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特許7058405感温性樹脂、感温性粘着剤および感温性粘着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】感温性樹脂、感温性粘着剤および感温性粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/50 20060101AFI20220415BHJP
   C08G 77/44 20060101ALI20220415BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220415BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20220415BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20220415BHJP
   C09J 183/10 20060101ALI20220415BHJP
   C09J 183/14 20060101ALI20220415BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
C08G77/50
C08G77/44
C09J7/30
C09J183/05
C09J183/06
C09J183/10
C09J183/14
C08J5/18 CFH
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016124778
(22)【出願日】2016-06-23
(65)【公開番号】P2017226780
(43)【公開日】2017-12-28
【審査請求日】2019-05-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡士
(72)【発明者】
【氏名】河原 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕人
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186013(JP,A)
【文献】特表2004-515577(JP,A)
【文献】特表2006-520838(JP,A)
【文献】特開2000-081715(JP,A)
【文献】特開平08-048882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
C08J 3/00- 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)’または(I)’’で表され、融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度で流動性を示す、感温性樹脂。
【化1】
式(I)’または(I)’’中、R1は同一または異なって炭素数1~10のアルキル基および炭素数6~10のアリール基の少なくとも一方を示す。R2はアルケニル基を有する基を示す。R3は炭素数12~50の直鎖状アルキル基を示す。mは2~10の整数を示す。nは1~100の整数を示す。xは0~2000の整数を示す。yは100~2000の整数を示す。zは1~1000の整数を示す。
【請求項2】
前記融点が0℃以上である、請求項1に記載の感温性樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感温性樹脂を含有し、該樹脂の融点未満の温度で粘着力が低下する、感温性粘着剤。
【請求項4】
前記融点が0℃以上である、請求項3に記載の感温性粘着剤。
【請求項5】
Si-H基を有するポリシロキサンおよびシラノール-トリメチルシリル修飾MQレジンをさらに含有する、請求項3または4に記載の感温性粘着剤。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載の感温性粘着剤を含む、感温性粘着シート。
【請求項7】
請求項3~5のいずれかに記載の感温性粘着剤を含む粘着剤層が、基材の少なくとも一方の面に積層された、感温性粘着テープ。
【請求項8】
請求項1または2に記載の感温性樹脂、Si-H基を有するポリシロキサン、シラノール-トリメチルシリル修飾MQレジン、およびKarstedt触媒を含有する、感温性粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感温性樹脂、感温性粘着剤および感温性粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に示す感温性を有する感温性樹脂が知られている(例えば、特許文献1および2)。感温性樹脂は、粘着剤として使用されることが多いため、優れた耐熱性および耐薬品性を有することが望ましく、高い凝集力も要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-290138号公報
【文献】特開2008-179744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、優れた耐熱性および耐薬品性を有し、かつ高い凝集力を有する感温性樹脂、ならびにこれを含有する感温性粘着剤および感温性粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)下記式(I)で表され、融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度で流動性を示す、感温性樹脂。
