(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】セメント系固化処理土の強度の推定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20220415BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20220415BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20220415BHJP
G01N 29/07 20060101ALI20220415BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20220415BHJP
E02D 1/02 20060101ALI20220415BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
G01N3/00 D
G01N3/08
G01N33/38
G01N29/07
G01N29/44
E02D1/02
E02D1/04
(21)【出願番号】P 2018151617
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山岸 昴平
(72)【発明者】
【氏名】平林 弘
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-344245(JP,A)
【文献】特開2009-1981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
G01N 3/08
G01N 33/38
G01N 29/07
G01N 29/44
E02D 1/02
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土にセメント系固化材を混合して製造されるセメント系固化処理土の強度の推定方法であって、
土とセメント系固化材とを所定の混合比率で混合してセメント系固化処理土の供試体を作製する供試体作製工程と、前記供試体の養生初期に養生時間を異ならせた複数時点で前記供試体における弾性波速度を測定する弾性波速度測定試験を行った後に前記供試体の一軸圧縮強さを測定する一軸圧縮試験を行う試験工程と、前記弾性波速度測定試験の測定結果から前記セメント系固化処理土についての養生時間と弾性波速度との関係を取得する第1関係取得工程と、前記弾性波速度測定試験と前記一軸圧縮試験との測定結果から前記セメント系固化処理土についての弾性波速度と一軸圧縮強さとの関係を取得する第2関係取得工程と、前記第1関係取得工程で取得した前記関係および前記第2関係取得工程で取得した前記関係に基づいて、規定の養生期間後の製造された前記セメント系固化処理土の一軸圧縮強さを推定する一軸圧縮強さ推定工程と、を有することを特徴とするセメント系固化処理土の強度の推定方法。
【請求項2】
前記弾性波速度測定試験と、前記一軸圧縮試験とを同じ1つの前記供試体で行う請求項1に記載のセメント系固化処理土の強度の推定方法。
【請求項3】
前記第1関係取得工程では、横軸を養生時間の対数とし、縦軸を弾性波速度とする片対数グラフに、前記弾性波速度測定試験の試験結果をプロットし、そのプロットした複数の点を下記(1)式で直線近似して下記(1)式の定数Aと定数Bを求めることにより、前記セメント系固化処理土についての養生時間と弾性波速度との関係を取得する請求項1または2に記載のセメント系固化処理土の強度の推定方法。
V
s=A・logt+B ・・・(1)
ここで、V
sは弾性波速度、tは養生時間、logは常用対数である。
【請求項4】
