(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】中空インゴットの切断
(51)【国際特許分類】
C03B 20/00 20060101AFI20220415BHJP
F27B 14/18 20060101ALI20220415BHJP
C03B 17/04 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
C03B20/00 E
F27B14/18
C03B17/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019206650
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2020-01-07
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510255381
【氏名又は名称】ヘレウス コナミック ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】アラン・マンディ
(72)【発明者】
【氏名】ハメド・アガジャニ
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ジョージ・セイス
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02852891(US,A)
【文献】実公昭49-029250(JP,Y1)
【文献】特開昭54-126214(JP,A)
【文献】米国特許第03212871(US,A)
【文献】特表2002-520249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
F27B 14/00-14/20
C03B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空石英ガラスインゴットを製造する方法であって、以下のプロセスステップ:
a.るつぼまたは耐火物タンクに軟化した石英ガラス塊を提供すること;
b.前記軟化した石英ガラス塊を、マンドレルが取り付けられたダイを通して垂直に出し、中空石英ガラスインゴットを提供すること;および
c.前記中空石英ガラスインゴットを特定の長さにオンラインで切断すること、により特徴付けられ、
前記中空石英ガラスインゴットの内面は、ステップbでの前記軟化した石英ガラス塊を垂直に出した後で、プロセスステップcでのオンライン切断の前に、能動的手段によって冷却され、
前記マンドレルは、マンドレルサポートカラムで下から支持されており、前記カラムが下部キャリッジから取り外され、各切断されたインゴット部分が取り出される間、一時的に前記マンドレルを所定の位置に保持する手段が提供され、そしてその後に前記カラムは前記下部キャリッジに再び取り付けられ、そして、前記マンドレルサポートカラムを切断しないように、前記インゴットは円周方向に切断される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記中空石英ガラスインゴットの内面は、
1)前記マンドレルサポートカラムの周りに配置されたコイルによる手段、ここで前記コイルは冷却液を含み、
2)前記マンドレルサポートカラム内部に配置された冷却液で冷却される前記マンドレルサポートカラム自体による手段、
3)前記中空石英ガラスインゴットの内部空洞における不活性ガスのガス流による手段、および/または
4)複数の噴流として、または微細液滴の霧化ミストとして発する水スプレーによる手段の1つ以上によって冷却されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中空石英ガラスインゴットの外面は、冷却ガス、冷却液、能動的な対流および/または放射の能動的手段を強化することにより冷却される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記中空石英ガラスインゴットは、プロセスステップcでのオンライン切断の前に、前記中空石英ガラスインゴットの内面の温度が400℃未満に冷却される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記中空石英ガラスインゴットは、プロセスステップcでの
オンライン切断の前に、前記中空石英ガラスインゴットの外面の温度が400℃未満に冷却される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
切断ゾーンでの前記中空石英ガラスインゴットの内面と外面との間の温度差は300℃未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップcでの切断の前の前記中空石英ガラスインゴットの弾性引張応力は、5MPa未満に低減される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プロセスステップcは、ダイオリフィスから出された前記中空石英ガラスインゴットに沿って、前記ダイオリフィスから1800mmから4000mm間隔があけられた切断ステーションで実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
中空石英ガラスインゴットの連続生産のための装置であって、以下の手段;
(a)るつぼまたは耐火物タンクの底部にダイオリフィスを有する軟化した石英ガラス塊を提供するためのるつぼまたは耐火物タンク;
(b)前記軟化した石英ガラス塊をダイを通して垂直に出し、中空石英ガラスインゴットを提供するマンドレル;および
(c)前記中空石英ガラスインゴットを特定の長さにオンライン切断するための切断
ステーション;
を備え、前記装置は、前記切断ステーションの前に前記中空石英ガラスインゴットの内面を冷却するための能動的手段を備え、そして、
前記マンドレルは、マンドレルサポートカラムで下から支持され、そして前記カラムが下部キャリッジ(21)から取り外され、各切断されたインゴット部分が取り出される間、一時的に前記マンドレルを所定の位置に保持する手段が提供され、そしてその後に前記カラムが前記下部キャリッジに再び取り付けられ、前記マンドレルサポートカラムを切断しないように、前記インゴットは円周方向に切断される、ことを特徴とする、装置。
【請求項10】
前記装置は、
1)前記マンドレルサポートカラムの周りに配置されたコイルによる手段、ここで前記コイルは冷却液を含み、
2)前記マンドレルサポートカラム内部に配置された冷却液で冷却される前記マンドレルサポートカラム自体による手段、
3)前記中空石英ガラスインゴットの内部空洞に不活性ガスのガス流を提供する手段、および/または
