(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】医療用コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/12 20060101AFI20220418BHJP
A61M 39/10 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61M39/12
A61M39/10 100
(21)【出願番号】P 2018007253
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】衣川 雄規
(72)【発明者】
【氏名】石井 翔
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表平9-508037(JP,A)
【文献】国際公開第99/53981(WO,A1)
【文献】特表2016-537180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0213690(US,A1)
【文献】特表平5-507342(JP,A)
【文献】特開昭62-281962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/12
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに組み付けられるコネクタ本体と締付キャップとの間でカテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、カテーテルに後付け可能な医療用コネクタであって、
前記コネクタ本体には3mm以下の外径のカテーテルが外挿装着可能とされたポート部が設けられている一方、
該コネクタ本体と前記締付キャップとの間には相対的な回転作動を軸方向への移動に変換して180度以下の相対回転により該締付キャップを該コネクタ本体に対して軸方向へ接近移動させて該ポート部に外挿装着されたカテーテルを挟む固定位置に導く締付機構と、
かかる固定位置において該締付キャップの該コネクタ本体に対する戻り方向への相対回転を阻止するロック機構と
を、有
しており、
該コネクタ本体と該締付キャップには、何れも、互いに直交する2方向の外寸が異ならされた扁平部分が設けられており、互いの該扁平部分の長軸方向が異ならされた相対位置から半周以下の相対回転によって互いの該長軸方向が合致した状態で該コネクタ本体と該締付キャップとが前記固定位置とされることを特徴とする医療用コネクタ。
【請求項2】
互いに組み付けられるコネクタ本体と締付キャップとの間でカテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、カテーテルに後付け可能な医療用コネクタであって、
前記コネクタ本体には3mm以下の外径のカテーテルが外挿装着可能とされたポート部が設けられている一方、
該コネクタ本体と前記締付キャップとの間には相対的な回転作動を軸方向への移動に変換して180度以下の相対回転により該締付キャップを該コネクタ本体に対して軸方向へ接近移動させて該ポート部に外挿装着されたカテーテルを挟む固定位置に導く締付機構と、
かかる固定位置において該締付キャップの該コネクタ本体に対する戻り方向への相対回転を阻止するロック機構と
を、有
しており、
該ロック機構が、該コネクタ本体の外周面に形成された乗り越え突部と該締付キャップに設けられた弾性片とを含んで構成されており、該コネクタ本体と該締付キャップとの相対回転により該固定位置に至る前に該弾性片が弾性変形して該乗り越え突部を乗り越えるようになっていることを特徴とする医療用コネクタ。
【請求項3】
互いに組み付けられるコネクタ本体と締付キャップとの間でカテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、カテーテルに後付け可能な医療用コネクタであって、
前記コネクタ本体には3mm以下の外径のカテーテルが外挿装着可能とされたポート部が設けられている一方、
該コネクタ本体と前記締付キャップとの間には相対的な回転作動を軸方向への移動に変換して180度以下の相対回転により該締付キャップを該コネクタ本体に対して軸方向へ接近移動させて該ポート部に外挿装着されたカテーテルを挟む固定位置に導く締付機構と、
かかる固定位置において該締付キャップの該コネクタ本体に対する戻り方向への相対回転を阻止するロック機構と
を、有
しており、
カテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、該コネクタ本体における該ポート部の外周面と該締付キャップの内周面との挟み込み部分が、少なくとも一方において軸方向の傾斜面とされていることを特徴とする医療用コネクタ。
【請求項4】
前記締付機構と前記ロック機構とが別個に設けられている請求項1
~3の何れか1項に記載の医療用コネクタ。
【請求項5】
前記締付機構と前記ロック機構とが、前記コネクタ本体の軸方向で離れた位置に設けられている請求項
4に記載の医療用コネクタ。
【請求項6】
前記締付機構が、周方向螺旋状に延びる凹溝部を含んで構成されており、該凹溝部における螺旋のリード角が15度~45度とされている請求項1~
5の何れか1項に記載の医療用コネクタ。
【請求項7】
前記締付機構が、前記コネクタ本体の外周面と前記締付キャップの内周面との一方に設けられて周方向螺旋状に延びる凹溝部と他方に設けられて該凹溝部に係合する凸状部とを含んで構成されており、該凹溝部と該凸状部がそれぞれ該コネクタ本体および該締付キャップにおいて軸直角方向で対向する位置に一対設けられている請求項1~
6の何れか1項に記載の医療用コネクタ。
【請求項8】
前記締付機構により前記締付キャップの前記コネクタ本体に対する回転が案内され始める案内開始位置において、前記ポート部に外挿装着されたカテーテルの外周面に対して該締付キャップが押し付けられるようになっている請求項1~7の何れか1項に記載の医療用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルの端部に対して後付け装着可能な医療用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の検査や治療などに用いられる医療用具の一種としてカテーテルが知られている。また、カテーテルでは、別のカテーテルやシリンジなどを接続して用いることが多いことから、それらを接続可能にする医療用コネクタが、カテーテルの端部に装着されていることも多い。
【0003】
ところで、カテーテルは、検査や治療などの処置に適するように長さを適宜に設定されることが望ましい。そこで、例えば特開昭54-21087号公報(特許文献1)や特開2006-334302号公報(特許文献2)には、例えば適切な長さに切断したカテーテルの端部へ後付け装着できる医療用コネクタが提案されている。
【0004】
ところが、これら特許文献1,2に記載の医療用コネクタは、何れも、コネクタ本体へ締付キャップを回転させてねじ締めすることでカテーテルに装着されるようになっていることから、何周もねじ回転させる操作が必要であった。そのために、装着の操作が面倒で時間もかかるだけでなく、ねじ回転力がカテーテルの端部に及ぼされることで、カテーテルの端部がねじられてしまい、カテーテルが変形や損傷するおそれもあった。
【0005】
加えて、コネクタ本体と締付キャップとのねじ締め力によって、中空のカテーテルを外周面から締め付けることで、カテーテル端部へ装着されることから、カテーテルの端部に狭窄や潰れの変形が生じやすかった。そのために、カテーテルに対して強い締付固定力を安定して得ることが難しく、また、カテーテル内の流体流路が狭窄等して流体流動特性に悪影響が及ぼされるおそれもあった。
【0006】
特に、医療用カテーテルは薄肉であり、人体の内腔に差し入れられる、例えば外径が3mm以下のカテーテルでは、上述の如き従来構造の医療用コネクタの装着に際してのカテーテルのねじれや狭窄などの変形の問題や締付固定力の安定性の問題が、一層大きな問題となりやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭54-21087号公報
