(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】mRNAによってコードされる抗体を送達するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20220415BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220415BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220415BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20220415BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20220415BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20220415BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220415BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20220415BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220415BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K9/127
A61K31/7105
A61K31/7115
A61K31/712
A61K31/7125
A61P37/04
A61K39/395 M
C12N15/13 ZNA
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018089393
(22)【出願日】2018-05-07
(62)【分割の表示】P 2016502526の分割
【原出願日】2014-03-14
【審査請求日】2018-05-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-18
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507159304
【氏名又は名称】シャイアー ヒューマン ジェネティック セラピーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ハートレイン
(72)【発明者】
【氏名】フランク デローサ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイドン チャールズ ギルド
(72)【発明者】
【氏名】アヌシャ ディアス
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】大久保 元浩
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/083949(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/045082(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/170930(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/068810(WO,A1)
【文献】JOURNAL OF CONTROLLED RELEASE,(2011.3.1),150(3),P.238-247
【文献】MOLECULAR PHARMACEUTICS,(2011.6.6),8(3),P.774-787
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の重鎖をコードする第1のmRNAと前記抗体の軽鎖をコードする第2のmRNAとを含む、前記抗体の送達を必要とする対象の治療における使用のための組成物であって、
前記第1のmRNAポリヌクレオチドと前記第2のmRNAポリヌクレオチドとが別々であり、
前記組成物が前記対象に
静脈内投与または皮下投与され、前記抗体が前記対象内に全身的に発現されることを特徴とする、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の使用のための組成物であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAの1つまたは両方が1つまたは複数のリポソームに被包さ
れる、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の使用のための組成物であって、前記1つまたは複数のリポソームが、カチオン性脂質、中性脂質、コレステロール系脂質、及びPEG修飾された脂質の1つまたは複数を含み、かつ/または、前記1つまたは複数のリポソームが、約150nm、100nm、または75nm以下の大きさを有する、組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物であって、前記第1のmRNA及び前記第2のmRNAの1つまたは両方が、(i)安定性を高めるように修飾され
ているか、または(ii)無修飾である、組成物。
【請求項5】
前記抗体の前記全身的発現が、投与後少なくとも約6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、または120時間で検出可能である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記抗体が無傷免疫グロブリン、(Fab)
2、(Fab’)
2、Fab、Fab’、またはscFvで
ある、請求項1~
5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の使用のための組成物であって、前記抗体が抗CCL2、抗リシルオキシダーゼ様-2(LOXL2)、抗Flt-1、抗TNF-α、抗インターロイキン-2Rα受容体(CD25)、抗TGF
β、抗B-細胞活性化因子、抗アルファ-4インテグリン、抗BAGE、抗β-カテニン/m、抗Bcr-abl、抗C5、抗CA125、抗CAMEL、抗CAP-1、抗CASP-8、抗CD4、抗CD19、抗CD20、抗CD22、抗CD25、抗CDC27/m、抗CD30、抗CD33、抗CD52、抗CD56、抗CD80、抗CDK4/m、抗CEA、抗CT、抗CTL4、抗Cyp-B、抗DAM、抗EGFR、抗ErbB3、抗ELF2M、抗EMMPRIN、抗EpCam、抗ETV6-AML1、抗HER2、抗G250、抗GAGE、抗GnT-V、抗Gp100、抗HAGE、抗HER-2/neu、抗HLA-A
*0201-R170I、抗IGF-1R、抗IL-2R、抗IL-5、抗MC1R、抗ミオシン/m、抗MUC1、抗MUM-1、-2、-3、抗プロテイナーゼ-3、抗p190マイナーbcr-abl、抗Pml/RARα、抗PRAMS、抗PSA、抗PSM、抗PSMA、抗RAGE、抗RANKL、抗RU1またはRU2、抗SAGE、抗SART-1または抗SART-3、抗サバイビン、抗TEL/AML1、抗TPI/m、抗TRP-1、抗TRP-2、抗TRP-2/INT2、抗VEGF、及び抗VEGF受容体からなる群より選択される、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2013年3月14日出願の米国仮特許出願第61/784,903号及び2013年12月23日出願の米国仮特許出願第61/920,165号の優先権を主張し、それらの内容は全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
抗体は、強力な治療効果を有することが知られており、がん、自己免疫疾患、循環器疾患、及び移植拒絶反応等、一連の疾患の治療に現在用いられている。伝統的に、治療用抗体は組換え技術によって産生され、製剤化され、それから抗体治療の必要な患者に投与される。しかしながら、抗体産生と製剤化は費用が高くつく。加えて、多くの抗体は生体内で非常に短い半減期しか有さず、したがって、その標的抗原または標的組織に到達したときには分解されていることがある。所望の有効性を達成するには、抗体治療はしばしば高用量と高頻度投与を必要とする。
遺伝子治療及びDNAワクチン接種とも言われる遺伝子ワクチン接種は、生体内で大量の抗体を送達するための代替的方法を提供する。しかしながら、遺伝子治療における薬剤としてのDNAの使用及び遺伝的ワクチン接種は、安全上の懸念事項をいくつか生じさせることがある。例えば、DNAは血流でゆっくりと分解される。抗DNA抗体の形成が起こることがある(Gilkeson et al.,J.Clin.Invest.1995,95:1398-1402)。生体において(外来性)DNAが残存する可能性があり、そうして、免疫系の活性化過剰につながる可能性があり、これはマウスに脾腫を生じさせることが知られていた(Montheith et al.,Anticancer Drug Res.1997,12(5):421-432)。さらに、DNAの組込みは、無傷遺伝子に妨害を行うことによって宿主ゲノムに突然変異を生じさせる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Gilkeson et al.,J.Clin.Invest.1995,95:1398-1402
【文献】Montheith et al.,Anticancer Drug Res.1997,12(5):421-432
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、メッセンジャーRNA(mRNA)送達技術に基づいて、生体内で抗体をより安全により効果的に送達するより良い方法を提供する。本発明は、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする外来性mRNAを送達することにより、その重鎖及び軽鎖が別々のmRNAによって送達される場合でも、完全に構築された多連鎖抗体の産生が生体内で達成され得るという驚くべき発見に部分的に基づいている。実施例の項に後述する非限定的な例によって示すように、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA構築物をリポソームに被包してマウスに静脈内注射すると、mRNAにコードされた所望の抗体が注射後6時間以内にマウス血清中に相当量検出でき、72時間後または96時間後にピークを示す。抗体の全身的発現は、注射3週間後でも持続していた。このようにして、本発明者らは、多連鎖治療抗体がmRNAによって送達でき、患者の身体自体によって産生でき、それにより、費用の高い組換抗体製造工程が省略できるということを実証することに成功した。加えて、mRNAの一過性的で脆弱な性質とは反対に、mRNAから産生される抗体は驚くほど長もちし、全身への分布を効率的に達成することができる。mRNAの一過性的性質はまた、外来性核酸に通常伴う安全上の懸念を極力少なくすることができる。このようにして、本発明は、より安全で、より低費用で、より効果的な抗体送達方法を治療的使用に提供する。
【0005】
一態様では、本発明は、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つまたは複数のmRNAをその抗体を必要とする対象に投与することによる生体内抗体送達方法であって、抗体が対象において全身的に発現されるものである方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記1つまたは複数のmRNAは抗体の重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAを含む。いくつかの実施形態では、上記1つまたは複数のmRNAは抗体の重鎖と軽鎖の両方をコードする単一のmRNAを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、重鎖または軽鎖をコードするmRNAは、シグナルペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖または軽鎖をコードするmRNAは、ヒト成長ホルモン(hGH)シグナルペプチドをコードする配列(例えば、配列番号9または配列番号10)を含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチド配列をコードする配列(例えば、配列番号9または配列番号10)は、重鎖または軽鎖をコードするmRNA配列にN末端で直接的または間接的に結合する。
【0007】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、約10:1~1:10(例えば、約9:1~1:9、8:1~1:8、7:1~1:7、6:1~1:6、5:1~1:5、4:1~1:4、3:1~1:3、または2:1~1:2)の範囲の比で存在する。いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、約4:1~1:4の範囲の比で存在する。いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1の比で存在する。いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、約4:1の比で存在する。いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、約1:1の比で存在する。いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、1より大きい(例えば、約10:1~1:1、9:1~1:1、8:1~1:1、7:1~1:1、6:1~1:1、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、または2:1~1:1の範囲の)比で存在する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つまたは複数のmRNAは、ポリマー系及び/または脂質系送達賦形剤によって送達される。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つまたは複数のmRNAは、1つまたは複数のリポソーム内に被包される。いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、別々のリポソームに被包される。いくつかの実施形態では、重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAは、同じリポソームに被包される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、カチオン性脂質、中性脂質、コレステロール系脂質、及びPEG修飾脂質の1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、カチオン性脂質、中性脂質、コレステロール系脂質、及びPEG修飾脂質を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約250nm以下(例えば、約225nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、または50nm以下)の大きさを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約150nm以下の大きさを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約100nm以下の大きさを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約75nm以下の大きさを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約50nm以下の大きさを有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約250~10nmの範囲(例えば、約225~10nm、200~10nm、175~10nm、150~10nm、125~10nm、100~10nm、75~10nm、または50~10nmの範囲)の大きさを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約250~100nmの範囲(例えば、約225~100nm、200~100nm、175~100nm、150~100nmの範囲)の大きさを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリポソームは、約100~10nmの範囲(例えば、約90~10nm、80~10nm、70~10nm、60~10nm、または50~10nmの範囲)の大きさを有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のmRNAは安定性を向上させるよう修飾される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のmRNAは、修飾されたヌクレオチド、修飾された糖主鎖、キャップ構造、ポリA尾部、5’及び/または3’非翻訳領域を含むよう修飾される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のmRNAは無修飾である。
【0012】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のmRNAは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のmRNAは腹腔内投与される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のmRNAは皮下投与される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のmRNAは経肺投与によって投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体の全身的発現は、投与後(例えば、単回投与後)少なくとも約6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、96時間、120時間、144時間、156時間、168時間、または180時間で検出可能である。いくつかの実施形態では、抗体の全身的発現は、投与後(例えば、単回投与後)少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、20日、22日、25日、または30日で検出可能である。いくつかの実施形態では、抗体の全身的発現は、投与後(例えば、単回投与後)少なくとも約0.5週間、1週間、1.5週間、2週間、2.5週間、3週間、3.5週間、4週間、4.5週間、5週間、5.5週間、6週間、6.5週間、7週間、7.5週間、または8週間で検出可能である。いくつかの実施形態では、抗体の全身的発現は、投与後(例えば、単回投与後)少なくとも約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、または4ヶ月で検出可能である。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は無傷免疫グロブリン、(Fab)2、(Fab’)2、Fab、Fab’、またはscFvである。いくつかの実施形態では、抗体はIgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、抗CCL2、抗リシルオキシダーゼ様-2(LOXL2)、抗Flt-1、抗TNF-α、抗インターロイキン-2Rα受容体(CD25)、抗TGFβ、抗B細胞活性化因子、抗アルファ-4インテグリン、抗BAGE、抗β-カテニン/m、抗Bcr-abl、抗C5、抗CA125、抗CAMEL、抗CAP-1、抗CASP-8、抗CD4、抗CD19、抗CD20、抗CD22、抗CD25、抗CDC27/m、抗CD30、抗CD33、抗CD52、抗CD56、抗CD80、抗CDK4/m、抗CEA、抗CT、抗CTL4、抗Cyp-B、抗DAM、抗EGFR、抗ErbB3、抗ELF2M、抗EMMPRIN、抗EpCam、抗ETV6-AML1、抗HER2、抗G250、抗GAGE、抗GnT-V、抗Gp100、抗HAGE、抗HER-2/neu、抗HLA-A*0201-R170I、抗IGF-1R、抗IL-2R、抗IL-5、抗MC1R、抗ミオシン/m、抗MUC1、抗MUM-1、-2、-3、抗プロテイナーゼ-3、抗p190マイナーbcr-abl、抗Pml/RARα、抗PRAMS、抗PSA、抗PSM、抗PSMA、抗RAGE、抗RANKL、抗RU1またはRU2、抗SAGE、抗SART-1または抗SART-3、抗サバイビン、抗TEL/AML1、抗TPI/m、抗TRP-1、抗TRP-2、抗TRP-2/INT2、及び抗VEGFまたは抗VEGF受容体からなる群より選択される。
【0015】
他の態様では、本発明は、抗体の重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAを細胞に投与することによる抗体産生方法であって、抗体は細胞によって産生されるものである方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は培養細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は生体内細胞である。いくつかの実施形態では、抗体は細胞内で発現される。いくつかの実施形態では、抗体は細胞によって分泌される。
【0016】
なおも他の態様では、本発明は、抗体の重鎖をコードする第1のmRNA及び軽鎖をコードする第2のmRNAを含む組成物であって、第1のmRNA及び第2のmRNAは1つまたは複数のリポソームに被包されるものである組成物を提供する。
【0017】
