(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220418BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220418BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220418BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20220418BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20220418BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/35
A61K8/55
A61K8/84
A61K8/85
A61Q3/02
(21)【出願番号】P 2017156079
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2016158933
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一生
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/082057(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/153396(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/043579(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 8/00- 8/40
A45D 24/00-31/00
A45D 42/00-97/00
Mintel GNPD
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、光重合開始剤
及び粘着付与剤を含有し、組成物全体における粘着付与剤
の含有割合が2.2重量%以上
であり、
粘着付与剤が、不均化ロジン、水添ロジ
ン、ケトンアルデヒド縮合樹脂、水素添加ケトンアルデヒド縮合樹脂、シクロヘキサノン系ケトン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか1種以上である、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、光重合開始剤
及び粘着付与剤を含有し、組成物全体における粘着付与剤
の含有割合が2.2重量%以上
であり、
粘着付与剤が、少なくとも不均化ロジン、水添ロジン、水添ロジン酸グリセリル、又は水添ロジン酸ペンタエリスリチルを含み、かつケトンアルデヒド縮合樹脂、水素添加ケトンアルデヒド縮合樹脂、
シクロヘキサノン系ケトン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか1種以上を含む、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
【請求項3】
フェノール樹脂が、アルキルフェノール樹脂である請求項2に記載の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の自爪に装飾を施したり、人工爪を接着してこれに装飾を施すというネイルアートの人気が高まっている。また、外力による爪の割れ・剥がれを防止するための補強や、装飾の目的で、いわゆるマニキュア、ペディキュア、スカルプチュアと呼ばれる樹脂含有の材料を爪に塗布することもなされている。
【0003】
装飾又は補強のために使用される爪装飾材料としては、ニトロセルロース系のラッカーを有機溶剤に溶解し、これに各種色調の顔料を加えたものがある。これらは、爪や人工爪に塗布した後、有機溶剤を揮発させて、光沢に優れた被膜を形成するものである。そして、この被膜はアセトン等の有機溶剤を用いて容易に拭き取ることができる。
特に最近、ウレタンアクリレート系オリゴマーとアクリル系モノマーを含むジェル状の爪被覆材料を爪に塗布し、紫外線を照射して硬化させる、ジェルネイルと呼ばれる光硬化性人工爪組成物が注目を集めている。
これらは、ラジカル重合反応により、架橋した高分子被膜を形成するため、爪から剥がれにくい強靱な被膜を形成できるとされている。
【0004】
このような光硬化性人工爪組成物として、特許文献1に記載されているように、該組成物中に紫外線の照射により重合可能な重量平均分子量3,000~50,000のポリウレタンアクリレートやモノマー成分を含有する、爪への密着性や除去性に優れた光重合性人工爪組成物は公知である。
また、特許文献2に記載されているように、ウレタンアクリレートオリゴマー及びヒドロキシエチルアクリレートを含有し、人体に安全なUVAにより短時間で十分に硬化させることができる光硬化性人工爪組成物も公知である。
特許文献3には、ネイル用の除去可能なゲル硬化性の組成物であって、ジ-[ヒドロキシエチルメタクリリック]トリメチルヘキシルジカルバメート、メタクリル酸エステル、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及び溶剤を含有する組成物であり、さらに配合し得る成分のうちの一種としてポリウレタンアクリレートオリゴマーも例示されている。
これらの文献に加えて、特許文献4には、1分子内にラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物、およびチオール化合物を含有する光硬化性人工爪組成物とすることによって、光を遮蔽した室温下にて保管の問題を発生させず、硬化後においても、人工爪内に未硬化の組成物が残存しないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-229725号公報
【文献】特開2010-105967号公報
【文献】特許第5756604号公報
【文献】特開2014-005260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウレタンアクリレート系オリゴマーとアクリル系モノマーを含むジェル状の爪被覆材料を自爪に被覆して人工爪とした場合、これを自爪表面から除去するためには、アセトン等の有機溶剤を含浸させたコットン等を人工爪表面に長時間押し当てることが必要である。
これによって、人工爪表面から有機溶剤が浸透し、全体が膨潤し軟化することによって、自爪表面から人工爪を除去できる。しかしながら、このような除去には長時間を要するので、その間は不自由であり、かつ溶剤の臭気を嗅ぎ続けるため、本発明においては、硬化被膜の密着性が良好であることを前提として、可能な限り短時間で人工爪を自爪表面から除去できる粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成物からなる粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
