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特許7058446卵における雌胚の産生を促進するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】卵における雌胚の産生を促進するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 41/00 20060101AFI20220415BHJP
   A61D 19/00 20060101ALI20220415BHJP
   A01K 41/02 20060101ALI20220415BHJP
   A01K 41/04 20060101ALI20220415BHJP
   A01K 67/02 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A01K41/00
A61D19/00 ZAB
A01K41/02
A01K41/04
A01K67/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019555951
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 IL2018050419
(87)【国際公開番号】W WO2018189745
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】62/485,025
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519363111
【氏名又は名称】エヌ.アール ソオス テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】N.R SOOS TECHNOLOGY LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 581 2018500 Kaukab Abu al‐Hija, ISRAEL
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 千秋
(74)【代理人】
【識別番号】100206117
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 光章
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(72)【発明者】
【氏名】ハジャ ナシャト、 モハメド
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507219(JP,A)
【文献】国際公開第94/013132(WO,A1)
【文献】特表平08-506721(JP,A)
【文献】米国特許第03382846(US,A)
【文献】The influence of ultrasound on chicken hatching,VETERANY, L. et al,Vol. 53, No. 3,2002年,pp. 167-171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 41/00 - 41/06
A61D 19/00 - 19/04
A01K 67/00 - 67/02
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵における雌胚の産生を促進するための方法であって、
受精卵の孵化を促進するために複数の受精卵を孵卵するステップと、
受精卵に所定の周波数の音波を送信することにより、受精卵における雌胚の産生を促進するステップとを含み、
前記所定の周波数が約100Hzから2000Hzの範囲である、方法。
【請求項2】
前記受精卵がニワトリ卵であり、得られた雌の孵化率が75%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記孵卵を約21日間行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記音波は、孵卵中に送信されるか、または断続的に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記音波は、孵卵の最初の14日間に送信されるか、または断続的に送信され、または、
前記音波は、前記孵卵期間内の1つまたは複数の所定の期間中に送信されるか、または断続的に送信され、または、
前記音波の送信は、培養日によって変化し、または、
前記音波を送信するステップは、規定された孵卵日に音波を断続的に送信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記音波の所定の周波数は、前記1つまたは複数の所定の期間の間で変化する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の周波数は、約100Hz~1200Hzの範囲である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1の所定の期間中の周波数が600Hz~700Hzの範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
