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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】太陽電池および太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
H01L31/04 264
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020124565
(22)【出願日】2020-07-21
(62)【分割の表示】P 2015180720の分割
【原出願日】2015-09-14
(65)【公開番号】P2020184644
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】315001268
【氏名又は名称】農工大ティー・エル・オー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506198827
【氏名又は名称】アートビーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】上迫 浩一
(72)【発明者】
【氏名】新井 傑也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 ミエ子
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小宮 秀利
(72)【発明者】
【氏名】松井 正五
(72)【発明者】
【氏名】横山 周平
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-192539(JP,A)
【文献】特開2013-143420(JP,A)
【文献】特開2003-034548(JP,A)
【文献】国際公開第2009/014179(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0174363(US,A1)
【文献】特開2014-029832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に光を照射したときに高電子濃度を生成する高電子濃度領域を作成すると共に該領域の上に光を透過する絶縁膜を形成し、該絶縁膜に形成した電子取出口から電子を取り出すバス電極を有する太陽電池の製造方法において、
前記バス電極を形成するために、導電性ペーストにガラスフリットとして導電性ガラスを重量比100%の全部、該導電性ガラスを入れた状態で焼成する工程の時間は長くても1分以内、1秒以上の焼成をしてバス電極を形成し、導電性ペーストとして導電性ガラスを使用するステップ
を有することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記導電性ガラスを重量比100%の全部に代えて、導電性ガラスを重量比100%から71%以上とし残りとして銀を混入したことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記導電性ガラスは、少なくもとバナジウムあるいはバナジウムとバリウム含むバナジン酸塩ガラスとしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に光などを照射したときに高電子濃度を生成する領域を作成すると共に領域の上に光などを透過する絶縁膜を形成し、絶縁膜に形成した電子取出口から電子を取り出すバス電極を有する太陽電池および太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、再生可能エネルギー利用の一つである太陽電池は、20世紀の主役である半導体技術をベースにその開発が行われている。人類の生存を左右する地球レベルの重要な開発である。その開発の課題は太陽光を電気エネルギーに変換する効率ばかりではなく製造コストの低減および無公害という課題にも向き合いながら進められている。これらを実現する取り組みは、特に、電極に使用されている銀(Ag)や鉛(Pb)の使用量を低減ないし無くすことが重要とされている。
【0003】
