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特許7058402液体クロマトグラフ用ノズル及び液体クロマトグラフ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ用ノズル及び液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20220415BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
G01N30/60 P
G01N30/46 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021030173
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519288973
【氏名又は名称】株式会社プレッパーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】521086187
【氏名又は名称】株式会社AUC
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 健
(72)【発明者】
【氏名】小海 貴裕
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-238468(JP,A)
【文献】特開昭55-135744(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175651(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/116432(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199335(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/017765(WO,A1)
【文献】特表2002-530674(JP,A)
【文献】特開2006-292636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラムと、当該カラムの各端部に連続する複数の連通孔を有し、前記複数本のカラムの各端部を挟む一対の端盤と、を備えたカラムユニットの上流側と下流側とに配備され、前記カラムユニットの端盤に向かって前記カラムの姿勢と同じ方向で相対的に前進・後退する液体クロマトグラフ用ノズルであって、
前記カラムの端部内に押し込むように挿入される部分を有する縮径部と、前記端盤の前記連通孔内に挿入される拡径部とを備え、
前記縮径部は、先端縁から前記拡径部の方へ次第に拡径するテーパ部を有している、
液体クロマトグラフ用ノズル。
【請求項2】
前記端盤の前記連通孔は、前記カラムに連続する小径部と、前記端盤の表面側で開口する大径部と、を有する段付孔に形成され、
前記縮径部は、前記小径部内に挿入される基部を有している、
請求項1に記載の液体クロマトグラフ用ノズル。
【請求項3】
前記拡径部の基端部側端縁に連設された軸状の接続端部を有している、
請求項1又は2に記載の液体クロマトグラフ用ノズル。
【請求項4】
筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラムと、当該カラムの各端部に連続する複数の連通孔を有し、前記複数本のカラムの各端部を挟む一対の端盤と、を備えたカラムユニットと、
前記カラムユニットの上流側と下流側とに配備される、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の液体クロマトグラフ用ノズルと、
上流側の前記カラムユニットに対向して前記液体クロマトグラフ用ノズルを前進・後退させるスライド機構と、
並列された前記カラムのピッチ分で前記カラムユニットを間歇的に移動させる駆動機構と、
を備えている、
液体クロマトグラフ。
【請求項5】
前記カラムユニットは、複数の前記カラムを鉛直方向に配置し、
前記駆動機構は、鉛直方向にも昇降する、
請求項4に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項6】
前記スライド機構は、ピストンロッドを有する水平姿勢のピストンと、前記ピストンロッドに固定され、かつ、上流側の前記液体クロマトグラフ用ノズルを保持するホルダとを備えている、
請求項4又は5に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記スライド機構に対向する側にストッパを備え、
前記スライド機構は、前記ピストンを設置し、かつ、前記ストッパが接離するベースプレートを備えている、
請求項6に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項8】
