(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】温度センサおよび温度センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01K 7/22 20060101AFI20220414BHJP
G01K 1/18 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G01K7/22 L
G01K1/18
(21)【出願番号】P 2021576540
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021038098
【審査請求日】2021-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】吉原 孝正
(72)【発明者】
【氏名】竹村 満
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219200(JP,A)
【文献】特開2012-211792(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132832(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/167903(WO,A1)
【文献】特表2016-536565(JP,A)
【文献】特開2006-234632(JP,A)
【文献】米国特許第04934831(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/22, 7/16
G01K 7/02, 7/00
G01K 1/08, 1/14, 1/18
G01K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温体と、一端が前記感温体に電気的に接続される引出線と、前記引出線の一部および前記感温体を覆う絶縁材からなる封止体と、を含む感温素子と、
前記感温素子の前記引出線の他端に電気的に接続される芯線と、前記芯線を覆う被覆とからなるリード線と、
長尺状に形成され、矩形状の横断面を呈し、前記リード線の一部および前記感温素子を覆う樹脂製の被覆体と、を備え、
前記被覆体の短手方向の寸法は、前記感温素子を覆う領域の寸法が、前記リード線を覆う領域の寸法よりも小さく設定され、かつ、前記感温素子を覆う領域の前記短手方向の寸法が、前記リード線の前記被覆の外径よりも小さく設定されている、温度センサ。
【請求項2】
感温体と、一端が前記感温体に電気的に接続される引出線と、前記引出線の一部および前記感温体を覆う絶縁材からなる封止体と、を含む感温素子と、
前記感温素子の前記引出線の他端に電気的に接続されるリード線と、
長尺状に形成され、矩形状の横断面を呈し、前記リード線の一部および前記感温素子を
封入する樹脂製の被覆体と、を備え、
前記被覆体は、前記感温素子を覆
い直方体状
に成形された感温素子被覆領域と、前記リード線を覆
い直方体状
に成形された電線被覆領域と、を含み、
前記
感温素子被覆領域の短手方向の寸法は
、前記
電線被覆領域の短手方向の寸法よりも小さく設定されている、温度センサ。
【請求項3】
前記短手方向は、前記矩形状の横断面における第1の方向、および前記第1の方向に対して直交する第2の方向の少なくとも一方である、
請求項1
または2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記矩形状の横断面における第1の方向は、前記感温素子を覆う前記領域の寸法が、前記リード線を覆う前記領域の寸法よりも小さく設定され、かつ、前記矩形状の横断面において前記第1の方向に対して直交する第2の方向は、前記感温素子を覆う前記領域の寸法が、前記リード線を覆う前記領域の寸法よりも小さく設定されている、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記感温素子は、前記感温体から一対の前記引出線が一方側に引き出されて構成され、
前記感温素子を覆う前記領域には、前記封止体が配置され、
前記リード線を覆う前記領域には、前記引出線と前記リード線との接合部分が配置されている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記感温素子を覆う前記領域および前記リード線を覆う前記領域のいずれも、前記矩形状の横断面を呈し、かつ、それぞれの横断面の中心が一致している、
請求項
5に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記感温素子を覆う前記領域における前記短手方向の寸法は、前記被覆体の端部に向かうにつれて減少している、
請求項
5または
6に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記被覆体は、熱収縮性を有するフッ素樹脂から形成されている、
請求項1から7のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項9】
感温体を含む感温素子と、前記感温素子に接続される一対のリード線と、前記一対のリード線のそれぞれの一部および前記感温素子を覆う樹脂製の長尺状の被覆体と、を備える温度センサを製造する方法であって、
前記一対のリード線は、前記感温体から引き出される方向に対して直交する方向に並べて配置され、
前記方法は、
樹脂製の素材の内側に、前記一対のリード線のそれぞれの前記一部および前記感温素子を収容する収容ステップと、
前記素材を加熱する加熱ステップと、
