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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】低TVOC放出性シリコーン複合シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220415BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220415BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20220415BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20220415BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B32B27/00 101
C09J7/30
C09J183/07
C09J183/05
C09J11/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020536518
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 CN2018123975
(87)【国際公開番号】W WO2019129087
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/119494
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウェンチュアン・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】イン・チャン
【審査官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-503655(JP,A)
【文献】特開平04-039036(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093281(WO,A1)
【文献】特開2002-201414(JP,A)
【文献】特開2006-131830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記1)~3):
1)布帛又はポリマーフィルムから選択される基材層、
2)前記基材層上にコーティングされた、揮発性有機化合物(VOC)放出性添加剤を含有するシリコーン接着剤層、及び
3)前記シリコーン接着剤層よりVOC放出性添加剤が少ないか、VOC放出性添加剤を含まない、前記シリコーン接着剤層に隣接した補強層:
を含む複合シートであって、
前記シリコーン接着剤層のコーティング量が、前記シリコーン接着剤層及び前記補強層の合計コーティング量を基準として、45重量%未満、好ましくは35重量%未満、より一層好ましくは20重量%未満であり、
前記シリコーン接着剤層及び補強層の両方が液状シリコーンゴム(LSR)又は室温加硫シリコーンゴム(RTV)を含有するか又はそれらから本質的に成り、且つ
前記補強層が下記A)~C):
A)ケイ素原子結合アルケニル基を1分子中に平均1個以上有するオルガノポリシロキサン;
B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び
C)前記組成物を硬化させるのに有効量で存在するヒドロシリル化反応触媒:
を含む1つ以上のコーティングを含有する、
前記複合シート。
【請求項2】
前記基材が織布若しくは不織布から選択される布帛、又はポリプロピレン、ポリエチレン、ファイバーグラス、ポリアミド及びポリ(エチレン)テレフタレートから選択されるポリマーフィルム、又はそれらの組成物若しくは混合物であり、好ましくはエアバッグ又は人工皮革又は少なくともそれらの一部であることを特徴とする、請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
全揮発性有機化合物(TVOC)放出が100μgC/g未満、好ましくは70μgC/g未満、より一層好ましくは50μgC/g未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合シート。
【請求項4】
VOC放出性添加剤の総量の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%又は95%、より一層好ましくは100%が前記シリコーン接着剤層中に含有されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の複合シート。
【請求項5】
前記VOC放出性添加剤が、そのままの又は一部加水分解したビニル含有シラン又はオルガノシロキサン及びその反応生成物の内の1種並びにそのままの又は一部加水分解したエポキシ官能基官能化シラン又はオルガノシロキサン及びその反応生成物の内の1種から選択される接着促進剤、好ましくはエポキシシラン、アルコキシシラン、アリールオキシシラン又はそれらのオリゴマーから選択される接着促進剤;より一層好ましくは3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランから選択される接着促進剤であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の複合シート。
【請求項6】
前記シリコーン接着剤層が液状シリコーンゴム(LSR)又は室温加硫シリコーンゴム(RTV)を含むか又はそれらから本質的に成り、好ましくは下記A)~D):
A)ケイ素原子結合アルケニル基を1分子中に平均1個以上有するオルガノポリシロキサン;
B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン;
C)前記組成物を硬化させるのに有効量で存在するヒドロシリル化反応触媒;及び
D)VOC放出性添加剤、好ましくは接着促進剤
を含む組成物であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の複合シート。