前記弾性波速度としてせん断波速度を測定する請求項1~3のいずれかに記載のセメント系固化処理土の強度の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系固化処理土の強度の推定方法に関し、さらに詳しくは、土にセメント系固化材を混合して製造されるセメント系固化処理土の規定の養生期間後の強度を、セメント系固化処理土の養生初期に推定できるセメント系固化処理土の強度の推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤対策や液状化対策等を目的として、地盤中にセメント系固化材を注入してセメント系固化処理土を製造する地盤改良工法が行われている。セメント系固化処理土の規定の養生期間後(例えば、養生28日目や養生91日目)の強度(一軸圧縮強さ)をセメント系固化処理土の養生初期(例えば、養生7日目以前)に推定できれば、地盤に対するセメント系固化材の過不足のない適切な添加量を早期に決定できるので、地盤改良工法の工期の短縮などの観点から有益である。従来、改良地盤(セメント系固化処理土)の強度を推定する方法が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、地盤改良の実施工に先立ち、評価対象の地盤特性と同等仕様の供試体を作製し、その供試体に対してせん断波速度と強度とを求める室内試験を行ってせん断波速度と一軸圧縮強さとの関係を定式化する。その後、実施工が進行する地盤のせん断波速度の測定を行い、そのせん断波速度の測定結果と、室内試験で予め求めたせん断波速度と一軸圧縮強さとの関係(回帰曲線)から、原位置での地盤強度を推定する。しかし、この方法は、改良地盤のせん断波速度の測定が行われた現時点の地盤強度を推定するものである。したがって、セメント系固化処理土の規定の養生期間後の強度を、セメント系固化処理土の養生初期に推定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、土にセメント系固化材を混合して製造されるセメント系固化処理土の規定の養生期間後の強度を、セメント系固化処理土の養生初期に推定できるセメント系固化処理土の強度の推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のセメント系固化処理土の強度の推定方法は、土にセメント系固化材を混合して製造されるセメント系固化処理土の強度の推定方法であって、土とセメント系固化材とを所定の混合比率で混合してセメント系固化処理土の供試体を作製する供試体作製工程と、前記供試体の養生初期に養生時間を異ならせた複数時点で前記供試体における弾性波速度を測定する弾性波速度測定試験を行った後に前記供試体の一軸圧縮強さを測定する一軸圧縮試験を行う試験工程と、前記弾性波速度測定試験の測定結果から前記セメント系固化処理土についての養生時間と弾性波速度との関係を取得する第1関係取得工程と、前記弾性波速度測定試験と前記一軸圧縮試験との測定結果から前記セメント系固化処理土についての弾性波速度と一軸圧縮強さとの関係を取得する第2関係取得工程と、前記第1関係取得工程で取得した前記関係および前記第2関係取得工程で取得した前記関係に基づいて、規定の養生期間後の製造された前記セメント系固化処理土の一軸圧縮強さを推定する一軸圧縮強さ推定工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セメント系固化処理土で作製した供試体の養生初期に、試験工程、第1関係取得工程、および第2関係取得工程を行うことで、セメント系固化処理土についての養生時間と弾性波速度との関係と、弾性波速度と一軸圧縮強さとの関係を取得できる。そして、その取得した2つの関係から、セメント系固化処理土についての養生時間と一軸圧縮強さとの関係を把握できる。これにより、セメント系固化処理土の養生初期に、セメント系固化処理土の規定の養生期間後の一軸圧縮強さを推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のセメント系固化処理土の強度の推定方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】弾性波速度測定装置を用いて供試体の弾性波速度を測定している状況を模式的に例示する説明図である。
【
図3】
図2の送信用ベンダーエレメントと受信用ベンダーエレメントとが挿設された供試体を縦断面視で模式的に例示する説明図である。
【
図4】セメント系固化処理土の養生時間と弾性波速度との関係を例示するグラフ図である。
【
図5】セメント系固化処理土の養生時間と弾性波速度との関係を例示する別のグラフ図である。
【
図6】養生期間と弾性波速度との関係を示すグラフに弾性波速度測定試験の測定結果をプロットした説明図である。
【
図7】セメント系固化処理土のせん断弾性係数と一軸圧縮強さの関係を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のセメント系固化処理土の強度の推定方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