前記素材を加圧して成形する加圧成形ステップと、を含み、
前記加圧成形ステップにおいては、
加圧により、前記素材における前記感温素子側を前記リード線側に対してより大きな変形量で変形させることで、少なくとも前記感温素子を覆う領域の横断面を前記一対のリード線が長辺方向に並ぶ矩形状に形成しつつ、前記被覆体の前記長辺方向の寸法として、前記感温素子を覆う前記領域の寸法を、前記リード線を覆う領域の寸法よりも小さく設定する、温度センサの製造方法。
【請求項10】
感温体を含む感温素子と、前記感温素子に接続されるリード線と、前記リード線の一部および前記感温素子を覆う樹脂製の長尺状の被覆体と、を備える温度センサを製造する方法であって、
樹脂製の素材の内側に、前記リード線の前記一部および前記感温素子を収容する収容ステップと、
前記素材を加熱する加熱ステップと、
前記素材を加圧して矩形状の横断面を呈する形状に成形する加圧成形ステップと、を含み、
前記加圧成形ステップにおいては、
加圧により、前記素材における前記感温素子側を前記リード線側に対してより大きな変形量で変形させることで、前記感温素子を覆う領域および前記リード線を覆う領域のいずれも直方体状に形成しつつ、前記被覆体の短手方向の寸法として、前記感温素子を覆う前記領域の寸法を、前記リード線を覆う前記領域の寸法よりも小さく設定する、温度センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーミスタ等の感温素子を備えた温度センサが広く使用されている(例えば、特許文献1)。周囲環境等から感温素子を保護するために、感温素子と、感温素子に接続されたリード線の所定範囲には、樹脂材料からなる被覆体が設けられている。
【0003】
特許文献1の温度センサは、内層と、内層よりも融点が高く、かつ熱収縮性を有する外層との二層から直方体状に成形された被覆体を備えている。かかる被覆体は、感温素子を収容する内側チューブと、内側チューブに外挿される外側チューブとから、例えば、加熱処理およびプレス加工を経て、リード線を被覆体に収めることが可能な一定の厚さに成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搭載される機器の高性能化に伴い、温度センサの性能改善が常に要求されている。感温素子と、リード線の所定範囲とを覆う被覆体は、温度センサの応答性に影響を与える。特に小型の温度センサにおいては、被覆体が応答性に与える影響が大きい。
そこで、本発明は、さらなる応答性向上を図ることが可能な温度センサおよびその製造方法を提供することを第1の目的とする。
また、温度センサの厚さはリード線の径を基準として決まるので、温度センサが設置される対象の形状や寸法によっては、設置が難しい。したがって、本発明は、第1の目的と併せて、あるいは第1の目的に代えて、設置の自由度を向上させることが可能な温度センサおよびその製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の温度センサは、感温体と、一端が感温体に電気的に接続される引出線と、引出線の一部および感温体を覆う絶縁材からなる封止体と、を含む感温素子と、感温素子の引出線の他端に電気的に接続されるリード線と、長尺状であって、矩形状の横断面を呈し、リード線の一部および感温素子を覆う樹脂製の被覆体と、を備える。被覆体の短手方向の寸法は、感温素子を覆う領域の寸法が、リード線を覆う領域の寸法よりも小さく設定されている。
【0007】
本発明の温度センサにおいて、リード線は、引出線に接続される芯線と、芯線を覆う被覆と、を有し、被覆体は、感温素子を覆う領域の短手方向の寸法が、リード線の被覆の外径よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0008】
本発明の温度センサにおいて、短手方向は、矩形状の横断面における第1の方向、および第1の方向に対して直交する第2の方向の少なくとも一方であることが好ましい。
【0009】
本発明の温度センサにおいて、感温素子を覆う領域、およびリード線を覆う領域のうちいずれか一方は、直方体状に形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の温度センサにおいて、矩形状の横断面における第1の方向は、感温素子を覆う領域の寸法が、リード線を覆う領域の寸法よりも小さく設定され、かつ、矩形状の横断面において第1の方向に対して直交する第2の方向は、感温素子を覆う領域の寸法が、リード線を覆う領域の寸法よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0011】
本発明の温度センサにおいて、感温素子は、感温体から一対の引出線が一方側に引き出されて構成され、感温素子を覆う領域には、封止体が配置され、リード線を覆う領域には、引出線とリード線との接合部分が配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明の温度センサにおいて、感温素子を覆う領域およびリード線を覆う領域のいずれも、矩形状の横断面を呈し、かつ、それぞれの横断面の中心が一致していることが好ましい。
【0013】
本発明の温度センサにおいて、感温素子を覆う領域における短手方向の寸法は、被覆体の端部に向かうにつれて減少していることが好ましい。
【0014】
また、本発明の温度センサにおいて、感温体を含む感温素子と、感温素子に接続されるリード線と、リード線の一部および感温素子を覆う樹脂製の長尺状の被覆体と、を備える温度センサを製造する方法である。
かかる製造方法は、樹脂製の素材の内側に、リード線の一部および感温素子を収容する収容ステップと、素材を加熱する加熱ステップと、素材を加圧して矩形状の横断面を呈する形状に成形する加圧成形ステップと、を含む。