【請求項7】
前記VOC放出性添加剤、好ましくは接着促進剤の量がコンポーネントAのオルガノポリシロキサン100重量部当たり0.01~5重量部、好ましくは1~3重量部であることを特徴とする、請求項6に記載の複合シート。
【請求項8】
前記オルガノポリシロキサンが、式R3SiO1/2のシロキサン単位M、式R2SiO2/2のシロキサン単位D、式RSiO3/2のシロキサン単位T及び式SiO4/2のシロキサン単位Q(ここで、Rは1~20個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表す)より成る群から選択される少なくとも2個の異なるシロキサン単位を含み、但し、これらシロキサン単位の内の少なくとも1個がシロキサン単位T又はQであり且つシロキサン単位M、D及びTの内の少なくとも1個がアルケニル基を含むことを特徴とする、請求項6に記載の複合シート。
【請求項9】
前記オルガノポリシロキサンが、式R3SiO1/2の一価シロキサン単位M、式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位MVi及び式SiO4/2の四価シロキサン単位Qから本質的に成る式MMViQのオルガノポリシロキサン樹脂(ここで、Rは1~20個の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~12個、より一層好ましくは1~8個の炭素原子を有する一価脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、R'はアルケニル基、好ましくは2~12個、より一層好ましくは2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、特にビニル又はアリル、特に好ましくはビニルを表す)であることを特徴とする、請求項6に記載の複合シート。
【請求項10】
前記オルガノポリシロキサンが、式R2SiO2/2の二価シロキサン単位M、式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位DVi及び式SiO4/2の四価シロキサン単位Qから本質的に成る式MDViQのオルガノポリシロキサン樹脂(ここで、Rは1~20個の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~12個、より一層好ましくは1~8個の炭素原子を有する一価脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、R'はアルケニル基、好ましくは2~12個、より一層好ましくは2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、特にビニル又はアリル、特に好ましくはビニルを表す)であることを特徴とする、請求項6に記載の複合シート。
【請求項11】
前記接着剤層及び前記補強層の合計コーティング重量が50gsm超、好ましくは100~400gsm、より一層好ましくは100gsm~300gsmであることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の複合シート。
【請求項12】
前記基材がエアバッグであり且つ前記接着剤層及び前記補強層の合計重量が90~300gsmであること、又は前記基材が人工皮革であり且つ前記接着剤層及び前記補強層の合計重量が200~400gsmであることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の複合シート。
【請求項13】
前記基材、前記シリコーン接着剤層及び前記補強層から成り、前記VOC放出性添加剤、好ましくは接着促進剤が前記シリコーン接着剤層中だけに含有されることを特徴とする、請求項5~12のいずれかに記載の複合シート。
【請求項14】
基材を用意する工程、前記基材上に接着剤層を適用する工程及び前記接着剤層上に補強層を適用する工程を含むコーティング方法であって、
前記基材、接着剤層及び補強層が請求項1~13のいずれかに記載の通りであり、且つ前記シリコーン接着剤層のコーティング量が前記シリコーン接着剤層及び前記補強層の合計コーティング量を基準として45重量%未満、好ましくは35重量%未満、より一層好ましくは20重量%未満である、前記コーティング方法。
【請求項15】
TVOC放出を減らすための請求項14に記載の方法の使用。
【請求項16】
請求項1~13のいずれかに記載の複合シートを含有するエアバッグ又は人工皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低TVOC放出性シリコーン複合シート、コーティング方法及びTVOC放出を減少させるための前記方法の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
VOC(揮発性有機化合物)によって引き起こされる可能性がある環境へのダメージのせいで、VOC放出性が高いコーティングの使用を制限する様々な規制が存在する。
【0003】
トータルカーモジュラスについてのTVOC(全揮発性有機化合物)放出に対しては、より高い基準が要求されている。特に、50μgC/g未満のレベルをパスするためには、100gsm(g/m2)~200gsmのような高コート重量のエアバッグ用のコーティングされた布帛がハイライトされている。高重量コーティング布帛は主として耐熱性シートに使用されている。既存のコーティング製品のほとんどは、この工業的基準に達していない。
【0004】
中国特許第104768743A号には、例えばエアバッグを含めたインフレータブル自動車安全装置が開示されており、この装置においては、バリア層が布帛層に隣接していてよく、このバリア層はシリコーンエラストマーの少なくとも1つの層及び1つ以上のトップコートを含む。この文献は、耐熱性に主眼を置いているが、VOC放出を削減することには注意を払っていない。
【0005】
さらに、シリコーン組成物でコーティングされた耐摩耗性の人工皮革についてもまた、TVOCが困難な問題になっている。これまで、当業者は、TVOCレベルを約100μgC/g以下に低減させるための有効な方法を見出していない。
