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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】管状体固定具
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20220418BHJP
   A61F 13/12 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61F13/02 A
A61F13/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017206636
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019076500
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 厚志
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-068844(JP,A)
【文献】実開昭59-002346(JP,U)
【文献】ベストプラクティス 医療関連機器圧迫創傷の予防と管理,日本,一般社団法人 日本褥瘡学会,2016年05月25日,87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
A61F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のシート状基材と前記シート状基材の一方の面に設けられた粘着剤層とからなる管状体固定具であって、
前記管状体固定具を皮膚に固定する皮膚固定部と、
前記皮膚固定部に連結し、管状体を巻いて固定する管状体固定部と、
前記皮膚固定部に連結し、かつ、前記管状体固定部とは隙間を挟んで対峙し、管状体の角度を調整する管状体角度調整部と、
を少なくとも備え、
前記管状体固定部は、前記隙間側に第1の切り欠き部を有し、前記管状体角度調整部よりも短い、管状体固定具。
【請求項2】
前記管状体固定部及び/又は前記管状体角度調整部の自由端側が、先細りになっている、請求項1に記載の管状体固定具。
【請求項3】
前記皮膚固定部と前記管状体固定部との連結部、及び/又は、前記皮膚固定部と前記管状体角度調整部の連結部に第2の切り欠き部を有する、請求項1又は2に記載の管状体固定具。
【請求項4】
前記第1の切り欠き部は、前記管状体固定部の長手方向の長さを1とするとき、前記皮膚固定部と前記管状体固定部との連結部から0.1~0.7の位置にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の管状体固定具。
【請求項5】
前記管状体は、経鼻用のカテーテルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の管状体固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ、カテーテル、カニューレ、ドレーン、コード等の管状体を体表面に固定するための管状体固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、薬剤投与、栄養管理、体液の排出、モニタリング等を目的として、管状体を体内や体外に留置することが行われている。この種の管状体は、その目的とする処置に応じて、数時間ないし数日間留置されることがある。この際、患者から管状体が脱落したり、逆に内部へ過度に挿入されたりしないように、管状体を体表面の所定の位置に確実に固定する必要がある。
【0003】
管状体は、その断面形状が略円形状のものが多く、通常の医療用テープ等を用いて、管状体を皮膚の上から横切るように皮膚上に固定するのみでは、固定安定性が悪いという問題があった。そこで、従来から、管状体を体表面に固定するために工夫された様々な固定具が開発されつつある。
【0004】
例えば、特許文献1には、粘着テープ片の長手方向に沿ってほぼ二等分するようにほぼ中央部まで切れ目を設けて台紙に仮着した注射器等の固定用粘着部材が開示されている。この固定用粘着部材は、二等分された片方を注射器等の固定物に巻き付けて、他方を人体に貼着固定することにより、安定的に固定できるものである。
【0005】