前記スライド機構は、上流側の前記液体クロマトグラフ用ノズルの前記縮径部を前記カラムの上流側端部内に挿入・脱抜し、前記カラムユニットを前記下流側の液体クロマトグラフ用ノズルの方へ前進・後退させ、前記下流側の液体クロマトグラフ用ノズルを前記カラムの下流側端部内に挿入・脱抜する、
請求項4乃至7のうちいずれか1項に記載の液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の試料を成分ごとに分離して検出する液体クロマトグラフ、及びこの液体クロマトグラフに備えられる液体クロマトグラフ用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品、飲料など、種々の成分を含む試料を物理的に分離する技術として、クロマトグラフィー(方法)やクロマトグラフ(装置)が使用されている。クロマトグラフは、カラムや検出器などを備えている。カラムは、ステンレス鋼や樹脂などによって筒状に形成されている。カラム内には、固定相と呼ばれる媒体が充填されている。固定相は、シリカゲル、多孔性ゲル、合成樹脂などの粒体である。
【0003】
試料は、移動相と呼ばれる媒体の流れに載せられ、カラム内を移動する。移動相に液体を用いるクロマトグラフは、液体クロマトグラフと呼ばれる。試料に含まれる種々の成分は、移動相の流れとともに、固定相と相互作用しながらカラム内の固定相を通過する。試料に含まれる種々の成分は、カラム内を異なる速さで進む。したがって、各成分は、異なるタイミングでカラムから検出器に送液され、検出器で分析される。
【0004】
このような液体クロマトグラフの一例であるマイクロカラムアレイシステムが特許文献1に記載されている。このマイクロカラムアレイシステムは、複数のカラムが列設されたカラムユニットと、複数のカラムに送液する送液ユニットと、複数のカラムに溶離液に溶解した試料(特許文献1では「検出対象物」)を注入する注入手段と、カラムユニットを経由した検出物を検出する検出手段と、を備えている。
【0005】
送液ユニットは、溶離液を圧送する溶液ポンプと、この溶液ポンプから各マイクロカラムの入口にかけて配管される配管系(主配管及び枝配管)と、各枝配管に介挿された送液選択機構とから構成される。配管系では、マイクロチューブや分岐管が組み合わされている。送液機構は、各枝配管に介挿された電磁弁、又はクリップなどで開閉するマイクロチューブなどで構成される。溶液ポンプから送出される溶離液は、送液機構が開閉制御されることで、選択された枝配管から各マイクロカラムに分配供給される。溶離液は、マクロカラムにおいて試料を分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-292636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたマイクロカラムアレイシステムは、複数本のマイクロカラムから選択されたマイクロカラムに溶離液を分配供給するため、送液選択機構を備えている。送液選択機構は、各枝配管に介挿された電磁弁、又はクリップなどで開閉するマイクロチューブなどで構成される。したがって、マイクロカラムアレイシステムは、送液選択機構によって複雑な構成となっている。
【0008】
本発明は、並列された複数本のカラムから1本のカラムを選択して溶離液を送液することができる簡素な液体クロマトグラフ、及びこの液体クロマトグラフに備えられる液体クロマトグラフ用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズルは、
筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラムと、当該カラムの各端部に連続する複数の連通孔を有し、前記複数本のカラムの各端部を挟む一対の端盤と、を備えたカラムユニットの上流側と下流側とに配備され、前記カラムユニットの端盤に向かって前記カラムの姿勢と同じ方向で相対的に前進・後退する液体クロマトグラフ用ノズルであって、
前記カラムの端部内に押し込むように挿入される部分を有する縮径部と、前記端盤の前記連通孔内に挿入される拡径部とを備え、
前記縮径部は、先端縁から前記拡径部の方へ次第に拡径するテーパ部を有している。
【0010】
前記液体クロマトグラフ用ノズルにおいて、
前記端盤の前記連通孔は、前記カラムに連続する小径部と、前記端盤の表面側で開口する大径部と、を有する段付孔に形成され、
前記縮径部は、前記小径部内に挿入される基部を有している。
【0011】
前記液体クロマトグラフ用ノズルにおいて、
前記拡径部の基端部側端縁に連設された軸状の接続端部を有している。
【0012】
本発明に係る液体クロマトグラフは、
筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラムと、当該カラムの各端部に連続する複数の連通孔を有し、前記複数本のカラムの各端部を挟む一対の端盤と、を備えたカラムユニットと、
