(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】蜜蜂巣箱用の巣枠、蜜蜂巣箱
(51)【国際特許分類】
A01K 47/02 20060101AFI20220415BHJP
A01K 47/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A01K47/02
A01K47/00
(21)【出願番号】P 2019090257
(22)【出願日】2019-05-11
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】514142429
【氏名又は名称】宗教法人立善寺
(73)【特許権者】
【識別番号】514142430
【氏名又は名称】菊田 貫俊
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】菊田 貫俊
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108142325(CN,A)
【文献】中国実用新案第204466592(CN,U)
【文献】特開2010-094120(JP,A)
【文献】登録実用新案第3110746(JP,U)
【文献】特開2013-059278(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173936(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0223434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 47/00-47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養蜂で用いる蜜蜂巣箱用の巣枠
と、前記巣枠を収容する巣箱と、を有する蜜蜂巣箱であって、
前記巣枠は、
巣枠の側部に位置し向かい合う一対の板状部材からなる巣枠本体と、
シート状の巣礎を張り付けることが可能であって、第1および第2の板状部材を
間隔をあけて向かい合う状態で支持するための、横向きの複数本の
針金と、
を有しており、
巣枠本体をなす前記一対の板状部材には、前記複数本の針金の差込孔が形成され、
前記複数本の針金の差込孔のうち、最上段の針金の差込孔は貫通孔となっていて、前記一対の板状部材の外側面に、最上段の針金の端部が突き出るように構成され、
前記一対の板状部材の外側面に突き出した最上段の針金部分は、巣箱の上端部に引っ掛かり、その結果、巣枠の荷重が巣箱によって支えられるようになっており、
前記巣箱は、
前記巣枠の両側の板状部材と前記巣箱の内壁面との間にほとんど隙間をあけることなく、前記巣枠を収容している、
ことを特徴とする蜜蜂巣箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養蜂で用いる蜜蜂巣箱と、蜜蜂巣箱用の巣枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
養蜂で使用する蜜蜂巣箱では巣枠が用いられている。
従来より利用されている一般的な巣枠は、幅広の4本の木製板状部材をフレーム状(四辺を有する矩形形状)に組み立てた巣枠本体を有しており、この巣枠本体の内側に蜜ロウからなるシート状の巣礎を張設している。また、フレーム状の巣枠本体の両サイドの外側面には、巣枠を巣箱上端に上掛け式に引っ掛けるための引っ掛け部(出っ張り)が張り出している。
【0003】
このような構成の巣枠を巣箱内に並べる際には、巣枠を縦向きで巣箱内に挿入するとともに、巣枠両サイドの上端で外側に張り出している引っ掛け部を、巣箱の上端に引っ掛ける。これにより、巣枠全体が巣箱に収容され、かつ、巣箱内に収容された巣枠が縦向きを維持した状態で巣箱上端によって上掛け式に支えられる。
【0004】
上述した従来の巣枠は、古くから広く一般的に利用されているものであるが、本願発明者の研究によれば、従来の巣枠には次のような欠点があることが明らかとなった。
【0005】
巣枠の本体を構成する巣枠本体が、幅広の4本の板状部材をフレーム状(四辺を有する矩形形状)に組み立てたものであるため、巣枠本体の内側に張設した巣礎の上方と下方が、幅広の板状部材(フレームの上辺と下辺を構成する横向きの枠部材)によって遮られる。
【0006】
このような幅広の遮蔽物(フレームの上辺と下辺を構成する横向きの枠部材)が、巣礎の上方と下方を横切るように遮っていると、巣箱内を上下方向で移動する蜜蜂にとって(行き手を阻まれることになって)ストレスとなり、特に、巣箱の段数を重ねた場合に巣箱内を上下方向で往来する蜜蜂にとって大きな障害となり、ひいては、養蜂にとって大きな障害となる。
【0007】
