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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】手摺
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018082075
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019190082
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】中村 憲通
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 肇一
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-089001(JP,A)
【文献】特開2017-053116(JP,A)
【文献】特開2012-158902(JP,A)
【文献】特開2010-255398(JP,A)
【文献】特開2000-296068(JP,A)
【文献】特開2006-308025(JP,A)
【文献】特開平09-209539(JP,A)
【文献】特開平09-195475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定される手摺であって、
上記壁面に固定される金属製のフランジと、
上記壁面から離間した位置において上記壁面に沿って延びるバー部材と、
上記フランジと上記バー部材とを接続する樹脂製のエルボ部と、を有し、
上記エルボ部は、樹脂が上記フランジの少なくとも一部と一体成形されるフランジ一体成形部を備えていることを特徴とする手摺。
【請求項2】
上記フランジは、板状に形成されたプレート部と、このプレート部から上記バー部材側に向けて立ち上がる立上部を備え、
上記エルボ部の上記フランジ一体成形部は、上記フランジの上記立上部の少なくとも一部と一体成形されている、請求項1に記載の手摺。
【請求項3】
上記エルボ部の上記フランジ一体成形は、上記フランジの壁側面まで延びるかかり部を備えている、請求項1又は2に記載の手摺。
【請求項4】
上記フランジの上記立上部は管状に形成され、
上記エルボ部の上記フランジ一体成形部は、上記立上部の内側面を保持する内側一体成形部と、上記立上部の外側面を保持する外側一体成形部を備える、請求項2に記載の手摺。
【請求項5】
さらに、上記エルボ部の少なくとも一部の外面を被覆する樹脂製の外装部材を有する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の手摺。
【請求項6】
上記フランジには、上記エルボ部のフランジ一体成形部が形成されず外部に露出する露出部が形成されている、請求項1乃至5の何れか1項に記載の手摺。
【請求項7】
上記フランジには、上記フランジを上記壁面に固定する固定具が挿通される固定具用孔が形成され、この固定具用孔は、上記フランジ一体成形部を形成する際に上記フランジを固定する製造用固定具が挿通される固定用孔を兼ねている、請求項1乃至6の何れか1項に記載の手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺に係り、特に、壁面に固定される手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、壁面に固定される手摺の継手部として、握り部と連結されるエルボと、壁面に固定されるフランジと、エルボとフランジとを連結するための止めねじとを備えた構造の手摺が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-158902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された従来構造の手摺においては、エルボとフランジとを止めねじで締結する構造のため、止めねじで締結する組立工程が必要となり、さらに、ボルト緩みを防ぐための部品の追加又は特殊なボルトの採用などの対策が必要となるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や課題を解決するためになされたものであり、樹脂製のエルボ部と金属製のフランジとをボルトにより締結しなくとも、要求される強度を満たしながら、コストを抑制することができる手摺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、壁面に固定される手摺であって、上記壁面に固定される金属製のフランジと、上記壁面から離間した位置において上記壁面に沿って延びるバー部材と、上記フランジと上記バー部材とを接続する樹脂製のエルボ部と、を有し、上記エルボ部は、樹脂が上記フランジの少なくとも一部と一体成形されるフランジ一体成形部を備えていることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、樹脂がフランジの少なくとも一部と一体成形されるフランジ一体成形部をエルボ部が備えているので、樹脂製のフランジ一体成形部と金属製のフランジが強固に結合される。