(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2020546613
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2018033906
(87)【国際公開番号】W WO2020054005
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直也
(72)【発明者】
【氏名】江頭 質
(72)【発明者】
【氏名】押田 善之
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-120898(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014210(WO,A1)
【文献】特開2004-152606(JP,A)
【文献】特開昭62-273731(JP,A)
【文献】特開2015-211093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01J 37/32
C23C 14/00 -16/56
C23F 1/00 - 4/04
H01L 21/203 -21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/32
H01L 21/363 -21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に設けた複数のアンテナのそれぞれに異なる周波数の高周波電力を供給する高周波電源装置であって、
前記高周波電源装置は、
前記複数のアンテナのそれぞれに異なる周波数の高周波電力を供給する複数の高周波電力部と、
前記複数の高周波電力部のそれぞれを制御する複数の高周波制御部と、を含み、
前記複数の高周波制御部の各々は、
高速フーリエ変換部と、フィルタ部と、を含み、
前記高速フーリエ変換部は、反射波として取り込まれた信号を高速フーリエ変換して周波数成分に分解し、
前記フィルタ部は、自身の高周波電力部から出力していない周波数成分の波を除去する、
高周波電源装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数のアンテナのそれぞれに供給される高周波電力の周波数の差分周波数は、前記フィルタ部によって除去可能な範囲である、高周波電源装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記複数のアンテナと前記複数の高周波電力部との間に設けられた複数の整合器を含む、高周波電源装置。
【請求項4】
チャンバー内に設けた第1アンテナおよび第2アンテナに接続された第1高周波電源装置を有し、
前記第1高周波電源装置は、
前記第1アンテナに第1周波数の高周波電力を供給する第1高周波電力部と、
前記第2アンテナに第2周波数の高周波電力を供給する第2高周波電力部と、
前記第1高周波電力部を制御する第1高周波制御部と、
前記第2高周波電力部を制御する第2高周波制御部と、
を含み、
前記第1高周波制御部および前記第2高周波制御部の各々は、
高速フーリエ変換部と、フィルタ部と、を含み、
前記高速フーリエ変換部は、反射波として取り込まれた信号を高速フーリエ変換して周波数成分に分解し、
前記フィルタ部は、自身の高周波電力部から出力していない周波数成分の波を除去する、
高周波電源装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2高周波制御部は、前記第1周波数と所定の整合アルゴリズムから算出した周波数との比較を行い、インピーダンス整合に使用する前記第2周波数を決定する、高周波電
源装置。
【請求項6】
請求項5において、
前
記第1周波数と前記第2周波数の差分周波数は、前記フィルタ部によって除去可能な範囲である、高周波電源装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記差分周波数は、10kMHzである、高周波電源装置。
【請求項8】
請求項5において、さらに、
前記チャンバー内に設けた第3アンテナおよび第4アンテナに接続された第2高周波電源装置を有し、
前記第2高周波電源装置は、
前記第3アンテナに第3周波数の高周波電力を供給する第3高周波電力部と、
前記第4アンテナに第4周波数の高周波電力を供給する第4高周波電力部と、
前記第3高周波電力部を制御する第3高周波制御部と、
前記第4高周波電力部を制御する第4高周波制御部と、
を含み、
前記第3高周波制御部および前記第4高周波制御部の各々は、
高速フーリエ変換部と、フィルタ部と、を含み、
前記高速フーリエ変換部は、反射波として取り込まれた信号を高速フーリエ変換して周波数成分に分解し、
前記フィルタ部は、自身の高周波電力部から出力していない周波数成分の波を除去する、
高周波電源装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第3高周波制御部は、前記第1周波数および前記第2周波数と、所定の整合アルゴリズムから算出した周波数との比較を行い、インピーダンス整合に使用する前記第3周波数を決定し、
前記第4高周波制御部は、前記第3周波数と所定の整合アルゴリズムから算出した周波数との比較を行い、インピーダンス整合に使用する前記第4周波数を決定する、高周波電源装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記第3周波数および前記第4周波数の差分周波数は、前記フィルタ部によって除去可能な範囲である、高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源装置および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを利用する基板処理装置では、チャンバー内に高周波発生用のアンテナを設け、そのアンテナに高周波電源装置から高周波電力を供給し、チャンバー内にプラズマを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-239029号公報
