(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】筒状構造物の解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20220415BHJP
E04G 1/36 20060101ALI20220415BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
E04G23/08 J
E04G23/08 D
E04G23/08 Z
E04G1/36 302E
E04G3/24 301D
(21)【出願番号】P 2018122810
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下迫 徹
(72)【発明者】
【氏名】木下 賢人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 弘修
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-299290(JP,A)
【文献】特開2004-76256(JP,A)
【文献】特開2010-121394(JP,A)
【文献】特開平3-290566(JP,A)
【文献】特開2018-145622(JP,A)
【文献】特開2012-127103(JP,A)
【文献】特開昭59-224772(JP,A)
【文献】特開平6-264626(JP,A)
【文献】特開平1-116159(JP,A)
【文献】特開昭62-112866(JP,A)
【文献】特開2017-197971(JP,A)
【文献】特開2004-36158(JP,A)
【文献】特開昭62-94659(JP,A)
【文献】特開2009-249808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E04G 1/36
E04G 3/24
E04H 12/34
E04H 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状構造物の解体方法であって、
上記筒状構造物の内周側に足場を設ける足場組工程と、
上記筒状構造物の上部を内周側から輪切りに切断する切断工程と、
上記筒状構造物の輪切りされた切断部分を吊り上げて地上に降下させる切断部分降下工程と、
上記足場の上部部分を地上に降下させる足場降下工程と、
を有することを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項2】
請求項1の筒状構造物の解体方法であって、
上記切断工程は、上記足場の作業床よりも高い位置で上記筒状構造物を切断することを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項3】
請求項1および請求項2のうち何れか1項の筒状構造物の解体方法であって、
上記切断工程は、上記筒状構造物の壁面に複数の貫通孔を形成した後、上記複数の貫通孔にワイヤソーのワイヤを通して切断することを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の筒状構造物の解体方法であって、
上記切断工程は、上記筒状構造物の内周側から切断部分に冷却水を供給する工程を有することを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか1項の筒状構造物の解体方法であって、
上記切断部分降下工程は、上記筒状構造物の壁面に形成された貫通孔の上部内周側に吊り上げ部材を掛けて吊り上げることを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか1項の筒状構造物の解体方法であって、
上記足場降下工程は、上記上部部分を吊り上げて地上に降下させることを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項7】
筒状構造物の解体方法であって、
上記筒状構造物の上部を請求項1から請求項6の解体方法の少なくとも1つによって解体し、
上記筒状構造物の下部を重機によって解体することを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突などの筒状構造物を解体する筒状構造物の解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
煙突などの筒状構造物を解体する技術として、筒状構造物の外周面に面接触するバンドに着脱自在に取り付けた作業足場を用いて、上記筒状構造物を解体する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、煙突に周設された作業床を備える煙突解体用足場を用い、コンクリートブレーカ等により煙突をはつって、コンクリートブロック片を煙突の内側に落下させ、解体する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-170376号公報
【文献】特開2017-31681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、煙突の外周部に足場を設けてコンクリートをはつる作業などをすると、騒音や粉塵、落下物などの周辺環境への影響が生じやすくなる。また、台風や強風、突風が生じるなどの場合には、作業が困難になる。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、周辺環境への影響を少なく抑えたり、作業性や安全性を高めたりできるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
筒状構造物の解体方法であって、
上記筒状構造物の内周側に足場を設ける足場組工程と、
上記筒状構造物の上部を内周側から輪切りに切断する切断工程と、
上記筒状構造物の輪切りされた切断部分を吊り上げて地上に降下させる切断部分降下工程と、
上記足場の上部部分を地上に降下させる足場降下工程と、
を有することを特徴とする。
【0008】
これにより、煙突切断作業を煙突内部で行うことができるので、周辺環境への影響を少なく抑えたり、作業性や安全性を高めたりすることが容易にできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周辺環境への影響を少なく抑えたり、作業性や安全性を高めたりすることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】煙突内に足場が設けられた状態を示す縦断面図である。