4)複数の噴流として、または微細液滴の霧化ミストとして発する水スプレーを提供する手段、の1つ以上による前記中空石英ガラスインゴットの内面を冷却する手段を備える、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様において、本発明は、中空石英ガラスインゴットの連続製造方法に関する。第2の態様において、本発明は、請求された方法で使用される中空石英ガラスインゴットの製造装置に関し、そして第3の態様では、本発明は、請求された方法に従って調製される中空石英ガラスインゴットに関する。
【背景技術】
【0002】
中空石英ガラスインゴットの連続生産のための方法および装置は、先行技術から知られている。これらの連続プロセスでは、石英は熱を供給することにより耐火物るつぼ内で溶融され、溶融石英はマンドレルが取り付けられた中央のダイオリフィスから引き出される。その後、インゴットを一定の速度で徐々に下げ、溶融シリカを急冷して、中空円柱状のインゴットまたはチューブを形成する。それぞれのプロセスは、例えば、US9,242,887およびCN 103 771690に開示されている。通常、そのような方法によって提供されるチューブ(中空インゴット)は、比較的小さな直径と薄い壁を持っている。例えば、CN103 771 690では、直径300から320mm、壁厚10から12mmのチューブ(中空インゴット)が製造されている。
【0003】
大きな外径、特に350mmを超える外径、および壁厚を有する中空石英ガラスインゴットの連続生産で発生する1つの問題は、インゴットが炉の下の長さにて切断されるときのインゴットでの亀裂の形成である。石英ガラスインゴットにおけるこのような亀裂の問題は、上記の先行技術文献の教示では解決されない。
【0004】
特に大きな中空石英ガラスインゴットの製造に焦点を当てたもう一つの先行技術は、US7,305,852であり、るつぼに溶融石英を充填し、溶融プロセスの完了後に限られた量のロッド、プレートまたは中空インゴットを引き出すプロセスを開示している。このプロセスで使用される炉は連続的に使用されるのではなく、バッチで操作するため、溶融石英でるつぼを満たし、溶融後にガラスを引き出して炉を空にすることができる。この不連続な操作が引き起こす熱変動のため、意図したサイズのインゴットは、深刻な亀裂を起こさずにオンラインで切断できなかった。さらに、それぞれのバッチプロセスには経済的な欠点がある。
【0005】
US 2017/0349474 Aは、従来のガラス溶融物の溶融、およびインゴットの部分の製造について説明している。開示されたプロセスは、形成後のインゴットのオンライン切断のプロセスステップを必要とするインゴットの連続生産を提供することを意図していない。
【0006】
SU 740718は、中空石英ガラスインゴットの調製のための装置を開示している。詳細には、SU740718は、溶融石英の溶融物からチューブを出すことを可能にする石英の溶融についての従来のプロセスの改良であるが、ガラスの流れとチューブの内径の制御が改善されている。これは、上から支えられたマンドレルを備えているが、内部熱交換器を使用して、ガラスがダイを流れる際のガラスの粘度を制御する。チューブサイズの考慮は示されていない。さらに、従来技術のプロセスによって調製されたチューブは、通常、ダイの下で自然に冷却され、そして内部でガラスを徐々に冷却するための措置が講じられたことを示していない。さらに、石英ガラスインゴットの大型で厚壁のインゴットを繰り返し亀裂なしで切断するという課題で生じる問題は記載されていない。
【発明の概要】
【0007】
この従来技術の状況から、上記の欠点なしに調製することができる中空石英ガラスインゴットの製造方法を提供することが目的である。
【0008】
具体的には、連続的に調製および切断できる中空石英ガラスインゴットの製造方法を提供することが目的である。
【0009】
より具体的には、連続的に調製および切断でき、そして大きな外径および比較的厚い壁を有する中空石英ガラスインゴットの製造方法を提供することが目的である。
【0010】
より具体的には、亀裂なしで連続して調製および切断でき、そして大きな外径と比較的厚い壁を有する中空石英ガラスインゴットの製造方法を提供することが目的である。
【0011】
さらに、亀裂なしで中空石英ガラスインゴットを連続的に製造および切断するために使用できる装置を提供することが目的であり、それにより中空石英ガラスインゴットは大きな外径および比較的厚い壁を有する。この装置は、請求された方法を実行するのに適しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本プロセスを実施するための炉の一実施形態が、
図1に概略的に示されている。
【
図2A】インゴット部分の切断と取り出しは、ダイオリフィスからマンドレルを取り外すことなく実施する必要があり、この操作のさまざまな段階を
図2(A)から2(D)に概略的に示す。
【
図2B】インゴット部分の切断と取り出しは、ダイオリフィスからマンドレルを取り外すことなく実施する必要があり、この操作のさまざまな段階を
図2(A)から2(D)に概略的に示す。
【
図2C】インゴット部分の切断と取り出しは、ダイオリフィスからマンドレルを取り外すことなく実施する必要があり、この操作のさまざまな段階を
図2(A)から2(D)に概略的に示す。
【
図2D】インゴット部分の切断と取り出しは、ダイオリフィスからマンドレルを取り外すことなく実施する必要があり、この操作のさまざまな段階を
図2(A)から2(D)に概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の態様
-中空インゴットの連続生産方法-
本発明の目的は、中空石英ガラスインゴットを製造するための連続的方法による第1の目的で解決され、該方法は以下のステップ
a.るつぼまたは耐火物タンクに軟化した石英ガラス塊を提供すること;
b.軟化した石英ガラス塊を、マンドレルが取り付けられたダイを通して垂直に出して、中空石英ガラスインゴットを提供すること;および
c.中空石英ガラスインゴットを特定の長さにオンラインで切断すること、を含む。
【0014】
請求された方法は、ステップbで軟化された石英ガラス塊を垂直に出した後で、プロセスステップcでのオンライン切断の前に、中空石英ガラスインゴットの内面が能動的手段によって冷却されることを特徴とする。
【0015】
本発明に関連して、
(1)大きな外径および比較的厚い壁を有する中空石英ガラスインゴットの製造中に生じる亀裂、特に
(2)そのような中空石英ガラスインゴットを切断するステップ中に生じる亀裂は、