【文献】国際公開第2004/064460号
【文献】特開2004-228354号公報
【文献】特表2005-532668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、基板処理装置のチャンバー内に設けた複数のアンテナに高周波電力を供給するための高周波電源装置に関し検討した。その結果、たとえば、2つのアンテナから高周波電力を印加した場合に、互いの周波数が近いと、アンテナ間もしくはプラズマを介しての相互干渉が発生することが分かった。また、そのため、片側のアンテナに対してインピーダンス整合を行おうと試みても、もう一方からの干渉波が邪魔をして反射波が低減しないように見えてしまい、インピーダンス整合が完了しないことが発生しうることも分かった。
【0005】
本開示の課題は、インピーダンス整合時において、干渉波の影響を無くすことのできる高周波電源装置を提供することにある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
すなわち、チャンバー内に設けた複数のアンテナのそれぞれに異なる周波数の高周波電力を供給する高周波電源装置は、前記複数のアンテナのそれぞれに異なる周波数の高周波電力を供給する複数の高周波電力部と、前記複数の高周波電力部のそれぞれを制御する複数の高周波制御部と、を含む。前記複数の高周波制御部の各々は、高速フーリエ変換部と、フィルタ部と、含む。前記高速フーリエ変換部は、反射波として取り込まれた信号を高速フーリエ変換して周波数成分に分解し、前記フィルタ部は、自身の高周波電力部から出力していない周波数成分の波を除去する。
【発明の効果】
【0009】
上記高周波電源装置によれば、インピーダンス整合時において、干渉波の影響を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】実施例に係る高周波電源装置を有する基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図1B】実施例に係る高周波電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1Bの高周波制御部と制御部との論理的な構成例を示す図である。
【
図3】第2ポートPT2の高周波制御部RFCN2における周波数比較方法を示すフロー図である。
【
図4】高周波制御部と制御部との動作シーケンスを示す図である。
【
図5】応用例1に係る複数の高周波電源装置を有する基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図6】
図5の複数の高周波電源装置の出力周波数の割り当て例を示す図である。
【
図7】マスターとされた高周波電源装置の高周波制御部と制御部との論理的な構成例を示す図である。
【
図8】スレーブとされた高周波電源装置の高周波制御部と制御部との論理的な構成例を示す図である。
【
図9】マスターおよびスレーブの高周波電源装置の動作シーケンスを示す図である。
【
図10A】応用例2に係る複数のアンテナを設けた反応炉の構成例1を示す上面図である。
【
図10B】応用例2に係る複数のアンテナを設けた反応炉の構成例2を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態、実施例、および応用例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例】
【0012】
図1A、
図1Bは、実施例に係る高周波電源装置を有する基板処理装置の概略構成を示す図である。
図1Aは、基板処理装置の概略構成を示す図であり、
図1Bは高周波電源装置の構成を示す図である。
【0013】
図1Aに示すように、基板処理装置1は、プラズマ反応炉としてのチャンバー10と、チャンバー10内に設置された2つのアンテナANT1、ANT2と、高周波電源装置RFGDと、整合回路MT1、MT2と、を具備する。
【0014】
チャンバー10は、たとえば、石英などから構成された円筒形形状の反応炉である。チャンバー10の内部に、1または複数の半導体基板などの基板が載置され、基板に対してプラズマによる成膜やプラズマによりエッチングが行われる。なお、
図1Aでは、チャンバー10として円筒形形状の反応炉が描かれているが、これに限定されるわけではない。チャンバー10は、立方体形状の反応炉であってもよい。基板は、半導体基板に限定されず、表示パネルの製造に利用されるガラス基板であってもよい。
【0015】
アンテナANT1、ANT2は、チャンバー10にプラズマを発生させるために設けられている。アンテナANT1は、整合回路MT1を介して、高周波電源装置RFGDに設けられた高周波電源部RFG1の出力に接続される。アンテナANT2は、整合回路MT2を介して、高周波電源装置RFGDに設けられた高周波電源部RFG2の出力に接続される。この例では、2つのアンテナANT1、ANT2がチャンバー10内に設けられた例を示しているが、アンテナの数は、3つ以上あってもよい。
【0016】
高周波電源装置RFGDは、周波数f1の高周波電力を発生可能な高周波電源部RFG1と、周波数f2の高周波電力を発生可能な高周波電源部RFG2と、を具備する。この例では、高周波電源装置RFGDは、高周波電源部RFG1の出力が供給される第1ポートPT1と、高周波電源部RFG2の出力が供給される第2ポートPT2と、を有する。
【0017】
整合回路MT1、MT2は、たとえば、可変コンデンサ等の素子を含み、アンテナANT1、ANT2などのプラズマソースとのインピーダンス整合を行う。
【0018】
図1Bに示すように、高周波電源装置RFGDは、さらに、高周波電源部RFG1を制御する高周波制御部RFCT1と、高周波電源部RFG2を制御する高周波制御部RFCT2と、高周波制御部RFCT1、RTCT2を制御する制御部CNTと、を具備する。
【0019】
制御部CNTは、高周波電源装置RFGDの全体を制御する制御モジュールである。高周波制御部RFCT1、RTCT2はそれぞれのポート(第1ポートPT1、第2ポートPT2)の高周波出力制御及びインピーダンス整合の制御を行うモジュールである。