1.ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、光重合開始剤、さらに粘着付与剤を全組成物中2.2重量%以上、含有する粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
2.粘着付与剤が、ロジン及び/又はロジン誘導体、ケトン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか1種以上である1に記載の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
3.粘着付与剤が、少なくともロジン及び/又はロジン誘導体を含み、かつケトン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか1種以上を含む2に記載の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
4.ロジン及び/又はロジン誘導体が、水添ロジン及び/又は水添ロジン誘導体である2に記載の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
5.ケトン樹脂が、シクロヘキサノン系ケトン樹脂である2に記載の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
6.フェノール樹脂が、アルキルフェノール樹脂である2に記載の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
7.ポリエステル樹脂が、変性特殊ポリエステル樹脂である2に記載の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自爪等の表面に形成した硬化されたジェルネイル組成物は、その下の表面との密着性に優れ、かつ、より短時間で除去できる。そのため、除去作業中の不自由さが低減し、かつ有機溶剤を嗅ぐ時間も短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物は、いわゆる一般のマニキュアやペディキュア、ジェルネイルのように、爪やチップの表面に、ベースコート層、中間層であるカラーコート層、あるいはトップコート層として被覆を行うための組成物とすることもできるが、自爪から人工爪全体を除去することを考慮すると、特にベースコート層のための組成物とすることもできる。
そして、従来の紫外線等により硬化されるラジカル重合性のマニキュア等と同様、紫外線硬化用の設備を用いて爪表面を被覆するものである。
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物は特にジェルネイルとして使用することもできる。その中でも使用者の爪に直接塗布されるベースコート、該ベースコートの上に塗布されるカラーコート、さらにその上に塗布されるトップコートのいずれにも使用され得るものである。
自爪表面に直に塗布するベースコートは、僅かに黄色、場合により微量の紫や青の色素を配合して、経時劣化による色調の変化を防止することもできる。
カラーコートはソリッドカラーやラメ調、金属光沢調、暗色や明色等多彩に着色されるコートである。
トップコートは、ベースコートと同様に、僅かに黄色、場合により微量の紫や青の色素を配合して、経時劣化による色調の変化を防止することがあるが、本発明の組成物とすることにより、経時劣化をさらに防止することができる。最上層であるため、ジェルネイルの艶を発揮させる作用を有する。
硬化後にも、酸素による重合阻害等を原因とする未重合の光重合性成分が、被膜内に存在するときには、エタノール、イソプロパノール等の溶剤、特にエタノールを用いて拭き取る工程が必要である。但し、十分な硬化性を備えるときには、このような工程を要しない。
いずれの層に関しても、退色・変色を防止でき、かつ硬化後少なくとも2週間、欠けることなく、剥がれず、また下層や使用者の爪に対して浮きが発生しない。
【0010】
以下に本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の具体的組成について説明する。
[ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を加えて、前記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基総数の10%以上のイソシアネート基に、前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を付加反応させて得ることができる。なお、ここで、該イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基と反応するジオール化合物やジアミン化合物が分岐を含み炭素数5以上の炭素鎖セグメントとしてのアルキレン基、好ましくは炭素数6以上のアルキレン基を有することが必要である。
なかでも、重量平均分子量が400~30,000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましい。また、重量平均分子量が400~30,000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、このようにして得られた各種の重量平均分子量(場合により一部は重量平均分子量が400未満又は30,000を超える)を有する複数種のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合計して、重量平均分子量を400~15,000としてもよい。
【0011】
[エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー]
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、グリシジル基を含むオリゴマーであり、グリシジル基を有し環状構造を持つ化合物と、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより製造することができる。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、エポキシ系、変性エポキシ系、ビスフェノール系の各種オリゴマーを用いることができる。
なかでも、重量平均分子量が400~30,000のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましい。また、重量平均分子量が400~30,000のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、このようにして得られた各種の重量平均分子量(場合により一部は重量平均分子量が400未満又は30,000を超える)を有する複数種のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを合計して、重量平均分子量を400~15,000としてもよい。