また、特許文献2には、シート状基材の一面に粘着剤層が形成され皮膚表面に貼付される皮膚貼付部片と、同様にシート状基材の一面に粘着剤層が形成され医療器具に貼付される医療器具貼付部片を有し、上記皮膚貼付部片と上記医療器具貼付部片が、上記皮膚貼付部片の粘着剤層と上記医療器具貼付部片の粘着剤層が互いに反対側を向くように並列した状態でその側辺部で連結されていることにより、体内に挿入された医療用チューブを容易かつ確実に固定することができる医療器具固定用テープに関する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、1枚のシート状基材に皮膚に固定する皮膚固定部と医療材料を固定する医療材料固定部とを備え、それぞれの固定部に異なる粘着層を設けることにより、構造が簡単で、皮膚と擦れることがなく、固定すべき医療材料の位置調整や交換時に容易に医療材料から剥がすことができ、操作がし易く、装着していても違和感がなく、更に経済性に優れた医療用粘着テープに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公昭53-52313号公報
【文献】実用新案登録第3198571号公報
【文献】特開2002-282300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
管状体は、その目的とする処置や患者の状態などに応じて、管状体が固定される部位が異なるため、凹凸のある部位に管状体の固定が必要な場合もある。前述のように、管状体を体表面に固定するための技術が多く開発されているが、固定される部位によっては、テープを管状体に巻き付ける時に、よれて皺になったり、固定中の患者の動作によって管状体が引っ張られたり、位置がずれたりする場合がある。また、固定する医療従事者の知識や経験により、固定方法に差異が生じる場合があり、統一した手技で固定することが求められる。
【0009】
そこで、本発明では、管状体への巻き付けが容易で、かつ、安定的に固定が可能な管状体固定具を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、前記課題を解決するために、管状体固定具について鋭意研究を行った結果、管状体へ巻き付ける部分の形態と、それ以外の部分の機能及び形態が重要であることを突き止め、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明では、まず、1枚のシート状基材と前記シート状基材の一方の面に設けられた粘着剤層とからなる管状体固定具であって、
前記管状体固定具を皮膚に固定する皮膚固定部と、
前記皮膚固定部に連結し、管状体を巻いて固定する管状体固定部と、
前記皮膚固定部に連結し、かつ、前記管状体固定部とは隙間を挟んで対峙し、管状体の角度を調整する管状体角度調整部と、
を少なくとも備え、
前記管状体固定部は、前記隙間側に第1の切り欠き部を有する、管状体固定具を提供する。
本技術に係る管状体固定具の前記管状体固定部及び/又は前記管状体角度調整部の自由端側は、先細りに形成することができる。
本技術に係る管状体固定具の前記皮膚固定部と前記管状体固定部との連結部、及び/又は、前記皮膚固定部と前記管状体角度調整部の連結部には、第2の切り欠き部を備えることができる。
本技術に係る管状体固定具の前記第1の切り欠き部は、前記管状体固定部の長手方向の長さを1とするとき、前記皮膚固定部と前記管状体固定部との連結部から0.1~0.7の位置に形成することができる。
本技術に係る管状体固定具を用いることができる管状体としては、経鼻用のカテーテルを挙げることができる。
【0012】
本発明の固定の対象となる「管状体」とは、管状の器具、部品等を総称するものであり、例えば、チューブ、カテーテル、カニューレ、ドレーン、医療機器のケーブルやコード等の管状の製品、部品、又は医療機器の一部を全て対象とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本技術に係る管状体固定具は、管状体への巻き付けが容易で、かつ、体表面への安定的な固定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術に係る管状体固定具の第1実施形態の六面図である。
図2】本技術に係る管状体固定具の第2実施形態の正面図である。
図3】管状体を管状体固定部で巻いて固定する方法を示す概念図である。
図4】本技術に係る管状体固定具の第3実施形態の正面図である。
図5】本技術に係る管状体固定具の第4実施形態の正面図である。