【0020】
制御部CNTと高周波制御部RFCT1、RTCT2は、それぞれLVDS(Low Voltage Differentila Signaling)のバスBUSとCAN(Controller Area Network)を用いたバスCANBUS1で接続されており、双方向の情報伝達経路を有する。また、制御部CNTはCANインターフェースCANIFを備えており、CANを用いたバスCANBUS2に接続され、外部装置とCAN通信が可能である。
【0021】
高周波制御部RFCT1は、高速フーリエ変換部FFT1とデジダルフィルタ部DF1と、を有する。高周波制御部RFCT2は、高速フーリエ変換部FFT2とデジダルフィルタ部DF2と、を有する。
【0022】
【0023】
図1Aに示すように、2つのアンテナANT1,ANT2から高周波(RF)をチャンバー10に印加した場合、互いの周波数(f1、f2)が近いとアンテナANT1,ANT2間もしくはプラズマを介しての相互干渉が発生する場合がある。高周波電源部RFG1、RFG2のように、別々の高周波電源部から供給した場合、高周波電源部RFG1がアンテナANT1に印加した電力が相手のアンテナANT2に一部結合し、高周波電源部RFG2から見ると反射波PF1が返ってきたように見えてしまう場合がある。
【0024】
そのため、片側のアンテナ(ANT1、または、ANT2)に対してインピーダンス整合を行おうと試みても、もう一方からの干渉波が邪魔をして反射波が低減しないように見えてしまい、インピーダンス整合が完了しないことが発生しうる。
図1Aにおいては、第1ポートPT1から出力した進行波PF1が第2ポートPT2の反射波に、第2ポートPT2から出力した進行波PF2が第1ポートPT1の反射波に見える様子を示す。第1ポートPT1から出力した高周波の反射波PR1、第2ポートPT2から出力した高周波の反射波PR2は整合回路MT1,MT2によりインピーダンス整合を行うことで低減することは可能である。しかし、第1ポートPT1に回り込んだ干渉波PF2、第2ポートPT2に回り込んだ干渉波PF1に関しては、第1ポートPT1、第2ポートPT2がそれぞれ独自にインピーダンス整合を行うだけでは低減することは出来ない、と言う課題があった。
【0025】
本発明では、以下の構成を採用することにより、上記課題を解決する。
【0026】
すなわち、本発明は、整合動作の際の干渉波の影響をなくすために、周波数整合に用いる高周波電源の周波数制御方法を工夫するものである。
【0027】
具体的には、2つ以上のアンテナ(ANT1、ANT2)に対し、複数の高周波出力を印加した際に、各高周波出力の周波数が干渉を除去できる範囲で動作するように、各高周波出力の周波数を高周波電源装置RFGDによって制御するものである。
【0028】
高周波制御部(RFCT1、RFCT2)の高速フーリエ変換部(FFT1、FFT2)は、反射波として取り込まれた信号をFFT(高速フーリエ変換)することで、周波数成分に分解し、自分の出力していない周波数成分の波については、高周波制御部(RFCT1またはRFCT2)に設けたデジダルフィルタ部(DF1またはDF2)にて除去する。
【0029】
制御部CNTは、デジダルフィルタ部(DF1またはDF2)での減衰により干渉を除去できる範囲より相互の周波数(高周波電源部RFG1の高周波電力の周波数F1、周波数F1RFG2の高周波電力の周波数F2)が近づかないように、周波数整合の動作に一部制限をかけるものである。
【0030】
図2は、
図1Bの高周波制御部と制御部との論理的な構成例を示す図である。
【0031】
高周波制御部RFCN1は、整合演算部MTC1と、周波数可動部FCH1と、通信部COM1と、を具備する。高周波制御部RFCN2は、整合演算部MTC2と、周波数可動部FCH2と、通信部COM2と、を具備する。制御部CNTは、通信部CMM1と、通信部CMM2と、を有する。
【0032】
図2を用いて、高周波制御部RFCN1と高周波制御部RFCN2の周波数設定方法を説明する。高周波制御部RFCN1をマスターとし、高周波制御部RFCN2をスレーブとする。2つのマスター/スレーブ判別は高周波制御部RFCN1、RFCN2に実装されているDIPスイッチで判断できる。マスターである高周波制御部RFCN1は、特に、干渉回避のための動作は行わず、スレーブである高周波制御部RFCN2が干渉回避の動作を行う。
【0033】
まず、整合演算部MTC1は、所定の整合アルゴリズムから第1ポートPT1のインピーダンス整合に使用する周波数(f1)を決定する。
【0034】
整合演算部MTC1は、周波数可動部FCH1に周波数情報IFPT1を渡し、周波数可動部FCH1は、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1から所望の周波数(f1)の高周波電力を出力させる。
【0035】
整合演算部MTC1は、通信部COM1に周波数情報IFPT1を渡し、通信部COM1は、バスBUSを用いて、制御部CNTの通信部CMM1に周波数情報IFPT1を出力する。
【0036】
通信部CMM1は、通信部CMM2へ、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1を出力する。通信部CMM2は、バスBUSを用いて、高周波制御部RFCN2の通信部COM2へ、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1を出力する。通信部COM2は、整合演算部MTC2へ、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1を出力する。
【0037】
高周波制御部RFCN2の整合演算部MTC2において、通信部COM2から入力された第1ポートPT1の周波数情報IFPT1、及び、所定の整合アルゴリズムから算出した周波数との比較を行い、第2ポートPT2側でインピーダンス整合に使用する周波数(f2)を決定する。整合演算部MTC2は、周波数可動部FCH2へ第2ポートPT2の周波数情報IFPT2を出力する。これにより、周波数可動部FCH2は、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2から所望の周波数(f2)の高周波電力を出力させる。
