(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】圧電トランスデューサ、それに関連する製造方法、および超音波共鳴スペクトロスコピー装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20220415BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
G01N29/24
H04R17/00 330A
(21)【出願番号】P 2019520418
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2017073904
(87)【国際公開番号】W WO2018069016
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-08-06
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】518027461
【氏名又は名称】アンセル(アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale)
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ダルジャン,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】グリマル,カンタン
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-140689(JP,U)
【文献】国際公開第88/006927(WO,A1)
【文献】特開2005-277864(JP,A)
【文献】Migliori et al.,Implementation of a modern resonant ultrasound spectroscopy system for the measurement of the elastic moduli of small solid specimens,REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS,76,2005年12月29日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
A61B 8/00-8/15
H04R 17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電ペレット(2)と、前記圧電ペレット(2)上に積層された接触片(1)と、を備える、圧電トランスデューサ(9、9a、9b)であって、前記接触片(1)が先端部(10)を形成することと、前記先端部(10)のそれぞれの頂点が互いに空間的に分離された接触点(11)を構成することと、前記圧電トランスデューサ(9、9a、9b)が、前記接触点(11)うちの少なくとも1つによって、分析対象の試料(E1)と機械的接触を確立するように構成されることと、
前記接触点(11)が、凸状の表面(S1)上に分布することを特徴とする、圧電トランスデューサ(9、9a、9b)。
【請求項2】
前記接触点(11)が、3より多くの前記接触点から幾何学的平面が0.5μm未満を通過しないように分布することを特徴とする、請求項
1に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項3】
前記先端部(10)が、1μm~10mmに含まれる、
又は20μm~3mmに含まれる、
又は50μm~1mmに含まれる高さ(D2)を有することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項4】
前記接触点(11)が、1μm~10mmに含まれる、
又は20μm~3mmに含まれる、
又は50μm~1mmに含まれるピッチ(D1)で規則的に離間されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項5】
前記接触片(1)が、材料であって、材料の比
【数1】
が1GPa
1/2*cm
3/gより大きい、
又は2GPa
1/2*cm
3/gより大きい、
又は2.5GPa
1/2*cm
3/gより大きい材料から作られ、ここで、E
cは前記材料のヤング率であり、d
cは前記材料の密度であることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項6】
前記接触片(1)が、多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはアルミニウムおよび/またはマグネシウムを含むか、または多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはアルミニウムおよび/またはマグネシウムからなることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項7】