とりわけ、本発明はまた、例えば、抗CCL2抗体及びそれを含有する組成物等、特定の抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAの例を提供する。所定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の配列番号1または配列番号2と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の配列を有する、抗CCL2抗体の重鎖をコードするmRNAを提供する。所定の特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の配列番号1または配列番号2の配列を有する、抗CCL2抗体の重鎖をコードするmRNAを提供する。所定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の配列番号3または配列番号4と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の配列を有する、抗CCL2抗体の軽鎖をコードするmRNAを提供する。所定の特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の配列番号3または配列番号4の配列を有する、抗CCL2抗体の軽鎖をコードするmRNAを提供する。
【0018】
本願で使用される場合、用語「約(about)」及び「約(approximately)」は同等語句として使用される。本願で約(about)/約(approximately)の付いた数字または付いていない数字は、当業者に理解されるどのような通常の変動をも包含するものとする。
【0019】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、この後に続く詳細な説明で明らかである。しかしながら、本詳細な説明は本発明の実施形態を示す一方で、制限するものとしてではなく例示するものとしてのみ与えられていることを理解されたい。本発明の範囲内での種々の変更及び修正が、本詳細な説明から当業者に明らかとなる。
【0020】
以下の図は例示を目的としているに過ぎず、制限をするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】提供される方法を用いてmRNAでHCL1細胞を処理した後に観察されたIgGタンパク質レベルをELISAで測定したものの例示的棒グラフを示す。
【
図2】提供される方法を用いてmRNAで細胞を処理した後に観察されたIgGタンパク質レベルをELISAで測定したものの例示的棒グラフを示す。
【
図3】提供される方法によるHCL1細胞へのmRNAの導入から生じるタンパク質レベルを24時間及び48時間後にウエスタンブロットで調べた結果を示す。
【
図4】提供される方法に従いmRNAを受けて6、24、48、または72時間後のマウスの血清中のCCL2抗体レベルをELISA法によって測定したものの例示的棒グラフを示す。
【
図5】α-VEGFのmRNAの単回投与後のマウス血清中α-VEGF抗体レベルをELISAによって測定したものの例示的棒グラフを示す。
【
図6】α-VEGFのmRNAの単回投与後のマウスを個別に識別してその血清中α-VEGF抗体レベルをELISAによって測定したものの例示的棒グラフを示す。
【
図7】α-VEGFのmRNAを充填したcKK-E12脂質ナノ粒子(LNP)を投与して24時間後の、野生型マウスにおける抗ヒトVEGF抗体の生体内産生の例示的棒グラフを示す。マウスには、尾部静脈注射または皮下(SC)注射のいずれかによって投与した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本発明がより容易に理解されるように、まず所定の用語を下に定義する。次の用語及び他の用語に対する追加的定義も本明細書全体を通じて明記する。
【0023】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」とは、その最も広い意味において使用され、ポリペプチド鎖の中に組み込むことができるいずれの化合物及び/または物質をも指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は天然のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり;いくつかの実施形態では、アミノ酸はd-アミノ酸であり;いくつかの実施形態では、アミノ酸はL-アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然ペプチドに共通に見られる20の標準L-アミノ酸のいずれをも指す。「非標準アミノ酸」とは、それが合成によって調製されるか天然源から得られるかに係わらず、標準アミノ酸以外のいずれのアミノ酸をも指す。本明細書で使用される場合、「合成アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(アミド等)、及び/または置換のなされた物を含み、但しそれに限定されない化学的に修飾されたアミノ酸を包含する。アミノ酸、例えば、ペプチドのカルボキシ末端及び/またはアミノ末端アミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基による修飾を受けることができ、かつ/または、他の化学基の活性に悪影響を与えることなくペプチドの循環半減期を変えることのできるそのような他の化学基との置換による修飾を受けることができる。アミノ酸はジスルフィド結合に関与してもよい。アミノ酸は、1つまたは複数の化学成分(例えば、メチル基、酢酸基、アセチル基、リン酸基、ホルミル成分、イソプレノイド基、スルフェート基、ポリエチレングリコール成分、脂質成分、炭水化物成分、ビオチン成分等)との結合等、ひとつまたは翻訳後の修飾を含んでいてもよい。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸、及び/またはペプチドのアミノ酸残基を指す場合がある。それが遊離アミノ酸を指すのかペプチドの残基を指すのかは、用語が使用される文脈から明らかである。
【0024】
動物:本明細書で使用される場合、用語「動物」とは動物界のいずれの動物をも指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、発達のいずれの段階かにあるヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、発達のいずれの段階かにある非ヒト動物を指す。所定の実施形態では、非ヒト動物は哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物としては、以下に限定されないが、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/または蠕虫類が挙げられる。いくつかの実施形態では、動物は、遺伝子導入動物、遺伝子操作動物、及び/またはクローンであってもよい。
【0025】
抗体:本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、無傷抗体及び抗体断片の両方を包含する。典型的には、無傷「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合する免疫グロブリンである。抗体は、いずれの免疫グロブリンクラスの中のひとつであってもよく、例えば、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDのいずれもが挙げられる。当技術分野で理解される典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50kD~約70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う、約100~110またはそれより多くのアミノ酸からなる可変領域を特徴づける。用語「可変軽鎖」(VL)及び「可変重鎖」(VH)とは、それぞれ、それらの軽鎖及び重鎖を指す。各可変領域はさらに、超可変(HV)領域及びフレームワーク(FR)領域に下位区分される。超可変領域は、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)と呼ばれる3つの超可変配列領域を含み、これは、4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR2、及びFR4)によって分けられ、フレームワーク領域は、βシート構造を形成し、HV領域を所定の位置に保持する足場材料として働く。各重鎖及び軽鎖のC末端は、軽鎖としての1つの領域(CL)と重鎖としての3つの領域(CH1、CH2、及びCH3)とからなる定常領域を特徴づける。いくつかの実施形態では、用語「無傷抗体」または「完全に構築された抗体」は、抗体を指して使用され、それは、天然に産生される抗体に起こるようにジスルフィド結合によってつながってもよい2つの重鎖と2つの軽鎖を含有することを意味する。いくつかの実施形態では、本発明による抗体は抗体断片である。本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域等、無傷抗体の一部を包含する。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;トリアボディ(triabodies);テトラボディ(tetrabodies);直鎖抗体;一本鎖抗体分子;及び、抗体断片から形成される多特異的抗体が挙げられる。例えば、抗体断片としては、単離された断片、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖及び重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって接続されている組換え一本鎖ポリペプチド分子(「ScFvタンパク質」)、並びに、アミノ酸残基からなり超可変領域に似た最少認識単位が挙げられる。多くの実施形態では、抗体断片は、その断片の親抗体の配列を充分に含有しているために、親抗体が結合するのと同じ抗原に結合し;いくつかの実施形態では、断片は、親抗体の親和性に匹敵する親和性をもって抗原に結合するか、若しくは、抗原に結合しようと親抗体と競合するか、または両方である。抗体の抗原結合断片の例としては、以下に限定されないが、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、dsFvディアボディ(diabody)、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)領域が挙げられる。
【0026】
約(approximately)または約(about):本明細書で使用される場合、用語「約(approximately)」または「約(about)」とは、関心の1つまたは複数の値に適用されるとき、述べられている参照値に類似した値のことを指す。所定の実施形態では、用語「約(approximately)」または「約(about)」は、他に記載がないか他に文脈から明らかでなければ、述べられた参考値からいずれかのほう(大きいほうか小さいほう)に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下以内に入る値の範囲を指す(但し、かかる数字が、あり得る値の100%を超えると考えられる場合は除く)。
【0027】
生物学的利用能:本明細書で使用される場合、用語「生物学的利用能」とは一般的に、投与用量のうち、対象の血流に達するパーセンテージを指す。
【0028】
生物活性のある:本明細書で使用される場合、語句「生物活性のある」とは、生物額的系、特に生体に活性を有する剤の特性を指す。例えば、生体に投与されたときにその生体に生物学的効果を有する剤は生物活性があると考えられる。
【0029】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」とは、mRNAをポリペプチド(例えば、抗体の重鎖または軽鎖)に翻訳すること、多重ポリペプチド(例えば、抗体の重鎖または軽鎖)を無傷タンパク質(例えば、抗体)へと構築すること、及び/または、翻訳後にポリペプチドまたは完全に構築されたタンパク質(例えば、抗体)を修飾することを指す。この適用において、用語「発現」及び「産生」、並びに文法的相当語句は互換的に使用される。
【0030】
官能的:本明細書で使用される場合、「官能的」生物分子とは、生物分子を特徴づける特性及び/または活性を示す形式における生物分子である。
【0031】
GC含量:本明細書で使用される場合、「GC含量」とは、グアニン残基、シトシン残基、またはその類似体である核酸塩基残基の合計の、核酸配列における画分またはパーセンテージである。例えば、正確に30のシトシン、正確に30のグアニン、正確にひとつのシトシン類似体、及び正確にひとつのグアニン類似体を含有する100nt配列は62%のGC濃度を有する。
【0032】
半減期:本明細書で使用される場合、用語「半減期」とは、タンパク質の濃度または活性等の量が或る期間の最初に測定したその値の半分にまで落ちるのに要する時間である。
【0033】
改善、増加または低減:本明細書で使用される場合、用語「改善」、「増加」、若しくは「低減」、または文法的相当語句は、ベースライン測定値、例えば、本明細書に記載の処理を開始する前の同じ個体における測定値、または本明細書に記載の処理をしていない1つの対照対象(または複数の対照対象)における測定値等と比較した場合の値を指す。「対照対象」とは、治療されている対象と同じ形式の疾患を罹患しており、治療されている対象とほぼ同じ年齢である対象である。
【0034】
生体外:本明細書で使用される場合、用語「生体外」とは、例えば、多細胞生体内ではなく、試験管内または反応槽内、細胞培養液内等、人工的な環境内で起こる事象を指す。
【0035】
生体内:本明細書で使用される場合、用語「生体内」とは、ヒト及び非ヒト動物等、多細胞性生体内で起こる事象を指す。細胞に基づく系に関する文脈においては、この用語は、(例えば、生体外系とは対照的なものとして)生細胞内で起こる事象を指すのに使用される場合がある。
【0036】
単離された:本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、(1)(自然及び/または実験的設定において)最初に産生されたときにつながっていた成分の少なくともいくつかから分離され、かつ/または、(2)人の手によって産生、調製、及び/または製造された、物質及び/または実在物を指す。単離された物質及び/または実在物は、それが最初につながっていた他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%より多くから分離されていてもよい。いくつかの実施形態では、単離された剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%より多くの純度であってもよい。物質は、実質的に他の成分がない場合に「純」であると、この語は本明細書で使用される。本明細書で使用される場合、単離された物質及び/または実在物のパーセント純度の計算は賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水等)を含むものではない。
【0037】
リンカー:本明細書で使用される場合、用語「リンカー」とは、天然タンパク質における特定の位置に現れるものとは別の、融合タンパク質におけるアミノ酸配列を指し、一般に、柔軟性を有するように、または2つのタンパク質成分間にα-へリックス等の構造を挿入するように設計される。リンカーはまたスペーサーとも言われる。典型的にリンカー即ちスペーサーはそれ自体では生物学的機能を有さない。
【0038】
局所的分布または送達:本明細書で使用される場合、用語「局所的分布」、「局所的送達」、または文法的相当語句は、組織特異的な送達または分布を指す。典型的には、局所的分布または局所的送達は、mRNAによってコードされるタンパク質(例えば、抗体)が、細胞内で翻訳され発現されるか、または患者の循環系に入ることを避ける限定的分泌によって翻訳され発現されることを必要とする。
【0039】
メッセンジャーRNA(mRNA):本明細書で使用される場合、用語「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。mRNAは、本明細書で使用される場合、修飾RNAと無修飾RNAの両方を包含する。mRNAは1つまたは複数のコード領域及び非コード領域を含有していてもよい。
【0040】
核酸:本明細書で使用される場合、用語「核酸」とは、その最も広い意味において、ポリヌクレオチド鎖に組み込まれているか組み込むことが可能ないずれの化合物及び/または物質をも指す。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合によってポリヌクレオチド鎖に組み込まれているかまたは組み込むことが可能な化合物及び/または物質である。いくつかの実施形態では、「核酸」とは、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」とは、個々の核酸残基を含むポリヌクレオチド鎖を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」は、RNA、並びに一本鎖及び/または二本鎖DNA、及び/またはcDNAを包含する。さらに、用語「核酸」、「DNA」、「RNA」、及び/または類似の用語は、核酸類似体、即ち、ホスホジエステル主鎖とは別のものを有する類似体を含む。例えば、いわゆる「ペプチド核酸」は、当技術分野で既知であり、主鎖内にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有し、本発明の範囲内であると考えられる。用語「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、お互いの縮重版であり、かつ/または同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を包含する。タンパク質をコードするヌクレオチド配列及び/またはRNAはイントロンを含んでもよい。核酸は、天然源から精製したり、組換え発現系を用いて産生して任意で精製したり、化学的に合成したり等、できる。適切である場合には、例えば、化学的に合成した分子の場合、核酸は、化学的に修飾された塩基または糖、主鎖修飾等を有する類似体等のヌクレオシド類似体を含むことができる。核酸配列は、他に断りがなければ、5’から3’への方向で表される。いくつかの実施形態では、核酸は、天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン);ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、及び2-チオシチジン);化学的に修飾された塩基;生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基);介在塩基;修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及び六炭糖);及び/若しくは修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエート及び5’-N-ホスホラミダイト結合)であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、送達を促進または達成するために化学的に修飾されなかった核酸(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド等も含めた、ポリヌクレオチド及び残基等)を意味する「無修飾核酸」を特に対象とする。
【0041】
患者:本明細書で使用される場合、用語「患者」または「対象」とは、提供される組成物が、例えば、実験上、診断上、予防上、美容上、及び/または治療上の目的のために投与されてもよいいずれの生体をも指す。典型的な患者としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及び/またはヒト等の哺乳動物)が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。ヒトは、出生前及び出生後の形式を含む。
【0042】
薬剤的に許容できる:用語「薬剤的に許容できる」とは、本明細書で使用される場合、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー応答、若しくは他の問題または合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触させて、妥当なリスク・ベネフィット比と釣り合う使用をするのに適切な物質を指す。
【0043】
全身的分布または送達:本明細書で使用される場合、用語「全身的分布」、「全身的送達」、または文法的相当語句は、全身若しくは生体全体に影響を及ぼす送達または分布の機構または方法を指す。典型的には、全身的分布または送達は、身体の循環系、例えば、血流を介して達成される。「局所的分布または送達」の定義と比較されたい。
【0044】
対象:本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、ヒトまたはいずれの非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、若しくは霊長類)をも指す。ヒトには、出生前及び出生後の形式を含む。多くの実施形態では、対象はヒトである。対象は患者である場合があり、これは、疾患の診断または治療を行う医療提供者にかかるヒトを指す。用語「対象」は、本明細書において「個体」または「患者」と互換的に用いられる。対象は、疾患または障害を罹患する可能性があるか罹患しやすいが、その疾患または障害の症状を顕している場合もあればない場合もある。
【0045】