図6】本技術に係る管状体固定具の第5実施形態の正面図である。
図7】本技術に係る管状体固定具の第6実施形態の正面図である。
図8】本技術に係る管状体固定具の第7実施形態の正面図である。
図9】本技術に係る管状体固定具の第8実施形態の正面図である。
図10】本技術に係る管状体固定具の第9実施形態の正面図である。
図11】管状体角度調整部によって、管状体の角度を調整する方法を示す概念図である。
図12】本技術に係る管状体固定具の第10実施形態の正面図である。
図13】本技術に係る管状体固定具の第11実施形態の正面図である。
図14】本技術に係る管状体固定具の第12実施形態の背面図である。
図15】本技術に係る管状体固定具の第13実施形態の正面図である。
図16】本技術に係る管状体固定具を用いて経鼻用カテーテルを固定する方法を示す概念図である。
図17】本技術に係る管状体固定具を用いて腹腔ドレーンを固定する方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
<管状体固定具>
図1は、本技術に係る管状体固定具1の第1実施形態の六面図である。本技術に係る管状体固定具1は、1枚のシート状基材とその片面(背面)に設けられた粘着剤層Aとからなる。シート状基材に用いる材料としては特に限定されず、公知の管状体固定具に用いることができるシート状基材を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、不織布、編布、織布等の繊維シート、プラスチックフィルム、フォームシート、紙等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、同一又は異なる種類を複数組み合わせて使用してもよい。また、同一又は異なる種類をラミネートした積層構造のシートを使用してもよい。
【0017】
繊維シートの材料としては、公知の繊維シートに使用される材料を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、綿、ビスコースレーヨン、ポリノジック、銅アンモニアレーヨン、リヨセル等のセルロース系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維等が挙げられる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混紡して使用してもよい。
【0018】
プラスチックフィルムの材料としては、公知のプラスチックフィルムに使用される材料を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;シリコーン;等を挙げることができる。なお、これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0019】
フォームシートの材料としては、公知のフォームシートに使用される材料を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル、クロロプレンゴム、シリコーン等を挙げることができる。なお、これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0020】
紙としては、公知の管状体固定具に用いることができる紙を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、コート紙等が挙げられる。
【0021】
本技術に係る管状体固定具1の基材としては、皮膚に追従し得る柔軟性や、後述する剥離シート2からの剥がし易さ及び貼付のし易さの観点から、厚さが10~500μm(より好ましくは20~200μm)、単位面積当りの重さが10~150g/m(より好ましくは15~100g/m)であること好ましい。また、使用中に破断しないように、基材の引っ張り強度が10N/インチ以上であることが好ましく、30N/インチ以上であることが更に好ましい。
【0022】
シート状基材の下面には、皮膚に貼着するための粘着剤層Aが備えられている。本技術に係る管状体固定具1の粘着剤層Aに用いることができる材料は特に限定されず、公知の管状体固定具に用いることができる粘着剤材料を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、天然ゴム系、合成ゴム系等の感圧性粘着剤が挙げられる。なお、これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0023】