また、従来の巣枠を巣箱内に並べると、巣枠の両サイドと巣箱の内壁面との間に大きな隙間が空いてしまう。そして、この隙間に蜜蜂が進入するため、巣箱内に並べた巣枠が巣箱内壁に対し蜜ロウで固着してしまい、巣枠の取り出しを困難にし、場合によっては取り出し時に巣枠や巣箱を傷めるといった問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、巣箱内で飼育する蜜蜂にとってストレスが無く、巣枠の取り出しを容易にする、蜜蜂巣箱および巣枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、養蜂で用いる蜜蜂巣箱用の巣枠であって、
巣枠の側部において所定の間隔を空けて向かい合うように設けられた、一対の板状部材からなる巣枠本体(巣枠本体が横向きの2つの板状部材と縦向きの2つの板状部材によってフレーム状(矩形状)に構成されているものを除く)と、
シート状の巣礎を張り付けることが可能で、横向きに設けられ、第1および第2の板状部材を所定の間隔を空けて向かい合う状態で支持するための、複数本の線状部材と、
を有する蜜蜂巣箱用の巣枠によって達成される。
【0010】
上記蜜蜂巣箱用の巣枠は、
最上段の線状部材より上の空間を遮らないように、かつ、
最下段の線状部材より下の空間を遮らないように、構成されている。
【0011】
また前述した目的は、
上記特徴を具備する巣枠と、
この巣枠を収容可能な巣箱と、
を有する蜜蜂巣箱によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る巣枠において「巣枠本体」は、巣枠の両サイドに位置し所定の間隔を空けて向かい合うように設けられた一対の板状部材からなる巣枠本体で構成されている。すなわち巣枠本体は、従来のような幅広の4本の板状部材をフレーム状(四辺を有する矩形形状)に組み立てたものではなく、縦向きの平行な2本の板状部材で構成されており、その構造が従来のものと大きく相違している。つまり、本発明に係る巣枠において「巣枠本体」は、従来品に見られる「フレームの上辺と下辺を構成する横向きの枠部材」が取り除かれた様な構造となっている。
巣枠本体を上記のように簡素な構造とした代わりに、本発明では、硬い針金等からなる横向きの複数本の線状部材を設けている。硬い針金等からなる横向き線状部材によって、巣枠本体(第1および第2の板状部材)が所定の間隔を空けて向かい合う状態を一定に保っている。すなわち、横向き線状部材は、巣枠本体を一定の縦向き姿勢に固定するための支持手段として機能している。
【0013】
このような特徴を採用することにより、巣枠本体が線状部材の上下を遮ることがないため、巣箱内での蜜蜂の上下方向の移動を妨げることがなくなって、巣箱内に蜜蜂が自由に往来できるようになり、ストレスの無い巣箱環境で蜜蜂を飼育することができる。特に、巣箱の段数を重ねた場合に巣箱内を移動する蜜蜂にとって、従来品に見られるような「フレームの上辺と下辺を構成する横向きの枠部材」が無いため往来の自由度が大きくなる。
【0014】
また、本発明では、巣枠の両サイドと巣箱の内壁面との間にできる隙間が著しく狭くなる(隙間がほとんど生じなくなる)。したがって、巣枠を巣箱内に並べた状態で、従来品のように蜜蜂が隙間に入り込むことが無いので、従来のように巣箱内に並べた巣枠が巣箱内壁に対し蜜ロウで固着することが無い。すなわち、巣箱から巣枠を取り出す際に、巣箱や巣枠を傷めることが無い。
【0015】
また、本発明に係る巣枠では、最上段の線状部材より上の空間を遮らないように、かつ、最下段の線状部材より下の空間を遮らないように、巣枠本体が構成されている。
このような特徴により、巣枠を並べた巣箱内での蜜蜂の移動を妨げることがなく、ストレスの無い巣箱環境で蜜蜂を飼育することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る蜜蜂巣箱の正面図と、蜜蜂巣箱を側面側から見た断面図である。
【
図3】
図1に示す巣箱内に巣枠を並べる際の様子を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す蜜蜂巣箱が具備する巣枠を示す拡大図と、巣枠の組立時の様子を示す部分拡大図である。
【
図5】複数段の巣箱を具備する蜜蜂巣箱を側面側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付に基づいて、本発明の具体的実施形態について説明する。
【0018】
(蜜蜂巣箱の構成)
本実施形態で例示する蜜蜂巣箱は、
図1及び
図2に示すように、主として次の各構成を具備している。
・蜜蜂による巣作りのベースとなる巣枠1。
・複数の巣枠1を縦向きで収容可能に構成された巣箱3。
・巣箱3の上に被せる上蓋5。
・巣枠3の下方に設けられる、巣門7を具備する基台9。
【0019】
図1~
図3に示すように、巣箱3は、その内側に、複数の巣枠1を平行かつ隣接した状態で収容することができる。このような巣枠1を収容している巣箱3に出入りする蜜蜂によって蜂の巣が形成される。巣箱3内に形成された蜂の巣は、巣枠1の内側で確りと保持される。
【0020】
木枠からなる基台9は、巣箱3の下方に設けられている。この基台9には、