前記カラムユニットの上流側と下流側とに配備される、本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズルと、
上流側の前記カラムユニットに対向して前記液体クロマトグラフ用ノズルを前進・後退させるスライド機構と、
並列された前記カラムのピッチ分で前記カラムユニットを間歇的に移動させる駆動機構と、
を備えている。
【0013】
前記本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記カラムユニットは、複数の前記カラムを鉛直方向に配置し、
前記駆動機構は、鉛直方向にも昇降する。
【0014】
前記本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記スライド機構は、ピストンロッドを有する水平姿勢のピストンと、前記ピストンロッドに固定され、かつ、上流側の前記液体クロマトグラフ用ノズルを保持するホルダとを備えている。
【0015】
前記本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記駆動機構は、前記スライド機構に対向する側にストッパを備え、
前記スライド機構は、前記ピストンを設置し、かつ、前記ストッパが接離するベースプレートを備えている。
【0016】
前記本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記スライド機構は、上流側の前記液体クロマトグラフ用ノズルの前記縮径部を前記カラムの上流側端部内に挿入・脱抜し、前記カラムユニットを前記下流側の液体クロマトグラフ用ノズルの方へ前進・後退させ、前記下流側の液体クロマトグラフ用ノズルを前記カラムの下流側端部内に挿入・脱抜する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、並列された複数本のカラムから1本のカラムを選択して溶離液を送液することができる簡素な液体クロマトグラフ、及びこの液体クロマトグラフに備えられる液体クロマトグラフ用ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る液体クロマトグラフを示す斜め前方から見た概略斜視図である。
図2】本発明に係る液体クロマトグラフを示す斜め後方から見た概略斜視図である。
図3】本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズルを含む液体クロマトグラフの要部を示す斜め前方から見た概略斜視図である。
図4】本発明に係る液体クロマトグラフに備えられたカラムユニットを示す概略斜視図である。
図5】本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル及びカラムの一部を示す断面平面図である。
図6】本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズルの一部及びカラムの一部であって、図5の一点鎖線で囲った部分を示す拡大断面平面図である。
図7】本発明に係る液体クロマトグラフの動作初期の状態を示す平面図である。
図8】本発明に係る液体クロマトグラフの動作途中の状態を示す平面図である。
図9】本発明に係る液体クロマトグラフの動作途中の状態を示す平面図である。
図10】本発明に係る液体クロマトグラフの別の動作初期の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル及び液体クロマトグラフの一実施形態について図1乃至図10を参照しながら説明する。なお、この流体クロマトグラフは、順相クロマトグラフ(NPLC)と逆相クロマトグラフ(RPLC)のいずれにも対応できる。NPLCの場合は、分離剤としてシリカゲル、ポリアミン、カーボンナノチューブ(CN)などが使われ、溶離液として無極性溶媒であるn-ヘキサンなどが用いられる。一方、RPLCの場合は、分離剤として、シリカゲルにC19(オクタデシル基、ODS)をはじめ、C8,C4,Cl,Phなどをリガンド修飾させた化学結合充填剤が用いられ、溶離液としては、極性溶媒である水やアセトニトリル(ACN)などが用いられる。なお、リガンド修飾するのに用いるリガンドは、既存の有機高分子から分離対象物によって合わせて選択することができる。また、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、ゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)、イオン交換クロマトグラフィー、キラルクロマトグラフィーなど、HPLC用カラムに用いられている各種分離剤は、本発明で用いることができる。
【0020】
