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特許70584359軸センサ内蔵型ゴルフクラブ及びそれを用いたスイング評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】9軸センサ内蔵型ゴルフクラブ及びそれを用いたスイング評価システム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20220415BHJP
   A63B 53/00 20150101ALI20220415BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220415BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
A63B53/00 B
A63B102:32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021144478
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021065737
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501204868
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】安形 雄三
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-039845(JP,A)
【文献】特表2008-506421(JP,A)
【文献】特開2017-086210(JP,A)
【文献】特開2020-075096(JP,A)
【文献】特開2016-055028(JP,A)
【文献】特開2015-077351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B49/00-60/64
A63B69/00-71/16
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ、シャフト及びヘッド部を有するゴルフクラブであり、
加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、
前記9軸センサの出力データを処理してスイングの軌道を計測して評価するスイング軌道計測システムと、
前記スイング軌道計測システムでの評価結果を光若しくは音で出力する出力部と、
が前記ヘッド部に内蔵されており、
前記スイング軌道計測システムが、
前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを入力し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、
少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、
バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、
前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、
前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、
スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、
インパクトを検知するインパクト検知部と、
時間の経過を計測する計時部と、
で構成されており、
前記スイング判定部の判定結果が前記出力部から出力されるようになっていることを特徴とする9軸センサ内蔵型ゴルフクラブ。
【請求項2】
加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、
前記9軸センサの出力データを無線送信し、受信可能な第1の送受信部と、
解析されたスイング評価を光若しくは音で出力する出力部と、
が、ゴルフクラブのヘッド部に設けられており、
前記第1の送受信部からの送信データを受信すると共に、前記送信データを処理してスイングの軌道を計測して評価した判定結果を無線送信する第2の送受信部を有するスイング軌道計測システムを備え、
前記スイング軌道計測システムが、
前記送信データである前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを前記第2の送受信部で受信し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、
少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、
バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、
前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、
前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、
スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、
インパクトを検知するインパクト検知部と、
時間の経過を計測する計時部と、
で構成されており、
前記スイング判定部の判定結果を前記第2の送受信部から前記第1の送受信部に送信して前記出力部に出力するようになっているスイング評価システム。
【請求項3】
加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、
前記9軸センサの出力データを無線送信する送信部と、
が、ゴルフクラブのヘッド部に設けられており、
前記送信部からの送信データを、ネットワークを経て入力して処理し、スイングの軌道を計測して評価した判定結果を出力するスイング軌道計測システムを備え、
前記スイング軌道計測システムが、
前記送信データである前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを入力し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、
