(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20220415BHJP
F16G 1/28 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B60N2/07
F16G1/28 A
(21)【出願番号】P 2018172147
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ車体精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白木 晋
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 啓暉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 陽一
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215931(JP,A)
【文献】特開2006-205756(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137970(WO,A2)
【文献】特開昭62-146739(JP,A)
【文献】実開平06-065067(JP,U)
【文献】実開昭62-097043(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06-2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付け可能なロアレール
であって前記ロアレールの長手方向に沿って細長い開口を有しているロアレールと、
前記開口を覆っており、前記ロアレールの長手方向に沿って配置されており、両端が固定されているベルトと、
シートに取り付け可能であり、前記ロアレールに移動可能に係合しているとともに、前記ベルトを送るアクチュエータが備えられているアッパレールと、
を備えており、
前記アクチュエータは、前記ベルトの下面に動力を伝達する
ものであり、
前記アッパレールの前記レール長手方向の両端に配置されており、前記開口を塞いでいる前記ベルトの上面に接している一対のガイドと、
前記一対のガイドの間に配置されており、前記開口から離れた前記ベルトの下面に接している駆動ローラまたは駆動ギアと、
を備えている、シートスライド装置。
【請求項2】
前記ベルトが前記開口に嵌合している、請求項
1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記ベルトは歯付のベルトであり、当該歯が前記開口に嵌合している、請求項
2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記アッパレールは、前記ベルトに長手方向の張力を加える機構を備えている、請求項1から
3のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車のシートをアクチュエータで移動させるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータでシートを移動(スライド)させるシートスライド装置が知られている。特許文献1のシートスライド装置は、ロアレールの内部にリードスクリュを配置している。一方、アッパレールは、リードスクリュに螺合するスクリューナットと、スクリューナットを回転させるモータとウォームギアを備えている。モータとウォームギアでスクリューナットを回転させると、スクリューナットとともにアッパレール(即ちシート)が移動する。
【0003】
特許文献1のシートスライド装置では、リードスクリュに塵埃が付着しないように、ロアレールの開口を覆うシャッタを備えている。シャッタは、無端ベルト状であり、ロアレールの両端に配置されたローラの間に巻き掛けられている。一対のローラの間で平行に延びているシャッタの上側部分で開口を塞ぐ。シャッタには孔が設けられており、その孔を通してアッパレールがロアレールの内側から上方へ突出している。アッパレールが移動するとシャッタが追随して移動する仕組みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシートスライド装置では、リードスクリュへの塵埃の付着を防止するのに複雑な機構を必要とする。本明細書は、簡単な構造で、アッパレールを移動させる機構の障害となり得る塵埃の付着を防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するシートスライド装置は、車両に取り付け可能なロアレールと、ロアレールに沿って配置されており、両端が固定されているベルトと、シートに取り付け可能であり、ロアレールに対して移動可能に係合しているとともにベルトを送るアクチュエータが備えられているアッパレールを備えている。そして、アクチュエータは、ベルトの下面に動力を伝達する。このシートスライド装置では、塵埃が付着し難いベルトの下面に動力を伝達してアッパレール(シート)を動かすので、塵埃の付着に起因する障害が生じ難い。
【0007】