本技術に係る管状体固定具1の粘着剤層Aは、厚さが10~500μm(より好ましくは20~100μm)、塗工重量が10~500g/m(より好ましくは15~200g/m)の範囲であることが好ましい。また、粘着力は、フェノール樹脂板を用いて、JIS Z0237に準じた試験を行った際に、2~30N/インチであることが好ましく、より好ましくは5~10N/インチである。
【0024】
本技術に係る管状体固定具1の粘着剤層Aは、後述する各部位(皮膚固定部11、管状体固定部12及び管状体角度調整部13)において、その種類や性質の違う粘着剤を用いることも可能である。例えば、皮膚に直接触れる皮膚固定部11には、皮膚刺激や皮脂・汗への耐久性を考慮して粘着剤を選択し、管状体を固定する管状体固定部11には、固定強度や糊残りを考慮して粘着剤を選択し、皮膚固定部11に重ねて貼着する管状体角度調整部13には、基材面への粘着力を考慮して粘着剤を選択する等、その目的に応じて、後述する各部位において、種類や性質の異なる粘着剤を塗り分けることもできる。
【0025】
以上説明したシート状基材及び/又は粘着剤層Aには、本技術の効果を損なわない程度において、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、滑剤、顔料、染料、抗菌剤、生理活性物質などを添加、処理することも可能である。
【0026】
以下、1枚のシート状基材と前記シート状基材の一方の面に設けられた粘着剤層Aとからなる本技術に係る管状体固定具1の具体的な構成を説明する。本技術に係る管状体固定具1は、大別して、皮膚固定部11と、管状体固定部12と、管状体角度調整部13と、を備え、前記管状体固定部12には、第1の切り欠き部C1を備える。また、管状体固定具1には、第2切り欠き部C2、第3切り欠き部C3、剥離シート2等を備えることも可能である。以下、各部について、詳細に説明する。
【0027】
(1)皮膚固定部11
皮膚固定部11は、管状体固定具1を皮膚に固定する部分である。皮膚固定部11の形態は、管状体が固定される部位に応じて、例えば、円形、楕円形や、三角形、正方形、長方形、菱形等の多角形、これらの形状を適宜組み合わせた形状等にすることができる。具体的には、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、角丸略正方形形状とすることもできるし、図2に示す第2実施形態に係る管状体固定具1のように、略正方形形状とすることもできる。本技術では、特に、角の無い形態にすることが好ましい。角の無い円形、楕円形、角丸多角形、これらの形状を組み合わせた形状にすることで、皮膚から剥がれ難くすることができると共に、皮膚への貼着面積が小さくなるため、皮膚への刺激の低減効果を発揮することができる。
【0028】
皮膚固定部11の面積は、管状体が固定される部位に応じて特定することができる。例えば、管状体として経鼻用のカテーテルを固定する場合、皮膚固定部11は、鼻梁から鼻尖にかける部分に固定されるため、1~12cmの面積とすることが好ましく、2~10cmの面積とすることが更に好ましい。また、例えば、体部に用いる管状体(腹腔ドレーン、胸腔ドレーン、尿道用カテーテル、静脈カテーテル等)を固定する場合、皮膚固定部11は体部に固定されるため、5~60cmの面積とすることが好ましく、10~30cmの面積とすることが更に好ましい。
【0029】
また、後述する管状体固定部12及び管状体角度調整部13との関係では、皮膚固定部11の面積と、管状体固定部12及び管状体角度調整部13の合計面積とが、1:1~4になるようにすることが好ましい。このような面積比率にすることにより、管状体固定具1の皮膚からの剥がれを防止し、より安定的に体表面へ固定することができる。
【0030】
(2)管状体固定部12
管状体固定部12は、前記皮膚固定部11に連結し、管状体を巻いて固定する部分である。また、管状体固定部12は、後述する管状体角度調整部13と隙間を挟んで対峙した状態で備えられている。管状体固定部12と管状体角度調整部13との間に隙間を備えることで、管状体固定部12を管状体に巻く際に、管状体角度調整部13によって、その操作が妨げられることを防止することができる。そして、この管状体固定部12には、前記隙間側に第1の切り欠き部C1が備えられている。
【0031】
