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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】自動車用流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/06 20060101AFI20220415BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20220415BHJP
   F16C 19/04 20060101ALI20220415BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20220415BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20220415BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
F16C27/06 B
F16C35/077
F16C19/04
F16C33/58
F04D29/056 A
F04B39/00 103J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020566965
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2018064478
(87)【国際公開番号】W WO2019228644
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】515069336
【氏名又は名称】ピアーブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Alfred-Pierburg-Strasse 1, 41460 Neuss, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オオツカ, ノリユキ
(72)【発明者】
【氏名】ロンバッハ, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】リンバッハ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ミュンヒ, トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ディパス, アントニオ
【審査官】筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05264748(US,A)
【文献】実開昭60-154622(JP,U)
【文献】特開2010-048215(JP,A)
【文献】米国特許第04927326(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 27/06
F16C 35/077
F16C 19/04
F16C 33/58
F04D 29/056
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段(18)と、
ロータシャフト(16)によって前記駆動手段(18)と相対回動不能に結合されたポンプホイール(12)と、
前記ロータシャフト(16)用のシャフト軸受けシステム(22;22’)と、を備え、該シャフト軸受けシステム(22;22’)は、
半径方向内方に方向付けられた軸線方向支持フランジ(32)を有する固定の軸受け容器(24;24’)と、
前記ロータシャフト(16)の半径方向外側に共に固定されたフローティング式の2つの玉軸受け(28,30;28’,30’)であって、前記軸受け容器(24;24’)内で軸線方向に移動可能に設けられた2つの玉軸受け(28,30;28’,30’)と、を含み、
第1の玉軸受け(28;28’)は、前記支持フランジ(32)の第1の軸線方向側に位置付けられ、第2の玉軸受け(30;30’)は、前記支持フランジ(32)に対して反対の第2の側に位置付けられており、
前記第1の玉軸受け(28;28’)の外側レース(28c;28c’)は、前記支持フランジ(32)に軸線方向で接触しており、前記第2の玉軸受け(30;30’)の外側レース(30c;30c’)は、予負荷ばね(36)によって、軸線方向において前記支持フランジ(32)から離れる方向に予負荷されており、
前記玉軸受け(28,30;28’,30’)はそれぞれ、前記玉軸受け(28,30;28’,30’)の前記外側レース(28c,30c;28c’,30c’)を半径方向で取り囲む少なくとも一つの弾性支持リング(34)を備え、