よって、樹脂製のエルボ部と金属製のフランジとを締結するボルト等を省略することができると共にエルボ部とフランジとを結合する強度を向上させることができる。さらに、樹脂製のエルボ部と金属製のフランジとをボルトにより締結する組立工程が不要となると共に、ボルト緩みを防ぐための部品の追加や特殊なボルトの採用が不要となる。従って、本発明の手摺によれば、樹脂製のエルボ部と金属製のフランジとをボルトにより締結しなくとも、要求される強度を満たしながら、コストを抑制することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記フランジは、板状に形成されたプレート部と、このプレート部から上記バー部材側に向けて立ち上がる立上部を備え、上記エルボ部の上記フランジ一体成形部は、上記フランジの上記立上部の少なくとも一部と一体成形されている。
このように構成された本発明においては、エルボ部のフランジ一体成形部が、フランジの立上部の少なくとも一部と一体成形されているので、フランジ一体成形部により樹脂製のエルボ部と金属製のフランジとを強固に結合することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記エルボ部の上記フランジ一体成形は、上記フランジの壁側面まで延びるかかり部を備えている。
このように構成された本発明においては、フランジ一体成形部が、フランジの壁側面まで延びるかかり部を備えているので、フランジ一体成形部により樹脂製のエルボ部と金属製のフランジと強固に結合することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記フランジの上記立上部は管状に形成され、上記エルボ部の上記フランジ一体成形部は、上記立上部の内側面を保持する内側一体成形部と、上記立上部の外側面を保持する外側一体成形部を備える。
このように構成された本発明においては、フランジ一体成形部は、内側一体成形部及び外側一体成形部により立上部の内側面と外側面とを保持するように形成されているので、フランジ一体成形部により樹脂製のエルボ部と金属製のフランジの立上部とを結合する強度をより向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、上記エルボ部の少なくとも一部の外面を被覆する樹脂製の外装部材を有する。
このように構成された本発明においては、外装部材によってエルボ部の少なくとも一部の外面を被覆することができ、強度が求められるエルボ部と意匠性が求められる外装部材とで、異なる材質の樹脂を選択することができる。これにより、強度が比較的良好な樹脂によりエルボ部を形成すると共に、意匠性が比較的良好な樹脂により外装部材を形成することができる。よって、本発明によれば、樹脂製のエルボ部部分の強度の確保と意匠性を両立させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記フランジには、上記エルボ部のフランジ一体成形部が形成されず外部に露出する露出部が形成されている。
このように構成された本発明においては、フランジは壁面に固定されると共に、バー部材にかかる荷重を受ける。バー部材に荷重がかかるとき、フランジには応力がかかり、この応力によってフランジは微小に変形される。フランジが微小に変形した場合においても、フランジには、エルボ部のフランジ一体成形部が形成されず外部に露出する露出部が形成されているため、この露出部によりフランジの変形が許容されると共に、フランジ一体成形部が亀裂を生じる又は破損されることを抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記フランジには、上記フランジを上記壁面に固定する固定具が挿通される固定具用孔が形成され、この固定具用孔は、上記フランジ一体成形部を形成する際に上記フランジを固定する製造用固定具が挿通される固定用孔を兼ねている。
このように構成された本発明においては、フランジには、フランジを壁面に固定する固定具が挿通される固定具用孔と、フランジの一体成形部を形成する際に製造用固定具が挿通される固定用孔とが兼用の孔として形成されている。これにより、フランジに、壁面固定用の固定具用孔に加えて、製造用固定具を挿通する固定用孔を別途設ける必要を無くすことができ、フランジの強度が孔の追加により低下することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の手摺によれば、樹脂製のエルボ部と金属製のフランジとをボルトにより締結しなくとも、要求される強度を満たしながら、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による手摺を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による手摺の継手部を、カバーを取り外した状態で示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による手摺の継手部の中央断面図である。