図3は、管状体を管状体固定部12で巻いて固定する方法を示す概念図である。管状体固定部12の第1の切り欠き部C1を管状体に当接させた状態で(図3A参照)、管状体固定部12を管状体の下から通して巻き付けることにより(図3B参照)、管状体を固定することができる。本技術では、第1に切り欠き部C1が、管状体への巻き付け起点となるため、医療従事者の手技の如何に関わらず、同位置での再現性の高い固定が可能となる。また、切り欠き部C1が管状体の外壁面に沿うため、巻き付け時に管状体固定部12にかかるテンションを緩和し、皺や引き攣れの発生を防止することができ、見た目良く、かつ、スムーズに管状体固定部12を管状体に巻くことができる。その結果、安定性の高い固定が可能となる。
【0032】
管状体固定部12の形態は、管状体に巻き付けることができれば特に限定されないが、巻きつけやすさの観点で、帯状の形態とすることが好ましい。管状体固定部12の長手方向の長さ(図1中の符号L1参照、以下同じ)は、2~10cmの範囲にすることが好ましく、3~7cmの範囲にすることが更に好ましい。管状体固定部12の長手方向の長さをこの範囲にすることにより、固定力を向上させることができ、固定や剥離の操作性を向上させることができる。
また、管状体固定部12の幅方向の長さ(図1中の符号L2参照)は、0.5~3cmの範囲にすることが好ましく、0.8~2cmの範囲にすることが更に好ましい。管状体固定部12の幅方向の長さをこの範囲にすることにより、固定力を向上させることができ、固定や剥離の操作性を向上させることができる。
【0033】
管状体固定部12の前記皮膚固定部11と連結しない自由端側は、図4に示す第3実施形態に係る管状体固定具1のように、平端にすることもできるが、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、先細りにすることが好ましい。先細りにすることで、剥離の起点になるため、管状体や後述する剥離シート2からの剥離の操作性を向上させることができる。先細りの形状は、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、外側(後述する管状体角度調整部13と反対側)に向かって先細りにした形態に限定されない。例えば、図5に示す第4実施形態に係る管状体固定具1のように、後述する管状体角度調整部13側に向かって先細りにしたり、図6に示す第5実施形態に係る管状体固定具1のように、真ん中に向かって先細りにしたりすることも可能である。
【0034】
管状体固定部12と後述する管状体角度調整部13との関係においては、例えば、図7に示す第6実施形態に係る管状体固定具1のように、管状体固定部12と管状体角度調整部13を同じ長さにすることもできるが、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、管状体角度調整部13よりも、管状体固定部12を短くすることが好ましい。後述する管状体角度調整部13は、管状体の角度を調節するために、余裕を持った長さにすることが好ましいが、一方で、管状体固定部12は、固定や剥離の操作性の観点から、必要最低限の長さにすることが好ましいからである。
【0035】
第1の切り欠き部C1の形態は、例えば、半円状、半楕円形状や、三角形(図8の第7実施形態参照)、正方形、長方形(図9の第8実施形態参照)等の多角形状等にすることができるが、管状体の外壁面への沿わせ易さの観点で、半円状、半楕円形状等の曲線で輪郭を形成した形状で形成することが好ましい。
管状体固定部12における第1切り欠き部C1の位置は、管状体固定部12の長手方向の長さを1とするとき、前記皮膚固定部11と管状体固定部12との連結部から0.1~0.7の位置にすることが好ましく、0.1~0.5の位置にすることが更に好ましい。0.1以上の位置にすることで、管状体の巻き付け部と前記皮膚固定部11とが接近しすぎるのを防止し、管状体固定部12を管状体に巻き付ける際や管状体固定時に、前記皮膚固定部11の浮きを防止することができる。また、0.7以下の位置にすることで、管状体固定部12に管状体を固定するための十分な面積を確保することができる。
【0036】
前記皮膚固定部11と管状体固定部12との連結部は、図10に示す第9実施形態に係る管状体固定具1のように、略直線的にすることもできるが、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、第2の切り欠き部C2を備えることもできる。第2の切り欠き部C2を備えることで、巻き付け時に管状体固定部12や皮膚固定部11にかかるテンションを緩和し、皺や引き攣れの発生を防止することができ、見た目良く、かつ、スムーズに管状体固定部12を管状体に巻くことができる。その結果、安定性の高い固定が可能となる。