本発明は、土にセメント系固化材を混合して製造されるセメント系固化処理土の規定の養生期間後の強度を、セメント系固化処理土の養生初期に推定する方法である。セメント系固化材は、母材となるセメントに各種の添加物が混合された固化材であり、地盤改良工法に使用される。セメント系固化処理土の規定の養生期間後の強度とは、例えば、地盤改良工法において土に対するセメント系固化材の添加量(混合比率)を決定する際の基準となるセメント系固化処理土の養生28日目や養生91日目の一軸圧縮強さquである。セメント系固化処理土の養生初期とは、セメント系固化処理土の一軸圧縮強さquが安定する以前の養生期間であり、セメント系固化処理土を製造してから例えば、7日以内である。
【0011】
本発明は、
図1のフロー図で示すように、大きく分けて5つの工程(供試体作製工程、試験工程、第1関係取得工程、第2関係取得工程、一軸圧縮強さ推定工程)で構成されている。各工程の詳細を以下に説明する。
【0012】
供試体作製工程では、土とセメント系固化材とを所定の混合比率で混合してセメント系固化処理土の供試体を作製する。供試体は、セメント系固化材を用いた地盤改良工法を行う対象地盤の土を使用して作製する。供試体の作製は、例えば、地盤工学会基準JGS 0821(安定処理土の締固めしない供試体作製方法)に規定されている条件に基づいて行う。
【0013】
次いで、試験工程では、供試体作製工程で作製した供試体の養生初期に、養生時間tを異ならせた複数時点で供試体における弾性波速度Vsを測定する弾性波速度測定試験を行う。そして、その後、供試体の一軸圧縮強さquを測定する一軸圧縮試験を行う。最後の弾性波速度測定試験を終えてから速やかに一軸圧縮試験を実施することが望ましい。
【0014】
弾性波速度測定試験と一軸圧縮試験を行う時点は、供試体の養生初期の期間内で適宜決定できるが、供試体を作製してから例えば、養生12時間目~3日目の時点で1回目の弾性波速度測定試験を行い、供試体を作製してから例えば、養生3日目~7日目の時点で2回目の弾性波速度測定試験と一軸圧縮試験を行う。この実施形態では、供試体を作製してから養生12時間目に1回目の弾性波速度測定試験を行い、養生7日目に2回目の弾性波速度測定試験と一軸圧縮試験を行う場合を例示する。
【0015】
弾性波速度測定試験では、供試体を伝播する弾性波の弾性波速度Vsを測定する。弾性波としては、せん断波(S波)と疎密波(P波)とがあるが、この実施形態では、弾性波速度Vsとして、せん断波速度を測定する場合を例示する。弾性波速度測定試験は、例えば、地盤工学会基準JGS 0544(ベンダーエレメント法による土のせん断波速度測定方法)に基づいて行う。この弾性波速度測定試験は、弾性波速度測定装置を使用した非破壊試験である。
【0016】
図2、
図3に例示するように、弾性波速度測定装置1は、送信用ベンダーエレメント2と、受信用ベンダーエレメント3と、信号発生器4と、増幅器5と、波形測定器6とを有している。送信用ベンダーエレメント2と増幅器5、増幅器5と信号発生器4、信号発生器4と波形測定器6、および波形測定器6と受信用ベンダーエレメント3はそれぞれリード線で接続されている。増幅器5は必要に応じて用いればよく、増幅器5を用いずに弾性波速度測定を行うこともできる。増幅器5を用いない場合には、送信用ベンダーエレメント2と信号発生器4とがリード線で接続される。
【0017】
弾性波速度測定試験を行う際には、円柱形状の供試体Pの長手方向一端部に送信用ベンダーエレメント2を挿設し、供試体Pの長手方向他端部に受信用ベンダーエレメント3を挿設する。そして、信号発生器4および増幅器5によって送信用ベンダーエレメント2に駆動電圧を与えることにより、送信用ベンダーエレメント2から供試体P内に弾性波(せん断波)を送信させる。その供試体P内を伝播した弾性波を受信用ベンダーエレメント3で受信し、波形測定器6によって、弾性波が送信用ベンダーエレメント2から受信用ベンダーエレメント3に伝播するまでの伝播時間(遅延時間)を測定する。そして、その弾性波の伝播時間を送信用ベンダーエレメント2と受信用ベンダーエレメント3との間の距離Lで除することにより、供試体Pにおける弾性波速度Vsを算定する。
【0018】