第2の所定の期間中の周波数は、500Hz~600Hzの範囲であり、
好ましくは、第3の所定の期間中の周波数は、500Hz~700Hzの範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
所定の期間の長さが10分~5時間の範囲であり、
2つの連続する所定の期間の間の休止が1時間~5日の範囲である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記孵卵が、湿度および温度から選択される少なくとも1つの制御された環境条件下で行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
湿度が50%~80%の範囲であり、
好ましくは、湿度が約55%である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
温度が36℃~38℃の範囲である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
受精卵の孵化を促進するため、所定の環境条件下で受精卵を孵卵する孵化器と、
受精卵における雌胚の産生を促進するために、孵卵中に約100Hz~2000Hzの範囲の可変周波数を送信するように構成された音波送信機と、
送信機を動作させるように構成されたコントローラと、を備えるシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、孵卵中に温度および/または湿度を制御するようにさらに構成される、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、卵生動物の雌胚の産生を促進することに関する。
【背景技術】
【0002】
家禽市場などの動物生産市場では、動物の性別を制御または影響する能力が、生産および生産効率を高めることができる。
【0003】
例えば、産卵操作においては、雌鶏または雌のみが所望される。したがって、多くの鳥が生まれると、雌の鳥のみが保持され、しばしば雄の鳥は安楽死させられるか、さもなければ処分される。雄と雌は約50/50の性比で生まれるので、生まれたすべての鳥の約半分はこのような措置で失われる。これは、非効率的であり、または、生産量の減少をもたらす。
【0004】
したがって、当技術分野では、より多くの雄鳥または雌鳥を選択的に生産するために、孵化前の鳥の性別を制御し、促進し、あるいは影響を及ぼし、生産性を向上させて無駄とコストをカットする必要性がある。
【0005】
関連技術の前述の例およびそれに関連する限定は例示を意図したものであり、排他的なものではない。関連技術の他の限定は、本明細書を読み、図面を検討することにより、当業者には明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0006】
以下の実施形態およびその態様は例示的かつ例示的であり、範囲を限定するものではないことを意図するシステム、ツール、および方法に関して、説明および図示される。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、複数の受精卵を孵卵(incubate)して受精卵の孵化を促進するステップと、受精卵に音波を送信し、それによって受精卵における雌胚の産生を促進するステップとを含む、卵における雌胚の産生を促進するための方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において、送信は、孵卵の間に行われる。
【0009】
いくつかの実施形態では、孵卵期間は、卵、好ましくは受精卵の産卵時に始まり、その孵化時に終わる期間として定義される。孵卵は、典型的には約21日間である。
【0010】
いくつかの実施形態では、音波が約100Hz~1200Hzの範囲の周波数を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、受精卵はニワトリ卵である。
【0012】
いくつかの実施形態では、孵卵工程が約21日間行われる。いくつかの実施形態では、孵卵が湿度および温度から選択される少なくとも1つの所定の環境条件下で行われる。いくつかの実施形態では、湿度は70%~80%の範囲である。いくつかの実施形態では、温度が36~38℃の範囲である。
【0013】
いくつかの実施形態では、音波が1つまたは複数の所定の期間中に送信される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の所定の期間のそれぞれは7~10日の範囲である。いくつかの実施形態では、音波の周波数が1つまたは複数の所定の期間の間で変化する。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の所定の期間中の波周波数が700Hz~800Hzの範囲である。いくつかの実施形態では、第2の所定の期間中の波周波数が500Hz~600Hzの範囲である。いくつかの実施形態では、第3の所定の期間中の波周波数が700Hz~800Hzの範囲である。
【0015】