アクチュエータは、ベルトの下面に接する駆動ローラあるいは駆動ギアを備えているとよい。前者の場合、ベルトは、下面と駆動ローラとの間の摩擦により動力を伝達するフリクションベルトが好適である。後者の場合は、駆動ギアに係合する歯が下面に設けられた歯付ベルトが好適である。歯付ベルトはコグドベルト(Cogged Belt)とも呼ばれる。
【0008】
ベルトは、ロアレールの内部に配置されているとよい。ベルトが車体のフロアに露出しているよりも塵埃が付着し難い。また、ベルトが搭乗者から見えないので見栄えが良い。
【0009】
あるいは、ロアレールは、レール長手方向に沿って上部が開口しており、ベルトがその開口を覆っているとよい。アッパレール(シート)を動かすためのベルトが、ロアレールの内部への塵埃浸入を防ぐカバーを兼ねる。また、歯付ベルトの場合、ベルトの歯がロアレールの開口に嵌合しているとよい。開口から歯付ベルトが外れ難くなる。
【0010】
アッパレールのアクチュエータの一例は次の通りである。アクチュエータは、アッパレールのレール長手方向の両端に配置されており、開口を塞いでいるベルトの上面に接している一対のガイドと、一対のガイドの間に配置されており、開口から離れたベルトの下面に当接する駆動ローラまたは下面の歯に係合する駆動ギアを備えている。簡単な機構でアッパレールを動かすことができる。
【0011】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施例のシートスライド装置の側面図である。
【
図2】レール長手方向に直交する平面でカットしたシートスライド装置の断面図である。
【
図4】第2実施例のシートスライド装置の断面図である。
【
図6】第3実施例のシートスライド装置の斜視図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】第3実施例のシートスライド装置をXZ平面でカットした断面図である。
【
図10】第4実施例のシートスライド装置をXZ平面でカットした断面図である。
【
図11】第5実施例のシートスライド装置をアッパレールの前方でカットした断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例のシートスライド装置2を説明する。
図1に、自動車に取り付けられたシートスライド装置2の側面図を示す。シートスライド装置2は、ロアレール10とアッパレール20で構成されている。アッパレール20は、ロアレール10に対して摺動可能(スライド可能)に取り付けられている。ロアレール10は車両のフロアパネル90に固定される。アッパレール20は、シート80のシートクッション81の下部に取り付けられる。シートスライド装置2は、シートクッション81の下部の左右にそれぞれ取り付けられる。図中の座標系のX方向がロアレール10とアッパレール20のレール長手方向に相当する。Y方向がレール短手方向に相当する。図中の座標系の+Z方向が上方を示す。説明の便宜上、+X方向を「前方」と称し、-X方向を「後方」と称する。座標系の各軸の意味は以下の図でも同じである。詳しくは後述するが、アッパレール20には、アクチュエータが備えられている。
図1ではアクチュエータの図示は省略してある。アッパレール20は、アクチュエータによって、ロアレール10に対して移動することができる。すなわち、シートスライド装置2は、電動でシートを移動(スライド)させることができる。
【0014】
図2に、シートスライド装置2の断面図を示す。
図2の断面は、ロアレール10とアッパレール20を、レール長手方向(X方向)に直交する平面でカットした断面を表している。
図2は、後述するアクチュエータ30よりも前方でアッパレール20をカットした断面図である。
図2のIII-III線に沿った断面図を
図3に示す。
図3は、アクチュエータ30を横断する平面でカットした断面に相当する。
図2は、
図3のII-II線に沿った断面図に相当する。
図2、
図3のシートスライド装置2は、シートクッション81の下部の左右のそれぞれに取り付けられる。
図2では、理解を助けるために、ベルト40(後述)の断面以外をグレーで示してある。
【0015】
アッパレール20には、アッパレール20をロアレール10に対して固定するロック機構が設けられているが、ロック機構の図示は省略した。ロック機構は従来のシートスライド装置が備えている機構と同じであるので説明も省略する。
【0016】
図2を参照して、まず、ロアレール10の形状を説明する。ロアレール10は、フロアパネル90に設けられたレール溝91に収められる。ロアレール10は、車体に取り付けられる底板部3と、一対の外縦板部4と、一対の上板部5と、一対の内縦板部6を備えている。一対の外縦板部4は、レール短手方向(図中のY方向)で底板部3の両端のそれぞれから上方に向かって延びている。一対の上板部5は、夫々の外縦板部4の上端からレール短手方向の中央へ向けて横方向に延びている。一対の内縦板部6は、夫々の上板部5の内側端から下方へ延びている。一対の内縦板部6は、互いに対向している。一対の内縦板部6の間で、ロアレール10は上方に向けて開口している。ロアレール10は、上面がレール長手方向に沿って細長く開口している。
【0017】