【0038】
図3は、第2ポートPT2の高周波制御部RFCN2における周波数比較方法を示すフロー図である。
図3において、f1は第1ポートPT1の出力周波数であり、f2は第2ポートPT2の出力周波数である。高周波制御部RFCN2は、整合演算部MTC2で導出したインピーダンス整合に必要な周波数aMHzを決定するが、第1ポートPT1側の周波数f1との差分周波数が10kHz以内だった場合に、f1との差分周波数が10kHzとなるような値を最終的に採用する。なお、10kHzは第1ポートPT1、第2ポートPT2間の干渉をデジタルフィルタ部DF1、DF2で抑えることのできる周波数帯域の最低値である。10kHzの差分周波数は、デジタルフィルタ部DF1、DF2のサンプリング方法をアンダーサンプルした場合の値である。デジタルフィルタ部DF1、DF2のサンプリング方法をオーバーサンプルに変更すれば、10kHzの差分周波数は1kHz等、より近い周波数まで調整することが可能である。
【0039】
【0040】
ステップS1:整合動作が開始される。
【0041】
ステップS2:整合が完了しているか否かが判断される。整合が完了していない場合(No)、ステップS3へ移行する。整合が完了している場合(Yes)、ステップS4へ移行し、整合動作が終了する。
【0042】
ステップS3:所定の整合アルゴリズムから算出した周波数を算出する。ここでは、f2=aMHzであったとする。
【0043】
ステップS5:f1とf2とが28.12MHzと一致しているか否かが確認される(f1=f2=28.12MHz?)。ここで、28.12MHzとは、高周波電源装置RFGDの出力可能な最大の周波数である。一致していない場合、ステップS6へ移行する。一致している場合、ステップS7へ移行する。ステップS7では、f2の値(28.12MHz)から10kHzが減算された値(28.12MHz-10kHz=28.11MHz)が整合されたf2の周波数の値とされ、ステップS14へ移行し、f2の周波数が設定される。この場合、f1は28.12MHzである。
【0044】
ステップS6:f1とf2とが26.12MHzと一致しているか否かが確認される(f1=f2=26.12MHz?)。ここで、26.12MHzとは、高周波電源装置RFGDの出力可能な最小の周波数である。一致していない場合、ステップS8へ移行する。一致している場合、ステップS9へ移行する。ステップS9では、f2の値(26.12MHz)に10kHzが加算された値(26.12MHz+10kHz=26.13MHz)が整合されたf2の周波数の値とされ、ステップS14へ移行し、f2の周波数が設定される。この場合、f1は26.12MHzである。
【0045】
ステップS8:f1とf2との差分周波数が、0<f1-f2<=10kHzの範囲であるか否かが判断される。Yesの場合、ステップS10へ移行する。Noの場合、ステップS11へ移行する。
【0046】
ステップ10:f1の値から10kHzが減算された値が整合されたf2の周波数の値(f2=f1-10kHz)とされ、ステップS14へ移行し、f2の周波数が設定される。
【0047】
ステップS11:f1とf2との差分周波数が、-10kHz<=f1-f2<=0の範囲であるか否かが判断される。Yesの場合、ステップS12へ移行する。Noの場合、ステップS13へ移行する。
【0048】
ステップS12:f1の値に10kHzが加算された値が整合されたf2の周波数の値(f2=f1+10kHz)とされ、ステップS14へ移行し、f2の周波数が設定される。
【0049】
ステップS13:f2の周波数の値は、ステップ3の所定の整合アルゴリズムから算出した周波数(f2=aMhz)とされ、ステップS14へ移行し、f2の周波数が設定される。
【0050】
ステップS14の後、ステップS2へ移行し、再度、整合が完了した否かが判断されるようになっている。
【0051】
図4は、高周波制御部と制御部との動作シーケンスを示す図である。なお、
図4において、f11、f12は第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数を示しており、f21、f22は第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数を示している。また、f11、f21は1回目の設定値を示し、f12、f22は2回目の設定値を示している。
【0052】
まず、高周波制御部RFCN1は、所定の整合アルゴリズムを用いた1回目の整合演算を行い、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数f11を設定する。設定された周波数f11の情報は、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1として、制御部CNTを介して、高周波制御部RFCN2へ送信される。
【0053】
高周波制御部RFCN2は、受信した周波数f11の情報(IFPT1)を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた1回目の整合演算および
図3の周波数比較を行い、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数f21を設定する。
【0054】
高周波制御部RFCN1は、たとえば、1回目の整合演算から4ms後、所定の整合アルゴリズムを用いた2回目の整合演算を行い、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数f12を設定する。設定された周波数f12の情報は、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1として、制御部CNTを介して、高周波制御部RFCN2へ送信される。
【0055】