【0006】
VOC放出量を減らすための先行技術における1つの実行可能な方法はおそらくベーキングだろうが、しかしこれはより長い硬化時間及び/又はより高い硬化温度を必要とする。たとえこのようなベーキング又は硬化処理に付しても、複合シートはおそらく依然としてVOC放出に対する厳しい規制に準拠していない可能性がある。高コート重量のコーティングの場合、より多くのVOC放出性添加剤が接着剤層に含まれるため、状況はさらに悪化する。
【0007】
特に高コート重量のコーティングの場合、新たな基準及び厳しい規制を満たすために、TVOC放出を減らすための有効な方法が緊急に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許第104768743A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本開示の目的は、TVOC放出量が少ないが依然として良好な基材付着性(基材に対する付着性)を維持し、従って良好な機械的特性を維持する複合シートを提供することにある。驚くべきことに、この目的は、請求項1に記載した複合シートによって達成される。
【0010】
別の目的は、TVOC放出量が少なく且つ付着性が損なわれないコーティング方法を提供することにある。この方法によれば、TVOC放出を減らすためにそれより厳しい硬化又はベーキング条件はもはや必要ない。この目的もまた、請求項15に記載した方法によって達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
定義
【0012】
本明細書において用いた時、用語「低TVOC組成物」とは、硬化したコーティング組成物1g当たりの全揮発性有機化合物含有量が100μgC/g以下である組成物を意味する。
【0013】
本明細書において用いた時、用語「揮発性有機化合物」とは、少なくとも1個の炭素原子を有し且つ硬化した組成物から放出される化合物を指す。「揮発性有機化合物」の例には、限定されるわけではないが、アルコール類、ベンゼン類、トルエン類、クロロホルム類及びシクロヘキサン類が含まれる。特にシリコーン組成物でコーティングされる予定のエアバッグを製造するための布帛又は人工皮革製品においては、VOCは主にアルコールからシランから、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等中の揮発性物質から由来する。
【0014】
本明細書において用いた時、用語「高コート重量コーティング」とは、硬化後又は乾燥後の単位面積上のコーティング組成物の単位面積当たりの重量が90g/m2以上、好ましくは100gsm~400gsmであることを意味する。
【0015】
本明細書において用いた時、組成物又はコンポーネント、例えばオルガノポリシロキサン又はポリシロキサン樹脂等について述べる時、用語「~から本質的に成る」とは、当該コンポーネント又は組成物が、示した成分又はコンポーネントそれぞれを、当該コンポーネント又は組成物それぞれの総重量を基準として50重量%超、例えば少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも80、90若しくは95重量%、さらには100重量%含むことを意味する。
【0016】
本開示の第1の局面において、以下の1)~3)を含む複合シートが提供される:
【0017】
1)布帛又はポリマーフィルムから選択される基材層、
【0018】
2)前記基材層上にコーティングされた、揮発性有機化合物(VOC)放出性添加剤を含有するシリコーン接着剤層、及び
【0019】
3)前記シリコーン接着剤層に隣接した補強層(補強用の層);
【0020】
ここで、前記シリコーン接着剤層のコーティング量は、前記シリコーン接着剤層及び前記補強層の合計コーティング量を基準として、45重量%未満、好ましくは35重量%未満、より一層好ましくは20重量%未満であり、
【0021】
前記シリコーン接着剤層及び補強層の両方は、液状シリコーンゴム(LSR)又は室温加硫させたシリコーンゴム(RTV)を含有するか又はそれらから本質的に成り、
【0022】
前記補強層は、以下のA)~C)を含む1つ以上のコーティングを含有する:
【0023】
A)ケイ素原子結合アルケニル基を1分子中に平均1個以上有するオルガノポリシロキサン;
【0024】
B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び
【0025】
C)前記組成物を硬化させるのに有効量で存在するヒドロシリル化反応触媒。
【発明の効果】
【0026】
先行技術においては、当業者は通常、本開示の文脈で規定されるようなシリコーン接着剤層及び補強層の材料組成物を単に均一に混合することによって、エアバッグや人工皮革のような基材上にコーティングされる接着剤層を形成させ、その後に比較的高温において長時間ベーク又は硬化させていたため、多量のVOCが放出されていた。しかしながら、本発明者は、予期しなかったことに、通常の粘着性コーティングを上記のような2層構造として設計し、VOC放出性添加剤をシリコーン接着剤層中に含有させ、そのコーティング量を上で要求するように45重量%未満とすることによって、厳しい硬化及びベーキング条件なしで、良好な結合強度等の機械的特性を維持しながら、TVOC放出量を著しく減らすことができることを見出した。TVOC放出量は100μgC/g未満、好ましくは70μgC/g未満、より一層好ましくは50μgC/g未満まで減少する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示において、基材層は、織布若しくは不織布を含む布帛、又はポリプロピレン、ポリエチレン、ファイバーグラス、ポリアミド及びポリ(エチレン)テレフタレートから選択されるポリマーフィルム、並びにそれらの組成物又は混合物であることができる。織布は、有利には太さが20dtex以上である糸を有することができる。布帛が不織布である場合、これは約40g/m2~約400g/m2の範囲の秤量を有することができる。不織布を基材層として用いる場合、これは人工皮革であるのが好ましい。