いくつかの実施形態では、音波を送信することは孵卵の最初の週に約700Hz~800Hzの範囲の周波数を送信することと、孵卵の2週目に約500Hz~600Hzの範囲の周波数を送信することと、孵卵の3週目に約700Hz~800Hzの範囲の周波数を送信することとを含む。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、受精卵の孵化を促進するために所定の環境条件下で受精卵を孵卵するための孵化器と、受精卵における雌胚の産生を促進するために孵卵中に約100Hz~2000Hzの範囲の可変周波数を送信するように構成された音波送信機と、送信機を動作させるように構成されたコントローラとを備えるシステムが提供される。いくつかの実施形態によれば、コントローラは、孵卵中に温度および/または湿度を制御するようにさらに構成される。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、卵における雌胚の産生を促進するための方法が提供され、この方法は複数の受精卵を孵卵して、受精卵の孵化を促進するステップと、規定された周波数の音波を受精卵に送信し、それによって、受精卵における雌胚の産生を促進するステップとを含む。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、受精卵はニワトリ卵である。いくつかの実施形態によれば、孵卵は、約21日間行われる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、「雌胚の産生」という用語は、雌のヒナの孵化を指す。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される方法および/またはシステムを適用する雌の孵化の割合は、70%を超え、例えば75%を超え、75%~95%の間、80%を超え、85%を超え、90%を超え、または95%を超える。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、音波は、孵卵中に送信されるか、または断続的に送信される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、音波は、孵卵の最初の14日間に送信されるか、または断続的に送信される。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、音波は、孵卵期間内の1つまたは複数の所定の期間中に送信されるか、または断続的に送信される。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、音波の所定の周波数は、1つまたは複数の所定の期間の間で変化し得る。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、所定の周波数は予め選択されてもよく、例えば、伝送プロトコルに従って決定され、変更されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、所定の周波数は、期間中または期間にランダムに変更されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、音波の送信は、孵卵日に応じて変化する。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、音波を送信するステップは、所定の孵卵日に音波を断続的に送信することを含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、所定の周波数は約100Hz~1200Hz、例えば、500Hz~600Hz、550Hz~650Hz、600Hz~700Hz、600Hz~800Hzの範囲である。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、決定された周波数を有する音波は、孵卵期間内の別個の(任意選択的に、所定の)期間中に送信される。いくつかの実施形態によれば、第1の所定の期間中の周波数は、600Hz~700Hzの範囲である。いくつかの実施形態によれば、第2の所定の期間中の周波数は、500Hz~600Hzの範囲である。いくつかの実施形態によれば、第3の所定の期間中の周波数は、500Hz~700Hzの範囲である。いくつかの実施形態によれば、所定の期間の長さは10分~5時間、例えば、約10分~60分、30分~60分、30分~120分、45分~90分、1時間~2時間、2~3時間、または3~5時間の範囲である。いくつかの実施形態によれば、2つの連続する期間の間の休止は、1時間~5日、例えば、1~4時間、2~6時間、3~8時間、6~12時間、1~2日、2~5日の範囲である。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、孵卵は、湿度および温度から選択される少なくとも1つの制御された環境条件下で行われる。いくつかの実施形態によれば、湿度は50%~80%の範囲である。いくつかの実施形態によれば、湿度は約55%である。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、温度は36℃~38℃、例えば、約37℃の範囲である。いくつかの実施形態によれば、温度は、孵卵中に制御可能に変化させることができる。
【0033】
本発明およびその実施形態のさらなる詳細および特徴は、説明および添付の図面に見出すことができる。