高周波制御部RFCN2は、たとえば、1回目の整合演算から4ms後、受信した周波数f12の情報(IFPT1)を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた2回目の整合演算および
図3の周波数比較を行い、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数f22を設定する。
【0056】
このように、たとえば、4msごとに繰り返し、f11(f12)とf12(f22)の周波数設定が行われことで、高周波電源部RFG1,RFG2の出力電力の制御が行われるとともに、周波数干渉を回避できる。
【0057】
また、複数の出力ポート(第1ポートと第2ポート)間の周波数干渉を回避しながらインピーダンス整合を実施することが出来る。これにより、複数アンテナを反応炉10内に設けた基板処理装置において、正しい整合動作が実施できるため、安定した良質なプラズマを反応炉10内に生成することが可能となる。したがって、安定したプラズマを利用した処理を基板に対して行うことが可能である。
【0058】
(応用例1)
図5は、応用例1に係る複数の高周波電源装置を有する基板処理装置の概略構成を示す図である。応用例では、反応炉であるチャンバー10内に複数のアンテナANT1~ANTnが設けられ、また、複数の高周波電源装置RFGD0~RFGDnが設けられる。
【0059】
複数の高周波電源装置RFGD0~RFGDnのおのおのは、
図1Bに示す高周波電源装置RFGDと、同様な構成とされている。高周波電源装置RFGD0には、アンテナANT1、ANT2が接続され、高周波電源装置RFGD1には、アンテナANT3、ANT4が接続される。同様に、高周波電源装置RFGD2には、アンテナANT5、ANT5が接続され、高周波電源装置RFGDnには、アンテナANT2n+1、ANT2n+2が接続される。
【0060】
複数の高周波電源装置RFGD0~RFGDnの各々は、CANバスCANBUS2により、相互に接続されている。この例では、高周波電源装置RFGD0がマスター(MS)であり、他の高周波電源装置RFGD1~RFGDnはスレーブ(SLV)とされている。マスター(MS)/スレーブ(SLV)は、高周波電源装置RFGD0~RFGDnの各々の制御部CNTに設けたDIPスイッチで設定可能であり、また、判別することができる。
【0061】
マスター(MS)である高周波電源装置RFGD0は、高周波電源装置RFGD0内の高周波電源部RFG1、RFG2が発生する高周波電力の出力周波数f1、f2の情報を、CANバスCANBUS2によるブロードキャスト通信で、スレーブ(SLV)である高周波電源装置RFGD1~RFGDnへ送信可能に構成されている。
【0062】
図6は、
図5の複数の高周波電源装置の出力周波数の割り当て例を示す図である。高周波電源装置RFGD0~RFGDnの各々は、たとえば、26.12MHzと28.12MHzの間の出力周波数の高周波電力を発生可能である。この例では、高周波電源装置RFGD0は、出力周波数f1、f2の高周波電力を発生可能である。周波数f1と周波数f2との差分周波数は、実施例1と同様に、デジダルフィルタ部(DF1またはDF2)での減衰により干渉を除去できる範囲の差分周波数にされている。差分周波数は、たとえば、10kHzである。高周波電源装置RFGD1は、出力周波数f3、f4の高周波電力を発生可能である。周波数f3と周波数f4との差分周波数は、同様な思想により、たとえば、10kHzである。また、周波数f2と周波数f3との差分周波数は、たとえば、10kHzである。また、高周波電源装置RFGD2は、出力周波数f5、f6の高周波電力を発生可能である。周波数f5と周波数f6との差分周波数は、同様な思想により、たとえば、10kHzである。また、周波数f4と周波数f5との差分周波数は、たとえば、10kHzである。また、高周波電源装置RFGDnは、出力周波数f2n+1、f2n+2の高周波電力を発生可能である。周波数f2n+1と周波数f2n+2との差分周波数は、同様な思想により、たとえば、10kHzである。
【0063】
この様に高周波電力の出力周波数を設定することにより、26.12MHzと28.12MHzの間の周波数範囲を有効に活用できるとともに、高周波電源装置RFGD0~RFGDnの各々において、干渉を回避できる。
【0064】
図6に示されるような周波数の設定は、次のように、DIPスイッチの値によって自動的に設定できるようにすることができる。つまり、マスター及びスレーブの高周波電源装置RFGD0~RFGDnは、自身のDIPスイッチの値(たとえば、0~15)により、自身のID番号nをユニークに決定しておくことができる。たとえば、マスター(MS)のID番号は0とし、スレーブ(SLV)のID番号は、1~15とする。
【0065】
スレーブ(SLV)は、マスター(MS)から受信した周波数の値から10kHz×nだけ離れた周波数に設定する。ここで、nは各スレーブの自身のID番号であり、n≧1である。なお、DIPスイッチによるID番号の設定の代わりとして、高周波電源装置RFGD0~RFGDnに設定されたCANIDを利用することも可能である。
【0066】
図7は、マスターとされた高周波電源装置の高周波制御部と制御部との論理的な構成例を示す図である。
図8は、スレーブとされた高周波電源装置の高周波制御部と制御部との論理的な構成例を示す図である。
【0067】
図7が
図2と異なる点は、
図7において、高周波電源装置RFGD0の高周波制御部RFCN2において、整合演算部MTC2からの第2ポートPT2の周波数情報IFPT2が、通信部COM2を介して、制御部CNTの通信部CMM2へ出力される点と、高周波電源装置RFGD0の制御部CNTに、外部通信部CMM3が追加され、外部通信部CMM3が通信部CMM1からの周波数情報IFPT1と通信部CMM2からの周波数情報IFPT2を受信して、マスターの周波数情報IFMを送信する点である。ここで、周波数情報IFMは、周波数情報IFPT1と周波数情報IFPT2とを含む情報である。外部通信部CMM3は、CANバスCANBUS2を介して、周波数情報IFMをスレーブとされた高周波電源装置RFGD1へ出力する。
【0068】
