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特許70587194-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)アニリン類の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)アニリン類の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/74 20060101AFI20220415BHJP
   C07C 211/52 20060101ALI20220415BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
C07C209/74
C07C211/52
C07B61/00 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020506868
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018071312
(87)【国際公開番号】W WO2019030187
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】17020348.3
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/543,002
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17207663.0
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18160380.4
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520346882
【氏名又は名称】アークサーダ・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】サラゴサ・デールバルト,フロレンシオ
(72)【発明者】
【氏名】ゾリンジャー,ダニエル
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-335735(JP,A)
【文献】特開平01-100135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/74
C07C 211/52
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物を調製する方法であって、
前記方法は、亜ジチオン酸ナトリウムの存在下で、溶媒SOLV1中において、かつ触媒CAT1の存在下で、式(II)
【化2】
の化合物を2-ブロモヘプタフルオロプロパンと反応させる、反応REAC1を含み、
REAC1の反応混合物が、1つのみの液相を有し、
RがCF又はメチルであり、
SOLV1が、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸tert-ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、アセトン、2-ブタノン、エチレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、メチルtert-ブチルエーテル、スルホラン及びこれらの混合物からなる群より選択され、
CAT1が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、硫酸、塩酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO、BuNHPO、スルファミン酸、ピリジニウム塩酸塩、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸及びこれらの混合物からなる群より選択される、方法。
【請求項2】
式(I)の化合物が、式(I-1)
【化3】
の化合物又は式(I-2)
【化4】
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(II)の化合物が、式(II-1)
【化5】
の化合物又は式(II-2)
【化6】
の化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
SOLV1が、酢酸エチル、酢酸tert-ブチル、炭酸ジメチル、アセトン、2-ブタノン、エチレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル、スルホラン及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