一軸圧縮試験は、JIS A 1216で規定されている土の一軸圧縮試験方法に基づいて行う。この一軸圧縮試験は一軸圧縮試験機を使用して行う室内試験である。
【0019】
次いで、第1関係取得工程では、試験工程で行った弾性波速度測定試験の測定結果からセメント系固化処理土についての養生時間tと弾性波速度Vsとの関係を取得する。
【0020】
図4および
図5はそれぞれ、本発明者らが、土に対するセメント系固化材の添加量(混合比率)の条件が異なるセメント系固化処理土についてのそれぞれの養生時間tと弾性波速度V
sとの関係をグラフ化したデータである。
図4および
図5のグラフは、横軸を養生時間tの対数とし、縦軸を弾性波速度V
sとする片対数グラフである。
【0021】
図4および
図5に示すように、土とセメント系固化材との混合比率が同じ条件のセメント系固化処理土についての養生時間tの対数と弾性波速度V
sは比例関係にあり、高い相関性を有している。このことから、本発明者らは、セメント系固化処理土についての養生時間tと弾性波速度V
sとの関係は、下記(1)式で直線近似できることを見出した。
V
s=A・logt+B ・・・(1)
ここで、logは常用対数、AおよびBは定数である。
【0022】
(1)式の定数Aおよび定数Bは、土の採取場所(種類)や、土に対するセメント系固化材の混合比率、セメント系固化処理土の含水比に応じて異なる。それ故、第1関係取得工程では、試験工程で行った弾性波速度測定試験の測定結果から(1)式の定数Aおよび定数Bを求めることにより、供試体を作製したセメント系固化処理土についての養生時間tと弾性波速度Vsとの関係を取得する。
【0023】
具体的には、
図6に例示するように、横軸を養生時間tの対数とし、縦軸を弾性波速度V
sとする片対数グラフに、弾性波速度測定試験の測定結果をそれぞれプロットする。そして、そのプロットした複数の点を(1)式で直線近似して(1)式の定数A(傾き)と定数B(縦軸切片)を求める。試験工程において、弾性波速度測定試験を3回以上行うと、同様の手順で(1)式の定数Aと定数Bをより高い精度で求めることができる。(1)式の定数Aおよび定数Bは、片対数グラフを作成せずに、(1)式に弾性波速度測定試験で行った複数の測定結果を代入して、定数Aと定数Bの連立方程式を解くことで算出することもできる。
【0024】
本発明では、試験工程において1つの供試体を用いて養生時間tが異なる条件で弾性波速度測定試験を最低2回行えばセメント系固化処理土についての養生時間tと弾性波速度Vsとの関係を取得できるので非常に有益である。弾性波速度測定試験の試験回数を増やすと、セメント系固化処理土についての養生時間tと弾性波速度Vsとの関係をより高い精度で取得できる。
【0025】
第2関係取得工程では、試験工程で行った弾性波速度測定試験と一軸圧縮試験との測定結果からセメント系固化処理土についての弾性波速度Vsと一軸圧縮強さquとの関係を取得する。セメント系固化処理土についての弾性波速度Vsと一軸圧縮強さquとの関係は、下記(2)で表すことができる。
qu=α×ρ×VS
2 ・・・(2)
ここで、ρはセメント系固化処理土(供試体)の密度、αは定数である。
【0026】
第2関係取得工程では、試験工程において、最後に行った弾性波速度測定試験の測定結果(弾性波速度Vs)と一軸圧縮試験の測定結果(一軸圧縮強さqu)とをそれぞれ(2)式に代入することで定数αを求める。第1関係取得工程と第2関係取得工程は順不同であり、同じタイミングで並行して行うこともできる。
【0027】
前述した(2)式は、セメント系固化処理土についてのせん断弾性係数Gと弾性波速度VSとの関係を示す下記(3)と、セメント系固化処理土についてのせん断弾性係数Gと一軸圧縮強さquとの関係を示す下記(4)式から導出している。
G=ρ×VS
2 ・・・(3)
qu=α×G ・・・(4)
【0028】
(3)式は公知の関係式であり、セメント系固化処理土のせん断弾性係数Gは、セメント系固化処理土の密度ρに弾性波速度Vsの2乗を掛け合わせた値に近似できる(地盤工学会基準JGS 0544(ベンダーエレメント法による土のせん断波速度測定方法)参照)。
【0029】
図7は、本発明者らが、土の採取場所や土に対するセメント系固化材の混合比率の条件が異なるセメント系固化処理土についてのそれぞれのせん断弾性係数Gと一軸圧縮強さq