少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、
バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、
前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、
前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、
スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、
インパクトを検知するインパクト検知部と、
時間の経過を計測する計時部と、
で構成されており、
前記スイング判定部の判定結果を、前記ネットワークを経て端末装置に無線送信し、前記端末装置において前記判定結果を出力するようになっているスイング評価システム。
【請求項4】
加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、
前記9軸センサの出力データを無線送信する第1の送信部と、
が、ゴルフクラブのヘッド部に設けられており、
前記第1の送信部からの送信データを受信して処理し、スイングの軌道を計測して評価した判定結果を出力して無線送信する第2の送信部を備えたスイング軌道計測システムを備え、
前記スイング軌道計測システムが、
前記送信データである前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを受信し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、
少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、
バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、
前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、
前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、
スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、
インパクトを検知するインパクト検知部と、
時間の経過を計測する計時部と、
で構成されており、
前記スイング判定部の判定結果を、前記第2の送信部から端末装置に無線送信し、前記端末装置において前記判定結果を出力するようになっているスイング評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9軸センサ(xyzの3軸加速度センサと、xyzの3軸角速度センサと、xyzの3軸方位(地磁気)センサとで成るセンサ)を、ゴルフクラブのヘッド部に内蔵した9軸センサ内蔵型ゴルフクラブ及びそれから出力されたデータを処理演算してゴルフスイングを評価するスイング評価システムに関し、特にゴルフクラブのヘッド部に超小型の9軸センサを内蔵させた9軸センサ内蔵型ゴルフクラブと、そのゴルフクラブを用いた利用者のスイングで出力される加速度データ、角速度データ及び方位(地磁気)データに基づいて、スイング軌道を容易に計測して評価できるスイング軌道計測システムを用いたスイング評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフは、身体及び精神健康に役立つ運動であると認識されて脚光を浴びており、近年多くのゴルフ層を形成している大衆的な運動といえる。そして、ゴルフには、グリップ、シャフト及びヘッド部を有するゴルフクラブが使用される。
【0003】
ゴルファーがスイングを行うとき、ゴルファーが加えるインパクトの位置がゴルフボールを打撃する最適位置(スイートスポット)からずれる場合、ゴルフボールを最大の力で打撃することができないため、飛距離が減少し、正確度も著しく低下する。そのため、多くのゴルファーが各自の必要によって、より良い成績を得るために自分のスイング姿勢などを校正するためのレッスンを受けるか、ビデオ視聴、撮影などの多くの努力を注いでいる。しかしながら、ゴルファーが行うスイングにおける正確なインパクト位置を把握することが非常に難しく、いわゆるスイートスポットにボールがヒットしているか否かの判定が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-182668号公報
【文献】特開2019-150578号公報
【文献】特開2018-126238号公報
【文献】WO2019/212721
【文献】特開2020-75096号公報
【文献】特開2018-153295号公報
【文献】特開2011-83356号公報
【文献】特開平4-146770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、多様な方式のスイング分析装置によって自分のスイングパターンを分析することができ、スクリーンゴルフ場に位置する装備によって打球の速度、スイングスピード、スイング軌跡などのスイング情報を確認することができる。このようなスクリーン方式のスイング分析装置は広い空間を要求しており、実際にゴルフ場でプレーしながらスイングを実時間で分析することができない欠点があり、使用者がスイング分析を行うために決められた場所を必ず訪問しなければならない時間的かつ経済的な難しさが存在している。
【0006】
ゴルフクラブのスイートスポットにボールがヒットしているか否かの評価の指標としてシャフトプレーン(スイングプレーン)が知られており、図1に示すようにゴルフクラブ1のスイングで形成される円弧平面がシャフトプレーン2である。シャフトプレーン2が波打つとスイートスポットに当たる確率が低下するので、シャフトプレーン2を常に平面に維持してスイングすることが望まれる。