横断面において、前記接触片(1)が、半径方向に縁部を切り落とされた円盤を形成することを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項8】
前記圧電トランスデューサがまた、支持体(3、3b)を備えることと、前記圧電ペレット(2)が、前記支持体(3、3b)と前記接触片(1)との間に取り付けられることと、を特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項9】
前記支持体(3、3b)が、材料であって、材料の比
【数2】
が3GPa
1/2*cm
3/gより大きい、
又は4GPa
1/2*cm
3/gより大きい、
又は6GPa
1/2*cm
3/gより大きい材料から作られ、ここで、E
sは前記材料のヤング率であり、d
sは前記材料の密度であることを特徴とする、請求項
8に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項10】
前記支持体(3、3b)が、多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはシリコンカーバイドおよび/またはアルミニウムを含むか、または多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはアルミニウムおよび/またはマグネシウムからなることを特徴とする、請求項
8又は9に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項11】
前記支持体(3)が軸対称であることを特徴とする、請求項
8から10のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項12】
前記円柱状支持体(3)が、0.3~2に含まれる、
又は0.4~1.5に含まれる、
又は0.6~1に含まれる比h/dsを有し、ここで、hは前記円柱状支持体の高さであり、dsは前記円柱状支持体の直径であることを特徴とする、請求項
11に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項13】
前記支持体(3、3b)が、取り付け面を形成するように軸方向に一部を切り落とされた球体(3b)であることと、前記圧電ペレット(2)が、前記取り付け面に取り付けされることと、を特徴とする、請求項
11に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項14】
前記圧電トランスデューサはまた、
ベアリング要素(7、7a、7b)と、
1つ以上の位置決め要素(41、42、43)であって、
前記1つ以上の位置決め要素(41、42、43)が、前記支持体と前記ベアリング要素(7、7a、7b)とを連結し、かつスチフネスが200MPa未満、
又は50MPa未満、
又は10MPa未満である材料から作られる、1つ以上の位置決め要素(41、42、43)と、
を備えることを特徴とする、請求項
8から13のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項15】
前記位置決め要素(単数または複数)(41、42、43)が、5kHzを超える、
又は1kHzを超える、
又は100Hzを超える音波の振動数をフィルタリングするように構成されることを特徴とする、請求項
14に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項16】
前記圧電トランスデューサが、5kHz~1MHzに含まれる、
又は1kHz~10MHzに含まれる、
又は100Hz~100MHzに含まれる振動数を有する音波を送信または受信するように構成されることを特徴とする、請求項1から
15のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項17】
前記接触片(1)が、少なくとも9個の先端部(10)、
又は少なくとも16個の先端部(10)、
又は少なくとも25個の先端部(10)を備えることを特徴とする、請求項1から
16のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項18】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の少なくとも1つの圧電トランスデューサ(9、9a、9b)を備える、超音波共鳴スペクトロスコピー装置。
【請求項19】
前記超音波共鳴スペクトロスコピー装置が、請求項1から
17のいずれか一項に記載の2つの圧電トランスデューサ(9a、9b)を備えることと、前記2つの圧電トランスデューサのうちの一方(9a)の前記先端部が延びる方向は、
平行である、または