【0034】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。ここに記載のものと類似又は同等の方法及び材料は本発明の実施又は試験に使用できるが、適切な方法及び材料は下記に記載されている。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例はあくまで例示であり、限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
例示的な実施形態は、参照された図に示されている。図面に示される構成要素および特徴の寸法は一般に、提示の便宜および明確さのために選択され、必ずしも一定の縮尺で示されていない。本明細書に開示される実施形態および図面は、限定的ではなく例示的であると考えられるべきであることが意図される。図面を以下に列挙する。
【0036】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態による、卵内の雌胚の産生を促進するためのシステムを概略的に示す。
図2図2は、本発明の例示的な実施形態による、卵内の雌胚の産生を促進するためのシステムを概略的に示す。
図3図3はいくつかの実施形態による、卵内の雌胚の産生を促進するための方法のステップのフローチャートである。
図4図4は、いくつかの実施形態による、卵内の雌胚の産生を促進するための別の方法のステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
孵卵された受精卵に音波を適用することによって、受精卵における雌胚の発生を促進するためのシステムおよび方法が本明細書に開示される。
【0038】
以下の説明を通して、装置の異なる実施形態の同様の要素は、100の整数倍だけ異なる要素番号によって参照される。例えば、図1の孵化器(インキュベータ)は番号102で参照され、図1の孵化器102に対応する図2の孵化器は番号202で参照される。
【0039】
ここで図1を参照すると、図1は、一実施形態による、受精卵における雌胚の発生を促進するために使用され得るシステム100を示すブロック図である。システム100は、受精卵(図示せず)を収容するための内部空間104を有する孵化器102と、音波を送信するための送信機106とを含む。送信機106は音波が孵化器102に向けられるように、孵化器102の内部空間104の内側に、または孵化器102の外側に(図1に示されるように)配置されてもよい。孵化器102は受精卵を保持するために、内部空間104内に配置された、108a~108dとして例示される1つまたは複数のセル108(例えば、トレイ)をさらに含むことができる。非限定的な例では、卵はトレイによって保持され、各トレイは複数のスロットを含み、各スロットは1つの卵を安定して保持するように構成される。制御ユニット110は、システム100および/またはその構成要素のいずれかの動作を制御するように、例えば、温度および湿度などの環境条件を調整するように構成されてもよい。任意選択的に、内部空間104は、外部環境から絶縁される。内部空間104内の適切な温度は、摂氏36~38度(℃)の範囲とすることができる。内部空間104内の適切な湿度パーセンテージは、70%~80%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、湿度パーセンテージが50%~85%、55%~85%、60%~85%、65%~85%、70%~85%、70%~85%、75%~85%、50%~80%、55%~80%、65%~80%、70%~75%、55%~75%、50%~70%、55%~70%、60%~70%、65%~70%、50%~65%、50%~60%、または55%~60%の範囲である。各可能性は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0040】
送信機106は、内部空間104内の1つ以上のセル108に収容された卵に、連続的および/または時間的に変化するように、変化する所定の周波数の音波を送信するように操作され得る。送信機106は、内部空間104に動作可能に結合されている。制御ユニット110は例えば、音波の周波数および/または音波の送信の持続時間を制御するために、送信機106の動作を制御するように構成されてもよい。制御ユニット110は、連続的、周期的、または時間的に変化する持続時間で送信機106を動作させることができる。送信機106はまた、制御ユニット110から分離された、上述の動作を制御するための別個の制御ユニットを有してもよく、あるいは、制御ユニット110内に統合されてもよい。
【0041】
送信機106は、反復サイクルで送信することができる。任意選択的に、サイクルの各々は、1時間~2週間の持続時間を有する。任意選択的に、持続時間は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日である。各可能性は、本発明の別個の実施形態に相当する。任意選択的に、各サイクルにおける波周波数は一定である。あるいは、各サイクルにおける波の周波数は変化してもよい。
【0042】
