(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】多量子ドットに基づく生体分子高感度検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20220415BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220415BHJP
G01N 21/76 20060101ALI20220415BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20220415BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220415BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N33/543 541A
G01N33/543 541Z
G01N33/543 575
G01N21/76
B82Y5/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2020539665
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2018011553
(87)【国際公開番号】W WO2019066567
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2017-0126515
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520111534
【氏名又は名称】バイオスクエア インコーポレイテッド.
(73)【特許権者】
【識別番号】520111545
【氏名又は名称】コングク ユニバーシティ インダストリアル コーポレイション コープ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、スン ウク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユン シク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、トン オク
(72)【発明者】
【氏名】ファム、ザン ハング
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウォン
【審査官】大河原 綾乃
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0121722(KR,A)
【文献】特開2012-137490(JP,A)
【文献】特開2010-209314(JP,A)
【文献】特表2017-525832(JP,A)
【文献】SERRANO, Ivan Castello,QD-"Onion"-Multicode silica nanospheres with remarkable stability as pH sensors,Journal of Materials Chemistry,2011年,Vol.21,p.17673-17679
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
G01N 33/543
G01N 21/76
B82Y 5/00
B82Y 40/00
C09K 11/00 - C09K 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれのナノ粒子が、
ポリマー又は無機のコア粒子、
前記コア粒子の表面に結合した複数の量子ドットを含み、かつ、前記コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び
前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェル
を含
み、
前記シリカ/量子ドット複合シェルにおいて、前記量子ドットがシリカ中に無作為に埋め込まれている、
量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項2】
前記量子ドット埋め込み層を構成する前記量子ドットが前記シリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料と架橋結合しており、前記架橋により前記量子ドットが前記シリカ材料にランダムに結合した構造が形成されている、請求項1に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項3】
前記量子ドットに対する結合部位を提供する材料によって前記架橋結合が形成されており、前記量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料はその両末端に官能基を有し、前記材料の一方の末端に存在する官能基は前記量子ドットの表面に結合しており、かつ、前記材料の他方の末端に存在する官能基は前記シリカ/量子ドット複合シェルを構成す
るシリカ粒子に結合している、請求項2に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項4】
前記量子ドット埋め込み層を構成する前記量子ドットが、両末端に官能基を有する材料によって共有結合的にコア粒子と結合しており、前記材料の一方の末端の官能基が前記量子ドットに結合した原子を含んでおり、前記材料の他方の末端の官能基が前記コア粒子と結合している、請求項1に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項5】
前記量子ドット埋め込み層は疎水性有機化合物で被覆された前記量子ドットを前記コア粒子の外表面上に複数回ドープすることにより形成されており、ドープされた前記量子ドットは前記コア粒子の周囲に順々に層を形成している、請求項1に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項6】
前記シリカ/量子ドット複合シェルは前記量子ドット埋め込み層の外表面に形成される複数の層から構成され
る、請求項1に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項7】
前記シリカ/量子ドット複合シェルを取り囲むシリカベースのシェルをさらに含む、請求項1に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項8】
前記量子ドットがタイプIの量子ドットである、請求項1に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
【請求項9】
(a)量子ドットに対する結合部位を提供する材料でポリマー又は無機のコア粒子の表面を修飾すること、
(b)ステップ(a)の反応産物に疎水性有機化合物で被覆された量子ドットを供与し、反応を進行させて、前記コア粒子の外表面を取り囲む前記量子ドットを含む量子ドット埋め込み層を形成すること、
(c)量子ドットに対する結合部位を提供する材料でステップ(b)の反応産物の表面を修飾すること、
(d)ステップ(c)の反応産物に塩基を供与し、反応を進行させて、前記量子ドット埋め込み層の表面上に量子ドットに対する追加の結合部位を形成すること、及び
(e)ステップ(d)の反応産物にシラノール反応物質及び塩基を供与し、反応を進行させ、生じた反応産物を精製して複数の層の前記量子ドットが前記コア粒子を取り囲んでいる構造を有しているシリカ/量子ドット複合シェルを形成すること、
を含
み、
前記シリカ/量子ドット複合シェルにおいて、前記量子ドットがシリカ中に無作為に埋め込まれている、
量子ドットでドープされたナノ粒子の作製方法。
【請求項10】
ステップ(a)において、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料を前記コア粒子と反応させて量子ドットに対する表面結合部位が形成されているコアを調製する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の反応産物に疎水性有機溶媒を供与し、反応を進行させて、未結合の量子ドットをコア表面上の前記量子ドットに対する前記結合部位に結合させる、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)において、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料をステップ(b)の反応産物に供与し、反応を進行させて、前記材料の一方の末端に存在する官能基が前記量子ドット埋め込み層を構成する前記量子ドットの表面に結合し、かつ、前記材料の他方の末端に存在する官能基が前記シリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料と結合する部位として提供されるようにする、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記量子ドットと、前記コア粒子と、結合部位を提供する前記材料との体積比が、1:0.000001~60:0.000001~890である、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記コア粒子と、前記量子ドット埋め込み層と、前記シリカ/量子ドット複合シェルとの幅厚比が、1:0.1~9:1~10である、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
量子ドットでドープされたナノ粒子、及び
磁性ビーズ
を含み、
前記量子ドットでドープされたナノ粒子の各々が、
ポリマー又は無機のコア粒子、
前記コア粒子の表面に結合した複数の量子ドットを含み、かつ、前記コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び
前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェル
を含み、
前記シリカ/量子ドット複合シェルにおいて、前記量子ドットがシリカ中に無作為に埋め込まれており、
前記磁性ビーズが磁性材料を含有する高分子量重合体からなる、
バイオプラットフォーム。
【請求項16】
前記量子ドット埋め込み層内の前記量子ドットが前記コア粒子の表面を取り囲み、取り囲んでいる前記量子ドットの複数の層が互いに積層されている、請求項15に記載のバイオプラットフォーム。
【請求項17】
量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の前記コア粒子と、前記量子ドット埋め込み層と、前記シリカ/量子ドット複合シェルとの幅厚比が1:0.1~9:1~10である、請求項16に記載のバイオプラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多量子ドットに基づく生体分子の高感度検出方法に関する。より具体的には、本開示は、量子収率(QY)及び輝度が向上した生体分子を検出可能なバイオプラットフォーム、並びに該バイオプラットフォームに基づく生体分子の高感度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のナノサイエンス及びナノテクノロジーの進歩と共に、バイオテクノロジー、新薬開発、及び医学用途などの生物学的用途におけるナノテクノロジーに基づくバイオデバイスについて多くの研究がなされてきた。
【0003】
バイオプラットフォームは、超微細加工用ナノテクノロジーをバイオテクノロジーに適用することにより作製されており、生体分子がナノレベルでうまく組織化されるように生体分子を固定化している。バイオプラットフォームは、ランダムな分子集合体とは異なり、生体分子の活性を維持しつつ個々の分子についての意図されている機能を果たすことができる。よって、バイオプラットフォームは、必要とする試料の量が少ないバイオセンサーとして利用可能であり、かつ、非常に少量の標的物質でさえも良好な感度と選択度で検出するために使用可能である。
【0004】
量子ドットは、バイオセンサーに応用可能なナノ材料であると考えられている。
【0005】
量子ドットはフォトルミネッセンス及びエレクトロルミネッセンスなどの様々なプロセスに利用可能なナノ材料である。量子ドットは球状であり、約5層~約10層の原子からなり、典型的には10nm以下の半径を有する。水分又は酸素が侵入すると量子ドットの部分的な表面酸化を引き起こし、その結果、量子ドットの本来の発光特性が低下又は消失する。したがって、量子ドットのキャッピング、無機材料による量子ドットのコーティング、及びそれらの関連技術が現在開発中である。
【0006】
特に、無機材料による量子ドットのコーティングは水分又は酸素が原因の酸化に対して量子ドットを安定化することができるが、リガンドを強固に支持することはできない。シングル量子ドット含有ナノ粒子についての関連技術においては、シリカシェル等が単純被覆層として働くが、加工後又はバイオプラットフォームに適用された際に、かなりの数の量子ドットが脱落する傾向がある。
【0007】
したがって、量子ドットの安定した結合を維持しつつ、量子ドットに被覆される面積を増加させることで量子収率(QY)と輝度を改善するための技術を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の欠点を克服しようとして行われたものであり、安定した結合を維持しつつ光学安定性を改善するために、無機被覆層で覆われている生物学的用途向け量子ドットを提供することを意図している。
【0010】
具体的には、本発明の一つの目的は各々のナノ粒子がコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカ/量子ドット複合シェルからなる構造を有する、多層多量子ドットでドープされたナノ粒子を提供すること、及び、前記量子ドットに被覆される大きな面積と量子ドットの安定した結合を維持しながら、多層多量子ドットでドープされたナノ粒子を作製する方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、向上した量子収率(QY)及び輝度で生体分子を検出するために使用することができる、多層多量子ドットでドープされた前記ナノ粒子を含む高感度バイオプラットフォームを提供すること、及び前記バイオプラットフォームに基づいて生体分子を検出する高感度な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様は、量子ドットでドープされたナノ粒子を提供し、ここで、それぞれのナノ粒子は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子の表面に結合し、かつ、前記コア粒子の表面全体を取り囲む複数の量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0013】
本発明のさらなる態様は、量子ドットでドープされたナノ粒子を作製する方法を提供し、ここで該方法は、(a)量子ドットに対する結合部位を提供する材料でポリマー又は無機のコア粒子の表面を修飾すること、(b)ステップ(a)の反応産物に疎水性有機化合物で被覆された量子ドットを供与し、反応を進行させて、前記コア粒子の外表面を取り囲む前記量子ドットを含む量子ドット埋め込み層を形成すること、(c)未結合の量子ドットに対する追加の結合部位を提供する材料でステップ(b)の反応産物の表面を修飾すること、(d)ステップ(c)の反応産物に塩基を供与し、反応を進行させて、前記量子ドット埋め込み層の表面上に未結合の量子ドットに対する追加の結合部位を形成すること、及び、(e)ステップ(d)の反応産物にシラノール反応物質及び塩基を供与し、反応を進行させ、生じた反応産物を精製して複数の層の前記量子ドットが前記コア粒子を取り囲んでいる構造を有しているシリカ/量子ドット複合シェルを形成すること、を含む。
【0014】
本発明の別の態様は量子ドットでドープされたナノ粒子が固定化されている感応膜表面を含む生物学的検出キットを提供し、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0015】
本発明の別の態様は、量子ドットでドープされたナノ粒子及び量子ドットでドープされた前記ナノ粒子とサンドウィッチアッセイ構造体を形成する磁性ビーズを含むバイオプラットフォームを提供し、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記ポリマー又は無機のコア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0016】
本発明の別の態様は、前記バイオプラットフォームに生物学的試料を注入して反応を進行させること、及び前記反応の間に放出される蛍光の強度を測定することを含む生物学的検出方法を提供し、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子の表面に結合た複数の量子ドットを含み、前記コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含み、前記量子ドット埋め込み層内の前記量子ドットは前記コア粒子の表面を取り囲み、取り囲んでいる前記量子ドットの複数の層が互いに積層されている。
【0017】
本発明の別の態様は、量子ドットでドープされたナノ粒子が固定化されている感応膜表面を含む生物学的検出キットに生物学的試料を注入して反応を進行させること、及び前記反応の間に放出される蛍光の強度を測定することを含む生物学的検出方法を提供し、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、量子ドットでドープされたナノ粒子及び量子ドットでドープされた該ナノ粒子とサンドウィッチアッセイ構造体を形成する磁性ビーズを含むバイオプラットフォームに生物学的試料を注入して反応を進行させること、及び前記反応の間に放出される蛍光の強度を測定することを含む生物学的検出方法を提供し、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の多層多量子ドットでドープされたナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカ/量子ドット複合シェルからなる構造を有する。本発明の多層多量子ドットでドープされたナノ粒子は、量子ドットによって被覆される大きな面積と量子ドットの安定した結合を維持しつつ、改善した量子収率(QY)と輝度で生体分子を検出するために使用することができる。したがって、本発明の多層多量子ドットでドープされたナノ粒子は、バイオプラットフォーム及び生体分子検出のための高感度な方法等の、生物学的用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、多量子ドットに基づくナノ粒子の模式図を示す図である。Aはシリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカシェルから構成される従来の多量子ドットベースナノ粒子の構造を示しており、Bはシリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカ/量子ドット複合シェルから構成される本発明の多層多量子ドットベースナノ粒子の構造を示す。
【
図2】
図2は、
図1の多量子ドットベースナノ粒子の電子顕微鏡像を示す図である。Aはそれぞれのナノ粒子がシリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカシェルからなる構造を有する従来の多量子ドットベースナノ粒子の電子顕微鏡像を示しており、Bはそれぞれのナノ粒子がシリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカ/量子ドット複合シェルからなる構造を有する本発明の多層多量子ドットベースナノ粒子の電子顕微鏡像を示す。
【
図3】
図3は、水溶性リガンドとしてのCOOHで修飾された量子ドットを含有するナノ粒子(QD-COOH)及び