【化1】
式(I)中、R1は同一または異なって炭素数1~10の炭化水素基を示す。R2はアルケニル基を有する基を示す。R3は炭素数12~50の直鎖状アルキル基を示す。mは2~10の整数を示す。nは1~100の整数を示す。xは0~2000の整数を示す。yは100~2000の整数を示す。zは1~1000の整数を示す。
(2)融点が0℃以上である、上記(1)に記載の感温性樹脂。
(3)上記(1)または(2)に記載の感温性樹脂を含有し、該樹脂の融点未満の温度で粘着力が低下する、感温性粘着剤。
(4)融点が0℃以上である、上記(3)に記載の感温性粘着剤。
(5)Si-H基を有するポリシロキサンおよびシラノール-トリメチルシリル修飾MQレジンをさらに含有する、上記(3)または(4)に記載の感温性粘着剤。
(6)上記(3)~(5)のいずれかに記載の感温性粘着剤を含む、感温性粘着シート。
(7)上記(3)~(5)のいずれかに記載の感温性粘着剤を含む粘着剤層が、基材の少なくとも一方の面に積層された、感温性粘着テープ。
(8)上記(1)または(2)に記載の感温性樹脂、Si-H基を有するポリシロキサン、シラノール-トリメチルシリル修飾MQレジン、およびKarstedt触媒を含有する、感温性粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の感温性樹脂によれば、優れた耐熱性および耐薬品性が発揮され、かつ高い凝集力も発揮される。このような感温性樹脂は、感温性粘着剤および感温性粘着剤組成物の原料として好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<感温性樹脂>
本発明の一実施形態に係る感温性樹脂について詳細に説明する。本実施形態の感温性樹脂は、式(I)で表される構造を有している。
【0008】
【化2】
【0009】
式(I)中、R1は同一または異なって炭素数1~10の炭化水素基を示す。炭素数1~10の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基などのアリール基などが挙げられる。アルキル基やアルケニル基は、直鎖構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。
【0010】
式(I)中、R2はアルケニル基を有する基を示す。このアルケニル基を有する基は、本実施形態の感温性樹脂において反応性を有する部位である。R2は、好ましくは炭素数2~10のアルケニル基を有する基が挙げられる。R2としては、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基およびデセニル基が挙げられる。
【0011】
式(I)中、R3は炭素数12~50の直鎖状アルキル基を示す。このR3を含む側鎖部分、すなわち、下記式(II)で表される化合物に由来する側鎖部分が、本実施形態の感温性樹脂において結晶性を有する部位である。本実施形態の感温性樹脂は、下記式(II)で表される化合物に由来する側鎖が分子間力などによって秩序ある配列に整合されることによって結晶化する。R3は、好ましくは炭素数14~30の直鎖状アルキル基であり、より好ましくは炭素数18~30の直鎖状アルキル基である。このようなアルキル基としては、具体的に、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、ペンタコンチル基などが挙げられる。
【0012】
【化3】
【0013】
式(I)中、xは0~2000の整数を示し、好ましくは0~1500の整数を示し、より好ましくは0~1000の整数を示す。yは100~2000の整数を示し、好ましくは100~1500の整数を示し、より好ましくは200~1500の整数を示す。zは1~1000の整数を示し、好ましくは2~1000の整数を示し、より好ましくは2~800の整数を示す。
【0014】
さらに、式(I)中、mは2~10の整数を示し、好ましくは2~6の整数を示し、より好ましくは2または3の整数を示す。nは1~100の整数を示し、好ましくは1~40の整数を示し、より好ましくは1~10の整数を示す。
【0015】
本実施形態の感温性樹脂の重量平均分子量は特に限定されない。本実施形態の感温性樹脂は、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上の重量平均分子量を有し、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下の重量平均分子量を有する。「重量平均分子量」は、感温性樹脂をゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0016】
本実施形態の感温性樹脂は、結晶化に関連して融点を有する。「融点」とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていたポリマーの特定部分が無秩序状態になる温度を意味し、示差熱走査熱量計(DSC)によって、10℃/分の条件で測定して得られる値を意味する。本実施形態の感温性樹脂は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上の融点を有し、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下の融点を有する。