【0007】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、比較的簡易な構成で、シャフトプレーンを平面に維持しながらスイングできる指標を与えることが可能なゴルフクラブ及びそれを用いたスイング評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、グリップ、シャフト及びヘッド部を有するゴルフクラブに関し、本発明の上記目的は、加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、前記9軸センサの出力データを処理してスイングの軌道を計測して評価するスイング軌道計測システムと、前記スイング軌道計測システムでの評価結果を光若しくは音で出力する出力部とが前記ヘッド部に内蔵されており、前記スイング軌道計測システムが、前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを入力し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、インパクトを検知するインパクト検知部と、時間の経過を計測する計時部とで構成されており、前記スイング判定部の判定結果が前記出力部から出力されるようになっていることにより達成される。
【0009】
また、本発明はゴルフのスイング評価システムに関し、本発明の上記目的は、加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、前記9軸センサの出力データを無線送信し、受信可能な第1の送受信部と、解析されたスイング評価を光若しくは音で出力する出力部と、が、ゴルフクラブのヘッド部に設けられており、前記第1の送受信部からの送信データを受信すると共に、前記送信データを処理してスイングの軌道を計測して評価した判定結果を無線送信する第2の送受信部を有するスイング軌道計測システムを備え、前記スイング軌道計測システムが、前記送信データである前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを前記第2の送受信部で受信し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、インパクトを検知するインパクト検知部と、時間の経過を計測する計時部と、で構成されており、前記スイング判定部の判定結果を前記第2の送受信部から前記第1の送受信部に送信して前記出力部に出力するようになっていることにより、或いは、加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、前記9軸センサの出力データを無線送信する送信部と、が、ゴルフクラブのヘッド部に設けられており、前記送信部からの送信データを、ネットワークを経て入力して処理し、スイングの軌道を計測して評価した判定結果を出力するスイング軌道計測システムを備え、前記スイング軌道計測システムが、前記送信データである前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを入力し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、インパクトを検知するインパクト検知部と、時間の経過を計測する計時部とで構成されており、前記スイング判定部の判定結果を、前記ネットワークを経て端末装置に無線送信し、前記端末装置において前記判定結果を出力するようになっていることにより、或いは、加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、前記9軸センサの出力データを無線送信する第1の送信部と、が、ゴルフクラブのヘッド部に設けられており、前記第1の送信部からの送信データを受信して処理し、スイングの軌道を計測して評価した判定結果を出力して無線送信する第2の送信部を備えたスイング軌道計測システムを備え、前記スイング軌道計測システムが、前記送信データである前記9軸センサからの加速度データ、角速度データ及び方位データを受信し、前記加速度データを2回積分する第1の積分部及び前記角速度センサの角速度データを1回積分する第2の積分部と、少なくとも前記第1の積分部の出力データ1,前記第2の積分部の出力データ2,前記方位データを記憶するメモリと、バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部と、前記バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部と、前記比較部における比較結果が所定の許容範囲であるかを判定するスイング判定部と、スイングのトップ位置を判定するトップ検知部と、インパクトを検知するインパクト検知部と、時間の経過を計測する計時部とで構成されており、前記スイング判定部の判定結果を、前記第2の送信部から端末装置に無線送信し、前記端末装置において前記判定結果を出力するようになっていることにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゴルフクラブによれば、ヘッド部に9軸センサを内蔵しているので、スイングに関する多種のデータをスイング中に同時に取得することができ、そのデータを軌道計測システムで演算処理することにより、シャフトプレーンの平面性を的確に評価することができ、練習者のスイングスキルの向上に役立てることが可能である。
【0011】
また、本発明に係るスイング評価システムによれば、9軸センサからのデータを処理する軌道計測システムをヘッド部に内蔵させることも、無線送受信可能な外部に或いはネットワークを介して接続することができ、練習者の好きな時間に、好きな場所で自由に練習して直ちに評価を得ることができる。ネットワークを介してゴルフクラブと軌道計測システムとを接続した場合には、複数の練習者がスイングしながら、それぞれ各自の評価を知ることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シャフトプレーンを説明する模式図である。
図2】ゴルフスイングの流れを示す線図である。
図3】アドレス状態を示す正面図ある。
図4】本発明に係るゴルフクラブ(第1実施形態クラブ)の構造図である。
図5】ヘッド部の内部構造例を示す断面図である。
図6】ランプ表示部の構成例を示す平面図である。
図7】本発明に係るゴルフクラブ(第2実施形態クラブ)の構造図である。
図8】電気的な構成例を示すブロック図である。
図9】本発明の動作例を示すフローチャートである。
図10】バックスイングのスタートを確定する様子を示す図である。
図11】バックスイングのスタートを確定する動作例を示すフローチャートである。