図1に示した多量子ドットベースナノ粒子-多量子ドットを含有する従来のナノ粒子(シングルシリカQD、sQDで示す)及び多量子ドットを含有する本発明のナノ粒子(QD
2。mQDで示す)-の量子収率と輝度を比較する。
【
図4】
図4は、本発明のナノ粒子が(多重)標識部位として機能し得るかどうかの可能性を調べるために測定された、それぞれ異なるサイズの多層多量子ドットを含有する本発明のナノ粒子それぞれの量子収率と輝度を示す。
【
図5】
図5は、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の生物材料検出キットへの適用と関連領域の部分拡大図を模式的に示す。
【
図6】
図6は、実際の生物材料検出キットへの本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の適用を示す。
【
図7】
図7は、サンドウィッチアッセイへの本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の適用を模式的に示す。
【
図8】
図8は、実際のサンドウィッチアッセイへの本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の適用と、同じ標的物質のリアルタイムPCRによる検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これより本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明は量子ドットでドープされたナノ粒子を提供するが、ここで、量子ドットでドープされた該ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子の表面に結合した複数の量子ドットを含み、コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0023】
本開示において使用される「量子ドット埋め込み層」という用語は、特に記載の無い限り、コア粒子の外表面を取り囲んでいる複数の量子ドットによる層を指す。量子ドット埋め込み層は最も外側の量子ドットを接続する線に沿った仮想上の層であり、かつ、シリカ/量子ドット複合シェルに取り囲まれている界面として定義される。
【0024】
本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子は、量子ドットを含まないシリカシェルを含む従来の多量子ドット含有ナノ粒子、いわゆるシングル量子ドット含有ナノ粒子を改善したものに相当する。シリカ/量子ドット複合シェル中に量子ドットが存在するため、量子収率と輝度の著しい改善が達成可能である。
【0025】
本発明の1つの実施形態によると、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、コア粒子の表面に結合した複数の量子ドットを含み、コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0026】
本発明では、量子ドット埋め込み層を構成する量子ドットはシリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料と架橋結合している。この架橋により、量子ドットがシリカ材料にランダムに結合している構造が形成される。
【0027】
前記架橋結合は、量子ドットに対する結合部位を提供する材料によって形成してもよい。量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料は、その両末端に官能基を有する。前記材料の一方の末端に存在する官能基は量子ドットの表面に結合し、前記材料の他方の末端に存在する官能基はシリカ/量子ドット複合シェルを構成するコア粒子又はシリカ粒子に結合する。
【0028】
先行技術によると、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料は量子ドット埋め込み層に相当する構造体を形成するために使用される。対照的に、本発明において使用される量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料は量子ドット埋め込み層の表面上にも存在し、架橋結合を供与してシリカ/量子ドット複合シェルを形成するが、この点は多量子ドット又はシングル量子ドットに対応する従来のシリカの単独シェルとは異なる。
【0029】
例えば、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料は、その両末端に官能基を有していてもよい。前記材料の一方の末端に存在する官能基が量子ドット埋め込み層を構成する量子ドットの表面に結合し、前記材料の他方の末端に存在する官能基がシリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料に結合することが好ましい。
【0030】
前記材料の一方の末端に存在する官能基は、例えば、シラン基、チオール基、炭素含有疎水性官能基、カルボキシル基、又はアミン基であってもよい。前記材料の他方の末端に存在する官能基は、例えば、チオール基、アミン基、アミン含有基、エポキシ基、ハロゲン含有基、又は炭素含有基であってもよい。
【0031】
このような末端官能基を有するカップリング剤としての前記材料の具体例としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-ジフェニルホスフィノエチルトリエトキシシラン、ジフェニルホスフィノエチルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、3-(m-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、及びn-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0032】
シリカ/量子ドット複合シェルを構成する量子ドットは、例えば、量子ドット埋め込み層に未結合の量子ドット、又は量子ドット埋め込み層に最初は結合していたが後に脱離した量子ドットであってもよい。必要であれば、追加の量子ドットを添加し、量子ドットに対する前記結合部位に結合させてよい。
【0033】
シリカ/量子ドット複合シェルは厚さが7nm~1,000nm又は7nm~300nmであってもよい。シリカ/量子ドット複合シェルの厚さが上記で定義された下限値に満たない場合、シリカ/量子ドット複合シェルの保護効果は無視できるほどのものである。一方、シリカ/量子ドット複合シェルの厚さが上記で定義された上限値を超える場合、粒子は重くなり、沈降しやすくなり、そのため用途が限定される。
【0034】
本発明によると、コアにはポリマーコア粒子又は無機コア粒子が含まれる。ポリマーコア粒子は、ポリスチレン又はポリメチルメタクリレートなどのスチレン系ポリマー又はアクリル系ポリマーからなるものでもよい。無機コア粒子はシリカ、アルミナ、二酸化チタン、又は二酸化亜鉛からなるものでもよい。コア粒子は10nm~100,000nm又は80nm~1,000nmの直径を有し、そのような直径は操作及び追加の後処理の面で好適である。無機コア粒子は良好な安定性を有するため、量子ドットの支持体として使用可能である。この場合、コア粒子のサイズ制御が簡単なので、量子ドット含有粒子は様々なサイズ及び安定した構造を有することができ、したがって様々な特徴を有する蛍光標識として使用可能である。さらに、量子ドット含有粒子は、バイオアッセイ時における生体分子の吸収を防止して正確な分析結果を出すことができる。
【0035】
特に、量子ドットとコア粒子との間の共有結合が強力であるため、光ブリーチングによる量子ドットの安定性の悪化が防止され、かつ、長期間の連続使用の後でも量子ドットの発光特性が維持される。量子ドット埋め込み層を構成する量子ドットは、両末端に官能基を有する材料を介してコア粒子に共有結合していてもよい。前記材料の一方の末端に存在する官能基は量子ドットに結合する原子を含み、前記材料の他方の末端に存在する官能基はコア粒子に結合している。前記原子は硫黄原子、窒素原子、及びリン原子から選択してもよい。前記材料の他方の末端に存在する前記官能基はシラン基、アミノ基、スルホン基、カルボキシル基、又はヒドロキシ基であってもよい。
【0036】
前記量子ドットはII-VI族半導体、III-V族半導体、又はIV-IV族半導体から構成されるシングルコア構造、又は前記シングルコア構造がII-IV族半導体でキャップされているコア/キャップ構造を有していてもよい。前記量子ドット含有ナノ粒子は1nm~50nm又は1nm~20nmの直径を有していてもよい。ここでシングルコア又はコア/キャップ構造のコアに相当する前記量子ドットは任意の種類の半導体から構成されてよい。例えば、II-VI族半導体は周期表中のIIB族元素の少なくとも1つとVIB族元素の少なくとも1つから構成されていてもよい。このようなII-VI族半導体の例としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnSe、ZnS、PbS、PbSe、HgS、HgSe、HgTe、CdHgTe、及びCdSexTe1-xが挙げられる。このようなIII-V族半導体の例としてはGaAs、InAs、及びInPが挙げられる。前記コア材料としてはII-VI族半導体が使用されることが好ましく、その直径は1nm~20nm又は2nm~10nmである。
【0037】
コア/キャップ構造では、キャップはコア半導体量子ドットに結合してコア半導体の表面に被覆層を形成する半導体量子ドットから構成される。コア/キャップ構造により、ナノ粒子は、シングルコア構造よりも高い量子収率を確保できる。キャップはコア半導体よりも高いバンドギャップを有し、かつ、外部環境からコア半導体を保護するためのパッシベーション層として機能する。キャップは高バンドギャップを有するII-VI族半導体から構成され、好ましくはZnS、CdS、又はZnSeから構成される。コア/キャップ構造は前記半導体を様々な組合せで用いてよい。例えば、コアはCdSe又はCdSから構成されていてもよく、キャップはZnSから構成されていてもよい。あるいは、コアがCdSeから構成されていてもよく、キャップがCdSe又はZnSeから構成されていてもよい。半導体は制限無く組み合わせることができる。