【0012】
[ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを全組成物中に10~99重量%、好ましくは30~70重量%となるように含有させることができる。99重量%よりも多く含有すると硬化時に収縮が発生し、硬化後の被膜にしわが発生する可能性がある。含有する量が10重量%よりも少ないと、十分な硬度の被膜を形成させることができず、被膜表面に傷が付きやすくなる。
このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することにより、臭いが少なく伸縮性に優れ、かつ被膜の透明度が高く黄変せず、艶を有する高い硬度に硬化した粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の被膜を得ることができる。そのため、場合によっては、トップコート用に適した光硬化性人工爪組成物とすることができる。
【0013】
使用されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、その全てのオリゴマーの平均アクリル当量が400~2000となるようにすることが好ましい。そのような平均アクリル当量とすることによって、硬化後に残存する未硬化樹脂を削減し屈曲性を向上させることができる。
なお、平均アクリル当量が400~2000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、その全体のアクリロイル基に基づく官能基数が2~6であることが好ましい。
同時に、平均アクリル当量が400~2000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの中の全て又は一種として、重量平均分子量が3000以上のものを使用することが好ましい。このような重量平均分子量が3000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを使用し、多官能チオール化合物と併用することによって、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の硬化速度を十分に速くでき、かつ硬化後において、被膜内に未硬化樹脂を残すことがない。
【0014】
さらに、全ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー中重量平均分子量が3000以上のものの含有比率は50重量%以上であること、及び/又は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー全体の重量平均分子量が3000以上であることが好ましい。
なお、アクリル当量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが有するアクリロイル基の数で除した値である。
なかでも、また重量平均分子量が3000以上でアクリル当量が400~2000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとして、アクリロイル基に基づく官能基数が2~4のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有させるか、もしくは、このオリゴマーに加えて、さらに重量平均分子量が3000以上でアクリル当量が2000以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとして、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを併用することがより好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを使用することにより、未硬化樹脂を残さない反応速度を保ちつつ、十分な屈曲性をもつ被膜が得られる。一方重量平均分子量が3000未満で、アクリル当量が400未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとして、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを多く使用した場合、未硬化樹脂を残さない反応速度は得られるが、十分な屈曲性をもつ被膜は得られない可能性がある。
また、本発明による硬化を阻害しない範囲において、疎水性ではないウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含有させることができる。
【0015】
重量平均分子量が3000未満であり、あるいは、平均アクリル当量が400未満又は2000を超えるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを併用することも可能であるが、例えば全ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー中にこのようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを30重量%以上となるように多く併用すると、硬化後の被膜の硬度が高すぎて、衝撃を受けることにより割れやすくなる可能性がある。
このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、アクリル当量が2000を超えるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーや、アクリル当量が400未満のものが挙げられるが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含有させることによる作用を阻害しない範囲において含有させることができる。
【0016】
[単官能(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物にさらに含有させることが可能な、(メタ)アクリル系モノマーの中でも単官能(メタ)アクリレートモノマーは、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の臭いを少なくし、組成物の粘度を調整でき、透明であって、低刺激性であり、反応性に優れ、黄変しない性質を備えることが必要である。
そのような単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
また、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ラジカル重合性不飽和基含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレートを使用することもできる。