【0017】
本実施形態の感温性樹脂は、融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度では相転位して流動性を示す。すなわち、本実施形態の感温性樹脂は、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に示す感温性を有する。
【0018】
本実施形態の感温性樹脂は、式(I)で表されるように、主鎖にシロキサン結合を有するポリシロキサンである。具体的には、本実施形態の感温性樹脂は、反応性部位であるR2と結晶性部位である式(II)で表される化合物に由来する側鎖とを有し、かつシリコーン骨格を有するポリオルガノシロキサンである。このような構成によって、優れた耐熱性および耐薬品性が発揮される。すなわち、従来の感温性樹脂は、通常、アクリル骨格を有するため、アルカリなどの薬品環境下または200℃以上の高温環境下で激しく加水分解する。したがって、従来の感温性樹脂は、上記のような環境下では使用できない。
【0019】
一方、本実施形態の感温性樹脂は、上記のようにシリコーン骨格を有する。その結果、アクリル骨格を有する従来の感温性樹脂よりも優れた耐熱性および耐薬品性が発揮される。さらに、本実施形態の感温性樹脂は、主鎖シロキサンの平均の重合度が高く100を超えている(すなわち、式(I)のx+y+zが100を超えている)。そのため、本実施形態の感温性樹脂は、従来の感温性樹脂と比べてより高分子量化されており、高い凝集力が発揮される。
【0020】
次に、本実施形態の感温性樹脂を製造する方法の一例を説明する。本実施形態の感温性樹脂は、例えば、環状シロキサンの開環重合によって鎖状ポリシロキサンを得、この鎖状ポリシロキサンに、付加反応によって直鎖状α-オレフィンとSi-H基を有するポリシロキサンとから形成される側鎖(上記式(II)で表される化合物に由来する側鎖)を導入することによって得られる。以下、製造方法の一実施形態を、具体的な化合物を例に挙げて説明する。
【0021】
環状シロキサンは、シロキサン結合による環状分子構造を有する化合物であれば、特に限定されない。本実施形態では、下記式(III)および(III)’で表される化合物を例に挙げて説明する。
【0022】
【化4】
【0023】
式(III)で表されるオクタメチルシクロテトラシロキサンと、式(III)’で表されるテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンと、末端封止剤として下記式(IV)で表される鎖状シロキサンとを、下記式(V)で表される塩基触媒の存在下で反応させればよい。
【0024】
【化5】
【0025】
式(IV)中のR1は上述のとおり、同一または異なって炭素数1~10の炭化水素基を示す。炭素数1~10の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基などのアリール基などが挙げられる。アルキル基やアルケニル基は、直鎖構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。aは0~1000の整数を示しており、式(IV)で表される化合物としては、例えば下記式(IV)’および(IV)’’で表される化合物が挙げられる。式(IV)’で表される化合物としては、例えば、Gelest.Inc製の「DMS-V21」などが市販されている。(IV)’’で表される化合物としては、例えば、信越化学工業(株)製の「KF-96」、東京化成工業(株)製の「ヘキサメチルジシロキサン」および「オクタメチルトリシロキサン」などが市販されている。
【0026】
塩基触媒として使用する下記式(V)で表される化合物において、bは1~8の整数を示す。式(V)で表される化合物としては、例えばGelest.Inc製の「TETRAMETHYLAMMONIUM SILOXANOLATE」などが市販されている。
【0027】
【化6】
【0028】
塩基触媒は、式(V)で表される化合物に限定されず、他の塩基触媒を用いてもよい。他の塩基触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムシラノレート、テトラメチルホスホニウムシラノレート、テトラブチルホスホニウムシラノレート、テトラメチルスチポニウムシラノレート、テトラブチルスチポニウムシラノレート、テトラブチルアルソニウムシラノレート、トリメチルスルホニウムシラノレート、トリエチルスルホニウムシラノレートなどのような塩基性有機化合物のシラノレート、カリウムシラノレート、セシウムシラノレートなどのような強塩基性アルカリ金属水酸化物のシラノレートなどが挙げられる。
【0029】
開環重合は、式(III)で表されるオクタメチルシクロテトラシロキサンと、式(III)’で表されるテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンと、式(IV)で表される末端封止剤と、式(V)で表される塩基触媒との混合物を、例えば0~120℃程度、好ましくは70~120℃程度で、0.1~48時間程度、好ましくは0.5~24時間程度反応させることによって行われる。反応は、必要に応じて、トルエンなどの溶媒中で行ってもよい。
【0030】