前記2つの圧電トランスデューサのうちの他方(9b)の前記先端部が延びる方向と交差し、前記方向の交点が、前記先端部がその基部から前記接触点まで延びる方向に位置することと、を特徴とする、請求項
18に記載の装置。
【請求項20】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の圧電トランスデューサ(9、9a、9b)のための接触片(1)の製造方法であって、前記方法が、ワイヤ放電加工によって前記先端部(10)を機械加工するステップを含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項21】
前記先端部(10)を機械加工する、前記ステップが、
第1の一連の線が、第1の壊食軸に平行に、前記接触片(1)の電食によって切断されることと、
第2の一連の線が、第2の壊食軸に平行に、前記接触片(1)の電食によって切断されることであって、
前記第1の壊食軸が前記第2の壊食軸とは平行ではない、ことと、
を含むことを特徴とする、請求項
20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に超音波共鳴スペクトロスコピー技法を用いた、限定ではなく例としては骨試料などの材料の特性評価の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明はトランスデューサに関する。
【0003】
本発明はまた、このようなトランスデューサの製造方法、ならびに本発明による1つ以上のトランスデューサを備える超音波共鳴スペクトロスコピー装置に関する。
【背景技術】
【0004】
超音波共鳴スペクトロスコピー装置が、以下の文献に記載されている従来技術から知られている。
・Characterization of thin films and novel materials using resonant ultrasound spectroscopy,J.R.Gladden,2003(以下、「Gladden 2003」)
・Measurement of elastic constants of polycrystals by the resonance method in a cylindrical specimen,M.Senoa,T.Nishimura & M.Hirano,Bull.JSME(Japan Soc.Mech’l Engineers),27,2239-2346,1984(以下、「Hirano 1984」)
・Complete mode identification for resonance ultrasound spectroscopy,H.Ogi,K.Sato,T.Asada & M.Hirao,J.Acoust.Soc.Am.112,2553,2002(以下、「Hirao 2002」)
【0005】
Gladden 2003は、2つの圧電トランスデューサを備える装置を記載している。各トランスデューサは、平坦な表面が設けられた接触片を備える。2つのトランスデューサの接触片の平坦な表面の間に、分析対象の試料が保持される。
【0006】
このような装置の欠点は、中波振動数および低振動数における寄生モードの存在に関する。
【0007】
Hirano 1984における装置もまた2つの圧電トランスデューサを備え、各圧電トランスデューサは、先端部が設けられた接触片を備える。2つのトランスデューサの先端部の間に、分析対象の試料が保持されている。
【0008】
Gladden 2003またはHirano 1984による装置は、試料の自由度の数を制限し、それにより、低振動数での剛性モードの出現およびより高い固有振動数のシフトを促進している。
【0009】
別のタイプの装置がHirao 2002に記載されており、これは、2つの圧電トランスデューサと第3の受動的先端部とを備えるシステムを開示している。各トランスデューサは、先端部が設けられた接触片を備える。分析対象の試料は、2つのトランスデューサの先端部と第3の先端部との上に平衡状態で配置される。
【0010】
このタイプの装置の欠点は、先端部自体の固有モードの存在からなる。
【0011】
加えて、このタイプの装置は、小さいサイズ、典型的には、最大寸法が10mm未満であるようなサイズの試料の分析には適していない。
【0012】
本発明の目的は、特に、試料に適用される静的な機械的制約を制限できるようにする、ならびに/または比較的小さいサイズである、ならびに/または可変および/もしくは複雑な幾何学的形状を有する、試料の分析を可能および/もしくは容易にする、圧電トランスデューサおよび超音波共鳴スペクトロスコピー装置を提案することである。
【発明の開示】
【0013】
この目的のために、本発明は、圧電ペレットと、圧電ペレット上に積層された接触片と、を備える圧電トランスデューサであって、接触片が先端部を形成し、先端部のそれぞれの頂点が互いに空間的に分離された接触点を構成し、本トランスデューサが、接触点うちの少なくとも1つによって、分析対象の試料と機械的接触を確立するように構成される、圧電トランスデューサを提案する。