アッパレール20について説明する。アッパレール20の本体下部22はロアレール10の内側に位置しており、ローラ23を支持している。ローラ23は、ロアレール10の底板部3に接しており、アッパレール20の移動を円滑にする。アッパレール20の本体上部21は、ロアレール10よりも上側に露出している。本体上部21に不図示のフレームが取り付けられ、そのフレームにシートクッションが固定される。本体上部21と本体下部22は、ロアレール10の開口を通じて繋がっている。別言すれば、アッパレール20は、一部(本体下部22)がロアレール10の内部に位置しており、ロアレール10の開口を通じて残部(本体上部21)がロアレール10よりも上方へ突き出ている。
【0018】
ロアレール10の短手方向の隣に、ベルト40が配置されている。
図3に示すように、ベルト40は、ロアレール10の長手方向に沿って延びており、両端がボルト93で補助板7に固定されている。補助板7は、ロアレール10の底板部3に連結されており、一方の外縦板部4に沿って上方へ折れ曲がり、上板部5とほぼ同じ高さでロアレール10の短手方向(Y方向)の外側へと折れ曲がっている。ベルト40は、補助板7の上に載っている。ベルト40と補助板7の間には、T形状モール92bが挟まれている。
【0019】
ベルト40は、歯付ベルトであり、ベルト40は、歯41が下面側に位置するように配置されている。歯41は、後述する駆動ギア32に係合している。ベルト40は樹脂あるいはゴムで作られている。
【0020】
一対のT形状モール92a、92は、ロアレール10の開口を塞ぐために備えられている。T形状モール92aは、レール溝91と外縦板部4との隙間に挟まれて固定されている。T形状モール92bは、外縦板部4と補助板7の間に挟まれて固定されている。一方のT形状モール92bは、レール短手方向でロアレール10の外側へ大きく拡がっている。T形状モール92bは、ベルト40の下側にまで拡がっている。T形状モール92a、92bは、柔軟な樹脂で作られている。
【0021】
アッパレール20には、アクチュエータ30が備えられている。アクチュエータ30は、ロアレール10に沿って配置されているベルト40を巻き込んでおり、ベルト40の下面に動力を伝達する駆動ギア32を備えている。アクチュエータ30は、2個のガイドローラ31a、31bを備えている。2個のガイドローラ31a、31bは、補助板7の上に載っているベルト40の上面に接している。2個のガイドローラ31a、31bの間に駆動ギア32が配置されている。一方のガイドローラ31aを通過したベルト40は、補助板7から引き離され、駆動ギア32の上側に巻き掛けられている。駆動ギア32はベルト40の下面の歯41に係合する。駆動ギア32の上側を通過したベルト40は、他方のガイドローラ31bの下をとおり、再び補助板7の上に載せられる。
【0022】
駆動ギア32はモータ35で回転する。駆動ギア32が回転すると、動力がベルト40に伝達される。動力は、ベルト40の下面の歯41に伝達される。先に述べたように、ベルト40の両端は補助板7に固定されている。従って、ベルト40に伝達される動力により、アッパレール20がレール長手方向に沿って移動する。すなわち、シートスライド装置2は、電動でシートを移動させることができる。駆動ギア32とガイドローラ31a、31bは、カバー39で覆われている。
【0023】
シートスライド装置2では、駆動ギア32がベルト40の下面に動力を伝達する。ベルト40の歯41はベルト40の下面に設けられている。従って、歯41に塵埃が付着し難い。動力を伝達する歯41に塵埃が付着し難いので、シートを電動で動かす機構に不具合が生じ難い。また、ベルト40の下面側に歯41が設けられているので、車両の搭乗者から歯41が見えず、見栄えがよい。
【0024】
また、ベルト40は、ロアレール10の底板部3に取り付けられている補助板7の上に載せられているので、ロアレール10と一緒にフロアパネル90に取り付けることができる。ベルト40を含むシートスライド装置2を車両に取り付ける作業が容易となる。
【0025】
(第2実施例)
図4、
図5を参照して第2実施例のシートスライド装置2aを説明する。
図4は、シートスライド装置2aをレール短手方向(図中のY方向)の中央でカットした断面を示している。
図5は、
図4のV-V線に沿った断面を示している。
図4は、
図5のIV-IV線に沿った断面に相当する。
図4、
図5でも、アッパレール120をロアレール110に対して固定するロック機構は図示を省略している。
【0026】
シートスライド装置2aでは、ベルト40はロアレール110の内側に配置されている。ベルト40は、歯41が下側に位置するように、配置されている。ベルト40は、底板部3の上に載置されている。ベルト40の両端はボルト93でロアレール110に固定されている。
【0027】
