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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】柔軟な塞栓インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019014397
(22)【出願日】2019-01-30
(62)【分割の表示】P 2016546758の分割
【原出願日】2015-01-14
(65)【公開番号】P2019107460
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2019-03-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】14/562,532
(32)【優先日】2014-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/154,395
(32)【優先日】2014-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511014703
【氏名又は名称】ピナンブラ、インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ラブキン、アレクサンダー・プラッジ
(72)【発明者】
【氏名】ポンス、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ホイ、デリラ
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】栗山 卓也
【審判官】莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-501131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塞栓インプラントを製造する方法であって、前記方法が
第1のワイヤーおよびマンドレルを準備する工程;
前記第1のワイヤーを前記マンドレルの回りに旋回させて内腔、近位端および遠位端を有する第1のコイルを形成する工程;
前記第1のコイルをヒートセットする工程;
形状設定治具を第2の形態を設定するために準備する工程;
前記形状設定治具を前記第1のコイルの内腔内に配置する工程;
前記第1のコイルをヒートセットして前記第2の形態を形状設定する工程;
形状記憶材料を含む第2のワイヤーを準備する工程;
前記第2のワイヤーを第2の形態にヒートセットして形状ワイヤーを形成する工程;
前記形状ワイヤーを前記第1のコイルの内腔内に配置する工程;および
前記形状ワイヤーを前記近位端、前記遠位端または両方に固定する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記方法が
ファイバーを準備する工程;
前記ファイバーを前記第1のコイルの内腔内に配置する工程;および
前記ファイバーを前記近位端、前記遠位端または両方に固定する工程;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ファイバーを前記近位端、前記遠位端または両方に固定する前記工程が、非外傷性の先端を前記近位端、前記遠位端または両方に形成する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ファイバーを前記近位端、前記遠位端または両方に固定する前記工程がインプラントツールによって解放可能に保持されるように構成された近位拘束組立体を準備する工程を含み、前記近位拘束組立体が近位拘束要素を含み、かつ前記ファイバーが前記近位拘束要素を貫通しそして結ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のワイヤーを前記ファイバーに取り付ける工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ファイバーを前記近位端に固定する前記工程が、前記近位拘束要素を貫通させてまたは前記近位拘束要素の回りでループにする工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、複数の開口を有する1つ以上の座金を準備する工程、前記1つ以上の座金を前記内腔の前記近位端または前記遠位端もしくは両方内に固定する工程、および前記ファイバーまたは前記形状ワイヤーもしくは両方を1つまたは複数の前記座金の前記開口を貫通させる工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
第2のワイヤーを準備する前記工程が、近位端、遠位端、全長、および前記全長に沿って可変な直径を有する第2のワイヤーを準備する工程であって、前記直径が前記遠位端の近くの直径よりも前記近位端の近くで小さい工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年1月14日に出願された米国特許出願第14/154,395号
(整理番号41507-716.201)の一部継続出願であり、その全内容は参照によ
って本明細書に組み込まれる。
技術分野
本発明は総じて、医療の分野に、より詳しくは動脈瘤または血管を閉塞するための塞栓
インプラントまたは塞栓コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルによる塞栓は、血管を閉塞することが、たとえば腫瘍栄養血管を閉塞するような
ことが、所望の処置選択肢である、脳動脈瘤、動静脈奇形および他の病状の処置のために
一般的に実施される手法である。典型的な閉塞コイルは、細長い第1の形状を有し、縦軸
のまわりに巻線が巻かれたワイヤーコイルである。典型的な動脈瘤コイル塞栓手順では、
カテーテルが大腿動脈中に導入され、X線透視下に血管系内を進められる。コイルがその
第1の形状をとってカテーテル内に配置される。カテーテルの遠位端が脳内の動脈瘤の部
位に配置される。コイルがカテーテルから動脈瘤の中に運ばれる。カテーテルから解放さ
れると、コイルは動脈瘤の空洞を最適に満たすように選択された第2の形状をとる。空洞