図1は、本発明に係る液体クロマトグラフを示す斜め前方から見た概略斜視図である。図2は、本発明に係る液体クロマトグラフを示す斜め後方から見た概略斜視図である。図3は、本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズルを含む液体クロマトグラフの要部を示す斜め前方から見た概略斜視図である。図4は、本発明に係る液体クロマトグラフに備えられたカラムユニットを示す概略斜視図である。図5は、本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル及びマイクロカラムを示す平面図である。図6は、本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズルの一部及びカラムの一部であって、図5の一点鎖線で囲った部分を示す拡大断面平面図である。 図7は、本発明に係る液体クロマトグラフの動作初期の状態を示す平面図である。図8は、本発明に係る液体クロマトグラフの動作途中の状態を示す平面図である。図9は、本発明に係る液体クロマトグラフの動作途中の状態を示す平面図である。図10は、本発明に係る液体クロマトグラフの別の動作初期の状態を示す平面図である。
【0021】
図1に示すように、液体の試料を成分ごとに分離して検出するための液体クロマトグラフは、カラムユニット1と、液体クロマトグラフ用ノズル(以下、主として「ノズル」という。)2と、スライド機構3と、駆動機構4と、を備えている。液体クロマトグラフは、水平姿勢に設置されたベースプレート5をさらに備えている。ベースプレート5には、カラムユニット1を囲む開口部51が形成されている。
【0022】
図4に示すように、カラムユニット1は、複数本のカラム11と、一対の端盤12と、を備えている。カラムユニット1は、さらに、固定具13とストッパ14と、を備えている。
【0023】
図5及び図6に示すように、カラム11は、ステンレスやフッ素樹脂などの樹脂などによって形成された円筒体であり、固定相(図示せず)が充填され、試料が上流側(図面では左側)から下流側(図面では右側)へ送液される。図4に示すように、カラム11は、水平姿勢で多数本(図面では、水平方向に等間隔に20本、鉛直方向に等間隔に5本、合計100本)並列されている。カラム11内には、両端部を除いて固定相(図示せず)が充填される。カラム11の少なくとも両端部は、弾力性を有し、ノズル2の先端部が圧入されることで、わずかに圧縮変形する。
【0024】
並列した複数本のカラム11の各端縁には、帯板状の固定具13が取り付けられている。固定具13には、複数本のカラム11にそれぞれ連通する連通孔131が複数個(図面では、100個)形成されている。図5及び図6に示すように、固定具13の連通孔131は、カラム11側が小径で外側が大径の段付孔のように形成されている。両固定具13は、水平姿勢のプレート15上にセッティングされる。図4に示すように、試料の上流側となるカラム11の一端部を配置した側(図面では左側)のプレート15には、階段状に折り曲げられた板状のストッパ14が下向きに突設している。固定具13、テーブル及びストッパ14は、ステンレス鋼又は樹脂などによって形成されている。
【0025】
各固定具13の外面には、樹脂製の端盤12が接合されている。端盤12は、固定具13と同じ高さや長さに形成され、カラム11及び固定具13の連通孔131に連通する連通孔121が形成されている。端盤12の連通孔121は、外面に皿穴を形成している。なお、ストッパ14は、上流側の端盤12の表面(図面において左側の露出面)よりも上流側に位置する。
【0026】
このようなカラムユニット1は、カラム11の姿勢と同じ方向、すなわちカラム11の長さ方向に前進・後退する。また、カラムユニット1は、駆動機構4によって隣り合ったカラム11のピッチと同じピッチで幅方向と鉛直方向に間歇的に移動する。
【0027】
カラムユニット1の上流側と下流側には、ノズル2が配備される。図5に示すように、各ノズル2は、縮径部21と、拡径部22と、大径部23と、を同軸に備えている。縮径部21、拡径部22及び大径部23の中心軸には、連続する流路(採番せず)が形成されている。各ノズル2は、さらに接続端部24を備えている。接続端部24の中心軸には、流路と同軸の段付き孔が形成されている。接続端部24には、筒状のコネクタ25が接続される。コネクタ25の先端部は、接続端部24の段付き孔の奥部にカシメられ、固定される。コネクタ25の中心軸には、接続孔(採番せず)が形成されている。この接続孔には、試料が送液されるチューブ6の先端部が挿し込まれれる。チューブ6の上流端には、ポンプ(図示せず)が取り付けられる。ポンプは、液体クロマトグラフ用のポンプでもよいし、シリンジポンプなどであってもよい。
【0028】