CAT1が、酢酸、プロピオン酸、硫酸、塩酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO、BuNHPO、ピリジニウム塩酸塩、トルエンスルホン酸及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜ジチオン酸ナトリウムの存在下で、溶媒中において、かつ触媒の存在下で、2-ブロモヘプタフルオロプロパンをアニリン類と反応させることによる、置換4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)アニリン類の調製方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
置換4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)アニリン類は、例えばCAS1207727-04-5のブロフラニリド(Broflanilid)等の農薬を調製する上で重要な中間体である。
【0003】
US4,731,450には、亜鉛及び二酸化硫黄の存在下で、極性非プロトン性溶媒中において、パーフルオロアルキルブロミドでアニリンをパーフルオロアルキル化することが記載されている。実施例において特に見られる溶媒はDMFである。
【0004】
JP2003-335735Aには、反応開始剤及び塩基の存在下でパーフルオロイソプロピルブロミドとアニリン類を反応させることにより、パーフルオロイソプロピルアニリン類を製造する方法が開示されている。この実施例では、2つの液相、すなわち水相と、有機溶媒で形成される相とを有する反応混合物のみが開示されている。
【0005】
実施例2によれば、基質が2-トルイジンの場合の収率は32%である。
【0006】
この種の反応で溶媒としてDMFを使用することには問題がある。その理由は、N-メチルアミドが容易に酸化されてホルムアルデヒドの誘導体となり、この誘導体は、アニリン類と反応することがあり、かつ生成物から除去するのが困難だからである。
【0007】
したがって、アニリン類を2-ブロモヘプタフルオロプロパンでアルキル化する方法であって、溶媒としてDMFを使用する必要がなく、亜鉛の使用も必要としない方法が必要とされている。
【0008】
置換アニリン類をアルキル化する方法として、必ずしも水その他の共溶媒を加える必要なく、必ずしも2つの液相を含む系において反応を実施する必要なく、相間移動触媒の必要なしに、かつ亜鉛、DMF、二酸化硫黄を使用する必要なしに、亜ジチオン酸ナトリウム等の還元剤の存在下で、かつ酸性物質の存在下で、有機溶媒中において置換アニリン類を2-ブロモヘプタフルオロプロパンでアルキル化できることが見出された。
【0009】
本発明の反応混合物が有する液相は1つだけであり、基質として2-トルイジンを用いた実施例7の収率は52%であった。これに対し、JP2003-335735Aの実施例2に示されている収率はわずか32%である。2つの液相を有する二相反応混合物を開示しているJP2003-335735Aの観点から予想されなかったことは、反応混合物が液相を一相しか有さず、さらに、反応混合物に水を添加しなければ亜ジチオン酸ナトリウムが当該一相中には溶けないと考えられる反応混合物において、反応実施時に収率が向上するということである。
【0010】
さらに、反応が酸性物質の存在下で行われるのに対し、JP2003-335735Aでは塩基の存在を必要とする。
【0011】
また、低収率を示した比較例3は、JP2003-335735Aの実施例2と同様の手順を用いた例であり、二液相系と相移動触媒を使用している。ただし、基質として2-トルイジンの代わりに2-トリフルオロメチルアニリンを用いている。比較例の収率がわずか9%であったのに対し、本発明の実施例3と実施例6が示した収率は、それぞれ73%と78%であった。
【0012】
特に明記しない限り、ここでは下記の略語及び同義語を使用する。
【0013】
DMF:ジメチルホルムアミド
硫酸水素ナトリウム:重硫酸ナトリウム
硫酸水素カリウム:重硫酸カリウム
亜ジチオン酸ナトリウム:Na
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第4731450号明細書
【文献】特開2003-335735号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主題は、式(I)
【0016】
【化1】
の化合物を調製する方法であって、
この方法は、亜ジチオン酸ナトリウムの存在下で、溶媒SOLV1中において、かつ触媒CAT1の存在下で、式(II)
【0017】
【化2】
の化合物を2-ブロモヘプタフルオロプロパンと反応させる、反応REAC1を含み、
REAC1の反応混合物が、1つのみの液相を有し、
RがCF又はメチルであり、
SOLV1が、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸tert-ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、アセトン、2-ブタノン、エチレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、メチルtert-ブチルエーテル、スルホラン及びこれらの混合物からなる群より選択され、
