとも1つの第2の反射からの距離と、第1の反射からの距離との差に基づいて、端部とワークとの間の距離を計算するように構成される。端部は、ワークの反対にある加工ヘッドの極端部とすることができる。加工ヘッドの端部と、ワークの表面との間の距離は、いくつかの実施形態では、端部とワークの表面との間の距離が概ねゼロであるとき、加工ヘッド、例えば切断ノズルが、ワークの表面に接触し、距離がゼロよりも大きいとき、ワークの表面と接触しない(すなわち、ギャップが存在する)ように定義することができる。これにより、加工プロセス中に切断ノズルとワークとの間にギャップが存在することを確実にすることが可能になる。加えて、ノズルとワークとの間の衝突検出が可能である。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの反射性参照体は、反射面および/または反射縁部および/または反射半径を含む。特に、少なくとも1つの反射性参照体は、少なくとも1つの反射性参照体に入射する光測定ビームが反射して自身に戻ってくるように向きを付けることができる。少なくとも1つの反射性参照体は、好ましくは開口部に非常に近接して位置し、特に、開口部の円周エリア内に位置する。少なくとも1つの反射性参照体は、開口部を少なくとも部分的に、好ましくは完全に包含することができる。少なくとも1つの反射性参照体は、少なくとも1つの反射性参照体に入射する光測定ビームの定義された反射を提供し、それによって厳密な距離測定を可能にすることができる。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つの反射性参照体が、ハウジングの内面に配置されるか、またはハウジングの内面によって提供される。例えば、ハウジングの内面は、光測定ビームを反射するように構成することができる。このため、少なくとも1つの反射性参照体を、容易に、加工ヘッドに追加の構成要素を設ける必要なく、設けることができる。
【0018】
好ましくは、加工ヘッドは、少なくともハウジングの一部分を形成し、少なくとも1つの反射性参照体および/または開口部を備える、ノズル、特に切断ノズルを更に備える。例えば、少なくとも1つの反射性参照体が、開口部を含むノズルの内面に形成される。特に、少なくとも1つの反射性参照体を、開口部の円周または円周エリア上に配置することができ、開口部を少なくとも部分的に、好ましくは完全に包含することができる。少なくとも1つの反射性参照体を加工ヘッドの端部の近くに配置することによって、距離測定の精度を更に改善することができる。例えば、加工ヘッドにおける光路長変化の影響を最小限にすることができる。
【0019】
好ましくは、測定デバイスは、光干渉断層計を含む。光測定ビームは、光干渉断層撮影装置の光源によって生成することができる。光干渉断層撮影装置は、光測定ビームの第1および第2の反射の重畳を検出し、少なくとも1つの反射性参照体への距離または少なくとも1つの反射性参照体からワークへの距離を決定するように構成された検出器を備えることができる。加えて、光干渉断層撮影装置は参照アームを有することができ、検出器は、参照アームにおいて反射されたビームを用いて光測定ビームの第1および/または第2の反射の重畳を検出するように構成される。距離は、少なくとも1つの反射性参照体またはワークと、参照アームの参照点との間の反射経路長に対応することができる。
【0020】
好ましくは、光測定ビームは単一の光測定ビームであるため、いわゆる連続ビームとすることができる。光測定ビームは、好ましくは、円形ビーム断面を有する。このため、複雑なビーム形成技法等がなくても、光干渉断層撮影(OCT)による単純なプロファイルを用いて、ワークへの距離、および任意選択で更に、加工グラウンドへの距離を決定することができる。
【0021】
光測定ビームの直径は、少なくとも、加工幅、例えば、溶接幅または切り口幅よりも大きくすることができる。結果として、光測定ビームの少なくとも一部が、切り口または加工点の外側でワーク表面に当たることを確実にすることができる。例えば、単一の(連続)光測定ビームは、直径が非常に大きいため、少なくとも1つの反射性参照体およびワーク表面(および、任意選択で加工点または切り口)に当たることができる。結果として、反射性参照体およびワークの広範囲の照射を達成することができ、それによって、距離測定を容易にかつ高い信頼性で行うことができる。
【0022】