図4】本発明の一実施形態による手摺の継手部の部分拡大中央断面図である。
図5】本発明の一実施形態による手摺の継手部のフランジの斜視図である。
図6】本発明の一実施形態による手摺の継手部を裏側から見た斜視図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例による手摺の継手部の中央断面図である。
図8】本発明の一実施形態の変形例による手摺の継手部のフランジの斜視図である。
図9】本発明の一実施形態における手摺の継手部のエルボ部及び外装部材の製造方法におけるインサート成形工程を説明する図である。
図10】本発明の一実施形態における手摺の継手部のエルボ部及び外装部材の製造方法における外装工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による手摺の構造について説明する。
図1は本発明の一実施形態による手摺を示す斜視図であり、図2は本発明の一実施形態による手摺の継手部を、カバーを取り外した状態で示す斜視図であり、図3は本発明の一実施形態による手摺の継手部の中央断面図であり、図4は本発明の一実施形態による手摺の継手部の部分拡大中央断面図であり、図5は本発明の一実施形態による手摺の継手部のフランジの斜視図であり、図6は本発明の一実施形態による手摺の継手部を裏側から見た斜視図である。
【0016】
図1に示すように、手摺1は、壁面Wに固定される手摺であり、この手摺1は、特に、トイレ、洗面台、浴室等の水回り環境に設けられる。手摺1は、壁面Wから距離Hだけ離間した位置において壁面Wに沿って延びるバー部材2と、このバー部材2を壁面Wに固定する継手部4と、を備えている。この継手部4の壁面W近傍の部分が、カバー8により覆われている。
【0017】
図2乃至図6に示すように、継手部4は、壁面Wに沿う向きに広がるように形成され且つ壁面Wに固定される金属製のフランジ6と、フランジ6の外側を覆うように形成されるカバー8と、フランジ6とバー部材2とを接続するエルボ部10と、エルボ部10の少なくとも一部の外面を被覆する外装部材14とを備えている。
【0018】
フランジ6は、板状、特に円盤形状に形成されたプレート部6aと、プレート部6aからバー部材側に向けて立ち上がる管形状の立上部6bと、を備えている。プレート部6aには、中心側に内周口6cが形成され、この内周口6cから立ち上がるように、立上部6bが形成されている。プレート部6aは内周口6cから外周端6dまでほぼ平板上に形成され、壁面Wに沿って配置されていれる。なお、本実施形態において、このフランジ6は、立上部6bを省略し、プレート部6aのみにより形成されていてもよい。
【0019】
図5及び図6に示すように、フランジ6のプレート部6aには、複数の固定具用孔6eが形成され、この固定具用孔6eにねじ11が挿入され、このねじ11により、フランジ6が壁面Wに固定されるようになっている。フランジ6のプレート部6aには、さらに、固定具用孔6eとは別の露出孔6jが形成されている。よって、フランジ6には、エルボ部10のフランジ一体成形部12が形成されず外部に露出するような露出部である露出孔6jが形成されている。露出部は、円形の露出孔6jに限られず、フランジ6の表面の露出部、切欠部等で形成されていてもよい。フランジ6のプレート部6aには、さらに、固定具用孔6e及び露出孔6jとは別の後述する連通孔6fが形成されている。連通孔6fは省略されてもよい。固定具用孔6e、露出孔6j、連通孔6fは同じ形状及び大きさの孔を形成している。プレート部6aには、少なくとも固定具用孔6eが形成されていればよい。
【0020】
エルボ部10は、樹脂製であり、この樹脂が上述したフランジ6と一体成形(インサート成形)されている。このエルボ部10の樹脂のフランジ6との一体成形は、フランジ6の全面である必要はなく、エルボ部10の樹脂がフランジ6の少なくとも一部と一体成形されていればよい。このエルボ部10の樹脂のフランジ6との一体成形部分を、以下、フランジ一体成形部12と呼ぶ。
【0021】
図4に示すように、このエルボ部10のフランジ一体成形部12は、フランジ6の壁側面6g上まで形成されている。フランジ一体成形部12は、フランジ6の内周口6cの内側(フランジ6の中心側)で壁側に向かって延びる内周内側部12aと、フランジ6の外周端6dの外側(フランジ6の半径方向外側)で壁側に向かって延びる外周外側部12bと、フランジ6の壁側において内周内側部12aから外側に向けて延びるかかり部である内側かかり部12cと、フランジ6の連通孔6fのバー部材側から壁側まで延び且つ壁側において内側又は外側に向けて延びるかかり部である中間かかり部12dと、フランジ6の壁側において外周外側部12bから内側に向けて延びるかかり部である外側かかり部12eとを備えている。図4において、内周内側部12a、外周外側部12b、内側かかり部12c、中間かかり部12d及び外側かかり部12eの領域を破線により例示している。
【0022】
内周内側部12aは、内周口6cの内面を支持するような円筒形状に形成されている。
外周外側部12bは、外周端6dの外面を支持するような円筒形状に形成されている。
