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特許7058816光学検出装置及び該光学検出装置を備えたシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】光学検出装置及び該光学検出装置を備えたシステム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20220415BHJP
   G01N 21/29 20060101ALI20220415BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G01N21/29
G01N21/27 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022020523
(22)【出願日】2022-02-14
【審査請求日】2022-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507014553
【氏名又は名称】株式会社レフ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】浅香 尚洋
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特許第6876207(JP,B1)
【文献】特開2019-39993(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125236(WO,A1)
【文献】特開2013-36889(JP,A)
【文献】特表平4-504804(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108956474(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00 - 7/06
G01J 3/00 - 4/04
G01N 21/00 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出側ファイバオプティックプレートと、
短波長域の可視光を出射し、光軸が前記検出側ファイバオプティックプレートの光軸に対して略平行に配置された第1の光源と、
長波長域の可視光を出射し、光軸が前記検出側ファイバオプティックプレートの光軸に対して斜めに配置された第2の光源と、
を備え、
前記第2の光源の光軸と前記検出側ファイバオプティックプレートの光軸とがなす角度が、前記検出側ファイバオプティックプレートの最大受光角より大きくなっており、
植物の葉を一方の表皮面が前記検出側ファイバオプティックプレートの入射面に接するように配置し、前記第1の光源及び前記第2の光源からの出射光が前記葉の他方の表皮面に入射し、前記葉の中を透過して前記一方の表皮面から前記検出側ファイバオプティックプレートの入射面に到達する状態で、前記検出側ファイバオプティックプレートの出射面側から視認することにより、前記葉の葉緑体の分布状態を把握することを特徴とする光学検出装置。
【請求項2】
前記第1の光源が青色光を出射し、前記第2の光源が赤色光を出射することを特徴とする請求項1に記載の光学検出装置。
【請求項3】
光軸が前記検出側ファイバオプティックプレートの光軸と略平行であり、前記検出側ファイバオプティックプレートの入射面に一方の表皮面が接するように配置された葉の他方の表皮面に出射面が接するように配置された光源側ファイバオプティックプレートを備え、
前記第2の光源の光軸と前記光源側ファイバオプティックプレートの光軸とがなす角度が、前記光源側ファイバオプティックプレートの最大受光角以内になっており、
前記第1の光源及び前記第2の光源の出射光が前記光源側ファイバオプティックプレートの入射面から前記光源側ファイバオプティックプレート内を進み、前記光源側ファイバオプティックプレートの出射面から前記葉の他方の表皮面に入射することを特徴とする請求項1または2に記載の光学検出装置。
【請求項4】
前記第1の光源及び前記第2の光源が点光源であって、前記第1の光源及び前記第2の光源が出射光が、前記光源側ファイバオプティックプレートに入射することを特徴とする請求項3に記載の光学検出装置。
【請求項5】
前記第1の光源及び前記第2の光源が点光源であって、
前記第1の光源の出射光が入射する前記第1の光源の光軸に略平行な光軸を有する第1のシリンドリカルレンズと、前記第2の光源の出射光が入射する前記第2の光源の光軸に略平行な光軸を有する第2のシリンドリカルレンズとを備え、前記第1のシリンドリカルレンズ及び前記第2のシリンドリカルレンズからの出射光が前記光源側ファイバオプティックプレートに入射することを特徴とする請求項3に記載の光学検出装置。
【請求項6】
前記第1の光源及び前記第2の光源が面発光光源であって、前記第1の光源及び前記第2の光源が出射光が、前記光源側ファイバオプティックプレートに入射することを特徴とする請求項3に記載の光学検出装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の光学検出装置と、
前記光学検出装置の前記検出側ファイバオプティックプレートの出射面に受光面が対向するように配置された画像センサと、
前記画像センサが取得した画像データを無線または有線で送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された画像データを受信する少なくともサーバまたは携帯端末を含む制御手段と、
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記サーバにおいて、送信された画像データ及びに基づいて、前記葉の葉緑体の分布状態を解析することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記サーバにおいて、送信された画像データまたは該画像データに基づく解析データを蓄積し、統計的分析データを生成することを特徴とする請求項7または8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の葉の葉緑体の分布状態を把握するために用いる光学検出装置及びこの光学検出装置を備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物がカビや細菌、ウイルスや病害虫に感染したり、気象の変動や雑草、土壌環境など様々な要素から成り立つ生育環境の悪化によって生育不良になると、その初期症状として葉の葉緑体の発達が悪くなってクロロフィルが減少する。このため、葉の葉緑体の分布状態を随時的確に把握して、ウイルスや病害虫に感染した個体を、他の個体に広がる前に排除することや、土壌や日当たりといった生育環境の是正処置を早期に施すことは、農業や林業、菜園や園芸における収穫量の維持・向上において重要である。