第2の切り欠き部C2の形態は、例えば、半円状、半楕円形状や、三角形、正方形、長方形等の多角形状等の形態とできるが、管状体の外壁面への沿わせ易さの観点で、半円状、半楕円形状等の曲線で輪郭を形成した形状で形成することが好ましい。
【0037】
(3)管状体角度調整部13
管状体角度調整部13は、前記皮膚固定部11に連結し、管状体の角度を調整する部分である。また、管状体角度調整部13は、前記管状体固定部12とは隙間を挟んで対峙した状態で備えられている。管状体固定部12と管状体角度調整部13との間に隙間を備えることで、管状体固定部12を管状体に巻く際に、管状体角度調整部13が、その操作を妨げるのを防止することができる。
【0038】
図11は、管状体角度調整部13によって、管状体の角度を調整する方法を示す概念図である。前記管状体固定部12を管状体に巻いて固定した後、管状体角度調整部13を、管状体の下を通して、管状体を下から支えるように所望の角度に調整する(図11A参照)。そして、管状体が所望の角度になるように、管状体角度調整部13の前記皮膚固定部11と連結しない自由端側を、前記皮膚固定部11に重ねて貼着させることで(図11B参照)、管状体の角度を調整することができる。
【0039】
本技術では、管状体の位置や角度を調整することができるため、患者への負担を最小限に抑える位置・角度で、管状体を固定することができる。例えば、管状体が経鼻用のカテーテルである場合、カテーテルが鼻孔や鼻翼に当たらない位置に維持することができるため、潰瘍発生のリスクを低減することができる。
また、管状体角度調整部13は、前記管状体固定部12と交差して重なるように皮膚固定部11の上に貼着されるため、管状体をより強固に固定することができ、管状体に不意な引き抜きの力がかかっても、管状体の抜去を防止できる効果もある。
【0040】
管状体角度調整部13の形態は、管状体の角度を調整することができれば特に限定されないが、操作性の観点で、帯状の形態とすることが好ましい。管状体角度調整部13の長手方向の長さ(図1中の符号L3参照、以下同じ)は、2~10cmの範囲にすることが好ましく、3~7cmの範囲にすることが更に好ましい。管状体角度調整部13の長手方向の長さをこの範囲にすることにより、管状体の角度調整に必要な十分な長さを確保し、固定力を向上させることができ、さらに固定や剥離の操作性を向上させることができる。
また、管状体角度調整部13の幅方向の長さ(図1中の符号L4参照)は、0.5~3cmの範囲にすることが好ましく、0.8~2cmの範囲にすることが更に好ましい。管状体角度調整部13の幅方向の長さをこの範囲にすることにより、固定力を向上させることがで、固定や剥離の操作性を向上させることができる。
【0041】
管状体角度調整部13の前記皮膚固定部11と連結しない自由端側は、図4に示す第3実施形態に係る管状体固定具1のように、平端にすることもできるが、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、先細りにすることが好ましい。先細りにすることで、剥離の起点になるため、管状体や後述する剥離シート2からの剥離の操作性を向上させることができる。先細りの形状は、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、外側(管状体固定部12と反対側)に向かって先細りにした形態に限定されない。例えば、図5に示す第4実施形態に係る管状体固定具1のように、管状体固定部12側に向かって先細りにしたり、図6に示す第5実施形態に係る管状体固定具1のように、真ん中に向かって先細りにしたりすることも可能である。
なお、各図において、管状体固定部12と管状体角度調整部13のそれぞれの自由端側の形状は、管状体固定部12と管状体角度調整部13との隙間のラインに対して略左右対称の形態を例示しているが、非対称であってもよい。例えば、管状体固定部12の自由端側を平坦とし、管状体角度調整部13の自由端側を先細りにすることも自由である。
【0042】