内側かかり部12cは、内周口6cの壁側の縁から外側に広がるようなつば部を形成している。内側かかり部12cは、環状に形成されている。内側かかり部12cの外周端は内周口6cよりも外側に形成されている。
中間かかり部12dは、連通孔6fよりも広い領域に広がるように形成されている。中間かかり部12dは、内周口6cと外周端6dとの間の領域において広がるようなつば部を形成している。中間かかり部12dは、外側かかり部12eと接続されて強度が高められている。
外側かかり部12eは、外周端6dの壁側の縁から内側に広がるようなつば部を形成している。外側かかり部12eは、環状に形成されている。外側かかり部12eの内周端は外周端6dよりも内側に形成されている。フランジ一体成形部12は、このような構成部分の全部又は一部によりフランジ6の少なくとも一部を抱き込むように形成され、フランジ6と強固に一体成形されている。例えば、フランジ一体成形部12は、少なくとも内周内側部12a及び外周外側部12bを備えることにより、後述するようにエルボ部10の強度を補強できる。フランジ一体成形部12により、フランジ一体成形部12とフランジ6とを締結するボルト等を省略することができると共に樹脂製のフランジ一体成形部12と金属製のフランジ6とを結合する強度を向上させることができる。よって、フランジ一体成形部12は、エルボ部10の強度を補強する機能を有する。
【0023】
また、フランジ一体成形部12は、フランジ6の立上部6bの少なくとも一部を一体成形する。フランジ一体成形部12は、立上部6bの内側面6hを保持する内側一体成形部である内側立上部12fと、立上部6bの外側面6iを保持する外側一体成形部である外側立上部12gとを備える。図4において、内側立上部12f及び外側立上部12gの領域を破線により例示している。
内側立上部12fは、立上部6bの内側面6hに沿った円筒形状に形成されている。内側立上部12fは、立上部6bの内側において立上部6bによって支持されることができ、エルボ部10の強度を向上させることができる。
外側立上部12gは、立上部6bの外側面6iに沿った円筒形状に形成されている。外側立上部12gは、立上部6bの外側において立上部6bによって支持されることができ、エルボ部10の強度を向上させることができる。
【0024】
フランジ一体成形部12には、複数の固定具用孔12hが形成され、この固定具用孔12hにねじ11が挿入され、このねじ11により、フランジ一体成形部12が壁面Wに固定されるようになっている。固定具用孔12hは、固定具用孔6eとほぼ同じ位置においてほぼ同じ形状に形成されている。フランジ一体成形部12には、さらに、固定具用孔12hとは別の露出孔12iが形成されている。露出孔12iは、フランジ6のプレート部6aの外面の一部を露出させるような露出部である開口部分である。フランジ一体成形部12の露出孔12iは、フランジ6の露出孔6jと同じ大きさ及び形状の開口を形成することにより、露出孔6jの表面を覆わない露出部分を形成している。露出孔12iは、例えばプレート部6aの外周端6dの外面の一部を露出させるなど、プレート部6aの露出孔6jと異なる位置及び形状に形成されていてもよい。
【0025】
エルボ部10のフランジ一体成形部12により樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6とを結合する強度が向上される。従って、エルボ部10にエンジアリングプラスチックを用いなくともエルボ部10に要求される強度を満たすことができる。エルボ部10は、家庭用の手摺に要求される強度のみならず、公共の場に設けられる手摺に要求される強度も満たすことができる。エルボ部10は、汎用樹脂(汎用プラスチック)にガラス繊維を混ぜることにより形成することができる。これにより、エルボ部10を汎用樹脂をもとに比較的安価に製造することができる。なお、エルボ部10は、エンジアリングプラスチックにより形成されてもよい。
【0026】
外装部材14は、樹脂により形成されている。外装部材14は、エルボ部10とは別に形成される。よって、外装部材14は、エルボ部10の樹脂材料と異なる樹脂材料により形成されることができる。エルボ部10には、上述のような一定の強度を生じさせる樹脂材料が用いられる必要がある。これに対し、外装部材14は、意匠性の高い樹脂材料を別途使用することができる。例えば、外装部材14は、光沢を有する樹脂材料や、色味を加えた樹脂材料を使用することができる。また、エルボ部10の本体構造は汎用樹脂により形成され、エルボ部10の外装のみが外装部材14により形成されるので、外装部材14の樹脂材料の使用量を低減することができる。
【0027】
図7及び図8を参照して、フランジ6の変形例について説明する。
ここで、図7及び図8に示す一実施形態の変形例による手摺の構成については、図1乃至図6に示す一実施形態による手摺と同様の構成であるため、同一の部分について同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