光測定ビームは、ハウジングの開口部の直径よりも大きい直径を有する連続ビームである。この場合、単純な光学設計は、反射性参照体における第1の反射、ワーク表面における第2の反射、および加工点における、例えば、加工グラウンドまたは穿刺止まり孔からの第3の反射の双方を達成することができる。換言すれば、これを用いて、加工点の環境のトポグラフィを決定することができる。代替的に、光測定ビームのビーム軸を、反射性参照体および開口部の双方に当たるように、レーザビームのビーム軸に対しオフセットすることができる。特に、光測定ビームのビーム軸は、この場合、開口部に対し偏心して配置することができるが、それにもかかわらず、レーザビームのビーム軸に平行に延びることができる。
【0024】
距離は、2つの要素間の最短接続経路を指すことができる。
【0025】
本開示の実施形態が図面に示され、以下でより詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の実施形態による、加工ヘッドを有するレーザ加工システムを示す。
【
図2】本開示の実施形態による、加工ヘッドの一部を示す。
【
図3】本開示の更なる実施形態による、加工ヘッドの一部を示す。
【
図4】レーザビームを用いたワークの加工方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、別段の記載がない限り、同様の参照番号は同様で等価な要素に対して使用される。
【0028】
図1は、本開示の実施形態によるレーザ加工システム100の概略図を示す。このレーザ加工システム100は、加工ヘッド101、例えばレーザ切断ヘッドを備える。
【0029】
レーザ加工システム100は、レーザビーム10(「加工ビーム」または「加工レーザビーム」とも称される)を提供するためのレーザ装置110と、ワーク1とノズル等の加工ヘッド101の端部との間の距離を測定するための測定デバイスとを備える。端部またはノズルは、レーザビーム10が加工ヘッド101から放射される際に通る開口部を有する。
【0030】
実施形態によれば、レーザ加工システム100、または加工ヘッド101等のその一部は、加工方向20に沿って移動可能とすることができる。加工方向20は、ワーク1に対する、加工ヘッド101等のレーザ加工システムの切断もしくは溶接方向および/または移動方向とすることができる。特に、加工方向20は水平方向とすることができる。加工方向20は、「送り方向」と呼ばれる場合もある。
【0031】
レーザ装置110は、レーザビーム10をコリメートするためのコリメータ光学系112を有することができる。加工ヘッド101内で、レーザビーム10は、適切な光学系103によってワーク1に向けて約90°偏向または反射される。光学系103、例えば半透鏡は、例えば、ワーク1から反射して戻る光が測定デバイスを通過することを可能にするように構成することができる。光測定ビームおよびレーザビームは、反射して戻る測定光のみが測定デバイスに到達するように、異なる波長を有することができる。
【0032】
測定デバイスは、光干渉断層撮影装置120を含むことができるか、または光干渉断層撮影装置120とすることができる。光干渉断層撮影装置120は、測定光を光導波路132に結合するブロードバンド光源(例えば、スーパールミネッセントダイオード(SLD))を有する評価ユニット130を含むことができる。ファイバカプラを含むことが好ましいビームスプリッター134において、測定光は、通常、参照アーム136と測定アームとに分割され、測定アームは、光導波路138を介して加工ヘッド101内につながっている。光干渉断層撮影装置120は、光測定ビーム13をコリメートするように構成されたコリメータ光学系122を更に備えることができる。コリメータ光学系122は加工ヘッド101と一体化することができる。例えば、加工ヘッド101は、加工ヘッド101と一体化されるかまたは加工ヘッド101に装着されたコリメータモジュール102を備えることができる。
【0033】
更に、レーザビーム10および/または光測定ビーム13をワーク1上に集束するように構成された集束光学系124が加工ヘッド101に設けられる。集束光学系124は、レーザビーム10および測定ビーム13のための焦点レンズ等の一般的な集束光学系とすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、レーザビーム10および光測定ビーム13は、少なくともセクションにおいて平行または更には同軸とすることができ、特に、少なくともセクションにおいて同軸に重畳することができる。例えば、光干渉断層撮影装置120は、光測定ビーム13を、レーザ装置110のビーム経路に結合するように構成することができる。光測定ビーム13およびレーザビーム10の合流は、コリメータ光学系122の下流かつ集束光学系124の上流で生じることができる。代替的に、測定ビーム13およびレーザビーム10のビーム経路は、大部分が別個にガイドされ、レーザ加工ヘッド101の開口部の上流の集束光学系124の下流でのみ合流する。レーザビーム10および測定ビーム13のビーム軸は、開口部212および端部216の付近で平行であるかまたは更には同軸であり、好ましくはワーク表面に対し直交する。