実質的に:本明細書で使用される場合、用語「実質的に」とは、関心の特徴または特性の全体的またはほぼ全体的な範囲若しくは程度を表す質的状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的及び化学的現象は、完了に至ること、及び/若しくは完全状態に進むこと、または、絶対的な結果を達成したり回避したりすることが、仮にあったとしてもまれにしかないことを理解するものである。したがって、用語「実質的に」は、本明細書では、多くの生物学的及び化学的現象に特有の、完全性の潜在的欠如を捉えるために使用される。
【0046】
標的組織:本明細書で使用される場合、用語「標的組織」とは、治療すべき疾患に冒されているどのような組織をも指す。いくつかの実施形態では、標的組織としては、疾患に関連した病状、症状、または特徴を示す組織も含まれる。
【0047】
治療的有効量:本明細書で使用される場合、治療剤の「治療的有効量」という用語は、疾患、障害、及び/または異常に罹っているか罹りやすい対象に投与された場合にその疾患、障害、及び/または異常の症状の治療、診断、予防、及び/または発症遅延処置を行うのに充分な量のことを意味する。治療的有効量は典型的に、少なくとも1つの単位用量を含む投与計画によって投与されることが当業者には理解されるものである。
【0048】
治療(treating):本明細書で使用される場合、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、または「治療(treating)」とは、特定の疾患、障害、及び/または異常の1つまたは複数の症状または特徴に対して部分的または完全な緩和、改善、軽減、阻害、予防、発症遅延処置、重症度低減、及び/または発生率低減を行うために用いられるどのような方法をも指す。治療は、疾患の兆候を示さない対象及び/または疾患の初期兆候しか示さない対象に、疾患に関連する病状を生じさせるリスクを減らす目的で施されてもよい。
【0049】
(発明を実施するための形態)
本発明は、mRNA送達技術に基づいて、生体内で抗体を送達するための方法と組成物をとりわけ、提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つまたは複数のmRNAを、抗体の送達を必要とする対象に投与することによって抗体を送達する方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖は別々のmRNAによって送達される。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖は同じmRNAによって送達される。mRNAは、包装された粒子(例えば、リポソーム若しくはポリマー系賦形剤に被包)または包装されていない(即ち、裸の)粒子として、送達してもよい。mRNAがコードする抗体は、対象内で局所的(例えば、組織特異的方法で)または系統的に発現させてもよい。
【0050】
本発明の種々の態様が以下の項で詳細に説明される。項分けの使用は本発明を限定することを意図しない。各項は本発明のいずれの態様にも適用することができる。この出願においては、「または(or)」の使用は、他に記載がなければ、「及び/または(and/or)」を意味する。
【0051】
mRNAがコードする抗体
本発明は、いずれの種類の抗体を送達するように用いてもよい。本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、無傷抗体及び抗体断片の両方を包含する。典型的に、無傷「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合する免疫グロブリンである。抗体は、いずれの免疫グロブリン・クラスの中のひとつであってもよく、例えば、ヒト・クラス:IgG、IgM、IgE、IgA、及びIgDのいずれもが挙げられる。典型的には、無傷抗体は四量体である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50kD~約70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う、約100~110またはそれより多くのアミノ酸からなる可変領域を特徴づける。用語「可変軽鎖」(VL)及び「可変重鎖」(VH)とは、それぞれ、軽鎖及び重鎖上でそれらの対応する領域を指す。各可変領域はさらに、超可変(HV)領域及びフレームワーク(FR)領域に下位区分されることができる。超可変領域は、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)と呼ばれる3つの超可変配列領域を含み、これは、4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR2、及びFR4)によって分けられ、フレームワーク領域は、βシート構造を形成し、HV領域を所定の位置に保持する足場材料として働く。各重鎖及び軽鎖のC末端は、軽鎖(CL)としての1つの領域と重鎖(CH1、CH2、及びCH3)としての3つの領域とからなる定常領域を特徴づける。免疫グロブリンの軽鎖はさらに、カッパ及びラムダのアイソタイプに区別できる。
【0052】
いくつかの実施形態では、用語「無傷抗体」または「完全に構築された抗体」は、天然に産生される抗体に起こるようにジスルフィド結合によってつながってもよい2つの重鎖と2つの軽鎖を含有する抗体を指して使用される。いくつかの実施形態では、本発明による抗体は抗体断片である。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明は、「抗体断片」を送達するために用いることができる。本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域等、無傷抗体の一部を包含する。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;トリアボディ;テトラボディ;直鎖抗体;一本鎖抗体分子;及び、抗体断片から形成される多特異的抗体が挙げられる。例えば、抗体断片としては、単離された断片、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖及び重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって接続されている組換え一本鎖ポリペプチド分子(「ScFvタンパク質」)、並びに、超可変領域に似たアミノ酸残基からなる最少認識単位が挙げられる。多くの実施形態では、抗体断片は、その断片の親抗体の配列を充分に含有しているために、親抗体が結合するのと同じ抗原に結合し;いくつかの実施形態では、断片は、親抗体の親和性に匹敵する親和性をもって抗原に結合するか、若しくは、抗原に結合しようと親抗体と競合するか、または両方である。抗体の抗原結合断片の例としては、以下に限定されないが、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、dsFvディアボディ、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)領域が挙げられる。
【0054】
本発明は、当技術分野で既知の抗体、及び標準的な方法を用いて所望の抗原に対して産生させることができる抗体を送達するために用いてもよい。本発明は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体混合物またはカクテル、ヒトまたはヒト化抗体、キメラ抗体、または二重特異性抗体を送達するために用いてもよい。
【0055】
抗体の例としては、以下に限定されないが、抗ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)、抗リシルオキシダーゼ様-2(LOXL2)、抗Flt-1、抗TNF-α、抗インターロイキン-2Rα受容体(CD25)、抗TGFβ、抗B細胞活性化因子、抗アルファ-4インテグリン、抗BAGE、抗β-カテニン/m、抗Bcr-abl、抗C5、抗CA125、抗CAMEL、抗CAP-1、抗CASP-8、抗CD4、抗CD19、抗CD20、抗CD22、抗CD25、抗CDC27/m、抗CD30、抗CD33、抗CD52、抗CD56、抗CD80、抗CDK4/m、抗CEA、抗CT、抗CTL4、抗Cyp-B、抗DAM、抗EGFR、抗ErbB3、抗ELF2M、抗EMMPRIN、抗EpCam、抗ETV6-AML1、抗HER2、抗G250、抗GAGE、抗GnT-V、抗Gp100、抗HAGE、抗HER-2/neu、抗HLA-A*0201-R170I、抗IGF-1R、抗IL-2R、抗IL-5、抗MC1R、抗ミオシン/m、抗MUC1、抗MUM-1、-2、-3、抗プロテイナーゼ-3、抗p190マイナーbcr-abl、抗Pml/RARα、抗PRAMS、抗PSA、抗PSM、抗PSMA、抗RAGE、抗RANKL、抗RU1またはRU2、抗SAGE、抗SART-1または抗SART-3、抗サバイビン、抗TEL/AML1、抗TPI/m、抗TRP-1、抗TRP-2、抗TRP-2/INT2、及び抗VEGFまたは抗VEGF受容体が挙げられる。
【0056】
重鎖及び軽鎖をコードするmRNA
本発明によれば、抗体(例えば、無傷抗体及び抗体断片)は、細胞及び生体内での外因性mRNA翻訳を通して細胞または生体内で産生させてもよい。特に、本発明によれば、完全に構築された多連鎖抗体の産生は、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする外因性mRNAを送達することによって、細胞または生体内で達成することができる。いくつかの実施形態では、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有する四量体が産生される。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「重鎖」は、異なるクラスの免疫グロブリンの全種類の天然重鎖を包含し、例えば、IgM(μ)、IgD(δ)、IgG(γ)、IgA(α)、及びIgE(ε)、並びにその生物活性変種が挙げられ、但しそれに限定されない。典型的には、本発明の重鎖は、抗原認識を担うN末端可変領域を含有し、典型的には、4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR2、及びFR4)によって分けられた、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。典型的には、N-末端可変領域は約100~110またはそれ以上のアミノ酸を含有する。いくつかの実施形態では、本発明の重鎖は定常領域(例えば、CH1、CH2、及び/またはCH3)の1つまたは複数を含有する。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖をコードするmRNAは、長さが0.3kb、0.5kb、0.75kb、1.0kb、1.25kb、1.5kb、1.75kb、2.0kb、2.5kb、3.0kb、3.5kb、4.0kb、またはそれ以上である。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「軽鎖」は、異なるクラスの免疫グロブリンの全種類の天然軽鎖を包含し、例えば、カッパまたはラムダのアイソタイプ、及びその生物活性変種が挙げられ、但しそれに限定されない。典型的には、本発明の軽鎖はN末端可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の軽鎖はC末端定常領域(CL)を含有する。いくつかの実施形態では、抗体の軽鎖をコードするmRNAは、長さが0.1kb、0.2kb、0.3kb、0.4kb、0.5kb、0.6kb、0.7kb、0.8kb、0.9kb、1.0kb、1.25kb、1.5kb、1.75kb、2.0kb、2.5kb、若しくは3.0kb、またはそれ以上である。
【0059】
典型的には、mRNAによってコードされる2つの重鎖と2つの軽鎖がそれぞれジスルフィド架橋によってともに結合されたものを含有する四量体抗体。
【0060】
本発明によれば、抗体の重鎖及び軽鎖は、単一のmRNAまたは複数の別々のmRNAによってコードし送達してもよい。完全に構築された官能的抗体の産生を最適化するために、重鎖をコードするmRNAと軽鎖をコードするmRNAとを種々の比で送達することが有益であり得ると考えられる。このようにして、いくつかの実施形態では、重鎖をコードするmRNA(第1のmRNAとも称す)と軽鎖をコードするmRNA(第2のmRNAとも称す)とは、約10:1~1:10(例えば、約9:1~1:9、8:1~1:8、7:1~1:7、6:1~1:6、5:1~1:5、4:1~1:4、3:1~1:3、または2:1~1:2)の範囲内の比で送達される。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするmRNA(第1のmRNAとも称す)と軽鎖をコードするmRNA(第2のmRNAとも称す)とは、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1以上の比で送達される。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするmRNA(第1のmRNAとも称す)と軽鎖をコードするmRNA(第2のmRNAとも称す)とは、約1:1(即ち、等モル比)の比で送達される。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするmRNA(第1のmRNAとも称す)と軽鎖をコードするmRNA(第2のmRNAとも称す)とは、1:1(等モル比)とは別の比で送達される。例えば、重鎖をコードするmRNA(第1のmRNAとも称す)と軽鎖をコードするmRNA(第2のmRNAとも称す)とは、1より大きい(例えば、約10:1~1:1、9:1~1:1、8:1~1:1、7:1~1:1、6:1~1:1、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、または2:1~1:1の範囲内の)比で送達される。あるいは、重鎖をコードするmRNA(第1のmRNAとも称す)と軽鎖をコードするmRNA(第2のmRNAとも称す)とは、1より小さい(例えば、約1:1~1:10、1:1~1:9、1:1~1:8、1:1~1:7、1:1~1:6、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、または1:1~1:2の範囲内の)比で送達される。
【0061】
シグナルペプチド
いくつかの実施形態では、重鎖及び/または軽鎖をコードするmRNAはシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込む。本明細書で使用される場合、用語「シグナルペプチド」とは、新しく合成されたタンパク質に存在し、そのタンパク質を分泌経路に向かわせることができるペプチドを指す。典型的には、シグナルペプチドは、mRNAの翻訳に続いて、小胞体へ移行した後、切断される。シグナルペプチドは、シグナル配列、リーダー配列、またはリーダーペプチドとも称される。典型的には、シグナルペプチドは、短い(例えば、5~30、5~25、5~20、5~15、または5~10アミノ酸長)ペプチドである。シグナルペプチドは、新しく合成されたタンパク質のN末端に存在していてもよい。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望むのもではないが、重鎖及び/または軽鎖をコードするmRNA上に、シグナルペプチドをコードする配列を組み込むことにより、生体内でmRNAから産生される抗体の分泌及び/または産生が促進されることがある。
【0062】
本発明で適切なシグナルペプチドは、真核生物及び原核生物の種々のタンパク質、特に分泌タンパク質から誘導される異種性配列であり得る。いくつかの実施形態では、適切なシグナルペプチドはロイシンに富む配列である。参照により本明細書に援用されるYamamoto Y et al.(1989),Biochemistry,28:2728-2732を参照されたい。適切なシグナルペプチドは、ヒト成長ホルモン(hGH)、血清アルブミンプレプロ蛋白、Igκ軽鎖前駆体、アズロシジンプレプロ蛋白、シスタチンS前駆体、トリプシノーゲン2前駆体、カリウムチャネル阻害薬、α-コノトキシンlp1.3、α-コノトキシン、α-ガラクトシダーゼ、セルロース、アスパラギン酸プロテイナーゼネペンテシン-1、酸キチナーゼ、K28プレプロ毒素、キラー毒素ジゴシン(zygocin)前駆体、及びコレラ毒素から誘導してもよい。例示的なシグナルペプチド配列がKober,et al.,Biotechnol.Bioeng.,110:1164-73,2012に記載されており、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0063】
いくつかの実施形態では、重鎖及び/または軽鎖をコードするmRNAは、ヒト成長ホルモン(hGH)から誘導されるシグナルペプチドをコードする配列、またはその断片を組み込んでもよい。hGHシグナルペプチドをコードする非限定的なヌクレオチド配列を下に示す。
5’ヒト成長ホルモン(hGH)配列(配列番号9):
AUGGCCACUGGAUCAAGAACCUCACUGCUGCUCGCUUUUGGACUGCUUUGCCUGCCCUGGUUGCAAGAAGGAUCGGCUUUCCCGACCAUCCCACUCUCC
代替的5’ヒト成長ホルモン(hGH)配列(配列番号10):
AUGGCAACUGGAUCAAGAACCUCCCUCCUGCUCGCAUUCGGCCUGCUCUGUCUCCCAUGGCUCCAAGAAGGAAGCGCGUUCCCCACUAUCCCCCUCUCG
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明によるmRNAは、配列番号9または配列番号10と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を有する、シグナルペプチドをコードする配列を組み込んでいてもよい。
【0065】
mRNAの合成
本発明によるmRNAは、種々の既知の方法のいずれによって合成してもよい。例えば、本発明によるmRNAは、生体外転写(IVT)によって合成してもよい。手短に言えば、IVTは典型的に、プロモーターを含有する線状または環状のDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTT及びマグネシウムイオンを含んでいてもよい緩衝系と、適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、またはSP6RNAポリメラーゼ)、デオキシリボヌクレアーゼI、ピロホスファターゼ、及び/またはリボヌクレアーゼ阻害剤とで実行する。正確な条件は具体的な用途によって異なる。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗体をコードする本発明のmRNAの調製のために、DNA鋳型は生体外で転写される。適切なDNA鋳型は典型的に、生体外転写のためのプロモーター、例えば、T3、T7、またはSP6プロモーターと、それに続いて、所望の抗体をコードする(例えば、重鎖または軽鎖をコードする)mRNAのための所望のヌクレオチド配列と、終結シグナルとを有する。
【0067】
本発明による、所望の抗体をコードする(例えば、重鎖または軽鎖をコードする)mRNA配列は、標準的な方法を用いて決定し、DNA鋳型の中に組み込んでもよい。例えば、所望のアミノ酸配列(例えば、所望の重鎖または軽鎖の配列)を起点とし、縮重遺伝暗号に基づいて仮想逆翻訳を実行する。次いで、最適化アルゴリズムを適切なコドンの選択に用いてもよい。典型的には、G/C含量は、一方では、できるだけ高いG/C含量を達成するために最適化し、他方では、コドン利用に従ってtRNAの頻度をできるだけよく考慮に入れることができる。最適化されたRNA配列は、確定して、例えば、適切な表示装置を利用して表示し、最初の(野生型の)配列と比較することができる。また、二次構造を分析して、RNAの安定化及び不安定化の特性またはそれぞれの領域を計算することもできる。
【0068】