【文献】特開2006-334302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、カテーテルの端部に対して容易に且つ安定して後装着することが可能とされる、新規な構造の医療用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、互いに組み付けられるコネクタ本体と締付キャップとの間でカテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、カテーテルに後付け可能な医療用コネクタであって、前記コネクタ本体には3mm以下の外径のカテーテルが外挿装着可能とされたポート部が設けられている一方、該コネクタ本体と前記締付キャップとの間には相対的な回転作動を軸方向への移動に変換して180度以下の相対回転により該締付キャップを該コネクタ本体に対して軸方向へ接近移動させて該ポート部に外挿装着されたカテーテルを挟む固定位置に導く締付機構と、かかる固定位置において該締付キャップの該コネクタ本体に対する戻り方向への相対回転を阻止するロック機構とを、有しており、該コネクタ本体と該締付キャップには、何れも、互いに直交する2方向の外寸が異ならされた扁平部分が設けられており、互いの該扁平部分の長軸方向が異ならされた相対位置から半周以下の相対回転によって互いの該長軸方向が合致した状態で該コネクタ本体と該締付キャップとが前記固定位置とされるものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた医療用コネクタでは、カテーテルの端部を締付キャップとコネクタ本体との内外周面間で挟んで固定することから、カテーテルの狭窄や潰れを回避しつつカテーテルに対して安定して締付固定力を及ぼすことが可能になる。また、コネクタ本体と締付キャップとの180度以下の回転操作で、カテーテルへの装着が実現されることから、従来のねじ構造に比して、カテーテルへの装着に際してのカテーテルのねじれが軽減されると共に、カテーテルへの着脱を速やかに操作することができる。
【0012】
また、本態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、カテーテルへの締付前状態と締付状態とを、コネクタ本体および締付キャップの各扁平部分の周方向における一致と不一致により、外観から容易に把握できる。また、コネクタ本体と締付キャップに設けた扁平部分へ入力することで、回転操作の作業性の向上も図られ得る。
本発明の第2の態様は、互いに組み付けられるコネクタ本体と締付キャップとの間でカテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、カテーテルに後付け可能な医療用コネクタであって、前記コネクタ本体には3mm以下の外径のカテーテルが外挿装着可能とされたポート部が設けられている一方、該コネクタ本体と前記締付キャップとの間には相対的な回転作動を軸方向への移動に変換して180度以下の相対回転により該締付キャップを該コネクタ本体に対して軸方向へ接近移動させて該ポート部に外挿装着されたカテーテルを挟む固定位置に導く締付機構と、かかる固定位置において該締付キャップの該コネクタ本体に対する戻り方向への相対回転を阻止するロック機構とを、有しており、該ロック機構が、該コネクタ本体の外周面に形成された乗り越え突部と該締付キャップに設けられた弾性片とを含んで構成されており、該コネクタ本体と該締付キャップとの相対回転により該固定位置に至る前に該弾性片が弾性変形して該乗り越え突部を乗り越えるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、上記[0010]に記載の効果に加えて、締付キャップのコネクタ本体に対する回転に伴って弾性片が乗り越え突部を乗り越えて、弾性片と乗り越え突部とが相互に係合することで、ロック機構において締付キャップのコネクタ本体に対する締付方向の回転を許容しつつ戻り方向の回転が阻止され得る。
本発明の第3の態様は、互いに組み付けられるコネクタ本体と締付キャップとの間でカテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、カテーテルに後付け可能な医療用コネクタであって、前記コネクタ本体には3mm以下の外径のカテーテルが外挿装着可能とされたポート部が設けられている一方、該コネクタ本体と前記締付キャップとの間には相対的な回転作動を軸方向への移動に変換して180度以下の相対回転により該締付キャップを該コネクタ本体に対して軸方向へ接近移動させて該ポート部に外挿装着されたカテーテルを挟む固定位置に導く締付機構と、かかる固定位置において該締付キャップの該コネクタ本体に対する戻り方向への相対回転を阻止するロック機構とを、有しており、カテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、該コネクタ本体における該ポート部の外周面と該締付キャップの内周面との挟み込み部分が、少なくとも一方において軸方向の傾斜面とされているものである。
本態様に従う構造とされた医療コネクタによれば、上記[0010]に記載の効果に加えて、軸方向の傾斜面によってポート部と締付キャップとが、カテーテルの周壁を内外に挟んで軸方向で対向位置される。それ故、コネクタ本体と締付キャップとの相対回転に伴い締付機構で生ぜしめられる軸方向力が、カテーテルの端部周壁に対して内外周面間での挟み込み力として一層効率的に作用せしめられ得る。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記第1~第3の何れかの態様に係る医療用コネクタにおいて、前記締付機構と前記ロック機構とが別個に設けられているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、コネクタ本体と締付キャップにおいて締付機構を構成する部分とロック機構を構成する部分の形状や変形剛性などを各別に設定することができることから、設計自由度の向上が図られ得る。
【0015】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様に係る医療用コネクタにおいて、前記締付機構と前記ロック機構とが、前記コネクタ本体の軸方向で離れた位置に設けられているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、コネクタ本体と締付キャップにおいて締付機構を構成する部分とロック機構を構成する部分とを、例えば相互間の応力や変形の伝達なども軽減乃至は回避するなどして、より高い設計自由度をもって形成することが可能になる。
【0017】
本発明の第6の態様は、前記第1~第5の何れかの態様に係る医療用コネクタにおいて、前記締付機構が、周方向螺旋状に延びる凹溝部を含んで構成されており、該凹溝部における螺旋のリード角が15度~45度とされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、締付機構を構成する凹溝部の螺旋のリード角が適切な範囲内に設定されることにより、コネクタ本体に対する締付キャップの回転操作力の低減と軸方向の移動量の確保との両立がより良好に図られ得る。
【0019】
本発明の第7の態様は、前記第1~第6の何れかの態様に係る医療用コネクタにおいて、前記締付機構が、前記コネクタ本体の外周面と前記締付キャップの内周面との一方に設けられて周方向螺旋状に延びる凹溝部と他方に設けられて該凹溝部に係合する凸状部とを含んで構成されており、該凹溝部と該凸状部がそれぞれ該コネクタ本体および該締付キャップにおいて軸直角方向で対向する位置に一対設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、締付機構を構成する凹溝部と凸状部とが、コネクタ本体と締付キャップとにおいて軸直角方向で対向する位置に一対設けられていることから、コネクタ本体に対して締付キャップが回転して軸方向に移動する際に、両部材が相対的に傾動することが抑制されて、力学的に安定した締付作用が発揮され得る。
【0023】
本発明の第8の態様は、前記第1~第7の何れかの態様に係る医療用コネクタにおいて、前記締付機構により前記締付キャップの前記コネクタ本体に対する回転が案内され始める案内開始位置において、前記ポート部に外挿装着されたカテーテルの外周面に対して該締付キャップが押し付けられるようになっているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、締付機構に従って締付キャップがコネクタ本体に対して回転し始める段階で、既に締付キャップがカテーテルの外周面に押し付けられていることから、かかる段階から締付キャップを回転させることで、180度以下の少ない回転であってもカテーテルがより確実に締付キャップとコネクタ本体との間で挟み込まれて保持され得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明に従う構造とされた医療用コネクタでは、カテーテルの端部を内外周面間で挟むことにより、カテーテルに対して、狭窄や潰れを回避しつつ安定して装着され得る。また、コネクタ本体と締付キャップとの少ない回転操作で、カテーテルへ容易に装着することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての医療用コネクタを示す斜視図であって、締付キャップがコネクタ本体に対する固定位置にある状態を示す図。
【
図6】
図1に示された医療用コネクタを構成する締付キャップの斜視図であって、カテーテルの端部に外挿される以前の単品の状態で示す図。
【
図7】
図1に示された医療用コネクタにおいて締付キャップがコネクタ本体に対する案内開始位置にある状態を示す正面図。
【
図8】
図7に示された医療用コネクタの縦断面図であって、
図4に対応する図。
【
図11】本発明の第2の実施形態としての医療用コネクタを示す斜視図であって、締付キャップがコネクタ本体に対する固定位置にある状態を示す図。
【
図16】
図11に示された医療用コネクタにおいて締付キャップがコネクタ本体に対する案内開始位置にある状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0030】