式(III)で表されるオクタメチルシクロテトラシロキサンと式(III)’で表されるテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの混合割合は特に限定されない。例えば、式(III)で表されるシロキサンと式(III)’で表されるシロキサンとが、0:1~5:1、好ましくは0:1~2:1のモル比で混合される。末端封止剤は、式(III)および式(III)’で表されるシロキサンの混合物100質量部に対して、好ましくは0.00001~30質量部の割合で添加される。塩基触媒は、式(III)および式(III)’で表されるシロキサンの混合物100質量部に対して、好ましくは0.0000001~1質量部の割合で添加される。このようにして、下記式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンが得られる。式(VI)中のcは0~2000の整数を示し、dは101~3000の整数を示す。式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンは、末端封止剤として式(IV)’で表される化合物を用いたものである。
【0031】
【化7】
【0032】
次いで、付加反応について説明する。まず、直鎖状α-オレフィンと両末端にSi-H基を有するポリシロキサンとを、下記式(VII)で表されるKarstedt触媒の存在下で反応させる。その後、得られた反応物(上述の式(II)で表される化合物)と式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンとを、式(VII)で表されるKarstedt触媒の存在下で反応させる。Karstedt触媒は市販品を用いてもよく、例えば、東京化成工業(株)製の「白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス」、Gelest.Inc製の「SIP6831.2」、「SIP6831.2LC」、などが市販されている。
【0033】
【化8】
【0034】
直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、炭素数12~50の直鎖状α-オレフィンが挙げられる。これらの中でも、炭素数14~30の直鎖状α-オレフィンが好ましく、炭素数18~30の直鎖状α-オレフィンがより好ましい。このような直鎖状α-オレフィンとしては、具体的には、下記式(VIII)で表される1-オクタデセン、式(VIII)’で表される1-ドコセンなどが挙げられる。直鎖状α-オレフィンは市販品を用いてもよく、例えば、出光興産(株)製の「リニアレン18(1-オクタデセン)」、「リニアレン2024(炭素数18~26の直鎖状α-オレフィンの混合物)」などが市販されている。
【0035】
【化9】
【0036】
シロキサンとしては、例えば、下記式(IX)で表されるシロキサンが挙げられる。式(IX)中のR1およびnは上述のとおりであり、説明は省略する。式(IX)で表されるシロキサンとしては、具体的には、下記式(IX)’で表されるテトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0037】
【化10】
【0038】
付加反応は、具体的には次の2段階の反応で行われる。まず、直鎖状α-オレフィンモル比1に対して、両末端にSi-H基を有するポリシロキサン(式(IX))を、例えば1~20、好ましくは4~10のモル比で添加し、Karstedt触媒を、例えば10~100ppm、好ましくは10~50ppmの割合で添加する。その後、40~110℃程度、好ましくは50~70℃程度で、1~48時間程度、好ましくは3~12時間程度反応させる。反応は、必要に応じて、トルエンなどの溶媒中で行ってもよい。このようにして、1段階目の反応で、上述の式(II)で表される化合物が得られる。
【0039】
次いで、得られた式(II)で表される化合物と式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンとを、式(VII)で表されるKarstedt触媒の存在下で反応させる。式(II)で表される化合物モル比1に対して、式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンを、例えば0.1~1、好ましくは0.2~1のモル比で添加し、Karstedt触媒を、例えば10~100ppm、好ましくは10~50ppmの割合で添加する。その後、40~110℃程度、好ましくは50~100℃程度で、1~48時間程度、好ましくは3~6時間程度反応させる。反応は、必要に応じて、トルエンなどの溶媒中で行ってもよい。
【0040】
2段階目の反応は、式(II)で表される化合物を単離して行ってもよく、1段階目の反応終了後、式(II)で表される化合物を単離せず反応混合物に式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンを添加して行ってもよい。
【0041】
このようにして、例えば、直鎖状α-オレフィンとして式(VIII)で表される1-オクタデセンを用い、シロキサンとして式(IX)’で表されるテトラメチルジシロキサンを用いた場合、下記式(X)で表される側鎖結晶性ポリシロキサン(本実施形態に係る感温性樹脂の一例)が得られる。式(X)のx、yおよびzについては上述のとおりであり、説明は省略する。
【0042】
【化11】
【0043】