【0014】
好ましくは、接触点は、凸状の表面上に分布することができる。
【0015】
このため、接触点は、不連続な凸状の表面を形成することができる。
【0016】
さらに、接触点は、上記接触点のうちの4つ以上を通る幾何学的平面がないように、または上記接触点のうちの4つ以上から0.5μm未満を通る幾何学的平面がないように分布することができる。
【0017】
接触点のこのような幾何学的配置は、均衡配置(isostatic positioning)を提供することによって、試料に適用される制約を制限することを可能にする。例えば、試料が平坦な表面を有する場合、試料のこの平坦な表面を、トランスデューサの接触点のうちの4つ以上の接触点と接触して配置することはできない。
【0018】
一実施形態では、先端部は、1μm~10mmに含まれる、好ましくは20μm~3mmに含まれる、より好ましくは50μm~1mmに含まれる高さを有することができる。
【0019】
一実施形態では、接触点は、1μm~10mmに含まれる、好ましくは20μm~3mmに含まれる、より好ましくは50μm~1mmに含まれるピッチで規則的に離間させることができる。
【0020】
このような寸法は、比較的小さいサイズの試料の分析に特に適しており、また先端部の固有振動数がトランスデューサの有用な通過帯域、典型的には1MHzよりも上となるようにすることを可能にする。
【0021】
好ましくは、接触片は、材料であって、材料の比
【数1】
が1GPa
1/2*cm
3/gより大きい、好ましくは2GPa
1/2*cm
3/gより大きい、より好ましくは2.5GPa
1/2*cm
3/gより大きい材料から作ることができ、ここで、E
cはこの材料のヤング率であり、d
cはこの材料の密度である。
【0022】
例えば、接触片は、多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはアルミニウムおよび/またはマグネシウムを含み得る、またはそれらから構成され得る。
【0023】
一実施形態では、横断面において、接触片は半径方向に縁部を切り落とされた円盤を形成する。
【0024】
このような切り落としにより空間が空き、圧電ペレットからの電子機器接続配線をはんだ付けすることが可能になる。
【0025】
圧電トランスデューサはまた、支持体を備えることができ、圧電ペレットは、支持体と接触片との間に取り付けられ得る。
【0026】
好ましくは、支持体は、材料であって、材料の比
【数2】
が3GPa
1/2*cm
3/gより大きい、好ましくは4GPa
1/2*cm
3/gより大きい、より好ましくは6GPa
1/2*cm
3/gより大きい材料から作ることができ、ここで、E
sはこの材料のヤング率であり、d
sはこの材料の密度である。
【0027】
例えば、支持体は、多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはシリコンカーバイドおよび/またはアルミニウムを含み得る、またはそれらから構成され得る。
【0028】
このような支持体は、トランスデューサのスチフネスを高め、そして第1の固有モードが典型的には1MHzよりも上となるようにすることを可能にする。
【0029】
好ましくは、支持体は軸対称である。
【0030】
一方では、軸対称支持体は製造がより容易である。他方では、これは、トランスデューサのスチフネスを均一に高めることを可能にする。
【0031】
好ましくは、円柱状支持体は、0.3~2に含まれる、好ましくは0.4~1.5に含まれる、より好ましくは0.6~1に含まれる比h/dsを有し、ここで、hはこの円柱状支持体の高さであり、dsはこの円柱状支持体の直径である。
【0032】
円柱のこのような寸法は、特に支持体が直円柱タイプのものである場合に、第1の固有振動数の値を最適に上昇させることを可能にする。
【0033】
変形実施形態によれば、支持体は、取り付け面を形成するように軸方向に一部を切り落とされた球体とすることができ、圧電ペレットは、この取り付け面に取り付けられ得る。
【0034】
このような球状支持体を製造するために、例えば非常に硬い材料(シリコンカーバイドなど)から作られたラッピング加工されたベアリングボールを使用することが可能である。そのようなベアリングボールは非常に低コストで市販されている。
【0035】
一実施形態では、圧電トランスデューサはまた、
・ベアリング要素と、
・1つ以上の位置決め要素であって、
1つ以上の位置決め要素が、支持体とベアリング要素とを連結し、かつスチフネスが200MPa未満、好ましくは50MPa未満、より好ましくは10MPa未満である材料から作られる、1つ以上の位置決め要素と、
を備えることができる。
【0036】
好ましくは、位置決め要素(単数または複数)は、5kHzを超える、好ましくは1kHzを超える、より好ましくは100Hzを超える音波の振動数をフィルタリングするように構成され得る。