図7を用いて、高周波電源装置RFGD0の高周波制御部RFCN1と高周波制御部RFCN2の周波数設定方法を説明する。
【0069】
まず、整合演算部MTC1は、所定の整合アルゴリズムから第1ポートPT1のインピーダンス整合に使用する周波数(f1)を決定する。
【0070】
整合演算部MTC1は、周波数可動部FCH1に周波数情報IFPT1を渡し、周波数可動部FCH1は、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1から所望の周波数(f1)の高周波電力を出力させる。
【0071】
整合演算部MTC1は、通信部COM1に周波数情報IFPT1を渡し、通信部COM1は、バスBUSを用いて、制御部CNTの通信部CMM1に周波数情報IFPT1を出力する。
【0072】
通信部CMM1は、通信部CMM2と外部通信部CMM3へ、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1を出力する。
【0073】
通信部CMM2は、バスBUSを用いて、高周波制御部RFCN2の通信部COM2へ、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1を出力する。通信部COM2は、整合演算部MTC2へ、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1を出力する。
【0074】
高周波制御部RFCN2の整合演算部MTC2において、通信部COM2から入力された第1ポートPT1の周波数情報IFPT1、及び、所定の整合アルゴリズムから算出した周波数との比較を行い、第2ポートPT2側でインピーダンス整合に使用する周波数(f2)を決定する。整合演算部MTC2は、周波数可動部FCH2へ第2ポートPT2の周波数情報IFPT2を出力する。これにより、周波数可動部FCH2は、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2から所望の周波数(f2)の高周波電力を出力させる。
【0075】
整合演算部MTC2は、通信部COM2へ、第2ポートPT2の周波数情報IFPT2を出力する。通信部COM2は、通信部CMM2へ、第2ポートPT2の周波数情報IFPT2を出力する。通信部CMM2は、外部通信部CMM3へ、第2ポートPT2の周波数情報IFPT2を出力する。外部通信部CMM3は、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1と第2ポートPT2の周波数情報IFPT2とをマスター側の周波数情報IFMとして、CANバスCANBUS2を介して、スレーブとされた高周波電源装置RFGD1へ出力する。
【0076】
図8に示すように、スレーブとされた高周波電源装置RFGD1の高周波制御部RFCN1は、整合演算部MTC1と、周波数可動部FCH1と、通信部COM1と、を具備する。高周波電源装置RFGD1の高周波制御部RFCN2は、整合演算部MTC2と、周波数可動部FCH2と、通信部COM2と、を具備する。高周波電源装置RFGD1の制御部CNTは、通信部CMM1と、通信部CMM2と、外部通信部CMM3を有する。
【0077】
図8を用いて、高周波電源装置RFGD1の高周波制御部RFCN1と高周波制御部RFCN2の周波数設定方法を説明する。
【0078】
外部通信部CMM3は、CANバスCANBUS2を介して、マスター側の周波数情報IFMを受信し、受信した周波数情報IFMを通信部CMM1へ出力する。通信部CMM1は、通信部COM1へ、マスター側の周波数情報IFMを出力する。通信部COM1は、整合演算部MTC1へマスター側の周波数情報IFMを出力する。
【0079】
整合演算部MTC1において、通信部COM1から入力されたマスター側周波数情報IMF(IFPT1,IFPT2)、及び所定の整合アルゴリズムから算出した周波数との比較を行い、スレーブ側の第1ポートPT1側でインピーダンス整合に使用する周波数(f3)を決定する。
【0080】
整合演算部MTC1で決定した周波数(f3)を周波数情報IFPT1Sとして周波数可動部FCH1に渡し、スレーブ側の第1ポートPT1の高周波電源部RFG1から周波数(f3)の高周波電力を出力させる。
【0081】
整合演算部MTC1は、通信部COM1へ、決定した第1ポートPT1の周波数情報IFPT1Sを出力する。通信部COM1は、通信部CMM1へ入力された第1ポートPT1の周波数情報IFPT1Sを出力する。通信部CMM1は、通信部CMM2へ第1ポートPT1の周波数情報IFPT1Sを出力する。通信部CMM2は、通信部COM2へ第1ポートPT1の周波数情報IFPT1Sを出力する。通信部COM2は、整合演算部MTC2へ第1ポートPT1の周波数情報IFPT1Sを出力する。
【0082】
整合演算部MTC2において、通信部COM2から入力された第1ポートPT1の周波数情報IFPT1S、及び所定の整合アルゴリズムから算出した周波数との比較を行い、第2ポートPT2側でインピーダンス整合に使用する周波数(f4)を決定する。
【0083】
整合演算部MTC2で決定した周波数(f4)を周波数情報IFPT2Sとして周波数可動部FCH2に渡し、スレーブ側の第2ポートPT2の高周波電源部RFG2から周波数(f4)の高周波電力を出力させる。
【0084】
図9は、マスターおよびスレーブの高周波電源装置の動作シーケンスを示す図である。なお、
図9において、f11、f12はマスターとされた高周波電源装置RFGD0(MS)の第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数を示しており、f21、f22はマスターとされた高周波電源装置RFGD0(MS)の第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数を示している。また、f11、f21は1回目の設定値を示し、f12、f22は2回目の設定値を示している。また、f11S、f12Sはスレーブとされた高周波電源装置RFGDn(SLV)の第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数を示しており、f21S、f22Sはスレーブとされた高周波電源装置RFGDn(SLV)の第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数を示している。また、f11S、f21Sは1回目の設定値を示し、f12S、f22Sは2回目の設定値を示している。
