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特許7058612防振装置を備えた動力作業機及び背負式動力作業機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】防振装置を備えた動力作業機及び背負式動力作業機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/60 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
F04D29/60 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019002419
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020112068
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】森谷 圭一
(72)【発明者】
【氏名】向 紘史
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-009052(JP,A)
【文献】特開2004-308811(JP,A)
【文献】実開昭53-111904(JP,U)
【文献】実開昭61-019686(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00-99/00
F02B 63/00
F02B 77/00
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源(8)の駆動による作業に際し前記駆動源(8)を搭載する搭載部(5)への振動を、前記駆動源(8)と前記搭載部(5)との間に介在する圧縮コイルバネ(15)により防振する防振装置(6)を備えた動力作業機であって、
前記防振装置(6)は、
駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の一方側に設けられて前記圧縮コイルバネ(15)の内側に配置され、前記駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の他方側に接離可能で前記圧縮コイルバネ(15)が縮み線間密着する前に、駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の他方側に当接するゴム材(19)を備え
前記防振装置(6)は、
前記駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の他方に係合し、その外周面に前記圧縮コイルバネ(15)の一方側の端部が係合する第1の雄螺子(18a)を備えた第1のプラグ(13)と、
前記ゴム材(19)を有する第2のプラグ(14)と、を備え、
前記第2のプラグ(14)は、
前記ゴム材(19)に連設され前記駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の一方に当接する台座部(20)と、
前記台座部(20)に連設されたボルト(21)と、を備え、
前記台座部(20)は、
その外周面に、前記圧縮コイルバネ(15)の他方側の端部が係合する第2の雄螺子(20a)と、
前記駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の一方に当接する面が環状に凹設されることによって突出する凹部(20c)内周側の凸状のプラグレンチ係合部(20d)と、を備え、
前記ボルト(21)は、
前記台座部(20)に埋設された頭部(21a)と、
前記台座部(20)を貫通して前記駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の他方とは反対側の外方へ突出し、その外周面に第3の雄螺子(21c)を有する軸部(21b)と、を備えたことを特徴とする、防振装置(6)を備えた動力作業機。
【請求項2】
前記防振装置(6)は、
前記駆動源側(8,9)又は前記搭載部(5)の他方側に設けられ、前記ゴム材(19)の先端部の外周側に位置するストッパ(18c)を備えたことを特徴とする、請求項1記載の防振装置(6)を備えた動力作業機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動力作業機は、背負式動力作業機(100)であり、
前記搭載部(5)は、前記背負式動力作業機(100)の背当部(4)に続く底部(5)であり、前記底部(5)と前記駆動源(8)との間に前記防振装置(6)が介在することを特徴とする背負式動力作業機(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置を備えた動力作業機及び背負式動力作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、背負式動力作業機として、以下の特許文献1に記載の背負式送風作業機が知られている。この背負式送風作業機にあっては、作業者により背負われる背負フレームを備え、背負フレームは、作業者の背中が当接する背当部と、背当部の下部に直交し後方へ延びる底部と、を有している。背当部の背面には、ファンを収容するファンケースが搭載されている。具体的には、背当て部の背面に、ファンケースの前面が、水平方向に延びる防振装置としての複数の圧縮コイルバネを介して連結され片持ち支持の状態で搭載されており、ファンケースの背面には、エンジン及び燃料タンクが連結され搭載されている。このような構成の背負式送風作業機では、作業時のエンジンからの振動を圧縮コイルバネにより吸収し背当部への防振を図っている。