これに対して、短波長の光を植物に照射する励起光照射手段と、植物からの可視光蛍光を検出するセンサと、検出した蛍光の光強度に基づいて病原菌感染診断を行う制御部とを備えた病原菌感染診断装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方、同じく農業や林業、菜園や園芸における収穫量の維持・向上を掲げ、葉の葉緑体の分布状態ではなく、結果として得られる収穫物の品質(例えば、糖度)を非破壊計測する装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、種々の環境条件や結果としての収穫量や収穫物の品質を紐付けでデータを蓄積し、作業者の熟練度に関わらない最適な育成条件の模索にビッグデータの解析を用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-36889号
【文献】再表2018/047366号
【文献】特開2020-201763号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の病原菌感染診断装置では、検査そのものが非破壊検査ではなく、サンプルを対象となる農作物から検査ごとに切り出さなければならないため、1)葉自体が生産物となる葉菜類の検査としては、必然的に収穫量を下げてしまう、2)初期症状を確認した後に施される是正処置の効果確認としては、同一個体から逐一別のサンプルを切り出す必要があり、同一箇所の時系列比較ができないため不適当である、という禍を持つ。また、特許文献2に記載の非破壊測定装置は、収穫物としての果実の品質評価には使用できるが、育成途中のモニタリングはできず、最終検査工程の精度を上げるにすぎないため、歩留まりの向上は望めない。歩留まりを向上させるには、作物の育成途中における検査、是正処置が必要である。また、特許文献3に記載の農作物管理システム及び農作物管理プログラムは、様々なパラメータを考慮出来るという利点はあるものの、データ入力は農作業者の余分な工程として追加されるものであり、作業時間単価を考慮した場合、必ずしも費用対効果の向上にはなり得ない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、日照条件や葉の位置、使用者の熟練度といった不確定要素に影響を受けず、容易に葉の葉緑体の分布状態を作物の育成途中で随時、非破壊で把握できる光学検出装置及びこの光学検出装置を備えたシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、
検出側ファイバオプティックプレートと、
短波長域の可視光を出射し、光軸が前記検出側ファイバオプティックプレートの光軸に対して略平行に配置された第1の光源と、
長波長域の可視光を出射し、光軸が前記検出側ファイバオプティックプレートの光軸に対して斜めに配置された第2の光源と、
を備え、
前記第2の光源の光軸と前記検出側ファイバオプティックプレートの光軸とがなす角度が、前記検出側ファイバオプティックプレートの最大受光角より大きくなっており、
植物の葉を一方の表皮面が前記検出側ファイバオプティックプレートの入射面に接するように配置し、前記第1の光源及び前記第2の光源からの出射光が前記葉の他方の表皮面に入射し、前記葉の中を透過して前記一方の表皮面から前記検出側ファイバオプティックプレートの入射面に到達する状態で、前記検出側ファイバオプティックプレートの出射面側から視認することにより、前記葉の葉緑体の分布状態を把握することを特徴とする光学検出装置である。
【0007】
本発明のその他の態様は、
上記の光学検出装置と、
前記光学検出装置の前記検出側ファイバオプティックプレートの出射面に受光面が対向するように配置された画像センサと、
前記画像センサが取得した画像データを無線または有線で送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された画像データを受信する少なくともサーバまたは携帯端末を含む制御手段と、
を備えたシステムである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、上記の態様では、日照条件や葉の位置、作業者の熟練度といった不確定要素に影響を受けず、容易に葉の葉緑体の分布状態を随時、非破壊で把握できる光学検出装置及びこの光学検出装置を備えたシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光学検出装置の概要を示す模式図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る光学検出装置の概要を示す模式図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る光学検出装置の概要を示す模式図である。
図4】試作した光学検出装置を用いて視認した葉の一方の表皮面を示す図(写真)である。
図5A】光学検出装置の外形の一例を示す斜視図であって、上側部及び下側部が閉じられた状態を示す図である。
図5B図5Aに示す光学検出装置において、上側部を一端に設けられた回転軸を中心に回転させて開閉を行う例を示す斜視図である。
図5C図5Aに示す光学検出装置において、上側部を下側部に対して上下に動かして開閉を行う例を示す斜視図である。
図6】画像センサが取り付けられた光学検出装置を備えたシステムの一例を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。各図面中、同一の機能を有する対応する部材には、同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態では前述の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。
【0011】
(第1の実施形態に係る光学検査装置)
はじめに、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る光学検出装置の説明を行う。本実施形態に係る光学検出装置2は、検出側ファイバオプティックプレート10と、第1の光源20と、第2の光源22と、光源側ファイバオプティックプレート30とを備える、
【0012】
ファイバオプティックプレートは、コアガラスの周囲をクラッドガラスで覆った複数の光ファイバの束と、各光ファイバの間を埋める吸収体から構成される光学部材である。各光ファイバは同じ方向に延びている。光ファイバの最大受光角以内の光は、コア(ガラス)とクラッド(ガラス)の境界で全反射を起こすため、高い伝達効率でコア内を光が伝送される。最大受光角を越える光はコアに入らないが、吸収体で吸収されるため、他の光ファイバに影響を及ぼす虞はない。