CAT1が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、硫酸、塩酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO、BuNHPO、スルファミン酸、ピリジニウム塩酸塩、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸及びこれらの混合物からなる群より選択される、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(I-1)
【0019】
【化3】
の化合物又は式(I-2)
【0020】
【化4】
の化合物であり、より好ましくは、式(I)の化合物は式(I-1)の化合物である。
【0021】
好ましくは、式(II)の化合物は、式(II-1)
【0022】
【化5】
の化合物又は式(II-2)
【0023】
【化6】
の化合物であり、より好ましくは、式(II)の化合物は式(II-1)の化合物である。
【0024】
好ましくは、SOLV1は、酢酸エチル、酢酸tert-ブチル、炭酸ジメチル、アセトン、2-ブタノン、エチレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル、スルホラン及びこれらの混合物からなる群より選択され、
より好ましくは、SOLV1は、エチレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル及びこれらの混合物からなる群より選択され、
さらにより好ましくは、SOLV1はアセトニトリルである。
【0025】
好ましくは、REAC1におけるSOLV1の重量は、式(II)の化合物の重量の0.1~100倍であり、より好ましくは0.2~50倍、さらにより好ましくは0.5~30倍、特定的には0.75~20倍、より特定的には0.75~10倍である。
【0026】
REAC1では、反応混合物が有する液相は一相のみであり、それぞれにおいてSOLV1が選択される。REAC1の反応混合物は、2つの液相を有する二相混合物ではない。
【0027】
好ましくは、REAC1においては水を使用しない。すなわち、REAC1の反応混合物に水は添加されず、水を添加することなくREAC1は行われる。
【0028】
REAC1は、水の存在下で行うことができる。水の存在下でREAC1を行う場合、好ましくは、REAC1は、第2の液相が形成されないような量の水の存在下で行われる。
【0029】
好ましくは、REAC1は相間移動触媒の不存在下で行われる。すなわち、好ましくは、REAC1は相間移動触媒が存在しない状態で行われる。
【0030】
好ましくは、二酸化硫黄、DMF、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホラミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ピリジンのいずれもREAC1に添加されず、好ましくは、REAC1は、これらの物質が存在しない状態で行われる。
【0031】
好ましくは、亜鉛、アルミニウム、マンガン、カドミウム、鉄、マグネシウム、スズ、ニッケル及びコバルトからなる群より選択されるいかなる金属もREAC1に添加されず、好ましくは、REAC1は、これらの金属が存在しない状態で行われる。
【0032】
好ましくは、CAT1は、酢酸、プロピオン酸、硫酸、塩酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO、BuNHPO、ピリジニウム塩酸塩、トルエンスルホン酸及びこれらの混合物からなる群より選択され、
より好ましくは、CAT1は、酢酸、硫酸、塩酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、NaHPO、NaHPO、BuNHPO、ピリジニウム塩酸塩、トルエンスルホン酸及びこれらの混合物からなる群より選択され、
さらにより好ましくは、CAT1は、酢酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、NaHPO、NaHPO、BuNHPO、トルエンスルホン酸及びこれらの混合物からなる群より選択され、
特に、CAT1は、酢酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0033】
好ましくは、REAC1におけるCAT1のモル量は、式(II)の化合物のモル量の0.01~20倍であり、より好ましくは0.05~10倍、さらにより好ましくは0.05~5倍、特定的には0.05~2倍、より特定的には0.05~1倍、さらにより特定的には0.05~0.75倍、特に0.05~0.5倍である。
【0034】
好ましくは、REAC1における亜ジチオン酸ナトリウムのモル量は、式(II)の化合物のモル量の0.01~5倍であり、より好ましくは0.02~3倍、さらにより好ましくは0.03~2倍、特定的には0.075~2倍、より特定的には0.1~2倍である。
【0035】
別の好ましい実施形態では、好ましくは、REAC1における亜ジチオン酸ナトリウムのモル量は、式(II)の化合物のモル量の0.1~5倍であり、より好ましくは0.2~3倍、さらにより好ましくは0.3~2倍、特定的には0.75~2倍、より特定的には1~2倍である。
【0036】