【0003】
また、背負式動力作業機として以下の特許文献2に記載の背負式動力散布機にあっては、背負板(背当部)の下部に直交し後方へ延びる底部上に、羽根車(ファン)を収容するファンケースが防振装置としての複数の防振ゴムを介して搭載され、ファンケースの背面に、フランジを介して、羽根車を駆動するエンジンが連結され搭載されている。また、ファンケースの上部には、散布剤(薬剤)を貯留する散布剤貯留タンク(薬剤タンク)が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6358833号
【文献】特開2013-29079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般的に、防振ゴムに比して圧縮コイルバネの方が防振性能が優れていることが知られており、従って、特許文献2に記載の防振ゴムに代えて、特許文献1に記載の圧縮コイルバネを用いることが考えられる。しかしながら、散布剤貯留タンクに散布剤を入れると、その荷重で圧縮コイルバネが縮み、圧縮コイルバネが線間密着してしまい、その結果、防振効果が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、圧縮コイルバネの線間密着を防止し、優れた防振性能を発揮できる防振装置を備えた動力作業機及び背負式動力作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による防振装置を備えた動力作業機は、駆動源(8)の駆動による作業に際し駆動源(8)を搭載する搭載部(5)への振動を、駆動源(8)と搭載部(5)との間に介在する圧縮コイルバネ(15)により防振する防振装置(6)を備えた動力作業機であって、防振装置(6)は、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の一方側に設けられて圧縮コイルバネ(15)の内側に配置され、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方側に接離可能で圧縮コイルバネ(15)が縮み線間密着する前に、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方側に当接するゴム材(19)を備え、防振装置(6)は、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方に係合し、その外周面に圧縮コイルバネ(15)の一方側の端部が係合する第1の雄螺子(18a)を備えた第1のプラグ(13)と、ゴム材(19)を有する第2のプラグ(14)と、を備え、第2のプラグ(14)は、ゴム材(19)に連設され駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の一方に当接する台座部(20)と、台座部(20)に連設されたボルト(21)と、を備え、台座部(20)は、その外周面に、圧縮コイルバネ(15)の他方側の端部が係合する第2の雄螺子(20a)と、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の一方に当接する面が環状に凹設されることによって突出する凹部(20c)内周側の凸状のプラグレンチ係合部(20d)と、を備え、ボルト(21)は、台座部(20)に埋設された頭部(21a)と、台座部(20)を貫通して駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方とは反対側の外方へ突出し、その外周面に第3の雄螺子(21c)を有する軸部(21b)と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような防振装置(6)を備えた動力作業機によれば、駆動源(8)と当該駆動源(8)を搭載する搭載部(5)との間に介在する圧縮コイルバネ(15)が縮み線間密着する前に、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の一方側に設けられて圧縮コイルバネ(15)の内側に配置されたゴム材(19)が、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方側に当接するため、圧縮コイルバネ(15)の線間密着が防止され、圧縮コイルバネ(15)の優れた防振性能が引き出されると共に、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方側がゴム材(19)に対して当接する際の衝撃はゴム材(19)により吸収され、その結果、優れた防振性能を発揮できる。また、第1のプラグ(13)を、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方に係合させ、第1のプラグ(13)と第2のプラグ(14)の台座部(20)との間でゴム材(19)の外側に圧縮コイルバネ(15)を配置した状態で、台座部(20)のプラグレンチ係合部(20d)にプラグレンチを差し込んで係合させ第2のプラグ(14)を第1のプラグ(13)側へ押し込みながら回転させることによって、第1のプラグ(13)の外周面の第1の雄螺子(18a)に、圧縮コイルバネ(15)の一方側の端部を螺子込み係合させると共に、第2のプラグ(14)の外周面の第2の雄螺子(20a)に、圧縮コイルバネ(15)の他方側の端部を螺子込み係合させることができ、防振装置(6)を得ることができる。すなわち、防振装置(6)を簡易に組み立てることができる。そして、得られた防振装置(6)のうち第2のプラグ(14)の外方へ突出する軸部(21b)の外周面の第3の雄螺子(21c)に、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の一方側の雌螺子(16a)を螺合させることによって、第2のプラグ(14)を、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の一方に固定できる。すなわち、防振装置(6)を簡易に取り付けることができる。