一般に、太陽電池の構造は、図10の(a)の平面図および(b)の断面図に示すように、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換するN型/P型のシリコン基板43、シリコン基板43の表面の反射を防止および絶縁体薄膜である窒化シリコン膜45、シリコン基板43中に発生した電子を取り出すフィンガー電極42、フィンガー電極42で取り出した電子を集めるバスバー電極41、バスバー電極41に集めた電子を外部に取り出す引出リード電極47の各要素より構成されている。
【0004】
このうち、バスバー電極(バス電極)41およびフィンガー電極42に銀および鉛(鉛ガラス)が使用されており、これの銀の使用量を無くし、あるいは低減し、更に、鉛(鉛ガラス)の使用量を低減ないし無くし、低コストかつ無公害にすることが望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の図10の太陽電池の構成要素のうち、フィンガー電極42などに銀および鉛(バインダーとしての鉛ガラス)が使用されており、これの銀の使用量を無くし、ないし低減し、および鉛(鉛ガラス)の使用量を低減ないし無くし、太陽電池の製造コストの低減かつ無公害にするという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ペーストに後述するNTAガラス100%を用いてバス電極等を実験的に作成したところ上述した従来の銀ペーストを用いてバス電極等を作成したときと変わらないあるいは優れた特性を有する太陽電池の作成が可能(後述する)であることを発見した。
【0007】
本発明は、これら発見に基づき、銀の使用量を無くし、ないし低減し、および鉛(鉛ガラス)の使用量を低減ないし無くすために、太陽電池の構成要素であるバス電極(バスバー電極)などを形成するのに、ペーストをバナジン酸塩ガラス(以下、導電性のNTAガラスという、”NTA”は登録商標5009023号))で作成して焼成し、銀および鉛(鉛ガラス)の使用量を無くし、ないし低減することを可能とした。
【0008】
そのため、本発明は、基板上に光などを照射したときに高電子濃度を生成する領域を作成すると共に領域の上に光などを透過する絶縁膜を形成し、絶縁膜に形成した電子取出口から電子を取り出すバス電極を有する太陽電池において、バス電極を形成するために、導電性ペーストにガラスフリットとして導電性ガラスを重量比100%で焼成してバス電極を形成し、導電性ペーストとして導電性ガラスを使用するようにしている。
【0009】
この際、導電性ガラスを重量比100%に代えて、導電性ガラスを重量比100%から71%とし残りを銀とするようにしている。
【0010】
また、導電性ガラスは、少なくともバナジウムあるいはバナジウムとバリウムを含むバナシン酸ガラスとするようにしている。
【0011】
また、導電性ガラスを混入して焼成する工程の時間は、長くても1分以内、1秒以上であるようにしている。
【0012】
また、導電性ガラスは、Pbフリーであるようにしている。
【0013】
また、フィンガー電極を焼成したときに、フィンガー電極が高電子濃度領域に一端を有し、かつ他端はバス電極の上面の高さと同じ部分あるいは突き抜けて上面に突出した部分を形成するようにしている。
【0014】
また、焼成して形成したバス電極の上にリード電極を設けるようにしている。
【0015】
また、焼成して形成したバス電極の上にリード電極を超音波半田付けで形成し、リード電極の接するバス電極、フィンガー電極、およびその他の部分に接合し、リード電極の接着強度を向上させるようにしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述したように、導電性のNTAガラス100%、更に71%程度迄(更に含有量を少なくしても可)を従来の銀ペーストの代わりに用いて焼成することにより、従来の銀ペースト中の銀の使用量を無くし、あるいは低減し、かつ鉛(鉛ガラス)の利用量を低減ないし無くすことができた。これらにより、下記の特徴がある。
【0017】
第1に、太陽電池のバスバー電極(バス電極)を形成するのに導電性のバナジン酸塩ガラスであるNTAガラス(登録商標第5009023号、特許第5333976号)100%、更に71%程度迄を銀ペーストの代わりに用い、Agの使用量を無くし、ないし低減し、更に、鉛(鉛ガラス)の使用量を低減ないし無くすことができた。
【0018】
