(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/539 20060101AFI20220418BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20220418BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220418BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20220418BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61F13/539
A61F13/512
A61F13/15 355B
A61F13/15 355A
A61F13/494
A61F13/475
(21)【出願番号】P 2018117748
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594152929
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】小幡 純子
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-141511(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145193(JP,U)
【文献】特開2015-116457(JP,A)
【文献】特開2003-175073(JP,A)
【文献】特表2002-532192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透水性の開口シート、吸収パッド及び不透水性の非開口シートが
相互に接触する部分における各々の溶
着によりこの順に積層された状態で無縫製で一体化された積層体を具備し、前記開口シートは、前記吸収パッドの周縁部を除いた部分を露出させる開口を有する吸収性物品の製造方法であって、
前記吸収パッドは、複数層をキルティング加工により一体化して構成し、このキルティング加工の縫着線として、該吸収パッドの長手方向に延び、その前端及び後端にまで至るものを一つの中央ラインのみと
し、
前記キルティング加工の縫着線は、前記中央ラインと、前記吸収パッドの外周縁に沿って延びる外周ラインと、外周ラインに沿ってその内側に延びる内周ラインとによって構成され、前記開口から前記中央ラインの大部分が露出し前記外周ラインは露出しない吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記積層体の前記非開口シート側には、その全面を覆う表生地を配し、前記積層体及び前記表生地は、両者の外縁を挟み込む短冊状布とともに、その外縁において相互に全周にわたって縫着してあり、
前記吸収パッド自体に他の構成部材への縫い合わせ部分を形成しない請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、失禁用パンツや生理用ナプキン等として利用可能な吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸収性物品として、吸収パッドを不透水性シートで覆うにあたり、吸収パッドと不透水性シートを縫製糸で縫い合わせた失禁用パンツが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記吸収性物品では、吸収パッドに吸収した尿等の体液が、縫い合わせた部分(針穴部分)より漏れ出し、パンツ自体や外衣を濡らしてしまう恐れがある。
【0004】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、液漏れ防止効果に優れ、生産性の向上をも図ることのできる吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る吸収性物品の製造方法は、不透水性の開口シート、吸収パッド及び不透水性の非開口シートが相互に接触する部分における各々の溶着によりこの順に積層された状態で無縫製で一体化された積層体を具備し、前記開口シートは、前記吸収パッドの周縁部を除いた部分を露出させる開口を有する吸収性物品の製造方法であって、前記吸収パッドは、複数層をキルティング加工により一体化して構成し、このキルティング加工の縫着線として、該吸収パッドの長手方向に延び、その前端及び後端にまで至るものを一つの中央ラインのみとし、前記キルティング加工の縫着線は、前記中央ラインと、前記吸収パッドの外周縁に沿って延びる外周ラインと、外周ラインに沿ってその内側に延びる内周ラインとによって構成され、前記開口から前記中央ラインの大部分が露出し前記外周ラインは露出しない(請求項1)。
【0006】
上記吸収性物品の製造方法において、前記積層体の前記非開口シート側には、その全面を覆う表生地を配し、前記積層体及び前記表生地は、両者の外縁を挟み込む短冊状布とともに、その外縁において相互に全周にわたって縫着してあり、前記吸収パッド自体に他の構成部材への縫い合わせ部分を形成しないようにしてもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0007】
本願発明では、液漏れ防止効果に優れ、生産性の向上をも図ることのできる吸収性物品の製造方法が得られる。
【0008】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の吸収性物品は、吸収パッド自体やその付近に縫い合わせ部分(針穴部分)が形成されないようにすることができるものであるので、こうした縫い合わせ部分が形成される従来の吸収性物品に比べ、液漏れ防止効果に優れたものとなり、縫い合わせする部分を少なくすることにより、生産性の向上をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る吸収性物品の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】前記吸収性物品の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】前記吸収性物品の構成を概略的に示す底面図である。