切断時のインゴット全体の弾性応力に起因する可能性があることが判明した。理論に束縛されるものではないが、インゴットの弾性応力は、ステップbで押し出された後のインゴットの外面と内面の異なる温度プロファイルに由来していることがあり得る。インゴットの外面は、放射や空気の対流などの自然な手段、または能動的な冷却手段によって冷却され、一方、中空インゴットの内面は比較的高温のままで、押出後の中空インゴットの外面と内面に異なる温度プロファイルを作り出す。両面のこの異なる温度プロファイルは、切断プロセスのステップ中にインゴットに後に亀裂をもたらす、押し出されたインゴットの弾性応力の原因となる可能性がある。切断処理ステップ中のインゴットの亀裂の形成は、切断時に切断工具からインゴットの外側表面に水が突然導入されることにより強化されることがあり得る。
【0016】
ここで、中空石英ガラスインゴットをより均一に冷却することにより、弾性応力を低減でき、それにより、中空石英ガラスインゴットは、インゴットの外面を冷却(自然な手段または能動的な冷却手段によってほぼ自動的に発生する)するだけでなく、中空インゴットの内面でも冷却することが必須であることが判明した。中空インゴットの内面での冷却ステップは、以下でより詳細に説明する能動的冷却使用手段によって達成される。
【0017】
形成中のガラスチューブの内部冷却は、US3,937,623に記載されているが、(より低い温度での)コンパウンドガラスの製造中において、この先行技術文献のガラスチューブ製造プロセスは、本実施形態による中空石英ガラスインゴットの製造と比べて完全に異なる。このため、US3,937,623の教示は、本実施形態による方法に移すことができない。特に、US3,937,623に記載されているプロセスは、大きくて厚肉の石英ガラスインゴットを作るための火炎溶融のプロセスではない。
【0018】
大型の中空石英ガラスインゴットが連続炉から出てくる際の処理では、切断プロセス中に亀裂が頻繁に発生する。中空インゴットの内面の能動的冷却の請求された方法を適用することにより、前記切断ステップ中に通常発生する亀裂を減少させるか、好ましくは完全に回避することができる。
【0019】
現在規定されているインゴットの冷却を適用することにより、インゴットの弾性応力を下げることができるため、中空石英ガラスインゴットの切断プロセス中に拡大される亀裂がほとんどまたはまったく生じない。
【0020】
ガラスの弾性応力は、圧縮応力と引張応力の両方の組み合わせを含む。過度の引張応力は、亀裂の潜在的な原因である。現在説明されている実施形態の1つ以上で規定されるインゴットの冷却を適用することにより、インゴット内の弾性引張応力は、好ましくは5MPa未満、より好ましくは4MPa未満、最も好ましくは2MPa未満に低減される。
【0021】
本方法を適用することにより、石英を溶融し、大きな直径の中空インゴットを連続的に出し、深刻な亀裂がないまたは少なくとも少ない数で石英ガラスインゴットを繰り返し切断することが可能になる。これにより、中空石英ガラスインゴットを経済的に製造できる。
【0022】
以下では、中空石英ガラスインゴットの外面と内面の冷却方法についてより詳しく説明する。
【0023】
すでに上で述べたように、中空石英ガラスインゴットの調製後の外面は、たとえば放射と周囲の空気の対流によって自動的に冷却される。
【0024】
しかしながら、一実施形態では、能動的手段を強化することにより、中空石英ガラスインゴットの外面をさらに冷却することも可能である。外面のそのような強化された能動的冷却は、例えば、中空石英ガラスインゴットの外面に適用される冷却ガスまたは冷却液によって達成される。それぞれの適切な冷却ガスは、空気、窒素などの不活性ガス、または水素/窒素混合物などの還元ガスである。それぞれの適切な冷却流体は、水であり、例えば、水スプレーとして適用することができる。さらに、能動的な周囲の空気の対流および/または放射を適用して、インゴットの外面を冷却することができる。
【0025】
一実施形態では、冷却ガス、冷却流体、能動的な対流および/または放射を適用するなど、インゴットの外面に1つより多くの能動的冷却手段を適用することが可能である。
【0026】
インゴットの外面に1つより多くの能動的冷却手段を使用する一実施形態は、冷却ガスの高速流と冷却流体としての水滴のミストの組み合わせである。
【0027】
さらに、インゴットの外面を2段階冷却法で冷却することも可能であり、ここで冷却は第1に対流および/または放射によって行われ、そして第2に冷却ガスの流れを方向付けるか、石英ガラスインゴットの外面に冷却液を噴霧することによって行われる。
【0028】
上記の自動的または能動的のいずれかの冷却手段の1つ以上を適用することにより、中空石英ガラスインゴットの外面は、プロセスステップcにおけるオンライン切断の前に、外面の温度が400℃未満、より好ましくは350℃未満、最も好ましくは250℃未満に冷却される。
【0029】
好ましくは、中空石英ガラスインゴットの内面は、能動的手段により冷却される。それぞれの手段については後述する。
【0030】
インゴットの内面を能動的に冷却することにより、内面の温度は、プロセスステップcのオンライン切断の前に開始される外部能動的冷却手段の適用前に、好ましくは400℃未満、より好ましくは300℃未満、最も好ましくは250℃未満である。
【0031】
この追加の冷却により、内面の温度が約100℃まで減る。
【0032】
インゴットの切断は、請求された方法で切断ステーション(切断ゾーンまたは切断セクションとも称される)で実行され、そしてこの切断ステーションは、一般的にダイの下の定めれた距離で、切断が適用される領域にもたらされ、そして典型的には、切断ステーションは、好ましくは最大で4000mm、より好ましくは最大で2500mm、最も好ましくは最大で1800mmの中空石英ガラスインゴットに沿ってダイから離れている。インゴットの外面および内面の上述の温度は、好ましくはインゴットの切断ステーションで達成される。
【0033】
さらに、外面および内面の上記の特定の温度は、好ましくは切断ステップCの前に整えられることが判明した。
【0034】
切断ステップCの前の中空石英ガラスインゴットの内面と外面との間の温度差は、好ましくは250℃未満、より好ましくは220℃未満、最も好ましくは180℃未満であることが好ましい。
【0035】
特に切断セクションにおける中空石英ガラスインゴットの内面と外面の間の温度関係を適用することにより、インゴットの弾性応力は、特にインゴットの切断中に亀裂が発生しないか、少なくとも深刻な亀裂が発生しないように低減できる。
【0036】
以下では、中空石英ガラスインゴットを製造するための特定の方法のステップを詳細に説明する。
【0037】
プロセスステップaにおいて、出発材料としての軟化した石英ガラス塊は、るつぼまたは耐火物タンクに提供される。
【0038】
それにより、耐火物タンクまたはるつぼは通常、石英ガラス塊の加熱および格納を可能にする炉内に提供される。出発材料は通常、石英、シリカ粉末、または少なくとも1つのケイ素含有前駆体の群から選択されるケイ素源として耐火物タンクまたはるつぼに供給される。
【0039】
石英またはシリカ粉末の場合、出発原料は結晶性または非晶質シリカ粉末である。