本発明のmRNAは無修飾または修飾mRNAとして合成してもよい。典型的には、mRNAは、安定性を向上させるように修飾される。mRNAの修飾といった場合、例えば、RNAのヌクレオチドの修飾を含むことができる。こうして、本発明の修飾mRNAは、例えば、主鎖修飾、糖修飾、または塩基修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は、例えば、以下に限定されないが、プリン(アデニン(A)、グアニン(G))またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))、並びに、修飾ヌクレオチド類似体またはプリン及びピリミジンの誘導体としては、例えば、1-メチル-アデニン、2-メチル-アデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、プソイドウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-プソイドウラシル、ケウオシン、β-D-マンノシル-ケウオシン(queosine)、ウィブトキソシン(wybutoxosine)、及びホスホルアミデート(phosphoramidate)、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン、及びイノシン等、天然のヌクレオチド及び/またはヌクレオチド類似体(修飾ヌクレオチド)から合成してもよい。かかる類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号、米国特許第4,401,796号、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,500,707号、米国特許第4,668,777号、米国特許第4,973,679号、米国特許第5,047,524号、米国特許第5,132,418号、米国特許第5,153,319号、米国特許第5,262,530号、及び第5,700,642号から、当業者に既知であり、これらの開示は参照によりその全範囲が本明細書に援用される。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)はRNA主鎖修飾を含有していてもよい。典型的には、主鎖修飾は、RNAに含有されるヌクレオチドの主鎖のリン酸が化学的に修飾される修飾である。典型的には、例示的な主鎖修飾としては、以下に限定されないが、メチルホスホネート、メチルホスホルアミデート、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート(例えば、シチジン5’-O-(1-チオリン酸))、ボラノリン酸、正電荷グアニジウム基等からなる群の修飾が挙げられ、このことは、ホスホジエステル結合を他のアニオン性、カチオン性または中性基によって置換することによるということを意味する。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は糖修飾を含有してもよい。典型的な糖修飾は、それが含有するヌクレオチドの糖の化学修飾であり、以下に限定されないが、2’-デオキシ-2’-フルオロ-オリゴリボヌクレオチド(2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-デオキシ-2’-デアミン(deamine)-オリゴリボヌクレオチド(2’-アミノ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’-O-メチルシチジン5’-三リン酸、2’-メチルウリジン5’-三リン酸)、2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド、及びそのイソマー(2’-アラシチジン5’-三リン酸、2’-アラウリジン5’-三リン酸)、またはアジド三リン酸(2’-アジド-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アジド-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)からなる群より選択される糖修飾が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は、ヌクレオチドの塩基の修飾(塩基修飾)を含有してもよい。塩基修飾を含有する修飾ヌクレオチドは、塩基修飾ヌクレオチドとも呼ばれる。かかる塩基修飾ヌクレオチドの例としては、以下に限定されないが、2-アミノ-6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、2-アミノアデノシン5’-三リン酸、2-チオシチジン5’-三リン酸、2-チオウリジン5’-三リン酸、4-チオウリジン5’-三リン酸、5-アミノアリルシチジン5’-三リン酸、5-アミノアリルウリジン5’-三リン酸、5-ブロモシチジン5’-三リン酸、5-ブロモウリジン5’-三リン酸、5-ヨードシチジン5’-三リン酸、5-ヨードウリジン5’-三リン酸、5-メチルシチジン5’-三リン酸、5-メチルウリジン5’-三リン酸、6-アザシチジン5’-三リン酸、6-アザウリジン5’-三リン酸、6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、7-デアザアデノシン5’-三リン酸、7-デアザグアノシン5’-三リン酸、8-アザアデノシン5’-三リン酸、8-アジドアデノシン5’-三リン酸、ベンズイミダゾールリボシド5’-三リン酸、N1-メチルアデノシン5’-三リン酸、N1-メチルグアノシン5’-三リン酸、N6-メチルアデノシン5’-三リン酸、O6-メチルグアノシン5’-三リン酸、プソイドウリジン5’-三リン酸、ピューロマイシン5’-三リン酸、またはキサントシン5’-三リン酸が挙げられる。
【0072】
典型的には、mRNA合成は、N末端(5’)末端への「キャップ」の付加及びC末端(3’)末端への「尾部」の付加を含む。キャップの存在は、殆どの真核生物細胞に見られるヌクレアーゼに抵抗性を得させる上で重要である。「尾部」の存在は、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護するように働く。
【0073】
このようにして、いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は5’キャップ構造を含む。5’キャップは、典型的には、次の通り付加される:まず、RNA末端ホスファターゼが末端リン酸基の1つを5’ヌクレオチドから取り除き、末端リン酸を2つ残し;次いで、グアノシン三リン酸(GTP)がグアニリルトランスフェラーゼによって末端リン酸に付加され、5’5’5三リン酸結合を生じさせ:次いで、グアニンの7-窒素がメチルトランスフェラーゼによってメチル化される。キャップ構造の例としては、以下に限定されないが、m7G(5’)ppp(5’(A、G(5’)ppp(5’)A及びG(5’)ppp(5’)Gが挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は3’ポリ(A)尾部構造を含む。mRNAの3’末端のポリA尾部は、典型的には、約10~300アデノシンヌクレオチド(例えば、約10~200アデノシンヌクレオチド、約10~175アデノシンヌクレオチド、約10~150アデノシンヌクレオチド、約10~125アデノシンヌクレオチド、10~100アデノシンヌクレオチド、約10~75アデノシンヌクレオチド、約20~70アデノシンヌクレオチド、または約20~60アデノシンヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は3’ポリ(C)尾部構造を含む。mRNAの3’末端上適切なポリC尾部は、典型的に、約10~200シトシンヌクレオチド(例えば、約10~150シトシンヌクレオチド、約10~100シトシンヌクレオチド、約20~70シトシンヌクレオチド、約20~60シトシンヌクレオチド、または約10~40シトシンヌクレオチド)を含む。ポリC尾部は、ポリA尾部に付加してもよく、ポリA尾部と置換してもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は5’及び/または3’非翻訳領域を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAの安定性または翻訳に影響を与える1つまたは複数の要素、例えば、鉄応答配列を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、約50~500ヌクレオチドの長さ(例えば、約50~400ヌクレオチドの長さ、約50~300ヌクレオチドの長さ、約50~200ヌクレオチドの長さ、または約50~100ヌクレオチドの長さ)であってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)の5’領域は、シグナルペプチドをコードする配列、例えば、本明細書に記載のものを含む。特定の実施形態では、ヒト成長ホルモン(hGH)(例えば、配列番号9)から誘導されるシグナルペプチドは5’領域に組み込まれる。典型的には、シグナルペプチドをコードする配列(例えば、配列番号9等、hGHシグナルペプチドをコードする配列)は、重鎖または軽鎖をコードする配列にN末端で直接的または間接的に結合される。
【0077】
抗CCL2の重鎖及び軽鎖をコードする例示的mRNA
非限定的な例として、抗CCL2抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAが実施例1で説明される。重鎖をコードするmRNAの配列を、5’及び3’UTRのない場合とある場合とで、それぞれ配列番号1及び配列番号2として下に示す。軽鎖をコードするmRNAの配列を、5’及び3’UTRのない場合とある場合とで、それぞれ配列番号3及び配列番号4として下に示す。
5’及び3’UTRのない抗CCL2重鎖(HC-αCCL2)mRNA(配列番号1):
AUGGAAUUCGGCCUGAGCUGGCUGUUCCUGGUGGCCAUCCUGAAGGGCGUGCAGUGCCAGGUCCAGCUGGUGCAGUCUGGCGCCGAAGUGAAGAAACCCGGCUCCUCCGUGAAGGUGUCCUGCAAGGCCUCCGGCGGCACCUUCUCCAGCUACGGCAUCUCCUGGGUCCGACAGGCCCCAGGCCAGGGCCUGGAAUGGAUGGGCGGCAUCAUCCCCAUCUUCGGCACCGCCAACUACGCCCAGAAAUUCCAGGGCAGAGUGACCAUCACCGCCGACGAGUCCACCUCCACCGCCUACAUGGAACUGUCCUCCCUGCGGAGCGAGGACACCGCCGUGUACUACUGCGCCAGAUACGACGGCAUCUACGGCGAGCUGGACUUCUGGGGCCAGGGCACCCUGGUCACCGUGUCCUCUGCCAAGACCACCCCCCCCUCCGUGUACCCUCUGGCCCCUGGCUCUGCCGCCCAGACCAACUCUAUGGUCACCCUGGGCUGCCUGGUCAAGGGCUACUUCCCCGAGCCCGUGACCGUGACCUGGAACUCCGGCUCCCUGUCCUCCGGCGUGCACACCUUCCCUGCCGUGCUGCAGUCCGACCUCUACACCCUGUCCAGCAGCGUGACCGUGCCCUCCUCCACCUGGCCCUCCGAGACAGUGACCUGCAACGUGGCCCACCCCGCCUCCAGCACCAAGGUGGACAAGAAAAUCGUGCCCCGGGACUGCGGCUGCAAGCCCUGCAUCUGUACCGUGCCCGAGGUGUCCUCCGUGUUCAUCUUCCCACCCAAGCCCAAGGACGUGCUGACCAUCACACUGACCCCCAAAGUGACCUGCGUGGUGGUGGACAUCUCCAAGGACGACCCCGAGGUGCAGUUCAGUUGGUUCGUGGACGACGUGGAAGUGCACACCGCUCAGACCCAGCCCAGAGAGGAACAGUUCAACUCCACCUUCAGAUCCGUGUCCGAGCUGCCCAUCAUGCACCAGGACUGGCUGAACGGCAAAGAAUUCAAGUGCAGAGUGAACUCCGCCGCCUUCCCAGCCCCCAUCGAAAAGACCAUCUCCAAGACCAAGGGCAGACCCAAGGCCCCCCAGGUCUACACCAUCCCCCCACCCAAAGAACAGAUGGCCAAGGACAAGGUGUCCCUGACCUGCAUGAUCACCGAUUUCUUCCCAGAGGACAUCACCGUGGAAUGGCAGUGGAACGGCCAGCCCGCCGAGAACUACAAGAACACCCAGCCCAUCAUGGACACCGACGGCUCCUACUUCGUGUACUCCAAGCUGAACGUGCAGAAGUCCAACUGGGAGGCCGGCAACACCUUCACCUGUAGCGUGCUGCACGAGGGCCUGCACAACCACCACACCGAGAAGUCCCUGUCCCACUCCCCCGGCAAGUGA
5’及び3’UTRのある抗CCL2重鎖(HC-αCCL2)mRNA(配列番号2):
(5’及び3’UTRの配列には下線あり)
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGACCUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCCGGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAGUGACUCACCGUCCUUGACACGAUGGAAUUCGGCCUGAGCUGGCUGUUCCUGGUGGCCAUCCUGAAGGGCGUGCAGUGCCAGGUCCAGCUGGUGCAGUCUGGCGCCGAAGUGAAGAAACCCGGCUCCUCCGUGAAGGUGUCCUGCAAGGCCUCCGGCGGCACCUUCUCCAGCUACGGCAUCUCCUGGGUCCGACAGGCCCCAGGCCAGGGCCUGGAAUGGAUGGGCGGCAUCAUCCCCAUCUUCGGCACCGCCAACUACGCCCAGAAAUUCCAGGGCAGAGUGACCAUCACCGCCGACGAGUCCACCUCCACCGCCUACAUGGAACUGUCCUCCCUGCGGAGCGAGGACACCGCCGUGUACUACUGCGCCAGAUACGACGGCAUCUACGGCGAGCUGGACUUCUGGGGCCAGGGCACCCUGGUCACCGUGUCCUCUGCCAAGACCACCCCCCCCUCCGUGUACCCUCUGGCCCCUGGCUCUGCCGCCCAGACCAACUCUAUGGUCACCCUGGGCUGCCUGGUCAAGGGCUACUUCCCCGAGCCCGUGACCGUGACCUGGAACUCCGGCUCCCUGUCCUCCGGCGUGCACACCUUCCCUGCCGUGCUGCAGUCCGACCUCUACACCCUGUCCAGCAGCGUGACCGUGCCCUCCUCCACCUGGCCCUCCGAGACAGUGACCUGCAACGUGGCCCACCCCGCCUCCAGCACCAAGGUGGACAAGAAAAUCGUGCCCCGGGACUGCGGCUGCAAGCCCUGCAUCUGUACCGUGCCCGAGGUGUCCUCCGUGUUCAUCUUCCCACCCAAGCCCAAGGACGUGCUGACCAUCACACUGACCCCCAAAGUGACCUGCGUGGUGGUGGACAUCUCCAAGGACGACCCCGAGGUGCAGUUCAGUUGGUUCGUGGACGACGUGGAAGUGCACACCGCUCAGACCCAGCCCAGAGAGGAACAGUUCAACUCCACCUUCAGAUCCGUGUCCGAGCUGCCCAUCAUGCACCAGGACUGGCUGAACGGCAAAGAAUUCAAGUGCAGAGUGAACUCCGCCGCCUUCCCAGCCCCCAUCGAAAAGACCAUCUCCAAGACCAAGGGCAGACCCAAGGCCCCCCAGGUCUACACCAUCCCCCCACCCAAAGAACAGAUGGCCAAGGACAAGGUGUCCCUGACCUGCAUGAUCACCGAUUUCUUCCCAGAGGACAUCACCGUGGAAUGGCAGUGGAACGGCCAGCCCGCCGAGAACUACAAGAACACCCAGCCCAUCAUGGACACCGACGGCUCCUACUUCGUGUACUCCAAGCUGAACGUGCAGAAGUCCAACUGGGAGGCCGGCAACACCUUCACCUGUAGCGUGCUGCACGAGGGCCUGCACAACCACCACACCGAGAAGUCCCUGUCCCACUCCCCCGGCAAGUGACGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU
5’及び3’UTRのない抗CCL2軽鎖(LC-αCCL2)mRNA(配列番号3):
AUGGAAACCCCUGCCCAGCUGCUGUUCCUGCUGCUGCUGUGGCUGCCUGAUACCACCGGCGAAAUCGUGCUGACCCAGUCCCCCGCCACCCUGUCUCUGAGCCCUGGCGAGAGAGCCACCCUGAGCUGCAGAGCCUCCCAGUCCGUGUCCGACGCCUACCUGGCCUGGUAUCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCCCCUCGGCUGCUGAUCUACGACGCCUCCUCUAGAGCCACCGGCGUGCCCGCCAGAUUCUCCGGCUCUGGCUCUGGCACCGACUUCACCCUGACCAUCUCCAGCCUGGAACCCGAGGACUUCGCCGUGUACUACUGCCACCAGUACAUCCAGCUGCACAGCUUCACCUUCGGCCAGGGCACCAAGGUGGAAAUCAAGGCCGAUGCCGCCCCUACCGUGUCCAUCUUCCCACCCUCCAGCGAGCAGCUGACCUCUGGCGGCGCUUCCGUCGUGUGCUUCCUGAACAACUUCUACCCCAAGGACAUCAACGUGAAGUGGAAGAUCGACGGCUCCGAGCGGCAGAACGGCGUGCUGAACUCCUGGACCGACCAGGACUCCAAGGACAGCACCUACUCCAUGUCCUCCACCCUGACCCUGACCAAGGACGAGUACGAGCGGCACAACUCCUAUACCUGCGAGGCCACCCACAAGACCUCCACCUCCCCCAUCGUGAAGUCCUUCAACCGGAACGAGUGCUGA
5’及び3’UTRのある抗CCL2軽鎖(LC-αCCL2)mRNA(配列番号4):
(5’及び3’UTRの配列には下線あり)
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGACCUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCCGGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAGUGACUCACCGUCCUUGACACGAUGGAAACCCCUGCCCAGCUGCUGUUCCUGCUGCUGCUGUGGCUGCCUGAUACCACCGGCGAAAUCGUGCUGACCCAGUCCCCCGCCACCCUGUCUCUGAGCCCUGGCGAGAGAGCCACCCUGAGCUGCAGAGCCUCCCAGUCCGUGUCCGACGCCUACCUGGCCUGGUAUCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCCCCUCGGCUGCUGAUCUACGACGCCUCCUCUAGAGCCACCGGCGUGCCCGCCAGAUUCUCCGGCUCUGGCUCUGGCACCGACUUCACCCUGACCAUCUCCAGCCUGGAACCCGAGGACUUCGCCGUGUACUACUGCCACCAGUACAUCCAGCUGCACAGCUUCACCUUCGGCCAGGGCACCAAGGUGGAAAUCAAGGCCGAUGCCGCCCCUACCGUGUCCAUCUUCCCACCCUCCAGCGAGCAGCUGACCUCUGGCGGCGCUUCCGUCGUGUGCUUCCUGAACAACUUCUACCCCAAGGACAUCAACGUGAAGUGGAAGAUCGACGGCUCCGAGCGGCAGAACGGCGUGCUGAACUCCUGGACCGACCAGGACUCCAAGGACAGCACCUACUCCAUGUCCUCCACCCUGACCCUGACCAAGGACGAGUACGAGCGGCACAACUCCUAUACCUGCGAGGCCACCCACAAGACCUCCACCUCCCCCAUCGUGAAGUCCUUCAACCGGAACGAGUGCUGACGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU
【0078】
とりわけ、本発明はまた、本明細書に記載の配列と実質的に同一または類似の、抗CCL2抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAを提供する。いくつかの実施形態では、抗CCL2抗体の重鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号1または配列番号2と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CCL2抗体の重鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号1と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一または相同であるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CCL2抗体の軽鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号3または配列番号4と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CCL2抗体の軽鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号3と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一または相同であるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるmRNAは、1つまたは複数の修飾ヌクレオチド、例えば、本明細書に記載のものを含有する。いくつかの実施形態では、抗CCL2抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAは、配列の全修飾可能ヌクレオチドのうち、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の修飾ヌクレオチドを含有してもよい。
抗VEGFの重鎖及び軽鎖をコードする例示的なmRNA
5’及び3’UTRのない抗VEGF重鎖(HC-αVEGF)mRNA(配列番号5):