ノズル2の縮径部21は、テーパ部211と小径ストレート部212とを連続して設けている。テーパ部211は、カラム11の端部内に容易に押し込むことができるように先端縁から拡径部22の方へ小さな角度(例えば10°程度)で拡径する。小径ストレート部212は、カラム11の内径よりも若干大きな外形に形成されている。縮径部21が挿入されるカラム11の端部は弾力性を有しているため、小径ストレート部212がカラム11の端部を拡径するようになり、カラム11の端部が栓をされるように密着する。したがって、カラム11の端部とノズル2の縮径部21とは、水密性が確保される。
【0029】
ノズル2の大径部23は、固定具13の連通孔131の小径内を貫通する。ノズル2の拡径部22と縮径部21のストレート部との境界は、大きな角度(例えば20°程度)のテーパ状に形成されている。このテーパ状の部分は、カラム11の端部に形成された皿穴の部分より長く形成され、両者間での液密性が確保される。
【0030】
ノズル2に備えられた接続端部24の外周には、2本の環状溝(採番せず)が形成されている。環状溝には、Oリング26が嵌められている。Oリング26は、緩衝性を有している。したがって、ノズル2の接続端部24は、Oリング26によって位置ずれが許容されつつセンタリングされる。
【0031】
ノズル2は、スライド機構3によって前進・後退する。スライド機構3は、ベースプレート5の一端側(図面では左側)に設置され、ヘッダ31と、ピストン32と、アクチュエータ33と、一対のガイドロッド34と、ブロック35と、を備えている。
【0032】
ヘッダ31には、ノズル2の接続端部24の先端側が入る貫通穴が形成されている。ピストン32は、ピストンロッド321を備えている。ピストンロッド321は、アクチュエータ33によって突出・退入する。ピストンロッド321の先端部には、ブロック35の基端部が固定される。ガイドロッド34は、ピストン32の両サイドに設置される。ガイドロッド34の先端部には、ブロック35の基端部が固定される。ブロック35は、ガイドロッド34によって水平姿勢を維持し、ピストンロッド321によって前進・後退する。
【0033】
ブロックには、ノズル2の接続端部24を入れる取付穴(採番せず)が形成されている。この取付穴内にノズル2の接続端部24の中間部が入れられる。接続端部24の中間部には、Oリング26が嵌められているため、このOリング26が取付穴の内面に当たり、ノズル2がセンタリングできるようにされている。ブロック35の先端面には、ヘッダ31が固定される。ピストンロッド321が突出・退入することで、ヘッダ31に固定された上流側のノズル2がカラム11の上流側に向かって前進・後退する。
【0034】
上流側のノズル2と向き合うように下流側のノズル2が配置される。ただし、上流側のノズル2と下流側のノズル2との間にカラムユニット1が配置され、両ノズル2が各カラム11の端部内に挿入されるように位置決めされる。下流側のノズル2は、ベースプレート5の他端側(図面では右側)の基台52上に固定され、移動しない。
【0035】
ここで、液体クロマトグラフを使用して、試料を成分ごとに分離して検出するための方法について説明する。図4に示すカラム11において、左上のカラム11を(1-1)カラム11と呼び、右側に1本ずつ隣り合うカラム11を(1-2)カラム11、(1-3)カラム11と呼ぶ。図4に示すカラムユニット1における最上段のカラム11は、(1-20)カラム11まで並列されている。上から2段目のカラム11は、(2-1)カラム11から(2-20)カラム11まで並列されている。このカラムユニット1は、カラム11が5段に重ねられているため、最下段のカラム11は、(5-1)カラム11から(5-20)カラム11まで並列されている。
【0036】
図7乃至図10を参照して、液体クロマトグラフを使用して試料を送液する方法を第1段階から第10段階に分けて説明する。
【0037】
図7に示すように、スタンバイの第1段階では、上流側のノズル2が(1-1)カラム11の上流端から少し離れて向き合い、下流側のノズル2が、(1-1)カラム11の下流端から少し離れて向き合っている。したがって、カラムユニット1をセッティングしているテーブルは、カラム11の上流端から下流端を見たときのカラム11の右側(図面では下側)に位置している。
【0038】
図8に示すように、第2段階では、スライド機構3によって上流側のノズル2が前進(図8において右方向に移動)し、図5及び図6に示すように、上流側のノズル2の縮径部21が(1-1)カラム11の上流側の端部内に挿入される。端盤12の表面が皿穴状に形成されているため、上流側のノズル2の中心軸と(1-1)カラム11の中心軸とが厳密に一致していなくても、縮径部21のテーパ部211が(1-1)カラム11の上流側の端部内に押し込むように挿入される。ノズル2は、Oリング26によってセンタリングされる。また、カラム11の端部は、弾力性を有している。したがって、図6に示すように、上流側ノズル2の縮径部21のストレート部212とカラム11の端部とは、密着する。また、ノズル2の縮径部21と拡径部22との境界に形成されたテーパ状の部分で押し付けられるカラム11の端部が皿穴状に変形する。