【0028】
本開示の1つの実施形態において、本発明の方法及び複合シートは、エアバッグ若しくは人工皮革又はそれらの少なくとも一部である基材について、特に好適である。本開示に従ってエアバッグ又は人工皮革を製造する際に、同じ処理条件下(ベーキング温度及び硬化時間等)の先行技術と比較して、TVOC放出量がはるかに少ない。
【0029】
前記シリコーン接着剤層は、基材上に直接適用される第1の層である。1つの有益な実施形態において、これは液状シリコーンゴム(LSR)又は室温加硫シリコーンゴム(RTV)を含有するか又はそれらから本質的に成る(ベース材料の限定なし)。
【0030】
1つの実施形態において、前記シリコーン接着剤層は、以下のA)~D)を含む組成物である:
【0031】
A)ケイ素原子結合アルケニル基を1分子中に平均1個以上有するオルガノポリシロキサン;
【0032】
B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン;
【0033】
C)前記組成物を硬化させるのに有効量で存在するヒドロシリル化反応触媒;
【0034】
D)VOC放出性添加剤。
【0035】
コンポーネントA)オルガノポリシロキサン
【0036】
本開示において、オルガノポリシロキサン中のアルケニル基は、ポリシロキサンの主鎖上の任意の位置、例えば分子鎖の末端若しくは中、又は末端及び中の両方にあることができる。
【0037】
本開示の1つの有益な実施形態において、前記オルガノポリシロキサンは、以下の(i)及び(ii)を含む:
【0038】
(i)式(I-1)のシロキサン単位:
【0039】
1 abSiO[4-(a+b)]/2 (I-1)
【0040】
ここで、
【0041】
1はC2-C12、好ましくはC2-C6アルケニル、特に好ましくはビニル又はアリルを表し、
【0042】
Zは同一であっても異なっていてもよく、1~30個、好ましくは1~12個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、これには、随意に1個以上のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基(好ましくはC1~C8アルキル基から選択されるもの)及びアリール基、特にC6~C20アリール基が含まれ、
【0043】
aは1又は2であり、
【0044】
bは0、1又は2であり、
【0045】
aとbとの合計は1、2又は3である。
【0046】
(ii)随意としての、式(I-2)の別のシロキサン単位:
【0047】
cSiO(4-c)/2 (I-2)
【0048】
ここで、
【0049】
Zは上記の意味を持ち、cは0、1、2又は3である。
【0050】
好ましい実施形態において、Zはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、キシリル及びトリル等より成る群から選択することができる。好ましくは、基Zの少なくとも60モル%はメチルである。
【0051】
前記オルガノポリシロキサンは、少なくとも50mPa・sであって好ましくは200000mPa・s未満の粘度を有することができる。本開示において、すべての粘度データは、動的粘度値に関し、別段の記載がない限り、例えば既知の態様でブルックフィールド型測定器を用いて20℃において測定することができる。
【0052】
前記オルガノポリシロキサンは、式(I-1)の単位のみから成っていてもいいし、追加的に式(I-2)の単位を含んでいてもよい。前記オルガノポリシロキサンは、線状、分岐状又は環状構造であってよい。
【0053】
式(I-1)のシロキサン単位の例には、ビニルジメチルシロキシ、ビニルフェニルメチルシロキシ、ビニルメチルシロキシ及びビニルシロキサン単位が含まれる。
【0054】
式(I-2)のシロキサン単位の例には、SiO4/2単位、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシ、メチルシロキシ及びフェニルシロキシ単位が含まれる。
【0055】
前記オルガノポリシロキサンの例には、直線状又は環状化合物、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチルビニルシリル末端基を含む)、(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー(トリメチルシリル末端基を含む)、(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー(ジメチルビニルシリル末端基を含む)及び環状メチルビニルポリシロキサンが含まれる。
【0056】
1つのより一層好ましい実施形態において、前記オルガノポリシロキサンが式R3SiO1/2のシロキサン単位M、式R2SiO2/2のシロキサン単位D、式RSiO3/2のシロキサン単位T及び式SiO4/2のシロキサン単位Q(ここで、Rは1~20個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表す)より成る群から選択される少なくとも2個の異なるシロキサン単位を含み、但し、これらシロキサン単位の内の少なくとも1個はシロキサン単位T又はQであり且つシロキサン単位M、D及びTの内の少なくとも1個はアルケニル基を含む場合に、特に低いTVOC放出性及び非常に安定な基材付着性が見出された。
【0057】
アルケニル基を有するシロキサン単位M(MVi単位)を含むオルガノポリシロキサンについては、下記のオルガノポリシロキサン樹脂より成る群から選択されるポリシロキサン樹脂を用いることが可能である(ここでは、単位T、Q又はDについて言及する時、上付文字Viを付した単位は、アルケニル基を含有する単位を表す):
【0058】
・下記の単位から本質的に成る式MViQのオルガノポリシロキサン樹脂:
【0059】
式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位MVi、及び
【0060】