【0037】
このため、1つ以上の位置決め要素は、ローパス(振動)フィルタを構成する。
【0038】
好ましくは、圧電トランスデューサは、5kHz~1MHzに含まれる、より広くは1kHz~10MHzに含まれる、好ましく、かつより広くは100Hz~100MHzに含まれる振動数を有する音波を送信および/または受信するように構成され得る。
【0039】
従って、このようなトランスデューサは、超音波共鳴スペクトロスコピーに適している。
【0040】
好ましくは、接触片は、少なくとも9個の先端部、好ましくは少なくとも16個の先端部、より好ましくは少なくとも25個の先端部を備えることができる。
【0041】
別の態様によれば、本発明はまた、上記の特徴の選択された組み合わせによる少なくとも1つの圧電トランスデューサを備える、超音波共鳴スペクトロスコピー装置に関する。
【0042】
好ましくは、本スペクトロスコピー装置は、上記の特徴の選択された組み合わせに従って、2つの圧電トランスデューサを備えることができ、上記2つの圧電トランスデューサのうちの一方の先端部が延びる方向は、
・平行であり得る、または
・上記2つの圧電トランスデューサのうちの他方の先端部が延びる方向と交差することができ、上記方向の交点は、先端部がその基部から接触点まで延びる方向に位置し得る。
【0043】
本発明による2つのトランスデューサを備える装置は、先端部の上に試料を注意深く配置することによって、試料に適用される静的制約を制限しながら、可変および/または複雑な幾何学的形状を有する試料を分析することを可能にする。
【0044】
別の態様によれば、本発明はまた、上記の特徴の選択された組み合わせによる圧電トランスデューサのための接触片の製造方法に関し、この方法は、ワイヤ放電加工によって先端部を機械加工するステップを含む。
【0045】
このタイプの機械加工は、本発明による接触片を正確に、特に上記などの先端部の寸法に関して正確に製造することを可能にする。
【0046】
好ましくは、先端部を機械加工するステップは、
・第1の一連の線が、第1の壊食軸に平行に、接触片の電食によって切断されることと、
・第2の一連の線が、第2の壊食軸に平行に、接触片の電食によって切断されることであって、第1の壊食軸が第2の壊食軸とは平行ではない、ことと、
を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明の他の利点および特徴は、いかなる限定を課すものでもない、実装および実施形態の詳細な説明を読めば、また添付の図面から、明らかになるはずである。
【
図1】本発明によるトランスデューサの接触片の斜視図である。
【
図2】本発明の変形形態によるトランスデューサの斜視図である。
【
図3】本発明の変形形態によるトランスデューサの斜視図である。
【
図4】本発明の別の変形形態によるトランスデューサの斜視図である。
【
図5】
図2および
図3のトランスデューサを備える、本発明による超音波共鳴スペクトロスコピー装置の一部の斜視図である。
【
図6】2つのトランスデューサを備える、本発明による超音波共鳴スペクトロスコピー装置の部分斜視図である。
【
図7】本発明によるトランスデューサの接触片の断面図である。
【
図8a】本発明によるトランスデューサの接触片の先端部を表す図である。
【
図8b】本発明によるトランスデューサの接触片の先端部を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に説明される実施形態はいかなる限定を課すものでもないため、本発明の変形形態は、説明される特徴のうち選び出された特徴のみを、他の説明される特徴とは別に、たとえこの選び出された特徴がこれらの他の特徴を含む文内に分離されていても、選び出された特徴が技術的利点を与えるのに十分である、または従来技術に対して本発明を区別するのに十分である場合に含むと特にみなすことができる。この選び出された特徴は、構造的詳細を持たない、または構造的詳細の一部のみが技術的利点を与えるのに十分である、もしくは従来技術に関して本発明を区別するのに十分である場合、構造的詳細の一部のみを有する、少なくとも1つの、好ましくは機能的な、特徴を含む。
【0049】
圧電トランスデューサ
図2~
図4は、本発明による圧電トランスデューサを示している。これらのトランスデューサは、軸対称支持体3と、圧電ペレット2と、接触片1との、典型的には接着による積層体であって、圧電ペレット2が支持体3と接触片1との間に取り付けられている、積層体を備える。
【0050】
トランスデューサ支持体
図2および
図3のトランスデューサ支持体3は円柱状であり、典型的には0.3~2に含まれる、好ましくは0.4~1.5に含まれる、より好ましくは0.6~1に含まれる比h/dsを有することができ、ここで、hがこの円柱状支持体3の(典型的には2~20mmに含まれる)高さであり、dsがこの円柱状支持体3の(典型的には2~30mmに含まれる)直径である。