【0039】
第3段階では、スライド機構3によって上流側のノズル2をさらに前進させる。そうすると、駆動機構4のテーブルが押され、(1-1)カラム11は、下流側のノズル2の方へ移動する。図9に示すように、第4段階では、(1-1)カラム11の下流側の端部内に下流側のノズル2の縮径部21が挿し込まれる。下流側のノズル2の縮径部21は、先端縁から次第に拡径しているため、スムーズに(1-1)カラム11の端部内に液密に挿し込まれる。下流側ノズル2の縮径部21のテーパ部211とカラム11の端部とは、密着する。
【0040】
第5段階では、種々の成分を含む試料が上流側のノズル2に接続されたチューブ6にポンプから送液される。試料は、上流側のノズル2からカラム11内に送液される。試料は、カラム11内で成分ごとに分離し、異なる速度で下流側へ移動する。そして、各成分は、異なるタイミングで下流側のノズル2に送液される。カラム11の各端部は、弾力性を有し、各ノズル2の縮径部21と密着することで、水密性が確保されていることから、試料はこのカラム11の端部から漏出しない。試料が下流側のノズル2からチューブ6に送液され、チューブ6に接続された検出器(図示せず)で分析される。所定量の資料が送液されると、試料のチューブ6への送液は一時中断される。
【0041】
第6段階では、スライド機構3のピストンロッド321が退入することによって上流側のノズル2が後退(図面において左方向へ移動)する。上流側のノズル2とカラム11の上流側の端部とが嵌合していることから、カラム11も上流側のノズル2に追随して後退する。しかし、下流側のノズル2は、基台52に固定されているため、上流側のノズル2に追随することなく、移動しない。したがって、カラム11の下流側の端部が下流側のノズル2のから抜ける。つまり、この第6段階では、図8と同じ状態となる。
【0042】
上流側のノズル2に引っ張られるようにして後退するカラム11は、駆動機構4のテーブルから突設したストッパ14がスライド機構3のベースプレート5の開口部51のエッジに当たることで、停止する。第7段階では、引き続き、スライド機構3のピストンロッド321が退入することで、上流側のノズル2の縮径部21がカラム11の上流側の端部内から脱抜する。つまり、この段階では、図7と同じ状態となる。
【0043】
図10に示すように、第8段階では、両ノズル2が(1-1)カラム11に対向していた状態から(1-2)カラム11に対向するように、駆動機構4によってカラムユニット1がカラム11の径方向(図10では左上方向)に1ピッチ移動する。液体クロマトグラフは、この後、第2段階から第4段階の動作のように作動し、第5段階と同様、試料が(1-2)カラム11内を送液され、下流側のノズル2から排出される。そして、第9段階では、第7段階と同様、両ノズル2がカラム11の両端部から脱抜する。
【0044】
そして、第8段階と同様、駆動機構4が水平方向に1ピッチ移動することで、両ノズル2は(1-3)カラム11と対向し、上流側のノズル2から試料を(1-3)カラム11内に送液し、下流側のノズル2から排出する。同じ動作が繰り返されることで、(1-20)カラム11まで使用される。
【0045】
次の第9段階では、駆動機構4によってカラムユニット1が1ピッチ上昇し、第2段階から第4段階の動作のように作動し、(2-1)カラム11に試料を送液する。そして、第8段階のように作動することで、(2-2)カラム11から(2-20)カラム11に試料を送液するための動作は、第1段階から第7段階までと同じ動作によって試料が上流側のノズル2からカラム11内に送液され、下流側のノズル2へ排出される。
【0046】
第9段階以降の段階でも同様に、駆動機構4によってカラムユニット1が1ピッチ上昇し、(3-1)カラム11に試料を送液する。(3-2)カラム11から(3-20)カラム11についても同様に試料を送液し、駆動機構4によってカラムユニット1が1ピッチ上昇し、(4-1)カラム11から(4-20)カラム11に試料をそれぞれ送液し、(5-1)カラム11から(5-20)カラム11についてもそれぞれ試料を送液する。
【0047】
このようにすべてのカラム11に試料が送液されると、カラム11内の固定相を交換するため、カラムユニット1を分解する。すなわち、カラムユニット1の端盤12及び固定板を外すことで、カラム11が交換される。
【0048】
本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル2及び液体クロマトグラフの実施の形態は、前記内容に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で変形や改良などを含む。
【0049】
前記実施の形態では、ノズル2は小径部がテーパ部211と小径ストレート部212とを連接しているとした。しかし、ノズル2は、小径ストレート部212に替え、テーパ部211から拡径部22の方へ次第に縮径・拡径するように形成されてもよい。この縮径・拡径は、一連だけでなく、複数連形成されてもよい。