式SiO4/2の四価シロキサン単位Q;並びに
【0061】
・下記の単位から本質的に成る式MMViQのオルガノポリシロキサン樹脂:
【0062】
式R3SiO1/2の一価シロキサン単位M、及び
【0063】
式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位MVi、及び
【0064】
式SiO4/2の四価シロキサン単位Q、並びに
【0065】
・下記の単位から本質的に成る式MViViQのオルガノポリシロキサン樹脂:
【0066】
(a)式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位MVi
【0067】
(b)式R'SiO3/2の三価シロキサン単位TVi、及び
【0068】
(c)式SiO4/2の四価シロキサン単位Q、
【0069】
・下記の単位から本質的に成る式MViTQのオルガノポリシロキサン樹脂:
【0070】
式RSiO3/2の三価シロキサン単位T;
【0071】
式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位MVi、及び
【0072】
式SiO4/2の四価シロキサン単位Q、並びに
【0073】
・下記の単位から本質的に成る式MViDQのオルガノポリシロキサン樹脂:
【0074】
式R2SiO2/2の二価シロキサン単位D;
【0075】
式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位MVi、及び
【0076】
式SiO4/2の四価シロキサン単位Q。
【0077】
ここで、Rは1~20個の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~12個、より一層好ましくは1~8個の炭素原子を有する一価脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、
【0078】
R'はアルケニル基、好ましくは2~12個、より一層好ましくは2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、特にビニル又はアリル、特に好ましくはビニルを表す。
【0079】
アルケニル基を有するシロキサン単位D(DVi単位)を含むオルガノポリシロキサンについては、下記より成る群から選択されるポリシロキサン樹脂を用いることが可能である:
【0080】
・下記の単位から本質的に成る式MDViQのオルガノポリシロキサン樹脂:
【0081】
式R2SiO2/2の二価シロキサン単位M;
【0082】
式R'R2SiO1/2の一価シロキサン単位DVi、及び
【0083】
式SiO4/2の四価シロキサン単位Q。
【0084】
ここで、Rは1~20個の炭素原子を有する一価炭化水素基、好ましくは1~12個、より一層好ましくは1~8個の炭素原子を有する一価脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、
【0085】
R'はアルケニル基、好ましくは2~12個、より一層好ましくは2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、特にビニル又はアリル、特に好ましくはビニルを表す。
【0086】
さらに、アルケニル基を有するシロキサン単位D(DVi単位)を含むオルガノポリシロキサン樹脂はまた、式MDViTQのオルガノポリシロキサン樹脂から選択することもできる。
【0087】
1つの特に好ましい実施形態において、前記オルガノポリシロキサンは、式MMViQ及び/又は式MDViQのオルガノポリシロキサン樹脂から選択することができる。
【0088】
コンポーネントB)オルガノハイドロジェンシロキサン
【0089】
シリコーン組成物中のオルガノハイドロジェンシロキサンは、硬化剤としての働きをし、オルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子がオルガノポリシロキサンのアルケニル基と反応する。オルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子はまた、望まれる時に組成物を発泡させるための水素ガスを発生させるために用いることもできる。用いることができるオルガノハイドロジェンシロキサンは、鎖中のケイ素結合水素原子を平均して1分子当たり少なくとも1個含有する。
【0090】
前記オルガノハイドロジェンシロキサンは、線状、環状または分岐状構造を有することができ、ホモポリマー、コポリマー、2種以上の異なるホモポリマーの混合物、2種以上の異なるコポリマーの混合物又はこれらのタイプのポリマーの混合物であることができる。
【0091】
前記オルガノハイドロジェンシロキサンの使用量は、硬化の際に所望の架橋度をもたらすのに足りる量であるべきである。一般的には、前記オルガノハイドロジェンシロキサンの割合は、前記オルガノポリシロキサン100重量部当たり約2~約80重量部の範囲内、又は約3~約40重量部の範囲内である。
【0092】
コンポーネントC)ヒドロシリル化反応触媒
【0093】
前記ヒドロシリル化反応触媒には、ヒドロシリル化反応を促進することが当業者に知られている、任意のロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム又は白金含有触媒を含めた白金族金属触媒が含まれ得る。白金化合物及びロジウム化合物を用いるのが好ましい。例えば、米国特許第3159601号、米国特許第3159602号、米国特許第3220972号、欧州特許第0057459号、欧州特許第0188978号又は欧州特許第0190530号の各明細書に記載された白金の錯体及び有機化合物、特に、例えば米国特許第3419593号、米国特許第3715334号、米国特許第3377432号又は米国特許第3814730号の各明細書に記載された白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体を用いることができる。これら特許明細書の全体を参考のためにここに取り入れる。
【0094】