反応後、反応物をそのまま感温性樹脂として用いてもよく、反応物を精製して感温性樹脂として用いてもよい。精製方法としては、例えば、不純物である不斉オレフィンなどを溶剤洗浄や再沈殿によって除去する方法などが挙げられる。溶剤としては特に限定されず、例えばアセトン、トルエンとアセトンの混合溶媒などが挙げられる。不純物が除去されたか否かは、例えば、GPC、1H-NMRなどで確認すればよい。
【0044】
<感温性粘着剤>
次に、本発明の一実施形態に係る感温性粘着剤について詳細に説明する。本実施形態の感温性粘着剤は、上述の一実施形態に係る感温性樹脂を含有し、感温性樹脂の融点未満の温度で粘着力が低下するものである。本実施形態の感温性粘着剤は、融点未満の温度で感温性樹脂が結晶化して粘着力が低下する感温性樹脂を含有している。そのため、被着体から感温性粘着剤を剥離する場合、感温性粘着剤を感温性樹脂の融点未満の温度に冷却すると、感温性樹脂が結晶化して粘着力が低下する。一方、感温性粘着剤を感温性樹脂の融点以上の温度に加温すると、感温性樹脂が流動性を示すことによって粘着力が回復する。その結果、本実施形態の感温性粘着剤は繰り返し使用することができる。
【0045】
本実施形態の感温性粘着剤には、好ましくは、Si-H基を有するポリシロキサンおよびシラノール-トリメチルシリル修飾MQレジン(以下、単に「MQレジン」と記載する場合がある)が含まれる。
【0046】
Si-H基を有するポリシロキサンは感温性樹脂と架橋反応して3次元化し、感温性樹脂に凝集力を付与することができる。その結果、感温性粘着剤の粘着性をより向上させることができる。Si-H基を有するポリシロキサンは特に限定されず、例えば下記式(XI)~(XI)’’で表される化合物などが挙げられる。式(XI)中のfは0~2000の整数を示す。式(XI)’中のgは2~200の整数を示す。式(XI)’’中のhは0~5000の整数を示し、iは2~2000の整数を示す。Si-H基を有するポリシロキサンは市販品を用いてもよく、例えば、「HMS-991」、「HMS-501」、「HMS-013」、「HMS-031」、「HMS-064」、「HMS-071」、「HMS-064」、「HMS-082」、「HMS-151」、「DMS-H11」、「DMS-H21」、「DMS-H31」、「DMS-H41」(いずれもGelest.Inc製)などが市販されている。
【0047】
【化12】
【0048】
MQレジンは、本実施形態の感温性粘着剤において、凝集力成分として機能する。MQレジンは下記式(XII)、式(XII)’などで表される構造を有し、通常、上述の感温性樹脂に対して良好な相溶性を有している。MQレジンは市販品を用いてもよく、例えば、Gelest.Inc製の「SQO-299」、「VQX-221」、Siltech Corpration製の「Silmer VQ20」、「Silmer VQ2012」、「Silmer VQ122XYL」、「Silmer VQ9XYL」、などが市販されている。
【0049】
【化13】
【0050】
本実施形態の感温性粘着剤が、Si-H基を有するポリシロキサンおよびMQレジンを含有する場合、各成分の含有量は特に限定されない。例えば、Si-H基を有するポリシロキサンは、感温性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001~1000質量部、より好ましくは0.01~500質量部の割合で含有される。MQレジンは、感温性樹脂100質量部に対して、好ましくは10~1000質量部、より好ましくは20~500質量部の割合で含有される。
【0051】
本実施形態の感温性粘着剤は、例えば、被着体に直接塗布してもよく、基材レスのシート状の形態で使用してもよく、使用形態は特に限定されない。例えば、本実施形態の感温性粘着剤を感温性粘着シートとして使用する場合、感温性粘着シートの厚みは、好ましくは10~500μm、より好ましくは10~200μmである。
【0052】
本実施形態の感温性粘着剤は、テープ状の形態で使用してもよい。本実施形態の感温性粘着剤を感温性粘着テープとして使用する場合、本実施形態の感温性粘着剤を含む粘着剤層が、基材の少なくとも一方の面に積層される。基材は好ましくはフィルム状であり、フィルム状にはシート状も包含される。
【0053】
基材の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルエーテルケトンなどの合成樹脂が挙げられる。
【0054】
基材は単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材は、通常5~500μm程度の厚みを有する。さらに、基材には、粘着剤層に対する密着性を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0055】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を積層する方法は、特に限定されない。例えば、感温性粘着剤に溶剤を加えた塗布液を、コーターなどによって基材の片面または両面に塗布して乾燥する方法などが挙げられる。コーターとしては、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。
【0056】