第2に、バスバー電極(バス電極)をNTAガラス100%ないし71%程度(更に含有量を少なくしても可)を用いることにより、太陽光エネルギーを電子エネルギーに変換する効率がほぼ同じあるいは若干高い、バスバー電極としての効果を発揮する電極形成が現初期段階の実験結果として得られた(図9参照)。これはNTAガラスが(1)導電性を有すること、(2)NTAガラスを用いたことでフィンガー電極が当該バスバー電極(バス電極)の上面の高さと同じ部分あるいは突き抜けて上面に突出した部分が形成され、これら部分がリード電極の超音波半田付けで接合され、結果として高電子濃度領域とリード電極とが直接にフィンガー電極で接続されること、その他の要因(例えば下記の「第3に」を参照)に起因すると考察される。
【0019】
第3に、従来と異なり、フィンガー電極の形成とバスバー電極の形成とを異なるガラスフリットを含有したペーストを用いることにある。従来、フィンガー電極の形成においてはファイアリングと呼ばれる現象を生ずる必要があった。これは、銀の焼結助剤として用いているガラスフリットの中の成分分子、例えば鉛ガラス中の鉛分子の働きによってシリコン基板の表層に形成された窒化シリコン膜の絶縁層を突き破ってフィンガー電極を形成するようにしてシリコン基板に生成された電子を効率よく集めていた。しかし、バスバー電極の形成については、ファイヤリング現象は必要でない。従来はバスバー電極も鉛成分を含んだ鉛ガラスを焼結助剤にして焼結していたので構造は異なるもののバスバー電極とシリコン基板との電気的な導通路が形成されて変換効率を低減する事となっていた。バスバー電極形成に用いる焼結助剤をファイヤリング現象の生じないNTAガラスを用いることによって変換効率の低減を無くすことができた。
【0020】
第4に、銀粉末材料の使用による太陽電池のコスト高(原材料費高)の問題がある。また、銀材料の過剰な需要によって材料調達の問題も浮上している。導電ガラスであるNTAガラスの含有比率100%ないし71%に大幅に増加してその分の銀量を少なくしても変換効率を低減することなく太陽電池を作製出来ることができたことは産業界に大きなインパクトを与えると思慮する。
【0021】
第5に、従来のバスバー電極の形成に使用していた鉛ガラスの使用を無くすこと、即ち鉛フリーにすることができた。これによって鉛公害の環境問題を皆無にすることが可能となる。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の1実施例構造図(工程の完成図:断面図)を示す。
【0023】
図1において、シリコン基板11は、公知の半導体のシリコン基板である。
【0024】
高電子濃度領域(拡散ドーピング層)12は、シリコン基板11の上に所望のp型/n型の層を拡散ドーピングなどで形成した公知の領域(層)であって、図では上方向から太陽光が入射するとシリコン基板11で電子を発生(発電)し、その電子を蓄積する領域である。ここでは、蓄積した電子は電子取出口(フィンガー電極(銀))14によって上方向に取り出されるものである(発明の効果参照)。
【0025】
絶縁膜(窒化シリコン膜)13は、太陽光を通過(透過)させ、かつバスバー電極15と高電子濃度領域14とを電気的に絶縁する公知の膜である。
【0026】
電子取出口(フィンガー電極(銀))14は、高電子濃度領域12中に蓄積した電子を絶縁膜13に形成した穴を介して取り出す口(フィンガー電極)である。フィンガー電極14は、本発明では、図示のように、バスバー電極15をNTAガラス100%(ないし71%程度)で焼成した場合には、フィンガー電極14がバスバー電極15の上面の高さと同じ部分あるいは突き抜けて上面に突出した部分を形成(焼成)し、高電子濃度領域12中の電子を当該フィンガー電極14を介してリード線17に直接に流入させる(電子を直接に取り出させる)ことが可能となる。つまり、高電子濃度領域12、フィンガー電極14、バスバー電極15、リード線17の経路1(従来の経路1)と、高電子濃度領域12、フィンガー電極14、リード線17の経路2(本発明で追加された経路2)との2つの経路で高電子濃度領域12中の電子(電流)をリード線17を介して外部に取り出すことができ、結果として、高電子濃度領域12とリード線17との間の抵抗値を非常に小さくすることが可能となり、損失を低減して結果として太陽電池の効率を向上させることができる。
【0027】
バスバー電極(電極1(NTAガラス100%))15は、複数の電子取出口(フィンガーバー電極)14を電気的に接続する電極であって、Agの使用量を無くす、ないし削減する対象の電極である(発明の効果参照)。
【0028】