【0013】
<検出側ファイバオプティックプレート>
検出側ファイバオプティックプレート10の光軸(構成する光ファイバの光軸)は、図1で上下方向に伸びており、光軸に略直交する入射面10a及び出射面10bを有する。検出側ファイバオプティックプレート10の最大受光角αは、90度より小さく、約51度(開口値NA=0.43)となっている。つまり、検出側ファイバオプティックプレート10は、低開口ファイバオプティックプレート(LOW-NA FOP)である。
【0014】
<第1の光源>
第1の光源20は、青色光(例えば、波長450以上485nm未満)を出射するLEDチップを備える。第1の光源20の光軸が、検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して略平行になるように配置されている。
【0015】
<第2の光源>
第2の光源22は、赤色光(例えば、波長625以上780nm未満)を出射するLEDチップを備える。第2の光源22の光軸が、検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して斜めになるように配置されている。特に、第2の光源22の光軸と検出側ファイバオプティックプレート10の光軸とがなす角度θが、検出側ファイバオプティックプレートの最大受光角αより大きくなっている。つまり、本実施形態では、θ>α(=約51度)となっている。
【0016】
なお、検出側ファイバオプティックプレート10の最大受光角αは、約51度に限られるものではなく、θ>αの関係を満たせば、その他の任意の最大受光角を有するファイバオプティックプレートを採用できる。スペックルノイズの観点からも、第1の光源20及び第2の光源22としてLEDを用いるのが好ましいが、それに限られるものではない。レーザーダイオード(LD)を初めとするその他の任意の光源を用いることもできる。
【0017】
<光源側ファイバオプティックプレート>
光源側ファイバオプティックプレート30の光軸(構成する光ファイバの光軸)は、検出側ファイバオプティックプレート10の光軸と略平行となるように配置され、光軸が図1で上下方向に伸びている、また、光軸に略直交する入射面30a及び出射面30bを有する。光源側ファイバオプティックプレート30の最大受光角βは、90度となっている。つまり、光源側ファイバオプティックプレート30は、通常ファイバオプティックプレート(Normal FOP)である。
【0018】
このような配置により、第1の光源20の光軸は、光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対して略平行になるように配置されている。第2の光源22の光軸は、光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対して斜めになるように配置されている。特に、第2の光源22の光軸と光源側ファイバオプティックプレート30の光軸とがなす角度θは、光源側ファイバオプティックプレート30の最大受光角β以下になっている。つまり、本実施形態では、θ≦β(=90度)となっている。よって、第1の光源20及び第2の光源22の出射光は、入射面30aから光源側ファイバオプティックプレート30内に入射して、光源側ファイバオプティックプレート30内を進んで、出射面30bから出射する。このように、第1の光源20及び第2の光源22といった点光源と光源側ファイバオプティックプレート30とを組み合わせることにより、面光源として機能させることができる。
【0019】
(葉緑体の分布状態を把握する方法)
次に、上記のような構成の光学検出装置2を用いて、葉Lの葉緑体の分布状態を把握する方法を説明する。図1に示すように、植物の葉Lを一方の表皮面L2が検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに接するように配置する。更に、検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに一方の表皮面L2が接するように配置された葉Lの他方の表皮面L1に出射面30bが接するように、光源側ファイバオプティックプレート30を配置する。つまり、試料である葉Lを、検出側ファイバオプティックプレート10及び光源側ファイバオプティックプレート30で両側から挟み込むようにする。この状態で、第1の光源20及び第2の光源22から光を出射させ、使用者は、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面10b側から光の当てられた葉Lを観察する(図1の白抜矢印参照)。ここでは、葉Lの一方の表皮面L2が葉の表面(緑色の面)であって、葉Lの他方の表皮面L1が葉の裏面である。ただし、これに限られるものはなく、葉の表裏が逆に配置された場合もあり得る。
【0020】
光源側ファイバオプティックプレート30は多数の光ファイバの束から構成され、入射面30aから入射した光は、光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対する入射角度が保たれたまま出射面30bから出射する。つまり、第1の光源20の出射光は、光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対して略平行な方向に出射し、第2の光源22の出射光は、光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対して、角度θをなす斜めの方向に出射する。
【0021】
特に、光源側ファイバオプティックプレート30を用いることにより、検出側ファイバオプティックプレート30を構成する各光ファイバの光軸に対して斜めに入射した赤色光は、光軸に対する角度を保ったまま、各光ファイバのコア内でランダムに反射される。よって、赤色光は、光源側ファイバオプティックプレート30の出射面30bから、円錐角度を保った状態でランダムな方向に出射される。つまり、光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対して斜めに入射した赤色光に、回転対称性を付与することができる。これにより、光源側ファイバオプティックプレート30の出射面30bにおいて、光線の方向的にムラのない照射を実現できる。これは、使用者がこの光学系にどのような角度で葉を挟もうと、同一な二次元画像を得られる、ということである。光源側FOPを用いず、例えば複数の光源をもってこの効果を成し遂げようとすると、装置の巨大化とコスト上昇は不可避であり、現場で使いやすいという当初の理念から逸脱してしまう。
【0022】