AUGGCAACUGGAUCAAGAACCUCCCUCCUGCUCGCAUUCGGCCUGCUCUGUCUCCCAUGGCUCCAAGAAGGAAGCGCGUUCCCCACUAUCCCCCUCUCGGAGGUUCAGCUGGUCGAAAGCGGGGGCGGCCUCGUCCAGCCAGGUGGAUCCCUCCGCCUGAGCUGCGCCGCGUCCGGAUACACUUUCACCAACUACGGCAUGAACUGGGUCCGCCAGGCGCCGGGAAAGGGACUGGAAUGGGUCGGCUGGAUCAAUACCUACACUGGAGAGCCUACCUACGCCGCUGACUUUAAGAGGCGGUUCACUUUCUCACUGGAUACUUCCAAGUCAACCGCUUACCUUCAGAUGAAUUCCCUGCGCGCCGAGGAUACCGCAGUGUAUUACUGCGCCAAAUACCCGCAUUACUACGGCUCCAGCCACUGGUACUUUGACGUGUGGGGUCAAGGAACCCUGGUGACUGUGUCGUCCGCUUCCACCAAGGGACCAAGCGUGUUUCCACUCGCCCCGAGCUCAAAAUCGACGUCGGGAGGUACUGCCGCACUGGGGUGCUUGGUCAAGGACUACUUUCCAGAGCCGGUGACUGUUUCCUGGAACAGCGGAGCGCUCACCUCGGGCGUGCACACCUUCCCUGCGGUGUUGCAGUCAUCUGGACUGUACUCGCUGUCCAGCGUGGUCACGGUCCCGAGCUCGUCGCUCGGGACCCAAACCUACAUUUGCAAUGUCAACCACAAGCCAUCGAACACCAAAGUCGACAAGAAGGUGGAACCGAAGUCGUGCGACAAGACUCAUACGUGCCCACCGUGUCCGGCUCCGGAACUGUUGGGGGGCCCCUCCGUGUUCCUUUUCCCGCCAAAGCCUAAGGACACUCUCAUGAUCUCACGGACGCCAGAAGUGACCUGUGUGGUCGUGGAUGUGUCACAUGAGGAUCCGGAAGUCAAAUUCAACUGGUAUGUGGACGGGGUGGAAGUGCAUAAUGCCAAAACCAAACCUCGCGAGGAGCAGUACAACUCAACCUACCGGGUGGUGUCCGUGCUGACUGUGCUGCACCAGGACUGGCUGAAUGGAAAGGAGUACAAAUGCAAGGUCAGCAACAAGGCCCUUCCCGCCCCAAUCGAAAAGACGAUCUCGAAGGCCAAAGGUCAGCCGCGAGAGCCUCAAGUGUACACUCUGCCGCCGUCAAGAGAAGAAAUGACUAAGAACCAAGUUUCCCUCACUUGCCUGGUGAAGGGCUUCUACCCCAGCGACAUCGCAGUGGAAUGGGAGAGCAACGGACAGCCGGAAAACAACUAUAAGACCACCCCUCCUGUGUUGGACUCGGAUGGUUCCUUCUUCCUUUACAGCAAGCUGACCGUGGAUAAAUCGCGGUGGCAGCAAGGAAAUGUGUUUUCAUGCUCAGUCAUGCACGAGGCGCUGCACAAUCACUACACUCAGAAGUCCCUGUCGCUGUCGCCAGGAAAAUAA
5’及び3’UTRのある抗VEGF重鎖(HC-αVEGF)mRNA(配列番号6):
(5’及び3’UTR配列には下線があり、シグナルペプチド配列はイタリック体、太字である。)
【化1】
5’及び3’UTRのない抗VEGF軽鎖(HC-αVEGF)mRNA(配列番号7):
AUGGCCACUGGAUCAAGAACCUCACUGCUGCUCGCUUUUGGACUGCUUUGCCUGCCCUGGUUGCAAGAAGGAUCGGCUUUCCCGACCAUCCCACUCUCCGACAUUCAAAUGACGCAGUCCCCAUCGAGCCUCUCAGCAUCAGUGGGGGAUCGCGUGACUAUCACUUGCUCGGCGAGCCAGGAUAUCAGCAAUUACCUGAACUGGUAUCAGCAAAAGCCUGGAAAGGCACCGAAGGUGCUGAUCUACUUCACCUCAAGCCUCCAUUCGGGUGUCCCGUCCCGCUUCAGCGGCUCCGGCUCAGGCACUGACUUCACCCUGACUAUCUCCUCGCUGCAACCGGAAGAUUUCGCCACUUACUACUGUCAGCAGUACUCCACCGUGCCUUGGACGUUCGGACAGGGAACCAAAGUUGAGAUUAAGCGGACGGUCGCGGCCCCCUCCGUGUUUAUCUUUCCGCCUUCGGACGAGCAGCUGAAGUCGGGAACCGCCUCUGUCGUGUGCCUCCUGAACAACUUCUACCCGCGGGAAGCCAAGGUGCAGUGGAAAGUGGAUAACGCGCUUCAGAGCGGCAAUUCGCAAGAGUCCGUGACCGAAGAGGACUCGAAGGACUCAACCUACUCCCUCAGCUCAACCCUCACUUUGUCGAAGGCCGACUACGAGAAGCACAAAGUCUACGCAUGCGAAGUCACCCACCAGGGUCUGUCGAGCCCAGUGACUAAAUCCUUCAAUAGGGGGGAAUGUUAA
5’及び3’UTRのある抗VEGF軽鎖(HC-αVEGF)mRNA(配列番号8):
(5’及び3’UTR配列には下線があり、シグナルペプチド配列はイタリック体、太字である。)
【化2】
【0080】
本発明はまた、とりわけ、本明細書に記載の配列と実質的に同一または類似の、抗VEGF抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAを提供する。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体の重鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号5または配列番号6と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体の重鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号5と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一または相同であるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体の軽鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号7または配列番号8と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体の軽鎖をコードするmRNAは、本明細書に記載の配列番号7と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一または相同であるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるmRNAは、1つまたは複数の修飾ヌクレオチド、例えば、本明細書に記載のものを含有する。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAは、配列の全修飾可能ヌクレオチドのうち、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の修飾ヌクレオチドを含有してもよい。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)、及び/またはポリペプチド分子間の全体的関連性を指す。2つの核酸配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適比較のために2つの配列をアラインメントすることによって実行できる(例えば、最適アラインメントのために第1及び第2の核酸配列の1つまたは両方にギャップを導入したり、比較目的のために同一でない配列を無視したりすることがある)。所定の実施形態では、比較目的のためにアラインメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置のそのヌクレオチドを比較する。第1の配列の或る位置が第2の配列の対応する位置と同じヌクレオチドで占められている場合、その分子はその位置で同一である。2つの配列の同一性パーセントは、それら配列が共有する同一性位置の数の関数であり、2つの配列の最適アラインメントのために導入する必要があるギャップの数と各ギャップの長さを考慮に入れている。2つの配列間の配列の比較と同一性パーセントの決定は数学アルゴリズムを用いて実行することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、Meyers及びMillerのアルゴリズム(CABIOS,1989,4:11-17)を用いて決定することができ、これは、PAM120加重残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティー(gap length penalty)、及び4のギャップペナルティー(gap penalty)を用いたALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。あるいは、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスを用いたGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて決定することができる。
【0083】
送達賦形剤
本発明によれば、本明細書に記載の抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は、裸のRNAとして(包装せず)または送達賦形剤によって送達してもよい。本明細書で使用される場合、用語「送達賦形剤」、「転移賦形剤」、または文法的相当語句は、互換的に使用される。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAは、単一の送達賦形剤によって送達してもよい。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAは、別々の送達賦形剤によって送達してもよい。例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAは、別々に包装して同時に送達してもよい。あるいは、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAは、別々に包装して逐次的に送達してもよい。
【0085】
種々の実施形態によれば、適切な送達賦形剤としては、以下に限定されないが、ポリエチレンイミン(PEI)等のポリマー系担体、脂質ナノ粒子及びリポソーム、ナノリポソーム、セラミド含有ナノリポソーム、プロテオリポソーム、天然及び合成誘導の両エキソソーム、天然・合成・半合成の層状体、ナノ粒子、ケイ酸カルシウム蛍光体ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子、二酸化ケイ素ナノ粒子、ナノ結晶粒子、半導体ナノ粒子、ポリ(D-アルギニン)、ゾルゲル、ナノデンドリマー、デンプン系送達系、ミセル、乳剤、ニオソーム、多領域ブロックポリマー(ビニルポリマー、ポリプロピルアクリル酸ポリマー、動的ポリ抱合体)、乾燥粉末製剤、プラスミド、ウイルス、リン酸カルシウムヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、及びその他ベクタータグが挙げられる。
【0086】
リポソーム性送達賦形剤
いくつかの実施形態では、適切な送達賦形剤はリポソーム性送達賦形剤、例えば、脂質ナノ粒子である。本明細書で使用される場合、リポソーム性送達賦形剤、例えば、脂質ナノ粒子は通常、外側の媒体から1つまたは複数の二重層の膜によって隔離された内部水分空間を有する微小な小胞とみなされる。リポソームの二重層膜は典型的に、空間的に隔てられた親水性領域と疎水性領域を含む合成または天然由来の脂質等、両親媒性分子によって形成される(Lasic,Trends Biotechnol.,16:307-321,1998)。リポソームの二重層膜は、両染性ポリマー及び界面活性剤(例えば、ポリマーソーム(polymerosome)、ニオソーム等)によって形成することもできる。本発明との関連においては、リポソーム性送達賦形剤は典型的に、所望のmRNAを標的細胞または組織に輸送するよう働く。所望のmRNAをリポソームに組み込む過程はしばしば「挿入」と称される。例示的な方法がLasic,et al.,FEBS Lett.,312:255-258,1992に記載されており、これは参照により本明細書に援用される。リポソームに組み込んだ核酸は、リポソームの内部空間内に位置していても、リポソームの二重層膜内に完全または部分的に位置していても、リポソーム膜の外側表面に会合していてもよい。リポソームの中への核酸の組込みは、本明細書では「被包」とも称され、それは、核酸が全体的にリポソームの内部空間内に含有されることをいう。mRNAを転移賦形剤、例えば、リポソームに組み込む目的はしばしば、核酸を分解させる酵素若しくは化学薬品、及び/または核酸の迅速な排出を引き起こす系若しくは受容体を含有することがある環境から核酸を保護することである。したがって、いくつかの実施形態では、適切な送達賦形剤は、そこに含有されるmRNAの安定性を高め、標的細胞または組織へのmRNAの送達を促進することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、適切な送達賦形剤は脂質ナノ粒子として製剤化される。本明細書で使用される場合、語句「脂質ナノ粒子」とは、1つまたは複数の脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール系の脂質、及びPEG修飾脂質)を含む送達賦形剤を指す。意図する脂質ナノ粒子は、1つまたは複数のカチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール系の脂質、及びPEG修飾脂質を使った種々の比の多成分の脂質混合物を含むことによって調製してもよい。適切な脂質の例としては、例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシド)が挙げられる。
【0088】
本発明の所定の実施形態では、担体は、ポリマーを担体として単独または他の担体と組み合わせて用いて製剤化する。適切なポリマーとしては、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキシアノアクリレート(polyalkycyanoacrylate)、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルジネート、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン、プロタミン、ペグ化プロタミン、PLL、ペグ化PLL、及びポリエチレンイミン(PEI)が挙げられる。PEIが存在する場合、それは、10~40kDAの範囲にある分子量の分岐PEI、例えば、25kDa分岐PEI(Sigma #408727)であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、適切な送達賦形剤はカチオン性脂質を含有する。本明細書で使用される場合、語句「カチオン性脂質」とは、生理的pH等、選ばれたpHで正味の正電荷を有する或る数の脂質種のいずれかを指す。いくつかのカチオン性脂質は、文献に記載されており、その多くは市販されている。本発明の組成物及び方法での使用に特に適切なカチオン性脂質としては、国際特許公報WO2010/053572(そして特に、段落[00225]に記載されるCI2-200)及びWO2012/170930に記載されるものが挙げられ、その両方は参照により本明細書に援用される。所定の実施形態では、本発明の組成物及び方法は、例えば、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-15,18-ジエン-1-アミン(HGT5000)、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-4,15,18-トリエン-l-アミン(HGT5001)、及び(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-5,15,18-トリエン-1-アミン(HGT5002)等、2012年3月29日出願の米国仮特許出願第61/617,468号(参照により本明細書に援用される)に記載のイオン化可能カチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子を用いる。
【0090】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-塩化トリメチルアンモニウムまたは「DOTMA」が用いられる(Feigner et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.84,7413(1987);米国特許第4,897,355号)。DOTMAは、単独で製剤化するか、中性脂質、ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン即ち「DOPE」、または他のカチオン性若しくは非カチオン性脂質と組み合わせて、リポソーム性転移賦形剤または脂質ナノ粒子にすることができ、かかるリポソームを用いて標的細胞への核酸の送達を向上させることができる。他の適切なカチオン性脂質としては、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミド即ち「DOGS」、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウム即ち「DOSPA」(Behr et al.Proc.Nat.’l Acad.Sci.86,6982(1989);米国特許第5,171,678号;米国特許第5,334,761号)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン即ち「DODAP」、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン即ち「DOTAP」が挙げられる。意図するカチオン性脂質としてはまた、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン即ち「DSDMA」、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン即ち「DODMA」、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン即ち「DLinDMA」、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン即ち「DLenDMA」、塩化N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウム即ち「DODAC」、臭化N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウム即ち「DDAB」、臭化N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウム即ち「DMRIE」、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン即ち「CLinDMA」、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-1-(シス,シス-9’,1-2’-オクタデカジエンオキシ)プロパン即ち「CpLinDMA」、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン即ち「DMOBA」、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン即ち「DOcarbDAP」、2,3-ジリノレオイルオキシ-Ν,Ν-ジメチルプロピルアミン即ち「DLinDAP」、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン即ち「DLincarbDAP」、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン即ち「DLinCDAP」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン即ち「DLin--DMA」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン即ち「DLin-K-XTC2-DMA」、及び2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(DLin-KC2-DMA))(WO2010/042877;Semple et al.,Nature Biotech.28:172-176(2010)を参照のこと)、またはその混合物が挙げられる。(Heyes,J.,et al.,J Controlled Release 107:276-287(2005);Morrissey,DV.,et al.,Nat.Biotechnol.23(8):1003-1007(2005);PCT公開WO2005/121348A1)。
【0091】
いくつかの実施形態では、かかる組成物に存在する1つまたは複数のカチオン性脂質は、イミダゾール、ジアルキルアミノ、またはグアニジウム成分の少なくとも1つを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、かかる組成物に存在する1つまたは複数のカチオン性脂質は、XTC(2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン)、MC3(((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート),ALNY-100((3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソl-5-アミン))、NC98-5(4,7,13-トリス(3-オキソ-3-(ウンデシルアミノ)プロピル)-N1,N16-ジウンデシル-4,7,10,13-テトラアザヘキサデカン-1,16-ジアミド)、DODAP(1,2-ジオレイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン)、HGT4003(WO2012/170889、この文献の教示はその全体が参照により本明細書に援用される)、ICE(WO2011/068810、この文献の教示はその全体が参照により本明細書に援用される)、HGT5000(米国仮特許出願第61/617,468号、この文献の教示はその全体が参照により本明細書に援用される)、またはHGT5001(シスまたはトランス)(仮特許出願第61/617,468号)、WO2010/053572に開示されるもの等のアミノアルコールリピドイド、DOTAP(1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DLinDMA(Heyes,J.;Palmer,L.;Bremner,K.;MacLachlan,I.“Cationic lipid saturation influences intracellular delivery of encapsulated nucleic acids”J.Contr.Rel.2005,107,276-287)、DLin-KC2-DMA(Semple,S.C.et al.“Rational Design of Cationic Lipids for siRNA Delivery”Nature Biotech.2010,28,172-176)、C12-200(Love,K.T.et al.“Lipid-like materials for low-dose in vivo gene silencing”PNAS 2010,107,1864-1869)から選択される。