【0009】
ここで、防振装置(6)は、駆動源側(8,9)又は搭載部(5)の他方側に設けられ、ゴム材(19)の先端部の外周側に位置するストッパ(18c)を備えていると、駆動源側(8,9)が倒れかかったときに、ゴム材(19)の先端部とストッパ(18c)とが当接し、駆動源側(8,9)が倒れることを抑えることができる。
【0012】
ここで、上記動力作業機は、背負式動力作業機(100)であり、搭載部(5)は、背負式動力作業機(100)の背当部(4)に続く底部(5)であり、底部(5)と駆動源(8)との間に防振装置(6)が介在する背負式動力作業機とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、圧縮コイルバネの線間密着を防止し、優れた防振性能を発揮できる防振装置を備えた動力作業機及び背負式動力作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る防振装置を備えた背負式動力散布機を示す背面図である。
図2図1に示す背負式動力散布機の側面図である。
図3図1及び図2に示す背負式動力散布機から薬剤タンク、背負バンド、エンジン及び燃料タンク等を取り外した背面斜視図である。
図4図2及び図3中の防振装置及びその近傍を示す縦断面図である。
図5図3中のファンケース及び防振装置を示す分解斜視図である。
図6図3中の防振装置を示す斜視図である。
図7図1及び図2中の薬剤タンクに薬剤を入れた状態での防振装置及びその近傍を示す縦断面図であり、図4に直交する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る防振装置を備えた動力作業機の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態にあっては、動力作業機を、作業者が背中に背負いながら駆動源の駆動により薬剤を散布する背負式動力散布機として説明する。なお、以下の説明において、上下、前後、左右等の方向を表す語は、背負式動力散布機を背負った作業者を基準とした方向を表すものとし、作業者にとり前方を「前」と定める。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る防振装置を備えた背負式動力散布機を示す背面図、図2は、背負式動力散布機の側面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、背負式動力散布機100は、背負部(背負フレーム)1と、エンジン駆動式送風機2と、薬剤タンク3と、を概略備える。
【0018】
背負部1は、作業者が背中に背負うと共に機器等を搭載するものであり、作業者の背中に当接する背当部4、及び、当該背当部4の下端部から後方(図1の紙面手前側、図2の左側)へ向けて延びる搭載部としての底部5を備え、側面視略L字状を呈している。背当部4には、作業者が背負うための左右一対の背負バンド10が取り付けられている。
【0019】
エンジン駆動式送風機2は、薬剤タンク3内の薬剤を散布するための風を発生するものであり、背負部1の底部5上に左右一対の防振装置6(図2図3参照;詳しくは後述)を介して搭載されている。このエンジン駆動式送風機2は、送風機7及び駆動源としてのエンジン8を備えている。
【0020】
送風機7は、薬剤を散布する風を発生するためのファン(羽根車;不図示)と、ファンを収容するファンケース9と、を備える。ファンケース9は、前側のファンケース9aと、後側のファンケース9bに分割される分割タイプであり(図5参照)、ファンを内部に収容した状態で、前側のファンケース9aと後側のファンケース9bとが例えばボルト等の締結手段により連結固定されている。そして、ファンケース9の上部には上記薬剤タンク3が搭載され、ファンケース9の出口9hには、曲り管、蛇管、噴管、散布ホース等が接続されており、散布ホースの先端から薬剤を散布するようになっている。なお、ここでは、曲り管、蛇管、噴管、散布ホースは取り外され描かれていない。
【0021】
エンジン8は、エンジンカバー11に覆われ、エンジン8及びエンジンカバー11は、後側のファンケース9bに締結手段により連結され固定されている。また。エンジン8の燃料を貯留する燃料タンク12は、エンジン8の下方で背負部1の底部5上に搭載され固定されている。
【0022】
図3は、背負式動力散布機から薬剤タンク3、背負バンド10、エンジン8、エンジンカバー11及び燃料タンク12等を取り外した背面斜視図、図4は、図3中の防振装置6及びその近傍を示す縦断面図、図5は、図3中のファンケース9及び防振装置6を示す分解斜視図、図6は、図3中の防振装置6を示す斜視図である。
【0023】