塗布液には、通常、架橋反応させるためのKarstedt触媒が添加され、塗布前の反応を抑制するための禁止剤が添加されていてもよい。これにより、禁止剤とKarstedt触媒とが錯体を形成し、粘着剤層において架橋反応が生じるのを抑制することができる。禁止剤の沸点以上に加熱して禁止剤を揮発させると、Karstedt触媒を介した架橋反応が進行する。禁止剤としては、例えば、1-ブチン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、フェニルブチノール、1-エチニル-1-シクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0057】
Karstedt触媒は、白金の濃度が好ましくは1~1000ppmの濃度となるように、感温性樹脂に添加される。一方、禁止剤は、感温性樹脂100質量部に対して、好ましくは1~5質量部の割合で添加される。塗布液の構成は、感温性粘着剤を被着体に直接塗布して使用する場合、または基材レスのシート状の形態で使用する場合についても同様である。
【0058】
粘着剤層は、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~80μm、さらに好ましくは10~60μmの厚みを有する。基材の両面に粘着剤層を積層させる場合、粘着剤層の厚みは同じでもよく、異なっていてもよく、粘着剤層を形成している感温性粘着剤の組成も同じでもよく、異なっていてもよい。
【0059】
さらに、基材の一方の面に本実施形態の感温性粘着剤を含む粘着剤が積層されていれば、他方の面には、別の粘着剤層が積層されていてもよい。例えば、感圧性接着剤を含む接着剤層が他方の面に積層されていてもよい。感圧性接着剤は、粘着性を有するポリマーを含む。このような粘着性を有するポリマーとしては、例えば、天然ゴム接着剤、合成ゴム接着剤、スチレン/ブタジエンラテックスベース接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。
【0060】
本実施形態の感温性粘着シートおよび感温性粘着テープの表面には、離型フィルムを積層するのが好ましい。離型フィルムとしては、例えば、フロロシリコーンのような離型剤が表面に塗布されたポリエチレンテレフタレート製フィルムなどが挙げられる。
【0061】
<感温性粘着剤組成物>
次に、本発明の一実施形態に係る感温性粘着剤組成物について詳細に説明する。本実施形態の感温性粘着剤は、上述の一実施形態に係る感温性樹脂、Si-H基を有するポリシロキサン、シラノール-トリメチルシリル修飾MQレジン、およびKarstedt触媒を含有する。必要に応じて、上述の禁止剤が添加されていてもよい。各成分の詳細については上述のとおりであり、説明は省略する。
【0062】
以上のように、本発明の一実施形態に係る感温性樹脂は、優れた耐熱性および耐薬品性を有し、かつ高い凝集力を有する。このような感温性樹脂を含有する感温性粘着剤用途は特に限定されず、例えば、耐熱性および耐薬品性が要求される分野の粘着剤として好適に使用される。
【0063】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば、上述の一実施形態では、感温性樹脂、Si-H基を有するポリシロキサンおよびMQレジンを含有する感温性粘着剤を例に挙げて説明した。しかし、感温性粘着剤は、上述の感温性樹脂を含有する限り、Si-H基を有するポリシロキサンおよびMQレジンを含有する構成に限定されるものではなく、いわゆるシリコーン系の粘着剤に使用される一般的な材料で構成することができる。
【実施例
【0064】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(合成例1:鎖状ポリシロキサンの合成)
撹拌羽および窒素導入管を取り付けた三つ口フラスコに、20gの環状シロキサンおよび400mgの末端封止剤を添加した。環状シロキサンとしては「テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン(東京化成工業(株)製)」を使用し、末端封止剤としては「DMS-21(Gelest.Inc製)」を使用した。環状シロキサンと末端封止剤との混合物に窒素導入管から窒素を導入し、撹拌しながら30分間窒素バブリングを行った。次いで、窒素導入管を混合物から離して、三つ口フラスコをオイルバスに入れた。塩基触媒として7mgの「TETRAMETHYLAMMONIUM SILOXANOLATE(東京化成工業(株)製)」を三つ口フラスコに添加し、100℃で6時間撹拌した。次いで、触媒を分解するために150℃まで昇温して、さらに3時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、式(VI)で表される鎖状ポリシロキサン(A)を得た。GPC測定から、得られた鎖状ポリシロキサン(A)は、55000の数平均分子量および137000の重量平均分子量を有していた。数平均分子および量重量平均分子量は、得られた鎖状ポリシロキサンをGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算することによって得た。
【0066】
(合成例2:鎖状ポリシロキサンの合成)
末端封止剤(DMS-21)の使用量を100mgに変更した以外は、合成例1と同様の手順で鎖状ポリシロキサン(B)を得た。GPC測定から、得られた鎖状ポリシロキサン(B)は、77000の数平均分子量および218000の重量平均分子量を有していた。
【0067】