を最適に満たすために、複数のコイルが1つの動脈瘤空洞中に導入されてもよい。展開さ
れたコイルは、動脈瘤中に流れ込む血流を閉鎖し、かつ動脈瘤が破裂しないように補強す
る役割をする。この装置全体が一般にコイルと呼ばれているけれども、その装置のいくつ
かの個々の要素もまたコイルと呼ばれる。塞栓コイルおよび塞栓インプラントの用語が互
換的であることは理解されるであろうけれども、分かり易くするために、本発明の装置は
ほとんどの場合塞栓インプラントと呼ばれる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は総じて、医療の分野に、より詳しくは動脈瘤もしくは血管を閉塞するための塞
栓インプラントまたは塞栓コイルに関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】本発明による1つの実施形態の側面図であり、この実施形態はその送達の形態で示される。
【0005】
図1B図1Aの実施形態の側立面図であり、この装置はその第2の形態をしている。
【0006】
図2】本発明による1つの実施形態の側立面断面図であり、この実施形態はその送達の形態をしている。
【0007】
図3】本発明による他の実施形態の側立面断面図であり、この実施形態はその送達の形態で示される。
【0008】
図4】本発明による1つの実施形態の遠位要素の側面断面図である。
【0009】
図5】本発明による他の実施形態の遠位要素の側面断面図である。
【0010】
図6】本発明によるさらに他の実施形態の遠位要素の側面断面図である。
【0011】
図7】本発明による1つの実施形態の近位部分の側面断面図である。
【0012】
図8】本発明による他の実施形態の近位部分の側面断面図である。
【0013】
図9】本発明による別の他の実施形態の側面断面図である。
【0014】
図10】本発明によるさらに別の他の実施形態の側面断面図である。
【0015】
図11】本発明による1つの実施形態の平面図であり、この実施形態は被験者の血管の外部で展開された形態で示される。
【0016】
図12】本発明による他の実施形態の側面断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態が以下に記載される。分かり易くするために、個々の実際
の実施のすべての特徴が、この明細書に記載されているわけではない。実際の装置の開発
では、本発明の範囲内に依然として含まれる実施形態に帰するいくつかの修正がなされて
もよい。
【0018】
図1Aから始めると、本発明による塞栓インプラントが例示される。塞栓インプラント
10が、側立面図によってその直線状の第1の形状で示される。塞栓インプラント10は
、その近位端12からその遠位端14まで延在する。塞栓インプラント10は、かなりの
長さの細長い装置であるが、図1のイラストは、この装置の特徴部が拡大されて詳細が示
されるように切り詰められている。図1のイラストでは、第1のコイル16が見える。第
1のコイル16は、約0.012インチ(0.30mm)の第1のコイル直径D1を有す
るように巻かれたワイヤーから形成されるが、それより小さい直径および0.035イン
チ(0.89mm)もの大きい直径が、その代りに使用されてもよい。コイルのピッチは
図に示されたように均一でもよく、またはコイルの長さに沿って変化してもよく、もしく
はコイルの異なる区画が異なるピッチを有するように形成されてもよい。コイルに選ばれ
るワイヤー材料は、好ましくはX線透視できるもの、たとえば白金、白金/イリジウム、
白金/タングステン、パラジウムまたは他の適当な材料である。1つの実施形態では、コ
イルを形成するワイヤーは約0.0010~0.0020インチ(0.025~0.05
1mm)の直径を有する。第1のコイル16は、ワイヤーまたは他の繊維の連続旋回物か
ら形成されて巻線18を形成し、近位端12から遠位端14まで第1のコイル16の長さ
に本質的に延在する。第1のコイル16は遠位先端24における遠位端14の近くで終了
する。遠位先端24は、その最先端に、すなわち塞栓インプラント10の遠位端14に非
外傷性の先端を与えるように構成される。図1Aに見られる遠位先端24の部分は、適当
なポリマー、たとえばポリエステル、低密度ポリエチレン(LDPE)、アクリル接着剤
または他の材料から成型されまたは押出されることができる。本発明による遠位先端の様
々な代替構築物が、以下で詳細に検討される。
【0019】
さらに図1Aに見えるのは、近位組立体21である。近位端12に配置された近位組立
体21は、近位拘束球22、ファイバー26および結び目28から構成される。近位組立
体21および近位組立体の様々な代替的な実施形態は、以下でさらに詳しく検討される。
近位拘束球22は、ステンレス鋼、ポリマーまたは任意の他の適当な材料からつくられる
ことができる。ファイバー26は、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWP
E)、ポリプロピレンまたは他の適当な材料からつくられることができる。「球」の用語
が本明細書の全体にわたって使用されているけれども、本発明による他の実施形態が球状
でない近位拘束要素を有してもよいことは理解されるだろう。近位拘束要素は、より完全
でない程度に球形、楕円形、立方体形または他の適当な形状であってもよい。本発明によ
る近位拘束要素は、送達装置(図示されていない)によって解放可能に保持されるように
構成される。
【0020】
上記のように塞栓インプラント10は、その直線状の送達の形態で示されている。塞栓
インプラント10は、送達カテーテルまたはそれと同等のインプラントツール(図示され
ていない)を介して被験者の血管系中に送達されることができ、その間、塞栓コイルまた
は塞栓インプラント10はその送達の形態をしている。血管系内の処置部位に送達される
と、塞栓インプラント10は送達システムから解放され、第2の形態に戻ることになる。
本発明による第2の形態は、曲線状、かぎ状、J字状、スパイラル状、ヘリカル状、複雑
な形状、球状または任意の他の望ましい3次元の形態であることができる。塞栓インプラ
ント10の実施形態では、第2の形態は複雑な形状である。塞栓インプラント10は、図
1Bにその複雑な形状の第2の形態で示されている。図10Bで、塞栓インプラント10