加圧成形ステップにおいては、加圧により、素材における感温素子側をリード線側に対してより大きな変形量で変形させることで、被覆体の短手方向の寸法として、感温素子を覆う領域の寸法を、リード線を覆う領域の寸法よりも小さく設定する。
【発明の効果】
【0015】
被覆体の短手方向の寸法は、感温素子を覆う領域の寸法が、リード線を覆う領域の寸法よりも小さく設定されていることにより、例えば、狭隘な溝等の設置箇所の形状、寸法に応じて、感温素子側における被覆体の厚さをリード線の外径には関係なく、適宜に設定することができる。そのため、温度センサの設置自由度を向上させることが可能となる。
【0016】
加えて、感温素子側における被覆体の短手方向の寸法が、リード線の被覆の外径を基準として決まるリード線側の被覆体の短手方向の寸法よりも小さいならば、全長に亘り、リード線の外径を基準として被覆体に一定の寸法が与えられる場合や、感温素子側の被覆体の寸法がリード線側の被覆体の寸法よりも大きい場合と比べ、被覆体の熱容量が小さく、かつ、被覆体が配置される温度測定の対象物と感温体との間の被覆体の肉厚が薄い。そのため、対象物の温度変化を感温体により感度良く検知することができるので、温度センサとしての応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る温度センサを示す図である。(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のIc方向から示す図である。
【
図2】(a)は、
図1(b)のIIa-IIa断面図である。(b)は、
図1(a)のIIb-IIb断面図である。
【
図3】(a)~(c)は、温度センサを製造する工程を説明するための図である。
【
図4】(a)は、温度センサの製造に用いられる金型の断面図である。(b)および(c)は、製造過程におけるチューブの形状の変化を示す断面図である。
【
図5】被覆体の素材の改良例として、内層と外層との二層構造のチューブを示す図である。
【
図6】(a)および(b)は、本発明の変形例に係る温度センサを示す図である。(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図7】(a)~(c)はそれぞれ、本発明の他の変形例に係る被覆体の側面図である。
【
図8】(a)および(b)はそれぞれ、本発明の他の変形例に係る被覆体を前方から示す図である。
【
図9】(a)および(b)は、本発明の他の変形例に係る温度センサを示す図である。(a)は平面図であり、(b)は、側面図である。
【
図10】(a)および(b)は、
図4(c)に示す加圧処理とは異なる加圧処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔実施形態〕
まず、
図1および
図2に示す温度センサ1の構成を説明する。
温度センサ1は、感温体11を含む感温素子10と、感温素子10に接続されるリード線15と、リード線15の一部および感温素子10に設けられる長尺状の被覆体20とを備えている。被覆体20は、樹脂製の成形体であり、矩形状の横断面を呈する。温度センサ1は、種々の対象物3に配置されて温度計測に供される。本実施形態は、小型でありながら、応答性がより向上した温度センサ1を提供する。
【0019】
本明細書において、感温素子10からリード線15が引き出される方向をx方向(引出方向)と定義する。また、本実施形態の温度センサ1における感温素子側を「前側」と定義し、温度センサ1におけるリード線15側を「後側」と定義する。x方向(引出方向)は前後方向に相当する。
図1等において、前側をFで示し、後側をRで示す。
被覆体20の長手方向は、x方向に相当する。被覆体20の短手方向は、x方向に対して直交するy方向およびz方向の少なくとも一方に相当する。
【0020】
本実施形態の温度センサ1の平面視(
図1(a))においては、2つのリード線15が配置されている。それに対し、温度センサ1の側面視(
図1(b))においては、1つのリード線15が配置されている。温度センサ1の平面視において2つのリード線15が並ぶ方向をy方向(幅方向)と定義し、x方向とy方向との両方に対して直交する方向をz方向(厚さ方向)と定義する。被覆体20の矩形状の横断面における第1の方向は、z方向(厚さ方向)に相当し、第1の方向に対して直交する第2の方向は、y方向(幅方向)に相当する。
【0021】
そして、y方向における寸法を「幅」と定義し、z方向における寸法を「厚さ」と定義する。
本実施形態の温度センサ1は、被覆体20の短手方向の寸法として、感温素子10を覆う感温素子被覆領域21の寸法が、リード線15を覆う電線被覆領域22の寸法よりも小さいことを主な特徴としている(
図1(a)および(b)参照)。
【0022】
(感温素子)
感温素子10は、
図1および
図2に示すように、感温体11と、一端が感温体11に電気的に接続される引出線121と、引出線121の一部および感温体11を覆う絶縁材からなる封止体122とを備えている。
感温体11は、電気抵抗に温度特性を有しており、例えば、サーミスタである。感温体11の図示しない電極には、一対の引出線121が接続され、いずれも感温体11から後方へ引き出されている。引出線121は、例えば、デュメット線(dumet wire)である。一対の引出線121は、感温体11を封止するガラス等の絶縁材からなる封止体122の外側に引き出されている。感温体11は、引出線121およびリード線15により図示しない温度計測回路に接続される。感温素子10および温度計測回路により、感温体11が配置された対象物3の温度を計測することができる。