【0040】
ケイ素含有前駆体の場合、出発物質は通常、ハロゲンを含まないケイ素前駆体、特にオクタメチルシクロテトラシロキサンなどのシロキサン化合物である。
【0041】
少なくとも1つの追加元素の添加、特に少なくとも1つの酸化物化合物の添加により、ケイ素源をドープすることが可能である。
【0042】
ケイ素源は、通常上から耐火物タンクまたはるつぼに供給され、通常、1つまたは複数のバーナーを通して耐火物タンクまたはるつぼに供給される。したがって、バーナーは、好ましくは炉のルーフに位置される。
【0043】
バーナーには通常、少なくとも1つの可燃性ガスと酸素が供給され、これにより可燃性ガスは、水素、天然ガスまたは炭化水素ガス、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0044】
ケイ素源をバーナーを通じてるつぼまたは耐火物タンクに供給することにより、ケイ素源は飛行中にバーナーによって加熱され、溶融表面に到達してガラスに融着する。さらに、バーナーはシリコン原料の溶融物の表面に1つまたは複数の炎を下向きに出し、出発材料の溶融を助ける。
【0045】
次のステップbで、溶融シリカは炉からダイおよびマンドレルアセンブリの形のオリフィスを通して垂直に押し出され、これは通常、炉の底部にあり、したがってバーナーの反対側にあり、中空石英ガラスインゴットになる。
【0046】
押し出されたシリカは、ダイオリフィスに配置された耐火性マンドレルの助けにより、中空石英ガラスインゴットの形で提供される。それにより、中空石英ガラスインゴットの内部寸法は、耐火性マンドレルの寸法によって規定される。
【0047】
マンドレルは通常、下からのマンドレルサポートカラムで支持されている。
【0048】
炉からダイオリフィスを介して押し出されるるつぼまたは耐火物タンクの溶融シリカは、冷却後に外面で凝固し、中空石英ガラスインゴットになる。
【0049】
インゴットの外部サイズと形状は、炉の底部に位置するダイオリフィスの外部形状によって規定される。
【0050】
通常、プロセスステップbで押し出された中空石英ガラスインゴットの外径は、400mmより大きく、より具体的には450mmより大きく、より具体的には500mmより大きい。現在説明されている実施形態は、インゴットの異なる外径で実施するために縮小することができるため、これらの寸法は限定的ではない。前述の寸法は、実際には経済市場の要件によって決定される。
【0051】
さらに、中空石英ガラスインゴットの内径は、通常250mmより大きく、より具体的には290mmより大きく、より具体的には330mmより大きい。繰り返しになるが、これらの寸法は、現在説明されている実施形態をインゴットの異なる外径で実施するために縮小することができるため、限定的ではない。前述の寸法は、実際には経済市場の要求によって決定される。
【0052】
しかしながら、中空石英ガラスインゴットの壁厚は、具体的には100mmより大きく、より具体的には125mmより大きく、より具体的には150mmより大きい。
【0053】
その後、中空石英ガラスインゴットは、インゴットの従来技術の切断ステップcにおける弾性応力を低減するために、上述のように外面および内面で冷却される。
【0054】
インゴットの内面と外面との間の温度差は、切断ステーションで300℃未満、より好ましくは280℃未満、より好ましくは260℃未満であることが好ましい。
【0055】
外面および内面の前述の温度が実現され、好ましくはインゴットの弾性応力が前述の値に低減された後、中空石英ガラスインゴットは、ステップcで水冷式鋸によって切断ステーションで切断される。
【0056】
切断ステーションは、中空石英ガラスインゴットをるつぼまたは耐火物タンクから出すためにダイの下にあり、好ましくは最大で4000mm、より好ましくは最大で2500mm、最も好ましくは最大で1800mmで中空石英ガラスインゴットに沿ってダイから間隔を空けられている。
【0057】
切断ステーションのインゴットの外面および内面の温度は、光学高温計および/または熱電対などの適切な手段で測定できる。
【0058】
ステップbでダイから押し出される中空石英ガラスインゴットはダイオリフィスから下向きに延び、手段によって支持される。好ましい実施形態では、押し出される中空石英ガラスインゴットを支持する手段は、キャリッジに取り付けられた1つ以上のクランプであり、それにより、キャリッジに取り付けられたクランプは、ダイオリフィスから押し出される溶融シリカに追従するのに適切な速度でダイオリフィスから下方に移動する。
【0059】
キャリッジに取り付けられたクランプと中空石英ガラスのインゴットは、炉内(つまり、るつぼまたは耐火物タンク)の軟化した石英ガラスの塊が基本的に一定のレベルに維持されるように、好ましくは事前に規定された速度で下方に移動する。
【0060】
連続プロセスを可能にするために、ダイオリフィスからマンドレルを取り外すことなく、切断されるインゴット部分(切断されたインゴット部分)の切断と取り出しが行われなくてはならない。
【0061】
このため、中空石英ガラスインゴットは、インゴットの第1の事前規定された位置に達するまで引き下げられる。この第1の事前規定された位置で、押し出された中空石英ガラスインゴットは、インゴットの一部を切断する必要が生じる最下部のキャリッジに到達する。中空石英ガラスインゴットの切断されることとなる部分は、好ましくは1つ以上のクランプでまだ支持されている。
【0062】
切断操作は切断ステーションで行われ、好ましくは鋸で構成され、より好ましくは水冷式鋸、特に頑丈な水冷式チェーンソーまたはワイヤーソーで構成される。鋸の切断媒体は、好ましくは金属結合ダイヤモンドである。
【0063】
切断ステーションで、中空石英ガラスインゴットを鋸によりで円周方向に切断する。さらに、中空石英ガラスインゴットの外面は、切断ステーションで切断する前に外部の水スプレーによって冷却されることが好ましい。さらに、大きなサイズおよび/またはより厚い壁の中空インゴットでは、内面と外面の両方を許容温度にするため、さらなる冷却により、例えば、マンドレルの内面に衝突する水冷スプレーにより、インゴットの既存の内部冷却(マンドレルの周囲の水冷コイルなど)で補完することが有用であり得る。
【0064】
中空石英ガラスインゴットを切断した後、インゴットの底部を十分に下げる。これにより、下部キャリッジと切断インゴット部分が、第1の事前規定された位置よりも低い、第2の事前規定された位置(床レベルなど)に下げられながら、マンドレルを所定の位置に保持する役割を果たす1つ以上のマンドレルサポートバーを任意にて挿入できる。
【0065】
切断されたインゴット部分が第2の事前規定された位置まで下げられた後、切断されたインゴット部分を降ろして取り出すことが可能になる。
【0066】