先ず、
図1~5には、本発明の第1の実施形態としての医療用コネクタ10が、カテーテル12の端部に固定されている状態が示されている。このカテーテル12の長さ方向一方の端部(先端側端部)は患者の体内に挿入されているとともに、例えば切断されるなどして長さが調節されたカテーテル12の長さ方向他方の端部(基端側端部)に対して、医療用コネクタ10が後付固定されている。そして、かかる医療用コネクタ10は基端に接続ポート14を備えており、当該接続ポート14に図示しないシリンジなどの外部流路が接続されることで、医療用コネクタ10およびカテーテル12を通じて患者の体内に薬液などが注入されたり、患者の体内から血液などが吸引されたりするようになっている。なお、以下の説明において、軸方向とは、医療用コネクタ10を構成する締付キャップ16およびコネクタ本体18の中心軸方向となる
図2中の左右方向をいう。また、先端側とは、医療用コネクタ10に対してカテーテル12が接続される
図2中の左側をいう一方、基端側とは、医療用コネクタ10に対して外部流路が接続される
図2中の右側をいう。
【0031】
より詳細には、カテーテル12は、軟質の合成樹脂により形成されるチューブにより構成されており、即ち内周面13aと外周面13bを備える筒状の周壁13を備えて、当該周壁13が所定の長さ寸法を有している。このカテーテル12は、例えば治療や検査に際して患者の体内や脳の血管、脊髄などに挿入されるカテーテルであって、外径寸法が3mm以下の細径のカテーテルとされている。かかるカテーテル12の先端側端部が従来公知の手技により患者の体内に挿入されているとともに、基端側端部に医療用コネクタ10が固定されるようになっている。
【0032】
この医療用コネクタ10は、全体として略筒状とされており、先端側に位置する略筒状の締付キャップ16と基端側に位置する略筒状のコネクタ本体18とが軸方向で相互に直列的に連結することで構成されている。
【0033】
すなわち、締付キャップ16は、
図6にも示されるように、中央に軸方向に貫通する内孔20を有する略筒状の周壁部22を備えており、当該内孔20に対してカテーテル12の基端側の端部分が挿通されるようになっている。すなわち、この内孔20の内径寸法は、軸方向で略一定とされており、カテーテル12の外径寸法と略等しいか、僅かに大きくされている。本実施形態では、内孔20における先端部分が軸方向に略ストレートに延びているとともに、内孔20における基端部分には内径寸法が基端側に向かって次第に大きくなる、即ち軸方向に対して傾斜する傾斜面23が設けられている。尤も、締付キャップ16をカテーテル12の基端部分に外挿する以前のそれぞれの単品状態では、内孔20の内径寸法はカテーテル12の外径寸法より僅かに小さくされてもよく、カテーテル12の基端部分を径方向で圧縮しつつ締付キャップ16の内孔20に挿通するようになっていてもよい。
【0034】
一方、周壁部22の外寸は軸方向で変化しており、本実施形態では、周壁部22の先端側が軸方向視で略真円の外形とされているとともに、基端側が軸方向視で略扁平な外形とされている。そして、かかる軸方向視で略真円の外形とされた部分(真円部分24)に比べて、略扁平な外形とされた部分(扁平部分26)の方が外寸が大きくされており、これら両部分24,26が、基端側に向かって外寸が次第に大きくなる滑らかな湾曲面をもって連続している。具体的には、扁平部分26では、
図2中の上下方向の外寸D1 (
図2参照)に比べて、
図3中の上下方向の外寸D2 (
図3参照)が大きくされており、即ち、扁平部分26の外形が、互いに直交す
る2方向の外寸が異ならされた長円形状や楕円形状、略矩形状などとされている。要するに、かかる扁平部分26では、
図2中の上下方向が短軸方向とされているとともに、
図3中の上下方向が長軸方向とされている。
【0035】
そして、扁平部分26の長軸方向両側には、基端側に突出する一対の外壁部28,28が設けられている。これら外壁部28,28の内面は平坦面とされている一方、外面は扁平部分26と対応する湾曲面形状とされており、これら扁平部分26および一対の外壁部28,28により、基端側に開口すると共に扁平部分26の短軸方向に貫通する組付凹部30が形成されている。したがって、締付キャップ16の内周面31が、内孔20の内周面31aと、組付凹部30の内面、即ち扁平部分26の基端側端面と外壁部28,28の内面とを含んで構成されている。なお、外壁部28,28の外面は扁平部分26と対応する形状とされていることから、外形が扁平とされた扁平部分26がこれら外壁部28,28を含んで構成されていると捉えることも可能であり、当該扁平部分26に上記組付凹部30が形成されていると把握することもできる。
【0036】
さらに、それぞれの外壁部28の突出先端(軸方向基端)における内面には、対向方向内方、即ち扁平部分26の長軸方向内方に向かって突出する凸状部32が設けられている。すなわち、これら一対の凸状部32は、締付キャップ16の内周面31において、軸直角方向で相互に対向して、要するに周方向で略等間隔に設けられている。また、これら凸状部32は、各外壁部28において、扁平部分26の短軸方向各一方の側に設けられている。具体的には、
図3中上方の外壁部28では、
図2中上方の部分から凸状部32が
図3中の下方に向かって突出している一方、
図3中下方の外壁部28では、
図2中下方の部分から凸状部32が
図3中の上方に向かって突出している。すなわち、これら凸状部32は、組付凹部30における基端側開口部から組付凹部30の内方に向かって突出している。なお、本実施形態では、これら凸状部32の突出先端面に湾曲面33が形成されており、当該湾曲面33が後述するコネクタ本体18における小径部46の外周面と略対応する形状とされている。
【0037】
また、それぞれの外壁部28の突出先端(軸方向基端)には、更に基端側に向かって突出する弾性片34が設けられている。これら弾性片34は、外壁部28の周方向中央部分において当該外壁部28よりも小さい周方向寸法と厚さ寸法をもって形成されており、厚さ方向で容易に弾性変形可能とされている。そして、これら弾性片34の突出先端には、対向方向内方に向かって突出する係止爪36が設けられている。本実施形態では、当該係止爪36の周方向一方の面(後述するコネクタ本体18に対する締付キャップ16の回転方向前方の面)が湾曲面38とされている一方、係止爪36の周方向他方の面が軸方向に対して垂直な垂直面40とされている。なお、かかる弾性片34の外面も扁平部分26および外壁部28と対応する湾曲面形状とされており、これら弾性片34,34を含んで扁平部分26が構成されていると把握することも可能である。
【0038】
一方、コネクタ本体18は、全体として略筒状とされており、先端部分には、カテーテル12の基端に挿入される略筒状のポート部42が設けられている。当該ポート部42は、内径寸法が軸方向で略一定とされている。また、外径寸法も軸方向で略一定とされているが、本実施形態では、ポート部42の先端部分では基端側に向かって外径寸法が次第に大きくなる傾斜面44が設けられているとともに、ポート部42の基端部分は略一定の外径寸法をもって略ストレートに延びている。さらに、本実施形態では、このポート部42における最小外径寸法、即ち傾斜面44の先端における外径寸法は、カテーテル12の内径寸法と略等しいか僅かに大きくされており、かかるポート部42が、カテーテル12の基端部分に対して周壁13を押し広げるように挿入されるようになっている。なお、かかるポート部42の外径寸法とカテーテル12の内径寸法との関係は何等限定されるものではない。
【0039】
更にまた、ポート部42の基端側で略ストレートに延びている部分の外径寸法(傾斜面44における最大外径寸法)は、締付キャップ16の内孔20の先端側で略ストレートに延びている部分の内径寸法(傾斜面23における最小内径寸法)よりも大きくされており、後述する締付キャップ16とコネクタ本体18との固定時において、ポート部42の先端側の傾斜面44が、当該ポート部42に外挿されたカテーテル12の基端部分を挟んだ状態で締付力が及ぼされ得るように内孔20の基端側の傾斜面23に対して近接するようになっている。
【0040】
また、当該ポート部42の基端には、外周側に広がる環状壁部45が一体形成されており、換言すれば、軸直角方向に広がる環状壁部45の内周縁部からポート部42が先端側に突出している。そして、かかる環状壁部45の外周縁部から、後述する大径部54より外径寸法が小さくされた略筒状の小径部46が基端側に向かって突出している。この小径部46の内径寸法はポート部42の内径寸法よりも大きくされているとともに、外径寸法は軸方向で略一定とされており、小径部46は、軸方向視において略真円の外形を有している。かかる小径部46の外径寸法は、締付キャップ16における組付凹部30における幅寸法(即ち、扁平部分26の長軸方向寸法であって、外壁部28,28の対向面間距離)よりも小さくされており、後述する溝壁部48,48の外面間における最大離隔距離が、組付凹部30における幅寸法と略等しいか、僅かに小さくされている。また、かかる小径部46における溝壁部48,48を除いた部分の外径寸法は、締付キャップ16における凸状部32,32(湾曲面33,33)の軸直角方向対向距離と略等しいか、僅かに小さくされている。