前記玉軸受け(28,30;28’,30’)は両方とも、前記支持リング(34)のみによって、前記軸受け容器(24;24’)内で半径方向に支持されており、
前記シャフト軸受けシステム(22;22’)は、軸線方向において、前記駆動手段(18)と前記ポンプホイール(12)との間に配置されている、自動車用流体ポンプ(10;10’)。
【請求項2】
前記両玉軸受け(28,30)の前記外側レース(28c、30c)はそれぞれ、前記支持リング(34)を収容する少なくとも一つの位置決め溝(28d、30d)を備える、請求項1記載の自動車用流体ポンプ(10;10’)。
【請求項3】
前記軸受け容器(24’)は、少なくとも二つの位置決め溝(38)を備え、
少なくとも一つの位置決め溝(38)が、前記玉軸受け(28’,30’)の各々の前記軸線方向範囲(A1,A2)内に配置されており、
前記位置決め溝(38)は前記支持リング(34)を収容する、請求項1又は2記載の自動車用流体ポンプ(10;10’)。
【請求項4】
玉軸受け(28,30;28’,30’;28’’,30’’)はそれぞれ、軸線方向において離間した正確に2つの支持リング(34)を備える、請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車用流体ポンプ(10;10’)。
【請求項5】
前記駆動手段(18)は電動機のモータ回転子である、請求項1からまでのいずれか1項記載の自動車用流体ポンプ(10;10’)。
【請求項6】
前記流体ポンプ(10;10’;10’’)は、ガスポンプ、特に、自動車燃料システムから燃料蒸気を吸い出すパージポンプである、請求項1からまでのいずれか1項記載の自動車用流体ポンプ(10;10’)。
【請求項7】
駆動手段(18)と、
半径方向外方に方向付けられた軸線方向支持フランジ(32’’)を有するロータシャフト(16’’)によって前記駆動手段(18)と相対回動不能に結合されたポンプホイール(12)と、
前記ロータシャフト(16’’)用のシャフト軸受けシステム(22’’)であって、固定の軸受け容器(24’’)と、この軸受け容器(24’’)の半径方向内側に共に固定されて、前記ロータシャフト(16’’)に対して軸線方向に移動可能に設けられたフローティング式の2つの玉軸受け(28’’,30’’)と、を含んだシャフト軸受けシステム(22’’)と、
を備え、
第1の玉軸受け(28’’)は、前記支持フランジ(32’’)の第1の軸線方向側に位置付けられ、第2の玉軸受け(30’’)は、前記支持フランジ(32’’)に対して反対の第2の側に位置付けられており、
前記第1の玉軸受け(28’’)の内側レース(28a’’)は、前記支持フランジ(32’’)に軸線方向で接触しており、前記第2の玉軸受け(30’’)の内側レース(30a’’)は、予負荷ばね(36’’)によって、軸線方向において前記支持フランジ(32’’)から離れる方向に予負荷されており、
前記玉軸受け(28’’,30’’)はそれぞれ、前記玉軸受け(28’’,30’’)の前記内側レース(28a’’,30a’’)によって半径方向に取り囲まれる少なくとも一つの弾性支持リング(34)を備え、
前記玉軸受け(28’’,30’’)は両方とも、前記支持リング(34)のみによって、前記ロータシャフト(16’’)において半径方向に支持されており、
前記シャフト軸受けシステム(22’’)は、軸線方向において、前記駆動手段(18)と前記ポンプホイール(12)との間に配置されている、自動車用流体ポンプ(10’’)。
【請求項8】
前記両玉軸受け(28’’,30’’)の前記内側レース(28a’’,30a’’)はそれぞれ、前記支持リング(34)を収容する少なくとも一つの位置決め溝(28d’’,30d’’)を備える、請求項7記載の自動車用流体ポンプ(10’’)。
【請求項9】
前記ロータシャフトは、少なくとも二つの位置決め溝を備え、
少なくとも一つの位置決め溝が、前記玉軸受けの各々の前記軸線方向範囲内に配置されており、
前記位置決め溝は前記支持リングを収容する、請求項7又は8記載の自動車用流体ポンプ。
【請求項10】
玉軸受け(28’’,30’’)はそれぞれ、軸線方向において離間した正確に2つの支持リング(34)を備える、請求項7から9までのいずれか1項記載の自動車用流体ポンプ(10’’)。
【請求項11】
前記駆動手段(18)は電動機のモータ回転子である、請求項7から10までのいずれか1項記載の自動車用流体ポンプ(10’’)。
【請求項12】