【0035】
本明細書に記載の距離測定の原理は、干渉計を用いた光のコヒーレンス特性を利用した光干渉断層撮影の原理に基づく。距離測定のために、光測定ビーム13は、ワーク1の表面上に方向付けられる。表面から反射して戻った測定光(すなわち、
図2および
図3に関して説明した反射)は、集束光学系124によって光導波路138の出口/入口面に撮像され、ファイバカプラ134において参照アーム136から反射して戻った光と重畳され、次に評価ユニット130に戻るように方向付けられる。重畳光は、参照アーム136と測定アームとの間の経路長差に関する情報を含む。この情報は評価ユニット130において評価され、それによって、ユーザは、ワークの表面と加工ヘッド101との間の距離に関する情報を得る。しかしながら、好ましくは、本開示の実施形態によれば、参照アーム136は測定デバイスにおいて提供されず、参照アーム136から反射して戻る光の代わりに、加工ヘッド101における反射性参照体において反射して戻る測定ビームの部分ビームまたは一部が、ワークから反射して戻る測定ビームの部分ビームまたは一部のための参照として用いられる。
【0036】
図2は、本開示の実施形態によるレーザ加工システムの加工ヘッドの一部を示す。
【0037】
加工ヘッドは、加工ヘッドからレーザビーム10を放射するための開口部212を有するハウジング210を備える。開口部212は、例えば、切断ノズルの開口部とすることができる。レーザ加工システムの動作中、レーザビーム10は、開口部212を通って開口部212を出て、ワーク1に当たる。ハウジング210の内側に少なくとも1つの反射性参照体214が形成される。この反射性参照体214は、例えば、測定ビーム13の一部を反射するように構成された縁部、半径、表面、切り欠き、溝等とすることができる。加工ヘッド101は、光測定ビーム13を開口部212に方向付けるように構成された測定デバイス(例えば、
図1に示す光干渉断層撮影装置120)と、少なくとも1つの反射性参照体214とを更に備える。光測定ビーム13の一部Aは、結果として、反射性参照体214において反射され、光測定ビーム13の別の部分Bが開口部212を通って加工ヘッド101から放射され、ワーク表面2において反射する。反射ビームは、参照アーム136からの光と重畳され、測定ユニットまたは評価ユニット130に戻るようにガイドされ、それによって、反射性参照体214への距離、およびワーク表面2への距離が決定され、そこから、反射性参照体214とワーク表面2との間の距離(d1+z)が決定される。しかしながら、参照アーム136は任意選択である。反射性参照体214とワーク表面2との間の距離(d1+z)を決定するために、反射ビームまたは部分ビームAおよびBのみを重畳することも可能である。
【0038】
したがって、オフセット、すなわち、レーザ加工ヘッド101の端部216またはノズルの下縁部に対する反射性参照体214の距離を考慮に入れて、ワーク表面2とレーザ加工ヘッド101との間の距離d1を決定することができる。オフセットz(「所定の距離」とも呼ばれる)は、第1の反射Aの原点を形成する反射性参照体214の点または領域と、開口部212を含むかまたはワーク1の反対側にある加工ヘッドの端部等の端部216との間で定義することができる。オフセットzは、例えば、一体形成することができるノズルの構造的設計によって決定または予め決定される実質的に固定の距離とすることができる。しかしながら、オフセットが非常に小さく、このため無視できるように、開口部212において端部216のすぐ上に反射性参照体214が配置されてもよい。
【0039】