制御ユニット110は、システム100の各構成要素(例えば、送信機106、ヒータ/クーラ/サーモスタット114、加湿器116など)を作動/停止させることができ、システム100の構成要素のいずれか1つの動作をさらに調節して、所定の温度、湿度などに到達させることができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット110が音のレベル、音の周波数、温度、湿度などを含む現在の環境条件に関する情報を受信するために、内部空間104内に配置されたセンサ(図示せず)を含むか、またはセンサ(図示せず)に電気的に結合される。いくつかの実施形態では、制御ユニット110が所定のスケジュールに従ってシステム100の構成要素のいずれか1つを制御するように動作可能である。任意選択で、制御ユニット110は孵化器102の内部空間104内の温度レベルを制御するために、ヒータおよび/またはクーラ114を動作させることができる。任意選択で、制御ユニット110は孵化器102の内部空間104内の水分レベルを制御するために、加湿器および/または除湿器116を動作させることができる。
【0043】
任意選択で、システム100は、1つまたは複数の卵の孵卵中に1つまたは複数のセル108を連続的または周期的に移動させるためのアクチュエータ(図示せず)をさらに備える。非限定的な例では、アクチュエータが水平位置と傾斜位置(図示せず)との間で1つまたは複数のセル108を回転または傾斜させるように動作可能である。
【0044】
任意選択的に、システム100は、孵化器102の内部空間104内で光を放出する光源(図示せず)をさらに備える。制御ユニット110は、光源によって放出される光の波長を制御するようにさらに動作することができる。
【0045】
ここで、いくつかの実施形態による、受精卵における雌胚の発生を促進するために使用され得るシステム200を示すブロック図である図2を参照する。システム200は、図1に記載されたシステム100と実質的に同様であるが、幾つかの違いがある。注目すべき相違点は、孵化器202の内部空間204が周囲の断熱層205によって外部環境から断熱されていることである。適切な断熱材料の非限定的な例としては、スチールウール、ガラス繊維、ミネラルウール、セルロース、ポリウレタンフォーム、ポリスチレン、または任意の他の断熱材料が挙げられる。さらに、加熱器および/または冷却器(サーモスタット)214、加湿器216、および送信機206などのシステム200のいくつかの構成要素は、孵化器202の内部空間204内に配置され得る。内部空間204は、内部空間204内に含まれる空気を濾過するためのエアフィルタ218をさらに含むことができる。任意の市販のエアフィルタが適切であり得る。任意選択で、空気フィルタ218は空気をイオン化し、濾過するイオン空気フィルタ(「イオナイザ」)である。加湿器216は内部空間204内に配置された水源216a(例えば、水タンク)を含むことができる。加湿器216は、水源216aから内部空間204内に含まれる濾過された空気に水分を加えて、内部空間204内に含まれる加湿され濾過された空気を生成することができる。適切な加湿器の非限定的な例には、超音波加湿器、蒸発加湿器、蒸発器、およびインペラ加湿器が含まれる。任意選択で、制御ユニット210は内部空間204内に配置された1つまたは複数のセンサ(たとえば、センサ207、217)からデータを受信するように構成され得る。受信された情報は現在の環境条件(例えば、温度、湿度、音のレベル、音の周波数、および大気汚染)を示す。湿度センサ217a(または複数の湿度センサ217a)を内部空間204内に配置し、現在の湿度レベルに関する情報を制御ユニット210に送信することができる。温度センサ217b(または複数の温度センサ217b)を内部空間204内に配置し、現在の温度に関する情報を制御ユニット210に送信することができる。受信機207は、内部空間204内に配置され、音のレベルおよび/または音の周波数に関する情報を制御ユニット210に送信することができる。制御ユニット210は、システム200の構成要素のいずれかから受け取った情報から計算された、1つまたは複数の制御信号を提供することができる。
【0046】
ここで図3を参照すると、図3は例えば、図1のシステムに従って作動する、卵内の雌性卵子胚(例えば、鳥類)の産生を促進するための方法のフローチャートである。
【0047】
受精卵(図示せず)は例えば、孵化器102の内部空間104内などの孵化器内に配置することができる(ステップ320)。任意選択で、受精卵は内部空間104内に配置された1つまたは複数のセル108(例えば、トレイ)内に保持される。内部空間104内に配置する前に、受精卵を、4℃~24℃の範囲の温度で1~21日間(例えば、冷蔵庫または貯蔵室内)保管してもよい。
【0048】
所定の環境条件下で受精卵の孵卵を開始する(ステップ322)。任意選択で、所定の環境条件は、湿度および/または温度を含む。任意選択的に、湿度は70%~80%の範囲である。任意選択で、温度範囲は36℃から38℃の間である。任意選択で、温度範囲は36.5℃から37.8℃の間である。任意選択的に、温度は、孵卵中に変化してもよい。任意選択的に、温度は孵卵中に上昇する。非限定的な例では孵卵の第1の期間中の温度(例えば、15~19日間の範囲)は36℃~37.5℃の範囲であり、孵卵の最後の期間中の温度(例えば、1~5日間の範囲)は37℃~38℃の範囲である。別の非限定的な例では、受精鶏卵の孵卵中、湿度は70%~80%の範囲であり、温度は36.5℃~37.5℃の範囲であり、孵卵の最後の3~5日間、温度は上昇し、37℃~37.8℃の範囲である。
【0049】