図12】トップ位置の検知の状態を示す図である。
図13】ダウンスイングのスタートを確定する動作例を示すフローチャートである。
図14】インパクト位置の検知の状態を示す図である。
図15】インパクト位置を確定する動作例を示すフローチャートである。
図16】本発明の動作例を示すフローチャートである。
図17】本発明に係るゴルフクラブ(第3実施形態クラブ)の構造図である。
図18】本発明の構成例を示すブロック図である。
図19】軌道計測システムの構成例を示すブロック図である。
図20】本発明の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般的に、ゴルフスイングは図2のタイムチャートに示すように、アドレス(時点t1)から始まり、人によってワッグル(時点t2~t3)があり、その後スイング開始(時点t3)となり、バックスイングとなる。バックスイングも遂にはトップ(時点t4)を経て切り返しのダウンスイングに移行し、最下点若しくはその近辺でボールに当たるインパクト(時点t5)を迎え、その後はフォロースルーのスイングとなり、スイング終了となる(時点t6)。
【0014】
ゴルフスイングのアドレスは図1の位置(A)であり、図3に示すようにティー上に載置されたゴルフボール3にゴルフクラブ1のヘッド面を対向させる動作であり、このアドレス位置(A)から徐々にバックスイングとなり、位置(B)、(C)を経て、図1の位置(D)でトップ位置となり、トップから反転して徐々にダウンスイングに移行する。ダウンスイング途中に位置(C)、(B)を経て、最下点若しくはその近辺に達した図1の位置(A)で、アドレスと同じ位置でインパクトとなり、ヘッド面に当たったゴルフボール3を飛球させた後にフォロースルーとなり、図1の位置(E)、(F)を経てスイング終了となる。通常アドレス位置では、図3に示すようにゴルフクラブ1のヘッド面をボール3に対向させることから、少なくともバックスイングの軌道とダウンスイングの軌道が同一であれば、シャフト(スイング)プレーンが平面となり、インパクトもアドレスと同じになる理屈であり、スイートスポットにボールが当たる確率が高くなる。また、アドレスではクラブフェース面をボールに対向させると共に、フェース面を飛球方向に整えるので、インパクト時に、アドレス時と同様なフェース面を維持することも重要な要素となる。
【0015】
なお、本例では図3に示すように、上下方向をy軸とし、左右方向をx軸とし、前後方向をz軸としているが、座標系は適宜変更可能である。
【0016】
この前提に基づき、本発明ではバックスイングの軌道とダウンスイングの軌道のずれ若しくは一致を計測するに最適なゴルフクラブを提案すると共に、そのゴルフクラブを用いたスイングの評価を客観的に行い得るスイング評価システムを提案する。ゴルフスイングの練習はアマチュアに限らず、プロゴルファーでも当然行われるが、コーチやレッスンプロなどがスイングを見て評価することも多い。しかしながら、このような場合には、コーチやレッスンプロなどが練習者の近くにいる必要があり、画像を見て評価する場合であっても、撮像しなければならない煩わしさがある。従って、自分の都合の良い時に、都合の良い場所で、自由に素振りだけで気軽に評価を得て、練習できることの意義は大きい。
【0017】
図4は、本発明に係るゴルフクラブ10(第1実施形態ゴルフクラブ)の構造例を示しており、グリップ12の端部に電源をON/OFFしたり、評価計測のスタートを指示するスイッチ11が設けられており、シャフト13の先端のヘッド部14内に超小型の9軸センサ100及びスイング軌道計測システム200が設けられている。スイッチ11は押圧型若しくは接触型であり、長押し(例えば3秒)で電源をON/OFFし、電源ON後に、短い時間(例えば3秒未満)に押圧若しくは接触すると、内容をリセットして評価計測をスタートさせる。スイッチ11は、他の箇所へ設けることも可能である。また、ヘッド部14には充電式のバッテリ30が設けられており、ヘッド部14の上面には、区間毎に色点灯する長形状のランプ表示部20が設けられている。
【0018】
9軸センサ100及びスイング軌道計測システム200はヘッド部14内に、埋め込み式若しくは差し込み式で設けられ、埋め込み式の場合の構造例は図5である。即ち、バッテリ30はヘッド部14の側面(ゴルファーである利用者から見て前方)に設けられた凹部に差し込まれ、その前面にUSBケーブルで充電可能なUSB端子31が設けられている。また、9軸センサ100及びスイング軌道計測システム200は、ヘッド部14の上面に設けられた凹部にそれぞれ埋め込まれ、その上部は蓋材14A及び14Bで脱出しないように覆われている。ランプ表示部20の構成例は図6であり、本例ではスタート(アドレス)からトップまでのバックスイング、トップからインパクトまでのダウンスイングをそれぞれ区間SE1~SE6に設定し、各区間SE1~SE6を赤色、緑色、黄色で別個に点灯して報知するようになっている。本例では6区間に設定しているが、区間数は任意であり、適宜変更可能である。
【0019】
図7は、本発明に係るゴルフクラブ10A(第2実施形態ゴルフクラブ)の構造例を図4に対応させて示しており、第1実施形態ゴルフクラブ10との相違点は、ランプ表示部20がスピーカ21になっているだけであり、その他は全く同一である。
【0020】
図8は、本発明に係るゴルフクラブ10若しくは10Aを用いたスイング軌道計測システム200の構成例を示しており、9軸センサ100はxyzの3軸加速度センサ110と、xyzの3軸角速度センサ120と、xyzの3軸方位(地磁気)センサ130とで構成されており、加速度センサ110からは加速度データαx、αy、αzが出力され、角速度センサ120からは角速度データωx、ωy、ωzが出力され、方位センサ130からは方位データDRx、DRy、DRzが出力される。加速度データαx、αy、αzは、スイング軌道計測システム200内の積分部202に入力されて積分され、速度データSPx、SPy、SPzに変換され、速度データSPx、SPy、SPzは積分部203に入力されて積分され、位置データPSx、PSy,PSzに変換されてスイング軌道計測システム200に取り込まれる。角速度データωx、ωy、ωzは、スイング軌道、計測システム200内の積分部204に入力されて積分され、角度データθx、θy、θzに変換されてスイング軌道計測システム200に取り込まれ、方位データDRx、DRy、DRzはそのまま計測システム200に取り込まれる。本例では、図3のx軸の関係から、加速度データαxがそのまま取り込まれているが、インパクト位置検知のためであり、利用者の左右方向がy軸の座標系であれば、加速度データαyを取り込む。