ダイオリフィスからマンドレルを取り外すことなく、切断される中空石英ガラスインゴットを切断セクションから取り出すことができるため、インゴット製造の連続プロセスが可能になる。
【0067】
切断されたインゴット部分が取り出される前に、切断されたインゴット部分に取り付けられたクランプが好ましくは解除される。
【0068】
中空石英ガラスインゴットの切断部分が、第2の事前規定されたレベル(床レベル)から取り外された後、最下部のクランプ(
図2、19C)は、好ましくは、中空石英ガラスインゴットの本体に対して上げられ、中空石英ガラスインゴットの本体に再取り付けされる。次に、下部キャリッジ(
図2、21)を上昇させて、マンドレルサポートカラムの下端と再び係合させることができ、これにより、マンドレルサポートバーがマンドレルから取り外され、次の切断が必要とされるまで操作が再開される。
【0069】
中空石英ガラスインゴットの切断部分が床レベルまで下げられているため、中空石英ガラスインゴットの切断部分は、さらに加工するために簡単に取り出すことができる。
【0070】
すでに上で指摘したように、請求された方法では、中空石英ガラスインゴットの内面が能動的手段によって冷却されることが必須である。この必須の内部冷却は、任意の適切な冷却手段によって実行できる。以下に例の概要を説明する。
【0071】
第1の実施形態では、冷却手段は、マンドレルサポートカラムの周りに配置され、冷却流体を含むコイルによって構成されてもよい。
【0072】
第2の実施形態では、マンドレルの冷却手段は、マンドレルが取り付けられるマンドレルサポートカラム内部の冷却流体によって示される。
【0073】
これら2つの実施形態では、冷却流体は水であり得る。
【0074】
第3の実施形態では、冷却手段は、中空石英ガラスインゴットの内部空洞内の窒素またはアルゴンなどの不活性ガスのガス流によって構成されてもよい。
【0075】
第4の実施形態では、冷却手段は、インゴットの内面に発射される複数の水の噴流の水スプレーまたは霧化ミストによって構成されてもよい。
【0076】
現在、前述の第1、第3および第4の実施形態が特に好ましい。
【0077】
さらに、前述の第1および第4の実施形態が特に好ましい。
【0078】
さらに、前述の第1の実施形態が特に好ましい。
【0079】
これらの実施形態のうちの2つ以上を一緒に使用することができ、第1、第3および第4の実施形態は、内部冷却手段の組み合わせに特に好ましい。
【0080】
これらの実施形態のうちの1つより多くを一緒に使用することができ、第1および第4の実施形態は、内部冷却手段の組み合わせに特に好ましい。
【0081】
第4の実施形態の能動的冷却手段は、インゴット切断手順が開始される直前の期間に、好ましくは、単独で、または第1から第3の実施形態による能動的冷却手段と組み合わせて適用される。
【0082】
中空石英ガラスインゴットの内面を冷却するための第4の実施形態の場合、水噴流は通常、マンドレル内に配置されるか、マンドレルに取り付けられる。効率の点については、インゴットの内面を均一に冷却するには、好ましくは5から25、より好ましくは6から20、最も好ましくは8から16の噴流で十分であることが判明した。それにより、マンドレルの穴またはマンドレルに取り付けられた穴のサイズが0.10から2.00mm、より好ましくは0.15mmから1.75mm、最も好ましくは0.20から1.50mmであることが好ましい。
【0083】
中空石英ガラスインゴットの内面を冷却するための第4の実施形態の場合には、水噴流は、好ましくは0.10から1.80リットル/分、より好ましくは0.15から1.70リットル/分、最も好ましくは0.20から1.60リットル/分の水の流量を有し、それにより流量は段階的に増加し得る。
【0084】
中空石英ガラスインゴットの内面を冷却するために適用される第4の実施形態の場合には、噴流を中空インゴットの内面に衝突させる水流または液滴の温度は、5から65℃であり得る。
【0085】
上述の各実施形態における冷却システムは、通常、インゴット切断ステーションの上方に300から2300mm、より好ましくは400から2200mm、最も好ましくは500から2000mmに配置される。
【0086】
内面に水スプレーを適用する時間は場合により異なることがあり得るが、通常は10から480分、より好ましくは20から420分、最も好ましくは30から360分が、切断する前にインゴットの弾性応力を低減するのに十分である。
【0087】
通常、インゴットの切断がまさに開始されるまで、表面の内部および外部冷却が継続される。
【0088】
以下において、
図1および
図2を参照することにより、1つの好ましい実施形態が説明される。
【0089】
これらの図では、次の参照記号が使用されている。
10 耐火物タンク
11 炉チャンバ
12 溶融物
13 バーナー
14 粉末供給
15 排気口
16 チムニー
17 ダイオリフィス
18 中空インゴット
19 キャリッジおよびクランプ
20 切断ステーション
21 下部キャリッジ
22 耐火れんが
23 冷却空気
24 高温計1
25 高温計2
26 高温計3
27 高温計4
28 マンドレルキャップ
29 マンドレルキャップホルダー
30 マンドレルサポートカラム
31 水冷コイル
32 外部水スプレーリング
33 内部水スプレーリング
34 インゴットの切断部分
35 マンドレルサポートバー
【0090】
本プロセスを実施するための炉の一実施形態が、
図1に概略的に示されている。
【0091】
炉は、炉チャンバ11に囲まれた耐火物タンクまたはるつぼ10を含む。耐火物タンクは、例えば、ジルコンまたはイットリア安定化ジルコニアのレンガから作られてもよく、これは溶融シリカ溶融物12を含む。この耐火れんがの最内層は、れんが、セラミック繊維、ジルコニア泡またはその他の適切な材料を含む断熱材(図示せず)の1つまたは複数の層で囲まれ、さらに断熱を提供し、炉の壁を通る熱損失を低減する。炉の通常の構成は、当業者に知られている。
【0092】
可燃性ガス(例えば、水素、天然ガス、プロパンまたはその他の炭化水素ガス、または混合物)、および酸素が、溶融物の表面に下方向に発射する1つまたは複数の炎を発射する炉のルーフに設置された1つまたは複数のバーナー13に供給される。石英粉末14(すなわち、天然または合成由来であり得るシリカの結晶性または非晶質の粉末)は、1つ以上のバーナーを介して添加され得るか、または代替手段により導入され得る。任意選択で、ドープされた石英ガラスのインゴットを作る必要がある場合、粉末は、例えば酸化物の形態で存在する1つまたは複数の追加元素の添加によりドープされてもよい。粉末は飛行中に加熱され、溶融表面12に到達し、そこでガラスに融合する。不透明な石英ガラスを形成する必要がある場合は、固体または液体のガス形成剤を添加して粉末をドープしてもよいが、一般的に、気泡のない溶融石英インゴットを提供するため必要とされるように粉末はドープされておらず、そして高純度である。
