(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】掘削方法
(51)【国際特許分類】
E21B 4/14 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
E21B4/14 B
(21)【出願番号】P 2017218774
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】517397970
【氏名又は名称】株式会社冨田
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】冨田 倍弘
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-045863(JP,A)
【文献】特開平03-122394(JP,A)
【文献】特開昭59-098995(JP,A)
【文献】特開2008-231806(JP,A)
【文献】特開2000-282461(JP,A)
【文献】特開2015-229872(JP,A)
【文献】米国特許第04653593(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 4/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに組み込まれるピストン、及び前記ケーシングの先端より突出されるとともに前記ケーシングより径大に構成される頭部を備えるハンマと、
前記ケーシング内に圧縮空気を圧送して前記ハンマに打撃力を与えるとともに、前記ハンマの前記頭部より前記圧縮空気を噴出させるエアーコンプレッサーと、
前記エアーコンプレッサーから供給される前記圧縮空気に水を供給して混在させる水供給機と、
を備えるダウンザホールハンマ装置を用いて、
前記圧縮空気に混在させた前記水で掘削された土壌成分を湿らせ、前記ケーシングの外周と掘削された孔壁との隙間から噴出される前記土壌成分の飛散を防止するとともに、
前記土壌成分に含ませる前記水の量を前記土壌成分が塑性を有する状態にして前記孔壁に付着させ、前記孔壁に保護層を形成
しながら掘削し、
掘削中に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを一旦引き上げて再度下降させ、前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削することを特徴とする掘削方法。
【請求項2】
ケーシングと、
前記ケーシングに組み込まれるピストン、及び前記ケーシングの先端より突出されるとともに前記ケーシングより径大に構成される頭部を備えるハンマと、
前記ケーシング内に圧縮空気を圧送して前記ハンマに打撃力を与えるとともに、前記ハンマの前記頭部より前記圧縮空気を噴出させるエアーコンプレッサーと、
前記エアーコンプレッサーから供給される前記圧縮空気に水を供給して混在させる水供給機と、
を備えるダウンザホールハンマ装置を用いて、
前記圧縮空気に混在させた前記水で掘削された土壌成分を湿らせ、前記ケーシングの外周と掘削された孔壁との隙間から噴出される前記土壌成分の飛散を防止するとともに、
前記土壌成分に含ませる前記水の量を前記土壌成分が塑性を有する状態にして前記孔壁に付着させ、前記孔壁に保護層を形成
しながら掘削し、
掘削完了後に前記ケーシングと前記ハンマとを引き上げる際に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを再度下降させ、前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削することを特徴とする掘削方法。
【請求項3】
ケーシングと、
前記ケーシングに組み込まれるピストン、及び前記ケーシングの先端より突出されるとともに前記ケーシングより径大に構成される頭部を備えるハンマと、
前記ケーシング内に圧縮空気を圧送して前記ハンマに打撃力を与えるとともに、前記ハンマの前記頭部より前記圧縮空気を噴出させるエアーコンプレッサーと、
前記エアーコンプレッサーから供給される前記圧縮空気に水を供給して混在させる水供給機と、
を備えるダウンザホールハンマ装置を用いて、