【0023】
一対のリード線15はそれぞれ、撚線等である芯線15Aと、芯線15Aを覆う絶縁被覆15Bとを含む。芯線15Aは、引出線121に溶接等により接合されている。絶縁被覆15Bは、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成されている。
リード線15は、必要に応じて他の電線を介して、図示しない温度計測回路に接続される。
【0024】
図1および
図2に示す接合部分13は、リード線15の芯線15Aと、引出線121とが接合される箇所として模式的に示されている。リード線15の芯線15Aと、引出線121とは、例えば、レーザ溶接、抵抗溶接等の溶接、あるいははんだ付けにより接合される。リード線15の芯線15Aと引出線121とは、圧着端子を用いて接続することもできる。
【0025】
(被覆体)
被覆体20は、リード線15の一部と、感温素子10とを覆い、周囲環境、外力等から感温素子10およびリード線15を保護する。感温素子10は、被覆体20に封入されるから、被覆体20を介して対象物3に配置される。
被覆体20により覆われる感温素子10の被覆範囲14には、感温素子10の全体と、一対のリード線15において少なくとも芯線15Aが絶縁被覆15Bから露出した部分とが含まれている。
【0026】
被覆体20の前端20Fは、感温素子10の前端10Fよりも前方に位置している。被覆体20の後端20Rは、絶縁被覆15Bの前端よりも後方に位置している。
本実施形態の被覆体20のx方向の寸法(長さ)は、y方向の寸法(幅)およびz方向の寸法(厚さ)のいずれに対しても長い。それに限らず、被覆体20は、例えば、長さと比べて幅が大きくてもよい。
【0027】
被覆体20は、感温素子10を覆う直方体状の感温素子被覆領域21と、リード線15を覆う直方体状の電線被覆領域22とを備えている。感温素子被覆領域21および電線被覆領域22は、一体に形成されている。
被覆体20は、PTFE、あるいは、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂から形成されており、熱収縮性を有する。
【0028】
感温素子被覆領域21は、感温体11の外形の寸法d1を基準として、感温体11の全体の被覆に足りる厚さt1に設定されている。
電線被覆領域22は、単一のリード線15の最大外径、つまり単一の絶縁被覆15Bの外径d2を基準として、絶縁被覆15Bの全周に亘る被覆に足りる厚さt2に設定されている。被覆体20の内径は、絶縁被覆15Bの外径に近づけて設定される。
【0029】
感温素子被覆領域21の厚さt1は、電線被覆領域22の厚さt2よりも薄く設定されている。これは、感温素子被覆領域21および電線被覆領域22のそれぞれが基準とする物の寸法の相違に基づく。つまり、感温体11の外形寸法d1は、絶縁被覆15Bの外径d2よりも小さいので、厚さt1は厚さt2よりも薄くなっている。
加えて、本実施形態の感温体11の外形寸法d1が絶縁被覆15Bの外径d2に対して十分に小さいことから、感温体11の外形寸法d1に対して樹脂部分の肉厚を加えた感温素子被覆領域21全体の厚さt1は、絶縁被覆15Bの外径d2と比べても薄くなっている。
【0030】
本実施形態の引出線121の径は、感温体11の外形寸法d1よりも小さく設定されている。感温素子被覆領域21と電線被覆領域22との境界Bは、例えば、引出線121が感温体11から接合部分13まで延びている区間に設定することができる。
感温素子被覆領域21には、少なくとも感温体11および封止体122が含まれている。電線被覆領域22には、少なくとも接合部分13および絶縁被覆15Bの端部が含まれている。感温素子被覆領域21よりも厚い電線被覆領域22に接合部分13が含まれていることによれば、接合手段を選ばずに、溶接部やはんだ、圧着端子等を樹脂に封入することができる。
【0031】
感温素子被覆領域21および電線被覆領域22は、厚さt1,t2が相違することに加え、それぞれの幅も相違している。感温体11の幅は、y方向に並ぶ一対のリード線15のそれぞれの幅の合計よりも小さい。そのため、感温体11の幅を基準とする感温素子被覆領域21の幅w1は、一対のリード線15の全体の幅を基準とする電線被覆領域22の幅w2よりも狭く設定されている。
【0032】
図1(c)に示すように、感温素子被覆領域21の矩形状の横断面の中心X1と、電線被覆領域22の矩形状の横断面の中心X2とは一致している。このとき、温度センサ1の側面視において(
図1(b))一対のリード線15のそれぞれは感温素子10から直線的に後方へ引き出されており、かつ、温度センサ1の平面視において(
図1(a))、感温体11を通りx方向に延びる中心線に対して対称に配置されている。
【0033】
(温度センサの製造方法)
図3および
図4を参照しながら、温度センサ1を製造する手順の一例を説明する。
本実施形態の温度センサ1は、感温素子被覆領域21および電線被覆領域22のそれぞれの外形の寸法が相違しているものの、感温素子10側とリード線15側とに亘り連続して配置される径が一定の単一のチューブ4を使用して製造することができる。
【0034】
予め、感温体11の封止体122から引き出された引出線121にリード線15の芯線15Aを接合しておく(リード線接合ステップS00)。
以下、感温素子10と、円筒状のチューブ4とを用意して行われる製造工程を説明する。
【0035】
まず、
図3(a)に示すように、チューブ4の内側に感温素子10を感温体11側から挿入することにより、チューブ4の内側に感温素子10と、リード線15の一部とを収容する(感温素子収容ステップS01)。このとき、チューブ4の内側には、感温素子10の前端10Fから絶縁被覆15Bの前端を含む被覆範囲14が配置される。