1つの実施形態において、白金含有触媒は、白金触媒である。好適な形の白金触媒には、限定されるわけではないが、クロロ白金酸、1,3-ジエテニル-1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン白金錯体、ハロゲン化第一白金又はクロロ白金酸とジビニルジシロキサンとの錯体及びクロロ白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとテトラメチルジシロキサンとの反応によって生成する錯体が含まれる。
【0095】
白金触媒等のヒドロシリル化触媒の使用量は、オルガノポリシロキサンの重量を基準として一般的に0.1~10000ppm、好ましくは1~1000ppm、より一層好ましくは5~500ppmの範囲である。
【0096】
コンポーネントD)VOC放出性添加剤
【0097】
本開示に従えば、VOC放出性添加剤のほとんど又は全部が接着剤層に同化吸収され、第2の層、即ち補強層中には残りが含有されるか又は何も含有されないのが好ましい。本明細書において、「VOC放出性添加剤のほとんど又は全部」という表現は、VOC放出性添加剤(本開示に従ってシリコーン接着剤層及び補強層中に必要とされるがしかし最終的なTVOC放出量が100μgC/g未満のもの)の総量の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%又は80%又は90%又は95%又はそれ以上、より一層好ましくは100%を指す。VOC放出性添加剤には、フレーバー剤、カラーペースト、接着促進剤又はそれらの混合物を含ませることができる。さらに、VOC放出性添加剤にはまた、VOC放出性物質で処理されたある種のフィラーを含ませることもできる。VOC放出性添加剤の中で、接着促進剤は顕著な量のVOCを放出する重大なものである。
【0098】
本開示の1つの実施形態において、VOC放出性添加剤は、下記を含む群から選択される1種以上のものから本質的に成ることができる接着促進剤である:
【0099】
・ビニル含有シラン又はオルガノシロキサン(そのままのもの又は一部加水分解したもの)及びその反応生成物の内の1種;
【0100】
・エポキシ官能基で官能化されたシラン又はオルガノシロキサン(そのままのもの又は一部加水分解したもの)及びその反応生成物の内の1種;
【0101】
・メタクリレート官能化シラン又はオルガノシロキサン(そのままのもの又は一部加水分解したもの)及びその反応生成物の内の1種;
【0102】
・酸無水物基で官能化されたシラン又はオルガノシロキサン(そのままのもの又は一部加水分解したもの)及びその反応生成物の内の1種;並びに
【0103】
・チタン酸ブチルタイプのキレート。
【0104】
本開示の別の実施形態において、接着促進剤は、エポキシシラン、アルコキシシラン、アシルオキシシラン、アリールオキシシラン又はそれらのオリゴマーから選択される1種以上であることができる。これらには、限定されるわけではないが、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン及びフマル酸ビス(トリメトキシシリルプロピル)、アルコキシ又はアリールオキシシリコーン、例えばトリメトキシシリル官能基変性シリコーン類が含まれる。さらに、それらにはまた、シラノール、1個以上のアルコキシシリル官能基を含有するオリゴシロキサン、アルコキシシリル官能基を含有するポリシロキサン、ヒドロキシル官能基を含有する1種以上のオリゴマー性シロキサン、1個以上のアリールオキシシリル官能基を含有するポリシロキサン、1個以上のアルコキシシリル官能基を含有するシクロシロキサン、1個以上のヒドロキシル基を含有するシクロシロキサン、テトラアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、それらの混合物及びそれらの組合せ物も含まれる。
【0105】
1つの有益な実施形態に従えば、本発明は、VOC放出性添加剤が接着促進剤であるか又は接着促進剤を含有する場合に、TVOCを減らすのに非常に効果的であることが見出された。
【0106】
好ましくは、前記接着促進剤は、ビニル含有シラン又はオルガノシロキサン(そのままのもの又は一部加水分解したもの)及びその反応生成物の内の1種並びにエポキシ官能基で官能化されたシラン又はオルガノシロキサン(そのままのもの又は一部加水分解したもの)及びその反応生成物の内の1種から選択され;
【0107】
より一層好ましくは、前記接着促進剤は、エポキシシラン、アルコキシシラン、アリールオキシシラン又はそれらのオリゴマーから選択され;
【0108】
特に好ましくは、前記接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランから選択される。
【0109】
1つの実施形態において、VOC放出性添加剤(好ましくは接着促進剤)の量は、コンポーネントAのオルガノポリシロキサン100重量部当たり0.01~5重量部、好ましくは1~3重量部である。
【0110】
シリコーン接着剤層は、補強層と基材との間の粘着性媒介物として設定され、そのコート重量は、全炭素放出への寄与が非常に制限されるように、比較的低いレベルで制御されなければならない。1つの実施形態において、シリコーン接着剤層のコート重量は、5gsm~200gsm、例えば10-150gsmとする。
【0111】
本開示に従えば、接着剤層に隣接して、補強層が配置される。補強層は、1つ以上のコーティングから成っていてよく、これらコーティングは好ましくはケイ素含有組成物のコーティングである。かかるケイ素含有組成物はまた、好ましくは、コンポーネントA')オルガノポリシロキサン、コンポーネントB')オルガノハイドロジェンシロキサン及び随意としてのコンポーネントC')ヒドロシリル化反応触媒をも含んでいてもよい。ここで、接着剤層のコンポーネントA)~C)について与えた一般的な説明及び好ましい実施形態はそれぞれ、補強層のコンポーネントA')~C')にも当てはまる。
【0112】