前述した左右一対の防振装置6は、図3図5に示すように、後側のファンケース9bと背負部1の底部5との間に介在している。防振装置6は、図4及び図5に示すように、上部を構成する第1のプラグ13と、下部を構成する第2のプラグ14と、第1のプラグ13と第2のプラグ14との間に介在する圧縮コイルバネ15と、を備える。
【0024】
第1のプラグ13は、ここでは、プラスチックより形成され、図4図6に示すように、後側のファンケース9bのプラグ受け9c(詳しくは後述)に挿入され係合する係合部17と、係合部17から下方に突出し圧縮コイルバネ15の上端部(一方側の端部)が係合するボス部18と、を備える。
【0025】
係合部17は、平面視において、長円を略半分とした半長円状の外周面を有する台部17aと、台部17aの上部に設けられた鍔部17b、とを有する。鍔部17bは、平面視において、その外周面が、台部17aの半長円状の外周面より大きく形成されている。
【0026】
ボス部18は、その外周面が円形を呈し、当該外周面に、圧縮コイルバネ15の上端部が係合する第1の雄螺子18aを備えている。ボス部18の底面18bには、下方へ突出し、平面視において、後側へ凸となるように湾曲する半円弧を前側へ周方向に多少延ばして湾曲させた形状(略C字形状)を呈するストッパ18cが設けられている。
【0027】
第2のプラグ14は、先端側を構成するゴム材19と、ゴム材19の底部に連設され背負部1の底部5に当接する台座部20と、台座部20に連設されたボルト21(図4参照)と、を備えている。
【0028】
ゴム材19は、ここでは、裁頭円錐台形状を呈し、圧縮コイルバネ15の内側に配置されている。図4に示すように、ゴム材19の底部の中央には、凸部19aが設けられている。
【0029】
台座部20は、ここでは、樹脂より形成され、略円柱形状を呈している。台座部20の中央の上部には、ゴム材19の凸部19aが進入する凹部20bが設けられている。台座部20の外周面には、圧縮コイルバネ15の下端部(他方側の端部)が係合する第2の雄螺子20aが形成されている。図4図6に示すように、台座部20の底部には鍔部20fが設けられ、鍔部20fの底面が、背負部1の底部5に当接する面となっている。台座部20の底部の鍔部20fより内側には、円環状の凹部20cが設けられ、この円環状の凹部20cが凹設されることによって突出する凹部20c内周側の凸状の部分が、プラグレンチ係合部20dとなっている。この凸状のプラグレンチ係合部20dは、ここでは、外周面が6角形に形成され(図6参照)、プラグレンチが係合可能となっている。円環状の凹部20cは、プラグレンチを進入可能とする空間とされている。また、プラグレンチ係合部20dの中央には、ボルト21の後述の軸部21bが挿通する貫通孔20e(図4及び図6参照)が設けられている。
【0030】
ボルト21は、図4に示すように、その頭部21aが、台座部20の上部の凹部20bの底面を形成するように台座部20に埋設されている。ボルト21の軸部21bは、台座部20の貫通孔20eを貫通し外方(下方)へ突出した状態となっている。軸部21bの外周面には、ナット16に螺合する第3の雄螺子21cが形成されている。
【0031】
そして、金属製のボルト21の頭部21aを、樹脂より成る台座部20にインサート成形し、この成形品の台座部20の凹部20bにゴム材19の凸部19aを進入させた状態で、当該ゴム材19を成形品の台座部20に溶着することにより、ゴム材19、台座部20及びボルト21を一体に備えた第2のプラグ14が得られる。なお、第2のプラグ14の製造方法は、上記に限定されるものではなく、ゴム材19、台座部20及びボルト21を一体に備えていれば良い。
【0032】
また、前述した後側のファンケース9bの下部には、図3図5に示すように、第1のプラグ13を受けるためのプラグ受け9cが設けられている。プラグ受け9cは、図5に示すように、下方及び前方に開放されるように凹設され、図4及び図5に示すように、第1のプラグ13の鍔部17bが進入する上部溝部9dと、上部溝部9dに連設され第1のプラグ13の台部17aが進入する下部凹部9eと、を備えている。
【0033】
次に、防振装置6の組み立て方法及び取り付け方法について説明する。図5に示すように、前方から後方へ向けて、後側のファンケース9bのプラグ受け9cの上部溝部9dに第1のプラグ13の鍔部17bを進入させると共に、プラグ受け9cの下部凹部9eに第1のプラグ13の台部17aを進入させ、前側のファンケース9aの下部に形成された凸部9fが、前側のファンケース9aと後側のファンケース9bとの連結により、プラグ受け9cの前側の開放端を塞ぐようにし、第1のプラグの台部17a及び鍔部17bに当接した状態とする。すなわち、第1のプラグ13を、プラグ受け9cに移動不能に係合した状態とする。
【0034】
次いで、第1のプラグ13と第2のプラグ14の台座部20との間でゴム材19の外側に圧縮コイルバネ15を配置した状態で、台座部20のプラグレンチ係合部20dにプラグレンチを差し込んで係合させ第2のプラグ14を第1のプラグ13側へ押し込みながら回転させることによって、第1のプラグ13のボス部18の外周面の第1の雄螺子18aに、圧縮コイルバネ15の上端部を螺子込み係合させると共に、第2のプラグ14の台座部20の外周面の第2の雄螺子20aに、圧縮コイルバネ15の下端部を螺子込み係合させる。これにより図6に示す防振装置6が得られる。すなわち、防振装置6を簡易に組み立てることができる。なお、図6においては、後側のファンケース9bのプラグ受け9cは省略されている。