uとの関係をグラフ化したデータである。
図7に示すように、土に対するセメント系固化材の添加量(混合比率)や、セメント系固化処理土の含水比の条件によらず、セメント系固化処理土についての一軸圧縮強さq
uとせん断弾性係数Gは比例関係にあり、高い相関性を有している。したがって、(4)式のように、セメント系固化処理土の一軸圧縮強さq
uは、せん断弾性係数Gに定数αを掛け合わせた値で近似できる。(3)式と(4)式からせん断弾性係数Gを消去すると(2)式が求められる。
【0030】
第1関係取得工程と第2関係取得工程を完了した後には、一軸圧縮強さ推定工程を行う。一軸圧縮強さ推定工程では、第1関係取得工程で取得した養生時間tと弾性波速度Vsとの関係、および、第2関係取得工程で取得した弾性波速度Vsと一軸圧縮強さquとの関係に基づいて、規定の養生期間後の製造されたセメント系固化処理土の一軸圧縮強さquを推定する。
【0031】
第1関係取得工程で求めた(1)式と、第2関係取得工程で求めた(2)式とから弾性波速度Vsを消去すると、セメント系固化処理土についての養生時間tと一軸圧縮強さquの関係を示す下記(5)式となる。(5)式の定数Aおよび定数Bは第1関係取得工程で既に求めており、定数αは第2関係取得工程で既に求めている。セメント系固化処理土の密度ρは、供試体の重さと体積を計測することで求めることができる。それ故、(5)式の変数は一軸圧縮強さquと養生時間tとなる。したがって、(5)式に規定の養生期間(養生時間t)を代入することで、規定の養生期間後のセメント系固化処理土の一軸圧縮強さquを算出することができる。
qu=α×ρ×(A・logt+B)2 ・・・(5)
【0032】
このように、本発明によれば、供試体作製工程、試験工程、第1関係取得工程、第2関係取得工程、および一軸圧縮強さ推定工程の5つの工程を行うことで、規定の養生期間が経過することを待つことなく、セメント系固化処理土の養生初期に、セメント系固化処理土の規定の養生期間後の一軸圧縮強さquを推定することが可能となる。
【0033】
地盤改良を行う対象地盤に対するセメント系固化材の添加量を決定する際には、供試体を、土に対するセメント系固化材の添加量(混合比率)を異ならせた複数種類(仕様)にして5つの工程を行えば、地盤に対するセメント系固化材の過不足のない適切な添加量を早期に決定できる。規定の養生期間後に供試体の一軸圧縮強さquを把握する従来方法に比して、本発明は地盤改良の工期の短縮の観点から非常に有益である。
【0034】
また、従来の配合試験では、セメント系固化処理土について養生時間tが異なる複数時点での一軸圧縮強さquを把握する場合には、同一仕様の供試体を複数作製して、それぞれの養生時間tでその都度、別々の供試体で一軸圧縮試験(破壊試験)を行っていた。それ故、配合試験には多量の土が必要になるという問題があった。
【0035】
ところが、本発明では、セメント系固化処理土について養生時間tが異なる複数時点での一軸圧縮強さquを1つの供試体を用いて推定することが可能なので、配合試験に要する土の量を大幅に削減できる。これに伴い、配合試験用の土の採取や処分に要する労力やコストを低減するには有利になる。十分な土の量が確保できる場合は、同一仕様の供試体を複数用いることで、一軸圧縮強さquの推定精度を高くすることができる。
【0036】
弾性波速度測定試験と一軸圧縮試験をそれぞれ同じ仕様の別々の供試体で行うこともできる。しかしながら、別々の供試体ではその特性に少なからず個体差があるため、弾性波速度測定試験と一軸圧縮試験は同じ1つの供試体で行うことが好ましい。これにより、弾性波速度測定試験と一軸圧縮試験とを別々の供試体で行う場合に比して、養生時間tと一軸圧縮強さquとの関係をより精度よく取得できる。また、配合試験に要する土の量を削減するにも有利になる。
【0037】
弾性波速度Vsとしては、せん断波速度と疎密波速度とがあるが、せん断弾性係数Gと疎密波速度との相関よりも、せん断弾性係数Gとせん断波速度との相関のほうが強い。そのため、弾性波速度測定試験において、弾性波速度Vsとしてせん断波速度を測定すると、セメント系固化処理土の規定の養生期間後の一軸圧縮強さquを精度よく推定するには有利になる。
【符号の説明】
【0038】
1 弾性波速度測定装置
2 送信用ベンダーエレメント
3 受信用ベンダーエレメント
4 信号発生器
5 増幅器
6 波形測定器
P 供試体