アッパレール120のアクチュエータ130は、モータ35以外の部品がアッパレール120の本体内部に装備されている。アクチュエータ130は、モータ35のほか、一対のガイドローラ31a、31b、駆動ギア32a、従動ギア32b、サブローラ33a、33bを備えている。ガイドローラ31a、31bは、底板部3の上に載っているベルト40の上面に接している。ガイドローラ31aを通過したベルト40は、底板部3から引き離され、駆動ギア32aの上側に巻き掛けられる。ベルト40の下面に設けられている歯41が駆動ギア32aに係合する。ベルト40は駆動ギア32aとサブローラ33aの間に挟まれており、駆動ギア32aから外れることはない。駆動ギア32aはモータ35によって回転する。駆動ギア32aが回転すると、ベルト40の下面に動力が伝達される。ベルト40は両端がロアレール110に固定されているため、モータ35の駆動力によって、アッパレール120が動く。すなわち、電動でシートが移動する。
【0028】
駆動ギア32aとサブローラ33aの間を通過したベルト40は、従動ギア32bとサブローラ33bの間を通過し、さらにガイドローラ31bの下側を通過し、底板部3の上に戻される。
【0029】
第2実施例のシートスライド装置2aも、アクチュエータ130(駆動ギア32a)は、ベルト40の下面に動力を伝達する。ベルト40の下面に歯41が設けられているので、歯41に塵埃が付着し難い。それゆえ、アッパレール120(シート)を移動させる機構に不具合が生じ難い。また、シートスライド装置2aでは、ベルト40がロアレール110内に配置されているとともに、アッパレール120の内部を通る。従ってベルト40が周囲から見えないので、シートスライド装置2aの見栄えがよい。
【0030】
(第3実施例)
図6-
図9を参照して第3実施例のシートスライド装置2bを説明する。
図6に、シートスライド装置2bの斜視図を示す。
図7は
図6のVII-VII線に沿った断面図であり、
図8は
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9は、シートスライド装置2bを短手方向の中央でカットした断面図である。
図9は、図中の座標系のXZ平面でシートスライド装置2bをカットした断面図である。
【0031】
シートスライド装置2bでは、ベルト40は、ロアレール210の開口Wを塞ぐように配置されている。開口Wは、一対の内縦板部6の間の空間である。別言すれば、ロアレール210は、その上面に、レール長手方向に沿って細長い開口Wを備えている。
図7に示されているように、開口Wを通じて、アッパレール220の本体下部22と本体上部21がつながっている。ロアレール210の内側に位置する本体下部22は、ローラ23を支持している部分である。
図6に示されているように、ベルト40は、その両端がボルト93でロアレール110の前端11aと後端11bに固定されている。
図8では、理解を助けるため、ベルト40の断面以外をグレーで示してある。ベルト40は、下面に歯41が設けられている歯付ベルトである。歯41の幅がベルト40の幅よりも狭く、歯41がロアレール210の開口Wに嵌合している。
【0032】
アッパレール220の備えられているアクチュエータ230は、モータ35を除いてアッパレール220の本体上部21の中に装備されている。アクチュエータ230は、一対のガイドローラ31a、31b、駆動ギア32a、従動ギア32b、サブローラ33a、33bを備えている、
図6では、モータ35とサブローラ33a、33bの図示を省略してある。
【0033】
ガイドローラ31a、31bは、アッパレール220の本体上部21のレール長手方向の両端のそれぞれに配置されている。ガイドローラ31a、31bはその下端がベルト40の上面に接している。
図9において、アッパレール220が図の左側へ移動する際、進行方向のガイドローラ31aを通過したベルトは、ロアレール210の開口Wから引き上げられ、本体上部21の内部で駆動ギア32aの上面に掛けられている。ベルト40の歯41が駆動ギア32aに係合している。モータ35によって駆動ギア32aが回転すると、その動力がベルト40の下面に伝達される。ベルト40は両端がロアレール210に固定されているため、モータ35の動力によって、アッパレール220が移動する。すなわち、電動でアッパレール220(シート)が移動する。
【0034】
駆動ギア32aとサブローラ33aの間を通過したベルト40は、従動ギア32bとサブローラ33bの間を通る。ベルト40は、アッパレール220の進行方向の後側のガイドローラ31bの下を通り、再び開口Wに戻される。
【0035】
シートスライド装置2bは、ベルト40がロアレール210の開口Wを塞ぐので、ロアレール210の内部に塵埃が入り込み難い。また、ロアレール210の開口Wが見えなくなるので、見栄えがよい。さらに、ベルト40は、動力が伝達される歯41が下面に設けられているので、歯41に塵埃が付着し難い。アッパレール220が移動する際、開口Wを塞いでいるベルト40は、開口Wから引き上げられ、アッパレール220の本体上部21の内部を通り、進行方向の後側で再び開口Wに戻される。ベルト40は、アッパレール220の動きを妨げることなく、ロアレール210の開口Wを塞ぐ。
【0036】
(第4実施例)
図10を参照して第4実施例のシートスライド装置2cを説明する。
図10は、シートスライド装置2cを図中の座標系のXZ平面でカットした断面図である。
図10でも、アッパレール220をロアレール210に対して固定するロック機構は図示を省略している。
【0037】