【0050】
前記実施の形態では、ノズル2は接続端部24を有しているとした。しかし、ノズル2は、接続端部24を有しないで、拡径部22がスライド機構3のヘッダ31や基台52に固定されるようにしてもよい。
【0051】
前記実施の形態では、カラム11は100本並列されるとした。カラム11の本数が限定されないことはいうまでもない。また、カラム11は、水平方向に1列に並列されてもよい。この場合において、駆動機構4は、昇降する機能を備える必要はない。また、前記実施の形態では、カラム11は円筒体であるとした。しかし、カラム11の各端部は、皿穴状に拡径していてもよい。
【0052】
本発明のバリエーションの液体クロマトグラフは、本発明のノズル2を使用することなく、カラム11の端部に挿入される縮径部を有するノズルを使用して、液体クロマトグラフを駆動してもよい。すなわち、バリエーションの液体クロマトグラフに備えられるノズルは、縮径部が、テーパ部211を有しない小径ストレート部だけを有し、あるいは逆に、小径ストレート部を有しないでテーパ部だけを有してもよい。
【0053】
すなわち、この液体クロマトグラフは、
筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラム11と、当該カラム11の各端部に連続する複数の連通孔121を有し、前記複数本のカラム11の各端部を挟む一対の端盤12と、を備えたカラムユニット1と、
前記カラムユニット1の上流側と下流側とに配備される液体クロマトグラフ用ノズルと、
上流側の前記カラムユニット1に対向して前記液体クロマトグラフ用ノズルを前進・後退させるスライド機構3と、
並列された前記カラム11のピッチ分で前記カラムユニット1を間歇的に移動させる駆動機構4と、
を備えている、
ようにしてもよい。
【0054】
また、前記実施の形態の流体クロマトグラフは、両ノズル2が同じタイプであるとした。しかし、流体クロマトグラフは、一方のノズル2がテーパ部と小径ストレート部とを有する縮径部を備え、他方のノズルがテーパ部211を有しない小径ストレート部だけを有し、あるいは逆に、小径ストレート部を有しないでテーパ部だけを有している縮径部を備えてもよい。
【0055】
以上まとめると、本発明が適用される液体クロマトグラフ用ノズル2及び液体クロマトグラフは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態をとることができる。
【0056】
本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル2は、
筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラム11と、当該カラム11の各端部に連続する複数の連通孔121を有し、前記複数本のカラム11の各端部を挟む一対の端盤12と、を備えたカラムユニット1の上流側と下流側とに配備され、前記カラムユニット1の端盤12に向かって前記カラム11の姿勢と同じ方向で相対的に前進・後退する液体クロマトグラフ用ノズル2であって、
前記カラム11の端部内に押し込むように挿入される部分を有する縮径部21と、前記端盤12の前記連通孔121内に挿入される拡径部22とを備え、
前記縮径部21は、先端縁から前記拡径部22の方へ次第に拡径するテーパ部211を有している。
【0057】
この液体クロマトグラフ用ノズル2は、液体クロマトグラフ用ノズル2がテーパ部211を有する縮径部21を備えていることにより、この縮径部21を端盤12の連通孔121からカラム11の端部内に容易に挿入することができる。そして、カラム11の端部が弾力性を有していることから、液体クロマトグラフ用ノズル2は、カラム11の端部に密着する。
【0058】
本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル2において、
前記端盤12の前記連通孔121は、前記カラム11に連続する小径部と、前記端盤12の表面側で開口する大径部23と、を有する段付孔に形成され、
前記縮径部21は、前記小径部内に挿入される基部を有している。
【0059】
この液体クロマトグラフ用ノズル2は、縮径部21が端盤12の小径部に挿入される基部を有していることにより、外力が基部から端盤12の小径部で緩和され、縮径部21に加わりにくいようにすることができる。
【0060】
本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル2において、
前記拡径部22の基端部側端縁に連設された軸状の接続端部24を有している。
【0061】
この液体クロマトグラフ用ノズル2は、接続端部24を有していることにより、この接続端部24をスライド機構3などに固定しやすくすることができる。
【0062】
本発明に係る液体クロマトグラフは、
筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラム11と、当該カラム11の各端部に連続する複数の連通孔121を有し、前記複数本のカラム11の各端部を挟む一対の端盤12と、を備えたカラムユニット1と、
前記カラムユニット1の上流側と下流側とに配備される、本発明に係る液体クロマトグラフ用ノズル2と、
上流側の前記カラムユニット1に対向して前記液体クロマトグラフ用ノズル2を前進・後退させるスライド機構3と、
並列された前記カラム11のピッチ分で前記カラムユニット1を間歇的に移動させる駆動機構4と、
を備えている。
【0063】
この液体クロマトグラフは、駆動機構4によって並列されたカラム11を間歇的に移動させ、スライド機構3によってこのカラム11の端部内に液体クロマトグラフ用ノズル2を挿入・脱抜することができる。
【0064】
本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記カラムユニット1は、複数の前記カラム11を鉛直方向に配置し、
前記駆動機構4は、鉛直方向にも昇降する。
【0065】
この液体クロマトグラフは、複数のカラム11が鉛直方向に配置されることで、カラムユニット1に多数のカラム11を備えることができ、駆動機構4が鉛直方向にも昇降することで、鉛直方向に配置されたカラム11にも液体クロマトグラフ用ノズル2を挿入・脱抜することができる。
【0066】
本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記スライド機構3は、ピストンロッド321を有する水平姿勢のピストン32と、前記ピストンロッド321に固定され、かつ、上流側の前記液体クロマトグラフ用ノズル2を保持するホルダとを備えている。
【0067】
この液体クロマトグラフは、ピストン32に備えられたピストンロッド321によって液体クロマトグラフ用ノズル2をカラム11の端部内に挿入・脱抜することができる。
【0068】
本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記駆動機構4は、前記スライド機構3に対向する側にストッパ14を備え、
前記スライド機構3は、前記ピストン32を設置し、かつ、前記ストッパ14が接離するベースプレートを備えている。
【0069】
本発明に係る液体クロマトグラフは、スライド機構3によってカラム11内に挿入された液体クロマトグラフ用ノズル2をカラム11から脱抜するために移動したとき、駆動機構4に備えられたストッパ14がスライド機構3に当たることによってカラムユニット1が停止し、カラム11の端部内に挿入された液体クロマトグラフ用ノズル2をカラム11内から確実に脱抜することができる。
【0070】
本発明に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記スライド機構3は、上流側の前記液体クロマトグラフ用ノズル2の前記縮径部21を前記カラム11の上流側端部内に挿入・脱抜し、前記カラムユニット1を前記下流側の液体クロマトグラフ用ノズル2の方へ前進・後退させ、前記下流側の液体クロマトグラフ用ノズル2を前記カラム11の下流側端部内に挿入・脱抜する。
【0071】
本発明に係る液体クロマトグラフは、スライド機構3によって液体クロマトグラフ用ノズル2をカラム11内に挿入・脱抜する一連の動作を連続させ、効率性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1………カラムユニット
11……カラム
12……端盤
121…連通孔
14……ストッパ
2………流体クロマトグラフ用ノズル(ノズル)
21……縮径部
211…テーパ部
22……拡径部
24……接続端部
3………スライド機構
32……ピストン
321…ピストンロッド
4………駆動機構
5………ベースプレート
【要約】      (修正有)
【課題】並列された複数本のカラムから1本のカラムを選択して溶離液を送液することができる簡素な液体クロマトグラフ用ノズル及び液体クロマトグラフを提供する。
【解決手段】液体クロマトグラフ用ノズル2は、カラムユニットの上流側と下流側とに配備され、カラムユニットの端盤12に向かってカラム11の姿勢と同じ方向で相対的に前進・後退する。カラムユニットは、筒状で、少なくとも両端部の内面が弾力性を有する並列された複数本のカラム11と、当該カラム11の各端部に連続する複数の連通孔を有し、複数本のカラム11の各端部を挟む一対の端盤12と、を備えている。液体クロマトグラフ用ノズル2は、カラム11の端部内に押し込むように挿入される部分を有する縮径部と、端盤12の連通孔内に挿入される拡径部とを備え、縮径部は、先端縁から拡径部の方へ次第に拡径するテーパ部を有している。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10