【0036】
次に、
図3(b)に示すように、チューブ4に外側から熱Hを加えて所定の温度に加熱する(加熱ステップS02)。チューブ4を加熱する方法としては、例えば、ヒートガンでホットエアをチューブ4に吹き付けたり、電気炉にチューブ4および被覆範囲14を入れたりするとよい。
このとき、チューブ4は、熱収縮に必要な温度であって、融点未満の温度にまで加熱されて熱収縮する。例えば、チューブ4がPTFEからなる場合は、PTFEの融点である327℃に近い温度、例えば、380℃にまでチューブ4を加熱する。
チューブ4は、加熱により軟化して熱収縮することで径が縮小する。径が一定のチューブ4は、全長に亘り、材料に応じた所定の比率で収縮する。このとき、感温素子10とリード線15とのそれぞれの外形寸法の相違より、チューブ4の内側は、リード線15には密着したとしても、感温素子10には必ずしも密着しない。
【0037】
加熱処理に続き、
図3(c)に示すように、チューブ4が軟化している状態でチューブ4に外側から圧力Pを加えることにより、チューブ4を被覆体20の形状に成形する(加圧成形ステップS03)。例えば、
図4(a)~(c)に示す金型5を用いた加圧処理としてのプレス加工により、チューブ4および被覆範囲14の横断面は、略円形の状態から、矩形状の状態に変化する。そして、金型5等への放熱により樹脂が硬化することで、被覆体20が成形される。
【0038】
図4(a)~(c)は、金型5の一例を模式的に示している。
下型51および上型52には、感温素子被覆領域21と電線被覆領域22との厚さの相違に対応するz方向の段差502,503や、感温素子被覆領域21と電線被覆領域22との幅の相違に対応するy方向の図示しない段差が形成されている。
下型51および上型52の間には、横断面の一例を
図4(c)に示すように、被覆体20の外形に対応する形状のキャビティ50が形成される。
【0039】
加圧処理により、チューブ4は、感温素子10側ではリード線15側と比べてz方向とy方向とに強く加圧されて圧縮変形する。感温素子10側とリード線15側とのそれぞれにおけるz方向への変形量が異なることで、相対的に薄い感温素子被覆領域21と、相対的に厚い電線被覆領域22とが成形される。幅に関しても、感温素子10側とリード線15側とのそれぞれにおけるy方向への変形量が異なることで、相対的に狭い感温素子被覆領域21と、相対的に広い電線被覆領域22とが成形される。
【0040】
金型5によりチューブ4に加えられる圧力Pの大きさの調整により、および、同一圧力に対して感温素子被覆領域21や電線被覆領域22のそれぞれの厚さや幅の設計値を調整することにより、チューブ4における感温素子被覆領域21および電線被覆領域22のそれぞれに対応する部位の変形量を調整して、感温素子10およびリード線15をそれぞれ包む樹脂の肉厚を調整することができる。例えば、封止体122の最大寸法の位置における感温素子被覆領域21のz方向の肉厚tt1(
図1(b))と、絶縁被覆15Bの位置における電線被覆領域22のz方向の肉厚tt2(
図1(b))とを同等に設定することができる。
【0041】
加熱処理によるチューブ4の熱収縮だけではチューブ4が感温素子10に密着しない場合であっても、加圧処理により感温素子10側でより強く加圧されることによってチューブ4の内側を感温素子10に密着させることができる。また、加圧処理によりチューブ4の樹脂を一対の引出線121間および一対の芯線15A間に充填することができるので、絶縁確保および機械的保持に寄与することができる。そのため、引出線121を絶縁材料からなるシースに通したり、接合部分13に絶縁被膜を施したりする必要はない。
【0042】
加圧処理によりチューブ4の前端4Fおよび後端4Bに移動した樹脂は、金型5の内壁501と、図示しない金型の壁とにより成形されてx方向の端面201,202をなす。そのため、加熱処理によるチューブ4の熱収縮だけではチューブ4の前端4Fおよび後端4Bのそれぞれの開口が十分に塞がれていない場合であっても、チューブ4の両方の開口を密閉して、チューブ4の内側に温度センサ1の被覆範囲14を気密・水密に封入することができる。特に、より強く加圧される感温素子10側から前方へ移動する樹脂により、チューブ4の前端の開口を確実に密閉することができる。
【0043】
仮に射出成形により被覆体20を成形しようとすると、高温・高圧の金型内部で感温素子が激しく動いてしまう。これに対し、チューブ4の内側に感温素子10を配置し、チューブ4を加熱した後に加圧する本実施形態の製法によれば、射出成形時のようには感温素子10が動くことなく、感温素子10の損傷を避けて、歩留まりよく温度センサを製造することができる。
【0044】
加圧処理を終えたならば、金型5から、被覆体20を備えた温度センサ1を取り出す(製品取り出しステップ)。
以上のステップを経て製造された温度センサ1は、例えば、温度計測の対象物3の平坦な表面に感温素子被覆領域21の平坦な表面21Sが接触するように、適宜な支持部材に取り付けることができる。感温素子被覆領域21の表面21Sを対象物3の表面に倣わせて面接触させることが可能である。
【0045】
感温素子被覆領域21および電線被覆領域22のそれぞれの厚さt1,t2の相違により、感温素子被覆領域21のz方向の剛性は、電線被覆領域22のz方向の剛性と比べて小さい。そのため、温度センサ1を対象物3に設置する際に、感温素子被覆領域21をz方向に変形させて、対象物3に対して十分に面接触させることができる。