前記管状体固定部12と管状体角度調整部13との関係においては、例えば、図7に示す第6実施形態に係る管状体固定具1のように、管状体固定部12と管状体角度調整部13を同じ長さにすることもできるが、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、管状体固定部12よりも、管状体角度調整部13を長くすることが好ましい。管状体固定部12は、固定や剥離の操作性の観点から、必要最低限の長さにすることが好ましいが、一方で、管状体角度調整部13は、管状体の角度を調節するために、余裕を持った長さにすることが好ましいからである。
【0043】
前記皮膚固定部11と管状体角度調整部13との連結部は、図10に示す第9実施形態に係る管状体固定具1のように、略直線的にすることもできるが、図1に示す第1実施形態に係る管状体固定具1のように、第2の切り欠き部C2を備えることもできる。第2の切り欠き部C2を備えることで、管状体の角度を調整する際に、管状体角度調整部13や皮膚固定部11にかかるテンションを緩和し、皺や引き攣れの発生を防止することができ、見た目良く、かつ、スムーズに管状体の角度を調整することができる。その結果、安定性の高い固定が可能となる。
【0044】
管状体角度調整部13には、図12に示す第10実施形態に係る管状体固定具1のように、管状体固定部12との隙間側に第3の切り欠き部C3を備えることも可能である。管状体角度調整部13に第3の切り欠き部C3を備えることで、管状体の角度を調整する際に、管状体の外壁面に沿わせることができ、皺や引き攣れの発生を防止することができ、見た目良く、かつ、スムーズに管状体の角度を調整することができる。その結果、安定性の高い固定が可能となる。
【0045】
また、図13に示す第11実施形態に係る管状体固定具1のように、管状体固定部12と管状体角度調整部13の長手方向の長さを同一にし、かつ、管状体角度調整部13に第3の切り欠き部C3を備えることで、管状体を固定する部位に応じて、左右のどちらか一方の帯状体を管状体固定部12とし、もう一方の帯状体を管状体角度調整部13として用いることも可能である。即ち、どちらか一方を管状体固定部12として用いた場合、他方を管状体角度調整部13として用い、管状体を固定することができる。
【0046】
逆に、管状体角度調整部13に第3の切り欠き部C3を備えないことで、管状体固定部12のみに設けられた第1の切り欠き部C1が目印となり、管状体角度調整部13を誤って管状体に巻き付けてしまう等の間違いを防止し、医療従事者の手技の如何に関わらず、再現性の高い固定が可能となる。また、管状体角度調整部13に第3の切り欠き部C3を備える場合であっても、図示しないが、管状体固定部12の第1の切り欠き部C1の位置と、管状体角度調整部13の第3の切り欠き部C3の位置を、ずらして配置することで、管状体固定部12と管状体角度調整部13とを区別することも可能である。
【0047】
管状体角度調整部13に第3の切り欠き部C3を備える場合、その形態は、例えば、半円状、半楕円形状や、三角形(図8の第7実施形態の第1の切り欠き部C1の形態を参照)、正方形、長方形(図9の第8実施形態の第1の切り欠き部C1の形態を参照)等の多角形状等の形態とできるが、管状体の外壁面への沿わせ易さの観点で、半円状、半楕円形状等の曲線で輪郭を形成した形状で形成することが好ましい。
【0048】
管状体角度調整部13に第3の切り欠き部C3を備える場合、管状体角度調整部13における第3の切り欠き部C3の位置は、管状体角度調整部13の長手方向の長さを1とするとき、前記皮膚固定部11と管状体角度調整部13との連結部から0.1~0.7の位置にすることが好ましく、0.1~0.5の位置にすることが更に好ましい。0.1以上の位置にすることで、管状体と管状体角度調整部13との接触部分と前記皮膚固定部11とが接近しすぎるのを防止し、管状体固定時に、前記皮膚固定部11の浮きを防止することができる。また、0.7以下の位置にすることで、管状体の角度の調整に十分な面積を確保することができる。
【0049】
以上説明した管状体固定部12及び管状体角度調整部13の位置関係は、各図において上面視右側に管状体固定部12を、上面視左側に管状体角度調整部13を、それぞれ配置しているが、これに限定されず、管状体を固定する部位に応じて、自由に変更することができる。例えば、図示しないが、上面視左側に管状体固定部12を、上面視右側に管状体角度調整部13を、それぞれ配置することも可能である。
【0050】
(4)剥離シート2
本技術に係る管状体固定具1には、粘着剤層を被覆する剥離シート2を備えることができる。本技術に係る管状体固定具1に設ける剥離シート2は、例えば、管状体固定具1の粘着剤層を全体的に一枚の剥離シート2で被覆することもできるが、本技術では、特に、図14の背面図に示す第12実施形態のように、皮膚固定部11を被覆する第1剥離シート21と、管状体固定部12を被覆する第2剥離シート22と、管状体角度調整部13を被覆する第3剥離シート23と、を含む剥離シート2で粘着剤層を被覆することが好ましい。