前記流体ポンプ(10’’)は、ガスポンプ、特に、自動車燃料システムから燃料蒸気を吸い出すパージポンプである、請求項7から11までのいずれか1項記載の自動車用流体ポンプ(10’’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用流体ポンプに関し、好ましくは自動車燃料タンクから燃料蒸気を吸い出すための自動車用電気駆動式パージポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
パージポンプは、容積型ポンプではなく、比較的高流速であるが比較的低圧力の連続流体を発生する高速回転ポンプホイールを備えている。ポンプホイールは駆動手段によって駆動され、当該駆動手段は、ロータシャフトによってポンプホイールと相対回動不能に連結されている。ポンプホイール及び駆動手段を支持するロータシャフトは、シャフト軸受けシステムによって回転可能に支持されている。
【0003】
一般に、シャフト軸受けシステムは軸方向に離間した2つの玉軸受けを備え、当該2つの玉軸受けは、ロータシャフトの安定した支持を提供するとともに、ロータシャフトの高速回転を可能にする。しかしながら、ロータシャフトが高速回転するため玉軸受け内に広範囲に及ぶ応力が生じ、その結果、軸受けシステムにおける不均衡な負荷又は伸張によって、軸受けシステム内に重大な損傷が生じる可能性がある。これにより、流体ポンプのポンプ効率が低下することがあり、又は流体ポンプの損傷や故障を引き起こすことさえある。不均衡な軸受け荷重は、例えば、軸受けシステムに伝達される外部振動によって引き起こされ得る。典型的には、軸受け容器、ロータシャフト、および玉軸受けは、異なる熱膨張係数を有する異なる材料から作られ、ポンプは自動車用途のために-40℃から150℃の雰囲気温度に耐えなければならないので、温度に起因した、軸受けに対するロータシャフトおよび/または軸受け容器の膨張が、軸受けシステムにおける不均衡な軸受け荷重および/または不都合な伸張を引き起こすこともある。温度に起因する膨張は、ロータシャフトの高速回転中に、玉軸受け内に著しく高い熱が発生することによってさらに強調される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、長期のポンプ寿命にわたって高いポンプ性能を提供する、自動車用流体ポンプを提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する自動車用流体ポンプで達成される。
【0006】
本発明に係る流体ポンプは、駆動手段と、ロータシャフトによって駆動手段と相対回動不能に結合されたポンプホイールと、を備える。駆動手段及びポンプホイールは両方ともロータシャフトに相対回動不能に取り付けられており、これによりポンプホイールが駆動手段によって駆動される。典型的には、駆動手段及びポンプホイールは、ロータシャフトの軸線方向両端部に配置されている。駆動手段は例えば、ポンプが機械的に駆動される場合にはタービンホイール、プーリホイール又は歯車ホイールとすることができ、又はポンプが電気的に駆動される場合には電動機のモータ回転子とすることができる。
【0007】
また、本発明による流体ポンプは、ロータシャフト用のシャフト軸受けシステムを備え、このシャフト軸受けシステムは、固定の軸受け容器と、フローティング式の2つの玉軸受けとを備えている。軸受容器は、例えば、固定のポンプハウジングと一体的に設けることができ、又はポンプハウジング内に固定して配置された別個の構成として設けることができる。軸受け容器は、ロータシャフトを半径方向に取り囲んでおり、典型的には、円筒状の内側輪郭を備えている。軸受け容器は、ロータシャフトの軸線方向長さに関連して比較的長い軸線方向長さを有し、好ましくは、軸受け容器の軸線方向長さはロータシャフトの軸線方向長さの少なくとも半分であり、これにより、ロータシャフトの確実な支持を提供し、特にロータシャフトの傾斜を阻止する。軸受け容器には、軸受け容器の半径方向内側から突出する半径方向内向きの軸線方向支持フランジが設けられている。
【0008】
支持フランジは、軸受け容器の軸線方向両端部に対して軸線方向に間隔を置いて配置される。支持フランジの半径方向の高さは、玉軸受けの外側レースの半径方向の高さと実質的に等しいことが好ましい。
【0009】