また、感温素子被覆領域21の幅w1と厚さt1との相違より、感温素子被覆領域21のz方向の剛性と比べてy方向の剛性が大きい。そのため、y方向に感温素子被覆領域21が変形することによる対象物3との位置ずれを抑えることができる。感温素子被覆領域21は、対象物3と、z方向において対象物3に対向する図示しない部材との間に挟まれていたり、図示しないバネ等の押圧手段により対象物3に対してz方向に押圧されていたりすると、z方向には変形し難い。具体的な対象物3としては、例えば、車両に装備されるモータのステータコイルである。その場合は、交差し合うコイル素線の間に挿入された感温素子被覆領域21がコイル素線間に押圧されることで、z方向に位置決めされる。その他、対象物3は、車載バッテリの電線や、車載機器のバスバー等であってもよい。
【0046】
(本実施形態による主な効果)
以上で説明した本実施形態の温度センサ1によれば、感温素子被覆領域21の厚さt1が、電線被覆領域22の厚さt2よりも薄い。そのため、感温素子10側からリード線15側に亘り、リード線15の外径を基準とする一定の厚さが与えられた被覆体と比較すると、被覆体20の熱容量が小さく、かつ、感温体11と対象物3との間の被覆体20の肉厚が薄くなっている。そうすると、対象物3から感温体11へと熱が迅速に伝導するため、対象物3の温度変化を感温体11により感度良く検知することができる。つまり、温度センサ1としての応答性を向上させることができる。
また、本実施形態の被覆体20は、感温素子被覆領域21の幅が電線被覆領域22の幅と比べて狭い分、幅が一定の被覆体と比べて熱容量が小さい点でも、応答性向上に寄与することができる。
【0047】
温度センサ1は、チューブ4に対する加熱処理および加圧処理を経ることで製造される。そのため、チューブ4の熱収縮に加えてチューブ4の圧縮変形により、一定の径のチューブ4を使用していても、感温素子10側とリード線15側とで厚さの異なる被覆体20を容易に成形することができる。
被覆体20を径の異なる2つのチューブから形成することも可能であるが、その場合は、感温素子10を細いチューブに通し、リード線15を太いチューブに通す必要があるため製造工程が複雑となる上、細いチューブと太いチューブとの間の封止や、細いチューブの内側に配置された電線間への樹脂の充填が必ずしも十分には行われない可能性がある。本実施形態のように、感温素子10側とリード線15側とに亘り連続して配置される単一部材としてのチューブ4が用いられることで、感温素子10およびリード線15の被覆範囲14の全体を被覆体20に確実に封入することができる。
チューブ4を用いる本実施形態の製法によれば、部品点数の減少および製造工程の簡素化により製造コストを抑えつつ、耐性を備えた安定した品質の温度センサ1を提供することができる。
【0048】
また、感温素子被覆領域21の厚さt1が電線被覆領域22の厚さt2よりも薄いことによれば、狭隘な箇所へも感温素子10を配置することが可能となるから、温度センサ1の設置の自由度を向上させることができる。
【0049】
感温素子被覆領域21の表面21Sが平坦に形成されているため、例えば感温素子被覆領域の円弧状の表面が平坦な対象物3の表面に線接触する場合とは異なり、対象物3の平坦な表面に感温素子被覆領域21を安定して面接触させることができる。そのため、温度センサ1の温度計測特性がばらつくことなく、温度センサ1を対象物3に容易に配置することができる。
また、感温素子被覆領域21と対象物3とが面接触している領域に亘り対象物3から熱を受け取って感温体11へと伝導させることができる。そのため、感温素子被覆領域21の表面が対象物3の表面に線接触する場合に対する受熱量の増加により、温度センサ1の計測精度の向上に寄与することができる。
【0050】
感温素子被覆領域21の幅が、電線被覆領域22の幅よりも狭いことによれば、幅が狭い箇所にも温度センサ1を設置することができる。加えて、感温素子被覆領域21の幅が狭いことで、被覆体20の熱容量を下げることができるから、応答性向上に寄与することができる。
【0051】
感温素子10およびチューブ4から、上述の製法により本実施形態の温度センサ1を製造し、熱時定数を測定した例を示す。
測定例1:
測定例1に係る温度センサ1の熱時定数(63.2%応答)は、複数回の測定値の平均値として、約3.2秒であった。これに対して、測定例1の感温素子10およびリード線15とそれぞれ同じ感温素子およびリード線と、それらを覆う被覆体とを備えた株式会社芝浦電子製の比較例1の温度センサの熱時定数は、約4秒である。比較例1の被覆体は、感温素子側からリード線側までに亘り、厚さおよび幅が一定に形成されている。
なお、測定例1および比較例1のいずれも、測定の条件は、室温下に置かれた温度センサを、80℃に加熱され撹拌されている水中に入れ、温度測定値を継続的に取得する、というものである。
【0052】
測定例2:
測定例2に係る温度センサ1は、測定例1に係る温度センサ1の感温素子10と比べてより小型の感温素子10を備えている。測定例2の温度センサ1の熱時定数(63.2%応答)は、複数回の測定値の平均値として、約1.8秒であった。これに対して、測定例2の感温素子10およびリード線15とそれぞれ同じ感温素子およびリード線と、それらを覆う被覆体とを備えた株式会社芝浦電子製の比較例2の温度センサの熱時定数は、約2秒である。比較例2の被覆体は、感温素子側からリード線側までに亘り、厚さおよび幅が一定に形成されている。
測定例2および比較例2のいずれも、測定の条件は、上記と同様である。
【0053】
(製造に用いるチューブの改良例)
被覆体20を形成する素材としてのチューブ4は、特許第5830636号公報に開示されるが如く、内層と、内層よりも融点が高く、かつ熱収縮性を有する外層との二層構造であってもよい。