【0041】
そして、かかる小径部46の先端部分の外周面には、外周側に突出する溝壁部48が所定の周方向寸法および軸方向寸法をもって設けられている。本実施形態では、当該溝壁部48が、略1/4周の周方向寸法をもって形成されているとともに、溝壁部48の軸方向寸法が、小径部46の軸方向寸法の略半分とされており、溝壁部48が小径部46の軸方向における略先端から略中央部分に亘って設けられている。また、本実施形態では、小径部46の外周面において、軸直角方向で対向する位置に一対の溝壁部48,48が設けられており、後述する
図7~10の状態、即ち締付キャップ16とコネクタ本体18とを組み付けた状態で、且つ締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させる前の状態において、これら一対の溝壁部48,48の周方向間に締付キャップ16の凸状部32が差し入れられるようになっている。特に、これら溝壁部48の周方向一方の面、即ち締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させた際に凸状部32と当接する側の面は、周方向螺旋状に傾斜する傾斜案内面50とされており、これら溝壁部48,48の周方向間が、小径部46の外周面を溝底面として且つ周方向螺旋状に延びる凹溝部52とされている。それ故、本実施形態では、かかる凹溝部52が、軸直角方向で対向する位置に、即ち周方向で略等間隔に一対設けられている。
【0042】
特に、かかる凹溝部52の螺旋のリード角、即ち傾斜案内面50の軸直角方向に対する傾斜角度θ(
図7参照)は、15度以上とされることが好ましい。また、かかる傾斜角度θは、45度以下とされることが好ましい。本実施形態では、凹溝部52の螺旋のリード角θが30度とされている。かかる傾斜角度θが上記範囲内に設定されることで、後述するように締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させた際に、凸状部32と溝壁部48(傾斜案内面50)との当接に伴う当接力(回転操作の操作力)を小さく抑えつつ、締付キャップ16のコネクタ本体18に対する軸方向の移動量を十分に確保することができる。
【0043】
かかる形状とされた小径部46の基端側には、当該小径部46よりも外寸が大きくされた略筒状の大径部54が一体形成されている。本実施形態では、大径部54の略全体が、締付キャップ16の周壁部22における扁平部分26と略対応する扁平な外形を有しており、当該大径部54によりコネクタ本体18における扁平部分が構成されている。すなわち、大径部54は、直交す
る2方向の外寸が異ならされており、短軸方向(
図2中の上下方向)の寸法が、締付キャップ16の扁平部分26における短軸方向の寸法D1 と略等しくされているとともに、長軸方向(
図3中の上下方向)の寸法が、締付キャップ16の扁平部分26における長軸方向の寸法D2 と略等しいか、僅かに大きくされている。それ故、かかる大径部54の外形は、締付キャップ16の扁平部分26と同様の長円形状や楕円形状、略矩形状とされている。
【0044】
そして、かかる大径部54の先端部分の外周面において、長軸方向両側には、収容凹部56,56が所定の周方向寸法をもって形成されている。これにより、大径部54の先端部分における長軸方向の外寸D
3 (
図3参照)が、大径部54の基端部分における長軸方向の外寸より小さくされている。要するに、大径部54の先端部分は、基端部分よりも長軸方向における外寸が小さくされており、長軸方向両側において基端部分よりも凹となる部分が収容凹部56,56とされている。なお、かかる大径部54の先端部分における長軸方向の外寸D
3 は、締付キャップ16における弾性片34,34の対向面間距離より僅かに小さくされているとともに、弾性片34,34の突出先端に設けられた係止爪36,36の対向面間距離よりも大きくされている。
【0045】
また、かかる大径部54の先端部分の外周面において、長軸方向両側には、外周側に開口する係止凹部58,58が形成されている。すなわち、これら係止凹部58,58の形成位置において大径部54の長軸方向における外寸が更に小さくされており、係止凹部58,58の形成位置における大径部54の外寸(即ち、係止凹部58,58の底面間の離隔距離)が、係止爪36,36の対向面間距離と略等しいか、僅かに小さくされている。さらに、係止凹部58の内面を構成する両側の壁面は、軸直角方向に広がる垂直面60,60とされている。本実施形態では、かかる係止凹部58が略矩形状をもって形成されており、係止凹部58の周方向寸法(
図5中の左右方向寸法)が係止爪36の周方向寸法と略等しいか僅かに大きくされているとともに、係止凹部58の軸方向寸法が係止爪36の軸方向寸法よりも大きくされている。
【0046】
そして、後述するように、コネクタ本体18に対して締付キャップ16を回転させることでコネクタ本体18の係止凹部58,58に締付キャップ16の係止爪36,36が嵌まり込むようになっており、かかる嵌合状態でコネクタ本体18に対する締付キャップ16の回転が阻止されるようになっている。すなわち、係止凹部58の両側の壁部のうち、コネクタ本体18に対する締付キャップ16の回転方向前方の壁部が、締付キャップ16の正方向の回転を阻止する回転阻止部62とされている。それとともに、係止爪36が、係止凹部58の両側の壁部のうちコネクタ本体18に対する締付キャップ16の回転方向後方の壁部を乗り越えて係止凹部58に嵌まり込むことから、当該壁部が、係止凹部58よりも相対的に外周側に突出する乗り越え突部64とされている。
【0047】
ここにおいて、回転阻止部62における係止凹部58の底面からの最大突出高さは、乗り越え突部64における係止凹部58の底面からの最大突出高さよりも僅かに大きくされており、回転阻止部62によりコネクタ本体18に対する締付キャップ16の正方向の回転がより確実に防止されるようになっているとともに、係止爪36が乗り越え突部64を乗り越え易くなっている。また、乗り越え突部64の外周面は、回転阻止部62の外周面よりも軸直角方向に対する傾斜角度が急とされた急傾斜面66とされている。かかる急傾斜面66が設けられることで、コネクタ本体18に対する締付キャップ16の回転時に、係止爪36と乗り越え突部64の外周面との当接に伴う締付キャップ16の回転阻害が可及的に回避されるとともに、係止爪36(弾性片34)の外周側への弾性変形がより容易に惹起されて回転操作力の低減が図られる。
【0048】
さらに、かかる乗り越え突部64の軸方向先端側の壁部における内面は、先端側に向かって壁部の厚さ寸法が次第に小さくなる方向に傾斜する傾斜面68とされており、本実施形態では、当該傾斜面68が周方向螺旋状に湾曲する傾斜湾曲面とされている。すなわち、急傾斜面66に対して先端側に隣接する部分の内面が、先端側に向かって壁部の厚さ寸法が次第に小さくなる傾斜面68とされることで、締付キャップ16がコネクタ本体18に対して回転する際に係止爪36と乗り越え突部64の軸方向先端側の壁部が当接して締付キャップ16の回転が阻害されることが回避されている。なお、締付キャップ16がコネクタ本体18に対して回転する際に傾斜面68と係止爪36とが当接してもよいが、これらが当接しない態様を採用することで、係止爪36が傾斜面68に対して摺動することに伴う摺動抵抗の発生が防止され得る。
【0049】
かかる形状とされた大径部54の基端面の中央からは、接続ポート14が基端側に突出している。かかる接続ポート14は、基端側に突出する略筒状の突出筒部70を含んで構成されている。また、当該突出筒部70の基端には外周側に突出する雄ねじ部72が設けられており、接続ポート14に対してルアーロックタイプのシリンジなどが接続され得るようになっている。尤も、かかる雄ねじ部72は必須なものではなく、接続ポート14に接続される外部流路はルアーロックタイプでなくてもよい。
【0050】
以上のように、コネクタ本体18は、何れも略筒状とされたポート部42と小径部46と大径部54と突出筒部70とが、それぞれの中心軸が略等しくされた状態で、軸方向で連結されている。すなわち、コネクタ本体18には軸方向で貫通する内孔74が形成されており、当該内孔74が、ポート部42と小径部46と大径部54と突出筒部70の各内孔を含んで構成されている。本実施形態では、かかる内孔74において、小径部46と大径部54と突出筒部70の内周面が滑らかに連続しており、特に本実施形態では、これら小径部46と大径部54と突出筒部70の内周面により基端側に向かって内径寸法が次第に大きくなるテーパ面76が構成されている。
【0051】
また、コネクタ本体18の外周面78が、ポート部42と環状壁部45と小径部46と大径部54と突出筒部70の各外周面を含んで構成されている。すなわち、小径部46や大径部54の外周面に設けられる溝壁部48や凹溝部52、係止凹部58や乗り越え突部64などは、何れもコネクタ本体18の外周面78に設けられている。
【0052】
以上の如き構造とされた締付キャップ16とコネクタ本体18とを含んで本実施形態の医療用コネクタ10が構成されており、当該医療用コネクタ10が、カテーテル12の基端側端部に後付固定されるようになっている。かかる医療用コネクタ10のカテーテル12への装着方法を、
図7~10を示して説明する。
【0053】