図7は本発明の一実施形態の変形例による手摺の継手部の中央断面図であり、図8は本発明の一実施形態の変形例による手摺の継手部のフランジの斜視図である。
【0028】
手摺1のフランジ106は、フランジ106からバー部材2側に向けて立ち上がる第1立上部6bと、第1立上部6bからさらにバー部材2側に向けて立ち上がる第2立上部7を備えている。第2立上部7は第1立上部6bの内面に接合されている。第2立上部7はカバー8の前面よりもバー部材2側まで延び、壁面Wとバー部材2との間の距離の半分以上の位置まで先端が延びている。第2立上部7は管状に形成されている芯材である。第2立上部7は金属により形成されている。第2立上部7はフランジ106とは別部材として準備され、第2立上部7はフランジ106と溶接により接合されている。第2立上部7はフランジ106と一体に形成されていてもよい。
【0029】
エルボ部10は、フランジ106の少なくとも一部を一体成形するように形成されるフランジ一体成形部112を備えている。フランジ一体成形部112は、内周内側部12aと、外周外側部12bと、内側かかり部12cと、中間かかり部12dと、外側かかり部12eとを備えている。フランジ一体成形部112は、このような構成部分によりフランジ106の少なくとも一部を一体成形するように形成され、フランジ106と強固に結合されている。よって、フランジ一体成形部112とフランジ106とを締結するボルト等を省略することができると共にフランジ一体成形部112とフランジ106とを強固に結合することができる。
【0030】
フランジ一体成形部112は、第1立上部6bの外側面6iを保持する外側立上部12gを備える。さらに、フランジ一体成形部112は、フランジ106の第2立上部7の少なくとも一部を一体成形する。フランジ一体成形部112は、第2立上部7の内側面7aを保持する内側一体成形部である第2内側立上部112fと、第2立上部7の外側面7bを保持する外側一体成形部である第2外側立上部112gとを備える。
第2内側立上部112fは、第2立上部7の内側面7aに沿った円筒形状に形成されている。第2内側立上部112fは、第2立上部7の内側において比較的長い距離にわたって第2立上部7により支持されるので、第2内側立上部112fが受ける曲がりの力に抗することができ、エルボ部10の強度をより向上させることができる。
第2外側立上部112gは、第2立上部7の外側面7bに沿った円筒形状に形成されている。第2外側立上部112gは、第2立上部7の外側において比較的長い距離にわたって第2立上部7により支持されるので、第2外側立上部112gが受ける曲がりの力に抗することができ、エルボ部10の強度をより向上させることができる。
このような構造により、変形例による手摺1においては、エルボ部10が樹脂によって形成されている場合であっても、エルボ部10の強度をより高めることができ、樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ106とを強固に結合することができる。
【0031】
次に、図9及び図10を参照して、本発明の一実施形態における手摺1の継手部4のエルボ部10及び外装部材14の製造方法を説明する。
図9は本発明の一実施形態における手摺の継手部のエルボ部及び外装部材の製造方法におけるインサート成形工程を説明する図であり、図10は本発明の一実施形態における手摺の継手部のエルボ部及び外装部材の製造方法における外装工程を説明する図である。
【0032】
手摺1のエルボ部10は、フランジ6を一体化した複合部品としていわゆるインサート成形により形成される。また、手摺1のエルボ部10は、変形例のフランジ106を一体化した複合部品としていわゆるインサート成形により形成されることもできる。
先ず、フランジ6をインサート部材として準備する準備工程が実施される。準備工程において、フランジ6は、金属により予め形成される。
【0033】
次に、フランジ6を、インサート成形用の成形装置16内に配置し、インサート成形を行うインサート成形工程が実施される。フランジ6の固定具用孔6eには、フランジ6を被覆するフランジ一体成形部12を形成する際にフランジ6を固定する製造用固定具18が挿通され、フランジ6が固定される。固定具用孔6eが製造用固定具18が挿通される固定用孔と兼用の孔として形成されている。よって、フランジ6に、壁面固定用の固定具用孔6eに加えて、製造用固定具18を挿通する固定用孔を別途設ける必要を無くすことができ、フランジ6の強度が孔の追加により低下することを防ぐことができる。フランジ6が第1型20及び第2型21内において固定されている状態で、矢印F1に示すように、エルボ部10を形成する樹脂材料21が成形装置16の第1型20及び第2型21内に注入される。このようにして、樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6とをボルトにより締結する組立工程を省略して、フランジ6を一体化したエルボ部10が形成される。
【0034】
次に、図10に示すように、フランジ6を一体化したエルボ部10の外面をさらに被覆する外装工程が実施される。外装工程は成形装置16とは異なる成形装置22において行われているが、成形装置16において後述する型24を用いて行われてもよい。