裏面電極(電極2(アルミ))16は、シリコン基板11の下面に形成した公知の電極である。
【0029】
リード線(ハンダ形成)17は、複数のバスバー電極15を電気的に連結した電子(電流I)を外部に取り出したり、更に、本発明ではフィンガー電極14がバスバー電極15の上面と同じ高さの部分あるいは突き抜けた部分に、当該リード線を超音波半田付けして接合し電子(電流)を外部に取出したりするリード線である。
【0030】
以上の図1の構造のもとで、上から下方向に太陽光を照射すると、太陽光はリード線17および電子取出口14の無い部分と絶縁膜13を通過し、シリコン基板11に入射して電子を発生する。その後、高電子濃度領域12に蓄積した電子は、電子取出口(フィンガー電極)14、バスバー電極15、リード線17の経路1、および電子取出口(フィンガー電極)14、リード線17の経路2の両経路を介して外部に取り出される。この際、図2から図9で後述するように、バスバー電極15を、ペーストにガラスフリットとしてNTAガラス(導電性ガラス)100%ないし71%(更に少なくても可、図9参照)を混入して焼成して形成し、Agの使用量を無くし、ないし低減することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0031】
図2は、本発明の動作説明フローチャートを示し、図3および図4は各工程の詳細構造を示す。
【0032】
図2において、S1は、シリコン基板を準備する。
【0033】
S2は、クリーニングする。これらS1、S2は、図3の(a)に示すように、S1で準備したシリコン基板11の面(高電子濃度領域12を形成する面)を綺麗にクリーニングする。
【0034】
S3は、拡散ドーピングする。これは、図3の(b)に示すように、図3の(a)でクリーニングしたシリコン基板11の上に公知の拡散ドーピングを行い、高電子濃度領域12を形成する。
【0035】
S4は、反射防止膜(窒化シリコン膜)を形成する。これは、図3の(c)に示すように、図3の(b)の高電子濃度領域12を形成した上に、反射防止膜(太陽光を通過させ、かつ表面反射を可及的に低減した膜)として例えば窒化シリコン膜を公知の手法で形成する。
【0036】
S5は、フィンガー電極をスクリーン印刷する。これは、図3の(d)に示すように、図3の(c)の窒化シリコン膜13を形成した上に、形成するフィンガー電極14のパターンをスクリーン印刷する。印刷材料は、例えば銀にフリットとして鉛ガラスを混入したものを用いる。
【0037】
S6は、フィンガー電極を焼成し、ファイヤースルーさせる。これは、図3の(d)でスクリーン印刷したフィンガー電極14のパターン(銀と鉛ガラスのフリットを混入したもの)を焼成し、図3の(e)に示すように、窒化シリコン膜13にファイヤースルーさせてその中に銀(導電性)を形成したフィンガー電極14を形成する。
【0038】
S7は、バスバー電極(電極1)をスクリーン印刷する。これは、図4の(f)に示すように、図3の(e)のフィンガー電極14を形成した上に、形成するバスバー電極15のパターンをスクリーン印刷する。印刷材料は、例えばフリットとしてNTAガス(100%)のものを用いる。
【0039】
S8は、バスバー電極を焼成する。これは、図3の(f)でスクリーン印刷したバスバー電極15のパターン(NTAガラス(100%)のフリット)を焼成(焼成時間は長くても1分以内、1~3秒以上で焼成)し、図4の(g)に示すように、バスバー電極15が最上層に形成され、かつ本発明の特徴である、フィンガー電極14が当該最上層に形成されたバスバー電極15の上面と同じ高さの部分、あるいは突き抜けた部分が形成される。
【0040】
尚、S5及びS7の印刷を行い、両者を同時に焼成してもよい。
【0041】
S9は、裏面電極(電極2)を形成する。これは、図4の(h)に示すように、シリコン基板11の下側(裏面)に例えばアルミ電極を形成する。
【0042】
S10は、リード線をハンダ形成する。これは、図4の(i)に示すように、図4の(g)のバスバー電極を電気的に接続するリード線をハンダで形成、例えば超音波半田付けで形成して電気的に接続すると、高電子濃度領域12、フィンガー電極14、バスバー電極16、リード線17の経路1(従来の経路1)と、高電子濃度領域12、フィンガー電極14、リード線17の経路2(本発明で追加した経路2)との両経路で、高電子濃度領域12中の電子(電流)をリード線17を介して外部に取り出すことが可能となり、高電子濃度領域12とリード線17との間の抵抗値を非常に小さくしてロスを低減して太陽電池の効率を向上させることができる。すなわち、本発明で追加した経路2は、フィンガー電極14の一端が高電子濃度領域12の中にあり、他端がNTAガラス100%のバスバー電極15の上面と同じ高さの部分あるいは突き抜けた部分があり、この部分にリード線が直接接合(超音波半田付けで直接接合)されるので、高電子濃度領域12、フィンガー電極14、リード線17の経路2が形成される。なお、経路1は、従来の経路である。
