(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】非均一断熱を有する熱処理デバイス
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20220415BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20220415BHJP
F27B 9/36 20060101ALN20220415BHJP
【FI】
F27D1/00 D
F27D9/00
F27B9/36
(21)【出願番号】P 2019506187
(86)(22)【出願日】2017-08-05
(86)【国際出願番号】 US2017045646
(87)【国際公開番号】W WO2018027208
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-05
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503459604
【氏名又は名称】カンタール サーマル プロセス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ペック, ケヴィン
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-192113(JP,A)
【文献】特開2003-075070(JP,A)
【文献】特表平05-504227(JP,A)
【文献】特開昭50-099963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00- 1/18
F27D 7/00-15/02
F27B 9/00- 9/40
H01L 21/00-21/16
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の製品を熱処理するための熱処理デバイス(10)であって、
両側の遠心端及び少なくとも1つの制御可能な加熱区域を有する熱処理チャンバ、
前記遠心端のそれぞれに
少なくとも1つの緩衝区域が配置された、
合計で少なくとも2つの緩衝区域、
前記熱処理チャンバの少なくとも1つの加熱区域及び
前記緩衝区域
を形成する、内表面及び外表面を有する加熱素子アセンブ
リ、並びに
前記熱処理チャンバの少なくとも1つの加熱区域及び緩衝区域に沿って配置され、且つ前記加熱素子アセンブリの一部を形成する、断熱材料の少なくとも1つの層であって、前記加熱
素子アセンブリの軸長にわたって非均一に
断熱効率が制御される、断熱材料の少なくとも1つの層
を備え
、
所望の冷却率を達成するために、前記少なくとも1つの緩衝区域に位置する前記断熱材料の少なくとも1つの層の一部が、最大化された断熱効率を有し、前記加熱区域における前記断熱材料の少なくとも1つの層の一部が、より低い断熱効率を有し、
前記断熱材料の前記断熱効率が、種々のグレードの熱伝導率を有する断熱材料を使用することによって制御される、熱処理デバイス(10)。
【請求項2】
前記断熱材料の前記
断熱効率が、前記断熱材料の層の厚さを変動させることによって制御されることを特徴とする、請求項
1に記載の熱処理デバイス(10)。
【請求項3】
前記断熱材料の前記
断熱効率が、前記断熱材料の複数の層の種々の配置を使用することによって制御されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の熱処理デバイス(10)。
【請求項4】
前記複数の層が同一の厚さを有することを特徴とする、請求項
3に記載の熱処理デバイス(10)。
【請求項5】
前記複数の層が種々の厚さを有することを特徴とする、請求項
3に記載の熱処理デバイス(10)。
【請求項6】
前記層のうちの少なくとも1つの厚さが、前記
熱処理チャンバの長さに沿って変動することを特徴とする、請求項
3に記載の熱処理デバイス(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの加熱区域における少なくとも1つの層が、前記少なくとも1つの緩衝区域における層より少ない厚さを有することを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の熱処理デバイス(10)。
【請求項8】
前記断熱材料が、少なくとも1つの第1の断熱部分及び第2の断熱部分を有し、前記少なくとも1つの
第1の断熱部分における断熱材料が、前記第2の断熱部分における材料と異なることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の熱処理デバイス(10)。
【請求項9】
外部シェルが、前記加熱素子アセンブリの前記外表面の周りに配置されていることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の熱処理デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度制御が改善された、1つ又は複数の製品を熱処理するための熱処理デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの製品は、様々な理由で炉内の熱処理に曝される場合がある。例えば、半導体ウエハの製造において、半導体ウエハは熱硬化の対象となり、鋼の製造において、鋼は、鋼を硬化するためにアニール処理の対象となる。半導体製造においては、温度の軽微な変動が歩留まりに影響を与える恐れがあるため、温度を非常に正確に制御しなければならない。温度を特定の時間量に合わせて制御しなければならない場合があり、次の製造プロセスを開始することができるように、温度を迅速に安定させなければならないことが多い。したがって、熱処理を正確に制御することは、必須である。