【0051】
図4のトランスデューサの支持体3bは、軸方向に一部を切り落とされた(典型的には直径が3~30mmに含まれる)球体である。切り落とすことにより、圧電ペレット2が取り付けられる取り付け面を形成している。
【0052】
支持体3の構成の観点から、支持体は、
・材料であって、材料の比
【数3】
が3GPa
1/2*cm
3/gより大きい、好ましくは4GPa
1/2*cm
3/gより大きい、より好ましくは6GPa
1/2*cm
3/gより大きい材料から作ることができ、ここで、E
sはこの材料のヤング率であり、d
sはこの材料の密度である、および/または
・多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはシリコンカーバイドおよび/またはアルミニウムを含み得る、またはそれらから構成され得る。
【0053】
トランスデューサの接触片
図1は、
図2~
図4におけるトランスデューサの接触片1を示している。
【0054】
図1から、接触片1は、先端部10を形成し、先端部10のそれぞれの頂点が互いに空間的に分離された接触点11を構成することが分かる。
【0055】
トランスデューサの接触点11は、
図7に示すように、限られた数のこれらの接触点11によって、分析対象の試料とトランスデューサを接触させるように設けられている。
図7は、接触片1bの2つの接触点11bと接触している試料E2を示している。
【0056】
換言すれば、本発明によるトランスデューサは、接触点のうちの少なくとも1つによって、分析対象の試料との機械的接触を確立するように構成される。
【0057】
当然のことながら、既知の機械加工技術を考慮すると、少なくとも、先端部10cの一定の観察スケールより下では、実際には、接触点11cは、そのような「先端部」ではなく表面11dを形成している(
図8aおよび
図8b参照)。しかしながら、この表面は、トランスデューサの寸法に関して無視できるほどの寸法を有しているはずである。
【0058】
凸状の表面S1上の接触点11bの分布は
図7から明らかである。
【0059】
表面S1は、トランスデューサの外側から見たときに凸状に見えるので凸状と呼ばれる。換言すれば、表面S1は、先端部10の側では凹状であり、その反対側では凸状である。
【0060】
よって、
図1から
図4における接触片1の接触点11は、好ましくは、不連続な凸状の表面を形成する。
【0061】
接触点11は、上記接触点11のうちの4つ以上を通る幾何学的平面がないように、または上記接触点11のうちの4つ以上から0.5μm未満を通る幾何学的平面がないように分布する。
【0062】
寸法の観点からは:
・接触点11は、1μm~10mmに含まれる、好ましくは20μm~3mmに含まれる、より好ましくは50μm~1mmに含まれる(必ずではないが好ましくは、一定の)ピッチD1で規則的に離間され得る、および/または
・先端部10は、1μm~10mmに含まれる、好ましくは20μm~3mmに含まれる、より好ましくは50μm~1mmに含まれる高さD2を有し得る。
【0063】
その構成に関して、接触片1は:
・材料であって、材料の比
【数4】
が1GPa
1/2*cm
3/gより大きい、好ましくは2GPa
1/2*cm
3/gより大きい、より好ましくは2.5GPa
1/2*cm
3/gより大きい材料から作ることができ、ここで、E
cはこの材料のヤング率であり、d
cはこの材料の密度である、および/または
・多結晶ダイヤモンドおよび/または多結晶立方晶窒化ホウ素および/またはベリリウムおよび/またはアルミニウムおよび/またはマグネシウムを含み得る、またはそれらから構成され得る。
【0064】
図1から
図6を参照すると、横断面において、接触片1は半径方向に縁部を切り落とされた円盤を形成する。
【0065】
図5に示すように、このような切り落としにより空間が空き、圧電ペレット2の接触片1との積層にもかかわらず、圧電ペレット2の上部に位置する、圧電ペレット2の2つの端子上にケーブル81および82をはんだ付け可能にし、これらの端子のうちの第1の端子が圧電ペレット2の一方の面に電気的に接続され、これらの端子のうちの第2の端子が圧電ペレット2の他方の面に電気的に接続される。
【0066】
接触片1は、少なくとも9個の先端部、好ましくは少なくとも16個の先端部、より好ましくは少なくとも25個の先端部を備えることができる。
【0067】
圧電ペレット2
ペレット2には、典型的には、0.05~3mmに含まれる厚さを有するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)ペレットが使用される。
【0068】
トランスデューサ+支持体
図2、
図3、
図5、および
図6の実施形態では、トランスデューサは、
図3に示す位置決め要素41、42、および43を備える。
【0069】