2つの玉軸受けは両方とも、ロータシャフトの半径方向外側に固定されており、つまり、各玉軸受けの内側レースがロータシャフトに直接固定されている。両方の玉軸受けは、軸受け容器内で軸線方向に移動可能に設けられている。第1の玉軸受けは支持フランジの第1の軸線方向側に配置されており、第2の玉軸受けは支持フランジの反対の軸線方向側に配置されている。好ましくは、両玉軸受けは、軸受け容器の互いに反対の軸方向端部又はその近傍に配置され、これによりロータシャフトの安定した支持を提供する。第2の玉軸受けの外側レースは、予負荷ばねによって、軸線方向において支持フランジから離れる方向に予負荷され、その結果、第1の玉軸受けの外側レースは、支持フランジの反対の軸線方向側に接触するように押し込まれる。その結果、両方の玉軸受けは、軸受け容器内で確実に軸線方向に支持され、明確に定められた軸線方向に予負荷される。
【0010】
両玉軸受けは軸受け容器内で軸線方向に移動可能に設けられているので、玉軸受け及び結果としてロータシャフトは、軸受け容器及び結果としてポンプハウジングに対して軸線方向に移動することができる。これにより、ポンプハウジングからロータシャフトへの軸受けシステムを介した振動の伝達が回避されるか又は少なくとも最小化されるように、軸受けシステム内での軸線方向振動を減衰することができる。また、フローティング式の玉軸受けは、温度差に起因する、ロータシャフト及び軸受け容器の軸線方向の伸張を補償することを可能にする。これにより、玉軸受けの軸線方向荷重が最小になる。
【0011】
本発明による流体ポンプは弾性支持リングも備えており、各玉軸受けが少なくとも1つの支持リングを有する。支持リングは、玉軸受けの外側レースと軸受け容器の半径方向内側との間に配置され、外側レースを半径方向に取り囲む。支持リングは、弾性材料で作られ、好ましくは弾性プラスチックで作られている。支持リングは例えば、既知であり費用効率の高いOリングとすることができる。
【0012】
本発明によれば、両玉軸受けは、支持リングのみによって軸受け容器内で半径方向に支持されている。玉軸受けの外側レースの半径方向外側と軸受け容器の半径方向内側との間には環状の間隙が設けられており、玉軸受けが、半径方向で軸受け容器に直接接触しないようになっている。弾性支持リングは、振動減衰、特に、軸受システム内での半径方向振動の減衰を可能にし、その結果、ロータシャフトの振動を最小化する。玉軸受けの半径方向外側と軸受け容器の半径方向内側には間隙があるため、玉軸受け内に張力や不均衡な荷重を生じさせることなく、玉軸受けは半径方向に膨張することができる。
【0013】
本発明による流体ポンプはシャフト軸受けシステムを備え、当該シャフト軸受けシステムは、ロータシャフトの振動を最小限に抑え、且つ、軸受け容器に対するロータシャフトおよび/または玉軸受けの温度に起因する膨張を補償し、当該膨張に対する耐性を有し得る。これは、機械的負荷及び結果として軸受システムの摩耗を最小化し、このようにして、本発明による流体ポンプは、長期のポンプ寿命にわたって高いポンプ性能を提供できる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、両方の玉軸受けの外側レースがそれぞれ、支持リングを収容する少なくとも1つの位置決め環状溝を備える。位置決め環状溝は、支持リングを軸線方向に確実に支持し、位置決めする。特に、位置決め溝は、軸受けが軸線方向に移動した場合に、支持リングが玉軸受けと軸受け容器との間の間隙から滑り落ちることを阻止する。
【0015】
代替的又は追加的に、軸受容器には、支持リングを収容する位置決め環状溝が設けられている。軸受け容器は、少なくとも2つの位置決め溝を有し、各玉軸受けに対して少なくとも1つの位置溝が設けられている。位置決め溝は、少なくとも1つの位置決め溝が各玉軸受けの軸線方向の範囲内に位置するように位置決めされている。
【0016】
各玉軸受けには、軸方向に離間した正確に2つの支持リングが設けられていることが好ましい。2つの支持リングは、好ましくは互いにできるだけ離間して配置されており、これにより、一方の支持リングは、玉軸受けの外側レースの第1の軸線方向端部に近接して配置され、第2の支持リングは、外側レースの反対側の第2の軸線方向端部に近接して配置される。軸線方向に離間した2つの支持リングは、軸受け容器内における玉軸受けの半径方向の安定した支持を提供し、特に玉軸受けの傾斜を阻止する。それにもかかわらず、2つの支持リングは比較的小さな接触面積しか提供しないので、玉軸受けは、著しく大きな摩擦を発生させることなく、結果として著しく大きな軸線方向の軸受け荷重を発生させることなく、軸受け容器内で軸線方向に動かすことができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、シャフト軸受けシステムは、軸線方向において、駆動手段とポンプホイールとの間に配置される。その結果、ロータシャフト、ポンプホイール及び駆動手段を含む完全な回転体装置の質量中心は、軸受けシステムが比較的小さなてこ力のみに耐えなければならないように、軸受システム内に位置している。