は、もはや直線状の形態ではなくて、それ自体のまわりに巻かれまたは旋回されて複雑な
形状の3次元の配列をしている。この3次元の配列は、血管または動脈瘤中の血流を閉塞
することになる様式でインプラントを分配するのに好都合である。第1のコイル16およ
び近位端12が図1B中に見える。
【0021】
ここで図2を参照すると、この側面断面図は、塞栓インプラント30のいくつかの細部
を明らかにしている。図2で、塞栓インプラント30は、その第1の送達の形状または形
態で示されている。使用に際しては、塞栓インプラント30は、カテーテル送達システム
を介してその第1の形態に拘束されて送達される。塞栓インプラント30がカテーテルの
遠位端から展開されると、塞栓インプラント30はその第2の形態に戻る。本発明による
第2の形態は、曲線状、かぎ状、J字状、スパイラル状、ヘリカル状、複雑な形状、球状
または該装置を使用する治療目的に適している任意の3次元の形態であることができる。
本発明による複雑な形状の形態の一例は図11に例示され、また以下で詳細に説明される
【0022】
図2に例示された送達の形態では、塞栓インプラント30は、近位端32および遠位端
34を有する。第1のコイル40および内部コイル42は、近位端32から遠位端34ま
で延在し、内腔44を取り囲む。第1のコイル40は細い白金ワイヤーからつくられ、内
部コイルは柔軟な耐キンク性ニチノールからつくられる。塞栓インプラント30の近位端
32に配置されるのは、近位拘束組立体36である。近位拘束組立体36は、近位拘束球
37、ファイバー46および結び目41からつくられている。近位拘束球37は、金また
は錫ハンダ、白金、チタン、ステンレス鋼または他の適当な材料からつくられてもよい。
近位結合部52は近位端32の近くに環状様式で配置され、ポリエステル、アクリル接着
剤または他の適当な材料から形成されてもよい。近位結合部52を形成する材料は、第1
のコイル40の近位端のまわりにリフローされ、または別の方法で成型されてもよい。近
位組立体36は、近位拘束球37が内腔44内に入るのを防ぐ。近位拘束球37はまた、
塞栓インプラント30を送達する役割をし、送達ツールまたは米国特許出願第14/46
0,234号に開示されたような装置によって開放可能に保持されるように構成される。
【0023】
遠位端34に配置されるのは、遠位組立体35である。遠位組立体35を画定するのは
、遠位先端38、遠位球39および遠位結び目54である。内腔44内にあり、かつ内腔
44の全長に延在しているのはファイバー46である。内腔44内に配置されていること
に加えて、ファイバー46は、近位拘束要素または近位拘束球37の内部通路または貫通
穴(図示されていない)の内部に及びそれを通して配置される。
【0024】
ファイバーはこのようにして、近位端32の、内腔44を通り、近位拘束球37を通り
、および近位拘束球37の外に、近位において延在する。ファイバー46は、近位結び目
41を形成するように結ばれる。ファイバー46はこのようにして、近位端32に固定さ
れる。反対方向に進むと、ファイバー46は、近位拘束要素37から遠位方向に、内腔4
4を通って、かつ遠位球39を通って延在し、これは近位拘束球37と同様に内部通路ま
たは貫通穴(図2に示されていない)を有する。インプラント30が構築されている間、
ファイバー46はまた、遠位結び目54を形成するようにも結ばれる。ファイバー46は
このようにして、遠位端34に固定される。ファイバー46は耐伸張性であり、適当なポ
リマー、たとえばポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピ
レンまたは他の適当な材料からつくられることができる。ファイバー46は耐伸張性であ
るので、第1のコイル40および内部コイル42の伸張を防止する。伸張すると、これら
のコイルを塑性的に変形させる潜在的な可能性があり、カテーテル内への塞栓インプラン
ト30の引き込み格納性を妨げ、塞栓インプラント30がその直線状の送達形態からその
第2の形態に再構成する能力を潜在的に妨げる可能性を有する。
【0025】
遠位球39は非外傷性遠位先端38によって保持され、遠位球39もまた、別の実施形
態では非外傷性の形状を有することができる。非外傷性遠位先端38は、ポリマー材料、
たとえばポリエステル、アクリル接着剤または他の適当な材料から形成される。この材料
は射出され、成型され、リフローされ、押出されまたは他様に遠位球39、ファイバー4
6および遠位結び目54のまわりに置かれて、これらの要素を1つのものから他のものへ
としっかりと結合し、非外傷性遠位先端を形成する。遠位球39の埋め込みまたは他の保
持はまた、遠位球39が内腔44に入るのを防ぐ役割もする。遠位組立体35は近位組立
体36とともに、これらによってファイバー46にかかる張力を維持し、第1のコイル4
0および内部コイル42の伸張およびねじれを防ぐのに寄与する。
【0026】
同じく内腔44内に配置されているのは、形状ワイヤー48である。形状ワイヤー48
は、近位結合部52内に固定され、それから内腔44を通って遠位先端38まで延在する
。ワイヤー48は、ニチノールまたは他の適当な形状記憶材料から形成される。ワイヤー
48は、塞栓コイル30に所望の複雑な第2の形態を与える。形状ワイヤー48の近位端
は近位結合部52によって保持される。形状ワイヤー48の遠位端は、非外傷性の遠位先
端38に固定されまたはそれによって確保される。形状ワイヤー48はニチノールからつ
くられているので、これは非常に耐キンク性であり、塞栓インプラント30に柔軟さを与
え、それと同時に塞栓インプラント30に所望の第2の形状を確実に与える。別の実施形
態では、比較的細い白金ワイヤーが第1のコイル40を構成するために使用されてもよく
、これはまた塞栓インプラント30に柔軟さをも与え、本装置の安全性を高める。
【0027】
他の実施形態(図示されていない)では、形状ワイヤー48は、その遠位端に比べてそ
の近位端でより小さな直径を有するように研磨されまたは他の方法で形成されてもよい。
形状ワイヤー48の直径は、近位端32から遠位端34まで次第にまたは段階的に増加し
てもよい。その結果得られる塞栓コイルは、遠位端でより頑丈なまたはより剛直な第2の