【0085】
なお、高周波電源装置RFGDn(SLV)がRFGD1(SLV)とされた場合、以下に記載のf11Sおよびf12Sは、
図8のf3に対応し、以下に記載のf21Sおよびf22Sは、
図8のf4に対応する。
【0086】
最初に、高周波電源装置RFGD0(MS)の動作シーケンスについて説明する。
【0087】
高周波電源装置RFGD0(MS)において、高周波制御部RFCN1は、所定の整合アルゴリズムを用いた1回目の整合演算を行い、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数f11を設定する。設定された周波数f11の情報は、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1として、制御部CNTを介して、高周波制御部RFCN2へ送信される。
【0088】
高周波制御部RFCN2は、受信した周波数f11の情報(IFPT1)を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた1回目の整合演算および
図3の周波数比較を行い、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数f21を設定する。
【0089】
高周波制御部RFCN2は、周波数f21の情報を、第2ポートPT2の周波数情報IFPT2として、制御部CNTへ送信する。
【0090】
制御部CNTは、周波数情報IFPT1と周波数情報IFPT2とを含む1回目の周波数情報IFM1を、高周波電源装置RFGDn(SLV)の制御部CNTへ送信する。
【0091】
高周波制御部RFCN1は、たとえば、1回目の整合演算から4ms後、所定の整合アルゴリズムを用いた2回目の整合演算を行い、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数f12を設定する。設定された周波数f12の情報は、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1として、制御部CNTを介して、高周波制御部RFCN2へ送信される。
【0092】
高周波制御部RFCN2は、たとえば、1回目の整合演算および周波数比較から4ms後、受信した周波数f12の情報(IFPT1)を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた2回目の整合演算および
図3の周波数比較を行い、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数f22を設定する。
【0093】
高周波制御部RFCN2は、周波数f22の情報を、第2ポートPT2の周波数情報IFPT2として、制御部CNTへ送信する。
【0094】
制御部CNTは、周波数情報IFPT1と周波数情報IFPT2とを含む2回目の周波数情報IFM2を、高周波電源装置RFGDn(SLV)の制御部CNTへ送信する。
【0095】
次に、高周波電源装置RFGDn(SLV)の動作シーケンスについて説明する。
【0096】
1回目の周波数情報IFM1を受信した制御部CNTは、高周波制御部RFCN1へ、周波数情報IFM1を送信する。
【0097】
高周波制御部RFCN1は、受信した周波数情報IFM1を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた1回目の整合演算および
図3の周波数比較を行い、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数f11Sを設定する。設定された周波数f11Sの情報は、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1Sとして、制御部CNTを介して、高周波制御部RFCN2へ送信される。
【0098】
高周波制御部RFCN2は、受信した周波数f11Sの情報(IFPT1S)を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた1回目の整合演算および
図3の周波数比較を行い、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数f21Sを設定する。
【0099】
2回目の周波数情報IFM2を受信した制御部CNTは、高周波制御部RFCN1へ、周波数情報IFM1を送信する。
【0100】
高周波制御部RFCN1は、1回目の整合演算および周波数比較から4ms後、受信した周波数情報IFM1を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた2回目の整合演算および周波数比較を行い、第1ポートPT1の高周波電源部RFG1の周波数f12Sを設定する。設定された周波数f12Sの情報は、第1ポートPT1の周波数情報IFPT1Sとして、制御部CNTを介して、高周波制御部RFCN2へ送信される。
【0101】
高周波制御部RFCN2は、1回目の整合演算および周波数比較から4ms後、受信した周波数f12Sの情報(IFPT1S)を参照して、所定の整合アルゴリズムを用いた2回目の整合演算および
図3の周波数比較を行い、第2ポートPT2の高周波電源部RFG2の周波数f22Sを設定する。
【0102】
これにより、高周波電源装置RFGD0(MS)および高周波電源装置RFGDn(SLV)において、それぞれのポートから発生される高周波電力の出力周波数は、周波数干渉を回避しながら、インピーダンス整合を行うことができるように、設定することができる。
【0103】
したがって、正しい整合動作が実施できるため、安定した良質なプラズマを、基板処理装置の反応炉内に生成できる。これにより、安定したプラズマを利用した処理を基板に対して行うことが可能である。