【0035】
この防振装置6の台座部20の鍔部20fを、図4に示すように、背負部1の底部5に当接させ、底部5に設けられた貫通孔5aに、ボルト21の軸部21bを挿通させた状態で、当該軸部21bの外周面の第3の雄螺子21cに、底部5側のナット16の雌螺子16aを螺合させ締め付けることによって、第2のプラグ14を、底部5に固定する。斯くの如く、防振装置6を簡易に底部5に取り付けることができる。なお、底部5においてナット16の周囲には、ナットドライバー等のナット締め付け工具を進入させる空間Aが形成されている。
【0036】
そして、薬剤タンク3に薬剤を収容していない状態では、第1のプラグ13の底面18bとゴム材19の先端部の先端面との間には、隙間Sが設けられている。
【0037】
図7は、薬剤タンク3に薬剤を入れた状態での防振装置6及びその近傍を示す縦断面図であり、図4に直交する縦断面図である。
【0038】
薬剤タンク3に薬剤を入れると、図7に示すように、その荷重で圧縮コイルバネ15が縮みながら第1のプラグ13が下方へ移動し、第1のプラグ13の底面18bとゴム材19の先端部の先端面とが当接し密着する。この状態では、圧縮コイルバネ15は線間密着していない。
【0039】
このように、本実施形態によれば、駆動源側となる第1のプラグ13と搭載部側となる第2のプラグ14との間に介在する圧縮コイルバネ15が縮み線間密着する前に、圧縮コイルバネ15の内側に配置され第1のプラグ13の底面18bに接離可能とされたゴム材19が、第1のプラグ13の底面18bに当接するため、圧縮コイルバネ15の線間密着が防止され、圧縮コイルバネ15の優れた防振性能が引き出されると共に、第1のプラグ13の底面18bがゴム材19に対して当接する際の衝撃は当該ゴム材19により吸収され、その結果、優れた防振性能を発揮できる。
【0040】
ここで、図2に示すように、背負式動力散布機100では、背負部1が側面視略L字状を呈し、底部5上に、エンジン駆動式送風機2を搭載しているため、エンジン駆動式送風機2が前方ではなく後方(図示左側)へ倒れやすくなっている。本実施形態では、ゴム材19の先端部の外周側、具体的には、図7に示すように、駆動源側となる第1のプラグ13のボス部18の底面の後側にストッパ18cが設けられているため、矢印で示すようにエンジン駆動式送風機2が後方へ倒れかかったときに、ゴム材19の先端部とストッパ18cとが当接し、エンジン駆動式送風機2が倒れることを抑えることができる。
【0041】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、駆動源をエンジン8としているが、電動機等であっても良い。
【0042】
また、上記実施形態においては、圧縮コイルバネ15及び第1,第2のプラグ13,14の軸心が略垂直方向へ向く縦置きの防振装置6としているが、従来技術で述べた特許6358833号のように略水平方向を向く横置きの防振装置、すなわち、圧縮コイルバネ15及び第1,第2のプラグ13,14の軸心が略水平方向へ向く防振装置6として用いることもできる。この場合には、駆動源を搭載する搭載部が背当部となり、駆動源と搭載部としての背当部との間に防振装置6が介在することになる。
【0043】
また、上記実施形態においては、駆動源を、ファンケース9、防振装置6を介して搭載部に搭載する、すなわち、駆動源側のファンケース9を、防振装置6を介して搭載部に搭載しているが、例えば後述の背負式動力噴霧機のように、駆動源を直接防振装置を介して搭載部に搭載する構成に対しても適用可能であり、要は、駆動源と搭載部との間に防振装置6が介在する構成であれば良い。従って、ゴム材19は、駆動源又はファンケース9等の駆動源側、又は、搭載部の一方側に設けられ、駆動源側又は搭載部の他方側に、ゴム材19が当接する構成であれば良い。
【0044】
また、上記実施形態においては、背負式動力散布機を例に挙げているが、例えば、薬液タンクに薬液を収容し、エンジンや電動機等の駆動源及び当該駆動源により駆動されるポンプにより薬液を噴霧する背負式動力噴霧機にも適用できる。これらの場合、薬剤や薬液を収容するタンクが背当て部を兼ねることもある。また、本発明は、これらの背負式動力散布機や背負式動力噴霧機の他、背負式動力ブロワ(送風機)や背負式動力刈払機等にも適用でき、背負式動力作業機全般に対して適用するのが好適である。また、背負式動力作業機だけに限定されるものではなく、手持ち式のブロアやチェーンソーに対しても適用でき、要は、駆動源の駆動による作業に際し搭載部への振動を、駆動源と搭載部との間に介在する防振装置6により防振する動力作業機に対して適用できる。なお、第1のプラグ13のストッパ18cは、上記種々の動力作業機に応じて、ゴム材19の先端部の一部の周囲に設けられていても良く、ゴム材19の先端部の全体の周囲に設けられていても良く、要は、ゴム材19の先端部の外周側に位置していれば良い。
【符号の説明】
【0045】
4…背当部、5…底部(搭載部)、6…防振装置、8…エンジン(駆動源、駆動源側)、9…ファンケース(駆動源側)、13…第1のプラグ、14…第2のプラグ、15…圧縮コイルバネ、16…ナット、16a…雌螺子、18a…第1の雄螺子、18c…ストッパ、19…ゴム材、20…台座部、20a…第2の雄螺子、20c…凹部、20d…プラグレンチ係合部、21…ボルト、21a…頭部、21b…軸部、21c…第3の雄螺子、100…背負式動力散布機(動力作業機)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7