第1の光源20の出射光は、光源側ファイバオプティックプレート30内を進んで、出射面30bから光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対して略平行な方向に出射する。よって、青色光は、出射面30bに接した葉Lの他方の面L1に対して略垂直な方向から入射する。また、第2の光源22の出射光は、光源側ファイバオプティックプレート30内を進んで、出射面30bから光源側ファイバオプティックプレート30の光軸に対して角度θをなす方向に出射する。つまり、出射面30bに接した葉Lの他方の面L1に対して、角度θをなす斜めな方向から入射する。
【0023】
第1の光源20の出射光は、葉Lの色素に吸収されたり、散乱がなければ、葉Lの中を他方の表皮面L1に対して略垂直な方向に進む。葉Lの中を透過した光は、一方の表皮面L2から検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに到達する。また、第2の光源22の出射光は、葉Lの色素に吸収されたり、散乱がなければ、葉Lの中を他方の表皮面L1に対して角度θをなす方向に進む。葉Lの中を透過した光は、一方の表皮面L2から検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに到達する。
【0024】
<葉の中の光の透過>
植物が光合成を行うため、葉には、葉緑体が有するクロロフィル(葉緑素)やカロテノイドといった光合成色素が含まれる。葉緑体が有するクロロフィルは、最も主要な光合成色素であり、カロテノイドは、クロロフィルに次ぐ補助的な光合成色素である。例えば、植物がウイルスに感染すると、葉緑体の発達が悪くなってクロロフィルが減少し、十分な光合成ができなくなる。葉のクロロフィルが減少した領域は、緑色から黄色(場合によっては茶色)に変色し黄化が生じる。
【0025】
クロロフィルは、短波長域(例えば、波長400以上500nm未満)の光及び長波長域(例えば、波長600以上780nm未満)の光を吸収し、中波長域(例えば、波長500以上600nm未満)の光を透過する。よって、緑色に見える。一方、カロテノイドは、短波長域(例えば、波長400以上500nm未満)を吸収し、中波長域(例えば、波長500以上600nm未満)の光や長波長域(例えば、波長600以上780nm未満)の光を透過する。よって、クロロフィルが減少すると、相対的にカロテノイドの比率が増えるので、その領域では、短波長域の光に比べて、中波長域または長波長域の光の透過量が増大する。よって、黄色(場合によっては茶色)に見える。
【0026】
上記のように、クロロフィルが減少する黄化の初期の段階で的確にそれを把握して、適切な対策を講じることが植物の育成に重要である。しかし、緑色と黄色(または茶色)に対応する光は、中波長(例えば、500nm以上600nm未満)の比較的近い波長域内にあるので、初期の段階で葉を目視して黄化を発見するのは困難である。しかし、本実施形態では、中波長域の両側であって、可視光域の両端に位置する青色光と赤色光とを用いて識別するので、より明確に黄化を識別することができる。
【0027】
本実施形態では、第1の光源20から青色光を出射し、第2の光源22から赤色光を出射する。葉緑体が十分に存在する健全な領域ではクロロフィルが多く存在するので、青色光も赤色光も多くがクロロフィルで吸収され、一部の光のみが葉Lの一方の表皮面L2から出射する。仮に、葉Lを一方の表皮面L2側から見た場合、表皮面L2で反射された光による緑色とともに、葉Lを透過した光による薄い青紫色が視認される。
【0028】
一方、クロロフィルが減少して黄化しはじめた領域では、カロテノイドの影響が強くなり、青色光の多くはカロテノイドに吸収されるが、赤色光の多くはカロテノイドを透過する。青色光は一部の光のみが葉Lの一方の表皮面L2から出射するが、赤色光の多くが葉Lの一方の表皮面L2から出射する。仮に、葉Lを一方の表皮面L2側から見た場合、表皮面L2で反射された光による黄色(または、茶色)とともに、葉Lを透過した光による赤色が際だって視認される。
【0029】
このような、薄い青紫色の領域と、より際だって視認される赤色の領域とにより、黄化を容易に識別することができる。上記のように、青色光と赤色光とは大きく離れた波長域にあるので、より明確に黄化を識別することができる。目の色感度によれば、青色よりも赤色の方がはっきりと見分けられるので、赤色により黄化した領域を明確に識別できる。なお、黄化した領域が茶色になっている場合には、元々茶に赤の色成分が含まれているので、茶色の反射光と相まって、より赤が強調されて目に映り、黄化を識別し易くなる。
【0030】
<光源側ファイバオプティックプレートの機能>
上記のように、光源側ファイバオプティックプレート30により、光軸に対して斜めに入射した光に回転対称性を付与することができ、葉Lをムラなく照射することができる。
更に、葉の葉脈はあらゆる方向に延びているが、仮に斜めに進む光が1方向にしか進まない場合には、一方の表皮面L2側から葉Lを見たとき、葉脈により反射される角度により、葉緑体の分布状態とは関連せずに、光の光強度の強弱が生じる。これは、葉緑体の分布状態の把握を阻害する要因になる。しかし、光源側ファイバオプティックプレート30により付与されたた回転対称性により、上記の方向による影響をキャンセルすることができる。よって、回転対称性によるムラの防止効果も相まって、葉脈を鮮明に視認することができる。これにより、葉脈に対して葉緑体の欠損がどのように生じているか的確に把握することができる。葉脈と葉緑体の欠損の位置関係を考慮することで、植物がどのような病害に侵されているかの推測も容易になる。
【0031】
<検出側ファイバオプティックプレートの機能>
上記のように葉Lの中を透過した青色光及び赤色光は、一方の表皮面L2から検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに到達する。第1の光源20から出射された青色光は、クロロフィルが存在する健全な領域でも、カロテノイドの比率が高まる黄化した領域でも吸収されるが、一部の青色光はクロロフィルやカロテノイドを透過する。葉Lの中を透過した青色光は、入射面10aから検出側ファイバオプティックプレート10内に入射する。
【0032】
第2の光源22から出射された赤色光は、クロロフィルが存在する健全な領域では吸収されるが、カロテノイドの比率が高まる黄化した領域では透過する傾向を示す。しかし、クロロフィルが存在する健全な領域でも、一部の赤色光はクロロフィルを透過する。このような葉Lの健全な領域を透過した赤色光が、上記の青色光と同様に、検出側ファイバオプティックプレート10内に入射すると、黄化した領域を示す赤色に対するバックグラウンドノイズとなる。よって、健全な領域と黄化した流域とを識別するS/N比を低下させることになるので、クロロフィルが十分存在する領域での赤色を極力減らす必要がある。