先ず、医療用コネクタ10が取り付けられるカテーテル12の先端側端部を、患者の血管などの管腔内に挿入する。なお、かかるカテーテル12には、体内挿入時において長さ方向中間部分や基端側端部に別のコネクタなどの別部品が取り付けられていてもよいが、本発明に係る医療用コネクタ10が取り付けられる際には、例えばカテーテル12の基端側を切断するなどしてカテーテル12の基端側端部に別部品が取り付けられていない状態とされる。かかるカテーテル12は、患者から突出する基端側端部分が、必要に応じて切断されて、長さ寸法を調節するなどしてもよい。
【0054】
そして、先端側端部が患者の血管などの管腔内に挿入されたカテーテル12の基端側端部分に対して、締付キャップ16が外挿される。その後、
図7~10に示されるように、カテーテル12の基端側端部をコネクタ本体18のポート部42に外挿するとともに、締付キャップ16とコネクタ本体18とを相互に組み付ける。すなわち、コネクタ本体18の小径部46が締付キャップ16の組付凹部30に差し入れられるとともに、締付キャップ16から突出する凸状部32が溝壁部48,48の周方向間に形成された凹溝部52に差し入れられている。かかる際には、凸状部32の突出先端面に設けられた湾曲面33が、小径部46の外周面における溝壁部48,48を周方向で外れた部分(即ち、凹溝部52の溝底面)に当接するか僅かに離隔している。また、締付キャップ16における扁平部分26の長軸方向とコネクタ本体18における扁平部分(大径部54)の長軸方向とが相互に異ならされており、締付キャップ16において基端側に突出する弾性片34,34が、コネクタ本体18の大径部54の先端部分の外周側において、収容凹部56,56を周方向で外れた部分に位置している。本実施形態では、締付キャップ16における扁平部分26の長軸方向とコネクタ本体18における扁平部分(大径部54)の長軸方向とが相互に異なっており、中心軸回りで略90度の角度差を有している。
【0055】
かかる状態から、後述するようにコネクタ本体18に対して締付キャップ16を回転させることで凸状部32が凹溝部52内を移動してカテーテル12の基端側端部を締付キャップ16とコネクタ本体18との間で締め付けるようになっており、
図7~10に示される締付キャップ16の位置が、コネクタ本体18に対する回転が案内され始める案内開始位置とされている。
【0056】
ここにおいて、締付キャップ16が、
図7~10に示される案内開始位置にある状態では、カテーテル12の基端側端部の内外周面13a,13bがコネクタ本体18の外周面78と締付キャップ16の内周面31、具体的には、コネクタ本体18のポート部42における外周面78aと、締付キャップ16の内孔20における内周面31aとで挟まれるようになっている。本実施形態では、ポート部42における外周面78aに傾斜面44が設けられているとともに、内孔20における内周面31aに傾斜面23が設けられており、カテーテル12の内外周面13a,13bがこれら傾斜面44,23に当接して挟み込まれている。すなわち、これら両傾斜面44,23を含むポート部42における外周面78aと内孔20における内周面31aとが、カテーテル12の基端側端部を挟み込む挟み込み部分とされている。特に、本実施形態では、締付キャップ16が案内開始位置にある状態において、ポート部42に外挿装着されるカテーテル12の基端部分の外周面13bは、締付キャップ16の内周面31である内孔20の内周面31aに対してゼロタッチであるか、僅かに押し付けられた状態とされている。
【0057】
かかる案内開始位置から締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させることで、締付キャップ16が、
図1~5に示されるように、コネクタ本体18に対する固定位置に変位するようになっている。すなわち、締付キャップ16の凸状部32,32が、周方向螺旋状に延びる凹溝部52,52の傾斜案内面50,50に当接して案内されることで、回転操作力が軸方向の移動力に変換されて、締付キャップ16がコネクタ本体18に対して接近する方向、即ちコネクタ本体18に対して基端側に移動するようになっている。このように締付キャップ16がコネクタ本体18に対して回転しつつ基端側に移動することで、案内開始位置の状態で既に締付キャップ16の内周面31(内孔20の内周面31a)とコネクタ本体18の外周面78(ポート部42の外周面78a)とで挟まれていたカテーテル12の基端部分が、締付キャップ16とコネクタ本体18との間でより強固に締め付けられるようになっている。なお、締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させた状態では、凸状部32が溝壁部48と大径部54との軸方向間に位置して、当該凸状部32の湾曲面33が、小径部46の外周面に対して当接するか僅かに離隔している。
【0058】
また、締付キャップ16がコネクタ本体18に対して回転することで、収容凹部56,56を周方向で外れた位置にあった締付キャップ16の弾性片34,34および係止爪36,36が、収容凹部56,56内に収容されるようになっている。本実施形態では、何れも略扁平とされた締付キャップ16およびコネクタ本体18において、それぞれの長軸方向寸法および短軸方向寸法が相互に略等しくされていることから、締付キャップ16とコネクタ本体18との長軸方向を合致させることで、医療用コネクタ10が、全体として略扁平な形状をもって構成されている。なお、本実施形態では、180度(半周)以下、具体的には略90度の回転で、締付キャップ16の長軸方向とコネクタ本体18との長軸方向とが相互に合致して、締付キャップ16がコネクタ本体18に対する固定位置に位置するようになっている。尤も、締付キャップ16のコネクタ本体18における反対方向の回転は、係止爪36の回転方向後方側の垂直面40と回転阻止部62における外周面とが当接することで阻止されることから、そもそも締付キャップ16のコネクタ本体18に対する180度以上の回転は許容されていない。
【0059】
そして、
図1~5に示されるように、締付キャップ16の扁平部分26の長軸方向とコネクタ本体18の扁平部分(大径部54)の長軸方向が合致した状態(締付キャップ16がコネクタ本体18に対して固定位置にある状態)において、コネクタ本体18の外周面78に設けられた係止凹部58,58に対して締付キャップ16の内周面31に設けられた係止爪36,36が入り込むようになっている。すなわち、締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させることで、係止爪36,36が乗り越え突部64,64の外周面である急傾斜面66,66に当接して、弾性片34,34が外周側に弾性変形させられる。これにより、係止爪36,36が乗り越え突部64,64を乗り越えて係止凹部58,58内に入り込み、固定位置に至ることが可能とされている。要するに、締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させることで、弾性片34が固定位置に至る前に外周側に弾性変形して、乗り越え突部64を乗り越えるようになっている。特に、本実施形態では、係止爪36,36の回転方向前方側の面が湾曲面38,38とされていることから、係止爪36,36による乗り越え突部64,64の乗り越え作動が容易に実現されるようになっている。
【0060】
そして、係止爪36が係止凹部58に入り込んで、回転阻止部62における垂直面60と当接することで、締付キャップ16のコネクタ本体18に対する正方向の回転が阻止されるようになっている。それとともに、係止爪36が、乗り越え突部64における垂直面60と当接することで、締付キャップ16のコネクタ本体18に対する逆方向(戻り方向)の回転が阻止されるようになっている。特に、本実施形態では、係止爪36,36の回転方向後方側の面が垂直面40,40とされていることから、乗り越え突部64に対する係止爪36の係止効果が十分に発揮されて、締付キャップ16とコネクタ本体18との固定が緩むおそれが低減されている。
【0061】
それ故、本実施形態では、締付キャップ16をコネクタ本体18に対して固定位置で固定すると共に当該固定位置からの少なくとも戻り方向の回転を阻止するロック機構80が、係止爪36を含む弾性片34と乗り越え突部64とを含んで構成されている。また、締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させて上記固定位置に導くことでカテーテル12を締め付ける締付機構82が、締付キャップ16の凸状部32とコネクタ本体18の凹溝部52とを含んで構成されている。
【0062】
すなわち、本実施形態では、これらロック機構80と締付機構82とが別個に設けられている。特に、本実施形態では、これらロック機構80と締付機構82とが軸方向で離隔して設けられている。
【0063】
このようにカテーテル12の基端側端部に後付固定された医療用コネクタ10の接続ポート14の基端側開口部84に対して、図示しない外部流路としてのシリンジなどが挿入接続されることで、カテーテル12および医療用コネクタ10を介して、薬液の注入や血液などの吸引の処置が実施され得る。