【0021】
位置データPSx、PSy,PSzはクラブヘッドの軌道位置に関連し、角度データθx、θy、θz及び方位データDRx、DRy、DRzは、クラブヘッドの向きや傾きに関連する。また、9軸センサ100及びスイング軌道計測システム200には、スイッチ11による電源ONによってバッテリ30から電力が供給される。
【0022】
スイング軌道計測システム200は、全体を制御するCPU(Central Processing Unit)(MPU(Micro Processor Unit)やMCU(Micro Controller Unit)を含む)201を具備し、CPU201には、演算や制御のためにデータや情報を記憶するメモリ210と、メモリ210に記憶されたデータや情報を時間的に反転する反転部211と、バックスイングの範囲を判定して確定するバックスイング確定判定部220と、バックスイングのデータとダウンスイングのデータを比較する比較部230と、比較部230における比較結果が所定の許容範囲に入っているか否かを判定するスイング判定部240と、スイングのトップ位置を判定するトップ検知部250と、クラブヘッド面がゴルフボールにヒットするインパクトを検知するインパクト検知部260と、スイング判定部240の判定結果を出力する出力部212と、時間の経過を計測する計時部213とが相互に接続されている。
【0023】
なお、本例のメモリ210は、FIFO(First-In First-Out)形式となっているため、メモリ210から読み出された記憶内容を反転部211で時間的に反転するようになっている。
【0024】
本例は第1実施形態ゴルフクラブ10について説明するため、出力部212の出力はランプ表示部20に接続されているが、第2実施形態ゴルフクラブ10Aの場合には、ランプ表示部20に代えて音を発生するスピーカ21が接続される。音の発生音は、スイングの位置によって可変(高音と低音など)であっても良い。例えば、トップ位置近くでは低音で出力し、インパクト位置に近づくに従って高音とするように変化させる。
【0025】
このような構成において、その動作例を図9のフローチャートを参照して説明する。本例はスイングの終了後に、スイングの判定評価を利用者に報知する方法である。
【0026】
動作開始に先立って先ずスイッチ11の長押しにより電源がONされ、その後にスイッチ11を短い時間に押圧若しくは接触して、内容をリセットして評価計測の動作を起動する。そして、9軸センサ100の加速度センサ110からxyz軸の加速度データαx、αy、αzが出力されてスイング軌道計測システム200に入力され(ステップS1)、積分部202で速度データSPx、SPy、SPzに変換され(ステップS2)、速度データSPx、SPy、SPzは更に積分部203に入力されて位置データPSx、PSy,PSzに変換され(ステップS3)、位置データPSx、PSy,PSzがスイング軌道計測システム200に取り込まれる。また、角速度センサ120からxyz軸の角速度データωx、ωy、ωzが出力されてスイング軌道計測システム200に入力され(ステップS4)、積分部204で角度データθx、θy、θzに変換され(ステップS5)、角度データθx、θy、θzが計測システム200に取り込まれ、方位データDRx、DRy、DRzはそのまま計測システム200に取り込まれる(ステップS6)。計測システム200に取り込まれた位置データPSx、PSy,PSz、角度データθx、θy、θz、方位データDRx、DRy、DRzは、メモリ210に計時部213の時間に紐付けされて順次記憶される(ステップS7)。スイング軌道計測システム200に取り込まれる順番、メモリ210に記憶される順番は適宜変更可能である。
【0027】
アドレス以降、ゴルファーによってワッグルがあったり、無かったり、或いはワッグルを何回も繰り返すなどの違いがあるので、バックスイングの範囲(時間)が一定しない。そのため、本発明ではバックスイング確定判定部220によりバックスイングの判定を行い(ステップS10)、バックスイングのスタート時間を決定する(ステップS20)。詳細は後述する。
【0028】
バックスイングが始まってからクラブヘッドは上部に達してトップ位置(図1の位置(D))となるが、トップ位置はダウンスイングのスタートにもなる。つまり、トップ位置はバックスイング終了位置であり、ダウンスイングのスタート位置にもなっている。本発明ではトップ検知部250がスイングのトップ位置を判定し(ステップS30)、トップ位置となったときに(ステップS40)、メモリ210に記憶されているバックスイングの全てのデータを読み出し、反転部211を介して時間的に整理する(ステップS41)。データの整理は、記憶されているバックスイングのデータと、次に入力されて来るダウンスイングのデータとを時間軸上で整合させるためのものである。トップ位置の検知の詳細は後述する。
【0029】
トップ位置の後はダウンスイングに移行するので、このダウンスイングにおける位置データPSx、PSy,PSz、角度データθx、θy、θz、方位データDRx、DRy、DRzは、メモリ210に計時部213の時間に紐付けされて順次記憶される(ステップS42)。ダウンスイングが始まると遂には重要なインパクトになるので、インパクト検知部260によりインパクトを判定し(ステップS50)、インパクト位置を決定する(ステップS60)。インパクト位置の検知の詳細は後述する
インパクト位置が決定されるとダウンスイングの範囲が定まるので、その段階で、バックスイングの軌道とダウンスイングの軌道とを比較する所定の区間(例えば図6の区間SE1~SE6)を設定し(ステップS61)、比較部230は区間毎に時間軸上で比較を行う(ステップS62)。比較は、差が許容範囲ε以内であるか否かについて区間毎に行う(ステップS63)。例えば、バックスイング時の位置データをPSxb、PSyb,PSzb、角度データをθxb、θyb、θzb、方位データをDRxb、DRyb、DRzbとし、ダウンスイング時の位置データをPSxd、PSyd,PSzd、角度データをθxd、θyd、θzd、方位データをDRxd、DRyd、DRzdとした場合、下記数式に従って判定する。