【0017】
この単官能(メタ)アクリレートモノマーを配合しないこともでき、配合するときの配合比率としては、全粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物中に10.0重量%以下、好ましくは5.0重量%以下となるように含有させることもできる。10.0重量%を超えて配合すると、硬化膜が脆くなり膜を維持できない可能性があり、0重量%であると隣接する表面との密着性が悪化したり、拭き取り性が悪化したりする可能性がある。
なお、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はイソボルニル(メタ)アクリレートを配合することが好ましく、このときに硬化後の被膜の硬度と屈曲性のバランスが良好になる。
【0018】
[多官能(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物にさらに含有させることが可能な、上記のモノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーの中でも多官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ラジカル重合しうる不飽和基を1分子中に2以上有する化合物であって、本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物に配合できる化合物の1種である。ラジカル重合しうる不飽和基としては、炭素-炭素間二重結合をもつ官能基であり(重合性二重結合ともいう)、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基等を挙げることができる。
そしてこれらの多官能(メタ)アクリレートモノマーは、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の臭いを少なくし、塗膜強度の調整ができ、透明であって、低刺激性であり、反応性に優れ、黄変しないという性質を備えることが必要である。
【0019】
このような多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、等のトリ(メタ)アクリレート化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールオクタアクリレートエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等のエリスリトール類の(メタ)アクリレート類、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソプロピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)を使用することができる。
また、リン酸ビス(メタクリル酸ヘキサン酸エチル)、リン酸ビス(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)、リン酸トリ(メタクリル酸ヘキサン酸エチル)、リン酸トリ(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)等の多官能のリン酸エステル系メタクリレートも使用することができる。
【0020】
これらの多官能(メタ)アクリレートモノマーの中でもビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが好ましく、さらに3官能以上のものを含有させても良く、4官能以上、さらに好ましくは6官能以上のものを含有させることができる。3官能以上のものを含有させることによって、光照射したときの硬化性が向上する。
このような多官能(メタ)アクリレートモノマーは被膜の強度を調整するために配合することができ、配合するときの配合比率としては、1.0~30.0重量%、好ましくは5.0~25.0重量%である。30.0重量%を超えて配合すると、硬化時において被膜の収縮が大きくなる可能性がある。また、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含まない場合においても、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで補える可能性がある。
【0021】
[多官能チオール化合物]
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物にさらに任意で含有させることが可能な多官能チオール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールが本来有する水酸基に、チオール基又は反応してチオール基になる基を有する化合物を反応させて得たものが好ましい。
このような多官能チオール化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0022】
このような多官能チオール化合物を含有させることによって、光硬化性人工爪組成物の粘度を調節することに加え、硬化した光硬化性人工爪組成物を拭き取って除去する際の拭き取り性を向上させることができる。
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物において、多官能チオール化合物を含有させる場合には、全組成物中に好ましくは1.0~50.0重量%、さらに好ましくは2.0~20.0重量%、より好ましくは7.0~18.0重量%となるように含有させることができる。50.0重量%よりも多く含有すると硬化時の硬化速度が速すぎて、爪表面への塗布や、硬化時の取り扱いが困難になる可能性があり、含有する量が1.0重量%よりも少ないと、硬化速度が低下して、硬化後においても未硬化成分を含有する可能性がある。
【0023】
[粘着付与剤]
本発明において使用される粘着付与剤としては、臭気が少ないもの、透明であって人工爪の層の着色に影響を与えないもの、低刺激性、黄変しないもの、及び組成物中にて析出しないものであることが必要である。
そのような粘着付与剤としては、ロジン及び/又はロジン誘導体、ケトン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか1種以上を使用できる。
ロジン及び/又はロジン誘導体、さらには水添ロジン及び/又は水添ロジン誘導体として、ロジン、水添ロジン、水添ロジン酸グリセリル、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、水添ロジン酸メチル、(水添ロジン/ジイソステアリン酸)グリセリル、トリ水添ロジン酸グリセリル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ペンタエリスリチル、部分水添ロジン酸メチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ロジン酸グリセリル、ロジン酸メチル、ロジン酸ナトリウムを使用することができる。