本願発明において、補強層はトップコートを含んでいてもよく、トップコートは複合シートの最外コーティングであり、補強層中の他のコーティングとは組成が相違していてもよい。かくして、補強層は、耐熱性、耐摩耗性又は低表面摩擦係数としての役割を果たす。好ましくは、補強層(存在する場合に最外トップコートを含むもの)はシリコーン組成物であり、従って硬化した時にシリコーンコートを形成することができる。
【0113】
1つの好ましい実施形態において、補強層は、接着剤層と同じ組成又は異なる組成を有していることができるが、但し、VOC放出性添加剤は補強層中にはほとんど含有されない。
【0114】
1つの好ましい実施形態において、補強層のコート重量は、80~300gsm、たとえば100~200gsmである。
【0115】
また、より一層低い摩擦係数及びより一層良好な耐熱性のために、補強層に対して随意に表面処理を行うこともできる。
【0116】
基材の全コーティング重量は、50gsm超、好ましくは100gsm~300gsmとする。
【0117】
基材がエアバッグである場合、接着剤層及び補強層の合計重量は、90~300gsmであり、その内、接着剤層が10gsm~80gsm、随意に20~50gsmであり;第2の層が80gsm~200gsm、随意に100gsm~180gsmである。
【0118】
基材が人工皮革である場合、接着剤層及び補強層の合計重量は、200~400gsmであり、その内、第1の層が50gsm~200gsm、随意に80~120gsmであり;第2の層が100gsm~300gsmである。
【0119】
本開示の1つの好ましい実施形態においては、接着剤層を基材と補強層との間に直接配置させる。別の好ましい実施形態において、複合シートは、上で定義した基材、シリコーン接着剤層及び補強層から成り、ここで、接着促進剤(好ましくはVOCを放出するもの)は、シリコーン接着剤層中だけに含有される。
【0120】
様々な用途に応じて、シリコーン接着剤層又は補強層の組成物中にはさらにコンポーネントE)としてVOCを放出しない別の添加剤を含ませることができる。これらの添加剤は、当業者に周知である。
【0121】
1つの実施形態において、接着剤層又は補強層のシリコーン組成物の組成中には、非VOC放出性フィラー材料、例えば補強用フィラー又は非補強用フィラー、好ましくは非補強用無機フィラーを含有させることができる。かかるフィラー材料には、限定されるわけではないが、様々な非晶質又は結晶質無機化合物、例えばヒュームドシリカ、沈降シリカ、石英、ウォラストナイト、ガラスビーズ、タルク、カオリン、マイカ若しくは炭酸カルシウム等;並びに金属酸化物、例えばアルミナ、水和アルミナ、酸化第二鉄及び二酸化チタン;又はそれらの混合物が含まれ得る。
【0122】
これらのシリコーン組成物に加えられる非VOC放出性添加剤、特に繊維質材料等のフィラー材料の量は、例えばオルガノポリシロキサン100重量部当たり5~40重量部、好ましくは10~35重量部の範囲であることができる。
【0123】
本開示の別の局面において、これは、下記の工程を含むコーティング方法に関する:
【0124】
・基材を用意し、
【0125】
・前記基材上にシリコーン接着剤層を適用し、そして
【0126】
・前記接着剤層上に補強層を適用する。
【0127】
ここで、前記基材、接着剤層及び補強層は上で定義した通りであり、前記シリコーン接着剤層のコーティング量は、前記シリコーン接着剤層及び前記補強層の合計コーティング量を基準として、45重量%未満、好ましくは35重量%未満、より一層好ましくは20重量%未満である。
【0128】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態においては、接着剤層を基材上(好ましくはエアバッグ及び人工皮革)上に直接コーティングし、次いで前記接着剤層を硬化させた後に補強層を前記接着剤層上に直接コーティングする。
【実施例
【0129】
実施例
【0130】
TVOC試験装置:HS-GC/FID
【0131】
TVOC試験条件:
【0132】
計量する前に、これらの材料を細かく切断し、塩化カルシウム上で24時間乾燥させる。
【0133】
試験片を、試験片の全断面に渡って、示された場所において材料から取り除く。次いで、試験片の温度を上昇させることなく、それらを10mg~25mgの範囲の重量で細かく切断する。
【0134】
試験片のパーツをヘッドスペースバイアル中に測り取る(各試験片についてバイアル最低3個)。このバイアルの内部に面する部分をテフロンコーティングされた蓋を使って、バイアルを密封する。
【0135】
TVOC試験法:
【0136】
測定に先立って、サンプル中に含有される物質のバイアル中濃度を高めるために、ヘッドスペースのサンプリング弁において、バイアルを、サンプルの上方の空気中で120℃±1℃において5時間±5分間状態調節し、その直後にバイアルを分析する。少なくとも3個のサンプルを分析する。
【0137】
空のバイアルについての少なくとも3回の測定からの信号値の平均値を計算することによって、ブランク値を決定する。
【0138】
すべてのサンプルの分析について、薬量、ブランク値及び較正用溶液は同一で再現性があるものにする。
【0139】
分離用カラムは、週に一度、少なくとも15分間、最大温度まで加熱する。
【0140】
付着性試験法:
【0141】
付着性試験を、次のステップに従って実施する:
【0142】
ステップ1:470dtexのナイロン66布帛46*46/cm上に第1の層をナイフ塗布具によってコーティングする。コーティング重量は25gsm~30gsmとし、160℃において2分間硬化させる。
【0143】
ステップ2:第1の層でコーティングされた布帛の2つのピースの間で厚さ1mm、長さ5cm、幅1cmの第2の層をコーティングし、160℃において2分間硬化させる。
【0144】
ステップ3:クッキーを剥がし、最大の力及び破壊モードを記録する。
【0145】
標準:要求される100%結合破壊モールド。
【0146】
ステップ4:クッキーを70℃、95%RHで17日間エージングする。
【0147】
ステップ5:剥離性を試験し、最大の力及び破壊モードを記録する。
【0148】
試験サンプルの調製
【0149】