【
図4】コアボーリングする工程を示す縦断面図である。
【
図5】ワイヤソーのワイヤを取り付ける工程を示す縦断面図である。
【
図6】最上部の上下足場組を吊り上げる工程を示す縦断面図である。
【
図7】ワイヤソーによる第1の切断工程を示す平面図である。
【
図8】ワイヤソーによる第2の切断工程を示す平面図である。
【
図9】煙突の切断部分を吊り上げる工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態として、筒状構造物である煙突を解体する例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
煙突100を解体する際には、
図1に示すように、まず、煙突100の内周側に足場200が設けられる。上記足場200は、例えば枠組足場である上部足場210aと下部足場210bとが組になった上下足場組210が、多段に積み上げられて設けられる。各上下足場組210は、例えば
図2、
図3に示すように、足場枠組211に作業床212が載置されて構成されている。また、足場枠組211の中心部には昇降階段213が設けられている。上記足場枠組211は、適宜煙突100の内周面に当接させて固定することができる。なお、足場としては、上記のような枠組足場に限らず、いわゆる単管足場が用いられてもよい。
【0013】
なお、煙突の内部に構造物(内筒、デッキ、梯子等)がある場合は、まずそれらを撤去した後に、上記のような足場200を設ければよい。
【0014】
上記のような足場200が煙突100の内側で頂部付近まで設けられると、次に、
図4に示すように、コアドリル310によって、例えば直径200mm程度のコアボーリング孔100a(貫通孔)が煙突100の壁面の周方向略等間隔の4箇所に空けられる。その際には、例えば煙突100の内周側から冷却水を供給することが好ましい。コアボーリング孔100aの高さ位置は、例えば、
図4に示す最上部の上下足場組210の底部に当たる作業床212の上方1200mm程度に設定されている。これによって、この高さ位置で煙突100が切断されて上側部分が除去された場合に、残った煙突100の部分が手すりのように働くので、作業の安全性を高めることが容易にできる。すなわち、煙突100そのものを落下防止のための柵として機能させることができる。なお、上記コアボーリング孔100aの穿孔は、以降の下方の煙突100の切断のために順次先行して行うようにしてもよい。
【0015】
次に、例えば
図5に示すように、最上部の作業床212からダイヤモンドワイヤ411を垂らすとともに、コアボーリング孔100aからハーケン412を突き出して上記ダイヤモンドワイヤ411を引き込む。次に、
図6に示すように、最上部の上下足場組210がクレーン等によってワイヤ510等を介して吊り上げられて地上に降下させられる。なお、煙突100の上部で分解されてから、クレーンなどで下ろされたり煙突100の内部で降ろされたりしてもよいが、地上に降ろされてから分解する場合には、その分解している間に、並行して、煙突100の上部で次の切断作業を行うことができる。
【0016】
そして、
図7に示すように煙突100における対向する2箇所の、円周方向に4分の1の部分に上記ダイヤモンドワイヤ411を掛け回し、ワイヤソー413にセットする。このようにして、ワイヤソー413により煙突100の円周方向4分の1の2箇所の部分が容易に切断される。このとき、煙突100の内周側から切断部に冷却水を供給することによって、切断部を冷却するとともに粉塵の発生を低減することが容易にできる。上記切断が完了すると、次に、
図8に示すように、例えば上記切断部にテーパライナー414を打ち込んだ後、同様にしてワイヤソー413により煙突100の残りの部分を切断することによって、煙突100の上部の部分を輪切りに切断することができる。なお、煙突100を輪切りに切断するためには、ワイヤソー413に限らず、他の種々の切断手法を適用してもよい。また、円周方向4箇所に分けるのに限らず、6箇所などに分けて切断したりしてもよい。
【0017】
また、上記切断に先立って、または好ましくは完全に切断される前に、例えば
図9に示すようなチェーンスリング511、ワイヤ512、吊天秤513、およびワイヤ514を介して、図示しないクレーン等により吊り上げ可能な状態にされ、切断が完了すると、同図に示すように、切断された煙突100の部分が吊り上げられて、地上に降下させられる。なお、煙突100の吊り上げ方法は上記に限らず、煙突100の規模や高さなど種々の状況に応じて適用されればよい。すなわち、上記のようにワイヤソー413のダイヤモンドワイヤ411を通すためのコアボーリング孔100aを利用して、そのコアボーリング孔100aの上部内周側にチェーンスリング511が掛かるようにしてもよいし、別途、吊り上げ用の貫通孔を形成したり、煙突100に設けられている吊金具を用いたりしてもよい。
【0018】
上記のような作業が繰り返されることによって、煙突100の下部まで解体することもできるが、重機の先端が届く例えば30mなどよりも低い下部の部分は重機によって解体してもよい。
【0019】
上記のように穿孔作業や、煙突切断作業が例えばほぼ全て煙突内部で行われることによって、解体工事に使用する機材や仮設材等の倒壊、飛来、落下などの危険性を大幅に低減することができる。また、コアボーリングやワイヤソー切断時の外部への冷却水飛散も大幅に低減、または実質的にほとんど抑制することができる。さらに、外部への騒音も容易に低減できる。それゆえ、例えば民家に近いエリア等での解体なども容易に可能になる。また、台風等の強風が予測される場合などでも、煙突100の外周部に設けられた足場のように撤去、待避したりする必要性が低いので、作業性の低下を回避することも容易にできる。
【0020】
また、足場材の量も少なくてすみ、足場材を施工する工期も短縮でき、コストを削減することも容易になる。
【0021】
また、煙突の形状(例えば太さが一定である場合や下方ほど極端に太くなる等)に左右されず解体作業することが容易である。
【符号の説明】
【0022】
100 煙突
100a コアボーリング孔
200 足場
210 上下足場組
210a 上部足場
210b 下部足場
211 足場枠組
212 作業床
213 昇降階段
310 コアドリル
411 ダイヤモンドワイヤ
412 ハーケン
413 ワイヤソー
414 テーパライナー
510 ワイヤ
511 チェーンスリング
512 ワイヤ
513 吊天秤
514 ワイヤ