剥離シート2を第1剥離シート21、第2剥離シート22及び第3剥離シート23に分けることにより、例えば、まず、第1剥離シート21のみを剥離して、皮膚固定部11を皮膚に固定し、次に、第2剥離シート22を剥離して、管状体固定部12を用いて管状体を固定し、その後、第3剥離シート23を剥離して、管状体角度調整部13を用いて管状体の角度を調整することができる。このように、剥離シート2を3以上に分けて剥離できるようにすることで、管状体固定具1を貼付する際に折り目が付いて皺になったり、粘着剤層同士が自己接着を起こして使用不能になったりすることを防止することができる。
【0051】
図15は、本技術に係る管状体固定具1の第13実施形態の正面図である。本技術に係る管状体固定具1に剥離シート2を備える場合、前述した図14に示す第12実施形態に係る管状体固定具1のように、各部位(皮膚固定部11、管状体固定部12及び管状体角度調整部13)と、各剥離シート2(第1剥離シート21、第2剥離シート22及び第3剥離シート23)とを、同一の形状にすることもできるが、図15に示す第13実施形態に係る管状体固定具1のように、各剥離シート2(第1剥離シート21、第2剥離シート22及び第3剥離シート23)を、各部位(皮膚固定部11、管状体固定部12及び管状体角度調整部13)よりも大きく形成することも可能である。このような形状にすることで、剥離シート2からの剥離性を向上させることができる。
【0052】
以上説明した本技術に係る管状体固定具1は、皮膚へ固定するための皮膚固定部11に、管状体を固定するための管状体固定部12と、管状体の角度を調整するための管状体角度調整部13と、が連結して一体化された構造であるため、複数のテープ等を用いる必要がなく、容易に、かつ、安定的に、管状体を固定することができる。
また、本技術に係る管状体固定具1は、様々な形態の管状体に用いることができる。例えば、経鼻用のカテーテル、腹腔ドレーン、胸腔ドレーン、尿道用カテーテル、静脈カテーテル等に用いることができる。
【0053】
<使用方法>
以下、本技術に係る管状体固定具1を用いて管状体を固定する方法について、経鼻用カテーテル及び腹腔ドレーンを例示して説明する。
【0054】
(1)経鼻用カテーテルの固定方法
図16は、本技術に係る管状体固定具1を用いて経鼻用カテーテルを固定する方法を示す概念図である。まず、皮膚固定部11を、患者の鼻梁から鼻尖にかける部分に固定する(図16A参照)。次に、管状体固定部12の第1の切り欠き部C1を管状体に当接させた状態で(図3A参照)、管状体固定部12を管状体の下から通して巻き付けることにより(図3B参照)、管状体を固定する(図16B参照)。最後に、管状体角度調整部13を、管状体の下を通して、管状体を下から支えるように所望の角度に調整した上で(図11A参照)、管状体角度調整部13の皮膚固定部11と連結しない自由端側を、鼻梁から鼻尖にかけて貼着された皮膚固定部11の上に重ねて貼着させることで(図11B参照)、管状体の角度を調整する(図16C参照)。
【0055】
(2)腹腔ドレーンの固定方法
図17は、本技術に係る管状体固定具1を用いて腹腔ドレーンを固定する方法を示す概念図である。まず、皮膚固定部11を、患者の腹部に固定する(図17A参照)。次に、管状体固定部12の第1の切り欠き部C1を管状体に当接させた状態で(図3A参照)、管状体固定部12を管状体の下から通して巻き付けることにより(図3B参照)、管状体を固定する(図17B参照)。最後に、管状体角度調整部13を、管状体の下を通して、管状体を下から支えるように所望の角度に調整した上で(図11A参照)、管状体角度調整部13の皮膚固定部11と連結しない自由端側を、腹部に貼着された皮膚固定部11の上に重ねて貼着させることで(図11B参照)、管状体の角度を調整する(図17C参照)。
【符号の説明】
【0056】
1 管状体固定具
11 皮膚固定部
12 管状体固定部
13 管状体角度調整部
C1 第1の切り欠き部
C2 第2の切り欠き部
C3 第3の切り欠き部
2 剥離シート
21 第1剥離シート
22 第2剥離シート
23 第3剥離シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17