したがって、測定デバイスまたは評価ユニット130は、少なくとも、(i)反射性参照体214からの光測定ビーム13の第1の反射A、および(ii)ワーク1からの光測定ビーム13の第2の反射Bに基づいて、端部216とワーク1との間の距離d1を決定するように構成される。加えて(必要な場合)、反射性参照体214と、加工ヘッドの端部216との間のオフセットzを考慮に入れることができる。これによって、ワーク1に対する距離の厳密で誤りのない測定が行われることが可能になる。加えて、加工プロセス中、加工ヘッドとワーク1との間の距離d1を一定に保つことができ、加工ヘッドとワーク1との間の衝突を防ぐことができる。
【0040】
測定ビームの光学経路は、中でも、測定ビームが通過する媒体の屈折率に依拠する。例えば、加工ヘッドは、例えば、加工ヘッドの保護ガラスとノズルとの間の切断ガスを充填された領域を含むことができる。切断ガスの圧力および温度は、プロセス制御に依拠して大幅に変動する場合があるため、測定ビームの光路長は、プロセスに依拠して変化する。したがって、結果として得られる光路長変化は、測定ビームおよび反射もしくは参照ビームを、同じガス充填量を通して方向付けることによって補うことができる。
【0041】
測定ビーム13は、異なるエリア、すなわち、加工ヘッド内の反射性参照体214およびワーク表面2に当たる複数の別個の部分ビームを含むことができるか、または直径が大きいため、1つの部分が反射性参照体214に当たり、別の部分がワーク表面2に当たる単一のビームを含むことができる。加えて、測定ビーム13は、加工点または切り口に当たる部分ビームまたは一部を含むことができる。測定デバイスまたは評価ユニット130は、加工深度d3、すなわち、ワーク表面2に対する反射性加工グラウンドの距離、および/または加工グラウンドと加工ヘッド101または加工ヘッド101の端部216との間の距離d2を決定することができる。ここでもまた、少なくとも1つの反射性参照体214と、加工ヘッドの端部セクション216との間のオフセットzを任意選択で考慮に入れることができる。
【0042】
図2に示す例において、異なる測定ビームが、少なくとも反射性参照体214およびワーク表面を含む異なる表面に入射する。特に、ここで光測定ビーム13は、2つ以上の部分ビームを含み、少なくとも、2つ以上の部分ビームの第1の部分ビームが、少なくとも1つの反射性参照体214に方向付けられ、少なくとも、2つ以上の部分ビームの第2の部分ビームが、開口部212に方向付けられる。測定ビーム13を異なる部分ビームに分割するために、光学素子、例えば、コリメートビームにおける光学くさび、ビームスプリッター、電気光学変調器(EOM)、音響光学変調器(AOM)、偏向ユニットまたはスキャナーを用いることができる。
【0043】
例えば、少なくとも1つの第1の部分ビームは第1の反射Aを生成することができ、少なくとも1つの第2の部分ビームは第2の反射Bを生成することができる。いくつかの第2の部分ビームは、互いに独立してワーク1の異なる領域に方向付けられる。第2の反射は、例えば、ワーク表面2からの反射Bを含むことができる。
【0044】
図3は、本開示の更なる実施形態によるレーザ加工システムの加工ヘッドの一部を示す。
図2を参照して説明される態様は、
図3に示される実施形態と類似して用いることができる。したがって、差異のみが以下で説明される。
【0045】
図3に示す例において、単一の測定ビームは、直径が大きいため、反射性参照体214、ワーク表面2および切り口3に当たる。例えば、光測定ビーム13は、ハウジング210またはノズルの開口部212の直径よりも大きな直径を有する単一の測定ビームである。
【0046】
通常、測定デバイスは、オフセットzを考慮に入れながら、第2の反射Bから決定された距離と、第1の反射Aから決定された距離との間の差に基づいて端部216とワーク1との間の距離d1を計算するように構成される。第1の反射Aおよび第2の反射Bからの距離は、測定デバイスの参照体に対して決定することができる。例えば、第1の反射Aおよび第2の反射Bからの距離は、測定デバイスの参照体に対する反射のそれぞれの経路長または経路長差を示すことができる。しかしながら、上記で説明されたように、参照アーム136における反射光等の測定デバイスの参照体は、必ずしも必要とされず、第1の反射Aおよび第2の反射Bのみから経路長差およびこのため距離(d1+z)を決定することも可能である。例示的な実施形態において、端部216とワーク表面2との間の距離d1は、第1の反射Aからの距離(および任意選択でオフセットz)を反射Bからの距離から減算することによって計算することができる。同様に、端部216と加工グラウンドとの間の距離d2は、第1の反射Aからの距離(任意選択で、オフセットzによって補正される)を、反射Cからの距離から減算することによって計算することができる。ワーク1の表面2と加工グラウンドとの間の距離d3は、例えば、反射Bからの距離を、反射Cからの距離から減算することによって計算することができる。