図1及び
図2に示すように、蜜蜂が自由に巣箱に出入りできるような巣門7(蜜蜂の出入り口)が形成されている。蜜蜂の出入り口である巣門7は
図2に示すように、基台9を構成する板状部材の一部分を、略矩形状に切り欠くことで形成されている。巣門7を介して巣箱の内外間で出入りする蜜蜂は、基台9の上方の巣箱3内において巣枠1を利用して蜂の巣を形成する。
【0021】
(巣枠の構成)
養蜂で用いる蜜蜂巣箱用の巣枠1は、次の部材を有している。
・一対の板状部材11,12からなる巣枠本体13。
・硬い針金などからなる複数本の横向き線状部材15。
【0022】
本実施形態では巣枠本体13は、所定の間隔(予め定めた寸法の間隔)を空けて向かい合う一対の板状部材11,12だけで構成されている。一対の板状部材11,12は、巣枠1の両サイドに位置する部材である。
したがって、従来品では、巣枠本体が横向きの2つの板状部材と縦向きの2つの板状部材によってフレーム状(矩形状)に構成されているのに対し、本実施形態では、横向きの2つの板状部材が無いので、両者はその構成において大きく異なるものである。
上記のような特徴を採用している結果、本実施形態の巣枠1は、最上段の線状部材より上の空間が何ら遮られることが無く、また、最下段の線状部材より下の空間が何ら遮られることが無い。
【0023】
巣枠本体13を構成する板状部材11,12の材質は特に限定されず、例えば木材や樹脂を採用することができるが、樹脂で板状部材11,12を作れば寸法の誤差が出にくく、正確な寸法に形成することができる。
【0024】
線状部材15の材質は特に限定されず、例えば針金や樹脂製の棒を採用することができるが、本実施形態では硬い針金で線状部材が構成されている。例えば直径が2mm~3mmのものを使えば、針金が容易に変形することがなく、両サイドの板状部材11,12を支持するのに十分な強度を持たせることができる。
【0025】
この複数本の線状部材15は、
図4に示すように横向きに設けられ、板状部材11,12を所定の間隔を空けて向かい合う状態で支持する役割を担う。また、複数本の線状部材15には、蜜ロウからなるシート状の巣礎を張り付けることが可能である。
【0026】
複数本の線状部材15のうち、最上段の線状部材15は、他の線状部材よりも長尺である。そして、巣枠本体13を構成する一対の板状部材11,12の外側面には、最上段の線状部材15の両端部が突き出している。この最上段の線状部材15の突出部(板状部材11,12の外側面に突き出した部分)は、巣箱3の上端部において支えられる。最上段の線状部材15の両端部が巣箱3の上端部に引っ掛かることによって、巣枠1の荷重は巣箱3によって支えられる。
【0027】
巣枠本体13を構成する一対の板状部材11,12の内側面には、
図4(b)に示すように、線状部材15を差し込むことが可能な差込孔17が形成されている。各差込孔17は、有低の孔であって貫通していない。
ただし、最上段の線状部材15の差込孔17は貫通孔となっていて、
図4(a)に示す様に、板状部材11,12の外側面に、最上段の線状部材15の両端部が突き出るようになっている。板状部材11,12の外側面において、線状部材15が突き出した部分は、巣箱3の上端部に引っ掛かる。その結果、巣枠1の荷重は巣箱3(巣箱3の上端部)によって支えられる。
【0028】
上記構成の巣枠1を組み立てる際には、
図4(b)に示すように、板状部材11,12に形成した各差込孔17に線状部材15の端部を差し込む。これによって
図4(a)に示すように、横向きの平行な複数本の線状部材15,15…によって、板状部材11,12が所定の間隔を空けて向かい合う状態が保持される。つまり、平行な複数本の線状部材15は、板状部材11,12の支持手段として機能するものである。
【0029】
(達成される優れた効果)
上述した特徴を具備する巣枠1とこれを具備する蜜蜂巣箱によれば、板状部材11,12からなる巣枠本体13が線状部材15の上下を何ら遮ることがないため、巣箱3内での蜜蜂の上下方向の移動を妨げることがなくなって、巣箱3内に蜜蜂が自由に往来できるようになり、ストレスの無い巣箱環境で蜜蜂を飼育することができる。
特に、
図5に示すように巣箱3の段数を重ねた場合に複数段の巣箱内を移動する蜜蜂にとって、従来品に見られるような「フレームの上辺と下辺を構成する横向きの枠部材」が無いため往来の自由度が大きくなる。
【0030】
また本発明では、巣枠1の両サイドと巣箱3の内壁面との間に、隙間がほとんど生じなくなる。
したがって、巣枠1を巣箱3内に並べた状態で、従来品のように蜜蜂が隙間に入り込むことが無いので、従来のように巣箱内に並べた巣枠が巣箱内壁に対し蜜ロウで固着することが無い。すなわち、巣箱3から巣枠1を取り出す際に、巣箱3や巣枠1を傷めることが無い。
【符号の説明】
【0031】
1 巣枠
3 巣箱(重箱)
4 落下防止部材
5 上蓋
7 巣門(蜜蜂の第1の出入り口)
9 基台(巣門を具備する台/枠)
11 板状部材
12 板状部材
13 巣枠本体
15 線状部材
17 差込孔