好ましくは、これらの位置決め要素41、42、および43は、典型的にはシリコーンまたはポリウレタンを含む、またはそれらから構成される、スチフネスが200MPa未満、好ましくは50MPa未満、より好ましくは10MPa未満である材料から作られ得る。
【0070】
さらに、これらの位置決め要素41、42、および43は、5kHzを超える、好ましくは1kHzを超える、より好ましくは100Hzを超える音波の振動数をフィルタリングするように構成され得る。音波をフィルタリングするためのそのような構成を得るために、トランスデューサが0.3グラムのオーダーの重量を有する程度まで、例えば直径が1.5mmであり、厚さが0.5mmである3つのシリコーンブロックを使用することが可能である。
【0071】
図5を参照すると、トランスデューサ9は、典型的には、位置決め要素41、42、および43によって、ベアリング要素7上に取り付けられる。
【0072】
ベアリング要素7は、例えばFR-4タイプのエポキシ樹脂から作られたプリント回路基板である。
【0073】
典型的には、トランスデューサ9の圧電ペレットは、ワイヤ81および82によって、典型的には50オームのインピーダンス整合しているモジュール6に接続される。ワイヤ83および84がこのモジュール6を回路基板7の締結点に接続する。
【0074】
超音波共鳴スペクトロスコピー装置
図6は、本発明による超音波共鳴スペクトロスコピー装置を表す。
【0075】
図2および
図3のトランスデューサによれば、分析対象の試料E1は、円柱状の全体形状を有する2つの圧電トランスデューサ9aおよび9b上に配置される。
【0076】
典型的には、トランスデューサの一方9aは、送信機として動作し、他方のトランスデューサ9bは受信機として動作する。
【0077】
2つのトランスデューサ9aおよび9bは、2つのトランスデューサ9aおよび9bの間に試料を挟まないように構成され、このことは、Gladden 2003およびHirano 1984に記載されたものなどの従来技術の装置と比較して、試料E1の自由度の数を増やす。
【0078】
ある角度および距離における、2つのトランスデューサ9aおよび9bの相対位置は、試料E1のサイズおよび形状に応じて調整されなければならない。
【0079】
図6に示す場合では、トランスデューサの一方9aが延びる方向は、他方のトランスデューサ9bが延びる方向と交差する。換言すれば、トランスデューサ9aの円柱状支持体の軸は、トランスデューサ9bの円柱状支持体の軸と交差する。
【0080】
換言すれば、トランスデューサ9aの先端部が延びる方向は、トランスデューサ9bの先端部が延びる方向と交差する。
【0081】
さらに、上記方向の交点は、先端部がそれらの基部から接触点まで延びる方向に位置している。
【0082】
好ましくは、それぞれのトランスデューサ9aおよび9bに関して反対側において、ベアリング要素7aおよび7bのそれぞれに、ウェイト5aおよび5bがそれぞれ取り付けられる。
【0083】
ウェイト5aおよび5bは、鉛から作ることができ、慣性によってトランスデューサ9aおよび9bを安定させるのに適した重量および形状を位置決めして提供することができる。
【0084】
これらのウェイト5a、5bはまた、ベアリング要素7の固有振動数を減少させるのにも有用である。
【0085】
好ましくは、圧電トランスデューサ9a、9bは、5kHz~1MHzに含まれる、好ましくは1kHz~10MHzに含まれる、より好ましくは100Hz~100MHzに含まれる振動数を有する音波を送信および/または受信するように構成され得る。
【0086】
接触片の製造方法
接触片1は、好ましくは、
・第1の一連の線が、第1の壊食軸に平行に、接触片1の電食によって切断されることと、
・第2の一連の線が、第2の壊食軸に平行に、接触片1の電食によって切断されることであって、第1の壊食軸が第2の壊食軸とは平行ではない、ことと、
を含む、ワイヤ放電加工によって先端部10を機械加工するステップを実施する方法によって製造される。
【0087】
図1の例では、接触片1が第1の壊食軸に垂直な第2の壊食軸で機械加工されていることは明らかである。
【0088】
当然のことながら、本発明は、上記の例に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの例に対して多くの修正を加えることができる。例えば:
・特に軸対称支持体および接触片が導電性である場合、接触片1は、
図1~
図6に示すものとは異なる切り落とし部分を有する、または切り落とし部分を持たないことができる。
・支持体は、例えば放物線の母線を有する任意の軸対称形状を有することができ、それにより第1の固有振動数の性能をさらに向上させることが可能になる。
【0089】
加えて、本発明の異なる特徴、形式、変形形態、および実施形態は、それらが不適合ではない、または相互に排他的ではないという範囲で、様々な組み合わせで一緒に組み合わせることができる。