REAC1において使用される亜ジチオン酸ナトリウムの総量を、REAC1中に少量ずつに添加することができ、この少量ずつの添加を、反応時間全体に渡って行うことができる。好ましくは、各少量は等しいサイズを有し、時間的に等間隔で添加される。
【0037】
好ましくは、REAC1における2-ブロモヘプタフルオロプロパンのモル量は、式(II)の化合物のモル量の0.01~50倍であり、より好ましくは0.05~20倍であり、さらにより好ましくは0.1~10倍である。
【0038】
2-ブロモヘプタフルオロプロパンを、式(II)の化合物に対して準化学量論的な量、すなわち1当量未満の量で使用する場合、REAC1により、式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物が提供され;
式(I)の化合物と式(II)の化合物の上記混合物は、蒸留等の標準方法を用いて、好ましくは減圧下で分離することができ;
分離した式(II)の化合物を、再びREAC1に供給することができ、本実施形態は、例えば連続的な工程のセットアップに適している。
【0039】
好ましくは、2-ブロモヘプタフルオロプロパンを、式(II)の化合物に対して準化学量論的な量で使用する場合、亜ジチオン酸ナトリウムも、REAC1で使われる式(II)の化合物に対して準化学量論的な量、すなわち1当量未満の量で使用する。
【0040】
連続的な工程のセットアップにおいて、亜ジチオン酸ナトリウムも連続的にREAC1に添加することができる。
【0041】
好ましくは、連続的な工程のセットアップにおいて、CAT1及びSOLVIを連続的にREAC1に供給し、2-ブロモヘプタフルオロプロパン及び亜ジチオン酸ナトリウムも、好ましくは準化学量論的な量でREAC1に供給し、REAC1から得られた式(I)の化合物と式(II)の化合物との混合物、及びSOLV1を連続的に分離し、このように分離された式(II)の化合物及びSOLV1を再びREAC1に供給する。
【0042】
好ましくは、REAC1の反応温度は-70~180℃であり、より好ましくは-30~130℃、さらにより好ましくは0~100℃、特定的には20~80℃、より特定的には40~80℃、さらにより特定的には50~80℃である。
【0043】
好ましくは、REAC1の反応時間は0.1~200時間であり、より好ましくは0.5~100時間、さらにより好ましくは1~50時間、特定的には2~24時間、より特定的には3~24時間である。
【0044】
好ましくは、REAC1は大気圧下又は高圧下で行われ、例えば大気圧~100バールで行われる。
【0045】
アルゴン等の不活性ガスを使用するか、又は2-ブロモヘプタフルオロプロパンにそれぞれ圧力を充填することにより、高圧をかけることができる。
【0046】
REAC1の後、式(I)の化合物を標準方法により単離することができ、標準方法とは、例えば、揮発性成分の蒸発、好ましくは減圧下での蒸留、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、クロマトグラフィー及びこれらの任意の組合せであり、当業者に対して本質的に公知の方法である。
【実施例
【0047】
<原料>:
亜ジチオン酸ナトリウム:含有量85重量%、テクニカルグレード、シグマアルドリッチから提供
【0048】
[実施例1]
<4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリン、CAT1として硫酸を使用>
2-トリフルオロメチルアニリン(0.252ml、2.00mmol)、アセトニトリル(1.3ml)、硫酸(0.020ml、0.38mmol)及び亜ジチオン酸ナトリウム(492mg、2.40mmol)の混合物を、大気圧の2-ブロモヘプタフルオロプロパンの雰囲気下に置き、65℃で4.5時間撹拌した。反応混合物をブライン(8ml)で希釈し、固体NaCO(約0.5g)の添加により塩基性にし、抽出した(6mlのAcOEt)。有機相サンプルの濃度及びH NMRによる残留物の分析から、2-トリフルオロメチルアニリンと4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンの混合物が0.32:1.00のモル比で形成されたことが示された。
【0049】
[実施例2]
<4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリン、CAT1として酢酸を使用>
2-トリフルオロメチルアニリン(0.252ml、2.00mmol)、アセトニトリル(0.55ml)、酢酸(0.023ml、0.40mmol)及び亜ジチオン酸ナトリウム(492mg、2.40mmol)の混合物を、大気圧の2-ブロモヘプタフルオロプロパンの雰囲気下に置き、65℃で16時間撹拌した。混合物をブライン(8ml)で希釈し、固体NaCO(約0.5g)の添加により塩基性にし、抽出した(6mlのAcOEt)。有機相サンプルの濃度及びH NMRによる残留物の分析から、2-トリフルオロメチルアニリンと4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンの混合物が0.09:1.00のモル比で形成されたことが示された。
【0050】
[実施例3]