【0018】
駆動手段は、流体ポンプが電動機によって電気的に駆動されるように、当該電動機のモータ回転子であることが好ましい。電動機及び結果として流体ポンプは、極めて正確に制御され得る。また、電動機は、複雑な機械的装置を用いることなく、自動車エンジンから独立して流体ポンプを制御することを可能にする。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、流体ポンプはガスポンプであり、特に、自動車燃料タンクから燃料蒸気を吸い出すためのパージポンプである。
【0020】
一般に、玉軸受けを回転体に固定して、流体ポンプの組み立てを容易にすることが好ましい。しかしながら、状況によっては、流体ポンプに上下反転した運動学的概念(inverse kinematic concept)を提供することが好ましい場合がある。ここで、玉軸受けは両方とも、軸受け容器の半径方向内側に固定され、ロータシャフトに対して軸線方向に移動可能に設けられ、それによって、軸線方向支持フランジがロータシャフトの半径方向外側に設けられる。両玉軸受けは、それぞれ外側レースで軸受け容器の半径方向内側に固定されている。第1の玉軸受けの内側レースは、軸線方向支持フランジと軸線方向にて接触している。第2の玉軸受けの内側レースは、予負荷ばねによって、軸線方向において支持フランジから離れる方向に予負荷されている。弾性支持リングは、各玉軸受けの半径方向内側に設けられ、玉軸受けの内側レースとロータシャフトの半径方向外側との間に半径方向に配置される。この流体ポンプもまた、ロータシャフトの振動を最小限に抑え、軸受け容器に対するロータシャフトおよび/または玉軸受けの温度に起因する膨張を補償し、且つ当該膨張に対する耐性を有し得る。
【0021】
本発明の異なる実施形態は添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明に係る流体ポンプの長手方向断面を示す。
図2図2は、図1の流体ポンプにおける軸受けシステムの拡大断面を示し、玉軸受けの外側レースには位置決め溝が設けられている。
図3図3は、図1の流体ポンプにおける別の軸受けシステムの拡大断面を示し、軸受け容器に位置決め溝が設けられている。
図4図4は、図1の流体ポンプにおける更に別の軸受けシステムの拡大断面を示すが、上下反転した運動学的概念を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は流体ポンプ10を示し、当該流体ポンプ10は、本発明の実施形態において、自動車用燃料システム(図示せず)から燃料蒸気を吸い出すためのパージポンプである。
【0024】
流体ポンプは、ポンプホイール12及び駆動手段18を備え、当該ポンプホイール12は、ロータシャフト16の第1の近位軸端部14に相対回動不能に取り付けられており、駆動手段18は、ロータシャフト16の第2の遠位軸端部20に直接固定されている。ロータシャフト16は、実質的にポンプの軸線方向に延在している。本発明の実施形態では、駆動手段18は、電動機の磁気モータ回転子である(図示せず)。
【0025】
ロータシャフト16及び結果的にロータシャフト16に取り付けられているポンプホイール12及び駆動手段18は、軸受けシステム22によって、ポンプハウジング26内で軸線方向及び半径方向に支持されている。軸受けシステム22は、固定の軸受け容器24を備え、当該軸受け容器24は、本発明の実施形態では、固定されたポンプハウジング26と一体的に設けられている。軸受けシステム22はまた、軸受け容器24内において半径方向且つ軸線方向に配置された2つの玉軸受け28,30を備える。軸受け容器24は、半径方向内側に方向付けられた軸線方向支持フランジ32を備える。第1の玉軸受け28は支持フランジ32の第1の近位軸線方向側に位置し、第2の玉軸受け30は、支持フランジ32の反対側における第2の遠位軸線方向側に位置する。
【0026】
両方の玉軸受け28、30には、それぞれ、内側レース28a、30a、いくつかの軸受け用ボール28b、30b、および外側レース28c、30cが設けられている。各玉軸受け28,30の内側レース28a,30aは、ロータシャフト16の半径方向外側に固定されている。各玉軸受け28,30の外側レース28c,30cには、軸線方向に離間した2つの位置決め環状溝28d,30dが設けられており、当該位置決め環状溝28d,30dのそれぞれは、弾性の支持リング34を収容する。位置決め溝28d、30dは、支持リング34を軸受けシステム22内で軸線方向に確実に支持し、且つ位置決めする。本発明の実施形態では、弾性の支持リング34は、従来型のOリングである。