形状および近位端の近くでより柔軟なコイルのものになる。最大の形状ワイヤー直径は、
本装置の遠位端に所望される頑丈さのレベルに基づいた直径になるだろう。
【0028】
上記の本発明の他の実施形態は、図3~10に例示される。以下に説明されこれらの図
に例示される塞栓コイルまたは塞栓インプラントは、図2に例示された実施形態と共通の
いくつかの要素を有する。もっとも、共通要素のうちのいくつかは図2の形態ではなく、
代わりの形態で準備される。簡潔にするために、各要素のすべての詳細の説明が各実施形
態について繰り返されるとは限らない。
【0029】
図3に例示された実施形態がこれから説明される。塞栓インプラント60は、近位端6
2および遠位端64を有する。塞栓インプラント60は、第1のコイル66および任意的
な内部コイル68を含み、これらの両方が内腔69の回りを囲む。図3の実施形態では、
第1のコイル66は白金からつくられ、内部コイル68はニチノールからつくられる。も
っとも、これらのコイルは他の適当な材料からつくられても本発明の範囲内にとどまるこ
とができる。内部コイル68は、形状記憶特性を与えるように任意的に処理されてもよい
。近位拘束組立体70は近位端62に配置される。ファイバー73が近位球74の貫通孔
(見えない)を通され、第1の近位結び目78を形成するように結ばれる。ファイバー7
3はまた、第2の近位結び目80を形成するように結ばれる。他の実施形態では、第2の
近位結び目80はコイル66の近位端より遠位に形成され、近位拘束組立体70のいくら
かのスライド移動を可能にする。このスライド移動は、近位球74および結び目80によ
って制限される。第2の近位結び目80の形成の後、インプラント60の構築の間、ポリ
エステルまたはアクリル接着剤が、第1のコイル66の近位端にリフローされ、成型され
または他様に配置されて、近位結合部85が形成される。近位結合部85は、ファイバー
73および第2の近位結び目80を固定しまたは確保する中実状の構造である。近位結合
部85、近位球74、ファイバー73、第1の近位結び目78および第2の近位結び目8
0は一緒に、近位拘束組立体70を画定する。近位結合部85は、近位拘束球74が内腔
69に入るのを防ぎ、ファイバー73にかかる張力を維持するのを助け、第1のコイル6
6および第2のコイル68の伸張および変形を防ぐ。
【0030】
また、近位結合部85に確保されまたは固定され、内腔69を通って遠位方向に延在し
ているのは、形状ワイヤー76である。ワイヤー76は、近位端62の近くの近位結合部
85中に埋め込まれまたは他様にそれに結合される。形状ワイヤー76は、塞栓インプラ
ント60に第2の形状を与えるように処理される。形状ワイヤー76の輪郭は、その長さ
に沿って一貫した輪郭または変化した輪郭のいずれかを示すように変えられることができ
る。より大きい輪郭の形状ワイヤーは、より頑丈な形状を提示し、より小さい輪郭の形状
ワイヤーは、より柔軟なコイルを提示する。形状ワイヤー76は、遠位方向に延在し、遠
位結合部86に固定される。遠位結合部86は、近位結合部85を形成するために使用さ
れたものと同様の技術を使用して形成されてもよい。しかし、インプラント60では、遠
位結合部86は近位結合部85よりももっと環状の構造を画定する。遠位結合部86は、
第1のコイル66の遠位端を包み込む。
【0031】
ファイバー73も、遠位方向に、内腔69を通り、さらに遠位球72の貫通孔を通って
延在する。ファイバー73は遠位端64の近くの遠位結び目84を形成するように結ばれ
る。遠位結合部86は、遠位球72が遠位端64で内腔69に入るのを防ぐ。近位結合部
85および遠位結合部86の両方は、耐伸張性の部材73内の張力を維持し、かつ第1の
コイル66および内部コイル68の伸張および潜在的な延伸を防ぐ役割をする。
【0032】
上記のように、塞栓インプラント60の組立ての前に、第2の形態がワイヤー76に与
えられる。しかし、塞栓インプラント60およびワイヤー76は、塞栓コイル60が血管
内で送達されることができるように、送達カテーテルまたはそれと同等の装置によって総
じて直線状、すなわち送達の形態に拘束される。塞栓インプラント60が被験者の血管ま
たは動脈瘤内に送達された後は、ワイヤー76はその直線状の送達形態からその第2の形
態(図示されていない)に戻る。従って、塞栓インプラント60もまた、その第2の形態
、たとえば図1Bに例示されたような形態に戻る。
【0033】
図4は本発明による他の実施形態の要素を例示する。図4は遠位組立体90のみを示し
、遠位組立体90は、使用中、本発明による塞栓インプラントの遠位端に配置される。遠
位組立体90は、塞栓コイルまたは塞栓インプラントの製作において図2、3に例示され
た遠位組立体の代わりとして使用されることができる。遠位組立体90はファイバー92
の遠位端を含む。ファイバー92は遠位結び目94を形成するように結ばれる。材料、た
とえばポリエステル、アクリル接着剤または他の適当な材料が、ファイバー92および遠
位結び目94のまわりにリフローされ、成型され、注入されまたは他の方法で形成されて
、非外傷性の遠位先端96を形成する。遠位先端96は、ファイバー92および遠位結び
目94を確保しまたは固定し、ファイバー92にかかる張力を維持する。遠位先端96は
また、第1のコイル98の遠位端(その一部が図4に示されている。)および形状ワイヤ
ー97の遠位端に結合して、一緒に遠位組立体90の要素を形成する。
【0034】
図5は本発明による遠位組立体のさらに別の他の実施形態を例示する。遠位組立体10
0はファイバー102を含む。ファイバー102は、チューブセグメント104の中を通
され、遠位結び目106を形成するように結ばれる。遠位先端108は、硬化された材料
、たとえばポリエステル、アクリル接着剤または他の適当な材料から形成され、この材料
は、チューブセグメント104、ファイバー102、第1のコイル107の遠位端および
遠位結び目106のまわりにリフローされ、成型され、注入されまたは他の方法で置かれ
、これらと結合される。形状ワイヤー109の遠位端もまた、遠位先端108に固定され
、またはチューブセグメント104と機械的に係止されてもよい。遠位組立体100は、
非外傷性の先端を画定し、ファイバー100にかかる張力を維持する。
【0035】