【0033】
本実施形態では、赤色光が検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して斜めに進み、赤色光の進む方向と検出側ファイバオプティックプレート10の光軸とがなす角度θが、検出側ファイバオプティックプレート10の最大受光角αより大きいので、クロロフィルを透過した赤色光が、そのまま検出側ファイバオプティックプレート10内に入射するのを防ぐことができる。これにより、バックグラウンドノイズを除去して、健全な領域と黄化した流域を識別するためのS/N比を向上させることができる。これにより、葉を観察しただけでは健全な領域と黄化した流域を容易に識別することができない初期の段階であっても、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面10b側から視認することにより、健全な領域と黄化した流域を容易に識別することができる。
【0034】
更に、ファイバオプティックプレートでは、入射面に密着した面の情報を主に伝えるという性質がある。出射面から少しでも離すと、像がぼけて鮮明に視認することができない。これにより、透過光学系の「透過光に平行方向の試料の厚みにあたる部分の情報を分離できない」という弱点を克服することができる。よって、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面10b側から葉Lを見たとき、葉Lの一方の表皮面L2における情報のみを得ることができる。
【0035】
以上のように、検出側ファイバオプティックプレート30は、健全な領域と黄化した流域を識別するためのS/N比を向上させるという機能と、厚さ方向のS/N比を向上させるという、三次元的なノイズキャンセリング機能を有する。
【0036】
(第2の実施形態に係る光学検査装置)
次に、図2を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る光学検出装置の説明を行う。上記の第1の実施形態では、点光源である第1の光源20及び第2の光源22の出射光が、直接、光源側ファイバオプティックプレート30に入射するが、本実施形態では、点光源である第1の光源20の出射光が入射する第1のシリンドリカルレンズ40と、点光源である第2の光源22の出射光が入射する第2のシリンドリカルレンズ42とを備える。
第1の光源20の出射面に第1のシリンドリカルレンズ40の入射面が接続され、第1の光源20の光軸と第1のシリンドリカルレンズ40の光軸が略平行に配置されている。第2の光源22の出射面に第2のシリンドリカルレンズ42の入射面が接続され、第2の光源22の光軸と第2のシリンドリカルレンズ42の光軸が略平行に配置されている。
【0037】
また、検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに一方の表皮面L2が接するように配置された葉Lの他方の表皮面L1に、光源側ファイバオプティックプレート60が接するように配置されている。光源側ファイバオプティックプレート板60は、検出側ファイバオプティックプレート10とともに葉Lを挟み込むように配置されている。光源側ファイバオプティックプレート60により、検出側ファイバオプティックプレート10とともに葉Lを保持することができる。更に、第2のシリンドリカルレンズ42の出射光のように、光源側ファイバオプティックプレート60の光軸に対して斜めに入射した光に回転対称性を付与することができ、葉Lをムラなく照射することができる。
【0038】
第1の光源20出射面から出射した青色光は、第1のシリンドリカルレンズ40に入射し、第1のシリンドリカルレンズ40内を進んで、第1のシリンドリカルレンズ40の出射面40aから、光源側ファイバオプティックプレート板60及び検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に略平行な方向に出射する。つまり、第1の光源20と第1のシリンドリカルレンズ40との組み合わせで、面光源として機能することができる。
第1のシリンドリカルレンズ40の出射面40aから出射した青色光は、光源側ファイバオプティックプレート板60の入射面60aから光源側ファイバオプティックプレート板60内に入射し、光源側ファイバオプティックプレート板60内を進んで、光源側ファイバオプティックプレート板60の出射面60bから出射する。光源側ファイバオプティックプレート板60の出射面60bから出射した青色光は、検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に略平行な方向から葉Lの他方の表皮面L1に入射する。
【0039】
第2の光源22から出射された赤色光は、第2のシリンドリカルレンズ42に入射し、第2のシリンドリカルレンズ42内を進んで、第2のシリンドリカルレンズ42の出射面42aから、光源側ファイバオプティックプレート板60及び検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して角度θをなす方向に出射する。つまり、第2の光源22と第2のシリンドリカルレンズ42との組み合わせで、面光源として機能する。
第2のシリンドリカルレンズ42の出射面42aから出射した赤色光は、光源側ファイバオプティックプレート板60の入射面60aから光源側ファイバオプティックプレート板60内に入射し、光源側ファイバオプティックプレート板60内を進む間に回転対称性が付与され、光源側ファイバオプティックプレート板60の出射面60bから出射する。光源側ファイバオプティックプレート板60の出射面60bから出射した赤色光は、検出側ファイバオプティックプレート10の入射面光軸に対して角度θをなす方向から葉Lの他方の表皮面L1に入射する。
【0040】
葉L内及び検出側ファイバオプティックプレート10内を進む青色光、赤色光の進み方や、葉緑体の分布状態を把握する方法は、上記の第1の実施形態と同様なので、更なる説明は省略する。第1、第2のシリンドリカルレンズ40、42を用いて面光源とする本実施形態においても、シンプルな構成で葉の葉緑体の分布状態を把握できる小型な光学検出装置2を提供できる。
【0041】
(第3の実施形態に係る光学検査装置)
次に、図3を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る光学検出装置の説明を行う。上記の第2の実施形態では、第1、第2の光源20、22及びシリンドリカルレンズ40、42の組み合わせで面光源として機能させているが、本実施形態に係る光学検出装置2では、ホロライトのような、面発光光源50、52を用いる点で異なる。
【0042】