前記圧縮空気に混在させた前記水で掘削された土壌成分を湿らせ、前記ケーシングの外周と掘削された孔壁との隙間から噴出される前記土壌成分の飛散を防止するとともに、
前記土壌成分に含ませる前記水の量を前記土壌成分が液性を有する状態にして前記孔壁に付着させ、
次に前記圧縮空気への前記水の供給を少なくする又は停止させて前記圧縮空気で前記孔壁を乾燥させることで前記孔壁に保護層を形成することを特徴とする掘削方法。
【請求項4】
前記圧縮空気で前記孔壁を乾燥させる時間が10~20分間であることを特徴とする請求項3に記載の掘削方法。
【請求項5】
掘削した孔から前記ケーシングと前記ハンマとを引き抜いた後、前記孔に保護管を挿入することを特徴とする請求項3又は4に記載の掘削方法。
【請求項6】
掘削中に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを一旦引き上げて再度下降させ、
前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削することを特徴とする請求項
3ないし5のいずれか1項に記載の掘削方法。
【請求項7】
掘削完了後に前記ケーシングと前記ハンマとを引き上げる際に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを再度下降させ、
前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削することを特徴とする請求項
3ないし5のいずれか1項に記載の掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウンザホールハンマを用いて孔を掘削する掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、岩石層が含まれる土壌において孔を掘削するとき、ケーシング内に設けられたハンマを回転させながら圧縮空気で上下させ、その打撃によって土壌を粉砕させながら、圧縮空気で粉砕した土壌成分をケーシングと孔壁との間から外部に放出するダウンザホールハンマが用いられてきた。このダウンザホールハンマは、岩石等に対する掘削性能は優れているものの、放出される土壌成分が粉塵となって周囲に飛散するという課題があった。
【0003】
そこで、特開2006-045863号公報に、掘削ロッドの周囲で地表面上に設けられた粉塵防止カバーを備え、掘削ロッド先端部より水分を含む空気を射出しながら掘削を行ない、切削された土砂や岩石を前記粉塵防止カバーで回収する掘削装置及び掘削方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、粉塵の飛散は防止できるものの、孔壁の保護はなされない。このため、土壌の地質によっては、掘削中又は掘削が終了してケーシング及びハンマを引き抜く際に孔壁が崩れてきて、せっかく掘削した孔が埋まってしまうという課題があった。
【0006】
また、一般に孔壁を保護しようとすると、ハンマの頭部をケーシングの径より小さく縮径できる構造にして、ハンマのみを引抜いてケーシングを掘削した孔に残すこと、又はミルクセメントをハンマ若しくはケーシングから孔壁に吹付けて硬化させる等の方法が行なわれている。しかし、この様な装置又は方法では装置や作業工程が複雑となってしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、掘削された土壌成分の飛散を防止するとともに、前記土壌成分を用いて孔壁に保護層を形成し、掘削装置及び掘削に係る作業工程を簡素なものにしながら、孔壁の崩壊を防止することができる掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の掘削方法は、
ケーシングと、
前記ケーシングに組み込まれるピストン、及び前記ケーシングの先端より突出されるとともに前記ケーシングより径大に構成される頭部を備えるハンマと、
前記ケーシング内に圧縮空気を圧送して前記ハンマに打撃力を与えるとともに、前記ハンマの前記頭部より前記圧縮空気を噴出させるエアーコンプレッサーと、
前記エアーコンプレッサーから供給される前記圧縮空気に水を供給して混在させる水供給機と、
を備えるダウンザホールハンマ装置を用いて、
前記圧縮空気に混在させた前記水で掘削された土壌成分を湿らせ、前記ケーシングの外周と掘削された孔壁との隙間から噴出される前記土壌成分の飛散を防止するとともに、