フランジ6及びエルボ部10は、樹脂成形用の成形装置22の型24内に配置される。フランジ6の固定具用孔6eには、製造用固定具18が挿通され、フランジ6及びエルボ部10が固定される。フランジ6及びエルボ部10が型24内において固定されている状態で、矢印F2に示すように、外装部材14を形成する樹脂材料26が成形装置22の型24内に注入される。このようにして、エルボ部10の少なくとも一部の外面を被覆する外装部材14が形成される。
【0035】
上述した本発明の一実施形態による手摺1によれば、エルボ部10が樹脂がフランジ6の少なくとも一部と一体成形されるフランジ一体成形部12を備えているので、樹脂製のフランジ一体成形部12と金属製のフランジ6が強固に結合される。よって、樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6とを締結するボルト等を省略することができると共にエルボ部10とフランジ6とを結合する強度を向上させることができる。さらに、樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6とをボルトにより締結する組立工程が不要となると共に、ボルト緩みを防ぐための部品の追加や特殊なボルトの採用が不要となる。従って、本発明の手摺によれば、樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6とをボルトにより締結しなくとも、要求される強度を満たしながら、コストを抑制することができる。
【0036】
さらに、一実施形態による手摺1によれば、エルボ部10のフランジ一体成形部12が、フランジ6の立上部の少なくとも一部と一体成形されているので、フランジ一体成形部12により樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6とを強固に結合することができる。
【0037】
さらに、一実施形態による手摺1によれば、フランジ一体成形部12が、フランジ6の壁側面まで延びる内側かかり部12c、中間かかり部12d、及び/又は外側かかり部12eを備えているので、フランジ一体成形部12により樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6と強固に結合することができる。
【0038】
さらに、一実施形態による手摺1によれば、フランジ一体成形部12は、内側立上部12f及び/又は第2内側立上部112f、さらに外側立上部12g及び/又は第2外側立上部112gにより立上部6b及び/又は第2立上部7の内側面と外側面とを保持するように形成されているので、フランジ一体成形部12部により樹脂製のエルボ部10と金属製のフランジ6の立上部とを結合する強度をより向上させることができる。
【0039】
さらに、一実施形態による手摺1によれば、外装部材14によってエルボ部10の少なくとも一部の外面を被覆することができ、強度が求められるエルボ部10と意匠性が求められる外装部材14とで、異なる材質の樹脂を選択することができる。これにより、強度が比較的良好な樹脂によりエルボ部10を形成すると共に、意匠性が比較的良好な樹脂により外装部材14を形成することができる。よって、本発明によれば、樹脂製のエルボ部10部分の強度の確保と意匠性を両立させることができる。
【0040】
さらに、一実施形態による手摺1によれば、フランジ6は壁面に固定されると共に、バー部材2にかかる荷重を受ける。バー部材2に荷重がかかるとき、フランジ6には応力がかかり、この応力によってフランジ6は微小に変形される。フランジ6が微小に変形した場合においても、フランジ6には、エルボ部10のフランジ一体成形部12が形成されず外部に露出する露出孔6jが形成されているため、この露出孔6jによりフランジ6の変形が許容されると共に、フランジ一体成形部12が亀裂を生じる又は破損されることを抑制することができる。
【0041】
さらに、一実施形態による手摺1によれば、フランジ6には、フランジ6を壁面に固定する固定具が挿通される固定具用孔6eと、フランジ6の一体成形部を形成する際に製造用固定具18が挿通される固定用孔とが兼用の孔として形成されている。これにより、フランジ6に、壁面固定用の固定具用孔6eに加えて、製造用固定具18を挿通する固定用孔を別途設ける必要を無くすことができ、フランジ6の強度が孔の追加により低下することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 手摺
2 バー部材
4 継手部
6 フランジ
6b 立上部
6e 孔
7 第2立上部
8 カバー
10 エルボ部
12 フランジ一体成形部
12c 内側かかり部
12d 中間かかり部
12e 外側かかり部
12f 内側立上部
12g 外側立上部
12h 被覆孔
14 外装部材
106 フランジ
112 フランジ一体成形部
112f 第2内側立上部
112g 第2外側立上部
W 壁面
図1
図2
図3
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図10