また、第3の実施形態も上記の第2の実施形態と同様に、検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに一方の表皮面L2が接するように配置された葉Lの他方の表皮面L1に、光源側ファイバオプティックプレート70が接するように配置されている。光源側ファイバオプティックプレート70により、検出側ファイバオプティックプレート10とともに葉Lを保持することができる。更に、第2の光源52の出射光のように、光源側ファイバオプティックプレート70の光軸に対して斜めに入射した光に回転対称性を付与することができ、葉Lをムラなく照射することができる。
【0043】
面発光光源50、52としては、レーザー光源やLED光源をライン状あるいは面状並べたものや、導光板や反射板を用いて擬似平行光を発生するLED照明装置を例示できる。第1の光源50の出射面50aから、青色光が光源側ファイバオプティックプレート70及び検出側ファイバオプティックプレート10の光軸と略平行な方向に出射する。第1の光源50から出射した青色光は、光源側ファイバオプティックプレート70の入射面70aから光源側ファイバオプティックプレート70内に入射し、光源側ファイバオプティックプレート70内を進んで、光源側ファイバオプティックプレート70の出射面70bから出射する。光源側ファイバオプティックプレート70の出射面70bから出射した光は、検出側ファイバオプティックプレート10の入射面光軸に略平行な方向から葉Lの他方の表皮面L1に入射する。
【0044】
第2の光源52の出射面52aから、赤色光が光源側ファイバオプティックプレート70及び検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して角度θをなす方向に出射する。第2の光源52から出射した赤色光は、光源側ファイバオプティックプレート70の入射面70aから光源側ファイバオプティックプレート70内に入射し、光源側ファイバオプティックプレート70内を進む間に回転対称性が付与され、光源側ファイバオプティックプレート70の出射面70bから出射する。光源側ファイバオプティックプレート70の出射面70bから出射した赤色光は、検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して角度θをなす方向から葉Lの他方の表皮面L1に入射する。
【0045】
葉L内及び検出側ファイバオプティックプレート10内を進む青色光、赤色光の進み方や、葉緑体の分布状態を把握する方法は、上記の第1の実施形態と同様なので、更なる説明は省略する。本実施形態においても、シンプルな構成で葉の葉緑体の分布状態を把握できる小型な光学検出装置2を提供できる。
【0046】
上記の実施形態では、第1の光源20、50が青色光を出射するが、これに限られるものではない。クロロフィル及びカロテノイドに吸収される短波長域(例えば、波長400以上500nm未満)の光であれば、その他の任意の波長の光を出射する光源を用いることができる。また、上記の実施形態では、第2の光源22、52が赤色光を出射するが、これに限られるものではない。クロロフィルに吸収され、カロテノイドに吸収されない長波長域(例えば、波長600以上780nm未満)の光であれば、その他の任意の波長の光を出射する光源を用いることができる。
【0047】
面光源として機能する照明手段は、上記の第1から第3の実施形態に限られるものではない。検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して略平行に短波長域の可視光を出射する面光源手段と、検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して角度θをなす方向に長波長域の可視光を出射する面光源手段であれれば、その他の任意の光源または光源及び光学部材の組み合わせを採用することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る光学検出装置2は、検出側ファイバオプティックプレート10と、短波長域の可視光を出射し、光軸が検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して略平行に配置された第1の光源20、50と、長波長域の可視光を出射し、光軸が検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して斜めに配置された第2の光源22、52と、を備え、第2の光源22、52の光軸と検出側ファイバオプティックプレート10の光軸とがなす角度θが、検出側ファイバオプティックプレート10の最大受光角αより大きくなっており、植物の葉Lを一方の表皮面L2が検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに接するように配置し、第1の光源20、50及び第2の光源22、52からの出射光が葉Lの他方の表皮面L1に入射し、葉Lの中を透過して一方の表皮面L2から検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに到達する状態で、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面側10bから視認することにより、葉Lの葉緑体の分布状態を把握することができる。
【0049】
葉の健全な領域の色に対応する緑色光と黄化した領域の色に対応した黄色光とは、共に中波長(例えば、波長500以上600nm未満)の近い波長域内にあるので、識別がしづらく、葉を目視しただけでは黄化を発見するのは困難である。しかし、本実施形態では、中波長域をはさんで、両側の短波長域の光と長波長域の光とを用いることにより、葉の健全な領域と黄化した領域とを容易に識別することができる。
【0050】
本実施形態では、葉の黄化の識別に重要な長波長域の光が、検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して、最大受光角αより大きな角度θをなすように斜めに出射する。これにより、葉の健全な領域を透過した長波長光がそのまま検出側ファイバオプティックプレート10内に入射するのを防ぐことができ、バックグラウンドノイズを除去して、健全な領域と黄化した流域を識別するS/N比を向上させることができる。更に、検出側ファイバオプティックプレート10の特性により、葉Lの一方の表皮面L2における情報のみを得ることができるので、厚さ方向のS/N比を向上させることができる。これらにより、三次元的なノイズキャンセリングを実現できる。
【0051】
以上により、本実施形態では、葉を観察しただけでは健全な領域と黄化した流域を容易に識別することができない初期の段階であっても、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面10b側から視認することにより、健全な領域と黄化した流域を容易に識別することができる。