前記土壌成分に含ませる前記水の量を前記土壌成分が塑性を有する状態にして前記孔壁に付着させ、前記孔壁に保護層を形成することを特徴とする。
また、本発明の好ましい例は、掘削中に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを一旦引き上げて再度下降させ、前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削する。
また、本発明の好ましい例は、掘削完了後に前記ケーシングと前記ハンマとを引き上げる際に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを再度下降させ、前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削する。
【0009】
本発明の掘削方法によれば、ハンマより噴出される圧縮空気と水とで、掘削された土壌成分をケーシングの外周と掘削された孔壁との隙間から地表に排出する。このとき、土壌成分が水で湿気を帯びた状態となるため、排出された土壌成分が飛散することがない。また、掘削された土壌成分は、孔壁とケーシングとの隙間を通過するが、このとき、土壌成分が塑性を有する状態まで水を含んでいるため、孔壁に付着して保護層を形成する。これにより、掘削した孔にケーシングを残す、又は孔壁にミルクセメントを吹付ける等の特段の保護手段を設けることなく、孔壁を保護することができる。
【0010】
本発明の掘削方法は、
ケーシングと、
前記ケーシングに組み込まれるピストン、及び前記ケーシングの先端より突出されるとともに前記ケーシングより径大に構成される頭部を備えるハンマと、
前記ケーシング内に圧縮空気を圧送して前記ハンマに打撃力を与えるとともに、前記ハンマの前記頭部より前記圧縮空気を噴出させるエアーコンプレッサーと、
前記エアーコンプレッサーから供給される前記圧縮空気に水を供給して混在させる水供給機と、
を備えるダウンザホールハンマ装置を用いて、
前記圧縮空気に混在させた前記水で掘削された土壌成分を湿らせ、前記ケーシングの外周と掘削された孔壁との隙間から噴出される前記土壌成分の飛散を防止するとともに、
前記土壌成分に含ませる前記水の量を前記土壌成分が液性を有する状態にして前記孔壁に付着させ、
次に前記圧縮空気への前記水の供給を少なくする又は停止させて前記圧縮空気で前記孔壁を乾燥させることで前記孔壁に保護層を形成することを特徴とする。
また、本発明の好ましい例は、前記圧縮空気で前記孔壁を乾燥させる時間が10~20分間であり、掘削した孔から前記ケーシングと前記ハンマとを引き抜いた後、前記孔に保護管を挿入する。
【0011】
本発明の掘削方法によれば、上記の掘削方法に加えて、保護層を形成する土壌成分が液性を有する状態まで水を含ませ、孔壁に付着させる。そして、その後に圧縮空気で孔壁を乾燥させ、付着させた土壌成分を固めるため、さらに強固な保護層を形成することができる。なお、圧縮空気で乾燥させるとき、孔壁に付着させた土壌成分を完全に乾燥させる必要はなく、土壌成分の液性が失われ、土壌成分が自重によって孔壁から脱落しない程度まで乾燥させればよい。このため、掘削当初に土壌成分に含まれる水の量が多すぎて、孔壁に付着させた土壌成分が柔らか過ぎるような場合の調整にも、本発明の掘削方法を用いることができる。
【0012】
本発明の掘削方法の好ましい例は、掘削中に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを一旦引き上げて再度下降させ、前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削することを特徴とする。
【0013】
本発明のの掘削方法の好ましい例によれば、掘削中に孔壁が崩壊したとき、ケーシングとハンマとを一旦引き上げるため、崩壊した土壌が掘削途中の孔に入り込む。また、強度が弱く崩壊する寸前であった土壌も、上記の孔に入り込む土壌につられて崩壊することが多い。このため、再度掘削するときに新たな崩壊が発生する可能性が低くなる。また、ケーシングとハンマとを再度下降させ、噴出される土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削するため、新たな崩壊をより効果的に防止することができ、軟弱地盤においても孔を掘削することができる。