図5は、内層である内層チューブ61と、外層である外層チューブ62とを備えた二層構造のチューブ6を示している。内層チューブ61は、例えばPFAからなる。内層チューブ61の外径に対応する内径を有した外層チューブ62は、例えば、PTFEからなる。
製造過程における加熱処理として、PFAの融点(302~310℃)と、PTFEの融点(327℃)との間の温度、例えば315℃まで外層チューブ62および内層チューブ61を加熱すると、内層チューブ61は熱収縮するも溶融状態に至り、外層チューブ62は溶融しないで熱収縮する。
【0054】
内層チューブ61の内径および外径は、内層チューブ61の溶融、凝固後に感温素子10およびリード線15の被覆範囲14が封入されるように設定される。外層チューブ62の内径および外径は、熱収縮による加圧力が溶融状態の内層チューブ61に及ぶように設定される。
【0055】
加熱処理により溶融した内層チューブ61の樹脂は、外層チューブ62の熱収縮と、プレス加工とにより押圧されることで、引出線121間や、接合部分13の隙間に十分に入り込む。
溶融した内層チューブ61の樹脂は、加圧工程における放熱により、引出線121間や接合部分13に隙間なく入り込んだ状態で凝固する。そのため、内層チューブ61により、感温素子10の前端10Fから接合部分13までに亘り感温素子10がより十分に封止されるとともに、電線間の絶縁がより十分に確保される。
また、溶融した内層チューブ61の樹脂が金型のキャビティにおいて横断面が矩形状の状態に凝固するのに伴い、外層チューブ62は、内層チューブ61に隙間なく接合されるとともに、内層チューブ61により内側から拘束されて矩形状に維持される。そのため、チューブ61,62間が封止されるとともに、成形された被覆体20の表面をプレス加工後にも平坦に保つことができる。
【0056】
〔変形例〕
以下、本発明の種々の変形例を説明する。上記実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。
【0057】
(被覆体の変形例)
図6(a)および(b)に示すように、被覆体20-1の幅が、感温素子10側とリード線15側とに亘り一定の幅に設定されていてもよい。感温素子被覆領域21-1の幅w1-1は、電線被覆領域22の幅w2と同一である。この点を除いて、温度センサ7は、上記実施形態の温度センサ1と同様に構成されている。
温度センサ7は、上記実施形態の手順と同様に、加熱処置、および被覆体20-1の形状に対応する金型を用いたプレス加工を経ることによって製造することができる。
【0058】
図6(a)~(c)に示す構成によれば、上記実施形態のように感温素子被覆領域21の幅w1が電線被覆領域22の幅w2よりも狭い場合に比べ、対象物3の表面に対する被覆体20-1の接触面積を拡大することができる。そうすると、対象物3から被覆体20-1への受熱面積の拡大により計測精度をより向上させることができる。
加えて、上記実施形態と同様に、感温素子被覆領域21-1の厚さt1が電線被覆領域22の厚さt2よりも薄いことにより、応答性を向上させることができる。
【0059】
上記実施形態の被覆体20は、例えば、
図7(a)~(c)に示すように、少なくとも感温素子被覆領域21において、被覆体20の端部(前端20F)に向かうにつれて漸次厚さが減少するテーパ状の領域(テーパ部23)を備えていてもよい。
テーパ部23を備えた被覆体20は、テーパ部23に対応する形状の金型およびチューブ4を使用して、上記実施形態と同様の手順により成形することができる。
被覆体20がテーパ部23を備えることによれば、被覆体20の前端側が特に薄いため、例えば、狭隘な溝等に前端側を挿入して温度センサを対象物3に容易に設置することができる。また、テーパ部23における厚さの減少により、厚さが一定の被覆体20に対して熱容量が減少するので、応答性向上に寄与することができる。
【0060】
テーパ部23は、上記変形例の被覆体20-1(
図6)にも採用することができる。
【0061】
図示を省略するが、上記実施形態の被覆体20、あるいは上記変形例の被覆体20-1は、少なくとも感温素子被覆領域21において、前端20Fに向かうにつれて漸次幅が減少する部分を備えていてもよい。当該部分は、幅の減少に加えて厚さが漸次減少する領域であってもよい。
【0062】
以上で説明した実施形態および変形例より、狭隘な溝、あるいは広い間隙等の設置箇所の形状に応じて、感温素子10側における被覆体の厚さをリード線15の外径には関係なく、適宜に設定することができる。そのため、温度センサの設置自由度を向上させることが可能となる。
【0063】
その他、設置箇所の形状等に応じて、被覆体の形状を適宜に改変することができる。例えば、
図8(a)に示すように、電線被覆領域22の厚さよりも薄い感温素子被覆領域21が、電線被覆領域22に対してz方向にシフトして配置されていてもよい。感温素子被覆領域21の位置は、電線被覆領域22に対して、
図8(a)に示す向きとは逆向きにシフトしていても構わない。
感温素子被覆領域21と電線被覆領域22とがシフトして配置される場合は、感温素子被覆領域21と電線被覆領域22とを面一に配置することができる。
【0064】
感温素子被覆領域21と電線被覆領域22とのシフトに伴い、感温体11の位置とリード線15の位置とがz方向にシフトする。プレス加工時において、引出線121は、感温体11とリード線15との相対位置に追従して変位する。そのため、引出線121は、
図8(a)の紙面に対して直交する線に対してz方向に傾斜して延びている。
【0065】
図8(b)に示すように、感温素子被覆領域21が電線被覆領域22に対してy方向にシフトしていてもよい。図示を省略するが、感温素子被覆領域21が電線被覆領域22に対してz方向にシフトし、かつy方向にシフトしていてもよい。