【0052】
更に、本実施形態に係る光学検出装置2は、検出側ファイバオプティックプレート10と2つの光源20、22だけによるシンプルな構成であり、容易に装置を小型化することができる。これにより、植物の栽培現場に装置を持ち込んで、植物の葉の葉緑体の分布状態を把握することができる。特に、葉を植物から切り取ることなく、検出側ファイバオプティックプレートの入射面に葉を接触させて視認することにより、容易に葉緑体の分布状態を把握できる。
【0053】
これにより、日照条件や葉の位置、使用者の熟練度といった不確定要素に影響を受けず、容易に葉の葉緑体の分布状態を作物の育成途中で随時、非破壊で把握できる光学検出装置2を提供することができる。
【0054】
特に、第1の光源20、50が青色光を出射し、第2の光源22、52が赤色光を出射する場合には、可視光域の両端に位置する光を用いることにより、葉の健全な領域と黄化した領域を確実に識別することができる。
【0055】
更に、光軸が検出側ファイバオプティックプレート10の光軸と略平行であり、検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに一方の表皮面L2が接するように配置された葉Lの他方の表皮面L1に出射面30b、60b、70bが接するように配置された光源側ファイバオプティックプレート30、60、70を備え、第2の光源22、42、52の光軸と光源側ファイバオプティックプレート30、60、70の光軸とがなす角度θが、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70の最大受光角β以内になっている場合には、第1の光源20、40、50及び第2の光源22、42、52の出射光が光源側ファイバオプティックプレート30、60、70の入射面30a、60a、70aから光源側ファイバオプティックプレート30、60、70内を進み、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70の出射面30b、60b、70bから葉Lの他方の表皮面L1に入射するようにできる。
【0056】
第1の実施形態においては、光源側ファイバオプティックプレート30を用いることにより、点光源である第1、第2の光源20、22を用いて面光源として機能させることができる。更に、上記の全ての実施形態において、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70内を進む光に回転対称性を付与して、葉Lをムラなく照射することができるとともに、葉脈による反射の影響をキャンセルして、葉脈に対して葉緑体の欠損がどのように生じているか的確に把握することができる。
【0057】
(実施例)
次に、図4を参照しながら、上記の第1の実施形態に係る光学検出装置を試作し、試作をした光学検出装置を用いて、葉の表皮面を視認した実施例の説明を行う。図4は、試作した光学検出装置を用いて視認した葉の一方の表皮面を示す図(写真)である。
図4の葉脈が存在する濃い灰色の領域が青色に見える領域であり、葉緑素が欠損した黒色の領域の周囲のやや薄い灰色の領域が赤色に見える領域である。
【0058】
図4に示す画像では、斜めに入射させる赤色光を、画像に対して左側から入射させた。しかし、画像の明暗などにムラは発生しておらず、光源側ファイバオプティックプレートの回転対称性の効果が実証されている。
例えば、葉を日の光に透かすだけでは、黄化部分は観測できても、葉脈部分は透過光が強すぎて、サチレーションを起こしてしまい観測できない。しかし、本発明に係る光学検出装置を用いることにより、図4に示すように、黄化部分とともに網状の細い葉脈も描画されており、黄化部分の位置関係を容易に確実に把握することができる。
以上のように、図4に示すような実施例から、可視光域の両端に位置する青色光と赤色光とにより、目視だけでは識別が困難な黄化を容易に確実に識別することができることが実証された。
【0059】
(光学検出装置の機械的構造)
次に、図5Aから図5Cを参照しながら、上記の実施形態に係る光学検出装置の機械的な構造の概要を説明する。図5Aは、光学検出装置の外形の一例を示す斜視図であって、上側部及び下側部が閉じられた状態を示す図である。図5Bは、図5Aに示す光学検出装置において、上側部を一端に設けられた回転軸を中心に回転させて開閉を行う例を示す斜視図である。図5Cは、図5Aに示す光学検出装置において、上側部を下側部に対して上下に動かして開閉を行う例を示す斜視図である。
【0060】
図5Aに示す光学検出装置2は、第1の光源20、40、50、第2の光源22、42、52、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70等を備えた下側部4と、検出側ファイバオプティックプレート10等を備えた上側部6とから構成される。
【0061】
図5Bに示す例では、上側部6の図面で右側の端辺に回転軸を有し、回転軸を中心に上側部6を回転させて開閉できるようになっている。閉じた状態から上側部6を回転させて開いて、葉Lを下側部4と上側部6との間に配置した後、上側部6を回転させて閉じる。これにより、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70と検出側ファイバオプティックプレート10との間に葉Lを挟み込んで配置できる。これにより、容易に葉Lの葉緑体の分布状態を把握することができる。
【0062】
図5Cに示す例では、上側部6の下面の両側に脚部8が取り付けられている。脚部8の上下方向のスライドにより、上側部6を下側部4に対して上下に動かして開閉を行うことができる
閉じた状態から上側部6を引き上げて開いて、葉Lを下側部4と上側部6との間に配置した後、上側部6を押し下げて閉じる。これにより、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70と検出側ファイバオプティックプレート10との間に葉Lを挟み込んで配置できる。これにより、容易に葉Lの葉緑体の分布状態を把握することができる。
【0063】
(光学検出装置を用いたシステム)
次に、画像センサを備えた光学検出装置を備えたシステムの説明を行う。図6は、画像センサが取り付けられた光学検出装置を備えたシステムの一例を模式的に示すブロック図である。
【0064】
上記の実施形態に係る光学検出装置2は、葉Lの色の変化というアナログデータを、より分かりやすい(緑と黄の対比から青と赤の対比)アナログデータに変換するものであった。