【0014】
本発明の掘削方法の好ましい例は、掘削完了後に前記ケーシングと前記ハンマとを引き上げる際に前記孔壁が崩壊したとき、前記ケーシングと前記ハンマとを再度下降させ、前記圧縮空気で崩壊した前記土壌成分を地表まで吹き上げて、噴出される前記土壌成分で崩壊した傾斜面に保護層を形成しながら掘削することを特徴とする。
【0015】
本発明の掘削方法の好ましい例によれば、掘削完了後にケーシングとハンマとを引き上げる際に孔壁が崩壊したときも、再度ケーシングとハンマとを下降させ、崩壊した傾斜面に保護層を形成するため、再度の孔壁崩壊を防止でき、軟弱地盤においても孔を掘削することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明の掘削方法によれば、掘削された土壌成分の飛散を防止するとともに、前記土壌成分を用いて孔壁に保護層を形成し、掘削装置及び掘削に係る作業工程を簡素なものにしながら、孔壁の崩壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る掘削方法に用いられるダウンザホールハンマ装置を説明する図である。
【
図2】孔を掘削中のケーシング及びハンマの拡大図である。
【
図3】孔壁が崩壊したときの掘削方法を説明する図である。
【
図4】孔壁が崩壊したときの掘削方法を説明する他の図である。
【
図5】孔壁が崩壊したときの掘削方法を説明する他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の掘削方法の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態の掘削方法は、ダウンザホールハンマ装置20を用いて実施される。
【0019】
先ず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態の掘削方法に用いられるダウンザホールハンマ装置20について説明する。ダウンザホールハンマ装置20は、エアーコンプレッサー21と、エアーコンプレッサ21ーを運搬する運搬車両22と、油供給機23と、水供給機24と、伸縮ブーム26を備える作業車両25と、オーガモーター27と、スイベル29と、ケーシング30と、ハンマ31とを備える。
【0020】
エアーコンプレッサー21は、運搬車両22に積載され、圧縮空気を製造して後段の各構成要素に配管28を通じて供給するものである。油供給機23は、エアーコンプレッサー21から供給された圧縮空気に、ケーシング30及びハンマ31の潤滑用としての油分を混合するものである。水供給機24は、油が混合された圧縮空気に、さらに図示しない水用ポンプで水を供給して混在させるものである。なお、油供給機23及び水供給機24に接続された配管28には、図示しない調整バルブが設けられ、油及び水の供給量を調整することができる。
【0021】
作業車両25は、搭載する伸縮ブーム26を所望の位置に延ばしてケーシング30及びハンマ31を吊下げるものである。オーガモーター27は、ケーシング30及びハンマ31を回転させるものである。スイベル29は、配管28が接続され、油と水とが混在された圧縮空気をケーシング30及びハンマ31に供給しつつ、オーガモーター27の回転力をケーシング30及びハンマ31に伝達するものである。
【0022】
ケーシング30は、筒状部材であり、ハンマ31をその内部に挿入させる。ハンマ31は、ピストン32、頭部33、流路34、及びビット35を備える。このピストン32がケーシング30に組み込まれて挿入されるとともに、ケーシング30より径大に構成された頭部33が、ケーシング30の先端より突出される。また、ハンマ31のピストン32から頭部33にかけて、その内部にエアーコンプレッサー21から供給された圧縮空気を流通させる流路34が設けられる。そして、圧縮空気がケーシング30内に圧送され、頭部33より噴出されることでピストン32がケーシング30内で上下に振動し、頭部33の先端に設けられたビット35で土壌13を打撃して粉砕し掘削する。
【0023】
次に、同じく
図1及び
図2を参照しながら、上述のダウンザホールハンマ装置20の各構成要素を踏まえて、ダウンザホールハンマ装置20を用いた掘削方法を説明する。
【0024】