【0104】
また、本発明の高周波電源装置を複数台接続する場合においては、搭載する制御ソフトウェアはマスターの高周波電源装置とスレーブの高周波電源装置とで、同じソフトウェアで実施することができる。したがって、マスターの高周波電源装置のソフトウェアとスレーブの高周波電源装置のソフトウェアとを別々に開発する必要は無いため、経済的であり、ソフトウェアの開発コストを低減することが可能である。
【0105】
(応用例2)
図10A、
図10Bは、応用例2に係る複数のアンテナを設けた反応炉の上面図である。
図10A、
図10Bは、基板処理装置1のチャンバー(反応炉)10の内部に、例示的に、16本のアンテナを配置した構成である。16本のアンテナは、チャンバー(反応炉)10に配置された基板の上側に位置するように、チャンバー(反応炉)10の天井側の壁部分に設けられている。基板は、たとえば、表示パネルの製造に利用されるガラス基板である。
【0106】
図10Aは、16本のアンテナA~Pを行列状に縦横等間隔にチャンバー10の内部(天井側の壁部分)に配置した構成例1を示している。アンテナA~Pのそれぞれは、高周波電源部RFG1~RFG16のそれぞれから高周波電力が整合器を介して供給されるようになっている。たとえば、高周波電源部RFG1は、アンテナAに接続され、周波数f1の高周波電力が整合器を介して供給される。高周波電源部RFG2は、アンテナBに接続され、周波数f2の高周波電力が整合器を介して供給される。高周波電源部RFG1~RFG16の出力周波数f1~f16は、
図5および
図6で説明されたように、周波数干渉が回避可能に設定されている。
【0107】
つまり、
図10Aでは、アンテナの数と同数の異なる出力周波数の高周波電源部が設けられる。この場合、高周波電源部の台数だけ周波数が増えるため、システム側の管理する内容が増えてしまう虞がある。また、各高周波電源部が同期できる必要があり、それぞれの周波数情報をやりとりしなければならない。また、高周波電源部の数が増えるため、それだけ大型化、高額化してしまう虞もある。
【0108】
図10Bは、16本のアンテナを行列状に縦横等間隔にチャンバー10の内部(天井側の壁部分)に配置した構成例2を示す図である。
図10Aでは、各々のアンテナに異なる周波数の高周波電力を供給したが、
図10Bでは、16本のアンテナを、たとえば、4つのグループA、B、C、Dに分類する。第1グループのアンテナAは、周波数f1の高周波電力を出力する高周波電源部RFG1に整合器を介して接続する。第2グループのアンテナBは、周波数f2の高周波電力を出力する高周波電源部RFG2に整合器を介して接続する。第3グループのアンテナCは、周波数f3の高周波電力を出力する高周波電源部RFG3に整合器を介して接続する。第4グループのアンテナDは、周波数f4の高周波電力を出力する高周波電源部RFG4に整合器を介して接続する。高周波電源部RFG1~RFG4の出力周波数f1~f4は、
図5および
図6で説明されたように、周波数干渉が回避可能に設定されている。
【0109】
図10Bに示すように、1つのグループに分離されたアンテナの隣には、他のグループに分類されたアンテナが配置される。たとえば、第1グループのアンテナAの隣には、第2グループ、第3グループおよび第4グループに分類されたアンテナB、C、Dが配置される。また、グループの数(この例では、4グループ)は、複数のアンテナの数(この例では、16本)より少ない。また、グループの数(この例では、4グループ)は、高周波電力部の数(この例では、高周波電源部RFG1~RFG4の4つ)と同じである。
【0110】
チャンバー10内で起きる干渉は、物理的距離が離れれば、基本的に干渉の程度が改善される。そのため、複数のアンテナが一定の距離だけ離れて配置される場合、例えば、隣り合うアンテナとの干渉のみが大きく、それよりも距離が広がれば問題ない場合、隣り合わないアンテナに対して同じ周波数を使用することができる。つまり、
図10Bに示すように、物理的距離が離れたアンテナには同じ周波数を使用する。これにより、
図10Aに示すように、16通りの周波数f1~f16と16個の高周波電源部RFG1~RFG16とが必要だったのに対して、
図10Bに示すように、4通りの周波数f1~f4と、4個の高周波電源部RFG1~RFG4とに減らすことができる。
【0111】
これにより、周波数の種類を減らして、高周波電源部の必要台数を低減し、周波数管理を簡単にできる。この例の場合、アンテナ16個に対し、4つの出力周波数f1~f4波で対応できるため、各高周波電源部RFG1~RFG4の出力を4倍高いものとして、4分配することで対処できる。
【0112】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0113】
なお、本発明の逆の考え方として周波数整合を実施した際に各アンテナの特性インピーダンスを意図的にずらしておいて、最終的に整合した際に周波数が近接しないようにアンテナを調整することでも問題点を解決できる。
【0114】
また、周波数整合を用いない場合は、高周波電源の周波数を干渉しない程度にずらして運用することで、干渉を回避することも可能となる。この場合、反射波の検出においてFFT(FFT1、FFT2)及びデジタルフィルタ部(DF1、DF2)の様な干渉波除去の仕組みを持っていることが前提となる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上述べたように、本発明によれば、インピーダンス整合時において、干渉波の影響を無くすことのできる高周波電源装置を提供できる。
【符号の説明】
【0116】
1:基板処理装置
10:チャンバー(反応炉)
MT1,MT2:整合器
ANT1,ANT2:アンテナ
RFGD:高周波電源装置
RFG1、RFG2:高周波電源部
RFCN1,RFCN2:高周波制御部
CNT:制御部
FFT1、FFT2:高速フーリエ変換部
DF1、DF2:デジタルフィルタ部
MTC1、MTC2:整合演算部
FCH1、FCH2:周波数可動部
COM1、COM2、CMM1、CMM2:通信部
CMM3:外部通信部