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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】コアビット用ダイヤモンドチップ
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20220418BHJP
   B24D 7/18 20060101ALI20220418BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20220418BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
B28D1/14
B24D7/18 A
B24D3/00 320B
B24D3/06 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018114997
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019217648
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100079636
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】小坂 正治
(72)【発明者】
【氏名】西村 大地
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05996571(US,A)
【文献】実開昭56-151762(JP,U)
【文献】特開平02-292166(JP,A)
【文献】特表2008-535676(JP,A)
【文献】特開2003-103468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B24D 7/18
B24D 3/00
B24D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のシャンクと、金属粉にダイヤモンド砥粒を配合して成形され、前記シャンクの開口端部に周方向に適宜の間隔を存して固着されるダイヤモンドチップよりなるコアビットの前記ダイヤモンドチップであって、
該ダイヤモンドチップは、第1の金属粉にダイヤモンド砥粒を配合した比較的硬い層と、第2の金属粉にダイヤモンド砥粒を配合した比較的軟らかいとが前記シャンクの径方向に積層した構造をなしており、
前記B層は、前記シャンクの径方向両側より複数設けられた前記A層で挟み込んで積層された構造をなしており、
前記A層に配合されるダイヤモンド砥粒は、粒径が#40/50よりなる一方、前記B層に配合されるダイヤモンド砥粒は、粒径が#40/50と#30/40の砥粒を混合したものよりなることを特徴とするコアビット用ダイヤモンドチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアドリルに取付けられ、コンクリート構造物を穿孔するのに用いるコアビット、より詳しくは上部にコアドリルへの取付部を備えた円筒状のシャンクと、該シャンクの開口端部に周方向に適宜の間隔を存して固着されるダイヤモンドチップよりなるコアビットの前記ダイヤモンドチップに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、コアビット1の従来例の正面図、図2は、同コアビット1の底面図で、コアビット1は、上部に取付部としてのネジ部2を備えた円筒形状のシャンク3と、該シャンク3の開口端部に一定間隔で固着される略円弧状のダイヤモンドチップ4よりなり、該ダイヤモンドチップ4は一般に、コバルト粉Coとブロンズ粉Cu-Snよりなる金属粉にダイヤモンド砥粒を配合して成形され、コンクリート構造物を穿孔するのに用いるコアビット1のダイヤモンドチップ4に用いるダイヤモンド砥粒としては、粒径の最適サイズが#40/50、すなわち0,635~0.508mmとされる。
【0003】
ダイヤモンドチップに関してはまた、成形時にコンクリート構造物の切削面に当たる底面円周方向に凹凸を付して穿孔時に切り込みがブレないようにしたチップも知られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1及び図2に示す従来のコアビット1では、コンクリート構造物に切り込んでいく際、一般的な錐のように、回転中心となるセンターがないため、径方向に蛇行しながら切り込んでいく傾向があり、そのため例えば5mm幅のチップを用いた場合、切溝の幅が5.2~5.4程度mm程度と大きくなり(図3参照)、0.2~0.4程度の必要以上に余分な切り込みが行われるため穿孔効率上問題があった。