先ず、運搬車両22と作業車両25とを施工現場に移動させ、伸縮ブーム26を操作して、孔10を掘削する位置にケーシング30とハンマ31とを立設させる。次に、エアーコンプレッサー21から圧縮空気を圧送して、油供給機23及び水供給機24で油と水とを混在させ、スイベル29を通じてハンマ31の頭部33より噴出させる。そして、オーガモーター27を作動させると、ケーシング30とハンマ31とが回転しつつ、土壌13に含まれる岩石等を粉砕しながら土壌13を掘削する。このとき、ケーシング30内に圧送される圧縮空気は、流路34を通じて頭部33より噴出される(
図2矢印a参照)。
【0025】
この粉砕された土壌成分は、圧縮空気によってケーシング30と孔壁11との隙間sを通過して地上に排出される(
図2矢印b,c参照)。このとき、圧縮空気に含まれる水によって、粉砕された土壌成分は水を含む。このため、粉砕された土壌成分の一部は孔壁11に付着して保護層12を形成する。この粉砕された土壌成分に含まれる水の量であるが、粉砕された土壌成分を手で捏ねたとき、球状や紐状に成形できる程度に塑性を有することが好ましい。もっとも、この塑性の程度としては、成形した形状を長時間維持できる程の強度は要求されず、1分~5分間程度の短時間でも形状を維持できればよい。なお、この塑性を有する状態の水分量として、例えば、土壌粗孔隙に毛細管現象で取り込まれる毛管水といわれる水が保持されている状態が挙げられる。
【0026】
また、掘削する土壌13の地質が弱いとき、ケーシング30とハンマ31とで孔10を掘削するときに、土壌成分に含ませる水の量をさらに多くすることもできる。ここでは、孔10を掘削するときに、土壌成分に含ませる水の量を、土壌成分が液性を有する状態まで増加させる。この液性を有する状態とは、例えば、土壌成分を手で捏ねてもその形状を維持できずに崩れるような状態、又は土壌成分から重力水といわれる、土壌粗孔隙に毛細管現象で取り込まれていた水が重力により排除される水が発生する状態が挙げられる。そして、掘削において液性を有する土壌成分が孔壁11に付着するのであるが、このような、土壌成分が液性を有する状態であっても、掘削途中では、常に圧縮空気がケーシング30と孔壁11との間を上昇しながら通過しているため、孔壁11に付着した土壌成分が脱落することはない。
【0027】
また、ハンマ31の頭部33からは圧縮空気が噴出されているため、その周辺は大気圧より気圧が高くなっている。このため、土壌成分が液性を有するまで水を含ませることによって、土壌成分のうち細かな粒子が水とともに孔壁11に染み込む。これによって保護層12より土壌13側にも比較的強度の高い層が形成され、さらに孔壁11を強固にすることができる。
【0028】
次に、工程が進んで、所定の深さ近くまで孔10を掘削して、孔壁11に水を含んだ土壌成分が付着した後に、水供給機24から供給される水を少なくするか停止させる。すると、圧縮空気は高温となっているため、孔壁11に付着した土壌成分に含まれる水が速やかに蒸発し乾燥する。このように、土壌成分に一旦多く含まれた水分が蒸発することにより、例えば、水を含んだ粘土が乾燥して固まるように、強固な保護層12が形成されるのである。
【0029】
なお、上記の孔壁11に付着させた土壌成分の水を乾燥させる掘削方法は、地層に含まれる水が多い、又は設定ミスにより水供給機24からの水供給量が多かったとき等、掘削当初に意図せずに粉砕された土壌成分に含まれる水が多すぎるようなときにも、形成された保護層12の水分の調整として用いることができる。また、保護層12を乾燥させる時間であるが概ね10~20分間で足りる。
【0030】
次に、所定の深さの孔10を掘削すると、ケーシング30とハンマ31とを孔10から引き抜く。このとき、通常の掘削方法であれば、例えば河川近傍等の条件が悪い施工現場では、掘削した孔壁11がすぐに崩壊してしまい、再度掘削する必要があるが、本実施形態の掘削方法では、孔壁11に付着した保護層12によって、孔壁11の崩壊が防止できる。
【0031】