【0043】
以上の工程により、シリコン基板に太陽電池を作成することが可能となる。
【0044】
図5は、本発明の詳細説明図(バスバー電極の焼成)を示す。
【0045】
図5の(a)はバスバー電極を銀100%、NTA0%(重量比)で焼成した例を模式的に示し、図5の(b)はバスバー電極を銀50%、NTA50%(重量比)で焼成した例を模式的に示し、図5の(c)はバスバー電極をNTA100%(重量比)で焼成した例を模式的に示す。焼成時間は、長くても1分以内で、1~3秒以上とした。
【0046】
図5の(a)と図5の(b)と図5の(c)とで図示のようにほぼ同構造となるように形成した太陽電池の試作実験では下記のような実験結果が得られた。
【0047】
太陽電池の変換効率
図5の(a)のAg 100%、NTA 0 % 平均約17.0%
図5の(b)のAg 50%、NTA 50% 平均約17.0%
図5の(c)のAg 0%、NTA 100% 平均約17.2%
試作実験結果は、バスバー電極のパターンを印刷する材料として、図5の(a)と、図5の(b)とでは太陽電池を作成したときの変換効率が平均約17.0%でほぼ同じ結果が得られ、更に、図5の(c)では変換効率が平均約17.2%が得られた。これら図5の(a)から(c)のいずれもほぼ同じ変換効率の範囲内か、あるいは図5の(c)のNTA 100%が若干高い変換効率であることが初期実験結果から判明する。尚、NTAガラスは、バナジウム、バリウム、鉄から構成され、特に鉄は内部的に強く結合して当該内部に留まっており、他の材料と混合してもその結合性は極めて小さい性質を有すること(特許第5333976号等参照)、更に既述した本発明の高電子濃度領域とリード線との間の経路(経路1と、経路2とが並列)の改善によると推測される。
【0048】
図6および図7は、本発明の説明図(バスバー電極)を示す。
【0049】
図6の(a)および図6の(b)はNTA 50%、Ag50%のものであって、図6の(a)は全体平面図を示し、図6の(b)は拡大図を示す。図7の(c)はNTA 100% Ag 0%のものであって、図7の(c)は拡大図を示す。
【0050】
図6の(a)および図6の(b)において、バスバー電極15は、図6の(a)の全体平面図に示すように、長いバー状の電極であって、これを光学顕微鏡で拡大すると図6の(b)に示すような構造が観察された。
【0051】
図6の(b)において、バスバー電極15は、従来のAgと鉛ガラスのフリットで焼成した場合にはAgが均一に分散していたが、本発明のAgとNTAガラスのフリットで焼成(長くても1分以内、1~3秒以上の焼成)した場合には当該図6の(b)に示すように、バスバー電極15の中央部分にAgが集まって形成されることが判明した。そのため、発明の効果の欄で説明したように、AgにNTAガラスを混入して短時間焼成(長くても1分、1~3秒以上の焼成)するとAgが中央部分に集まって導電性が向上し(従来はAgは均一に分散していた場合に比較して導電性が向上し)、かつNTAガラス自身も導電性を有することなどの総合的な作用によりAgの割合を減らしてNTAガラスを増やしても、太陽電池として製造した場合の変換効率は既述したように約16.9%と実験ではほぼ同じ結果が得られた。
【0052】
尚、焼成温度は、500℃から900℃であるが、太陽電池として作成した場合に最適な温度を実験により決定することが必要である。低すぎても高すぎても図6の(b)のような構造が得られず、実験で決定することが必要である。
【0053】
図7の(c)において、バスバー電極15は、図示の中央部分の横方向の幅の広いバー状の電極であって、本発明に係るNTA 100%の拡大写真の1例を示す。
【0054】