【0064】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用コネクタ10では、カテーテル12の基端側端部が、締付キャップ16とコネクタ本体18とで挟まれて固定されることから、カテーテル12の基端側端部における狭窄や潰れ変形などが回避され得る。これにより、カテーテル12が安定して支持されるとともに、カテーテル12を通じた流体流動に悪影響を及ぼすことが効果的に防止され得る。また、締付キャップ16をコネクタ本体18に対して略90度回転させることで締付キャップ16とコネクタ本体18とが相互に固定されることから、締付キャップ16を1周以上回転させる場合に比べて固定操作が容易とされ得る。
【0065】
さらに、締付キャップ16とコネクタ本体18との相対回転に際して、コネクタ本体18側を回転させることでカテーテル12が捩れるおそれがあるが、締付キャップ16とコネクタ本体18との相対回転量を小さくすることでカテーテル12の捩れが回避されるか、捩れ量を小さく抑えることができる。特に、捩れ易い、外径が3mm以下の細径のカテーテル12を採用することで、上記効果が有効に享受され得る。
【0066】
また、本実施形態では、ロック機構80と締付機構82とが別個に設けられていることから、両機構80,82の形状などを適切に設計することにより、締付機構82による案内効果とロック機構80による回転阻止効果とを両立して高度に発揮することができる。特に、本実施形態のように、ロック機構80と締付機構82とを軸方向で離れた位置に設けることにより、ロック機構80を締付機構82に比べて、より外周側に設けることができる。これにより、締付キャップ16をコネクタ本体18に対して回転させた際に、締付機構82に対してロック機構80に及ぼされる偶力を大きくすることができる。この結果、締付機構82に従って実現される締付キャップ16の回転操作力をより小さくすることができるとともに、ロック機構80を作動させるための弾性片34,34の外周側への弾性変形がより生じ易くなっている。
【0067】
さらに、本実施形態では、ロック機構80を構成する弾性片34と乗り越え突部64とが周方向で等間隔に、即ち軸直角方向で対向してそれぞれ一対設けられていることから、ロック機構80が作動する際の、例えば弾性片34が乗り越え突部64を乗り越える動作時などにおいて、締付キャップ16とコネクタ本体18とが相互に傾動するおそれが効果的に低減されて、安定したロック作動が実現され得る。同様に、締付機構82を構成する凸状部32と凹溝部52とが周方向で等間隔に、即ち軸直角方向で対向してそれぞれ一対設けられていることから、締付キャップ16がコネクタ本体18に対して回転する際において、締付キャップ16とコネクタ本体18とが相互に傾動するおそれが効果的に低減されて、安定した案内効果およびカテーテル12の締付効果が発揮され得る。
【0068】
更にまた、本実施形態では、締付機構82により締付キャップ16のコネクタ本体18に対する回転が案内され始める案内開始位置において、締付キャップ16の内周面31とコネクタ本体18の外周面78とでカテーテル12の内外周面13a,13bが挟み込まれており、締付キャップ16の内周面31がカテーテル12の外周面13bに対して押し付けられていることから、当該位置から更に締付キャップ16を回転させることで、カテーテル12がより強固に締付キャップ16とコネクタ本体18との間で締め付けられ得る。
【0069】
また、これら締付キャップ16の内周面31とコネクタ本体18の外周面78には、それぞれ軸方向に対して傾斜する傾斜面23,44が設けられており、カテーテル12の内外周面13a,13bがこれら傾斜面23,44によって挟み込まれることから、カテーテル12を挟み込む面が軸方向と平行な面とされる場合に比べて、医療用コネクタ10からのカテーテル12の抜けがより確実に防止されるだけでなく、カテーテル12を間に挟んだ状態での内孔20へのポート部42の挿入がより容易に実現され得る。
【0070】
さらに、本実施形態では、締付キャップ16に扁平部分26が設けられているとともに、コネクタ本体18にも扁平部分(大径部54)が設けられており、これら扁平部分26,54の長軸方向が合致した状態でロック機構80によるロック作動が実現するようになっている。これにより、使用者が締付キャップ16とコネクタ本体18とがロック状態にあるか否かが目視や感触により容易に把握することができるようになっている。また、これら締付キャップ16およびコネクタ本体18にそれぞれ扁平部分26,54が設けられることで、使用者が両部材16,18を把持したり締付キャップ16を締め付けたりする操作が容易とされ得る。
【0071】
次に、
図11~15には、本発明の第2の実施形態としての医療用コネクタ90が示されている。本実施形態の医療用コネクタ90においても、基本的な構成は前記第1の実施形態と同様であるが、締付キャップ92とコネクタ本体94との間に構成されるロック機構96や締付機構98の形状が前記第1の実施形態とは異なっている。なお、前記第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記第1の実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0072】
すなわち、本実施形態の締付キャップ92は、全体として略筒状とされており、先端側に、基端側に向かって次第に拡径するテーパ筒部分100が設けられているとともに、基端側に、扁平な略筒形状とされた扁平部分102が設けられている。本実施形態の扁平部分102は、
図15中において上下方向の外寸に比べて左右方向の外寸が大きくされた略長円または略角丸矩形状とされており、
図15中の左右方向が長軸方向とされているとともに、
図15中の上下方向が短軸方向とされている。
【0073】
そして、これらテーパ筒部分100および扁平部分102には、軸方向で貫通する内孔104が形成されている。かかる内孔104は、先端側のテーパ筒部分100における内径寸法よりも基端側の扁平部分102の内径寸法の方が大きくされている。特に、本実施形態では、内孔104において、テーパ筒部分100の先端部分が、内径寸法が略一定とされたストレート形状とされているとともに、テーパ筒部分100の基端部分の内周面が、基端側に向かって次第に拡径する傾斜面106とされている。一方、扁平部分102における内孔104は、内径寸法が略一定とされたストレート形状とされている。
【0074】
そして、かかる扁平部分102の周壁部108において、長軸方向(
図15中の左右方向)両側からは、それぞれ基端側に外壁部110,110が突出している。これら外壁部110は、所定の周方向寸法と厚さ寸法を有している。本実施形態では、各一方の外壁部110が短軸方向(
図15中の上下方向)の各一方から突出しており、即ち
図15中の右上と左下において外壁部110,110が設けられて、これら外壁部110,110が軸直角方向で相互に対向位置している。また、これら外壁部110,110はある程度の厚さ寸法を有しており、厚さ方向での弾性変形が生じにくくされている。なお、かかる外壁部110の内周面は、後述する溝壁部132の外周面に略対応する湾曲面111とされている。
【0075】
さらに、かかる外壁部110のそれぞれの突出先端には、短軸方向と略平行な方向に突出する凸状部112が設けられている。すなわち、本実施形態では、締付キャップ92の内周面113が、内孔104の内周面104aと外壁部110の内周面とを含んで構成されており、当該締付キャップ92の内周面113において、一対の凸状部112,112が軸直角方向で相互に対向して設けられている。具体的には、
図15中右上に位置する外壁部110からは凸状部112が
図15中下方に突出しているとともに、
図15中左下に位置する外壁部110からは凸状部112が
図15中上方に突出している。かかる凸状部112の外周面は略半円形状の断面を有する湾曲面114とされており、後述する傾斜案内面134に当接して、締付キャップ92がコネクタ本体94に対して滑らかに回転するようになっている。
【0076】
更にまた、かかる外壁部110の軸方向略中央部分において、周方向一方からは、周方向に延びる弾性片116が突出している。これら弾性片116,116は、それぞれ短軸方向と略平行に延びており、即ち
図15中右上に位置する外壁部110からは弾性片116が
図15中下方に突出しているとともに、
図15中左下に位置する外壁部110からは弾性片116が
図15中上方に突出している。また、これら弾性片116は、所定の厚さ寸法と軸方向寸法を有しており、厚さ寸法が十分に小さくされて、弾性片116が、厚さ方向で容易に弾性変形可能とされている。さらに、かかる弾性片116は、外壁部110よりも小さい軸方向寸法を有しており、外壁部110の軸方向略中央部分から突出して、周壁部108との軸方向間に所定の大きさの隙間118が形成されている。これにより、弾性片116の弾性変形が容易に生じるようになっている。
【0077】
また、これら弾性片116の突出先端には、対向方向内方、即ち長軸方向内方に向かって突出する係止爪120が設けられている。かかる係止爪120における外面、即ち後述するコネクタ本体94に対する締付キャップ92の回転方向前方の面は、略半円状の湾曲面122とされている一方、係止爪120における内面、即ちコネクタ本体94に対する締付キャップ92の回転方向後方の面は、軸直角方向に広がる垂直面124とされている。