【0024】
ケトン樹脂としては、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、シクロヘキサノン系ケトン樹脂等を使用することができ、フェノール樹脂としてはテルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂を使用することができ、ポリエステル樹脂としては、低分子量のポリエステル樹脂、ロジン変性ポリエステル、変性特殊ポリエステル樹脂等を使用することができる。
他にも、水添脂環族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素芳香族炭化水素共重合体、スチレンマレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、変性キシレン樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、ノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチルセルロース、アクリル樹脂等を使用できる。
このような粘着付与剤を光硬化性人工爪組成物に添加することによって、光硬化性人工爪組成物に接着性を付与すること、及び有機溶剤による溶解性を向上させることができる。
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物全体における粘着付与剤の配合割合は2.2重量%以上であり、さらに好ましくは4.0重量%以上、より好ましくは7.0重量%以上、最も好ましくは15.0重量%以上である。2.2重量%未満では、硬化被膜が十分な可溶解性を有しない。また配合割合の上限としては40.0重量%以下、より好ましく30.0重量%以下である。40.0重量%よりも多く含有すると硬化後の塗膜が硬くなり、脆くなる。また、含有する量が2.2重量%よりも少ないと、十分な密着性を得ることができず、除去時において溶剤に溶解させることが困難になる。
【0025】
[光重合開始剤]
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物に配合する光重合開始剤は、LEDを光源とした紫外線や365~410nm付近の波長の光(可視光の一部)によっても十分に硬化することができ、硬化時の発熱量を抑制することができるものが好ましい。
そのような光重合開始剤として、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、アシッドエステル類、α-アミノアルキルフェノン類、アシルフォスフィンオキシド類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、チタノセン類、を使用することができる。
これらの光重合開始剤として、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、フェニル酢酸、α-オキソ-オキシジ-2,1-エタンジイルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、又はオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、あるいはこれらの化合物の混合物、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、1,2-オクタンジオン、1-(4-(フェニルチオ)-2,2-(O-ベンゾイルオキシム))1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノンなどが好適に用いられる。なかでも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンや2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドを使用することが好ましい。
【0026】
これらの光重合開始剤は、染料、顔料や重合性化合物の光吸収によってもラジカル生成反応が阻害されず、またラジカル発生効率が高く、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の硬化性を高めることができる点で好ましい。
これらの光重合開始剤は本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物中0.5~20.0重量%、好ましくは0.5~5.0重量%となるように配合することができる。20.0重量%を超えると、過剰な量のラジカルが発生することになるので、ラジカル重合反応が多くの開始点からなされ、その結果、硬化後のポリマーの分子量が小さくなって硬化膜が脆くなり、膜を維持できない可能性がある。また、0.5重量%未満であると十分な量のラジカルが発生できないので、ラジカル重合反応が長時間に及ぶこととなり、硬化不良となる可能性が高い。
【0027】
[色素]
本発明において使用し得る色素としては、人工爪用色素の中でも、紫外線によって退色や変色しやすい、つまり、耐光性が強くない色素でもよい。そのような色素としては有機顔料、有機染料及び無機顔料のいずれから選択されてもよく、以下のものを採用することができる。
褐色201号、黒色401号、紫色201号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、青色403号、青色404号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、緑色3号、緑色401号、緑色402号、黄色201号、黄色202号-(1)、黄色202号-(2)、黄色203号、黄色204号、黄色205号、黄色4号、黄色401号、黄色402号、黄色403号-(1)、黄色404号、黄色405号、黄色406号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、赤色102号、赤色104号-(1)、赤色105号-(1)、赤色106号、赤色2号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号-(1)、赤色230-(2)、赤色231号、赤色232号、赤色3号、赤色401号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色506号、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、カーボンブラック。
上記の色素のなかでも、赤色202号、赤色226号、赤色405号、赤色104号-(1)、黄色4号、黄色203号、青色1号、青色404号、紫色201号を使用することが好ましい。
【0028】