【0005】
これに対し、底面円周方向に凹凸を付した前述のチップでは、穿孔時にブレや蛇行を生じ難い利点があるが、こうした利点があるのは、新品の使用開始から僅かな間で、コンクリート構造物を1m位も切削すると、凹凸が消滅して従来の普通のチップの形態と変わりがなくなる。長時間使用できるようにするために溝を深くし、凸部を高くして該凸部が摩耗しても溝が残るようにした場合、凸部が脆くなり、切削中折損し易くなる不具合を生ずる。
【0006】
本発明は、切削速度を増して切削効率を高めると共に、寿命を向上させたコアビット用のダイヤモンドチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、円筒形状のシャンクと、金属粉にダイヤモンド砥粒を配合して成形され、前記シャンクの開口端部に周方向に適宜の間隔を存して固着されるダイヤモンドチップよりなるコアビットの前記ダイヤモンドチップであって、該ダイヤモンドチップは、第1の金属粉にダイヤモンド砥粒を配合した比較的硬い層(以下、A層という)と、第2の金属粉にダイヤモンド砥粒を配合した比較的軟らかい層(以下、B層という)をシャンクの径方向に積層した構造をなすことを特徴とし、
更に、請求項に係る発明は、比較的軟らかいB層は、シャンクの径方向両側より複数設けられた比較的硬いA層で挟み込んで積層された構造をなすことを特徴とする。
【0008】
更に、請求項に係る発明は、前記A層に配合されるダイヤモンド砥粒は、粒径が#40/50である一方、前記B層に配合されるダイヤモンド砥粒は、粒径が#40/50と#30/40の砥粒を混合したものよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、切削時、A層もB層もダイヤモンド砥粒を脱落させながら摩耗するが、摩耗量はB層の方がA層に比べ多いため、硬軟のA、B両層間に段差を生ずる。段差を生ずると、A層が主として切削を行うようになり、A層によるコンクリート構造物切削面への単位面積当たりの加圧力が増すことにより、切削面に食い込んで切削を行うようになり、ブレや蛇行が生じ難くなる。これによりコンクリート構造物に環状に切り込まれる切溝の幅が低減し、切削が必要以上に余分に行われなくなって切削速度が増し、穿孔効率が向上する。
【0010】
前記段差は大きくなり過ぎると、B層のコンクリート構造物切削面への加圧力が小さくなって摩耗し難くなり、A層の摩耗がある程度進行するまでB層の砥粒は脱落しないで保持される。A層の摩耗がある程度進行し、両者の段差が少なくなってB層のコンクリート構造物への加圧力が増し、B層による切削が進むと該B層の砥粒が脱落する。砥粒が脱落すると、比較的軟らかいB層の摩耗が速まって、その摩耗量は比較的硬いA層より多くなり、両層の段差が大きくなる。大きくなり過ぎた段差は、前述するように、A層の摩耗により解消されるようになり、これにより硬いA層と軟らかいB層の段差がほぼ一定になるように維持される。このためブレや蛇行を生ずることなく切削効率が向上し、チップの寿命も向上して長期間安定した切削性能が維持されるようになる。
【0011】
更に、請求項に係る発明によると、複数条の硬いA層でコンクリート構造物の切削面をしっかりと押えることにより、切り込み時にブレがより一層生じ難くなると共に、A層間のB層においてほぼ一定の深さの窪みができるようになる。
【0012】
砥粒の粒径と金属の摩耗は、両者のバランスが必要とされ、バランスが悪く、摩耗し易い金属材料に配合される砥粒の粒径を大きくした場合、切削時、A層間に挟まれるB層の砥粒が脱落し難くなる。砥粒が脱落し難くなると、A、B層間の段差の拡大が防止され、有効であるが、大なる粒径の砥粒のみ使用すると、B層での切削効率が低下する。請求項に係る発明は、この点を考慮して粒径の大なる砥粒のみならず、粒径の小なる砥粒を併用し、これによりA、B層間での段差を適正に保持させて、切削効率の低下を防止させるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コアビットの正面図。
図2】同底面図。
図3】従来のダイヤモンドチップにより穿孔されるコンクリート構造物の断面図。