<4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリン、CAT1としての重硫酸ナトリウムを使用、使用した2-トリフルオロメチルアニリンに対する収率>
2-トリフルオロメチルアニリン(0.252ml、2.00mmol)、アセトニトリル(0.55ml)、NaHSO(24mg、0.20mmol)及び亜ジチオン酸ナトリウム(492mg、2.40mmol)の混合物を、大気圧の2-ブロモヘプタフルオロプロパンの雰囲気下に置き、65℃で16時間撹拌した。混合物をブライン(8ml)で希釈し、固体NaCO(約0.5g)の添加により塩基性にし、抽出した(6mlのAcOEt)。有機相サンプルの濃度及びH NMRによる残留物の分析から、2-トリフルオロメチルアニリンと4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンの混合物が0.02:1.00のモル比で形成されたことが示された。
【0051】
H NMR(DMSO,400MHz)delta=7.51(d,J=8Hz,1H)、7.48(s,br,1H)、7.08(d,J=8Hz,1H)、6.36(s,br,2H)
【0052】
この実施例の反復において、内部標準(iBuPO)を用いたH NMRにより判定された4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンの収率は、使用した2-トリフルオロメチルアニリンに対して73%であった。
【0053】
[実施例4]
<4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリン、CAT1としてBuNHSOを使用>
2-トリフルオロメチルアニリン(0.252ml、2.00mmol)、アセトニトリル(0.40ml)、BuNHSO(81mg、0.24mmol)及び亜ジチオン酸ナトリウム(492mg、2.40mmol)の混合物を、大気圧の2-ブロモヘプタフルオロプロパンの雰囲気下に置き、65℃で17時間撹拌した。混合物をブライン(8ml)で希釈し、固体NaCO(約0.5g)の添加により塩基性にし、抽出した(6mlのAcOEt)。有機相サンプルの濃度及びH NMRによる残留物の分析から、2-トリフルオロメチルアニリンと4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンの混合物が0.03:1.00のモル比で形成されたことが示された。
【0054】
[実施例5]
<4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリン、CAT1として重硫酸ナトリウムを使用、亜ジチオン酸塩を少量ずつ添加>
2-トリフルオロメチルアニリン(8.05g、50.0mmol)、アセトニトリル(13ml)、重硫酸ナトリウム(637mg、5.31mmol)の混合物を、大気圧の2-ブロモヘプタフルオロプロパンの雰囲気下に置き、65℃に加熱した。亜ジチオン酸ナトリウム(12.4g、60.5mmol)を5等分し、65℃で撹拌しながら、25分おきに各等分を添加することにより、2時間40分以内に亜ジチオン酸ナトリウムを添加した。添加完了後、65℃での撹拌を17時間続けた。反応混合物のサンプルをNaCO水溶液(水約3ml中、NaCO約0.5g)で希釈し、得られた希釈物をAcOEtで抽出し、有機抽出物を減圧下で濃縮した。
H NMRによる残留物の分析から、2-トリフルオロメチルアニリンと4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンの混合物が16:84のモル比で形成されたことが示された。
【0055】
[比較例1]
<CAT1なしにパーフルオロアルキル化する試み>
2-トリフルオロメチルアニリン(0.252ml、2.00mmol)、アセトニトリル(1.0ml)及び亜ジチオン酸ナトリウム(615mg、3.0mmol)の混合物を、大気圧の2-ブロモヘプタフルオロプロパンの雰囲気下に置き、65℃で5時間撹拌した。混合物をブライン(8ml)で希釈し、固体NaCO(約0.5g)の添加により塩基性にし、抽出した(6mlのAcOEt)。有機相サンプルの濃度及びH NMRによる残留物の分析から、2-トリフルオロメチルアニリンのアルキル化が発生しなかったことが示された。
【0056】
[比較例2]
<KCOの存在下でパーフルオロアルキル化する試み>
2-トリフルオロメチルアニリン(0.252ml、2.00mmol)、アセトニトリル(1.0ml)、炭酸カリウム(335mg、2.42mmol)及び亜ジチオン酸ナトリウム(492mg、2.40mmol)の混合物を、大気圧の2-ブロモヘプタフルオロプロパンの雰囲気下に置き、65℃で3.5時間撹拌した。混合物をブライン(8ml)で希釈し、抽出した(6mlのAcOEt)。有機相サンプルの濃度及びH NMRによる残留物の分析から、2-トリフルオロメチルアニリンと4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンの混合物が1.00:0.03のモル比で形成されたことが示された。
【0057】
[実施例6]
<単離実施、使用したヘプタフルオロ-2-ブロモプロパンに対する収率>