任意選択で、所定の環境条件は、1つまたは複数のセル108の移動/作動をさらに含む。環境条件は、所定の複数日スケジュールに従って適用されてもよく、その結果、異なる環境条件が異なる日に、および/または各日の間の異なる時間に適用されてもよい。当業者であれば、環境条件は一般に、受精卵の孵化を促進するように選択されることを理解するであろう。受精卵は、所定の孵卵期間にわたって孵卵され得る。所定の孵卵期間は、21~24日、21~23日、21~22日、20~24日、20~23日、20~22日、20~21日、19~24日、19~23日、19~22日、または19~21日の範囲であり得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態に相当する。任意選択的に、所定の孵卵期間は約21日である。
【0050】
所定の音波が受精卵に送信される(ステップ324)。音波の周波数および持続時間は、受精卵における雌胚の産生を促進するように選択される。いくつかの実施形態では、複数の周波数の音波が送信されてもよい。当業者であれば、送信される音波の周波数および持続時間は例えば、ターゲットとなる卵生動物、または環境条件(例えば、孵卵期間、温度、湿度など)に従って選択されてもよいことを理解するのであろう。送信される音波は例えば、1Hz~200MHzの範囲の周波数を有することができる。任意選択的に、送信される音波は、20Hz~20kHzの範囲の周波数を有する。周波数は、任意に100Hz~1200Hz、任意に200Hz~1000Hz、任意に400Hz~900Hz、任意に200Hz~800Hzの範囲である。いくつかの実施形態では、音は超音波である。そのような実施形態では、周波数は20kHzを超える。いくつかの実施形態では、音は超低音である。このような実施形態では、周波数は20Hz未満である。音波は多日スケジュールに従って送信されてもよく、その結果、多日スケジュールにわたって適用される環境条件に従って、各期間中に異なる期間にわたって、および/または異なる時間に、異なる音波周波数が適用されてもよい。音波は、1つ以上の所定の期間中に送信されてもよい。任意選択で、1つまたは複数の所定の期間のそれぞれは、7~10日の範囲である。ステップ322および324は、同時に実行されてもよい。追加的に又は代替的に、ステップ322及び324の各々は、交換可能な順序で開始されてもよい。
【0051】
1つの非限定的な例では、受精卵への所定の音波の送信が孵卵の開始時に開始され、孵卵期間の少なくとも一部の間継続する。別の非限定的な例では、受精卵への所定の音波の送信が孵卵の開始前に開始され、孵卵期間の少なくとも一部の間継続する。
【0052】
別の非限定的な例では3週間の孵卵期間について、送信機は孵卵の最初の週について600~800Hzの範囲の音波周波数、孵卵の2週目について400~600Hzの範囲の音波周波数、および孵卵の3週目について600~800Hzの範囲の音波周波数を送信するように操作される。
【0053】
必要に応じて、受精卵またはそこからの孵化卵は、孵卵期間の終了時に孵化器102の内部空間104から除去される(ステップ326)。
【0054】
ここで図4を参照すると、図4は例えば、図1のシステムに従って作動する、卵内の雌性卵子(例えば、鳥類)胚の産生を促進するための別の方法のフローチャートである。図4の方法は、図3の方法と実質的に同様である。しかしながら、図3のステップ324に対応する、図4のステップ424a~424cにおける音波の送信周波数は、少なくとも3つの連続する周期の間、各周期によって変化する。任意選択的に、ステップ424a~424cにおける音波の送信周波数は、3週間連続して毎週変化する。約700Hz~800Hzの範囲の周波数を有する音波が、孵卵の第1の期間(例えば、第1の週)の間に受精卵に送信される(ステップ424a)。約500Hz~600Hzの範囲の周波数を有する音波が、孵卵の第2の期間(例えば、第2の週)の間に受精卵に送信される(ステップ424b)。約700Hz~800Hzの範囲の周波数を有する音波が、孵卵の第3の期間(例えば、第3週)の間に受精卵に送信される(ステップ424c)。任意選択で、ステップ424a、424b、および424cは、異なる順序で実行される。任意選択で、ステップ424a、424b、および424cのそれぞれを約1週間実行することができる。任意選択で、ステップ424a、424b、および424cのそれぞれを7~10日間実行することができる。
【0055】
(実施例)
(実施例1)
上記の方法およびシステムを、受精卵内での雌胚の産生を促進するために実験的に試験した。具体的には、雌胚の生産を促進するために、孵卵システムにおいて、および本明細書に開示される条件下での受精卵の孵卵から生じる雌の孵化産物のパーセンテージを、標準的な孵化条件下での標準的な孵卵システムにおける受精卵の孵卵から生じる雌の孵化産物のパーセンテージと比較した。実験試験は、チャンキー(ロス)種(Ross flock)とローマン種(Lohmann flock)の2種類のニワトリの受精卵を用いて行った。各品種について、200個の受精鶏卵を2つの群:試験群および対照群に分けた。試験群の受精鶏卵(「試験群卵」)および対照群の受精鶏卵(「対照群卵」)を同時に21日間孵卵した。
【0056】