【0038】
量子ドットはタイプIの量子ドットであってもよい。タイプI量子ドットは12-16族半導体コア及び12-16族半導体シェルから構成される構造を有していてもよく、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)コア及び該コアをキャップする硫化亜鉛(ZnS)シェルから構成される構造を有していてもよい。参考までに、高バンドギャップを有するシェルにより低バンドギャップを有するコア粒子をキャッピングすることで、改善した発光特性が達成されることが示されている。例えば、CdSe量子ドットをZnS層でキャップすると、強い発光特性(35~50%の量子収率)が室温で得られる。粉末のサイズを制御することにより発光波長を青色から赤色まで制御することが可能になる。さらに、ZnSキャッピングによりコアの表面が保護され、量子ドットの良好な安定性が確保される。
【0039】
量子ドット埋め込み層は、疎水性有機化合物で被覆された量子ドットをコア粒子の外表面上に複数回ドープすることにより形成してもよい。ドープされた量子ドットは、コア粒子を順々に取り囲む層を形成している。前記量子ドット埋め込み層を構成する前記量子ドットの数は1~400,000、1~4,000、又は400~500であってもよい。
【0040】
量子ドット埋め込み層の外表面に形成される複数の層から前記シリカ/量子ドット複合シェルを構成して、量子ドット埋め込み層を順々に取り囲むようにしてもよい。例えば、シリカ/量子ドット複合シェル中に存在する量子ドットの数は10~100,000又は200~5,000であってもよい。
【0041】
シリカ/量子ドット複合シェル中の量子ドットの層密度は、量子ドット埋め込み層の仮想表面積に対して0.00001~99.99999%の範囲内、好ましくは30~90%の範囲内、より好ましくは70~80%の範囲内にある。前記密度は、(密度=質量/体積)という密度についての式を用いることで計算される。この範囲内であれば、多層多量子ドット含有ナノ粒子の量子収率と輝度を改善することができる。
【0042】
本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子は前記シリカ/量子ドット複合シェルを取り囲むシリカベースのシェルをさらに含んでもよい。シリカベースのシェルは、アルミナ、二酸化チタン、又は二酸化亜鉛と組み合わせられると安定なテンプレートを提供することができる。この安定なテンプレートの使用により多層多量子ドット含有ナノ粒子のサイズ制御が容易になり、多層多量子ドット含有ナノ粒子の遠心分離及び洗浄が可能になる。
【0043】
前記多量子ドットベースナノ粒子のうちの1つが
図1のBに模式的に示されている。
図1のBを参照すると、多層多量子ドットベースナノ粒子の構造は、シリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカ/量子ドット複合シェルからなる。以下で具体的に論じるように、最初に、量子ドットに対する結合部位を提供する材料が架橋のために供与され、次に、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、又は水酸化マグネシウムなどの塩基が供与される。この手法によると、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料の一方の末端に存在する官能基が量子ドット埋め込み層を構成する量子ドットの表面に結合し、もう一方の末端官能基がシリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料との結合部位として提供され得る。前記塩基は追加の量子ドットに対する結合部位を提供する。これらは本発明の技術的特徴である。
【0044】
本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子は、シリカ/量子ドット複合シェルの形成を特徴とする。該多層多量子ドット含有ナノ粒子は、従来の量子ドット含有ナノ粒子と比較して均一な高蛍光シグナルを示す。
【0045】
図1のAはシリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカシェルから構成される従来の多量子ドットベースの構造を示す。量子ドット非含有シリカシェルを単純被覆層として含むシングル量子ドット含有ナノ粒子を作製する従来の方法では、量子ドットに対する結合部位を提供する材料と塩基とを同時に供与して、量子ドットとシリカの単独シェルとの間に架橋結合を与える。よって、この従来法では、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子を提供することはできない。
【0046】
図2は
図1の多量子ドットベースナノ粒子の電子顕微鏡像を示す。具体的には、
図2のAは、それぞれのナノ粒子がシリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカシェルからなる構造を有する従来の多量子ドットベースナノ粒子を示しており、
図2のBは、それぞれのナノ粒子がシリカコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカ/量子ドット複合シェルからなる構造を有する本発明の多層多量子ドットベースナノ粒子を示す。
【0047】
量子ドット埋め込み層の表面上における量子ドットの層の密度は、コア粒子の表面積に対する量子ドットの表面積の割合として求めた場合、5%超、又は20%超であってもよい。本発明では、シリカ/量子複合シェルの表面上における量子ドットの層の密度は、量子ドット埋め込み層の(仮想)表面積に対する量子ドットの表面積の割合として求めた場合、10%超、又は60%超であってもよい。後述の実施例から分かるように、コアの表面に強く結合することが可能なチオール基を導入することで、立体障害を受けなければコアの外表面に沿って量子ドットを埋め込むことが可能になる(量子ドット埋め込み層の形成)。コアの表面上に単層の量子ドットを導入する必要が無いので、シリカ/量子ドット複合シェルはより多数の量子ドットの導入を誘導することができる。
【0048】
多層多量子ドット含有ナノ粒子を作製する方法を以下のように実施することができるが、該方法はこれに限定されない。
【0049】
まず、ステップ(a)では量子ドットに対する結合部位を提供する材料でポリマー又は無機のコア粒子の表面を修飾する。具体的には、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料をコア粒子と反応させて、量子ドットに対する表面結合部位が作製されているコアを調製する。
【0050】
続くステップ(b)では、ステップ(a)の反応産物に疎水性有機化合物で被覆された量子ドットを供与し、反応を進行させて、コア粒子の外表面を取り囲む前記量子ドットを含む量子ドット埋め込み層を形成する。次に、ステップ(b)の反応産物に疎水性有機溶媒を供与し、反応を進行させて、コア表面上の量子ドットに対する前記結合部位に未結合の量子ドットを結合させる。その後、前記反応を安定化させることが好ましい。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、又はエチルベンゼン)、又はアルキル鎖溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、又はシクロヘキサン)などの疎水性溶媒を添加し、前記量子ドットを充分に結合させるために約30秒~約60秒撹拌して、量子ドット埋め込み層を含むナノ粒子を形成する。
【0051】
続くステップ(c)では、未結合の量子ドットに対する追加の結合部位を提供する材料でステップ(b)の反応産物の表面を修飾する。具体的には、未結合の量子ドットに対する追加の結合部位を提供する前記材料をステップ(b)の反応産物に供与し、前記材料の一方の末端に存在する官能基が量子ドット埋め込み層を構成する量子ドットの表面に結合し、かつ、前記材料の他方の末端に存在する官能基がシリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料と結合する部位として与えられるように反応を進行させる。
【0052】
ステップ(d)では、塩基をステップ(c)の反応産物に供与し、反応を進行させて、量子ドット埋め込み層の表面上に未結合の量子ドットに対する追加の結合部位を形成する。
【0053】
その後、ステップ(e)では、シラノール反応物質と塩基をステップ(d)の反応産物に供与し、反応を進行させ、生じた反応産物を精製して、量子ドットの複数の層がコア粒子を取り囲んでいる構造を有するシリカ/量子ドット複合シェルを形成する。
【0054】
ステップ(c)及びステップ(d)は、必要に応じて、ある特定の回数繰り返してもよい。ステップ(c)及びステップ(d)は3~4回繰り返されることが好ましい。この場合、20~500nmの厚さのシリカ/量子ドット複合シェルを形成することができる。
【0055】
上記の通り、シリカ/量子ドット複合シェルは、量子ドットの複数の層を積層し、かつ、コーティングする適切なプロセスにより形成される。例えば、量子ドット及び該量子ドットに対する結合部位を提供する材料としての3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTS)を最初に供与し、次に塩基を供与して、量子ドット埋め込み層に未結合の量子ドット、又は量子ドット埋め込み層に最初は結合していたが後に量子ドット埋め込み層から離脱した量子ドットが、量子ドットに対する前記結合部位に結合してシリカシェルに組み込まれるようにする。参考までに、MPTS及び塩基が量子ドットと一緒に添加されると、
図1のAに示されるように単層の被覆が生じる。