【0030】
先ず下記数1によって、バックスイングとダウンスイングの差である位置データ指標dfp1、角度データ指標dfa1及び方位データ指標dfr1を求める。
(数1)
{|PSxb|+|PSyb|+|PSzb|}-{|PSxd|+|PSyd|+|PSd|}=dfp1
{|θxb|+|θyb|+|θzb|}-{|θxd|+|θyd|+|θzd|}=dfa1
{|DRxb|+|DRyb|+|DRzb|}-{|DRxd|+|DRyd|+|DRd|}=dfr1
【0031】
次に、上記算出された位置データ指標dfp1、角度データ指標dfa1及び方位データ指標dfr1の絶対値の加算値が、許容値ε11、ε12(<ε11)に対して下記数2~数4のいずれの関係であるかを判定する。本例では「優良可」の3段階で評価しているが、これに限定されるものではない。
(数2)
|dfp1|+|dfa1|+|dfr1|>ε11 →「可」状態
(数3)
ε11≧|dfp1|+|dfa1|+|dfr1|>ε12 →「良」状態
(数4)
ε12≧|dfp1|+|dfa1|+|dfr1|≧0 →「優」状態
【0032】
上述では位置データ指標dfp1、角度データ指標dfa1及び方位データ指標dfr1を均等に評価しているが、重み付け係数w,w,wを用いて、下記数5~7のように重み付けを行っても良い。
(数5)
・|dfp1|+w・|dfa1|+w・|dfr1|>ε11 →「可」状態
(数6)
ε11≧w・|dfp1|+w・|dfa1|+w・|dfr1|>ε12 →「良」状態
(数7)
ε12≧w・|dfp1|+w・|dfa1|+w・|dfr1|≧0 →「優」状態
【0033】
また、バックスイングとダウンスイングの差である位置データ指標dfp2、角度データ指標dfa2及び方位データ指標dfr2を、下記数8で演算し、下記数9~数11で判定するようにしても良い。
【0034】
【数8】
(数9)
|dfp2|+|dfa2|+|dfr2|>ε21 →「可」状態
(数10)
ε21≧|dfp1|+|dfa1|+|dfr1|>ε22 →「良」状態
(数11)
ε22≧|dfp1|+|dfa1|+|dfr1|≧0 →「優」状態

この場合にも、重み付け係数を用いて、重み付けの判定を行うようにしても良い。上記「優良可」の判定結果に対して、表1に示すように光出力にあっては「優」を緑色で点灯、「良」を黄色で点灯、「可」を赤色で点灯し、音出力にあっては「優」では音を発生せず、「良」では小さい音(例えば“ピー”)、「可」では大きい音(例えば“ブー”)で音を発生させる。光の色や音の種類等は適宜変更可能である。
【0035】
【表1】
上記数2~数4若しくは数6~数8に従って、出力部212を介してランプ表示部20を点灯する(ステップS70)。区間終了まで繰り返し(ステップS71)、区間終了をもって終了となる。
【0036】
上述は第1実施形態ゴルフクラブ10についての動作であるが、第2実施形態ゴルフクラブ10Aの場合には、上記ステップS70において、ランプ点灯に代えて、スピーカ21から表1に従った音を発生させることのみが相違し、他は全く同じ動作である。
【0037】
バックスイングの判定(ステップS10)は以下のように行う。図10はアドレス後のゴルフクラブの動きの例を示しており、距離dを下記数12に従って求める。
(数12)
d=PSx+PSy+PSz

ゴルフの場合、ゴルフクラブの動きは主として上下(y軸)になるので、y軸に重み付けを行って、数10で距離dを算出しても良い。
(数13)
d=PSx+w・PSy+PSz
ただし、w>1.0である。

ゴルフクラブの場合、距離dが増加することは、クラブヘッドが上方に上がることを意味するので、時点t10のアドレスからワッグルがあれば上下動する。距離dが増加しても直ちにバックスイングになる訳ではないので(図10の時点t11~t12)、時点t13~t13のように所定時間T2の間、増加が継続したときにバックスイング動作と判定する。そして、バックスイングが判定されたときに最後の変異点(時点t13)をバックスイングのスタートとして確定し、スタート以降のデータをバックスイングデータとする。メモリ210に記憶されたデータは、計時部213の時間に紐付けされているので、最後の変異点(時点t13)をもって記憶データを整理することは容易である。
【0038】
図11はその判定動作例を示しており、アドレス(ステップS11)の後、計時部213で距離dが増加する時間を計測し(ステップS12)、所定時間T2が経過するまで継続する(ステップS13)。距離dの増加時間が所定時間T2になったとき、バックスイング確定判定部220はバックスイングの確定を行い(ステップS14)、最後の変異点(時点t13)をバックスイングのスタート位置として決定する(ステップS20)。そして、比較動作の上で不要な以前のデータ、つまり時点t10~t13の記憶データを消去する(ステップS21)。消去でなくても、判定で無視するようにしても良い。
【0039】
また、ゴルフスイングのトップ位置は、バックスイングからダウンスイングに移行する過程にあり、距離dについて、例えば図12(A)に示すようにバックスイングから瞬間的にダウンスイングに移行する場合、図12(B)に示すようにバックスイングから少し停止してからダウンスイングに移行する場合、図12(C)に示すようにバックスイングから波打って停止して後にダウンスイングに移行する場合などが考えられる。従って、本発明では、バックスイングの上昇が停止した時点(図12(A)では時点t20、図12(B)では時点t22、図12(C)では時点t25)をバックスイングの終了時点とし、その後、ゴルフクラブが下降し始めてから所定時間T3が経過したときにダウンスイングを確定し、所定時間T3だけ遡ってダウンスイングのスタート位置(図12(A)では時点t20、図12(B)では時点t23、図12(C)では時点t26)を確定する。
【0040】