(合成例3:鎖状ポリシロキサンの合成)
環状シロキサンとして16gの「テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン」および4gの「ヘキサメチルシクロテトラシロキサン(東京化成工業(株)製)」を使用し、末端封止剤として200mgの「ヘキサメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製)」に変更した以外は、合成例1と同様の手順で鎖状ポリシロキサン(C)を得た。GPC測定から、得られた鎖状ポリシロキサン(C)は、60000の数平均分子量および126000の重量平均分子量を有していた。
【0068】
(合成例4:長鎖アルキルユニットの合成)
撹拌羽および温度計を取り付けた三つ口フラスコに、108.8gの「テトラメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製)」、50gの「1-ドコセン(東京化成工業(株)製)」および240gの脱水トルエンを添加した。三つ口フラスコをオイルバスに入れて、撹拌しながら70℃まで昇温した。70℃になった時点で、「白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス(東京化成工業(株)製)」の20質量%トルエン溶液を50mg添加した。その後、70℃で24時間撹拌した。次いで、三つ口フラスコにディーンスターク装置を取り付け、100℃で3時間加熱して未反応のテトラメチルジシロキサンを回収した。次いで、三つ口フラスコ内の反応混合物を、エタノール中に滴下して沈殿精製を行った。吸引ろ過によって沈殿物を回収し、80℃で減圧乾燥して式(II)で表される片末端反応性の長鎖アルキルユニットを得た。
【0069】
(実施例1)
<側鎖結晶性ポリシロキサン(感温性樹脂)の合成>
撹拌子を入れた三つ口フラスコに、3gの合成例1で得られた鎖状ポリシロキサン(A)、14.3gの合成例4で得られた長鎖アルキルユニット、および40gの脱水トルエンを添加した。三つ口フラスコをオイルバスに入れて、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら100℃まで昇温した。100℃になった時点で、「白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス」の20質量%トルエン溶液を60mg添加した。その後、100℃で24時間撹拌した。次いで、トルエンとアセトンとの混合溶媒(質量比3:7)100gを60℃に加温し、得られた反応混合物に加えて撹拌した。デカンテーションで溶媒を除去する作業を3回繰り返し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を80℃で減圧乾燥して、側鎖結晶性ポリシロキサン(1)を得た。
【0070】
GPC測定から、得られた側鎖結晶性ポリシロキサン(1)は、103000の数平均分子量および503000の重量平均分子量を有していた。数平均分子および量重量平均分子量は、得られた側鎖結晶性ポリシロキサンをGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算することによって得た。1H-NMRの積分比から、得られた側鎖結晶性ポリシロキサン(1)には、ビニルメチルシロキサンユニットが約3モル%の割合で含まれていた。具体的には、合成例1で得られた式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンと合成例4で得られた長鎖アルキルユニットとの反応前は実質的にy/z=0/100、すなわち式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンの「d(y+z)」には「y」が存在しないため、実質的に「z」のみである。式(VI)で表される鎖状ポリシロキサンと長鎖アルキルユニットとの反応によって、dに関するユニットの97モル%が長鎖アルキルユニットと反応してyに関するユニットとなり、3モル%のdに関するユニットが未反応のまま残ってzに関するユニットとなった側鎖結晶性ポリシロキサン(感温性樹脂)が得られた。さらに、DSC測定(10℃/分)から、得られた側鎖結晶性ポリシロキサン(1)は、約37℃の融点を有していた。
【0071】
<感温性粘着剤の調製>
得られた側鎖結晶性ポリシロキサン(1)、MQレジンおよびSi-H基を有するポリシロキサンを、表1に示す割合で混合して感温性粘着剤を調製した。使用したSi-H基を有するポリシロキサンおよびMQレジンは以下のとおりである。
Si-H基を有するポリシロキサン:上記式(XI)’’で表される「HMS-064」および「HMS-082」(いずれもGelest・inc製)
MQレジン:上記式(XII)'で表される「VQX-221」(Gelest・inc製)
【0072】
<感温性粘着テープの作製>
得られた感温性粘着剤100質量部に、固形分濃度が70質量%となるようにトルエンを添加した。そこに、上記の「白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス」を固形分換算で0.5質量部、および禁止剤として2-メチル-3-ブチン-2-オールを固形分換算で1質量部の割合で添加して、塗布液を調製した。得られた塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み75μm)の片面、すなわちフロロシリコーン処理が施された面に塗布した。次いで、120℃で10分間加熱し、側鎖結晶性ポリシロキサンの反応性部位(ビニル基)およびMQレジンの反応性部位(ビニル基)とSi-H基を有するポリシロキサンの官能基(Si-H基)とを架橋させた。このようにして、粘着剤層(厚み30μm)が形成された感温性粘着テープを得た。