【0056】
本発明の方法によると、量子ドットと、コア粒子と、結合部位を提供する前記材料との体積比は、1:0.000001~60:0.000001~890、好ましくは1:0.01~20:0.01~300、より好ましくは1:1~2:2~3である。
【0057】
コア粒子と、量子ドット埋め込み層と、シリカ/量子ドット複合シェルとの厚さ比は、1:0.1~9:1~10、好ましくは1:0.4~4:1~4、より好ましくは1:1~2:1~2である。
【0058】
シリカ/量子ドット複合シェル中の量子ドットの層の密度は、量子ドット埋め込み層の仮想の表面積に対して0.00001~99.99999%の範囲内、好ましくは30~90%の範囲内、より好ましくは70~80%の範囲内にある。前記密度は、(密度=質量/体積)という密度についての式を用いることで計算される。
【0059】
生じた多層多量子ドット含有ナノ粒子は、複数の量子ドットが安定してコア粒子の表面に結合し、かつ、シェル内にも存在するように構造化されている。この構造により、多層多量子ドット含有ナノ粒子中における量子ドットの数を最大化することができる。さらに、異なるサイズの量子ドットが使用されるときでも、多層多量子ドット含有ナノ粒子は量子ドットのサイズに応じた発光色を観察するために充分な量子収率及び輝度を与える。この利点のため、多層多量子ドット含有ナノ粒子は、生物学的用途で使用されるときに(多重)標識部位として機能することができる。
【0060】
図3は、
図1の多量子ドットベースナノ粒子、水溶性リガンドとしてのCOOHで修飾された量子ドットを含有するナノ粒子(QD-COOH)、多量子ドットを含有する従来のナノ粒子(シングルシリカQD、sQDで示す)、及び多量子ドットを含有する本発明のナノ粒子(QD
2、mQDで示す)の量子収率及び輝度を比較している。QD-COOH(対照)のQY、シリカ被覆QDのQY、及び多層量子ドット含有ナノ粒子(QD
2)のQYが
図3のAに示される。シングルQD及び多層量子ドット含有ナノ粒子の蛍光強度を
図3Bに示す。365nmのUVランプを用いて、シングルQD及び多層量子ドット含有ナノ粒子を観察した(
図3C)。
【0061】
図4は、異なるサイズの多層多量子ドットを含有する本発明のナノ粒子それぞれの量子収率及び輝度を示す。これらは、本発明のナノ粒子が(多重)標識部位として機能し得るかどうかの可能性を調べるために測定された。
図4から分かるように、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子は改善した量子収率及び輝度を有し、使用される量子ドットのサイズに応じてそれぞれ異なる発光色及び蛍光色を示した。したがって、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子はバイオプラットフォームを含む生物学的用途に効果的に使用可能である。すなわち、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子は、リアルタイムPCRの感度に比肩するレベルにある高い感度を有する。これにより、極めて高い感度が必要とされる新規感染症病原体の正確かつ迅速な診断が可能になる。さらに、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子は広いダイナミックレンジ(≧log10)を有しているため、様々な濃度のバイオマーカーの並行分析を可能にする。
【0062】
生物学的用途の一つの具体例として、本発明は、量子ドットでドープされたナノ粒子が固定化されている感応膜表面を含む生物学的検出キットを提供し、ここで量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0063】
例えば、量子ドットでドープされたナノ粒子は、脱水縮合により感応膜に固定化されていてもよい。
【0064】
例えば、感応膜はガラス板、ポリスチレン板、又はマイクロタイタープレート上に形成されていてもよい。
【0065】
例えば、前記生物学的検出キットは単糖類、多糖類、有機酸、アルコール、コレステロール、コリン、キサンチン、及びそれらの混合物からなる群より選択される物質を検出するために使用されていてもよい。
【0066】
前記生物学的検出キットの使用について
図5を参照して説明する。
図5は本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の前記生物材料検出キットへの適用、及び関係する領域の部分拡大図を模式的に示す。多量子ドット含有ナノ粒子の該キットへの実際の適用が
図5に示されている。前記部分拡大図は、前記キットのニトロセルロース(NC)膜上の赤線中での抗体結合多量子ドット含有ナノ粒子と、標的物質と、捕捉抗体との反応を説明している。
【0067】
別の具体例としては、磁性ビーズをサンドウィッチアッセイに適用してもよい。この場合、バイオプラットフォームを簡単に回収するために磁石を用いてもよい。本開示において使用される「バイオプラットフォーム」の語は、特段の記載が無い限り、免疫診断などの分子診断に使用されるプラットフォームを指す。このバイオプラットフォームによれば、多層多量子ドット含有ナノ粒子のシェル表面を(多重)標識部位として提供することができる。
【0068】
前記バイオプラットフォームに含まれる多層多量子ドット含有ナノ粒子は、様々なサイズの量子ドットを使用するものであってよい。したがって、前記多層多量子ドット含有ナノ粒子は、非常に少量で使用されるときでも、種々の標的物質に対して異なるルミネッセンス強度を、改善された効率及び輝度で実現する能力を有しているため、(多重)標識部位として機能することができる。
【0069】
例として、標的物質(生物学的試料)に対して相補的に結合する抗体を多層多量子ドット含有ナノ粒子に結合しておいて、該結合抗体が前記生物学的試料(標的物質)を捕捉するようにしてもよい。
【0070】
具体例として、多層多量子ドット含有ナノ粒子が適切なリガンドで修飾され、標的物質(生物学的試料)に相補的に結合する抗体が前記多層多量子ドット含有ナノ粒子に結合され、かつ、当該結合抗体が前記生物学的試料(標的物質)を捕捉する構造を挙げることができる。そのリガンドは当技術分野において知られているリガンドのうちの任意のものであってもよく、例えば、受容体-リガンド間の相互作用を誘導することができる受容体-リガンド対であってもよく、ストレプトアビジン-ビオチン、アビジン-ビオチン、又はアシアロ糖タンパク質-ガラクトースなどであってもよい。
【0071】
前記生物学的試料(標的物質)は、例えば、抗原、受容体、ウイルス、酵素、感染性免疫グロブリン、サイトカイン、及びその他の感染性因子からなる群より選択されてもよい。
【0072】
前記生物学的試料(標的物質)は、後に安定して放射光測定を行うために磁性ビーズで捕捉されたサンドウィッチアッセイ構造を与えてもよい。この場合、前記磁性ビーズは、生物学的試料(標的物質)に相補的に結合する抗体を含み、前記磁性ビーズへ結合した前記抗体は、多層多量子ドット含有ナノ粒子に結合している前記抗体と独立して前記生物学的試料(標的物質)を捕捉する。具体例として、抗体を標的物質(生物学的試料)に相補的に結合するための適切なリガンドで磁性ビーズが修飾され、前記抗体が前記磁性ビーズに結合され、当該結合抗体が前記生物学的試料(標的物質)を捕捉する構造を挙げることができる。前記リガンドは、受容体-リガンド間の相互作用を誘導することができる受容体-リガンド対であってもよく、ストレプトアビジン-ビオチン、アビジン-ビオチン、又はアシアロ糖タンパク質-ガラクトースなどであってもよい。
【0073】
関連する具体例においては、本発明のバイオプラットフォームは、量子ドットでドープされたナノ粒子、及び量子ドットでドープされた前記ナノ粒子とサンドウィッチアッセイ構造体を形成する磁性ビーズを含み、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記ポリマー又は無機のコア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
【0074】
前記磁性ビーズは1~5μmの範囲の直径を有してよい。この範囲の直径は、試料の分離及び精製に好適である。前記磁性ビーズは、磁性材料を含有する高分子量重合体からなるものであってもよい。前記磁性ビーズの外表面はシリカシェルによって取り囲まれていてよい。シリカシェルは前記磁性ビーズを保護し、その表面はアッセイのための様々なリガンドで修飾されていてもよい。例えば、前記磁性ビーズは、乳化剤と油溶性過酸化物重合開始剤の存在下でポリスチレンシードとスチレンモノマーとの混合物及びスチレン誘導体を共重合することにより調製された共重合体から形成されていてもよい。前記磁性ポリ(スチレン-co-スチレン誘導体)共重合体では基本骨格を構成するスチレン環にスルホン酸官能基が導入されており、該スルホン酸官能基に鉄イオンが結合している。シリカシェルが前記共重合体ビーズの外表面を取り囲む。前記ポリ(スチレン-co-スチレン誘導体)共重合体を使用することが好ましいが、これは該共重合体が有する非特異的結合を防止する能力のためである。
【0075】
一つの具体例としては、前記磁性ビーズは以下の順序で調製してもよい。
【0076】
まず、ステップ(a)では、分散安定化剤とラジカル開始剤の存在下でスチレンモノマーを乳化剤無しに乳化重合してポリスチレンシードを調製する。
【0077】
ステップ(b)では、フタル酸ジブチルなどの可塑剤の存在下で前記ポリスチレンシードを予備膨潤させる。
【0078】
ステップ(c)では、乳化剤及び油溶性過酸化物重合開始剤の存在下で前記予備膨潤済みポリスチレンシードとスチレンモノマーとの混合物をスチレン誘導体と水分散共重合して、ポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)共重合体ビーズを調製する。
【0079】