【0093】
燃焼生成物は、排気口15を通って炉を出て、その後、チムニー16を通って炉チャンバを出る。
【0094】
別の実施形態では、粉末供給は、適切なケイ素含有前駆体、好ましくはハロゲンを含まない前駆体、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCT、D4)などのシロキサンの流れによって補充または置換されてもよく、これは、炎の中でシリカ微粒子の流れに変換され、溶融物14の表面に堆積し得る(例えば、US6,763,682に記載されているように)。
【0095】
溶融表面12および/または炉壁の温度は、1つ以上の光学高温計24、25、26、および27を使用して測定することができる。炉の内部は、排気口15から見ることができる。
【0096】
炉は、断面が円形、多角形、または正方形であってもよいが、必要なインゴット製品の形状に適合することが好ましい。炉の基部には、ダイとして機能し、そこから押し出されるインゴット18の外部寸法を規定するオリフィス17が設置されている。ダイは、耐火性セラミック材料、例えば、イットリア安定化ジルコニアまたはジルコンで構成されてもよく、または耐火性金属(タングステンまたはモリブデンなど)で作られてもよく、その場合、耐酸化性は金属表面の適切なコーティング(金属シリサイドなどのコーティングなど)または不活性または還元ガス環境の提供により促進され得る。
【0097】
ダイオリフィス17内には、中空インゴットの内部寸法を規定する耐火性マンドレルが配置されている。ダイと同様に、マンドレルは耐火性セラミック材料で作られているか、耐火性金属(例えば、タングステンまたはモリブデン、任意にて保護コーティング付き)で作られており、そして少なくともキャンペーンの初期段階では、パージされたガス環境内で操作され得る。実際には、ジルコン層29で支持されたモリブデン製のマンドレルキャップ28が良好であることがわかった。ジルコンは、マンドレルサポートカラム30によって所定の位置に保持される。これは、グラファイト、耐火セラミック、または水冷金属の円筒柱を含むことができるが、それ自体が可動下部キャリッジ21から所定の位置に保持されている間に、ダイ内でマンドレルを中心に保持できることが重要である。
【0098】
ガラスは高粘度で出現し、急速に冷却すると、外面はほぼ即座に固化する。炉内の溶融物が一定の深さに維持されるように、インゴットは下方に延び、ガラスの流れに適した速度、すなわち粉末供給速度に等しい速度で下方に移動できるキャリッジに取り付けられた一連のクランプ19A、19B、19Cによって支持されている。各キャリッジがその横移動部の下限に達すると、インゴットの保持が解除され、そしてインゴットの把持が更新されると上限に移動する。インゴットは常に2セット以上のクランプで把持されるため、インゴットの真直度が確保される。インゴットの下端にインゴット切断ステーション20が配置され、そこでインゴットは有用な長さに切断され、そしてその後の処理のために取り出され得る。
【0099】
適切な切断手段には、頑丈な水冷チェーンソーまたはワイヤーソーが含まれ、切断媒体は、金属結合ダイヤモンドであってもよい。
【0100】
ダイの直下では、インゴットの外面が放射および周囲の空気(または適切な場合は不活性/還元ガス)への対流によって冷却される。インゴットの周りで炉チャンバ11へと上方に出される空気は、冷却を補助するために使用され得(冷却空気23)、そしてこれは、必要に応じて、冷却ガスの高速流の注入、水滴のミストの供給などによってさらに促進され得る。
【0101】
ダイ領域のガラス表面温度とダイの下のインゴット温度は、1つまたは複数の適切な光学高温計24、25、26、27で測定され得る。必要に応じて、熱電対または別の方法を使用して、局所温度を測定することもできる。
【0102】
インゴットの外面の冷却は、対流および環境への放射によって達成され得るが、水冷式鋸で切断する前に、インゴットの外面の温度を約300℃未満に下げることを確実にするために、切断する前に、インゴットの周囲にあるスプレー噴流32のリングから導かれる外部水スプレーによってインゴットをさらに冷却することが有用であることがわかった。
【0103】
インゴット部分の切断と取り出しは、ダイオリフィスからマンドレルを取り外すことなく実施する必要があり、この操作のさまざまな段階を
図2(A)から2(D)に概略的に示す。
【0104】
一実施形態によるプロセスは、一般に、溶融石英12の破片で満たされた炉空洞から開始され、そしてダイオリフィスは、クランプ19Aおよび19Bによって所定の位置に保持された溶融石英の円筒形のベイト片によってブロックされている。炉の最初の溶融後、石英粉末が1つ以上のバーナー13を介して導入され、そして、炉内の溶融物レベルをほぼ一定に保ちながら、中空インゴット18を下向きに出す。
【0105】
キャリッジ/クランプ19A、19B、19Cの往復運動により、
図2(A)に示す位置に達するまでインゴットが下方向に延伸され、そしてその時点で、インゴットの一部を切り取る必要が生じる。切断操作の前に、水スプレー32が適用されてインゴットの外面温度表面を低減し、そして任意にて内部水スプレー33も作動される。このような内部スプレーは、直径が大きく、より厚い壁のインゴットを扱う場合に適している。内面と外面が十分な温度になった後、クランプ19Cと下部キャリッジ21でインゴットの最下部を支えながら、インゴットは円周方向に切断され、一方でマンドレルサポートカラムを切断しないように注意する。
【0106】
次に、インゴット34の下部セクション(すなわち、インゴットの切断セクション)を十分に下げて、1つ以上のマンドレルサポートバー35の挿入を可能にすることができ、これは、下部キャリッジ21と切断されたインゴット部分34が床レベルまで下げられている間、マンドレルを所定の位置に保持する役割を果たす。その時点(
図2(D))では、切断されたインゴット部分34をおろして取り出すことができ、そして次に、クランプ19Cを上げて下降インゴットに取り付け、下部キャリッジ21を上げて、マンドレルサポートカラムの下端と再係合させることができる。次いで、マンドレルサポートバー35を取り外し、
図2(A)に描かれた状況を再開することができる。
【0107】
この操作のサイクルは、インゴット(クランプ19Aおよび19B)の下向きの動きに対する最小限の中断で完了することが好ましい。
【0108】
本発明の第2の態様
-中空インゴットの連続製造方法用装置-
第2の態様において、本発明は、中空石英ガラスインゴットの連続生産のための装置に関する。この装置は、上記のプロセスを実行することができ、以下の手段
(a) るつぼまたは耐火物タンクの底部にダイオリフィスを有する軟化石英ガラス塊を提供するためのるつぼまたは耐火物タンク;
(b) 中空石英ガラスインゴットを提供するために、ダイおよびカラムに支持されたマンドレルを通して軟化石英ガラス塊を垂直に出す;ならびに