【0078】
一方、コネクタ本体94は、前記第1の実施形態と同様に、傾斜面44を備えるポート部42と、略筒状の小径部126と、扁平部分としての略筒状の大径部128と、突出筒部70を含んで構成される接続ポート14とを備えている。本実施形態では、ポート部42と大径部128との軸方向間に設けられる小径部126が、内径寸法および外径寸法が略一定とされた略ストレートな筒状体とされている。さらに、コネクタ本体94の内孔74の内径寸法は基端側に向かうにつれて段階的に大きくされており、ポート部42の内径寸法に比して小径部126の内径寸法が大きくされている。更にまた、大径部128の基端側の内径寸法は、小径部126の内径寸法よりも大きくされており、当該部分の内面は、基端側に向かって次第に拡径するテーパ面76とされている。
【0079】
また、本実施形態においても、大径部128は、締付キャップ92における扁平部分102と略同様の扁平形状とされており、
図15中の左右方向が長軸方向とされているとともに、
図15中の上下方向が短軸方向とされている。かかる大径部128の外周面において、長軸方向両側には、収容凹部130,130が形成されており、当該収容凹部130,130の形成位置における外寸が小さくされている。これら収容凹部130,130は、所定の周方向寸法を有しており、本実施形態においては、締付キャップ92における外壁部110,110の位置に対応して、
図15中の右上と左下に形成されている。
【0080】
そして、収容凹部130が形成されて外寸が小さくされた大径部128の外周面において、その先端部分には、長軸方向外方に突出する溝壁部132が形成されている。この溝壁部132は、所定の周方向寸法と軸方向寸法を有して収容凹部130内で突出している。本実施形態では、
図15中の略上端部分および下端部分から上下方向略中央部分にまで至る周方向寸法をもって形成されているとともに、収容凹部130よりも小さい軸方向寸法をもって形成されている。かかる溝壁部132の基端側の内面は、コネクタ本体94に対する締付キャップ92の回転方向前方になるにつれて溝壁部132の厚さ寸法が大きくなる方向に傾斜する傾斜面が設けられており、特に本実施形態では、当該傾斜面が周方向螺旋状に傾斜する傾斜案内面134とされている。これにより、溝壁部132と収容凹部130を構成する基端側の壁部との軸方向間には、周方向螺旋状に延びる凹溝部136が形成されている。要するに、一対の凹溝部136が、大径部128の外周面、即ちコネクタ本体94の外周面78において軸直角方向で相互に対向して設けられている。また、本実施形態においても、当該凹溝部136の螺旋のリード角θ、即ち傾斜案内面134の軸直角方向に対する傾斜角度θが30度とされている。
【0081】
さらに、かかる溝壁部132の外周面において、周方向一方の端部、即ちコネクタ本体94に対する締付キャップ92の回転方向前方の端部には、長軸方向外方に突出する乗り越え突部138が形成されている。かかる乗り越え突部138の突出先端における外面、即ち締付キャップ92の回転方向後方側の端面は湾曲面140とされており、係止爪120が乗り越え突部138を乗り越え易くなっている。一方、乗り越え突部138における内面は、軸直角方向に広がる垂直面142とされている。
【0082】
そして、当該乗り越え突部138と収容凹部130を構成する周方向一方の壁部との周方向間には、長軸方向外方に開口する係止凹部144が形成されている。かかる係止凹部144が形成されることにより、後述するように締付キャップ92がコネクタ本体94に対して回転した際に、締付キャップ92の係止爪120が係止凹部144に入り込むようになっている。さらに、当該係止凹部144を構成する壁部のうち、乗り越え突部138と反対側の壁部(収容凹部130を構成する周方向一方の壁部)と係止爪120とが当接することでそれ以上の締付キャップ92の正方向の回転が阻止されるようになっており、かかる壁部が回転阻止部146とされている。また、本実施形態においても、回転阻止部146が乗り越え突部138よりも長軸方向外方まで突出しているとともに、回転阻止部146の内面が軸直角方向に広がる垂直面148とされていることから、係止爪120が乗り越え突部138を乗り越え易くされているとともに、締付キャップ92の正方向の回転がより確実に阻止されるようになっている。
【0083】
かかる構造とされた締付キャップ92とコネクタ本体94とを含んで構成される医療用コネクタ90が、カテーテル12の基端側端部に対して後付固定されるようになっている。すなわち、前記実施形態と同様に、カテーテル12の基端側端部分に対して締付キャップ92が外挿されるとともに、コネクタ本体94が挿入されて、コネクタ本体94に対して締付キャップ92を回転させることで締付キャップ92とコネクタ本体94とが相互に固定されるようになっている。
【0084】
ここにおいて、締付キャップ92とコネクタ本体94とを相互に組み付けるとともに、且つ締付キャップ92を回転させる前の状態が
図16に示されており、即ち締付キャップ92が案内開始位置にある状態が
図16に示されている。要するに、
図16に示される状態では、締付キャップ92の凸状部112がコネクタ本体94の凹溝部136の周方向端部に位置しており、かかる状態からコネクタ本体94に対して締付キャップ92を回転させることで、凸状部112が凹溝部136における傾斜案内面134に当接しながら凹溝部136内を移動するようになっている。これにより、締付キャップ92のコネクタ本体94に対する回転動作に伴い、締付キャップ92がコネクタ本体94に対して軸方向で接近移動するようになっており、本実施形態では、締付機構98が、これら凸状部112と凹溝部136とを含んで構成されている。
【0085】
なお、かかる締付キャップ92が案内開始位置にある状態では、前記第1の実施形態と同様に、カテーテル12の基端部分における周壁13が締付キャップ92とコネクタ本体94とで挟まれることが好適であり、カテーテル12の周壁13の外周面13bが締付キャップ92(内孔104)の内周面104aにゼロタッチで当接するか僅かに押し付けられることが好ましい。
【0086】
また、かかる回転動作に伴い、締付キャップ92の係止爪120とコネクタ本体94の乗り越え突部138とが相互に当接するようになっており、これにより係止爪120を含む弾性片116が外周側に弾性変形せしめられて、係止爪120が乗り越え突部138を乗り越えて係止凹部144内に入り込むようになっている。この結果、係止爪120と回転阻止部146とが相互に当接することで締付キャップ92の正方向の回転が阻止されるようになっているとともに、係止爪120と乗り越え突部138とが相互に当接することで締付キャップ92の逆方向の回転が阻止されるようになっている。すなわち、
図11~15に示されるように、係止爪120が係止凹部144に係止されることでコネクタ本体94に対する締付キャップ92の回転が阻止されるようになっており、
図11~15に示される締付キャップ92の位置が固定位置とされている。そして、本実施形態では、締付キャップ92の少なくとも戻り方向の回転を阻止するロック機構96が、係止爪120を有する弾性片116と乗り越え突部138とにより構成されている。それ故、本実施形態においても、ロック機構96と締付機構98とは別個に設けられているが、本実施形態においては、これらロック機構96と締付機構98とが、軸方向の略同位置に設けられている。
【0087】
特に、本実施形態では、案内開始位置にある締付キャップ92がコネクタ本体94に対して180度以下、具体的には略60度回転することで固定位置に達するようにされている。すなわち、本実施形態における医療用コネクタ90においても、締付キャップ92をコネクタ本体94に対して180度以下だけ回転させることで固定位置に位置せしめられることから、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0089】
たとえば、前記実施形態では、締付キャップ16,92およびコネクタ本体18,94が、それぞれ扁平部分26,54,102,128を有していたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、締付キャップやコネクタ本体は、扁平部分を有することなく、略全体に亘って断面が真円や正多角形とされた筒形状であってもよい。
【0090】
また、前記実施形態では、ロック機構80,96と締付機構82,98とが別個に設けられていたが、ロック機構と締付機構とが一体的に形成されてもよい。すなわち、例えば締付機構を構成する凸状部が凹溝部内を移動する際に、凹溝部内に設けられた乗り越え突部を乗り越えることでロック機構が構成されて、コネクタ本体に対する締付キャップの回転が防止されるようになっていてもよい。
【0091】
さらに、前記実施形態では、締付キャップ16,92に凸状部32,112が設けられるとともに、コネクタ本体18,94に凹溝部52,136が設けられていたが、凸状部および凹溝部はそれぞれ反対に設けられてもよい。更にまた、前記実施形態では、これら凸状部32,112および凹溝部52,136がそれぞれ周方向で略等間隔に(軸直角方向で対向して)一対設けられていたが、凸状部や凹溝部の数は何等限定されるものではなく、周方向で1つまたは3つ以上設けられてもよい。