ステップ(d)では、前記ポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)共重合体ビーズをスルホン化剤と反応させ、硫酸官能基を含むポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)共重合体ビーズを調製する。一つの具体例としては、スルホン化剤はクロロスルホン酸、アセチル硫酸、及び濃硫酸から選択されてもよく、前記反応は60~95℃の温度範囲で実施してもよい。
【0080】
ステップ(e)では、スルホン酸官能基を含む前記ポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)共重合体ビーズを超常磁性鉄前駆体によって磁化する。一つの具体例としては、塩化第一鉄(FeCl2)と塩化第二鉄(FeCl3)の混合物を用いて磁化を実施する。前記混合物中のFeCl2・4H2O:FeCl3・6H2Oのモル比は、1:500~10,000又は1:1~2であってもよい。
【0081】
次に、ステップ(f)では、前記磁性ポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)共重合体ビーズの外表面を取り囲むようにシリカシェルを形成する。
【0082】
前記バイオプラットフォームを使用する生物学的検出方法は、以下のように実施することができる。
【0083】
まず、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子及び量子ドットでドープされた前記ナノ粒子とサンドウィッチアッセイ構造体を形成する前記磁性ビーズを含む前記バイオプラットフォームに生物学的試料(標的物質)を注入し、反応を進め、そして該反応の間に放出される蛍光の強度を測定する。
【0084】
上記の通り、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含んでいてもよい。
【0085】
前記バイオプラットフォームを構成する、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子は、様々なサイズの量子ドットを用いてもよい。したがって、前記ナノ粒子の各々のシェル表面は、生物学的試料の(多重)標識部位として機能してもよい。
【0086】
蛍光強度を光学的方法により測定しても、蛍光強度から変換された電気的信号を測定してもよい。しかしながら、蛍光強度を測定する方法には制限はない。
【0087】
前記バイオプラットフォームの使用について
図7を参照して説明する。
図7は、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子のサンドウィッチアッセイへの適用を模式的に示す。
【0088】
図7を参照すると、生物学的試料(標的物質)を含有する水溶液又は有機溶媒に前記多層多量子ドット含有ナノ粒子(又は前記磁性ビーズ)が添加され、前記多層多量子ドット含有ナノ粒子に結合している抗体又は前記磁性ビーズに結合している抗体が生物学的試料(標的物質)の一方の側に結合している溶液が調製され、そして該溶液に前記磁性ビーズ(又は前記多層多量子ドット含有ナノ粒子)が添加される。
【0089】
次に、前記多層多量子ドットに結合した抗体と結合した生物学的試料(標的物質)が、磁性ビーズに結合した抗体と結合している、又は、生物学的試料(標的物質)を磁性ビーズに結合した抗体に結合し、次に前記多層多量子ドットに結合した抗体がそれに結合させられている、プラットフォーム構造体を有する溶液を調製する。
【0090】
その後、前記溶液に磁性物質を適用して前記磁性ビーズを収集し、前記磁性ビーズが収集される領域に存在する前記量子ドット含有粒子の中に存在する前記量子ドットの吸光度又は蛍光強度を測定する。
【0091】
前記標的物質含有溶液は、例えば、心筋梗塞多角的アッセイ、感染性免疫グロブリン並行診断、サイトカイン並行診断、又は血液スクリーニングのための溶液であってもよい。
【0092】
以下の実施例を参照してさらに詳細に本発明を説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明の具体的な実施形態を単に例示することを意図したものであり、本発明を限定又は制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0093】
実施例1:多層多量子ドット含有量子ドットの調製
<コア粒子>
ストーバー(Stober(oはウムラウト))法によって120nmの直径を有するシリカ粒子(10mg/ml)を調製した。
【0094】
<量子ドット埋め込み層>
量子ドットに対する結合部位を提供する材料として10μlの1%(体積/体積)3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTS)を前記コア粒子に添加した。混合物を25℃で12時間撹拌して前記コア粒子の表面にチオール基を導入した。
【0095】
以下の方法により、前記チオール基導入済みコア粒子の外表面に蛍光発光性量子ドットを結合させた。
【0096】
疎水性有機化合物としてのオレイン酸で被覆された7mgの固体量子ドット(CdSe/ZnS、10nm)を前記チオール基導入済みコアに添加した。当該混合物をボルテックスで激しく撹拌した。その結果、前記量子ドットが前記コア表面に導入されたチオール基に結合して、コアを疎水性にしつつ量子ドット埋め込み層を形成した。次に、疎水性溶媒として4mLのジクロロメタンを添加し、続いてさらに30~60秒間撹拌して未結合の量子ドットをチオール基に結合させた。
【0097】
次に、量子ドットの結合を与える物質として50μlのメルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)を添加し、15分間撹拌し、塩基として50μlの25%水酸化アンモニウム(NH4OH(水溶液))を添加し、さらに15分間撹拌して、量子ドット埋め込み層構造を形成したが、該量子ドット埋め込み層構造はコア粒子の外表面を取り囲み、また、追加の量子ドットに対する表面結合部位を有する。
【0098】
<複合シェル/多層多量子ドット含有ナノ粒子>
量子ドット埋め込み層の表面に追加の量子ドットに対する結合部位を有する前記構造体をエタノールで3回洗浄した。シラノール反応物質としての50μlのオルト珪酸テトラエチル及び塩基としての25%水酸化アンモニウムを68rpmで20時間撹拌し、エタノールで3回洗浄して、シリカシェル及び該シリカシェル中に存在する多量子ドットから構成されるシリカ/量子ドット複合シェルを形成した。
【0099】
前記シリカコア、前記量子ドット埋め込み層、及び前記シリカ/量子ドット複合シェルからなる前記構造体は、
図1のBに模式的に示されている。
図1のBから分かるように、各層のシェル内に多層多量子ドットが無作為に埋め込まれた。それぞれ前記シリカコア、前記量子ドット埋め込み層、及び前記シリカ/量子ドット複合シェルからなる構造を有する前記多層多量子ドット含有ナノ粒子の電子顕微鏡像が
図2のBに示されている。
図2のBから分かるように、前記構造は多層であった。シリカ/量子ドット複合シェル中の量子ドットの層密度は、量子ドット埋め込み層の仮想表面積に対して70~80%であったが、これは0.00001~99.99999%の範囲内である。前記密度は、(密度=質量/体積)という密度についての式を用いることで計算された。
【0100】
比較例1:多量子ドット含有ナノ粒子の調製
50μlのメルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)及び50μlの塩基としての25%水酸化アンモニウム(NH4OH(水溶液))を<量子ドット埋め込み層>の欄に記載したように連続的に添加するのではなく同時に添加すること以外は実施例1と同様にして多量子ドット含有ナノ粒子を調製した。その結果、多量子ドットを含有するシリカの単独シェルが形成された。
【0101】
前記シリカコア、前記量子ドット埋め込み層、及び前記シリカシェルからなる前記構造体は、
図1のAに模式的に示されている。
図1のAから分かるように、前記単層シェル内に前記多量子ドットが無作為に埋め込まれた。それぞれのナノ粒子が前記シリカコア、前記量子ドット埋め込み層、及び前記シリカシェルからなる構造を有する前記多量子ドット含有ナノ粒子の電子顕微鏡像が
図2のAに示されている。
図2のAから分かるように、前記構造は単層であった。
【0102】
実験例1
実施例1で調製された多量子ドット含有ナノ粒子及び比較例1で調製された多量子ドット含有ナノ粒子の量子収率と輝度を測定した。結果は
図3にまとめて示す。
図3は水溶性リガンドとしてのCOOHで修飾された量子ドットを含有するナノ粒子(QD-COOH)、比較例1で調製された多量子ドット含有ナノ粒子(シングルシリカQD。sQDで示す。)、及び実施例1で調製された多量子ドット含有ナノ粒子(QD
2。mQDで示す。)の量子収率と輝度を比較している。前記QD-COOH(対照)のQY、前記シリカ被覆QDのQY、及び前記多層量子ドット含有ナノ粒子(QD
2)のQYを
図3のAに示す。前記シングルQD及び前記多層量子ドット含有ナノ粒子の蛍光強度を
図3のBに示す。365nmのUVランプを用いて、前記シングルQD及び前記多層量子ドット含有ナノ粒子を観察した(
図3のC)。
【0103】
実施例2
この実施例では、種々のサイズの多層多量子ドットを含有するナノ粒子が(多重)標識部位として機能し得るかどうかの可能性を調べた。
【0104】
具体的には、実施例1で調製された前記多層量子ドット含有ナノ粒子を赤色QD2とした。量子ドットのサイズを2nm、2.5nm、及び3nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして多層量子ドット含有ナノ粒子を調製した。これらの多層量子ドット含有ナノ粒子を、それぞれ、青色QD2、緑色QD2、及び黄色QD2とした。
【0105】
図4は種々の色の前記多層量子ドット含有ナノ粒子の量子収率と輝度を示す。具体的には、
図4のAは、これら多層量子ドット含有ナノ粒子のQYを示す。
図4のBは、これら多層量子ドット含有ナノ粒子の標準化された蛍光強度を示す。365nmのUVランプを用いてこれら多層量子ドット含有ナノ粒子を観察した(