図13はトップ位置の確定の動作例を示すフローチャートであり、距離dが増加する時間を計測し(ステップS31)、増加が停止するまで継続する(ステップS32)。距離dの増加が停止すると、その停止位置をバックスイングの終了時点に確定し(ステップS33)、距離dが減少する時間を計測する(ステップS34)。距離dの減少が所定時間T3を経過するまで、距離dが減少する時間を計測し、距離dの減少が所定時間T3を経過したとき(ステップS35)、ダウンスイングのスタート位置を確定する(ステップS41)。そして、確定された上記バックスイングの終了時点とダウンスイングのスタート時点の間のデータを消去して整理する。
【0041】
スイングのインパクトはゴルフクラブのフェース面がボールに当たるときであり、スイングはゴルファーの左右方向に行われる。このため、本例ではゴルファーの左右方向であるx軸の加速度データαxを用いると共に、ダウンスイングはインパクト付近では、インパクトに向けて加速度データαxは徐々に上昇し、ボールに当たった瞬間に衝撃で減少する。図14は、インパクト付近の加速度データαxの特性例を示しており、加速度データαxの急減(時点t20)をインパクト検知部260が検知する。
【0042】
図15はその動作例を示しており、x軸の加速度データαxを入力し(ステップS51)、加速度データαxが急減するまで継続するステップS52)。インパクト検知部260により加速度データαxの急減が検知されるとインパクトを確定し(ステップS60)、位置データPSx、PSy,PSz、角度データθx、θy、θz及び方位データDRx、DRy、DRzのメモリ210への記憶を停止する(ステップS61)。なお、本例では図3の座標系に従って加速度データαxを入力しているが、ゴルファーの左右方向の加速度データであれば良い。
【0043】
上述ではバックスイングの軌道とダウンスイングの軌道の比較判定をスイングの終了した後に、メモリ210からデータを読み出して行うようにしているが、スインッグ中に行うようにすることも可能であるが、この場合にはランプの点灯は、スイング中の者には見ることができないので、音で評価結果を出力することが望ましい。
【0044】
この場合の動作例は、図9に対応させて示す図16であり、ステップS1からステップS41までは図9の場合と同一である。本例ではバックスイングのデータ整理(ステップS41)の後、区間設定を行い(ステップS61)、比較を行う(ステップS62)。そして、上述したような許容範囲内であるか否かの判定を行い(ステップS63)、この評価結果に従って音を出力する(ステップS670A)。この音の出力により、ダウンスイングの途中で自分のスイングが平面を形成する軌道になっているか否かを知ることができる。上記動作はインパクト検知まで継続され(ステップS50、S60)、インパクト位置で終了となる。音が出る場合は、シャフトプレーンが平面になっていないことが分かる。しかも、どの位置で波打っているかを認知することができる。
【0045】
なお、上述の図4に示す第1実施形態ゴルフクラブ10、図7に示す第2実施形態ゴルフクラブ10Aではいずれも、9軸センサ100とスイング軌道計測システム200がディスクリートに設けられているが、モールド加工等によって一体化された構造であっても良い。
【0046】
また、上述は1回のスイング判定評価の動作例であるが、スイッチ11を押圧若しくは接触すれば前回内容がリセットされ、再度スイング判定評価を行うことができる。つまり、スイッチ11によって、繰り返しスイング判定評価を行うことが可能である。
【0047】
図17は、本発明に係るゴルフクラブ(第3実施形態ゴルフクラブ)10Bの構造を示しており、本例ではゴルフクラブ10Bは9軸センサ100を内蔵して、検出データを送信部22から無線で発信し、外部にスイング軌道計測システム300を設置するスイング評価システムの構成となっている。無線は電波に限られるものではなく、光や赤外光であっても良い。
【0048】
図18(A)は、ゴルフクラブ10Bとスイング軌道計測システム300をインターネット等のネットワーク350を介して接続し、スイング軌道計測システム300で評価された結果を、ネットワーク350を介してスイングする者(利用者)のスマホ等の端末装置360に送信するようになっているスイング評価システムの例である。即ち、ゴルフクラブ10Bの送信部22からセンサ出力データがインターネット等のネットワーク350に送信され、ネットワーク350に接続された軌道計測システム300に送信される。軌道計測システム300で評価された評価結果がネットワーク350を経て、端末装置360に送信されて表示される。評価結果は、端末装置360の表示部に表示される。従って、利用者は、手持ちの端末装置360で自分のスイングの評価を、任意の時に、任意の場所で、しかも繰り返し知ることができる。なお、図18(A)では単一のゴルフクラブ10B及び端末装置360を示しているが、ネットワーク350を使用することにより、複数のゴルフクラブ及び端末装置での利用が可能となる。
【0049】
図18(B)は、ゴルフクラブ10Cが送受信部22Aを具備すると共に、ランプ表示部20(若しくはスピーカ21)を備え、軌道計測システム300がヘッド部に内蔵されていない場合のスイング評価システムの例である。即ち、ゴルフクラブ10Cのセンサ出力データが、送受信部22Aから直接無線でスイング軌道計測システム300の送受信部301に送信され、軌道計測システム300で評価された評価結果が、送受信部301から送受信部22Aを経て、ゴルフクラブ10Cに入力されて、ランプ表示部20に表示される。スイングする者は軌道計測システム300からの評価結果を、ランプ表示部20(若しくはスピーカ21)で見ることができる。従って、本例でも、利用者は、自分のスイングの評価を、任意の時に、任意の場所で、しかも繰り返し知ることができる。なお、本例においても、図18(A)に示すようなネットワークを介して評価することが可能であり、その場合には、複数の人が、1つのスイング軌道計測システム300を用いてスイング評価を得ることができる。
【0050】
また、図18(C)は、ネットワークを利用しないで、スイングする者の端末装置360にスイング評価結果を表示する場合のスイング評価システムの構成である。即ち、即ち、ゴルフクラブ10Bの送信部22からセンサ出力データが、軌道計測システム300Aの受信部301Aに送信される。そして、軌道計測システム300Aで評価された評価結果が送信部331を経て、端末装置360に送信されて表示される。評価結果は、端末装置360の表示部に表示される。従って、利用者は、手持ちの端末装置360で自分のスイングの評価を、任意の時に、任意の場所で、しかも繰り返し知ることができる。