この図7の(c)のバスバー電極15は、縦方向に幅の狭いフィンガー電極14が当該バスバー電極15を突き抜けて上側に少し突出した部分があり、かつ当該突出した部分の周囲が元のフィンガー電極14の幅よりも太くなっていることが判明する。そして、図示のバスバー電極15の上に、当該バスバー電極15の幅と同じ、若干小さい、あるいは若干大きい幅で、後述する図8で詳細に説明するように、超音波半田付けすることにより、既述した経路1(光電子濃度領域12、フィンガー電極14、バスバー電極15、リード線17の経路1)および経路2(光電子濃度領域12、フィンガー電極14、リード線17の経路2)の両経路で高濃度電子領域と当該リード線とを導電接続し、電子(電流)の損失を低減して外部に効率的に取り出すことが可能となり、図6の(a)、(b)とほぼ同じ変換効率、あるいは若干高い変換効率(約17.2%)が得られた。
【0055】
尚、焼成温度は、図6の(a)、(b)とほぼ同じ500℃から900℃であるが、太陽電池として作成した場合に最適な温度を実験により決定することが必要である。低すぎても高すぎても図7の(c)のような構造が得られず、実験で決定することが必要である。
【0056】
図8は、本発明の説明図(超音波半田付け)を示す。これは、既述した図7の(c)のNTA 100% の場合のものである(尚、同様に、図6の(a)、(b)に適用してもよい)。
【0057】
図8の(a)は、フィンガー電極14を焼成した後の状態を示す。
【0058】
図8の(b)は、図8の(a)のバスバー電極15の上に、点線で示す、ここでは、若干大きめ(あるいは同じ、あるいは小さくてもよい)のリード線17を半田付けする従来の例を示す。この従来の例では、通常の半田付けで行うので、フィンガー電極14が突出した部分(Ag)とリード線17とは半田接合するが、フィンガー電極14の突出していない部分(NTA100%の部分)とリード線17とは十分に半田接合しなく、機械的強度が十分ではない。一方、後述する図8の(c)の超音波半田付けした場合には、半田接合し、機械的強度が大幅に向上した。
【0059】
図8の(c)は、図8の(a)のバスバー電極15(図7の(c)のバスバー電極15)の上に、点線で示す、若干大きめのリード線17を超音波半田付けする本発明の例を示す。この本発明の例では、超音波半田付けで行うので、フィンガー電極14が突出した部分(Ag)とリード線17とは半田接合し、更に、フィンガー電極14のない部分(NTA100%の部分)とリード線17とも半田接合し、機械的強度が大幅に向上すると共に、既述した経路2(高電子濃度領域12、フィンガー電極14、バスバー電極15、リード線17の経路2)の導電性が向上した。
【0060】
図9は、本発明の測定例(効率)を示す。本図9は、既述したバスバー電極15について、NTAを100%から70%に変化させたときの良好な測定例であって、図9の横軸はサンプルの番号を示し、縦軸は効率(%)を示す。サンプルは、
・NTA 100% Ag 0%
・NTA 90% Ag 10%
・NTA 80% Ag 20%
・NTA 70% Ag 30%
とし、これらで太陽電池を作成し、各測定結果(効率)は図示の通りであった。尚、初期実験であるので、測定結果には図示のようにかなりのバラツキがあるが、16.9から17.5の範囲内に収まっており、NTA 100%でバスバー電極15を作成(つまり、Agなしで作成)して太陽電池を製造した場合でも、NTA 70%(あるいは、更に80%、90%)に比して同程度ないし若干高い効率が得られ、NTA 100%でも使えることが判明した(発明者らはこの事実を発見した)。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の1実施例構造図(工程の完成図:断面図)である。
図2】本発明の動作説明フローチャートである。
図3】本発明の詳細工程説明図(その1)である。
図4】本発明の詳細工程説明図(その2)である。
図5】本発明の詳細説明図(バスバー電極の焼成)である。
図6】本発明の説明図(バスバー電極)である。
図7】本発明の説明図(バスバー電極)である。
図8】本発明の説明図(超音波半田付け)である。
図9】本発明の測定例(効率)である。
図10】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
11:シリコン基板
12:高電子濃度領域(拡散ドーピング)
13:絶縁膜(窒化シリコン膜)
14:電子取出口(フィンガー電極)
15:バスバー電極
16:裏面電極
17:リード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10