次に、ボイド管と呼ばれる紙管等の保護管(図示せず)を掘削した孔10に挿入すれば完了である。なお、本実施形態の掘削方法にて形成された孔壁11の崩壊を防止できる時間であるが、掘削する土壌の地質が軟弱な施工現場であっても、ケーシング30とハンマ31とを引き抜いてからボイド管を挿入するまでの数分間は、保護層12によって孔壁11を維持することができる。また、条件のよい土壌13であれば、数時間から数日程度は孔壁11の崩壊を防止することができる。なお、土壌13が岩石層のみで構成されているような条件がかなり良いような場合は、さらに長期間にわたって孔壁11の崩壊を防止することができることは勿論である。
【0032】
次に、掘削方法の他の実施形態として、
図3ないし
図5を参照して、掘削の途中で孔壁11が崩壊したときの掘削方法を説明する。
【0033】
図3に示すように、ダウンザホールハンマ装置20を用いて孔10を掘削するとき、掘削の途中で孔壁11が崩壊すると、孔壁11とケーシング30との隙間に崩壊した土壌成分14が入り込んでしまう。このまま、掘削を続けても、最後にケーシング30とハンマ31とを引き抜くときに崩壊した土壌成分14が孔10に入り込んでしまうため、掘削作業を続けることができない。
【0034】
そこで、
図4に示すように、ケーシング30とハンマ31とを掘削した孔10から一旦引き上げる。すると、崩壊した土壌成分14が孔10の中に入り込む。このとき、元々崩壊していた部分は、強度が弱いため、崩壊した土壌成分14が孔10の中に入り込むのに引き摺られて、弱い部分がさらに崩壊することが多く、
図4に示すように崩壊部分16が広がるとともに、掘削した孔10が埋まる。
【0035】
次に、
図5に示すように、ケーシング30とハンマ31とを再度下降さぜ、ハンマ31の頭部33から噴出させる圧縮空気で、崩壊した土壌成分14を地表まで吹き上げる(図中矢印d参照)。このとき、圧縮空気に水が含まれているため、崩壊した傾斜面15にも保護層112が形成される。これにより、傾斜面15の再度の崩壊を防止しながら掘削を続けることができる。次に、さらに掘削を続けていけば、上記で述べたように、垂直に形成された孔壁11にも保護層が形成されていく。なお、本実施形態の掘削方法は、孔10を掘削して、掘削完了後にケーシング30とハンマ31とを引き上げたときに孔壁11が崩壊したような場合(
図4参照)にも用いることができる。係る場合は、上述の
図4から
図5に示す作業を実施すればよい。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態の掘削方法によれば、粉砕された土壌成分に水を加えることによって、地表に排出される土壌成分による粉塵を防止することができる。また、粉砕された土壌成分によって、孔壁に保護層を形成するため、ケーシングを掘削した孔に残す、又はミルクセメント等で孔壁を補強する等の特別な装置又は方法が不要である。このため、通常のダウンザホールハンマ装置に水供給機を加えるだけで、保護層を形成した孔壁を備える孔を掘削することができる。
【0037】
また、掘削の前半で粉砕された土壌成分に多めの水を与えて液性を有するようにして、掘削の後半に水供給機からの水供給量を制限して乾燥させる実施形態では、さらに強固な保護層を形成することができるとともに、水分の多い地層にも対応することができる。
【0038】
また、孔壁が崩壊したときに、ケーシングとハンマとを一旦引き上げて、崩壊した傾斜面に保護層を形成する実施形態では、垂直な孔壁に保護層を形成しても孔壁が崩壊するような軟弱地盤にも対応させることができる。さらに、このケーシングとハンマとを一旦引き上げるとき、崩壊した土壌成分が孔の中に入り込むのに引き摺られて、弱い部分がさらに崩壊するため、再度の崩壊をより効果的に防止することもできる。
【0039】
また、掘削完了後にケーシングとハンマとを引き上げたときに孔壁が崩壊して、崩壊した傾斜面に保護層を形成する実施形態でも、上記同様に軟弱地盤にも対応させることができる。
【0040】
なお、上述の掘削方法は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
10・・孔、11・・孔壁、12,112・・保護層、13・・土壌、14・・崩壊した土壌成分、15・・傾斜面、16・・崩壊部分、
20・・ダウンザホールハンマ装置、21・・エアーコンプレッサー、22・・運搬車両、23・・油供給機、24・・水供給機、25・・作業車両、26・・伸縮ブーム、27・・オーガモーター、28・・配管、29・・スイベル、
30・・ケーシング、31・・ハンマ、32・・ピストン、33・・頭部、34・・流路、35・・ビット、
隙間・・s