また、上記の通り、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70を採用することでファイバオプティックプレートの回転対称性を付与できるので、透過光学系に、どのように葉Lを挿入しても得られる画像に変化がないという効果を与えることができる。また、透過型光学系を用いることにより、外部の光源条件がどのようなものであれ(晴れの日も雨の日も)、同じ画像が得られる。また、人に分かりやすい青と赤色の違いに変換することにより、熟練度の違いもなくなる。
【0065】
図6に示す光学検出装置2では、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面側に画像センサ80を備える。画像センサ80の受光面は、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面に対向するように配置されている。これにより、これまで、使用者が検出側ファイバオプティックプレート10の出射面10b側から見ていた青色光及び赤色光が照射された葉Lの表皮面を、画像データ(電子データ)として得ることができる。また、AD変換された画像データを、無線または有線の通信を介して、サーバや携帯端末に送信する送信手段を備える。光学検出装置2に、送信手段を備えることもできるし、画像センサ80側に送信手段を備えることもできるし、画像センサを外部の送信手段に接続することもできる。
【0066】
図6に示すシステム100では、上記の実施形態に係る光学検出装置2と、光学検出装置2の検出側ファイバオプティックプレート10の出射面10bに受光面が対向するように配置された画像センサ80と、画像センサが取得した画像データを無線または有線で送信する送信手段と、送信手段から送信された画像データを受信する少なくともサーバ110または携帯端末120を含む制御手段と、を備える。
【0067】
画像データを携帯端末120に送信する場合には、携帯端末120で画像を表示することにより、遠隔地にいる関係者も容易に葉Lの葉緑体の分布状態を把握することができる。また、光学検出装置2の使用者が自分の携帯端末120を介して、画像データをサーバ110に送信する場合には、携帯端末120による位置情報を画像データに加えてサーバ110へ送信することもできる。
【0068】
サーバ110において、送信された画像データに基づいて、葉Lの葉緑体の分布状態を解析することができる。解析においては、既知の任意の画像処理プログラムやAIによる学習制御を用いることができる。これにより、より詳細な葉Lの葉緑体の分布状態の解析結果を使用者に提供できる。
【0069】
このような画像データを、外部のサーバ110に大量に蓄積し、ビッグデータとしてデータ解析を行えば、その畑において収穫量がどれくらいの見込みになるか、予測することができる。この予測を、例えば、使用者の携帯端末120に送信することができる。農作物の収穫量予測において、作物の葉の部分のクロロフィル分布状態は究極の先行指標といえる。
また、それにとどまらず、地域を超えた環境変化(例えば温暖化など)や特定の地域における特定の病害のアラート、またはビッグデータの解析結果を農作業者にフィードバックして、今見ている葉の状態からその農作物がどのような病害に侵されているかの情報提案もできる。規模が広がれば、オルタナティブデータとして、政府、企業、団体、個人に広く利用される可能性がある。
【0070】
以上のように、サーバ110において、送信された画像データまたは画像データに基づく解析データを蓄積し、統計的分析データを生成することにより、光学検出装置2で取得した画像データをより広い用途で有効活用できる。
これを実現するには、作業環境や作業人といった条件に左右されない画像データは、貴重な資産となり得るが、そのためには、上記のように、光源側ファイバオプティックプレート30、60、70により付与される回転対称性や、検出側ファイバオプティックプレート10によるS/N比の向上が重要になる。
【0071】
以上のように、不確定条件に左右されず、純粋にクロロフィルの分布状況を示した画像データは、解析用にも有用だが、農作業者がその場で見て判断する指標としても重要である。つまり、上記の特許文献3のように農作業者に余分な工程を追加させることはなく、農作業者は農作業者で、ビッグデータ解析者はビッグデータ解析者でそれぞれ仕事ができるという大きな効果を奏する。
【0072】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0073】
2 光学検出装置
4 下側部
6 上側部
8 脚部
10 検出側ファイバオプティックプレート
10a 入射面
10b 出射面
20 第1の光源
22 第2の光源
30 光源側ファイバオプティックプレート
30a 入射面
30b 出射面
40 第1のシリンドリカルレンズ
40a 出射面
42 第2のシリンドリカルレンズ
42a 出射面
50 第1の光源
50a 出射面
52 第2の光源
52a 出射面
60 光源側ファイバオプティックプレート
60a 入射面
60b 出射面
70 光源側ファイバオプティックプレート
70a 入射面
70b 出射面
80 画像センサ
100 システム
110 サーバ
120 携帯端末
L 葉
L1 他方の表皮面
L2 一方の表皮面
【要約】
【課題】 日照条件や葉の位置、使用者の熟練度といった不確定要素に影響を受けず、容易に葉の葉緑体の分布状態を作物の育成途中で随時、非破壊で把握できる光学検出装置及びこの光学検出装置を備えたシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】 検出側ファイバオプティックプレート10と、短波長域の可視光を出射し、光軸が検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して略平行に配置された第1の光源20、50と、長波長域の可視光を出射し、光軸が検出側ファイバオプティックプレート10の光軸に対して斜めに配置された第2の光源22と、を備え、第2の光源22の光軸と検出側ファイバオプティックプレート10の光軸とがなす角度θが、検出側ファイバオプティックプレート10の最大受光角αより大きくなっており、植物の葉Lを一方の表皮面L2が検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに接するように配置し、第1の光源20、50及び第2の光源22、52からの出射光が葉Lの他方の表皮面L1に入射し、葉Lの中を透過して一方の表皮面L2から検出側ファイバオプティックプレート10の入射面10aに到達する状態で、検出側ファイバオプティックプレート10の出射面側10bから視認することにより、葉Lの葉緑体の分布状態を把握する光学検出装置2及びこの光学検出装置2を備えたシステムを提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6