【0093】
いくつかの実施形態では、かかる組成物に存在する1つまたは複数のカチオン性脂質は、WO2013063468、及び2013年10月22日出願の米国仮出願第61/894,299号『Lipid Formulations for Delivery of Messernger RNA』に記載のカチオン性脂質であり、両方の文献は参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式I-c1-a:
【化3】
の化合物またはその薬剤的に許容できる塩を含み、
式中、各R
2は独立して水素またはC
1~3アルキルであり;
各qは独立して2~6であり;
各R’は独立して水素またはC
1~3アルキルであり;
各R
Lは独立してC
8~12アルキルである。
【0094】
いくつかの実施形態では、各R2は独立して水素、メチル、またはエチルである。いくつかの実施形態では、各R2は独立して水素またはメチルである。いくつかの実施形態では、各R2は水素である。
【0095】
いくつかの実施形態では、各qは独立して3~6である。いくつかの実施形態では、各qは独立して3~5である。いくつかの実施形態では、各qは4である。
【0096】
いくつかの実施形態では、各R’は独立して水素、メチル、またはエチルである。いくつかの実施形態では、各R’は独立して水素またはメチルである。いくつかの実施形態では、各R’は独立して水素である。
【0097】
いくつかの実施形態では、各RLは独立してC8~12アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは独立してn-C8~12アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは独立してC9~11アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは独立してn-C9~11アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは独立してC10アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは独立してn-C10アルキルである。
【0098】
いくつかの実施形態では、各R2は独立して水素またはメチルであり;各qは独立して3~5であり;R’は独立して水素またはメチルであり;各RLは独立してC8~12アルキルである。
【0099】
いくつかの実施形態では、各R2は水素であり;各qは独立して3~5であり;各R’は水素であり;各RLは独立してC8~12アルキルである。
【0100】
いくつかの実施形態では、各R2は水素であり、各qは4であり;各R’は水素であり、各RLは独立してC8~12アルキルである。
【0101】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は式I-g:
【化4】
の化合物またはその薬剤的に許容できる塩を含み、式中、各R
Lは独立してC
8~12アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは独立してn-C
8~12アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは独立してC
9~11アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは独立してn-C
9~11アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは独立してC
10アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lはn-C
10アルキルである。
【0102】
特定の実施形態では、提供される組成物としては、カチオン性脂質cKK-E12、または(3,6-ビス(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン)が挙げられる。cKK-E12の構造を下に示す。
【0103】
いくつかの実施形態では、適切な送達賦形剤は、1つまたは複数の非カチオン性脂質を含有する。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は中性脂質、即ち、組成物が製剤化及び/または投与される条件において正味電荷を帯びない脂質である。例示的なかかる非カチオン性または中性脂質は、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPE(1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DPPE(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール))、及びコレステロールから選択することができる。
【0104】
コレステロール系のカチオン性脂質の使用もまた、本発明は意図する。かかるコレステロール系のカチオン性脂質は、単独ででも、または他のカチオン性若しくは非カチオン性脂質と組み合わせても、用いることができる。適切なコレステロール系のカチオン性脂質としては、例えば、DC-Choi(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキシアミドコレステロール)、1,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao,et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991);Wolf et al.BioTechniques23,139(1997);米国特許第5,744,335号)、またはICEが挙げられる。
【0105】
他の実施形態では、適切な脂質ナノ粒子は、米国仮出願第61/494,745号にさらに記載される通り、切断可能なジスルフィド(S-S)官能基を含む、1つまたは複数のカチオン性脂質若しくは化合物(例えば、HGT4001、HGT4002、HGT4003、HGT4004、及びHGT4005)等、1つまたは複数の切断可能な脂質を含み、この文献の教示はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0106】
加えて、トランスフェクション有効性を向上させることができるいくつかの試薬が市販されている。適切な例としては、LIPOFECTIN(DOTMA:DOPE)(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)、LIPOFECTA INE(DOSPA:DOPE)(Invitrogen)、LIPOFECTAMINE2000.(Invitrogen)、FUGENE、TRANSFECTAM(DOGS)、及びEFFECTENEが挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、モル比で、転移賦形剤に存在する全脂質の約1%~約90%、約2%~約70%、約5%~約50%、約10%~約40%、または好ましくは、転移賦形剤に存在する全脂質の約20%~約70%を含んでいてもよい。
【0108】
ポリエチレングリコール(PEG)修飾されたホスホ脂質の使用や、例えば、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-[サクシニル(メトキシポリエチレングリコール)-2000](C8PEG-2000セラミド)等の誘導体化セラミド(PEG-CER)等の誘導体化脂質の使用も本発明は意図し、それは単独で、または好ましくは転移賦形剤(例えば、脂質ナノ粒子)を含む他の脂質と組み合わせて用いる。意図するPEG修飾された脂質としては、以下に限定されないが、長さがC6~20のアルキル鎖で脂質に共有結合する長さが5kDaまでのポリエチレングリコール鎖が挙げられる。かかる成分の添加は、複雑な凝集を防ぐことがあり、また、循環寿命を伸ばし、標的細胞への脂質核酸組成物の送達を増加させる手段も提供することがあり(Klibanov et al.(1990)FEBS Letters,268(1):235-237)、あるいはそれらは、生体内で製剤から外れて急速に交換されるように選択してもよい(米国特許第5,885,613号参照)。
【0109】
特に有用な交換可能脂質は、より短いアシル鎖(例えば、C14またはC18)を有するPEG-セラミドである。本発明のPEG修飾されたホスホ脂質及び誘導体化脂質は、リポソーム性転移賦形剤に存在する全脂質のモル比で約0%~約20%、約0.5%~約20%、約1%~約15%、約4%~約10%、または約2%を含んでいてもよい。
【0110】
本発明はまた非カチオン性脂質の使用を意図する。本明細書で使用される場合、語句「非カチオン性脂質」は、いずれの中性、両性イオン性、またはアニオン性脂質をも指す。本明細書で使用される場合、語句「アニオン性脂質」は、生理的pH等、選ばれたHで正味負電荷を帯びるいくつかの脂質種のいずれをも指す。非カチオン性脂質としては、以下に限定されないが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(phosphatidyethanolamine)(SOPE)、コレステロール、またはその混合物が挙げられる。かかる非カチオン性脂質は単独で用いてもよいが、好ましくは、他の賦形剤、例えば、カチオン性脂質と組み合わせて用いる。カチオン性脂質と組み合わせて用いる場合、非カチオン性脂質は、モル比で、転移賦形剤に存在する全脂質の5%~約90%、または好ましくは約10%~約70%を含む。
【0111】
特定の実施形態では、適切な転移賦形剤(例えば、脂質ナノ粒子)は、多層脂質及び/またはポリマー成分によって調製する。例えば、転移賦形剤は、C12-200、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2Kを40:30:25:5のモル比で、またはDODAP、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2Kを18:56:20:6のモル比で、またはHGT5000、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2Kを40:20:35:5のモル比で、またはHGT5001、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2Kを40:20:35:5のモル比で用いて調製してもよい。それぞれ脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び/またはPEG修飾脂質の選択、及びかかる脂質の相互に対する相対モル比は、選択される脂質の特性、意図する標的細胞の性質、送達するmRNAの特性に基づく。追加的検討事項としては、例えば、アルキル鎖の飽和、及び選択される脂質の大きさ、荷電、pH、pKa、膜融合性(fusogenicity)、及び毒性が挙げられる。このようにして、モル比はそれに応じて調整してもよい。例えば、実施形態では、脂質ナノ粒子中のカチオン性脂質のパーセンテージは、10%より多く、20%より多く、30%より多く、40%より多く、50%より多く、60%より多く、または70%より多くてもよい。脂質ナノ粒子中の非カチオン性脂質のパーセンテージは5%より多く、10%より多く、20%より多く、30%より多く、または40%より多くてもよい。脂質ナノ粒子中のコレステロールのパーセンテージは10%より多く、20%より多く、30%より多く、または40%より多くてもよい。脂質ナノ粒子中のPEG修飾された脂質のパーセンテージは1%より多く、2%より多く、5%より多く、10%より多く、または20%より多くてもよい。
【0112】
所定の実施形態では、本発明の適切な脂質ナノ粒子は次のカチオン性脂質の少なくとも1つを含む:C12-200、DLin-KC2-DMA、DODAP、HGT4003、ICE、HGT5000、またはHGT5001。いくつかの実施形態では、適切な転移賦形剤はコレステロール及び/またはPEG修飾された脂質を含む。いくつかの実施形態では、適切な転移賦形剤はDMG-PEG2Kを含む。いくつかの実施形態では、適切な転移賦形剤は次の脂質の組合せの1つを含む:C12-200、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K;DODAP、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K;HGT5000、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K;HGT5001、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K;XTC、DSPC、コレステロール、PEG-DMG;MC3、DSPC、コレステロール、PEG-DMG;及びALNY-100、DSPC、コレステロール、PEG-DSG。
【0113】
本発明の組成物に用いるリポソーム性転移賦形剤は、当技術分野で現在既知の種々の技術によって調製できる。多層状小胞(MLV)は、従来の技術、例えば、適切な溶媒に脂質を溶解させ、次いで容器の内側で溶媒を蒸発させて薄膜を残留させることによって、またはスプレー乾燥によって、選択した脂質を適切な容器の内壁に堆積させることで、調製してもよい。次いで、MLVの形成を生じさせる渦運動をさせながら水相を容器に加えてもよい。次いで、単層の小胞(ULV)を、多層状の小胞の均質化、超音波処理、または押出しによって形成することができる。加えて、単層の小胞を洗浄剤除去技術によって形成することができる。
【0114】
本発明の所定の実施形態では、本発明の組成物は転移賦形剤を含み、mRNAが転移賦形剤の表面にも会合し、同じ転移賦形剤内にも被包される。例えば、本発明の組成物の調製中、カチオン性リポソーム性転移賦形剤は、静電相互作用を通してmRNAに会合してもよい。例えば、本発明の組成物の調製中、カチオン性リポソーム性転移賦形剤は、静電相互作用を通してmRNAに会合してもよい。
【0115】
本発明による適切なリポソーム性送達賦形剤は種々の大きさで作製してもよい。適切な大きさの選択は、標的細胞または組織の部位と、ある程度までは作製しているリポソームの用途とを考慮に入れてもよい。いくつかの実施形態では、リポソーム性送達賦形剤の適切な大きさを、mRNAによってコードされる抗体の全身的分布を促進するように選択する。いくつかの実施形態では、mRNAのトランスフェクションを所定の細胞または組織に限定することが望ましい場合がある。例えば、リポソーム性転移賦形剤の寸法が、肝臓の肝類洞を覆う内皮層の開窓よりも小さくなるように、リポソーム性転移賦形剤の大きさを標的肝細胞に合わせてもよく;それに従って、リポソーム性転移賦形剤はかかる内皮の開窓を容易に透過して標的肝細胞に達することができる。あるいは、リポソーム性転移賦形剤は、リポソームの寸法が充分な直径をもって所定の細胞または組織への分布を制限するか特に避けるように、大きさを合わせてもよい。例えば、リポソーム性転移賦形剤は、その寸法が、肝類洞を覆う内皮の層の開窓より大きく、それによって肝細胞へのリポソーム性転移賦形剤の分布を制限するように、大きさを合わせてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、適切なリポソーム性送達賦形剤は約250nm(例えば、約225nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、または50nmの範囲)以下の大きさを有する。いくつかの実施形態では、適切なリポソーム性送達賦形剤は、約250~10nmの範囲(例えば、約225~10nm、200~10nm、175~10nm、150~10nm、125~10nm、100~10nm、75~10nm、または50~10nmの範囲)の大きさを有する。いくつかの実施形態では、適切なリポソーム性送達賦形剤は、約250~100nmの範囲(例えば、約225~100nm、200~100nm、175~100nm、150~100nmの範囲)の大きさを有する。いくつかの実施形態では、適切なリポソーム性送達賦形剤は約100~10nmの範囲(例えば、約90~10nm、80~10nm、70~10nm、60~10nm、または50~10nmの範囲)の大きさを有する。
【0117】
リポソーム性転移賦形剤の集団の大きさを調整するには、当技術分野で既知の種々の代替的方法が利用できる。1つのかかる大きさ調整方法が米国特許第4,737,323号に記載され、それは参照により本明細書に援用される。バス(bath)またはプローブ(probe)超音波処理によってリポソーム懸濁液を超音波処理することで、直径約0.05ミクロンよりも小さい小ULVにまで大きさの漸減が生じる。均質化は、大きいリポソームをより小さいものへと分解するのに剪断エネルギーに依存する他の方法である。典型的な均質化の手順では、典型的に約0.1~0.5ミクロンの選ばれたリポソームの大きさが観察されるまで標準的な乳剤ホモジナイザーを通してMLVを再循環する。リポソーム性小胞の大きさは、参照により本明細書に援用されるBloomfield,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,10:421-150(1981)に記載されるように、準電気光散乱(quasi-electric light scattering)(QELS)によって決定してもよい。平均リポソーム直径は、形成されたリポソームの超音波処理によって減らしてもよい。効率的なリポソーム合成を進めるように、間欠的な超音波処理サイクルをQELS評価と交互に行ってもよい。
【0118】
RNAにコードされる抗体の生体内での発現
本発明によれば、本明細書に記載される、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は、完全に構築された所望の抗体が生体内で発現されるように、送達を必要とする対象に、送達賦形剤を用いても用いなくても、送達してよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、mRNAによってコードされる所望の抗体は、対象内で全身的に発現される。このことは、最初に抗体を発現して対象の循環系中に入る細胞または組織から、完全に構築された抗体を分泌することによって達成できる。例えば、抗体をコードするmRNAとリポソーム性賦形剤を含有する本発明の組成物は、肝臓の細胞中に分布し、組成物に含まれるmRNAを肝臓の細胞(例えば、肝細胞)によって送達することと、続いて発現させることとを促進する。標的肝細胞は、完全に構築された所望の抗体を産生し分泌して、抗体の全身性分布を生じさせることができる生物学的「貯留所」または「貯蔵所」として機能することがある。他の実施形態では、肝細胞以外の細胞(例えば、肺、脾臓、心臓、眼球、または中枢神経系の細胞)は、タンパク質産生のための貯蔵所として働き得る。典型的には、貯留所または貯蔵所細胞からの完全に構築された抗体の持続的産生及び分泌によって、効率的な全身的分布が起こる。
【0120】
いくつかの実施形態では、所望の抗体をコードするmRNAが全身的に患者の血清(即ち、血液)中で発現していることが、投与後、1時間より長く、4時間より長く、6時間より長く、12時間より長く、18時間より長く、24時間より長く、30時間より長く、36時間より長く、42時間より長く、48時間より長く、54時間より長く、60時間より長く、66時間より長く、72時間より長く、96時間より長く、120時間より長く、144時間より長く、168時間より長く、2週間より長く、3週間より長く、1ヶ月より長く、または2ヶ月より長く検出できる。いくつかの実施形態では、mRNAによってコードされる抗体の血清濃度は、投与後、約6時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間、78時間、84時間、90時間、または96時間でピークレベルに達する。いくつかの実施形態では、mRNAによってコードされる所望の抗体の持続的循環が観察される。例えば、mRNAによってコードされる抗体が全身的に患者の血清(即ち、血液)中で発現していることが、投与後、1日、2日、3日、4日、5日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、またはそれ以上より長く検出されることがある。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAは、抗体の細胞内発現または局所的分布のために標的細胞または組織に送達してもよい。典型的には、完全に構築された抗体が、血流等、循環系に入ることなく標的細胞から回りの細胞外液へと産生され分泌されるときに局所的分布が起こる。本明細書で使用される場合、用語「標的細胞」または「標的組織」は、抗体をコードするmRNAが向かい目指すことになる細胞または組織を指す。例えば、mRNAを肝細胞へ送達することが望まれる場合は、肝細胞が標的細胞となる。本明細書に記載の、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は、種々の標的細胞または組織、例えば、以下に限定されないが、肝細胞、上皮細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉系細胞、神経細胞(例えば、髄膜、星状細胞、運動ニューロン、後根神経節及び前角運動ニューロンの細胞)、光受容体細胞(例えば、杆体錐体)、網膜色素性上皮細胞、分泌性細胞、心臓細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、β細胞、下垂体細胞、滑膜表層細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、及び腫瘍細胞に送達してもよい。