本発明においては上記の色素を始めとする色素を1種以上使用することができ、本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物中0~30.0重量%となるように含有させることができ、好ましくは0.01~15.0重量%である。30.0重量%を超えて含有させると紫外線による硬化性が悪化し、含有させないと着色できない。
【0029】
[重合禁止剤]
本発明において粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物に含有させる重合禁止剤としては、キノン化合物、サリチル酸ヒドラジド、トコフェロール化合物である。
これらの重合禁止剤は本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物中500~5000ppm、好ましくは1000~4500ppmとなるように配合することができる。5000ppmを超えると、光重合時における反応性が悪化し、500ppm未満であると、硬化された粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の退色・変色が発生しやすくなる。
【0030】
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物には、光沢度、粘度や透明性、硬化性などに悪影響を与えない範囲で各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、ポリオール類、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、表面張力調整剤、他の重合禁止剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン吸着体、低応力化剤、抗菌剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0031】
色素としては、上記の他に、公知の顔料、光輝材、染料を使用することができ、特に爪被覆用として使用されている無機顔料、光輝材、有機顔料や染料を使用することができる。また、これらの色素を添加しない場合や透明となる程度の量、もしくは染料を添加することにより透明性がある粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物とすることもできる。また、硬化前の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物には、顔料等のみではなく樹脂粒子や、公知の光硬化性人工爪組成物に配合できる装飾用材料等を配合しておくことも可能である。
使用できる顔料及び染料の種類、及びそれらの含有量としては、紫外線の照射による硬化を阻害しない程度のものとすることが必要である。
【0032】
<粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物による被覆方法>
本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物は、使用者自身の爪の表面にサンディングを施すことなく、又は施した上で塗布することができる。必ずしも爪表面に凹凸を形成させる必要がない他は、公知の紫外線硬化型の光硬化性人工爪組成物と同様の方法により爪表面に塗布することができる。また、爪へのベースコート層(下地層)として、あるいは中間層、さらにトップコート層として使用することができる。
そのため、本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物は筆等の塗布具によって十分に塗布することができる程度の粘度を有すればよい。もちろん、爪表面に本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を塗布後、硬化前に小さな飾りや粉体等を被膜表面に付着させることも可能である。
また、シートの片面に本発明の未硬化の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物からなり、かつ爪の形状を有する層を設けておき、この層を爪表面に重ねるようにして付着させ、この粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物からなる層からシートを剥離するか又は剥離せずに、紫外線を照射して硬化することもできる。このようなシート表面に予め粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物からなる層を設けておけば、使用時に筆等の塗布具を使用することなく、爪の表面に均一かつ正確な模様を被覆することが可能である。そして使用後においても該塗布具を洗浄等する必要がない。
被覆される爪は、人の手の爪と足の爪のいずれでもよく、犬や猫などの動物の爪でも良い。
塗布後の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の硬化に関しても公知の紫外線硬化用の装置を用いて行うことができる。含有される化合物や顔料等の成分によって、硬化に必要な照射エネルギーは異なるものの、その光照射による照射エネルギー(積算光量)は、5mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下であるのが好ましく、10mJ/cm2以上800mJ/cm2以下であるのがより好ましい。照射エネルギーがこの範囲内であれば、十分な密着性および耐擦性を有するネイルアートが得られる。
光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等の公知の紫外線の光源を用いることができる。
その中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV-LED)および紫外線レーザーダイオード(UV-LD)が好ましい。
【実施例】
【0033】
表1に示す全配合成分(表中数値は重量%)を容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ50℃に加温し撹拌した。これらの工程を全て遮光下にて行った。
<塗膜の評価>
(アセトン膨潤性)
粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を250μmの厚みとなるように基材上に塗布し、30W LEDライトにより20秒硬化させた。
その後1mLのアセトンを染みこませたコットンを塗膜上に置き、3分間後の塗膜の状態を観察した。
評価:5 塗膜が膨潤して破れ、基材から大きく剥離している
4 塗膜が膨潤し、基材から大きく剥離しているが、破れてはいない
3 塗膜が膨潤し、基材から僅かに剥離しているが、破れてはいない
2 塗膜に変化は見られないが、ウッドスティックで擦ると基材から剥離する
1 塗膜に変化は見られず、ウッドスティックで擦っても剥離しない
【0034】
(硬化性)
粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を100μmの均一膜厚で塗布し、30W LEDライトで30秒硬化した。
ウッドスティックで塗膜を力強く擦り、硬化性の評価を行った。
評価:5 ほぼ影響が見られない
4 表面に僅かにキズが付く程度
3 内部に未硬化成分が極僅かにあるが、塗膜の破壊は見られない
2 僅かに塗膜が破壊される
1 塗膜が大きく破壊される
【0035】
(密着性)
自爪に180Gのスポンジバフでサンディングを行い、70%エタノールで表面の油分を除去後、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を塗布し、30W LEDライトにより30秒硬化した。その後、カラージェル・トップジェルを塗布し、同様に硬化させた。経過を7日間観察し、密着性の評価を行なった。
評価:5 剥がれ・欠損が見られない
4 ごく僅かに剥がれ・欠損が見られる
3 塗膜の一部が小さく剥がれ・欠損している
2 塗膜の大部分が剥がれ・欠損している
1 塗膜がすべて剥がれ落ちた
【0036】
(艶)
粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を100μmの均一膜厚で塗布し、30W LEDライトで30秒硬化した。
消毒用エタノールをコットンに染み込ませ、未硬化成分を拭き取り、表面の艶の評価を行った。
評価:5 キズが見られず艶がある
4 僅かにキズが見られるが艶がある
3 僅かにキズがあり、僅かにくもりが見られる
2 キズがあり、くもりが大部分に見られる
1 艶がない
【0037】
オリゴマーA:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:5,000、
アクリロイル基に基づく官能基数2)
オリゴマーB:ウレタンオリゴマー(重量平均分子量:15,000、
アクリロイル基に基づく官能基数2)
オリゴマーC:ウレタンメタクリレートオリゴマー(重量平均分子量:27,000、
アクリロイル基に基づく官能基数2)
オリゴマーD:ウレタンオリゴマー(重量平均分子量:23,000、
アクリロイル基に基づく官能基数0)
オリゴマーE:ウレタンメタクリレートオリゴマー(重量平均分子量:3,500、
アクリロイル基に基づく官能基数2)
オリゴマーF:ウレタンメタクリレートオリゴマー(重量平均分子量:9,000、
アクリロイル基に基づく官能基数2)
オリゴマーG:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:740、
アクリロイル基に基づく官能基数2)
IBXA :イソボルニルアクリレート
HEMA :ヒドロキシエチルメタクリレート
IBXMA :イソボルニルメタクリレート
MEDMA :(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル アクリレート
MPTS :メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン
GPTS :グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
3PMA :トリスメタアクリロイルオキシエチルホスフェート
樹脂A :不均化ロジン
樹脂B :水添ロジン酸グリセリル
樹脂C :水添ロジン酸グリセリル/水添ロジン酸ペンタエリスリチル
樹脂D :アルキルフェノール樹脂
樹脂E :ケトンアルデヒド縮合樹脂
樹脂F :水素添加ケトンアルデヒド縮合樹脂
樹脂G :特殊変性ポリエステル樹脂
光重合開始剤A:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
光重合開始剤B:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
Bis-GMA:イソプロピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプ ロピル)
PPEOA :ポリペンタエリスリトールオクタアクリレート
【0038】
【0039】
本発明の通りの配合である実施例1~47によれば、粘着付与剤を含有するために、密着性とアセトン膨潤性のバランスが共に優れた硬化被膜を得ることができた。特に粘着付与剤を12重量%以上含有する実施例1~12は密着性が良好であった。
また、オリゴマーF及びGを含有する実施例32~36によれば、特に好ましい艶が得られた。
これに対し、粘着付与剤を含有しない比較例1、6~9、及び粘着付与剤を含有するが、その含有量が少ない比較例2~4によれば、得られた硬化被膜は特にアセトン膨潤性に劣る結果となった。さらに比較例4によるアセトン膨潤性を改善するために、IBXAとMPTSの含有量を増加させた比較例5によると、得られた硬化被膜は密着性に劣るものであった。
【0040】
<塗膜の評価>
(膨潤性1)
粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を100μmの厚みとなるように基材上に塗布し、30W LEDライトにより20秒硬化させた。
その後1mLのアセトンを染みこませたコットンを塗膜上に置き、塗膜の状態を観察し、膨潤が開始されるまでの時間を測定し、評価した。
評価:5 60秒未満
4 120秒未満
3 300秒未満
2 900秒未満
1 900秒以上
【0041】
(膨潤性2)
粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を100μmの厚みとなるように基材上に塗布し、30W LEDライトにより20秒硬化させた。
その後1mLのアセトンとソルミックスAP-1(日本アルコール販売)の1:1混合液を染みこませたコットンを塗膜上に置き、塗膜の状態を観察し、膨潤が開始されるまでの時間を測定し、評価した。
評価:5 120秒未満
4 300秒未満
3 600秒未満
2 900秒未満
1 900秒以上
【0042】
(膨潤性3)
粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物を100μmの厚みとなるように基材上に塗布し、30W LEDライトにより20秒硬化させた。
その後1mLのソルミックスAP-1を染みこませたコットンを塗膜上に置き、塗膜の状態を観察し、膨潤が開始されるまでの時間を測定し、評価した。
評価:5 300秒未満
4 450秒未満
3 600秒未満
2 900秒未満
1 900秒以上
【0043】
他社品1:T-GEL(TAT社製)
他社品2:バイオスカルプチュア(タカラベルモント社製)
他社品3:フルーリア(スペース社製)
【0044】
【0045】
本発明の通りの配合である表2の実施例1によれば、粘着付与剤を含有するために、従来よりも塗膜膨潤性に優れた硬化被膜を得ることができた。
これに対し、粘着付与剤を含有しない市販されている他社品1~3によれば、得られた硬化被膜は膨潤性に劣る結果となった。