【0003】
典型的な熱処理デバイスは、各遠心端に配置された少なくとも1つの緩衝区域と、複数の制御可能な加熱区域とを備えた加熱素子アセンブリからなる。製品は、加熱区域内で処理される。加熱区域は、概して、その軸長に沿って高い度合いの熱均一性を達成するように設計されている。緩衝区域は、熱処理デバイスの遠心端の開口からの熱損失を補うために、追加のエネルギーを供給するよう使用される。コスト面及び環境的な面の両方においてエネルギー効率を改善可能であることが重要である。効率の高い断熱材がアセンブリ全体に設置されている熱処理デバイスの例を見いだすことができる。これは、連続炉において効果的であるが、欠点は、熱処理デバイスの最大冷却率能力が低下することであり、これにより、動的システムのスループットが妨げられる恐れがある。エネルギー効率を高めるために、素子アセンブリ全体にわたって断熱が改善された場合、中央区域の冷却率は、加工物(work)に望まれる率をもはや維持できない程度まで低下する場合が多い。典型的なアプローチは、所望の処理性能を維持するために全体的な断熱効率を低下させるか、又は、制御された冷却率を低下させるかのいずれかである。結果的に、断熱が低下した場合、エネルギー節約が最小限しか行われず、又は、断熱が最大化された場合、処理サイクル時間が延びて、システムスループットが妥協される。したがって、動的冷却率に最小限の影響を与えながら、動的システムの効率を高める必要がある。
【発明の概要】
【0004】
冷却中、熱エネルギーは、システム内の加工物から放出され、加熱素子アセンブリを通した伝導及び加工物を囲むガスへの伝達の組み合わせを介して消散しなければならない。所与の温度で達成可能な最大冷却率は、断熱システムを通るエネルギーの伝達率によって制限される。選択される制御率は、通常、システムの最大率より少し遅い。それにより、通常、加熱素子アセンブリごとの違いを含むシステムパラメータの微妙な変動を考慮して、反復可能で制御された冷却処理が行えるように十分な余裕を確保する。冷却フェーズの間、端部区域は、損失を補填するためにさらなる熱を供給するよう使用されるため、典型的により高い電力レベルで作動し続けるが、中央区域は、加工物の所望の率での冷却を維持するのに十分な電力のみを供給する。したがって、中央区域の冷却率は、最大冷却率の制限要因となる。
【0005】
典型的な3区域熱処理炉は、製品が加熱される際、中央区域の消費電力が30から70%の範囲内であるが、緩衝区域は、加熱中、35から90%の消費電力で作動し得る。一旦システムが処理温度を安定化させると、中央区域の消費電力は、所望の温度を維持するために約30%まで低下するが、緩衝区域は、増大した熱損失を補填するために40から80%で作動し続ける。アクティブ処理サイクルの終了時点では、加工物を炉アセンブリから取り出すのに適切な温度まで冷却しなければならない。少なくとも初期フェーズを通して、加工物の温度を制御された率及び均一な温度に低下させることが望ましい。
【0006】
熱処理チャンバの長さ全体にわたって断熱を改善するよりも、加熱素子アセンブリの軸長に沿って断熱材料を非均一に当てることにより、端部区域の断熱が最大化され、加熱素子アセンブリの中央部に配置される断熱材は、所望の冷却率を達成するように標準化され、そして、システムのスループットに影響を与えずに全体的なエネルギー消費が低下する。さらに、加熱素子アセンブリの端部区域で必要とされる作動電力がより低いため、加熱素子アセンブリの耐用年数が長くなる。
【0007】
本開示の一態様は、上述の問題及び欠点を解決すること又は少なくとも低減することである。したがって、本開示は、両側の遠心端及び少なくとも1つの制御可能な加熱区域を有する熱処理チャンバを含む、1つ又は複数の製品を熱処理するための熱処理デバイスを提供する。配置される少なくとも1つの緩衝区域は、遠心端のそれぞれにあり、熱処理チャンバの少なくとも1つの加熱区域及び緩衝区域は、内表面及び外表面を有する加熱素子アセンブリを形成する。断熱材料の少なくとも1つの層は、熱処理チャンバ少なくとも1つの加熱区域及び緩衝区域に沿って配置され、加熱素子アセンブリの一部を形成し、断熱材料の少なくとも1つの層は、加熱アセンブリの軸長にわたって非均一に効率が制御される。
【0008】
一実施形態によれば、所望の冷却率を達成するために、少なくとも1つの緩衝区域に位置する断熱材料の少なくとも1つの層の一部は、最大化された効率を有し、加熱区域の断熱材料の少なくとも1つの層の一部は、より低い効率を有する。
【0009】
一実施形態によれば、断熱材料は、断熱材料の層の厚さを変動させることによって制御される。
【0010】
一実施形態によれば、断熱材料の効率は、種々のグレードの熱伝導率を有する断熱材料を使用することによって制御される。
【0011】
一実施形態によれば、断熱材料の効率は、断熱材料の複数の層の種々の配置を使用することによって制御される。
【0012】