【0027】
両方の玉軸受け28、30、特に、それらの外側レース28c、30cはそれぞれ、支持リング34によってのみ軸受け容器24内で半径方向に支持されている。すなわち、外側レース28c、30cは、軸受け容器24の半径方向内側に半径方向において直接接触していない。第2の玉軸受け30の外側レース30cは、予負荷ばね36によって、軸線方向において支持フランジ32から離れる方向に予負荷されている。予負荷ばね36は、支持フランジ32の遠位軸線方向側に接触しており、外側レース30cを支持フランジ32から遠位ポンプ軸線方向に押し離す。その結果、第1の玉軸受け28の外側レース28cが支持フランジ32に対して軸方向に押し付けられ、これにより、外側レース28cが支持フランジ32の近位軸線方向側に軸線方向で接触する。結果として、両方の玉軸受け28、30が確実に軸線方向に支持され、明確に軸線方向に予負荷され、これにより、ロータシャフト16、結果的にポンプホイール12および駆動手段14は、ポンプハウジング26内において確実に支持され、且つ位置決めされる。
【0028】
それにもかかわらず、両方の玉軸受け28,30は、それらの外側レース28c,30cが軸受け容器24に固定されていないので、軸受け容器24に対して軸線方向に移動可能である。これは、ポンプハウジング26の軸線方向振動を補償することを可能にし、玉軸受け28,30内に著しく大きな軸線方向荷重を発生させることなく、軸受け容器24に対するロータシャフト16の温度差に起因する軸線方向膨張を補償することを可能にする。玉軸受け28、30は、弾性支持リング34によってのみ半径方向に支持されるので、軸受けシステム22はポンプハウジングの半径方向振動を補償することもでき、軸受け容器に対するロータシャフト16及び/又は玉軸受け28、30の温度差に起因する半径方向膨張を補償することもできる。
【0029】
図4は、別のシャフト軸受けシステム22’を示しており、軸受け容器24’の半径方向内側には、軸線方向に間隔を置いた4つの位置決め環状溝38が設けられており、これらの位置決め環状溝はそれぞれ支持リング34を収容する。2つの位置決め溝38が第1の玉軸受け28’の半径方向範囲A1内に位置決めされ、2つの位置決め溝38が第2の玉軸受け30’の半径方向範囲A2内に位置決めされるように、位置決め溝38は軸受け容器24’内に配置されている。位置決め溝38は、軸受システム22’内において支持リング34を確実に軸線方向に支持し、且つ位置決めする。
【0030】
図4は、上下反転した運動学的概念を有する更に別のシャフト軸受けシステム22’’を示す。玉軸受け28’’、30’’は両方とも軸受け容器24’’の半径方向内側に固定されており、ロータシャフト16’’に対して軸線方向に移動可能に設けられている。軸線方向の支持フランジ32’’はロータシャフト16’’の半径方向外側に設けられ、半径方向外方に向かってに延びている。両方の玉軸受け28’’、30’’の内側レース28a’’、30a’’はそれぞれ、軸線方向に離間した2つの位置決め環状溝28d’’、30d’’を備え、これらの位置決め環状溝はそれぞれ弾性支持リング34を収容する。両方の玉軸受け28’’、30’’はそれぞれ、支持リング34のみによってロータシャフト16’’に半径方向に支持されている。第2の玉軸受け30’’の内側レース30a’’が予負荷ばね36’’によって支持フランジ32’’から離れるように軸線方向に予負荷され、これにより第1の玉軸受け28’’の内側レース28a’’が支持フランジ32’’に対して軸線方向で押し付けられる。
【符号の説明】
【0031】
10;10';10’’ 流体ポンプ
12 ポンプホイール
14 第1の近位軸線方向ロータシャフト端部
16;16’’ ロータシャフト
18 駆動手段
20 第2の遠位軸線方向ロータシャフト端部
22;22';22’’ 軸受けシステム
24;24';24’’ 軸受け容器
26 ポンプハウジング
28;28',28’’ 第1の玉軸受け
28a,28a’’ 内側レース
28b 軸受け用ボール
28c;28c',28c’’ 外側レース
28d,28d’’ 位置決め溝
30;30',30’’ 第2の玉軸受け
30a,30a’’ 内側レース
30b 軸受け用ボール
30c,30c',30c’’ 外側レース
30d,30d’’ 位置決め溝
32;32’’ 軸線方向支持フランジ
34 支持リング
36;36’’ 予負荷ばね
38 位置決め溝
A1,A2 軸線方向範囲
図1
図2
図3
図4