図4C)。
【0106】
応用例1:生物学的検出キット
前記多層多量子ドット含有ナノ粒子の生物学的検出キットへの適用について
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の生物材料検出キットへの適用と関連領域の部分拡大図を模式的に示す。
【0107】
<前記多層多量子ドット含有ナノ粒子の表面修飾>
実施例1で調製された前記多層多量子ドット含有ナノ粒子1mgを(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTS溶液、5%体積/体積、1mL)に添加し、室温で1時間撹拌した。次に、当該混合物をエタノールで3回洗浄し、そこに75mgの無水コハク酸、500μlの2-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液、及び3.50μlのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を添加した。得られた混合物を2時間撹拌した。
【0108】
次に、前記反応混合物をジメチルホルムアミド(DMF)で3回洗浄し、そこに100μlのジメチルピリジン(DMP)及び2.1mgの4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を添加した。当該混合物に27μlのDICを添加し、室温で1時間撹拌した。当該反応混合物を2-メチル-2-ピロリドン(NMP)で2回洗浄し、三リン酸緩衝溶液(TPBS)で1回洗浄し、リン酸緩衝溶液(PBS、pH7.2)で1回洗浄し、そしてリン酸緩衝溶液(PBS、pH7.2)中に分散して前記多層多量子ドット含有ナノ粒子の表面を抗体結合のために修飾した。
【0109】
<抗体結合>
10pmolの抗体を100μgの前記表面修飾済み多層量子ドット含有ナノ粒子に添加し、室温で2時間振盪した。次に、その反応産物をPBS(pH7.2)で4回洗浄し、前記抗体結合多層量子ドット含有ナノ粒子にウシ血清アルブミン(BSA)溶液(5%重量/重量、1mL)を添加し、続いて室温で1時間振盪した。
【0110】
キットを構築し、
図6に示されているように抗原捕捉に使用した。
図6は、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の実際の生物材料検出キットへの適用を示す。
図6のAから分かるように、捕捉抗体が存在する吸収パッド上の線において、捕捉された抗原は捕捉抗体及び標的物質に結合した。キット分析機を用いてキットの前記線における蛍光強度を観察した(
図6のB)。
【0111】
応用例2:サンドウィッチアッセイ
図7に示すように、実施例1と同様にして調製した多層量子ドットナノ粒子及び抗体結合磁性ビーズを用いて抗原に対するサンドウィッチアッセイを実施した。
【0112】
前記磁性ビーズは以下の方法により調製した。
【0113】
<磁性ビーズの調製>
<ポリスチレンシード>
シード重合により単分散マクロ多孔性ポリスチレン-ジビニルベンゼンビーズを調製した。具体的には、分散重合法を用いて単分散ポリスチレンシード(4μm)を調製した。分散媒体は立体安定剤として1gのポリビニルピロリドン-40(PVP-40)を含有するエタノール/2-メトキシエタノール(3:2、体積/体積)(90mL)であった。
【0114】
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、150mg)を阻害物質が除去されたスチレン(15mL)中に溶解した後に、調製したままの前記分散媒体に添加した。10分間の表面処理の後に円筒形の反応チャンバー中において70℃で20時間振盪(120cpm)しながら分散重合を実施した。この懸濁液を遠心分離にかけ、沈殿物を蒸留水で洗浄した。生じたポリスチレンシードをエタノールで洗浄し、真空下で一晩乾燥してポリスチレンシード(4μm、8.3g)を得た。
【0115】
<単分散マクロ多孔性ポリスチレン-co-DVBの重合>
オーバーヘッドスターラーと還流濃縮器を取り付けたガラス製反応容器中で、0.25%(重量/重量)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するフタル酸ジブチル(DBP、0.7mL)乳化水性媒体(100mL)の中に前記ポリスチレンシード(4μm、700mg)を分散させた。得られた分散媒体を室温、400rpmで20時間撹拌し、スチレン(4.6mL)及びジビニルベンゼン(DVB、2.3mL)中のBP(240mg)からなるDBP混合物中で前記ポリスチレンシードを膨潤させ、ホモジナイザーを使用することにより0.25%(重量/重量)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有する100mLの水性媒体の中に前記ポリスチレンシードを1分間浸漬した。対応する乳化モノマー溶液を前記フタル酸ジブチル(DBP)膨潤ポリスチレンシード分散媒体に撹拌しながら添加した。
【0116】
<マクロ多孔性PS-DVBビーズの調製>
連続的に400rpmで撹拌しながら室温でモノマー膨潤を20時間実施した。膨潤処理の後に蒸留水(10mL)中の10%(重量/体積)ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液を前記分散媒体に添加し、前記媒体を窒素流で30分間パージした。連続的に200rpmで撹拌しながらシード重合を70℃で20時間実施して単分散PS-DVBビーズを得た。
【0117】
得られたビーズを洗浄し、遠心分離にかけ、そして脱イオン水(50℃)で洗浄した。次に、収集したビーズをエタノールとテトラヒドロフラン(THF)で洗浄して、フタル酸ジブチル(DBP)と直鎖状重合体を除去した。最後に、前記ビーズを真空下、30℃で24時間乾燥してマクロ多孔性PS-DVBビーズ(7.5μm,2.5g)を得た。
【0118】
<マクロ多孔性PS-DVBビーズのスルホン化>
得られたマクロ多孔性PS-DVBビーズ(1g)を氷浴中の5mLの酢酸に添加した。次に、硫酸(50mL)を室温でゆっくりと前記ビーズに添加し、温度を90℃まで上げ、前記樹脂混合物を30分間~2時間撹拌した。この分散体を氷冷水(400mL)中に注いで反応を停止させ、そしてスルホン化PS-DVBビーズを遠心分離により収集した。遠心分離を繰り返すことにより脱イオン水で前記ビーズを徹底的に洗浄した。次に、このスルホン化ビーズをエタノールで3回洗浄し、真空下で乾燥した(1.1g)。
【0119】
<スルホン化マクロ多孔性PS-DVBビーズの磁化>
機械的撹拌(200rpm)及び窒素によるパージを行いながら前記スルホン化マクロ多孔性PS-DVBビーズ(500mg)を室温の脱イオン水(10mL)中に分散し、そして窒素でパージした。新たに調製した、脱イオン水(10mL)中のFeCl3・6H2O(618mg、2.26mmol)とFeCl2・4H2O(257mg、1.28mmol)との混合物を前記分散体に添加して吸着させた。
【0120】
2時間後、連続的に撹拌しながら28%水酸化アンモニウム(50mL)を前記ビーズ懸濁液に40分間滴下することで添加した。磁化マクロ多孔性ビーズを遠心分離により混合物から単離し、25%トリフルオロ酢酸(TFA)で洗浄し、そして、脱イオン水及びエタノールで洗浄した。最後に磁化マクロ多孔性ビーズを真空下で乾燥した(7.5μm、653mg)。
【0121】
<シェル>
(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン溶液(1%(体積/体積)、100mL)を100mgの前記磁化ビーズに添加し、室温で10分間振盪した。次に、水酸化アンモニウム(28%、2mL)を前記ビーズ分散体に添加し、室温で20分間振盪した。この分散体にTEOS(2mL)を添加し、室温で12時間激しく振盪した。生じたシリカ被覆磁性ビーズを磁石により収集し、そしてエタノールで5回洗浄した。
【0122】
<磁性ビーズの表面修飾>
実施例1の<前記多層多量子ドット含有ナノ粒子の表面修飾>の欄に記載されている方法を繰り返した。
【0123】
<抗体結合>
図7に示されているように抗体(10μM)を100μgの前記表面修飾済み磁性ビーズに添加し、室温で2時間振盪した。次に、当該混合物をPBS(pH7.2)で4回洗浄した。BSA溶液(5%(重量/重量)、1mL)を前記抗体結合磁性ビーズに添加し、室温で1時間振盪し、PBS(pH7.2)で4回洗浄し、そしてPBS(pH7.2)中に分散させた。
【0124】
<サンドウィッチ免疫アッセイ>
PBS(pH7.2)中に分散した抗原を100μgの前記抗体結合磁性ビーズに添加し、室温で1時間振盪した。次に、
図7の右側に示されているように磁石を用いて当該混合物をPBS(pH7.2)で4回洗浄し、そして100μgの前記抗体結合多層量子ドット含有ナノ粒子を当該混合物に添加した。当該混合物を室温で1時間振盪し、1時間にわたってPBS(pH7.2)で4回洗浄し、そして300μlのPBS(pH7.2)中に分散させてバイオプラットフォームを構築した。
【0125】
図7の右側に示されるように、応用例2で構築されたプラットフォームに由来する定量的蛍光シグナルを、UV可視分光光度計を用いて観察した。具体的には、前記プラットフォーム300μlを黒色96ウェルプレート中に充填した。UV励起波長は385nmであり、発光波長は625nmであった。
【0126】
図8は、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の実際のサンドウィッチアッセイへの適用を示す。
図8の左側から分かるように、3.2~3.2×10
-4HAUの範囲よりも広範な領域で蛍光が検出された。
図8の右側から分かるように、リアルタイムPCRで同じ標的物質を検出したときと顕著な差は無かった。これらの結果より、本発明の多層多量子ドット含有ナノ粒子の使用はリアルタイムPCRに比肩するレベルの正確かつ迅速な診断を可能とし、logで10以上となる広いダイナミックレンジの達成に有効であると結論付けられた。
【0127】