【0092】
また、前記実施形態では、締付キャップ16,92に、基端側に突出する弾性片34,116が設けられるとともに、コネクタ本体18,94に乗り越え突部64,138が設けられていたが、コネクタ本体に、先端側に突出する弾性片が設けられるとともに、締付キャップに乗り越え突部が設けられてもよい。さらに、前記実施形態では、これら弾性片34,116および乗り越え突部64,138がそれぞれ周方向で略等間隔に(軸直角方向で対向して)一対設けられていたが、弾性片や乗り越え突部の数は何等限定されるものではなく、周方向で1つまたは3つ以上設けられてもよい。
【0093】
さらに、コネクタ本体に対する締付キャップの回転角度は、前記実施形態の如き90度や60度に限定されるものではなく、180度以下であれば、90度以上であってもよい。
【0094】
更にまた、前記第1の実施形態では、小径部46の外周面に対して外周側に突出する溝壁部48を設けることで相対的に凹となる凹溝部52が形成されていたが、小径部46の外周面に対して凹となる凹溝部を直接形成してもよい。同様に、前記第2の実施形態では、大径部128の外周面(収容凹部130の周方向に延びる底面)に対して外周側に突出する溝壁部132を設けることで相対的に凹となる凹溝部136が形成されていたが、大径部128の外周面に対して凹となる凹溝部を直接形成してもよい。
【0095】
なお、前記実施形態では、カテーテル12を挟み込む面に傾斜面23,44,106が設けられていたが、カテーテルを挟み込む面は、略全面に亘って軸方向に平行な面とされてもよいし、かかる軸方向に平行な面に対して傾斜面を有する別部材を固定することで傾斜面を設けるようにしてもよい。
また、本発明はもともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
(i) 互いに組み付けられるコネクタ本体と締付キャップとの間でカテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、カテーテルに後付け可能な医療用コネクタであって、前記コネクタ本体には3mm以下の外径のカテーテルが外挿装着可能とされたポート部が設けられている一方、該コネクタ本体と前記締付キャップとの間には相対的な回転作動を軸方向への移動に変換して180度以下の相対回転により該締付キャップを該コネクタ本体に対して軸方向へ接近移動させて該ポート部に外挿装着されたカテーテルを挟む固定位置に導く締付機構と、かかる固定位置において該締付キャップの該コネクタ本体に対する戻り方向への相対回転を阻止するロック機構とを、有することを特徴とする医療用コネクタ、
(ii) 前記コネクタ本体と前記締付キャップには、何れも、互いに直交する軸直角2方向の外寸が異ならされた扁平部分が設けられており、互いの該扁平部分の長軸方向が異ならされた相対位置から半周以下の相対回転によって互いの該長軸方向が合致した状態で該コネクタ本体と該締付キャップとが前記固定位置とされる(i)に記載の医療用コネクタ、
(iii) 前記締付機構と前記ロック機構とが別個に設けられている(i)又は(ii)に記載の医療用コネクタ、
(iv) 前記締付機構と前記ロック機構とが、前記コネクタ本体の軸方向で離れた位置に設けられている(iii)に記載の医療用コネクタ、
(v) 前記締付機構が、周方向螺旋状に延びる凹溝部を含んで構成されており、該凹溝部における螺旋のリード角が15度~45度とされている(i)~(iv)の何れか1項に記載の医療用コネクタ、
(vi) 前記締付機構が、前記コネクタ本体の外周面と前記締付キャップの内周面との一方に設けられて周方向螺旋状に延びる凹溝部と他方に設けられて該凹溝部に係合する凸状部とを含んで構成されており、該凹溝部と該凸状部がそれぞれ該コネクタ本体および該締付キャップにおいて軸直角方向で対向する位置に一対設けられている(i)~(v)の何れか1項に記載の医療用コネクタ、
(vii) 前記ロック機構が、前記コネクタ本体の外周面に形成された乗り越え突部と前記締付キャップに設けられた弾性片とを含んで構成されており、該コネクタ本体と該締付キャップとの相対回転により前記固定位置に至る前に該弾性片が弾性変形して該乗り越え突部を乗り越えるようになっている(i)~(vi)の何れか1項に記載の医療用コネクタ、
(viii) 前記締付機構により前記締付キャップの前記コネクタ本体に対する回転が案内され始める案内開始位置において、前記ポート部に外挿装着されたカテーテルの外周面に対して該締付キャップが押し付けられるようになっている(i)~(vii)の何れか1項に記載の医療用コネクタ、
(ix) カテーテルの端部を内外周面間で挟んで固定する、前記コネクタ本体における前記ポート部の外周面と前記締付キャップの内周面との挟み込み部分が、少なくとも一方において軸方向の傾斜面とされている(i)~(viii)の何れか1項に記載の医療用コネクタ、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、カテーテルの端部を締付キャップとコネクタ本体との内外周面間で挟んで固定することから、カテーテルの狭窄や潰れを回避しつつカテーテルに対して安定して締付固定力を及ぼすことが可能になる。また、コネクタ本体と締付キャップとの180度以下の回転操作で、カテーテルへの装着が実現されることから、従来のねじ構造に比して、カテーテルへの装着に際してのカテーテルのねじれが軽減されると共に、カテーテルへの着脱を速やかに操作することができる。
上記(ii)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、カテーテルへの締付前状態と締付状態とを、コネクタ本体および締付キャップの各扁平部分の周方向における一致と不一致により、外観から容易に把握できる。また、コネクタ本体と締付キャップに設けた扁平部分へ入力することで、回転操作の作業性の向上も図られ得る。
上記(iii)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、コネクタ本体と締付キャップにおいて締付機構を構成する部分とロック機構を構成する部分の形状や変形剛性などを各別に設定することができることから、設計自由度の向上が図られ得る。
上記(iv)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、コネクタ本体と締付キャップにおいて締付機構を構成する部分とロック機構を構成する部分とを、例えば相互間の応力や変形の伝達なども軽減乃至は回避するなどして、より高い設計自由度をもって形成することが可能になる。
上記(v)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、締付機構を構成する凹溝部の螺旋のリード角が適切な範囲内に設定されることにより、コネクタ本体に対する締付キャップの回転操作力の低減と軸方向の移動量の確保との両立がより良好に図られ得る。
上記(vi)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、締付機構を構成する凹溝部と凸状部とが、コネクタ本体と締付キャップとにおいて軸直角方向で対向する位置に一対設けられていることから、コネクタ本体に対して締付キャップが回転して軸方向に移動する際に、両部材が相対的に傾動することが抑制されて、力学的に安定した締付作用が発揮され得る。
上記(vii)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、締付キャップのコネクタ本体に対する回転に伴って弾性片が乗り越え突部を乗り越えて、弾性片と乗り越え突部とが相互に係合することで、ロック機構において締付キャップのコネクタ本体に対する締付方向の回転を許容しつつ戻り方向の回転が阻止され得る。
上記(viii)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、締付機構に従って締付キャップがコネクタ本体に対して回転し始める段階で、既に締付キャップがカテーテルの外周面に押し付けられていることから、かかる段階から締付キャップを回転させることで、180度以下の少ない回転であってもカテーテルがより確実に締付キャップとコネクタ本体との間で挟み込まれて保持され得る。
上記(ix)に記載の態様に従う構造とされた医療用コネクタによれば、軸方向の傾斜面によってポート部と締付キャップとが、カテーテルの周壁を内外に挟んで軸方向で対向位置される。それ故、コネクタ本体と締付キャップとの相対回転に伴い締付機構で生ぜしめられる軸方向力が、カテーテルの端部周壁に対して内外周面間での挟み込み力として一層効率的に作用せしめられ得る。
【符号の説明】
【0096】
10,90:医療用コネクタ、12:カテーテル、13a:カテーテルの内周面、13b:カテーテルの外周面、16,92:締付キャップ、18,94:コネクタ本体、23,44,106:傾斜面、26,102:扁平部分、31,104a:締付キャップの内周面、32,112:凸状部、34,116:弾性片、42:ポート部、52,136:凹溝部、54,128:大径部(扁平部分)、64,138:乗り越え突部、78:コネクタ本体の外周面、78a:ポート部の外周面、80,96:ロック機構、82,98:締付機構