【
図4】前記吸収性物品の吸収パッドの構成を概略的に示す説明図である。
【
図5】前記吸収性物品の変形例の構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1~
図3に示す吸収性物品は、生理用ナプキンであり、
図1に示すように、オーバル(角丸長方形:二つの等しい長さの平行線と二つの半円形からなる形)状の開口1を有する不透水性の開口シート2と、開口1より一回り大きいオーバル状の吸収パッド3と、不透水性の非開口シート4とを有する。これらの部材2~4は、溶着(熱圧着)により無縫製で一体化されて積層体となり、吸収パッド3の周縁部(例えば外周端から中央に向かって8~10mm程度の幅部分)を除いた部分(中央部)は開口1から露出することになる。すなわち、積層体において、開口シート2、吸収パッド3及び非開口シート4は、相互に接触する部分において各々溶着している。なお、溶着の条件(温度、加圧時間等)は、各部材2~4が固くならず、洗濯に強い、といった必要な性質を持たせることのできる範囲で適宜に設定すればよい。
【0012】
ここで、開口シート2と非開口シート4とは同一形状であり、例えば非開口シート4から開口1に相当する部分を切り抜いた形状のものが開口シート2の形状になるように構成されている。本例では、開口シート2の左右には半円弧状の突出部分2aが設けられ、非開口シート4の左右には半円弧状の突出部分4aが設けられている。そして、これらの不透水性のシート2,4は、上記のように溶着することができるように構成されていればよく、例えばナイロン基布やポリエステル基布など(いずれも非熱可塑性層の一例)に熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性層の一例)をラミネートしたものをシート2,4として用いることができる。
【0013】
上記のように形成される積層体(部材2~4)の非開口シート4側には、その全面を覆う表生地5が配され、積層体及び表生地5は、両者の外縁を挟み込む短冊状布6とともに、その外縁において相互に全周にわたって縫着される(
図2、
図3参照)。なお、表生地5は非開口シート4と略同一形状である。
【0014】
図4に示す吸収パッド3は、上側(地肌に接する側)から下側に向かって第一層L1~第六層L6が積層した6層構造を有する。ここで、第一層L1は、ポリエステルシート(ポリエステル製のシート)、第二層L2及び第五層L5はポリエステルメッシュ(ポリエステル繊維からなるメッシュ編地)、第三層L3、第四層L4及び第六層L6は不織布(例えばレーヨン繊維で構成された不織布、あるいはレーヨン繊維とアクリル繊維とを混合した不織布)であり、これらの6層はキルティング加工により一体化される。この縫着線(縫着糸)7は、吸収パッド3の中央を長手方向に延びる中央ライン7aと、吸収パッド3の外周縁に沿って延びる外周ライン7bと、外周ライン7bに沿ってその内側に延びる内周ライン7cとによって構成されている。
【0015】
なお、
図1に示すように、開口シート2の突出部分2aに布片8が縫着され、この布片8にはスナップボタン9が設けられている。また、非開口シート4の突出部分4aに布片10が縫着され、この布片10にはスナップボタン9に対応する二つのスナップボタン11が設けられている。
【0016】
上記のように構成される吸収性物品は、例えば開口1が内側を向くように下着の股部に装着され、開口1から露出する吸収パッド3に尿等の体液が吸収されるのであるが、吸収パッド3自体やその付近に縫い合わせ部分(針穴部分)が形成されないようにすることができるので、こうした縫い合わせ部分が形成される従来の吸収性物品に比べ、液漏れ防止効果に優れたものとなり、着用者は安心して使用することができ、洗濯して繰り返し使用することも可能である。また、本例の吸収性物品は、縫い合わせする部分を少なくしてあることにより、生産性の向上をも図ることができる。
【0017】
さらに、キルティング加工の縫着線7として、吸収パッド3の長手方向に延び、その前端及び後端にまで至るものを中央ライン7aのみとしたことにより、こうしたラインを複数有するものに比べ、着座時等に吸収パッド3に吸収された液等の漏れだしが生じ難くなり、この点でも液漏れ防止効果が高まることになる。
【0018】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0019】
上記実施の形態では、開口シート2、吸収パッド3及び非開口シート4を溶着によって一体化しているが、これに限らず、例えば接着剤を用いた接着(粘着も含む)等により一体化するようにしてもよい。
【0020】
また、上記実施の形態では、吸収性物品を生理用ナプキンとして構成した例を示しているが、これに限らず、例えば失禁用パンツとして構成してもよい。この場合、
図5に示すように、失禁用パンツの表布12の内側(裏側)に、開口シート2、吸収パッド3及び非開口シート4を一体化した積層体を、開口シート2が地肌側にくるように縫着等によって装着すればよい。
【0021】
上記実施の形態では、吸収パッド3を
図4に示す6層構造としているが、この吸収パッド3の構成は適宜に変更可能であり、例えば第三層L3、第四層L4の不織布の厚みを増減したり、用いる不織布の枚数を増減したりすることにより、想定する体液の吸収量の調節が可能である。
【0022】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 開口
2 開口シート
2a 突出部分
3 吸収パッド
4 非開口シート
4a 突出部分
5 表生地
6 短冊状布
7a 中央ライン
7b 外周ライン
7c 内周ライン
8 布片
9 スナップボタン
10 布片
11 スナップボタン
12 表布
L1 第一層
L2 第二層
L3 第三層
L4 第四層
L5 第五層
L6 第六層