【0047】
端部216は、ワーク1の正反対にある加工ヘッドの極端部とすることができる。加工ヘッドの端部216とワーク1の表面2との間の距離d1は、端部216とワーク1の表面2との間の距離d1が概ねゼロであるとき、加工ヘッド、例えば切断ノズルが、ワーク1の表面と接触し、距離d1がゼロよりも大きいとき、ワーク1の表面2と接触しない(すなわち、幅d1とのギャップが存在する)ように定義することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反射性参照体214は、反射面および/または反射縁部および/または反射半径を含む(またはこれらである)。特に、反射性参照体214は、少なくとも1つの反射性参照体214に入射する測定ビーム13が反射して自身に戻ってくるように向きを付けることができる。好ましくは、反射性参照体214は、オフセットzを無視できるように、開口部212の近傍に配置される。
【0049】
通常、少なくとも1つの反射性参照体214は、加工ヘッド101もしくはハウジング210の内面に配置されるか、または加工ヘッド101もしくはハウジング210の内面によって提供される。例えば、ハウジング210の内面は、測定ビーム13を反射するように構成することができる。いくつかの実施形態では、加工ヘッドは、ハウジング210および少なくとも1つの反射性参照体214を備えるノズル、特に切断ノズルを更に備える。例えば、反射性参照体214は、開口部212を含むノズルの内面上に形成される。ノズルは、加工ヘッド101上に取り外し可能に装着することができる。
【0050】
図4は、レーザビームを用いてワークを加工するための方法400のフローチャートを示す。方法400は、本開示の加工ヘッドまたはレーザ加工システムによって実施することができる。加えて、加工ヘッドは、本開示による方法400を実行するように構成することができる。
【0051】
方法400は、ブロック410において、加工ヘッド101からレーザビームを放射するための開口部212を有するハウジング210を備えた加工ヘッド101を提供することを含む。ブロック420において、レーザビーム10は、開口部212を通じてワーク表面2上に方向付けられる。加えて、測定ビーム13は、開口部212を通じてワーク表面2上およびハウジング210における少なくとも1つの反射性参照体214上に方向付けられる。好ましくは、レーザビーム10および測定ビーム13は、それぞれの表面に同時に方向付けられる。方法は、ブロック430において、(i)反射性参照体214からの光測定ビーム13の第1の反射A、および(ii)ワーク表面2からの光測定ビームの少なくとも1つの第2の反射Bに基づいて、加工ヘッド101の端部216とワーク表面2との間の距離を決定することを更に含む。任意選択で、反射性参照体214と端部216との間のオフセットzを考慮に入れることができる。
【0052】
本発明によれば、加工ヘッドにおいて、例えば切断ヘッドのノズルにおいて、複数の光測定ビームのうちの1つまたは光測定ビームの一部が反射して信号評価ユニット内に戻る参照面、縁部または半径が存在する。複数の光測定ビームのうちの別のものまたは光測定ビームの別の部分がワーク表面に当たり、そこから同様に反射して信号評価ユニットに戻る。結果として少なくとも2つの測定信号が得られ、その差から、ノズルとワーク表面との間の距離、ワーク表面と加工面との間の距離(すなわち、加工深度)、および/またはノズルと加工グラウンドとの間の距離を計算することができる。
【0053】
これは、ワークに対する距離の厳密で誤りのない測定を可能にする。ワーク表面から反射されたビーム、および加工ヘッドの出口開口部付近の参照から反射されたビームを考慮に入れることによって、例えば、加工ヘッド内の圧力変動または光学素子の加熱に起因した屈折率変化による光路長の変化を補うことができる。レーザビームおよび測定ビームの平行な向きおよび/またはワーク表面に直交する測定ビームの向きにより、特に、ワーク表面と加工ヘッドとの間の距離が大きい場合に、距離測定の精度を更に増大させることができる。加えて、レーザ放射を用いて切断するとき、ワークの表面に対する、加工ヘッド、特にノズルまたは切断ノズルの距離を、一定に保つことができる。切断中の一定の距離に起因して、加工プロセスはより安定したものとなる。