【0051】
例えば図18(C)の場合のスイング軌道計測システム300Aの構成例は図19であり、ゴルフクラブ10Bの送信部22から送信されたデータは受信部301Aで受信される。受信された加速度データαx、αy、αzは積分部302に入力され、得られた速度データSPx、SPy、SPzは積分部303に入力され、位置データPSx、PSy、PSzとして取り込まれる。加速度データαxはそのまま取り込まれる。また、受信された角速度データωx、ωy、ωzは積分部304に入力され、角度データθx、θy、θzとして取り込まれ、受信された方位データDRx、DRy、DRzはそのまま取り込まれる。スイング軌道計測システム300Aは、全体の制御、演算を行うCPU310を備え、CPU310には、前述と同様なメモリ311、反転部312、バックスイング確定判定部313、比較部320、スイング判定部321、トップ検知部322、インパクト検知部323、計時部324、出力部330が相互に接続されており、出力部330には送信部331が接続されている。
【0052】
このような構成において、その動作例を図20のフローチャートを参照して説明する。動作は、ゴルフクラブ10B側とスイング軌道計測システム300A側とに分かれる。
【0053】
ゴルフクラブ10B側では、ゴルフクラブ10Bのスイングに従って、内蔵された9軸センサ100から、加速度データαx、αy、αzが出力され(ステップS100)、角速度データωx、ωy、ωzが出力され(ステップS101)、方位データDRx、DRy、DRzが出力され(ステップS102)、これらデータは順次送信部22から送信される(ステップS103)。9軸センサ100からのデータ出力が終了するまで、送信は継続される(ステップS104)。なお、データ出力の順番は任意である。
【0054】
一方、スイング軌道計測システム300A側では、受信部301Aで送信データを受信し(ステップS110)、積分部302は加速度データαx、αy、αzを積分し(ステップS111)、更に積分部302は速度データSPx、SPy、SPzを積分し、得られた位置データPSx、PSy、PSzを取り込む(ステップS112)。また、角速度データωx、ωy、ωzは積分部304に入力され、得られた角度データθx、θy、θzが取り込まれる(ステップS113)。取り込まれた位置データPSx、PSy、PS、角度データθx、θy、θz及び方位データDRx、DRy、DRzはメモリ311に記憶され(ステップS114)、前述と同様にバックスイングの判定がなされ(ステップS120)、バックスイングのスタート位置が決定される(ステップS121)。
【0055】
その後、トップ位置の判定を行い(ステップS122)、ダウンスイングが開始されてからインパクト検知部323でインパクト位置が検知される(ステップS123)。そして、判定の区間を設定し(ステップS1124)、バックスイングとダウンスイングの軌跡の比較を行い(ステップS130)、所定の許容範囲内に入っているか否かを判定し(ステップS131)、評価結果を出力部330から出力し(ステップS132)、区間の終了まで継続する(ステップS133)。評価結果は出力部330を介して、送信部331から端末装置360に送信される。端末装置360での評価結果の表示は、文字や色で実施することができる。
【0056】
なお、ここでは図18(C)のスイング評価システムの構成及び動作について説明したが、図18(A)及び(B)のスイング評価システムにおいても、軌道計測システム300は送受信部を備える必要があり、その構成及び動作において大きな差異はなく、軌道計測システム300Aとほぼ同様である。
【0057】
上述のメモリはFIFO(First-In
First-Out)形式として説明しているが、FILO(First-In Last-Out)形式のメモリを使用することができ、この場合には最後に記憶されたデータから出力されるので、反転部は不要となる。また、上述ではスイングの軌道について説明したが、9軸センサの出力を処理、解析して、スイングの速さやインパクトの強さ等のチェックや指導を行う場合にも適用できる。
【0058】
更に、上述ではウッドクラブについて説明したが、アイアンやユーティリティなどのゴルフクラブにも適用可能である。また、ゴルフクラブのシャフトの硬さ、ヘッド部の重量の違い、ヘッドスピードなどによって、バックスイングとダウンスイングではシャフトの撓りが相違するので、これらを考慮した補正を行って判定評価することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ゴルフクラブ
2 シャフトプレーン(スイングプレーン)
3 ゴルフボール
10,10A、10B、10C ゴルフクラブ
11 スイッチ
12 グリップ
13 シャフト
14 ヘッド部
14A、14B 蓋材
20 ランプ表示部
21 スピーカ
22 送信部
30 バッテリ
31 USB端子
100 9軸センサ
110 加速度センサ(xyz)
120 角速度センサ(xyz)
130 方位(地磁気)センサ(xyz)
200、300、300A スイング軌道計測システム
201 CPU(MPU,MCU)
202~204 積分部
210 メモリ
211 反転部
220 バックスイング確定判定部
230 比較部
240 スイング判定部
250 トップ検知部
260 インパクト検知部
350 ネットワーク
360 端末装置
【要約】
【課題】比較的簡易な構成で、シャフトプレーンを平面に維持しながらスイングできる指標を与えることが可能なゴルフクラブ及びそれを用いたスイング評価システムを提供する。
【解決手段】グリップ、シャフト及びヘッド部を有するゴルフクラブであり、加速度センサ、角速度センサ及び方位センサで成る9軸センサと、9軸センサの出力データを処理してスイングの軌道を計測して評価するスイング軌道計測システムと、スイング軌道計測システムでの評価結果を光若しくは音で出力する出力部とがヘッド部に内蔵されている9軸センサ内蔵型ゴルフクラブ及びそれを用いたスイング評価システムである。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20