オートクレーブに、2-トリフルオロメチルアニリン(19.2ml、151mmol)、アセトニトリル(122ml)、NaHSO(1.91g、15.9mmol)及び亜ジチオン酸ナトリウム(85%、18.7g、90.4mmol)を添加した。この混合物にヘプタフルオロ-2-ブロモプロパン(10.0ml、75.3mmol)を添加し、得られた混合物を65℃で17時間撹拌した。H NMRによるサンプルの分析から、59mmolの4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンが形成されたことが示された。
【0058】
混合物を水(150ml)で希釈し、固体NaHCOで塩基性化し、相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出し(100mlで1回、50mlで1回)、合わせた有機相をブライン(100ml)で1回洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、油状物43.3gを得た。内部標準(スルホラン)を用いたNMRによる定量化から、59.0mmolの4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンが形成されたことが示された(使用したヘプタフルオロ-2-ブロモプロパンに対する収率78%)。
【0059】
[実施例7]
<4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-メチルアニリン>
オートクレーブに、2-メチルアニリン(25.6ml、240mmol)、アセトニトリル(64ml)、NaHSO(2.93g、24.4mmol)及び亜ジチオン酸ナトリウム(85%、56.8g、277mmol)を添加した。混合物を67℃に加熱し、3時間以内にヘプタフルオロ-2-ブロモプロパン(46ml、347mmol)を添加した。混合物を67℃で15時間撹拌した。
【0060】
混合物を水(250ml)で希釈し、固体NaHCOで塩基性化し、相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出し(100mlで1回、50mlで1回)、合わせた有機相をブライン(100ml)で1回洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、油状物76.5gを得た。内部標準(スルホラン)を用いたH NMRによる定量化から、125mmolの4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-メチルアニリンが形成されたことが示された(使用した2-メチルアニリンに対する収率52%)。
【0061】
[比較例3]
<4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリン、JP2003-335735Aの実施例2と同様の手順(二液相系と相間移動触媒)>
JP2003-335735Aの実施例2の手順を反復した。ただし下記の点が異なる。
・2-トルイジンの代わりに2-トリフルオロメチルアニリンを使用した。
・100mlオートクレーブの代わりに250mlオートクレーブを使用した。これに伴い、250mlオートクレーブでの反応混合物の撹拌を確実に行うため1.4倍に規模を拡大することも必要とされた。
・ヘプタフルオロ-2-ブロモプロパンは、オートクレーブ閉鎖後の圧力下で添加する必要があるので、最終添加として添加した。
【0062】
250mlのオートクレーブに、水(27.8ml)、メチルtert-ブチルエーテル(27.8ml)、亜ジチオン酸ナトリウム(85%、3.69g、18.0mmol)、NaHCO(1.53g、18.2mmol)、2-トリフルオロメチルアニリン(1.91ml、15.2mmol)及び硫酸水素テトラブチルアンモニウム(0.58g、1.71mmol)を添加した。次いで、20℃で撹拌しながら、ヘプタフルオロ-2-ブロモプロパン(3.68ml、27.7mmol)を添加し、撹拌を8時間続けた。
【0063】
相を分離し、水相をAcOEt(25ml)で抽出し、合わせた有機相を2NのHCl水溶液(50ml)、5%NaCO水溶液(50ml)、ブライン(50ml)で順次洗浄し、乾燥させた(MgSO)。濾過及び濃縮により、5.75gの油状物を得た。内部標準としてスルホランを用いたH NMRによる分析により、1.40mmol(9%)の4-(ヘプタフルオロ-2-プロピル)-2-トリフルオロメチルアニリンが形成されたことが示された。
【0064】
当業者であれば、一方の側の本比較例3と他方の側のJP2003-335735Aの実施例2との間の相違点に関して、2-トルイジンを2-トリフルオルメチルアニリンに変更したことの他に、JP2003-335735Aの実施例2の手順に導入された追加の相違点が、本発明の手順と比べて低収率となった原因となり得ることを疑う根拠を持たない。逆に、本発明の手順とJP2003-335735Aの手順の間の最大の相違点である、2つの液相を有する反応混合物と共に相間移動触媒を使用した(JP2003-335735Aの実施例2)ことの代わりに、いわゆる1つの液相を有する反応混合物を使用した(本発明)ことが、本発明の手順の実績が良好であった理由であると予想するであろう。