図6は本発明による別の他の実施形態の遠位端のみを例示する。遠位組立体110は、
第1のコイル112の遠位端に配置され、図6に断面で示される。ポリマー、たとえばポ
リプロピレンのようなポリマーが融解されリフローされて、第1のコイル112の遠位端
に結合され、かつ非外傷性の遠位先端114を形成する。また、上記の工程の間に遠位先
端114に固定されるのは、形状ワイヤー115およびファイバー116のそれぞれの遠
位端であり、これらは遠位先端114に埋め込まれる。
【0036】
図7は、本発明によるインプラントの近位部分のみの他の実施形態を例示する。近位組
立体120は近位球122を含む。近位ループ124はワイヤーから形成され、これはル
ープへと形成され、近位球122の貫通孔を通され、近位球122に溶接される。ポリマ
ーファイバー126は、次なる順番としてループにされ、すなわち近位ループ124を通
されて、ファイバー126を近位組立体120に確保する。近位結合部128は、上記の
方法と同様な様式で第1のコイル130の近位端に結合される。形状ワイヤー125もま
た、その近位端で近位結合部128に結合され、または近位結合部128によって確保さ
れる。近位結合部128は、近位球122が内腔131に入るのを防ぎ、かつ第1のコイ
ル130および第2のコイル132の伸張および/または永久変形を防ぎ、第1のコイル
130および第2のコイル132の近位端は図7に示されている。
【0037】
図8は、本発明による近位組立体の別の実施形態を例示する。近位組立体140は近位
拘束球142を含む。近位拘束球142は貫通孔(見えない)を含み、その中をワイヤー
144が通され、次にそのワイヤーが近位拘束球142に溶接される。ワイヤー144は
近位端146および遠位端148を有する。近位組立体140の遠位端148で、ワイヤ
ー144は平たくされ、ドリルによってまたは他様に加工されて、穴150が形成される
。ファイバー152が穴150を通され、ループにされる。あるいは、2倍の長さのファ
イバー152が、ファイバー152の引張強さを2倍にするために使用されてもよい。図
8に図示されていないけれども、ファイバー152は塞栓インプラントの内腔を通って遠
位方向に延在する。近位結合部154は、前に記載された実施形態に関して説明された結
合部と同様の様式で形成され、第1のコイル160の近位端に、および任意的に形状ワイ
ヤー155の近位端に結合される。近位拘束組立体140が塞栓コイルの要素である場合
には、近位拘束組立体140はファイバー152にかかる張力を維持するのを助け、この
塞栓コイルの伸張および/または変形を防ぐ。
【0038】
図9は、本発明による塞栓インプラントの他の実施形態を例示する。塞栓インプラント
200は、従来技術のインプラントに勝る多くの利点を提示し、たとえば安全性を高める
近位の柔軟さが挙げられる。塞栓インプラント200は特に、その遠位端201から近位
端205へと次第に増加する柔軟さを提示する。言いかえれば、遠位端201は、近位端
205が示すのよりも頑丈な第2の、または3次元の形状を示す。また、近位端205は
、より大きい全体的な順応性および柔軟さを示す。塞栓インプラント200のようなイン
プラントは、送達カテーテルの拘束から開放されると、たとえば図11に例示された形態
のような形状に戻るように形状設定されることができる。図11はより詳細に以下で検討
される。
【0039】
塞栓インプラント200は、その特徴を容易に見ることができるように図9に断面で示
される。塞栓インプラント200は第1のコイル202を含む。第1のコイルは、コイル
に適した上記の材料のうちのいずれからつくられてもよい。第1のコイル202は内腔2
03を含む。内腔203内に配置され、その中を通って延在するのは、ファイバー204
である。同じく内腔203内に配置されているのは、楕円穴座金212であり、1つは近
位端205の近くに、1つは遠位端201の近くに配置される(「楕円穴座金」の用語は
、本明細書では丸い孔および楕円形の穴を有する座金を説明するために使用される。複数
の穴または開口を有する任意の座金が、本発明の範囲内の実施形態を形成するために使用
されることができることが理解されるだろう)。ファイバー204は、楕円穴座金212
の楕円穴209を通される。ファイバー204はさらに、近位端209にある楕円穴20
9を通過し、近位端205を越えて延在し、近位拘束組立体207に取り付けられる。近
位拘束組立体207は、より詳細に以下で説明される。
【0040】
同じく内腔203を通って延在しているのは、第1の形状ワイヤー206である。第1
の形状ワイヤー206の各端は、開口213を介して楕円穴座金212を通って延在する
。さらに、第1の形状ワイヤー206の各端は任意的に、平たくされてまたは広げられた
要素211に取り付けられて、第1の形状ワイヤー206が開口213を通り抜けて戻る
のを防ぐ。第1の形状ワイヤー206は、最も好都合にはニチノールからつくられる。第
1の形状ワイヤー206は、塞栓インプラント200に第2の形状を与えるように形状設
定される。第1の形状ワイヤー206と対にされているのは、遠位支持ワイヤー208で
ある。遠位支持ワイヤー208は、塞栓インプラント200の遠位端201に向かって形
状ワイヤー206とつながれている。図9の例では、遠位支持ワイヤー208は形状ワイ
ヤー206に結合部210で取り付けられている。形状ワイヤー206が遠位支持ワイヤ
ー208と対にされているところで、形状ワイヤー206の剛直性または頑丈さは遠位支
持ワイヤー208によって強化され、これらの両部材は塞栓インプラント200の第2の
形態を与える。近位端205の近くでは遠位支持ワイヤー208が存在しないので、第1
の形状ワイヤー206が、より柔軟な、より低い頑丈さの第2の形状を示し、近位端20
5の次第に増加する柔軟さを生み出すことが可能になる。
【0041】
また、第1のコイル202の各端に配置されているのは、溶接継手221である。図9
の例では、溶接継手221は白金-白金結合からつくられている。各溶接継手221は、
それぞれ楕円穴座金212を第1のコイル202に固定する。溶接継手221が構築され
た後、非外傷性の先端214が、成型されたポリマーまたは接着剤から形成される。ファ
イバー204も非外傷性の先端214内に確保される。遠位端201に配置された非外傷