本発明の多層多量子ドットでドープされたナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、量子ドット埋め込み層、及びシリカ/量子ドット複合シェルからなる構造を有する。本発明の多層多量子ドットでドープされたナノ粒子は、量子ドットによって被覆される大面積と量子ドットの安定した結合を維持しつつ、改善した量子収率(QY)及び輝度を有する生体分子を検出するために使用することができる。したがって、本発明の多層多量子ドットでドープされたナノ粒子はバイオプラットフォーム及び生体分子検出のための高感度な方法などの生物学的用途に好適である。
本開示に係る態様には以下の態様も含まれる。
<1> それぞれのナノ粒子が、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子の表面に結合した複数の量子ドットを含み、かつ、前記コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び、前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む、量子ドットでドープされたナノ粒子。
<2> 前記量子ドット埋め込み層を構成する前記量子ドットが前記シリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料と架橋結合しており、前記架橋により前記量子ドットが前記シリカ材料にランダムに結合した構造が形成されている、<1>に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
<3> 前記量子ドットに対する結合部位を提供する材料によって前記架橋結合が形成されており、前記量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料はその両末端に官能基を有し、前記材料の一方の末端に存在する官能基は前記量子ドットの表面に結合しており、かつ、前記材料の他方の末端に存在する官能基は前記シリカ/量子ドット複合シェルを構成する前記コア粒子又はシリカ粒子に結合している、<2>に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
<4> 前記量子ドット埋め込み層は疎水性有機化合物で被覆された前記量子ドットを前記コア粒子の外表面上に複数回ドープすることにより形成されており、ドープされた前記量子ドットは前記コア粒子の周囲に順々に層を形成している、<1>に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
<5> 前記シリカ/量子ドット複合シェルは前記量子ドット埋め込み層の外表面に形成される複数の層から構成され、前記量子ドット埋め込み層を連続的に取り囲む、<1>に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
<6> 前記シリカ/量子ドット複合シェルを取り囲むシリカベースのシェルをさらに含む、<1>に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
<7> 前記量子ドットがタイプIの量子ドットである、<1>に記載の量子ドットでドープされたナノ粒子。
<8> (a)量子ドットに対する結合部位を提供する材料でポリマー又は無機のコア粒子の表面を修飾すること、(b)ステップ(a)の反応産物に疎水性有機化合物で被覆された量子ドットを供与し、反応を進行させて、前記コア粒子の外表面を取り囲む前記量子ドットを含む量子ドット埋め込み層を形成すること、(c)量子ドットに対する結合部位を提供する材料でステップ(b)の反応産物の表面を修飾すること、(d)ステップ(c)の反応産物に塩基を供与し、反応を進行させて、前記量子ドット埋め込み層の表面上に量子ドットに対する追加の結合部位を形成すること、及び、(e)ステップ(d)の反応産物にシラノール反応物質及び塩基を供与し、反応を進行させ、生じた反応産物を精製して複数の層の前記量子ドットが前記コア粒子を取り囲んでいる構造を有しているシリカ/量子ドット複合シェルを形成すること、を含む、量子ドットでドープされたナノ粒子の作製方法。
<9> ステップ(e)の前に、ある特定の回数だけ、ステップ(c)及びステップ(d)が繰り返される、<8>に記載の方法。
<10> ステップ(a)において、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料を前記コア粒子と反応させて量子ドットに対する表面結合部位が形成されているコアを調製する、<8>に記載の方法。
<11> ステップ(b)の反応産物に疎水性有機溶媒を供与し、反応を進行させて、未結合の量子ドットをコア表面上の前記量子ドットに対する前記結合部位に結合させる、<8>に記載の方法。
<12> ステップ(c)において、量子ドットに対する結合部位を提供する前記材料をステップ(b)の反応産物に供与し、反応を進行させて、前記材料の一方の末端に存在する官能基が前記量子ドット埋め込み層を構成する前記量子ドットの表面に結合し、かつ、前記材料の他方の末端に存在する官能基が前記シリカ/量子ドット複合シェルを構成するシリカ材料と結合する部位として提供されるようにする、<8>に記載の方法。
<13> 前記量子ドットと、前記コア粒子と、結合部位を提供する前記材料との体積比が、1:0.000001~60:0.000001~890である、<8>に記載の方法。
<14> 前記コア粒子と、前記量子ドット埋め込み層と、前記シリカ/量子ドット複合シェルとの幅厚比が、1:0.1~9:1~10である、<8>に記載の方法。
<15> 量子ドットでドープされたナノ粒子が固定化されている感応膜表面を含む生物学的検出キット、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
<16> 量子ドットでドープされたナノ粒子、及び、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子とサンドウィッチアッセイ構造体を形成する磁性ビーズ、を含み、前記磁性ビーズが磁性材料を含有する高分子量重合体からなる、バイオプラットフォーム。
<17> 量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々が、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子の表面に結合した複数の量子ドットを含み、かつ、前記コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び、前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェル、を含む、<16>に記載のバイオプラットフォーム。
<18> 前記量子ドット埋め込み層内の前記量子ドットが前記コア粒子の表面を取り囲み、取り囲んでいる前記量子ドットの複数の層が互いに積層されている、<17>に記載のバイオプラットフォーム。
<19> 量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の前記コア粒子と、前記量子ドット埋め込み層と、前記シリカ/量子ドット複合シェルとの幅厚比が1:0.1~9:1~10である、<18>に記載のバイオプラットフォーム。
<20> <16>から<19>のいずれか1つに記載のバイオプラットフォームに生物学的試料を注入して反応を進行させること、及び前記反応の間に放出される蛍光の強度を測定すること、を含む生物学的検出方法、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子の表面に結合した複数の量子ドットを含み、かつ、前記コア粒子の表面全体を取り囲む量子ドット埋め込み層、及び、前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェル、を含み、前記量子ドット埋め込み層内の前記量子ドットは前記コア粒子の表面を取り囲み、取り囲んでいる前記量子ドットの複数の層は互いに積層されている。
<21> 量子ドットでドープされたナノ粒子が固定化されている感応膜表面を含む生物学的検出キットに生物学的試料を注入して反応を進行させること、及び、前記反応の間に放出される蛍光の強度を測定すること、を含む生物学的検出方法、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び、前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェル、を含む。
<22> 量子ドットでドープされた前記ナノ粒子は様々なサイズの量子ドットを用い、それにより、前記ナノ粒子の各々が有するシェル表面を生物学的試料の(多重)標識部位として機能させることができる、<21>に記載の生物学的検出方法。
<23> 前記蛍光強度が光学的方法により測定されるか、又は前記蛍光強度から変換された電気的信号が測定される、<21>に記載の生物学的検出方法。
<24> 量子ドットでドープされたナノ粒子及び量子ドットでドープされた前記ナノ粒子とサンドウィッチアッセイ構造体を形成する磁性ビーズを含むバイオプラットフォームに生物学的試料を注入して反応を進行させること、及び、前記反応の間に放出される蛍光の強度を測定すること、を含む生物学的検出方法、ここで、量子ドットでドープされた前記ナノ粒子の各々は、ポリマー又は無機のコア粒子、前記コア粒子にドープされた量子ドットを含む量子ドット埋め込み層、及び前記量子ドット埋め込み層を取り囲むシリカ/量子ドット複合シェルを含む。
<25> 前記バイオプラットフォームを構成する量子ドットでドープされた前記ナノ粒子が様々なサイズの量子ドットを用い、それにより、前記ナノ粒子の各々が有するシェル表面を生物学的試料の(多重)標識部位として機能させることができる、<24>に記載の生物学的検出方法。
<26> 前記蛍光強度が光学的方法により測定されるか、又は前記蛍光強度から変換された電気的信号が測定される、<24>に記載の生物学的検出方法。