図4】本発明に係るダイヤモンドチップの拡大した斜視図。
図5】同チップの模式的な拡大断面図。
図6】切削時の摩耗の進行状況を示す模式図。
図7図4及び図5に示すダイヤモンドチップにより穿孔されるコンクリート構造物の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るコアビット用ダイヤモンドチップについて図面により説明する。
図4は、図1に示すコアビット1のダイヤモンドチップ4に代えて用いるダイヤモンドチップ11の斜視図、図5は同縦断面図で、コバルト粉Coとブロンズ粉Cu-Snよりなる金属粉にダイヤモンド砥粒を配合して成形され、比較的硬いA層と、比較的軟らかいB層を交互に積層した5層構造をなしている。
【0015】
A層は、例えばコバルト粉Co90%、ブロンズ粉Cu-Sn10%程度の第1の混合金属粉にダイヤモンド砥粒としてコンクリート構造物12を切削するのに好適とされる#40/50、すなわち、粒径が0.635~0.508mmの砥粒D1を配合して成形され、またB層は、例えばコバルト粉Co60%、ブロンズ粉Cu-Sn40%程度の第2の混合金属粉に前記#40/50の砥粒D1と、#30/40、すなわち粒径が0.846~0.635mmの砥粒D2を混合したダイヤモンド砥粒を配合して成形される。
【0016】
なお図5において、粒径#40/50の砥粒D1は便宜上、全て同じサイズに描いているが、実際には#40/50の範囲の砥粒D1が用いられる。粒径#30/40の砥粒D2も同様である。
B層では、比較的大きな粒径D2の#30/40のダイヤモンド砥粒はA層により両側より挟まれて脱落し難いが、A層の摩耗が進行し、B層との段差が少なくなるのに伴いB層によるコンクリート構造物への切削が進むようになり、これによりB層の砥粒D2が脱落する。砥粒D2が脱落すると、軟らかい金属材料で成形されるB層の摩耗がA層よりも速くなり、B層での窪みが増加する。窪みが増加してA、B両層間での段差が大きくなると、A層での摩耗がある程度進行するまでB層での摩耗量が減少し、この繰り返しによりA、B両層間での段差がほぼ一定に維持されるようになる。
【0017】
B層ではまた、#30/40の砥粒と共に配合される比較的粒径の小さな#40/50の砥粒が併用する#30/40の砥粒による切削効率の低下を補う。
【0018】
図6は、コンクリート構造物12を切削するときのダイヤモンドチップ11の摩耗状況を示すもので、チップ11は新品時にはA層もB層も底面のコンクリート構造物への切削面が面一をなしているが、切削開始から切削が進むにつれA、B両層は、砥粒を脱落させながら摩耗するが、摩耗は軟らかい金属材料で成形されるB層の方がA層よりも進むため、B層が窪み、A、B両層間に段差が形成されるようになる。この段差は前述し、かつ図示するようにほぼ一定に維持されるようになる。
【0019】
図7は、図4に示すダイヤモンドチップ11を用いたコアビットによる穿孔を示すもので、3か所の硬い層Aが切削面をしっかりと押え込んで切削することにより、ブレや蛇行を生ずることなく穿孔が行われ、そのため5mm幅のチップを用いた場合、切溝の幅が5mmより若干大きな程度の範囲に収まり、必要以上の余分な切削がほとんど行われなくなることにより図3に示すものに比べ切削速度が上がり、切削効率が向上する。
【0020】
前記実施形態のダイヤモンドチップ11は、硬い層Aと軟らかい層Bが交互に配置される5層構造をなしているが、別の実施形態では、B層を挟む3層構造で構成され、更に別の実施形態では硬軟の2層構造又は4層構造で構成される。偶数の複数層で構成される場合、A層で挟み込まれないB層が生ずる。こうしたB層では、摩耗及び砥粒の脱落が大きくなることが予想されるが、A層による切削効率及びチップの寿命向上に多少なりとも寄与するものである。
【0021】
前記実施形態ではまた、金属粉としてコバルト粉Coとブロンズ粉Cu-Snを配合したものを使用しているが、これ以外の材質の金属粉を用いることも可能であり、B層で用いる砥粒D1も#40/50以外の他の粒径の砥粒を用いることが可能であり、その配合割合も任意に変えることができる。
【符合の説明】
【0022】
11・・ダイヤモンドチップ
12・・コンクリート構造物
A層・・比較的硬い層
B層・・比較的軟らかい層
D1、D2・・砥粒






図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7