【0122】
標的細胞または組織へのmRNAの送達は、受動的と能動的の両方のターゲティング手段によって達成してもよい。受動的ターゲティングの現象は、標的細胞による転移賦形剤の認識を向上させる追加的賦形剤または手段の使用に頼ることなく生体内における転移賦形剤の自然な分布パターンを活用する。例えば、細網内皮系の細胞による食作用を受ける転移賦形剤は、肝臓または脾臓に蓄積しやすく、したがって、かかる標的細胞への組成物の送達を受動的に導く手段を提供することがある。
【0123】
あるいは、標的細胞または組織へのmRNAの送達は、能動的ターゲティングによって達成してもよく、これは、転移賦形剤に(共有結合か非共有結合のいずれかで)結合して所定の標的細胞または標的組織でかかる転移賦形剤の局在化を促進し得る、「ターゲティングリガンド」と本明細書では称される追加的賦形剤の使用を伴う。例えば、ターゲティングは、転移賦形剤中または転移賦形剤上に1つまたは複数の内在ターゲティングリガンド(例えば、アポリポタンパク質E)を包接することを介して、標的細胞または組織への分布を促進してもよい。標的組織によるターゲティングリガンドの認識は、標的細胞及び組織中における転移賦形剤及び/またはその含有物の組織分布と細胞取り込みとを積極的に促進する(例えば、転移賦形剤中または転移賦形剤上にアポリポタンパク質Eターゲティングリガンドを包接することは、肝細胞によって発現する内在性低密度リポタンパク質受容体に転移賦形剤が認識され結合することを促進する)。本明細書に記載される通り、本組成物は、標的細胞への組成物の親和性を高めることができるリガンドを含むことができる。ターゲティングリガンドは、製剤化中または製剤化後に脂質粒子の外側二重層に結合してもよい。これらの方法は、当技術分野で周知である。加えて、いくつかの脂質粒子製剤は、膜融合ポリマー、例えば、PEAA、赤血球凝集素、他のリポペプチド(米国特許出願第08/835,281号及び第60/083,294号を参照のこと、これらの文献は参照により本明細書に援用される)、並びに生体内及び/または細胞内送達に有用な特徴をもった別のものを用いてもよい。他のいくつかの実施形態では、本発明の組成物は、トランスフェクション有効性の改善、及び/または関心の標的細胞または組織に対する選択性の向上を実証する。したがって、標的細胞または組織に対する組成物及びその含有核酸の親和性を向上させることができる1つまたは複数のリガンド(例えば、ペプチド、アプタマー、オリゴヌクレオチド、ビタミン、または他の分子)を含む組成物が意図される。適切なリガンドは、任意で、転移賦形剤の表面に結合または連結してもよい。いくつかの実施形態では、ターゲティングリガンドは、転移賦形剤の表面を覆っても、転移賦形剤の中に被包してもよい。適切なリガンドは、そして、その物理的、化学的、または生物学的特性(例えば、標的細胞表面標識または特徴の選択的親和性及び/または認識)に基づいて選択される。細胞特異的標的部位及びその対応するターゲティングリガンドは幅広く種々にわたる。適切なターゲティングリガンドは、標的細胞に特有の特徴を利用して、そうして組成物が標的細胞と非標的細胞を区別することができるように選択される。例えば、本発明の組成物としては、肝細胞の認識または肝細胞に対する親和性を選択的に向上させる表面標識(例えば、アポリポタンパク質Bまたはアポリポタンパク質E)(その向上は、例えば、かかる表面標識の認識及びかかる表面標識への結合を受容体を介して行うことによる)が挙げられる。加えて、ガラクトースをターゲティングリガンドとして用いると、本発明の組成物を肝実質細胞へ向かわせると考えられ、あるいは、糖残基を含有するマンノースをターゲティングリガンドとして用いると、本発明の組成物を肝臓内皮の細胞へ向かわせると考えられる(例えば、肝細胞に存在するアシアロ糖タンパク質受容体またはマンノース受容体に優先的に結合し得る、糖残基を含有するマンノース)。(Hillery AM, et al.“Drug Delivery and Targeting: For Pharmacists and Pharmaceutical Scientists”(2002)Taylor & Francis,Inc.を参照のこと)。転移賦形剤(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する成分に接合されたかかるターゲティングリガンドの提示は、したがって、標的細胞及び組織における本発明の組成物の認識及び取り込みを促進する。適切なターゲティングリガンドの例としては、1つまたは複数のペプチド、タンパク質、アプタマー、ビタミン、及びオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0124】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、いずれの動物(例えば、哺乳動物)をも指し、以下に限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、及びその類似動物が挙げられ、それに本発明のmRNA及び組成物が投与される。典型的には、用語「対象」及び「患者」は、本明細書ではヒト対象に関連して互換的に用いられる。
【0125】
医薬組成物及び投与
生体内で抗体の発現を促進するために、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)及び送達賦形剤は、1つまたは複数の追加的核酸、担体、ターゲティングリガンド、若しくは安定化試薬と組み合わせて、または薬理学的組成物中で適切な賦形剤と混合して、製剤化することができる。薬物の製剤化及び投与の技術は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,最新版、に見ることができる。
【0126】
抗体をコードするmRNA及びそれを含有する組成物は、対象の臨床症状、投与の部位と方法、投与の日程計画、対象の年齢、性別、体重、及び臨床家の当業者にとって妥当な他の要素を考慮に入れて、現行の医療慣行に従って投与及び服用してもよい。本明細書に記載の目的のための「有効量」は、実験的臨床研究、薬理学的、臨床的、及び医学的な技術分野の当業者に既知となっているような妥当な検討事項によって決定してもよい。いくつかの実施形態では、投与される量は、疾患の進行、後退、または改善の適切な尺度として当業者によって選択される症状及び他の指標の、少なくともいくらかの安定化、改善、または解消を達成するのに有効である。例えば、適切な量と投与計画は、少なくとも一過性的抗体産生を起こすものである。
【0127】
適切な投与経路としては、例えば、経口投与、直腸内投与、膣内投与、経粘膜投与、気管内投与若しくは吸入投与等の経肺投与、または腸内投与;非経口的送達、例えば、筋肉内注射、皮下注射、髄内注射、及び、髄腔内注射、直接脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射が挙げられる。
【0128】
あるいは、本発明のmRNA及び組成物は、全身的な方法よりはむしろ局所的な方法で、例えば、標的とする組織の中へ直接医薬組成物を注射することにより、好ましくは持続的放出製剤形態で、投与してもよい。局所的送達は、どの組織を標的とするかによって、様々な影響の受け方をすることがあり得る。例えば、本発明の組成物を含有するエアロゾルは、(鼻、気管、または気管支からの送達のために)吸入することができ;本発明の組成物は、例えば、傷害、疾患発現、または疼痛の部位に注射することができ;組成物は、口、気管、または食道からの適用のために菓子錠剤で提供することができ;胃または腸への投与のために液体、錠剤、またはカプセルの形式で供給することができ;直腸内または膣内の適用のために坐薬形式で供給することができ;または、クリーム、ドロップ、または注射の使用によって目に送達することさえできる。本発明の組成物を治療分子またはリガンドとともに複合体にして含有する製剤は、例えば、組成物が移入部位から周囲の細胞に拡散することを可能にできるポリマーや他の構造物または物質に付随させて、外科的に投与することさえできる。あるいは、それらはポリマーも支持体も使用なしで外科的に適用することができる。
【0129】
一実施形態では、本発明の組成物は、そこに含有されるmRNAの持続放出に適切となるように製剤化される。かかる持続放出組成物は、投与間隔を伸ばして対象に投与してもよく便利である。例えば、一実施形態では、本発明の組成物は、1日に2回、1日に1回、または隔日に、対象に投与する。一好適実施形態では、本発明の組成物は、1週間に2回、1週間に1回、10日ごと、2週間ごと、3週間ごと、またはより好ましくは4週間ごと、1ヶ月に1回、6週間ごと、8週間ごと、隔月、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、6ヶ月ごと、8ヶ月ごと、9ヶ月ごと、または1年ごとに、対象に投与される。また、長期間にわたってmRNAが送達または放出できるよう、貯蔵所投与(例えば、筋肉内、皮下、硝子体内)を目的として製剤化される組成物及びリポソーム性賦形剤も意図する。好ましくは、用いられる持続放出手段は、mRNAに行われる修飾と組み合わせて、安定性を高める。
【0130】
また、本明細書では意図するのは、本明細書に開示のリポソーム性ナノ粒子の1つまたは複数を含む凍結乾燥した医薬組成物と、例えば、2011年6月8日出願の米国仮出願第61/494,882号に開示の、かかる凍結乾燥した組成物の使用のための関連方法とであり、その文献の教示はその全体が参照により本明細書に援用される。例えば、本発明による凍結乾燥した医薬組成物は、投与前に再構成してもよく、生体内で再構成することができる。例えば、凍結乾燥した医薬組成物は、適切な剤形(例えば、ディスク、棒、または膜等の皮内投与剤形)に製剤化することができ、剤形が個体の体液によって生体内で時間とともに再水和されるように投与することができる。
【0131】
RNAによってコードされる抗体の生体外での発現
いくつかの実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は、生体外で抗体を産生するために用いてもよい。例えば、細胞を、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)によってトランスフェクトし、細胞による抗体の産生を可能とする細胞培養条件下で培養してもよい。いくつかの実施形態では、抗体は細胞内で発現される。他の実施形態では、抗体は、それが上清から採取されるように、細胞によって分泌される。
【0132】
いくつかの実施形態では、哺乳動物の細胞が本発明に従って用いられる。哺乳類細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/1,ECACC No:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6,CruCell,オランダ,ライデン);SV40(COS-7,ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胎生腎株(HEK293、または懸濁培養液中で成長するようサブクローニングされた293細胞,Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59,1977);ヒト線維肉腫細胞株(例えば、HT1080);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK21,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO,Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216,1980);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76,ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頚がん細胞(HeLa,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(HepG2,HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68,1982);MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞腫株(Hep G2)が挙げられる。
【0133】
標準的な細胞培地及び条件を用いて、トランスフェクト細胞を培養し、mRNAがコードする所望の抗体を産生させることができる。
【実施例】
【0134】
実施例1 mRNAの産生
抗ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2の重鎖(HC-αCCL2、配列番号1)及び抗CCL2の軽鎖(LC-αCCL2、配列番号2)を、遺伝子をコードするプラスミドDNA鋳型から生体外転写することによって合成し、続いて、既知の方法(Fechter,P.;Brownlee,G.G.“Recognition of mRNA cap structures by viral and cellular proteins”J.Gen.Virology 2005,86,1239-1249を参照のこと)に従って5’キャップ構造(Cap1)を付加し、さらに、長さがゲル電気泳動で測定して約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)尾部を付加した。HC-αCCL2及びLC-αCCL2に対する配列は下に示す通りであり、各mRNA産生物に存在する5’及び3’非翻訳領域は、それぞれX及びYとして表し、下に定義する:
抗CCL2(HC-αCCL2)重鎖mRNA:
【化5】
抗CCL2(LC-αCCL2)軽鎖mRNA:
【化6】
5’及び3’UTR配列:
X
1=
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGACCUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCCGGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAGUGACUCACCGUCCUUGACACG
Y
1=
CGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU
【0135】
実施例2 生体外mRNAトランスフェクション材料及び条件
A.例示的脂質材料
本明細書の実施例においてトランスフェクションに用いられる脂質製剤は、1つ若しくは複数の脂質からか、または、種々の核酸系材料を被包するよう設計された1つ若しくは複数のカチオン性脂質、ヘルパー脂質、及びペグ化脂質を種々の比で用いた多成分脂質混合物からなるものであった。カチオン性脂質としては(他を排除しないが)、DOTAP(1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DODAP(1,2-ジオレイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DLinDMA(Heyes,J.;Palmer,L.;Bremner,K.;MacLachlan,I.“Cationic lipid saturation influences intracellular delivery of encapsulated nucleic acids”J.Contr.Rel.2005,107,276-287を参照のこと)、DLin-KC2-DMA(Semple,S.C.et al.“Rational Design of Cationic Lipids for siRNA Delivery”Nature Biotech.2010,28,172-176を参照のこと)、C12-200(Love,K.T.et al.“Lipid-like materials for low-dose in vivo gene silencing”PNAS 2010,107,1864-1869)、HGT4003、ICE、ジアルキルアミノ-系、イミダゾール系、グアニジウム系等が挙げられる。ヘルパー脂質としては(他を排除しないが)、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPE(1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DPPE(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOPG(2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール))、コレステロール等が挙げられる。ペグ化脂質は(他を排除しないが)、C6~C20の長さのアルキル鎖をもった脂質に共有結合した、長さが最大5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖を含むことができる。
【0136】
B.実験的製剤
これらの実験において、C12-200、DOPE、コレステロール、及びDMG-PEG2Kの50mg/mLエタノール溶液のアリコートを混合させ、エタノールで希釈して最終体積3mLとした。別途、HC-αCCL2のmRNA及びLC-αCCL2のmRNA(重量:重量で1:1)mRNAの水性緩衝液(10mMのクエン酸/150mMのNaCl、pH4.5)を、500マイクログラムの各構築物を1mg/mLの原液から添加することによって調製した。脂質溶液を水性mRNA溶液に素早く注入して振盪すると、20%エタノール中最終懸濁液が得られた。得られたナノ粒子懸濁液をろ過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーション(diafiltrate)し、濃縮し、2~8℃で保管した。最終濃度=1.35mg/mL αCCL2 mRNA(被包)。Zave=89.2nm(Dv(50)=64.0nm;Dv(90)=115nm)。
【0137】
実施例3 生体外mRNAトランスフェクション後の抗体の検出
A.ELISAによる
この実施例では、F96 MaxiSorp Nunc-Immuno Platesに、pH9.6の炭酸ナトリウム緩衝液中1μg/mlのヤギ抗マウスIgG1(Invitrogen A10538)100μlをコーティングし、37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%トウィーン20)で3回洗浄した後、37℃で1時間、ウェルをブロッキング緩衝液(1×PBS、0.05%トウィーン20、2%BSA)320μlでブロッキングした。モノクローナルIgG標準物質の系列希釈物を、250~0ng/mlの範囲でブロッキング緩衝液中に調製した。試料の系列希釈物を、標準曲線(1:100~1:10,000)の範囲に入るようブロッキング緩衝液中に調製した。試料と標準の両方を37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG Fc HRP接合2次抗体(Pierce 31439)を1:40,000の希釈で用い、37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、TMB EIA基質試薬を、製造者の指示に従って調製した。37℃で15分間インキュベーションした後、2N H2SO4を加えて反応を停止し、プレートを450nmで読み取った。
【0138】
B.ウエスタンブロットによる
この実施例では、トランスフェクト293T細胞または電気穿孔HCL2細胞からの馴化培地をSDS-PAGEによって分画し、製造者(Invitrogen)の指示に従い転写装置を用いてポリフッ化ビニリデン膜に転写した。TBST(10mMトリス、pH8.0、150mM NaCl、0.5%トウィーン20)中5%脱脂粉乳で1時間インキュベーションした後、膜をPBSTで3回洗浄し、室温で1時間、ヤギ抗マウスIgG1(Invitrogen A10538)でインキュベートした。膜をPBST中3回洗浄し、西洋わさびペルオキシダーゼ接合抗マウス二次抗体(Promega W4021)の1:5000の希釈物で、室温で1時間インキュベートした。ブロットをPBSTでさらに3回洗浄し、製造者の指示に従ってECLシステム(Amersham Bioscience)で現像した。
【0139】
実施例4 HC-αCCL2及びLC-αCCL2のトランスフェクションから産生されたαCCL2抗体の生体外分析
HC-αCCL2とLC-αCCL2の両方のmRNAを実施例1に上述した通り産生させた。続いて、実施例2A及びBに従って、HC-αCCL2及びLC-αCCL2のmRNAを、既知の方法に従って、種々の比(重量:重量)でHCL1(即ち、ヒト細胞株1)細胞またはHCL2細胞にトランスフェクトした。
【0140】
HCL1細胞及びHCL2細胞に対するこれらの試験の結果を
図1及び2にそれぞれ示す。α-CCL2(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2)重鎖及び軽鎖のmRNA構築物の種々の混合物を混合し(重量:重量)、HCL1細胞(
図1)またはHCL2細胞(
図2)にトランスフェクトした。細胞上清をトランスフェクション後の選択した時点で採取し、実施例3Aに上述した通り、ELISAに基づく方法を用いて抗マウスIgGがあるかどうか分析した。