(c) 中空石英ガラスインゴットを特定の長さにオンラインで切断する手段、を備えている。
【0109】
請求された装置は、該装置が中空石英ガラスインゴットの内面を能動的に冷却する手段を備えていることを特徴とする。
【0110】
第1の実施形態では、内面を能動的に冷却するための手段は、マンドレルサポートカラムの周りに配置されたコイルであってもよく、それにより前記コイルは冷却流体を含む。
【0111】
第2の実施形態では、能動的冷却手段は、マンドレルサポートカラム内部に配置された冷却液で冷却されるマンドレルサポートカラム自体によって構成されてもよい。
【0112】
第3の実施形態では、冷却手段は、中空石英ガラスインゴットの内部空洞内の窒素またはアルゴンなどの不活性ガスのガス流によって構成されてもよい。
【0113】
第4の実施形態では該手段には、インゴットの内面への水のスプレーの提供が含まれる。第4の実施形態の能動的冷却手段は、インゴット切断手順が開始される直前の期間に、単独で、または第1から第3の実施形態による能動的冷却手段と組み合わせて適用されることが好ましい。
【0114】
冷却手段の操作モードはすでに上で説明されている。
【0115】
一実施形態による装置は、以下で述べるさらなる構成要素および部品を備えてもよい。これらの追加部分の機能は、上記の方法の説明によって明らかになり、以下のように要約される。
【0116】
請求された装置は、好ましくはるつぼまたは耐火物タンクのルーフに1つ以上のバーナーを備え、そしてるつぼまたは耐火物タンクの底部にダイオリフィスを有するるつぼまたは耐火性タンクを含む。
【0117】
中空石英ガラスインゴットを製造するための出発材料は、通常は酸素と可燃性ガス、例えば水素、天然ガス、炭化水素ガスおよびそれらの任意の適切な混合物の供給手段を備えたバーナーを通してるつぼまたは耐火物タンクに供給される。
【0118】
るつぼまたは耐火物タンクは、通常、それらを囲んでいる炉チャンバに配置されている。
【0119】
耐火物タンクまたはるつぼは、例えば、ジルコンまたはイットリア安定化ジルコニアのレンガから作られてもよく、溶融シリカ溶融物を受け入れるのに適している。この耐火れんがの最内層は、れんが、セラミック繊維、ジルコニア泡またはその他の適切な材料を含む断熱材料の1つまたは複数の層に囲まれて、さらなる断熱を提供し、炉の壁を通る熱損失を低減する。
【0120】
プロセスの出発材料、例えば石英粉末は、1つ以上のバーナーを介して加えられるか、または代替手段で導入され得る。
【0121】
炉は、断面が円形、多角形、または正方形であってもよいが、必要とされるインゴット製品の形状に適合することが好ましい。炉の基部には、ダイとして機能するオリフィスが配置されており、そこから押し出されるインゴットの外部寸法を規定する。ダイは、耐火性セラミック材料、例えばイットリア安定化ジルコニアまたはジルコンで構成されてもよく、または耐火性金属(タングステンまたはモリブデンなど)で作られてもよく、その場合、耐酸化性は金属表面を適切にコーティング(例えば、金属シリサイドなどのコーティング)、または不活性または還元ガス環境の提供により促進され得る。
【0122】
請求されている装置は、好ましくは、中空インゴットの内部寸法を規定するダイオリフィス内の耐火性マンドレルを含む。ダイと同様に、マンドレルは、耐火性セラミック材料、例えばイットリア安定化ジルコニアまたはジルコンにより作られてもよく、または耐火性金属(例えば、タングステンまたはモリブデン、任意にて保護コーティング付き)から作られてもよく、そして少なくともプロセスの初期段階では、パージガス環境内で操作され得る。実際には、ジルコン層で支えられたモリブデン製のマンドレルキャップが良好であることがわかっている。
【0123】
さらに、請求された装置は、ジルコンを所定の位置に保持するように機能するマンドレルサポートカラムを含む。これは、グラファイト、耐火セラミック、または水冷金属の円筒柱を含み得る。
【0124】
さらに、請求された装置は、移動可能なキャリッジ、および下向きに移動する押し出されたインゴットを支持するクランプを含む。クランプは通常、キャリッジに取り付けられている。クランプは、押し出されたインゴットを保持するように構成されており、そしてインゴットを把持および解放することができる。請求された装置は、好ましくは、押出されたインゴットを把持するための少なくとも3つのクランプを含む。
【0125】
請求された装置はまた、そこでインゴットが有用な長さに切断され得るインゴット切断ステーションを含む。請求された装置に適した切断手段は、頑丈な水冷チェーンソーまたはワイヤーソーを含み、切断媒体は、金属結合ダイヤモンドであってもよい。
【0126】
請求された装置はまた、請求された装置の切断ステーションの上に配置された水スプレーなどの、中空石英ガラスインゴットの外面を冷却する手段を含んでもよい。
【0127】
さらに、請求された装置は、ダイオリフィスから押し出された後に直接的にインゴットを冷却する手段を含む。これは、放射および周囲の空気の対流、不活性ガスの流れ、還元ガスの流れ、および水滴のミストによるインゴットの冷却を可能にすることを意味する。
【0128】
さらに、請求された装置は、一般に、冷却コイルなどのインゴットの内面を冷却する手段、マンドレルサポートカラムの冷却、およびインゴットの切断前の期間中に使用するための内面への水のスプレーの提供を含む。
【0129】
装置はまた、異なる位置で押し出されたインゴットの温度を監視するための光学的高温計、熱電対、または代替手段を備えてもよい。
【0130】
請求された装置のさらなる部分は、上記に開示された請求されたプロセスの詳細な説明から明らかになる。
【0131】
本発明の第3の態様
-中空石英ガラスインゴット-
最後に、本発明は、上述のプロセスに従って、または上述の装置を使用することによって調製される中空石英ガラスインゴットに関し、それにより、中空石英ガラスインゴットは、事前規定の長さの部分に切断される。
【0132】
請求された中空石英ガラスインゴットは、インゴットの外径が400mmより大きく、より好ましくは450mmより大きく、最も好ましくは500mmより大きいことを特徴とする。
【0133】
請求された中空石英ガラスインゴットは、インゴット中の引張応力が好ましくは5MPa未満、より好ましくは4MPa未満、最も好ましくは2MPa未満であることをさらに特徴とする。
【0134】
請求された中空石英ガラスインゴットは、インゴットの断面積が好ましくは6000mm2よりも大きく、より好ましくは9000mm2よりも大きく、最も好ましくは11000mm2よりも大きいことをさらに特徴とする。
【0135】
特に一実施形態は、上述の中空石英ガラスインゴットを製造する方法、および以下の構成を有する中空石英ガラスインゴットに関する。
【0136】
実施形態1:
(a) 325から375mm、具体的には330から370mm、より具体的には335から365mm、より具体的には340から360mm、より具体的には345から355mm、より具体的には350mmの外径;および
(b) 175から225mm、より具体的には180から220mm、より具体的には185から215mm、より具体的には190から210mm、より具体的には195から205mm、より具体的には200mmの内径;および
(c) 62500mm2から67500mm2、より具体的には63000から67000mm2、より具体的には63500から66500mm2、より具体的には64000から66000mm2、より具体的には64500から65500mm2、より具体的には64795mm2断面積。
【0137】
実施形態2:
(a) 375から425mm、具体的には380から420mm、より具体的には385から415mm、より具体的には390から410mm、より具体的には395から405mm、より具体的には396mmの外径:および
(b) 225から275mm、より具体的には230から270mm、より具体的には235から265mm、より具体的には240から260mm、より具体的には245から255mm、より具体的には250mmの内径;および
(c) 71500mm2から76500mm2、より具体的には72000から76000mm2、より具体的には72500から75500mm2、より具体的には73000から75000mm2、より具体的には73500から74500mm2、より具体的には74076mm2の断面積。
【0138】
実施形態3:
(a) 435から485mm、具体的には440から480mm、より具体的には445から475mm、より具体的には450から470mm、より具体的には455から465mm、より具体的には460mmの外径;および
(b) 215から265mm、より具体的には220から260mm、より具体的には225から255mm、より具体的には230から250mm、より具体的には235から245mm、より具体的には240mmの内径;および
(c) 118500mm2から123500mm2、より具体的には119000から123000mm2、より具体的には119500から122500mm2、より具体的には120000から122000mm2、より具体的には120500から121500mm2、より具体的には120951mm2の断面積。
【0139】
実施形態4:
(a) 475から525mm、具体的には480から520mm、より具体的には485から515mm、より具体的には490から510mm、より具体的には495から505mm、より具体的には502mmの外径;および
(b) 305から355mm、より具体的には310から350mm、より具体的には315から345mm、より具体的には320から340mm、より具体的には325から335mm、より具体的には330mmの内径;および
(c) 110000mm2から145000mm2、より具体的には110500から140000mm2、より具体的には111000から135000mm2、より具体的には115000から130000mm2、より具体的には112000から112500mm2、より具体的には112394mm2の断面積(CSA)。
【0140】
中空石英ガラスインゴットの具体的な例は以下の通りである。
【表1】
【0141】
現在説明されている実施形態は、以下の例に関してより詳細に説明されている。
【0142】
この例は、
図1および2で説明されている装置で実施される。
【0143】
炉の下のチムニー16の高さは228mmで、この試験ではチムニーの換気口は開いていない。
【0144】
中空インゴットは炉の床を通って下降し、クランプ19の往復運動によって送られる。インゴットは完全に露出しており、外部断熱材がない場合、周囲の空気への放射と対流によって外部から冷却された。マンドレル28は、ジルコン耐火物のキャップホルダー29上に支持された直径330mmのモリブデン製のマンドレルキャップ28を備え、これは、長さ3000mmでグラファイト製のマンドレルサポートカラム30上に支持された。水冷銅コイル31はこのカラムの周りに取り付けられ、これはマンドレルの基部から測定して約1300mmから2000mmまで延びていた。
【0145】
切断および切断されたインゴット部分の取り出し中を除き(
図2Bから2D)、水はこのコイルを連続的に流れ、インゴット内からの必要な熱除去を提供した。
【0146】
内部水スプレーリング33は、このコイルの下50mmに取り付けられ、そしてこれはインゴット部分を切断する直前の期間に水の内部スプレーを提供した。
【0147】
インゴットの外側で、ダイの下約1500mmの距離に別の水スプレーリングがあり、これはインゴット切断操作の始動の直前に再び水が供給された。
【0148】
切断ステーションは、ダイの下約1800mmであった。
【0149】
外径502mmおよび内径330mmの中空インゴットの製造中に、インゴットは約35mm/時間の速度で下降し、そして約1100mmの長さに断続的に切断された。内部および外部冷却システムの使用は以下に記載のとおりである。
【0150】
水は内部冷却コイルに連続的に供給され(約20℃で6リットル/分)、そして各切断されたインゴット部分の取り出し中にのみオフにされた。切断を開始する約240分前に、インゴットの内部冷却を強化するために、内部水スプレーリングに水が供給された(約60℃で1.6リットル/分)。その後(切断の約180分前)、外部水冷スプレーが開始された(約60℃で1.6リットル/分)。内部および外部スプレーは、インゴットの切断が開始される直前まで続けられ、両方のスプレーが中断された。
【0151】
これらの状況下では、インゴットの表面に深刻な亀裂を誘発することなく、下降するインゴットを長さ1100mmの部分に繰り返し切断することができた。このような大きなインゴット中空インゴットをオンラインで切断しようとする以前の試みは、インゴットに縦方向の亀裂の形成をもたらし、そのような亀裂は、インゴットが下降するにつれて連続的に成長することが見出され、製品を意図した目的に役に立たなくしていた。
【0152】
比較的厚い壁を備えた大きな中空インゴットのこの開発において重要なのは、冷却コイルによって提供される内部冷却の提供である。製造されるサイズが大きくなるにつれて、この内部冷却は、切断時のインゴットの内面と外面の温度差を最小化する目的で、特定の時間に内部水スプレーで補われた。
【0153】
切断面の外温度は、冷却前は通常170-210℃だが、冷却後は約100℃まで低下する。インゴットを切断する前に切断面でボア温度を測定することは困難であるが、冷却なしで、さらには冷却コイルによる冷却があっても、ボア温度は450℃であり得る。水スプレーによる追加の冷却により、内面温度は通常340℃未満に低下される。