性の先端214はまた、遠位ペグ222を確保し、これは以下で詳細に説明される。
【0042】
ここで近位端205を検討すると、楕円穴座金212は、近位拘束組立体207が内腔
203に入るのを防ぐ。近位拘束組立体は従って、ファイバー204にかかる張力を維持
することを助ける。いくつかの構造物が近位拘束組立体207を画定する。これらの構造
物は、ファイバーループ217、近位拘束要素または近位拘束球216、接着剤218お
よび近位ワイヤー220を含む。ファイバーループ217は、近位拘束球216内の穴を
通される。近位ワイヤー220が、次なる順番としてループ217の近位端を通される。
ループ217はそれによって近位拘束球216と近位ワイヤー220とをつなぎ、近位端
205でファイバー204の機械的なロックを形成する。接着剤218は、近位ワイヤー
220、ループ217および近位拘束球216を確保するように成型されまたは施与され
る。
【0043】
ここで遠位端201に戻ると、ファイバー204は、遠位方向に塞栓インプラント内腔
203、次に遠位端201に配置された座金212の開口209を通される。ファイバー
204は、遠位ペグ222に結び付けられ、結び目で結わえられまたは他様につながれる
。遠位ペグ222は、ステンレス鋼、白金または他の同様に剛性の材料から形成されるこ
とができる。遠位ペグ222およびファイバー204は、遠位の非外傷性の先端214に
埋め込まれ、または他様に固定され、または結合され、遠位の楕円穴座金212に隣接し
て機械的なロックを形成する。近位拘束組立体207と遠位ペグ222とは、一緒にファ
イバー204にかかる張力を維持し、それによって塞栓インプラント200が伸張および
延伸に抗することを可能にする。
【0044】
ここで図10を検討すると、本発明による他の実施形態が説明される。塞栓インプラン
ト250はその直線状の送達の形態で示される。送達カテーテル(図示されていない)の
拘束からの解放に引き続いて、塞栓インプラントは形状設定された第2の形態に戻る。第
2の形態は、本発明による多くの形状のうちのいずれであってもよく、たとえば上記の図
1Bおよび下記の図11に例示された複雑な形状である。
【0045】
塞栓インプラント250は、近位端251および遠位端253を有する。楕円穴座金2
61は近位端251に配置され、楕円穴座金262は遠位端253に配置される。塞栓イ
ンプラント250は第1のコイル252を含み、これは第2の、展開された形態を塞栓イ
ンプラント250に与えるように製造過程で形状設定される。第1のコイル252は内腔
254を取り囲む。内腔254内に配置されているのは、ファイバー258である。図9
に関して説明されたのと同様な様式で、ファイバー258は、楕円穴座金262の楕円穴
257を通り、そして楕円穴座金261の楕円穴269を通って延在する。楕円穴座金2
61を通り抜けた後に、ファイバー258はぐるりと回って元に戻りループ271を形成
し、内腔254内に引き込まれ、それ自体に結ばれて結び目259を形成する。
【0046】
同じく内腔254内に配置されているのは、遠位支持ワイヤー256である。遠位支持
ワイヤー256は、遠位支持ワイヤー256が置かれた遠位領域において塞栓インプラン
ト250の第2の形態に、より大きい頑丈さを与える(塞栓インプラント250は、その
近位端251の近くではより柔軟な形状である)。遠位支持ワイヤー256は、結合部2
60でファイバー258に取り付けられている。遠位支持ワイヤー256は、その遠位端
において楕円穴座金262の開口263を通って延在する。遠位支持ワイヤー256の遠
位端は、任意的に平たくされ広げられた要素280を形成し、または広げられた要素28
0に取り付けられて、遠位支持ワイヤー256を楕円穴座金262に機械的にロックする
【0047】
溶接継手264が上記と同様な様式で近位端251につくられ、また非外傷性の先端2
75が、リフローされたまたは成型されたポリマー、接着剤もしくはこれら組み合わせか
ら形成される。溶接継手264は、第1のコイル252および楕円穴座金261を近位端
251に固定する。遠位端253では、溶接継手267が第1のコイル252および楕円
穴座金262を同様に結合する。成型されたまたはリフローされたポリマー、接着剤また
は同等の材料が非外傷性の先端277を形成する。
【0048】
近位拘束組立体265は、図9との関連で上で説明された近位拘束組立体に似ている。
近位拘束要素または近位拘束球266は、ファイバー258および近位拘束ワイヤー27
0につながれる。ファイバー258は、近位拘束球266を通されるかあるいはそのまわ
りに巻き付けられてループにされる。また近位拘束ワイヤー270はループ271を通さ
れる。接着剤268は、近位拘束球266、ファイバー258および近位拘束ワイヤー2
70を確保する。楕円穴座金261は、近位拘束球266が内腔254に入るのを防ぎ、
第1のコイル252の伸張および/または変形を防ぐ。遠位端253では、ファイバー2
58は遠位ペグ272に結び付けられまたは他様に連結され、遠位ペグ272は遠位の非
外傷性の先端275に埋め込まれ、または他様に結合されもしくは固定される。ファイバ
ー258を遠位ペグ272に確保することは、ファイバー258にかかる張力を維持する
ことを助ける。
【0049】
上記のように、塞栓インプラント250は、第2の形態、たとえば上の図1Bに例示さ
れた形態に戻るように形状設定されることができる。インプラント250を形状設定する
際の有利な工程として、第1のコイル252を形状設定する工程が挙げられる。第1のコ
イル252が、直管マンドレルのまわりに長尺白金ワイヤーの連続旋回物を巻くまたは他
様に形成することによって最初に形成される。巻かれたワイヤーは、次にヒートセットさ
れて、第1のコイル形状を「記憶する」ことができる。連続旋回物から形成された白金製
の第1のコイルは、次に所望の第2の形状を有する治具のまわりで形状を与えられること
ができる。白金製の第1のコイルは、次にヒートセットされて該治具の形状を「記憶する
」。動脈瘤内の、または別のインプラントによって画定された枠組み内の空間を容易に満
たす小さい輪郭のコイルを形成する際に特に好都合なことは、第1のコイルの旋回物が治