第1のパーツと第2のパーツとを均一に混合し、布帛上に第1の層を要求されるコート重量でナイフコーティング又はレイヤーバーコーティングし、160℃において2分間(エアバッグについて)又は110℃において6分間(人工皮革について)硬化させ、次いで第1の層の上に第2の層を要求されるコート重量及び硬化条件でコーティングする。
【0150】
例1、2及び比較例
【0151】
コンポーネントA1:
【0152】
MMViQ樹脂(ビニル含有率0.041%)及びビニル末端ポリジメチルシロキサンオイル(ビニル含有率0.003%、粘度60000mPa・s)の混合物。
【0153】
コンポーネントA2:
【0154】
MDViQ樹脂(ビニル含有率0.028%)及びビニル末端ポリジメチルシロキサンオイル(ビニル含有率0.003%、粘度100000mPa・s)の混合物;
【0155】
コンポーネントB:
【0156】
SiH含有率0.69モル/100gのメチル末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン。
【0157】
コンポーネントC:
【0158】
Bluestar Silicones Silcolease Catalyst 21093(Bluestar Silicones社)。
【0159】
コンポーネントD:
【0160】
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとチタン酸ブチルとの混合物。
【0161】
コンポーネントE:
【0162】
炭酸カルシウム。
【0163】
例1
【0164】
第2の層(補強層)についての調製:
【0165】
100重量部のコンポーネントA2、100重量部のコンポーネントA2に対して7重量部のコンポーネントB、100重量部のコンポーネントA2に対して0.027重量部のコンポーネントC、100重量部のコンポーネントA2に対して18.9重量部のコンポーネントE。
【0166】
コート重量:155gsm
【0167】
硬化条件:160℃、2分間
【0168】
第1の層(シリコーン接着剤層)についての調製:
【0169】
100重量部のコンポーネントA2、100重量部のコンポーネントA2に対して7重量部のコンポーネントB、100重量部のコンポーネントA2に対して2.8重量部のコンポーネントD、100重量部のコンポーネントA2に対して0.027重量部のコンポーネントC、100重量部のコンポーネントA2に対して18.9重量部のコンポーネントE。
【0170】
基材:470dtexのナイロン66布帛
【0171】
コート重量:25gsm
【0172】
硬化条件:160℃、2分間
【0173】
例2
【0174】
第2の層(補強層)についての調製:
【0175】
100重量部のコンポーネントA1、100重量部のコンポーネントA1に対して7重量部のコンポーネントB、100重量部のコンポーネントA1に対して0.022重量部のコンポーネントC、100重量部のコンポーネントA1に対して26重量部のコンポーネントE。
【0176】
コート重量:155gsm
【0177】
硬化条件:160℃、2分間
【0178】
第1の層(シリコーン接着剤層)についての調製:
【0179】
100重量部のコンポーネントA2、100重量部のコンポーネントA2に対して7重量部のコンポーネントB、100重量部のコンポーネントA2に対して2.8重量部の接着促進剤D、100重量部のコンポーネントA2に対して0.027重量部のコンポーネントC、100重量部のコンポーネントA2に対して18.9重量部のコンポーネントE。
【0180】
基材:470dtexのナイロン66布帛
【0181】
コート重量:25gsm
【0182】
硬化条件:160℃、2分間
【0183】
比較例1:
【0184】
調製:100重量部のコンポーネントA1、100重量部のコンポーネントA1に対して7重量部のコンポーネントB、100重量部のコンポーネントA1に対して4.64重量部の接着促進剤D、100重量部のコンポーネントA1に対して0.022重量部のコンポーネントC、100重量部のコンポーネントA1に対して26重量部のコンポーネントEを第2のパーツとして混合。
【0185】
基材:470dtexのナイロン66布帛
【0186】
コート重量:155gsm
【0187】
硬化条件:160℃、4分間
【0188】
比較例2:
【0189】
調製:100重量部のコンポーネントA2、100重量部のコンポーネントA2に対して7重量部のコンポーネントB、100重量部のコンポーネントA2に対して2.8重量部の接着促進剤D、100重量部のコンポーネントA2に対して0.027重量部のコンポーネントC、100重量部のコンポーネントA2に対して18.9重量部のコンポーネントEを第2のパーツとして混合。
【0190】
基材:470dtexのナイロン66布帛
【0191】
コート重量:180gsm
【0192】
硬化条件:160℃、4分間
【0193】
比較例3:
【0194】
調製:100重量部のコンポーネントA2、100重量部のコンポーネントA2に対して7重量部のコンポーネントB、100重量部のコンポーネントA2に対して2.8重量部の接着促進剤D、100重量部のコンポーネントA2に対して0.027重量部のコンポーネントC、100重量部のコンポーネントA2に対して18.9重量部のコンポーネントEを第2のパーツとして混合。
【0195】
基材:470dtexのナイロン66布帛
【0196】
コート重量:200gsm
【0197】
硬化条件:160℃、4分間+200℃、4分間
【0198】
【表1】
【0199】
【表2】
【0200】
【表3】
【0201】
上記の結果からわかるように、全体として、本発明の複合シート(2層)は、従来の単一層構造(1層)よりもはるかに低いTVOC放出性を有する。一方、結合強度は依然として高いレベルに保たれ、良好な安定した付着力を有する。
【0202】
上記の結果によれば、第1の層の量が(前記シリコーン接着剤層と前記補強層の合計コーティング量を基準として)45%より多い場合には、硬化時間を長くし且つ/又は硬化温度を高くすることによってTVOCを減少させることもできそうだが、これは実現するのが困難であり、工業的に実用的ではない。