試験群卵は、送信機106を含む孵卵システム100のような音波を送信するための送信機を含む孵卵システム内で孵卵した。孵卵期間中、湿度範囲は70%~80%であり、孵卵温度は約37℃であった。送信機は、孵卵期間中に音波を送信するように操作された。波周波数は毎週変更され、第1週には700~800Hzの範囲の周波数が送信され、第2週には500~600Hzの範囲の周波数が送信され、第3週には700~800Hzの範囲の周波数が送信された。
【0057】
対照群卵を標準的な孵化器中で孵卵した。試験群の卵の孵卵期間中、湿度範囲は70%~80%であり、孵卵温度は約37℃であった。
【0058】
試験群および対照群からの卵の孵化後、孵化の性別を判定した。表1に示されるように、両方の品種の試験群の卵は、より高い割合の雌の孵化をもたらした。これらの結果は、本明細書中に記載される方法およびシステムが受精卵における雌胚の産生を促進するために利用され得ることを示す。
【表1】
【0059】
(実施例2)
産卵中のニワトリ(ローマン種)の3000個の受精卵を試験する産業用の孵化器において、さらなる実験を行う。約3000個の受精卵の試験群を、標準条件下において、工業用孵化器中で孵卵する。3000個の受精卵の試験群を、本明細書中上記に記載されるシステム100のような方法およびシステムを利用して、工業用孵化器中で孵卵する。この目的のために、送信機106のような送信機の動作に対する制御が、工業用孵化器のコンピュータシステムに統合される。
【0060】
21日間の孵卵期間の後、対照群および試験群の両方において、孵化率および雌の孵化率を判定する。次に、試験群の雌鶏の健康および産卵能力を、標準的な孵卵から得られた雌鶏の健康および産卵能力と比較する。この目的のために、試験群の受精卵から孵化した若い雌鶏(初年鶏)を、標準的な家禽ハウスに入れ、性成熟に達して雌鶏になるまで110日間、標準的な条件下に保つ。次に、鶏を産卵鶏舎に移す。試験群の初年鶏および雌鶏の死亡率をモニターし、同じ家禽ハウス(約60,000)で同時に成長させた対照初年鶏および雌鶏の死亡率と比較する。さらに、試験群の雌鶏の1羽あたりの平均卵収量および産卵期間を、対照群の雌鶏と比較する。
【0061】
いくつかの例示的な態様および実施形態を上記で論じてきたが、当業者にはそれらの特定の変形形態、置換形態、追加形態、および部分結合形態が理解されよう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲および以下に導入される特許請求の範囲は、その真の精神および範囲内にあるようなすべてのそのような修正、置換、追加、およびサブコンビネーションを含むと解釈されることが意図される。
【0062】
本出願の説明および特許請求の範囲において、「備える」、「含む」および「有する」という単語のそれぞれ、およびそれらの形態は、必ずしも、単語が関連付けられ得るリスト内のメンバに限定されない。
【0063】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本発明の任意の他の説明された実施形態で適切なものとして提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は実施形態がそれらの要素なしで動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して本明細書で説明される。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図のブロックの組合せは、コンピュータ可読プログラム命令によって実装できることを理解されたい。
【0064】
図中のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態による、システム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能、および動作を示す。この点に関して、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能命令を備える、モジュール、セグメント、または命令の一部を表すことができる。いくつかの代替的な実施形態では、ブロックに記載された機能が図に記載された順序とは異なる順序で行われてもよい。例えば、連続して示される2つのブロックは実際には実質的に同時に実行されてもよく、またはブロックが含まれる機能に応じて、時には逆の順序で実行されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図および/またはフローチャート図のブロックの組み合わせは、指定された機能を実行するか、または特殊目的ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを実行する特殊目的ハードウェアベースのシステムによって実装され得ることにも留意されたい。
【0065】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には明らかであろうことは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内にある、そのような代替、修正、および変形のすべてを包含することが意図される。本明細書において言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または同定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4