具のまわりに巻き付けられる、そのような治具を利用することである。言い換えれば、第
1のコイルが最初に巻かれ次に治具の外側に巻き付けられる代わりに、該治具はヒートセ
ット工程の間第1のコイルの内腔内に配置される。このような工程は、より小さい第1の
直径のコイルおよびより小さい輪郭の第2の形態をもたらす。
【0050】
ここで、図11を検討すると、本発明による1つの実施形態が説明される。上の図1B
は、本発明よるインプラントの複雑な第2の形状の例を示しているけれども、図11は本
発明によってつくられた塞栓インプラントの代替的な複雑な第2の形状または第2の形態
を例示する。図11は、被験者の血管の外部で、たとえば研究室の実験台上のようなとこ
ろで、その展開された形態でインプラント300の平面図または上面図を例示する。上記
の実施形態と同じように、図11に例示された実施形態もまた送達の形態を有し、これは
図9に例示されたものと同様に、概して直線状であり、この装置がカテーテルまたは同等
な送達ツール(図示されていない)内に搭載され、それを介して送達されることを可能に
する。血管の外部におけるその第2の形態では、インプラント300は近位セグメント3
02を有する。近位セグメント302は、比較的柔軟なまたは曲がり易い形状ワイヤー(
図11では見えない)によって成形される。近位セグメント302に第2の形状を与える
形状ワイヤーは、小さい直径、微細な研磨または比較的柔軟なフィラメントを生み出す他
の加工工程のいずれかの故に、柔軟なまたは曲がり易いものである。該フィラメントの広
い範囲の柔軟性または曲がり易さは本発明の範囲内であり、「比較的」の用語は、本明細
書では遠位セグメント304と比較しての意味で使用され、これは以下で検討される。
【0051】
近位セグメント302は、血管の外部で、らせん状の第2の(または展開された)形態
を有する。あるいは、近位セグメントは、複雑な、以下でより詳細に説明される遠位セグ
メント304の第2の形態に類似した第2の形態を有してもよい。さらに別の他の実施形
態では、本発明による近位セグメントは、真っすぐなまたは直線状の形態を有してもよい
。近位セグメント302のらせんの広い範囲の外直径は本発明の範囲内であるけれども、
ここに例示された例では、近位セグメント302の外直径はおよそ2~30mmである。好
ましい実施形態では、近位セグメント302およびセグメント304の両方がそれらの第
2の形態にある場合には、近位セグメント302の外直径は遠位セグメント304の外直
径未満である。近位セグメント302の第2の形態を形成する技術は当該技術分野で知ら
れており、たとえば近位セグメント302内に配置された形状ワイヤーをマンドレルのま
わりに巻き付け、該セグメントを熱処理することによって、それが形状記憶挙動によって
らせん形状に戻るようにすることが挙げられる。形状記憶目的を達成するための代替的な
技術は本発明の範囲内である。
【0052】
上記のように、インプラント300は遠位セグメント304も有する。遠位セグメント
304もまた、その内部に配置されしたがって図11に見えないが、ワイヤーからつくら
れている形状ワイヤー、フィラメントまたは同等な構造体を含み、これらは近位セグメン
ト302をつくるのに使用されるものよりも剛直である(あるいは、コイルは、拘束から
開放されると図11の形態に戻るように形状設定されてもよい)。遠位セグメント304
の形状は、近位セグメント302をつくるのに使用されるものよりも大きい太さを有する
ワイヤーまたはフィラメントから、上の図2に関して説明されたのと同様な様式で形成さ
れてもよい。別の例として、遠位セグメント304は、上の図9に図示されたものと同様
に、形状ワイヤーと対にされた支持ワイヤーを含んでいてもよく、この支持ワイヤーは遠
位セグメント304の長さだけ延在している。さらに別の例として、アニーリングのよう
な追加の加工工程が、遠位セグメント304の形状ワイヤーを形成するフィラメントをつ
くるのに使用される材料に実施されてもよい。遠位セグメント304の形状ワイヤーを製
造するのに使用される技術にかかわりなく、得られた第2の構造体は、近位セグメント3
02のものよりも剛直または頑丈な3次元の物体である。
【0053】
さらに、図11に見ることができるように、遠位セグメント304は、近位セグメント
302の概してらせん状の形状よりも複雑な第2の形態を有する。本発明による他の実施
形態では、遠位セグメントは、らせん状で、近位セグメント302の説明に関して上でよ
り詳細に説明した第2の形態と同様な第2の形態を有してもよい。図11に例示された例
では、遠位セグメント304の展開された形状は、側部306、頂部308および底部3
12を有することで特徴付けられる。側部306、頂部308および底部312は一緒に
なって、概して丸みを帯びた角を有する立方形を画定する。したがって遠位セグメント3
04は、立方体の形状を有すると説明されることができる。「立方体」の用語は本明細書
では、いくつかの面を有する3次元の形状を表示するために使用され、本発明による特定
の実施形態では6個の面を有しても有しなくてもよい。各面の角および縁は直角でも丸み
を帯びてもよく、曲線状でも直線状でもよい。各面は、他の面と等しい寸法を有しても有
しなくてもよい。さらに、図11に見られるように、遠位セグメント304の第2の形状
は、いくらかの開いた「内部」空間を枠組みし、コイル状の要素の多くは遠位セグメント
304の第2の形状の外側縁を画定する。
【0054】
近位セグメント302とは非常に異なる第2の形状を有することに加えて、遠位セグメ
ント304はまた、近位セグメント302よりも大きい外部輪郭または外直径を有する。
たとえば図11に例示された実施形態では、遠位セグメント304は、約3~32mmの外
直径を有する。遠位セグメント304を成形する技術は、遠位セグメント304の耐伸張
性の部材を特殊マンドレルまたは同等なツールのまわりに巻き付ける工程、そして遠位ワ
イヤー部材が該ツールによって与えられた第2の形状に戻るように遠位ワイヤー部材を熱
処理する工程、の一連の工程を含む。遠位セグメント304内に配置される耐伸張性部材
をつくる他の技術は、本発明の範囲内である。
【0055】
より大きいこの外直径、該形状の外側縁の材料の集中程度、および遠位セグメント30