【0066】
図9(a)および(b)に示す被覆体20-3は、感温体11から両側に、互いに逆向きに引き出された一対の引出線121を含む感温素子10-2と、引出線121にそれぞれ接続された一対のリード線15とに設けられている。被覆体20-3は、感温素子10を被覆する直方体状の感温素子被覆領域21-3と、リード線15を被覆する一対の直方体状の電線被覆領域22-3とを備えている。電線被覆領域22-3は、感温素子被覆領域21-3のx方向の両端に連続している。感温素子被覆領域21-3の厚さt1は、電線被覆領域22-3の厚さt2よりも薄い。また、感温素子被覆領域21-3の幅w1は、電線被覆領域22-3の幅w2よりも狭い。
上記実施形態と同様に、感温素子10側における樹脂層の厚さが薄く、対象物3から感温体11までの距離が近いので、対象物3の温度変化に対する応答性を向上させることができる。
【0067】
(加圧処理の変形例)
プレス加工に用いられる金型は、必ずしも、上記実施形態の金型5のようにチューブ4を上下方向(z方向)および左右方向(y方向)の4方向から加圧する必要はない。例えば
図10(a)に示すように、略板状の下型51-1と、上型52-1との間にチューブ4を加圧するとよい。下型51-1および上型52-1のいずれにも、感温素子10側とリード線15側とにおける被覆体20の厚さの相違に対応する図示しない段差が形成されている。
【0068】
プレス加工に限らず、例えば、
図10(b)に示すように、ロール成形装置80を用いることによっても、感温素子10側の厚さとリード線15側の厚さとが異なる被覆体20を得ることができる。
例えば、厚さt2に対応する間隔に配置された一対のロール81の間に、感温素子10とリード線15の一部とを収容した被覆体20の素材を通し、一対のロール81により加圧すると、厚さt2にまで圧縮変形した中間素材4Mが得られる。中間素材4Mの感温素子10側を厚さt1に対応する間隔に配置された一対のロール82の間にy方向から通して加圧すると、厚さt1の感温素子被覆領域21と厚さt2の電線被覆領域22とを備えた被覆体を得ることができる。ロール82の軸方向の寸法は、感温素子被覆領域21のx方向の長さに相当する。
【0069】
図10(a)および(b)の加圧方法に対して、上記実施形態は、金型5(
図4)により被覆体20の素材であるチューブ4を上下左右の4方向から加圧することができるので、引出線121間および接合部分13へと樹脂を充填することに優れている。
【0070】
〔被覆体の素材の変形例〕
被覆体20等の素材として用いられるチューブ4(
図3)は、必ずしも熱収縮性を有している必要はない。例えば、加熱により軟化しつつ膨張したチューブをプレス加工等により加圧することで、被覆体20等を成形することが可能である。
被覆体20は、複数の(例えば3つ以上の)PTFEのシートからなる積層体をプレス加工することで成形することも可能である。
【0071】
また、被覆体20等の素材は、必ずしも、円筒状のチューブ4には限られない。例えば、チューブ4を軸線方向に沿って分割した一対の半割体の間に感温素子10とリード線15の一部とを収容し、加熱処置および加圧処理を行って被覆体20等を成形することが可能である。
【0072】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0073】
感温素子被覆領域21の厚さt1が電線被覆領域22の厚さt2と同一であって、感温素子被覆領域21の幅w1は電線被覆領域22の幅w2よりも狭くなっていてもよい。その場合は、y軸に直交する感温素子被覆領域21の一面が対象物3に配置されることで、幅w1,w2が同一である場合と比較して感温体11を対象物3に近づけることができるので、応答性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0074】
1,7 温度センサ
3 対象物
4,6 チューブ(素材)
4B 後端
4F 前端
4M 中間素材
5 金型
10 感温素子
10F 前端
11 感温体
13 接合部分
14 被覆範囲
15 リード線
15A 芯線
15B 絶縁被覆
20 被覆体
20F 前端
20R 後端
21 感温素子被覆領域
21S 表面
22 電線被覆領域
23 テーパ部
50 キャビティ
51 下型
52 上型
61 内層チューブ
62 外層チューブ
80 ロール成形装置
81,82 ロール
121 引出線
122 封止体
201,202 端面
501 内壁
502,503 段差
B 境界
d1 外形寸法
d2 外径
H 熱
P 圧力
S00 リード線接合ステップ
S01 感温素子収容ステップ
S02 加熱ステップ
S03 加圧成形ステップ
t1,t2 厚さ
tt1,tt2 肉厚
w1,w2 幅
X1,X2 中心
x 方向(長手方向、引出方向、前後方向)
y 方向(短手方向、幅方向、第2の方向)
z 方向(短手方向、厚さ方向、第1の方向)
【要約】
さらなる応答性向上を図ることが可能な温度センサおよびその製造方法を提供すること。また、設置の自由度を向上させることが可能な温度センサおよびその製造方法を提供すること。
温度センサ1は、感温体11と、一端が感温体11に電気的に接続される引出線121と、引出線121の一部および感温体11を覆う絶縁材からなる封止体122と、を含む感温素子10と、引出線121の他端に電気的に接続されるリード線15と、長尺状であって、矩形状の横断面を呈し、リード線15の一部および感温素子10を覆う樹脂製の被覆体20と、を備える。被覆体20の短手方向の寸法は、感温素子10を覆う領域21の寸法が、リード線15を覆う領域22の寸法よりも小さく設定されている。