シートスライド装置2cでは、ベルト40に係合している従動ギア36が、カム37に支持されている。カム37は、一端がアッパレール220の本体上部21に回転可能に支持されており、他端に従動ギア36が取り付けられている。従動ギア36は、カム37によって、上下に揺動可能に支持されている。カム37には、バネ38が取り付けられている。バネ38の一端がカム37に固定されており、他端はカム37の上方で本体上部21に固定されている。バネ38により、カム37(すなわち従動ギア36)は上方へ向けて付勢されている。従動ギア36の上側にベルト40が巻きかけられているので、バネ38の付勢力により、ベルト40には、その長手方向に張力が加えられる。ベルト40に、長手方向の張力が加えられることで、開口Wを塞いでいるベルト40の緩みが防止される。第4実施例のシートスライド装置2cは、従動ギア36、カム37、バネ38を備えること以外は、第3実施例のシートスライド装置2bの構造と同じである。従動ギア36、カム37、バネ38は、ベルト40に長手方向の張力を与える機構である。
【0038】
(第5実施例)
図11を参照して第5実施例のシートスライド装置2dを説明する。
図11は、シートスライド装置2dを、アッパレール320の前方でカットした断面図である。すなわち、
図11には、ロアレール310の断面と、アッパレール320の正面が描かれている。シートスライド装置2dでは、歯付ベルトではなく、フラットなフリクションベルト140を採用している。フリクションベルト140は、その下面が動力伝達面である。
図11では、理解を助けるために、フリクションベルト140の断面以外をグレーで示してある。
【0039】
一方、ロアレール310には、上板部5と内縦板部6の接続箇所に、レール長手方向に沿った窪み9が設けられている。フリクションベルト140は、開口Wの幅方向の左右に位置する一対の窪み9に嵌合している。フリクションベルト140がロアレール310の窪みに嵌合することで、開口Wから外れ難くなっている。
【0040】
シートスライド装置2bは、アクチュエータ330を備えている。アクチュエータ30は、第3実施例のシートスライド装置2bの駆動ギア32aの代わりに駆動ローラ52を備えている。アクチュエータ330は、アクチュエータ230と同様に、一対のガイドローラ31a、31b、モータ35、サブローラ53を備えている。一対のガイドローラ31a、31bは、アッパレール320の本体上部21のレール長手方向の両端のそれぞれに配置されている。ガイドローラ31aが本体上部21の前端に配置されており、ガイドローラ31bは、
図11では見えないが、本体上部21の後端に配置されている。ガイドローラ31a、31bはその下端がフリクションベルト140の上面に接している。前方のガイドローラ31aは、ロアレール310に嵌合しているフリクションベルト140の上面に接している。アッパレール320が前方(図中の座標系の+X方向)へ移動する際、進行方向のガイドローラ31aを通過したフリクションベルト140は、ロアレール310の開口Wから引き上げられ、本体上部21の内部で駆動ローラ52の上面に掛けられている。駆動ローラ52を通過したフリクションベルト140は、後端のガイドローラ31bの下側を通り、再び開口Wに嵌合される。
【0041】
フリクションベルト140は、駆動ローラ52とサブローラ53に挟まれている。駆動ローラ52は、モータ35によって回転する。モータ35によって駆動ローラ52が回転すると、その動力フリクションがベルト140の下面に伝達される。フリクションベルト140は両端がロアレール310に固定されているため、モータ35の動力によって、アッパレール320が移動する。すなわち、電動でアッパレール320(シート)が移動する。シートスライド装置2dも、フリクションベルト140の動力伝達面が下面であるため、動力伝達面に塵埃が付着し難い。それゆえ、駆動ローラ52とフリクションベルト140の間の摩擦力が低下し難い。
【0042】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。ベルト40、フリクションベルト140は柔軟な樹脂あるいはゴムで作られている。ベルト40は、複数の小片で作られており、隣接する小片が揺動可能に連結された構造であってもよい。
【0043】
実施例のガイドローラ31a、31bが一対のガイドの一例に相当する。ガイドは、ベルトの移動に伴って回転するローラに替えて、ベルトに対して摺動するピンであってもよい。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
2、2a、2b、2c、2d:シートスライド装置
3:底板部
4:外縦板部
5:上板部
6:内縦板部
7:補助板
10、110、210、310:ロアレール
20、120、220、320:アッパレール
30、130、230:アクチュエータ
31a、31b:ガイドローラ
32、32a:駆動ギア
32b、36:従動ギア
33a、33b:サブローラ
35:モータ
37:カム
38:バネ
40:ベルト
41:歯
52:駆動ローラ
53:従動ローラ
80:シート
81:シートクッション
90:フロアパネル
91:レール溝
140:フリクションベルト