4のより剛直な内部ワイヤーの3者の組み合わせは、血管内で遠位セグメント304をイ
ンプラント300に対するまさに「アンカー」のように機能させる。言い換えれば、イン
プラント300が血管内で展開されたときに、遠位セグメント304は、血管壁に対して
半径方向外向きの力を発揮する。また、被験者の血管内で展開されたときに、血流は近位
セグメントを遠位セグメント304の「内部」に運び込み、遠位セグメント304を満た
し、そしてインプラント300内を通り抜けるさらなる血流を有効に防ぐことができる。
この点で、インプラント300は「アンカー」セグメントおよび「充填材」セグメントを
有効に有しており、柔軟であり、十分に詰められた塞栓インプラントをもたらす。
【0056】
ここで図12について検討すると、本発明による別の他の実施形態が説明される。塞栓
インプラント400は、図9に例示された塞栓インプラントの多くの同一の特徴を共有す
る。塞栓インプラント400は、従来のインプラントに勝る多くの優位点、たとえば安全
性を高める柔軟さを有する。塞栓インプラント400は特に、その遠位端401からその
近位端405まで次第に増加する柔軟さという特徴を提示する。言い換えれば、遠位端4
01は、近位端405よりも構造化された第2のまたは3次元の形状を示す。また、近位
端405は、より大きい全体的な従順性および柔軟性を示す。塞栓インプラント400の
ようなインプラントは、送達カテーテルの拘束から解放されると、第2の形状、たとえば
上の図11に例示された形態のような形状に戻るように形状設定されることができる。
【0057】
塞栓インプラント400は図12に、その特徴が容易に見られるように断面で示される
。塞栓インプラント400は、約0.018インチ(0.46mm)の第1の直径を有す
る。塞栓インプラントは第1のコイル402を含む。第1のコイルは、上で記載されたコ
イルに適した材料のうちの任意のものからつくられることができる。第1のコイル402
は内部に内腔403を含む。第1のコイル403は、送達カテーテル(図示されていない
)からの解放に引き続いて第2の形状を示すように形状設定される。第1のコイル403
は、白金または他の適当な形状記憶材料からつくられることができる。内腔403を通っ
て延在しているのは、ファイバー404である。ファイバー404はまた、近位端405
を越えて延在し、近位拘束組立体407に取り付けられる。近位拘束組立体407は、よ
り詳細に以下で説明される。同様に、内腔403を通って延在しているのは、第1の形状
ワイヤー406である。第1の形状ワイヤー406は、最も好都合にはニチノールからつ
くられる。第1の形状ワイヤー406と対にされているのは、遠位支持ワイヤー408で
ある。遠位支持ワイヤー408は、塞栓インプラント400の遠位端401に面して第1
の形状ワイヤー406につながれる。形状ワイヤー406の剛性は遠位支持ワイヤー40
8によって補強され、これら両方の部材は塞栓インプラント400に第2の形態を与える
。近位端405に遠位支持ワイヤー408が存在しないことは、近位端405に漸進的な
柔軟さを与える。図12の例では、遠位支持ワイヤー408は、第1の形状ワイヤー40
6に結合部410で結合される。
【0058】
上記のように、第1の形状ワイヤー406は、塞栓インプラント400の全長に本質的
に延在する。形状ワイヤー406の各端は、開口413によって楕円穴座金412を通っ
て延在する。楕円穴座金412は、第1のコイル402の各端に配置される。同様に、第
1のコイル402の各端に配置されているのは、成型されたポリマーまたは接着剤421
であり、これらのそれぞれは、楕円穴座金412を第1のコイル402およびファイバー
404に確保し、非外傷性の先端414を形成する。近位端405および遠位端401の
両方は、非外傷性の先端414を有する。
【0059】
いくつかの構造物が、近位拘束組立体407を画定する。上記のように、ファイバー4
04は近位端405を越えて延在する。ファイバー404はぐるりと回って元に戻りルー
プ417を形成する。ループ417を形成した後、ファイバー404は、内腔403内に
戻って延在し、結び目415によってそれ自体に固定される。ループ417は、近位拘束
球416と近位ワイヤー420とをつなぐ。接着剤418が、近位ワイヤー420、ルー
プ417および近位拘束球416を確保するように成型されまたは施与される。楕円穴座
金412および接着剤421は、近位拘束球416が内腔403に入るのを防ぐ。
【0060】
内腔403を通って遠位方向に延在し、ファイバー404は遠位ペグ422に結び付け
られ、結び目で結わえられまたは他様につながれる。遠位ペグ422およびファイバー4
04は、遠位の非外傷性の先端414に埋め込まれ、または他様に固定される。近位拘束
組立体407と遠位ペグ422とは、一緒にファイバー404にかかる張力を維持し、そ
れによって塞栓インプラント400が伸張および可塑的変形に抗することを可能にする。
【0061】
図9の実施形態と異なり、塞栓インプラント400はまた、ジャケット425も含む。
ジャケット425は第1のコイル402を覆いまたは包み込む。ジャケット425は、好
ましくは血栓形成性の材料、たとえばポリエステル、ポリプロピレン、絹または他の適当
な材料からつくられる。1種または複数の血栓形成性材料は、モノフィラメントまたはマ
ルチフィラメントのファイバーであってもよい。ジャケット425は、1種または複数の
ファイバーをコイル402と係合させて包む、巻く、編む、縫うまたは他様に配置するこ
とによってつくられてもよい。ジャケット425は、コイル402の上に配置されまたは
コイル402に直接施与されてジャケット425を形成する「袖」のような構造を形成す
るようにつくられてもよい。
【0062】
以上の実施形態は、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。すべての修正
物、等価物および代替物は本発明の範囲内である。例として、本発明による近位高速要素
または遠位拘束要素は、球状である必要はなくて、円盤状、ブロック状、涙滴状または任
意の適当な他の形状であってもよい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12