【0141】
図1及び2に示す通り、軽鎖に対する重鎖の比(重量:重量)を変えると、ELISAによって測定したタンパク質産生に有意差が生じた。α-CCL2のmRNAにおける重鎖:軽鎖が1:1(重量:重量)の混合物はHCL2細胞に強いシグナルをもたらし、4:1(重量:重量)の比はHCL1細胞にタンパク質産生の向上をもたらした。比の違いによって差はあったが、試験した全ての比で強力なタンパク質産生を観察した。さらに、両方の場合とも、トランスフェクション後48時間(2日目(Day2)、または2日目(D2))で、所望のタンパク質にこの実施例中最も強力なシグナルが得られた。
【0142】
外因性mRNA由来抗体の存在をさらに確認するために、免疫ブロット(ウエスタン)手法を用いて、HCL1由来試料の追加的特性決定を行った(
図3参照)。実施例3Bに記載のウエスタンブロット法を用いて、重鎖及び軽鎖の断片を、mRNAトランスフェクトHCL1細胞の上清中に検出することに成功した。α-CCL2重鎖mRNA構築物及び軽鎖mRNA構築物(重量:重量)の種々の混合物のトランスフェクションの24時間後及び48時間後に試料を分析した。観察した吸収帯強度は各実施例で用いられたmRNA比を反映した。
【0143】
実施例5 静脈内投与したmRNA挿入ナノ粒子から産生されたαCCL2抗体の生体内分析
この実施例では、完全に処理された抗体の産生を外因性メッセンジャーRNAの送達によって生体内で達成し、詳しくは、α-CCL2重鎖及び軽鎖それぞれのmRNA構築物(HC-αCCL2のmRNA:LC-αCCL2のmRNAが1:1(重量:重量))を実施例2Aに記載の通りにカチオン性脂質ナノ粒子に被包して、単回ボーラス静脈内注射としてマウスに送達した。
【0144】
手短に言えば、各実験の開始時に約6~8週齢であったCD-1雄マウスを用いた。被包したHC-αCCL2のmRNA及びLC-αCCL2のmRNA(重量:重量で1:1)の試料を、30マイクログラムの等価全用量を単回ボーラス尾静脈注射することによって導入した。マウスを屠殺し、複数の所定の時点で食塩水で灌流した。
【0145】
各マウスの肝臓及び脾臓を採取し、3分割し、10%中性緩衝液ホルマリンに保管するかまたは瞬間凍結し(snap-frozen)、分析用として-80℃で保管した。
【0146】
全ての動物を、用量投与後複数の所定の時点でCO2による窒息で安楽死させ、続いて、開胸と終末部心血液収集(terminal cardiac blood collection)を行った。安楽死させた動物に心穿刺をして全血を(得られるだけ最大の量で)血清分離管中に収集し、常温で少なくとも30分間凝血させ、9300g、22℃±5℃で10分間遠心分離し、血清を抽出した。暫定的血液収集として、約40~50μLの全血を顔面静脈穿刺または尾部切断によって収集した。未処理動物から収集した試料を、試験動物との比較のため、ベースラインレベルとして用いた。
【0147】
αCCL2抗体の産生のELISA分析のため、F96 MaxiSorp Nunc-Immuno Plateに、pH9.6の炭酸緩衝液中、1mg/mlのMCP-1組換えウサギ精製モノクローナル抗体100mlをコーティングし、37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%トウィーン20)で3回洗浄した後、37℃で1時間、ウェルをブロッキング緩衝液(1×PBS、0.05%トウィーン20、2%BSA)320mlでブロッキングした。約100ng/mlのMCP-1ヒトまたはマウス組換えタンパク質を各ウェルに加えて、37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、試料の系列希釈物(1:5~1:200)を加えて、37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄し、ヤギ抗マウスIgG Fc HRP接合二次抗体を1:40,000の希釈で使用し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、製造者の指示に従ってTMB EIA基質試薬を調製した。37℃で15分間インキュベートした後、2N H2SO4を加えて反応を停止し、プレートを450nmで読み取った。
【0148】
処理したマウスの血清レベルを投与後の選ばれた時点(6時間後、24時間後、48時間後、72時間後)で監視した。マウス血清に存在する完全に形成されたα-ヒトCCL2抗体のレベルを、ELISAに基づく方法を用いて定量化した(
図4参照)。所望の外因性α-CCL2 mRNA由来抗体に、投与後6時間以内に顕著な増加が、24時間後にピークが観察できる。
【0149】
実施例6 生体内α-VEGF抗体産生
この実施例では、完全に処理されたα-VEGF抗体の産生を、外因性メッセンジャーRNAの送達によって生体内で達成した。
【0150】
HC-αVEGF及びLC-αVEGFの配列は下に示す通りであり、各mRNA産生物に存在する5’及び3’非翻訳領域は、それぞれX及びYとして表し、下に定義する:抗VEGF(HC-αVEGF)重鎖mRNA:
【化7】
抗VEGF(LC-αVEGF)軽鎖mRNA:
【化8】
5’及び3’UTR配列:
X
1(5’UTR配列)=
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGACCUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCCGGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAGUGACUCACCGUCCUUGACACG
Y
1(3’UTR配列)=
CGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU
【0151】
α-VEGF重鎖及び軽鎖のmRNA構築物(HC-αVEGFのmRNA:LC-αVEGFのmRNAが1:1(重量:重量))を下に記載の通りにカチオン性脂質ナノ粒子に被包した。
【0152】
これらの実験において、cKK-E12、DOPE、コレステロール、及びDMG-PEG2Kの50mg/mLエタノール溶液のアリコートを混合させ、エタノールで希釈して最終体積3mLとした。別途、HC-αCVEGFのmRNA及びLC-αVEGFのmRNA(重量:重量で1:1)mRNAの水性緩衝液(10mMのクエン酸/150mMのNaCl、pH4.5)を、1mg/mLの原液から各構築物を500マイクログラム添加して調製した。脂質溶液を水性mRNA溶液に素早く注入して振ると、20%エタノール中最終懸濁液が得られた。得られたナノ粒子懸濁液をろ過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーション(diafiltrate)し、濃縮し、2~8℃で保管した。最終濃度=0.20mg/mL αVEGF mRNA(被包)。Zave=81.0nm(PDI=0.16)。
【0153】
HC-α-VEGF及びLC-α-VEGFのmRNAを挿入した脂質ナノ粒子を、1.0mg/kgの用量で単回静脈内尾静脈注射または皮下注射によって野生型マウスに送達し、血清中の抗VEGF抗体の産生をELISAによって時間の経過に対して監視した。
【0154】
手短に言えば、各実験の開始時に約6~8週齢であったCD-1雄マウスを用いた。被包したHC-α-VEGFのmRNA及びLC-α-VEGFのmRNA(重量:重量で1:1)の試料を、1.0mg/kg(約30マイクログラム)の等価全用量を単回ボーラス尾静脈注射することによって導入した。マウスを屠殺し、複数の所定の時点(投与後0.50時間、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間)で、食塩水で灌流した。
【0155】
全ての動物を、用量投与後複数の所定の時点でCO2による窒息で安楽死させ、続いて、開胸と終末部心血液収集(terminal cardiac blood collection)を行った。安楽死させた動物に心穿刺をして全血を(得られるだけ最大の量で)血清分離管中に収集し、常温で少なくとも30分間凝血させ、9300gで、22℃±5℃で10分間遠心分離し、血清を抽出した。暫定的血液収集として、約40~50μLの全血を顔面静脈穿刺または尾部切断によって収集した。未処理動物から収集した試料を、試験動物との比較のため、ベースラインレベルとして用いた。
【0156】
α-VEGF抗体産生のELISA分析のため、F96 MaxiSorp Nunc-Immuno Plateに、コーティング緩衝液(50mM NaHCO
3、pH9.6)中0.50マイクログラム/mL/ウェルの組換えヒトVEGFタンパク質(Invitrogen #PHC9391)100マイクロリットルをコーティングした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、ウェルを、ブロッキング緩衝液(1×DPBS、2%BSA、0.05%トウィーン-20)を用いて37℃で1時間ブロッキングした。上述同様さらに洗浄した後、注射されたマウスから収集したマウス血清を各ウェルに加え、ウサギ抗ヒトIgG Fc HRP(Pierce #PA-28587)接合二次抗体を1:10,000の希釈で使用し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄し、TMB EIA基質試薬を製造者の指示に従って調製した。37℃で10分間インキュベートした後、2N H
2SO
4を加えて反応を停止し、プレートを450nmで読み取った。処理したマウスの血清レベルを投与後の選ばれた時点(例えば、0.5時間、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、8日、及び15日)で監視した。
図5は、HC-α-VEGFのmRNA及びLC-α-VEGFのmRNAを挿入したナノ粒子の単回投与の後に野生型マウスの血清中に検出したα-VEGF抗体を表す例示的結果を示す。外因性α-VEGFのmRNAに由来する所望の抗体に、投与後6時間以内に顕著な増加が、24時間後にピークが観察でき、α-VEGFのmRNAの単回投与の2週間後にまで継続した。
図6は、
図5と同じ例示的結果であるが、特定のマウス番号によってプロットしたものを示す。
図7は、静脈内または皮下注射したマウスの血清中にその24時間後に存在するα-VEGF抗体のレベルの比較を示す。
【0157】
この実施例は、mRNAに基づく治療が効果的な生体内抗体産生に使用できることのさらなる確認を提供する。
【0158】
同等事物及び範囲
当業者は、本明細書に記載する発明の具体的な実施形態の多くの同等事物を認識し、単に日常的実験を用いてそれを確認することができるものである。本発明の範囲は、上記明細書に限定されることを意図されておらず、より正確には次の特許請求の範囲に明記する通りである。
例えば、本発明の特定の実施形態では、以下の項目が提供される。
(項目1)
生体内における抗体の送達方法であって、前記方法は抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つまたは複数のmRNAを、送達を必要とする対象に投与することを含み、前記抗体が前記対象内に全身的に発現される、前記方法。
(項目2)
前記1つまたは複数のmRNAが、前記抗体の前記重鎖をコードする第1のmRNAと前記抗体の前記軽鎖をコードする第2のmRNAとを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約10:1~1:10の範囲の比で存在する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約4:1~1:4の範囲の比で存在する、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約4:1の比で存在する、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが1より大きい比で存在する、項目2~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約1:1の比で存在する、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記1つまたは複数のmRNAが、前記抗体の前記重鎖及び前記軽鎖の両方をコードする単一のmRNAを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目9)
前記抗体の前記重鎖及び前記軽鎖をコードする前記1つまたは複数のmRNAが1つまたは複数のリポソームに被包される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが別々のリポソームに被包される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが同じリポソームに被包される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記1つまたは複数のリポソームは、カチオン性脂質、中性脂質、コレステロール系脂質、及びPEG修飾された脂質の1つまたは複数を含む、項目9~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記1つまたは複数のリポソームは約150nm以下の大きさを有する、項目9~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記1つまたは複数のリポソームは約100nm以下の大きさを有する、項目9~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記1つまたは複数のリポソームは約75nm以下の大きさを有する、項目9~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記1つまたは複数のmRNAが、安定性を高めるように修飾されている、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記1つまたは複数のmRNAが、修飾ヌクレオチド、キャップ構造、ポリA尾部、5’非翻訳領域、及び/または3’非翻訳領域を含むように修飾されている、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記1つまたは複数のmRNAが無修飾である、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記1つまたは複数のmRNAが静脈内投与される、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記1つまたは複数のmRNAが腹腔内投与される、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記抗体の前記全身的発現が、投与後少なくとも約6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、または120時間で検出可能である、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記抗体が無傷免疫グロブリン、(Fab)2、(Fab’)2、Fab、Fab’、またはscFvである、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記抗体がIgGである、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記抗体が抗CCL2、抗リシルオキシダーゼ様-2(LOXL2)、抗Flt-1、抗TNF-α、抗インターロイキン-2Rα受容体(CD25)、抗TGFβ、抗B-細胞活性化因子、抗アルファ-4インテグリン、抗BAGE、抗β-カテニン/m、抗Bcr-abl、抗C5、抗CA125、抗CAMEL、抗CAP-1、抗CASP-8、抗CD4、抗CD19、抗CD20、抗CD22、抗CD25、抗CDC27/m、抗CD30、抗CD33、抗CD52、抗CD56、抗CD80、抗CDK4/m、抗CEA、抗CT、抗CTL4、抗Cyp-B、抗DAM、抗EGFR、抗ErbB3、抗ELF2M、抗EMMPRIN、抗EpCam、抗ETV6-AML1、抗HER2、抗G250、抗GAGE、抗GnT-V、抗Gp100、抗HAGE、抗HER-2/neu、抗HLA-A*0201-R170I、抗IGF-1R、抗IL-2R、抗IL-5、抗MC1R、抗ミオシン/m、抗MUC1、抗MUM-1、-2、-3、抗プロテイナーゼ-3、抗p190マイナーbcr-abl、抗Pml/RARα、抗PRAMS、抗PSA、抗PSM、抗PSMA、抗RAGE、抗RANKL、抗RU1またはRU2、抗SAGE、抗SART-1または抗SART-3、抗サバイビン、抗TEL/AML1、抗TPI/m、抗TRP-1、抗TRP-2、抗TRP-2/INT2、抗VEGF、及び抗VEGF受容体からなる群より選択される、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
抗体の産生方法であって、前記方法は抗体の重鎖をコードする第1のmRNAと抗体の軽鎖をコードする第2のmRNAとを細胞に投与することを含み、前記抗体が前記細胞によって産生される、前記方法。
(項目26)
前記細胞が哺乳動物細胞である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記細胞がヒト細胞である、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
前記細胞が培養細胞である、項目25~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記細胞が生体内の細胞である、項目25~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記抗体が細胞内に発現される、項目25~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記抗体が前記細胞によって分泌される、項目25~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約10:1~1:10の範囲の比で存在する、項目25~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約4:1~1:4の範囲の比で存在する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約4:1の比で存在する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが1より大きい比で存在する、項目25~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約1:1の比で存在する、項目25~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが1つまたは複数のリポソームに被包される、項目25~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記第1のmRNAと前記第2のmRNAとが別々のリポソームに被包される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記第1のmRNAと前記第2のmRNAとが同じリポソームに被包される、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記1つまたは複数のリポソームは、カチオン性脂質、中性脂質、コレステロール系脂質、及びPEG修飾脂質の1つまたは複数を含む、項目37~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
抗体の重鎖をコードする第1のmRNAと軽鎖をコードする第2のmRNAとを含み、前記第1のmRNAと前記第2のmRNAとが1つまたは複数のリポソームに被包される、組成物。
(項目42)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約10:1~1:10の範囲の比で存在する、項目41に記載の組成物。
(項目43)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約4:1~1:4の範囲の比で存在する、項目42に記載の組成物。
(項目44)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約4:1の比で存在する、項目43に記載の組成物。
(項目45)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが1より大きい比で存在する、項目41~44のいずれか一項に記載の組成物。
(項目46)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが約1:1の比で存在する、項目41~44のいずれか一項に記載の組成物。
(項目47)
前記重鎖をコードする前記第1のmRNAと前記軽鎖をコードする前記第2のmRNAとが1つまたは複数のリポソームに被包される、項目41~46のいずれか一項に記載の組成物。
(項目48)
前記第1のmRNAと前記第2のmRNAとが別々のリポソームに被包される、項目47に記載の組成物。
(項目49)
前記第1のmRNAと前記第2のmRNAとが同じリポソームに被包される、項目47に記載の組成物。
(項目50)
前記1つまたは複数のリポソームは、カチオン性脂質、中性脂質、コレステロール系脂質、及びPEG修飾脂質の1つまたは複数を含む、項目41~49のいずれか一項に記載の組成物。
(項目51)
前記1つまたは複数のリポソームが約250nm、225nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、または50nm以下の大きさを有する、項目41~50のいずれか一項に記載の組成物。
【配列表】