一実施形態によれば、複数の層は、同一の厚さを有する。
【0013】
一実施形態によれば、複数の層は、種々の厚さを有する。
【0014】
一実施形態によれば、層のうちの少なくとも1つの厚さは、処理チャンバの長さに沿って変動する。
【0015】
一実施形態によれば、少なくとも1つの加熱区域における少なくとも1つの層は、少なくとも1つの緩衝区域における層より少ない厚さを有する。
【0016】
一実施形態によれば、断熱材料は、少なくとも1つの第1の断熱部分及び第2の断熱部分を有し、少なくとも1つの断熱部分における断熱材料は、第2の断熱部分における材料と異なる。
【0017】
一実施形態によれば、外部シェルが、加熱素子アセンブリの外表面の周りに配置されている。
【0018】
前述の要約は、以下の実施形態の詳細な説明と同様、添付の図面と関連付けて読むことによってより良く理解されるであろう。説明される実施形態は、示されるとおりの正確な配置や道具に限定されるものではないことを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】非均一断熱を有する熱処理チャンバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図3を参照すると、1つ又は複数の製品を熱処理するための熱処理デバイス10は、熱処理チャンバ12を含む。処理される製品は、例えば、鋼の硬化又はドーピング又はアニーリングのための半導体ウエハを含み得る。
【0021】
図2に示すように、チャンバ12は、チャンバの中央部に位置する制御可能な加熱区域14を有する。加熱区域14は、単一の加熱区域又は複数の加熱区域(14`-14```)であってよいことを理解するべきである。チャンバ12は、外表面24、及び両側の遠心端18、20を有する。少なくとも1つの緩衝区域16が、チャンバ12の遠心端18、20のそれぞれに配置されている。熱処理チャンバ12の加熱区域14及び緩衝区域16は、共に加熱素子アセンブリ22を形成する。熱処理チャンバ12及び加熱素子アセンブリ22は、実質的に円筒形であり得る。
【0022】
図2及び
図3を参照すると、加熱アセンブリ22は、断熱材料の層28及び34を含む。断熱材料は、本明細書でさらに説明されるように、制御された効率を有し得る。断熱材料層34は、処理チャンバ12の外表面24と外部層28の内表面26との間に位置する。したがって、加熱アセンブリ22は、断熱の内部層34及び外部層28を有する。加熱アセンブリ22においては、単一の層又は複数の層が設けられ得ることを理解するべきである。
【0023】
図3に示すように、外部シェル30が、加熱素子アセンブリ22の外部層28の周りに配置され得る。断熱材料の層、例えば、層34は、加熱アセンブリの長さにわたって非均一に付加され得る。非均一とは、種々のグレードの熱伝導率を有する断熱材料を使用することによって、且つ、種々の配置の断熱材料の複数の層を使用することによって、材料の1つ又は複数の層が同一の又は種々のグレードの熱伝導率を有すること、1つ又は複数の層が、同一の又は種々の厚さを有すること、層が、その長さに沿って変動する種々の厚さ又は種々のグレードの熱伝導率を有すること、1つ又は複数の層が、その長さに沿って、種々のグレードの熱伝導率を有する種々の材料を互いに隣り合うように有すること、種々の部分が、同一の又は種々の厚さを有すること、及び以上のすべての組み合わせを意味する。
【0024】
図2に示すように、加熱アセンブリに付加された断熱層は、緩衝区域16において最大化された効率を有する第1の断熱部分38を有し得、効率がより低い第2の断熱部分40は、所望の冷却率を達成するために、加熱区域14に付加され得る。ここでは隣り合う断熱部分は2つしか示されていないが、加熱区域及び緩衝区域に応じて、数多くの異なる断熱部分を様々な位置に配置し、上述のように非均一な断熱層を形成することができる。
【0025】
また
図3を参照すると、断熱材料34は、1つより多くの層を有し得る。例えば、断熱材料34は、複数の層36及び37を有し得る。ここでは、2つの層が示されているが、複数の層を設けてもよいことを理解されたい。層36及び37は、同一の又は異なる厚さを有し得る。さらに、それぞれの層は、同一の厚さを有してもよく、又は、アセンブリの長さに沿って変動する厚さを有してもよい。例えば、断熱材料34の層36は、1つ又は複数の加熱区域14及び第2の断熱部分40で、第1の断熱部分38の層36の厚さより少ない厚さを有し得る。したがって、断熱の効率は、例えば、以上で説明するように、厚さや断熱の熱伝導グレードを変動させることにより、又は、処理チャンバ12の軸長に沿って、任意の組み合わせで断熱材料の複数の層の配置を変えることにより、制御することができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
熱処理デバイスは、任意の種類のマルチ区域冷却処理であり得、流体冷却システムを備えた水平型熱処理チャンバ、並びに垂直型チャンバに対して使用することができる。
【0027】
本実施形態は、具体的な態様に関連して説明されたものであるが、他の多くの変形例、修正例、及びその他の使用法が当業者には明らかであろう。したがって、本実施形態が本明細書の特定の開示によって限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることが好ましい。