【0073】
(実施例2)
3gの合成例2で得られた鎖状ポリシロキサン(B)、15gの合成例4で得られた長鎖アルキルユニット、および42gの脱水トルエンを使用した以外は、実施例1と同様の手順で側鎖結晶性ポリシロキサン(2)を得た。実施例1と同様の手順で、得られた側鎖結晶性ポリシロキサン(2)の数平均分子量、重量平均分子量、ビニルメチルシロキサンユニットの割合、および融点を測定した。結果を以下に示す。
数平均分子量:124000
重量平均分子量:513000
ビニルメチルシロキサンユニットの割合:約10モル%
融点:約39℃
【0074】
側鎖結晶性ポリシロキサン(2)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で感温性粘着剤を調製した。この感温性粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様の手順で感温性粘着テープを作製した。
【0075】
(実施例3:側鎖結晶性ポリシロキサンの合成)
3gの合成例3で得られた鎖状ポリシロキサン(C)を使用した以外は、実施例1と同様の手順で側鎖結晶性ポリシロキサン(3)を得た。実施例1と同様の手順で、得られた側鎖結晶性ポリシロキサン(3)の数平均分子量、重量平均分子量、ビニルメチルシロキサンユニットの割合、および融点を測定した。結果を以下に示す。
数平均分子量:102000
重量平均分子量:322000
ビニルメチルシロキサンユニットの割合:約25モル%
融点:約31℃
【0076】
側鎖結晶性ポリシロキサン(3)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で感温性粘着剤を調製した。この感温性粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様の手順で感温性粘着テープを作製した。
【0077】
【表1】
【0078】
(比較例1)
実施例1で得られた感温性粘着剤の代わりに、アクリル骨格含有感温性樹脂からなる感温性粘着剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で感温性粘着テープを作製した。アクリル骨格含有感温性樹脂のモノマー組成、融点および重量平均分子量は、下記のとおりである。
モノマー組成:ベヘニルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸=45質量部/50質量部/5質量部
融点:約55℃
重量平均分子量:540000
【0079】
実施例1~3および比較例1で得られた感温性粘着テープについて、180°剥離強度、耐熱性および耐薬品性を、下記の方法によって評価した。結果を表2に示す。
【0080】
<180°剥離強度>
80℃および5℃雰囲気下におけるポリイミドに対する180°剥離強度をJIS Z0237に準拠して測定した。具体的には、以下の条件で感温性粘着テープを無アルカリガラスに貼着した後、ロードセルを用いて300mm/分の速度で180°剥離した。
(80℃)
80℃雰囲気下で感温性粘着テープを無アルカリガラスに貼着して、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。その後、短冊状ポリイミドフィルム(厚み25μmおよび幅25mm)を貼着して80℃で20分間静置し、180°剥離した。
(5℃)
80℃雰囲気下で感温性粘着テープを無アルカリガラスに貼着して、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。その後、短冊状ポリイミドフィルム(厚み25μmおよび幅25mm)を貼着して80℃で20分間静置した。次いで、5℃まで冷却して20分間静置した後、180°剥離した。
【0081】
<耐熱性>
熱重量分析(TGA)で評価した。具体的には、セイコーインスツルメンツ社(Seiko Instruments Inc・)製の熱重量分析装置「TG/DTA 6200」を用い、窒素ガス雰囲気下で25℃から500℃まで昇温(10℃/分)させ、その過程での側鎖結晶性ポリシロキサンの質量変化を測定した。次いで、25℃における質量に対して質量が98%になった時点の温度、すなわち2%質量減少温度を計測した。この温度が高いほど耐熱性に優れていることを示す。
【0082】
<耐薬品性>
感温性粘着テープを、10質量%水酸化ナトリウム水溶液に、23℃で10分間浸漬した。その後、感温性粘着テープの状態を下記の基準で評価した。
(評価基準)
○:感温性粘着テープが膨潤していなかった場合。
×:感温性粘着テープが膨潤していた場合。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、実施例1~3で得られた感温性粘着テープは優れた耐薬品性を有しており、180°剥離強度にも優れていることがわかる。さらに、実施例1~3で得られた側鎖結晶性ポリシロキサン(感温性樹脂)は2%重量減少温度が高く、優れた耐熱性を有していることがわかる。