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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】照明パネル
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/04 20060101AFI20220418BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220418BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20220418BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20220418BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20220418BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220418BHJP
【FI】
G09F13/04 J
G09F13/04 P
F21S2/00 431
F21V3/00 100
F21V3/00 530
F21V3/06 110
F21V17/00 155
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020538163
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2019014815
(87)【国際公開番号】W WO2020039644
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2018155200
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018198559
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591243893
【氏名又は名称】株式会社フォトクラフト社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 巖
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203724(JP,A)
【文献】特開2005-189583(JP,A)
【文献】特開2009-123694(JP,A)
【文献】特開2005-345873(JP,A)
【文献】特開2010-137582(JP,A)
【文献】特開2009-301738(JP,A)
【文献】特開2003-330394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0100657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/04
F21S 2/00
F21V 3/00
F21V 3/06
F21V 17/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠部と、
前記外枠部で囲われた内側領域の後方を覆う状態で、且つ、前面側に多数の光源が分散配置された状態で配置された後面板部と、
前記内側領域の前方を覆う状態で張設された光拡散性を有する光拡散シートと、
前記光拡散シートの前方を覆う状態で張設された光拡散性を有し且つパネル前面部を構成する前面シートと、が備えられ、
前記前面シートが、第1ガラスヤーンで織られた第1ガラスクロスを基材に備えて構成され、
前記光拡散シートが、前記第1ガラスヤーンよりも太い第2ガラスヤーンで織られた第2ガラスクロスを基材に備えて構成されている照明パネル。
【請求項2】
前記前面シートを構成する前記第1ガラスヤーンは、4~8μmのガラスフィラメントの150~250本を束ねて構成され、
前記光拡散シートを構成する前記第2ガラスヤーンは、8~10μmのガラスフィラメントの350~450本を束ねて構成されている請求項1記載の照明パネル。
【請求項3】
前記前面シートを構成する前記第1ガラスクロスは、経糸の織密度が55~75本/25mm且つ緯糸の織密度が50~90本/25mmに構成され、
前記光拡散シートを構成する前記第2ガラスクロスは、経糸の織密度が40~55本/25mm且つ緯糸の織密度が25~50本/25mmに構成されている請求項1又は2記載の照明パネル。
【請求項4】
前記前面シートと前記光拡散シートとが、前後方向で間隔を空けて配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載の照明パネル。
【請求項5】
前記光拡散シートと前記後面板部との間に、前記光拡散シートと前記後面板部と前記外枠部とで第1空間が区画形成され、
前記光拡散シートと前記前面シートとの間に、前記光拡散シートと前記前面シートと前記外枠部とで第2空間が区画形成されている請求項4記載の照明パネル。
【請求項6】
前記外枠部には、前記光拡散シート及び前記前面シートの外周縁部を個別に取り付け可能な複数のシート取付部として、相対的に内側の内側シート取付部と、相対的に外側の外側シート取付部とが形成され、
前記光拡散シートが前記内側シート取付部に取り付けられ、前記前面シートが前記外側シート取付部に取り付けられている請求項5記載の照明パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、天井や壁等に設置して使用される照明パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、薄型化、軽量化、省エネルギ化を実現するべく、下記特許文献1に示すように、外枠部と、外枠部で囲われた内側領域の後方を覆う状態で、且つ、前面側に多数の光源(LED素子)が分散配置された状態で設置された後面板部と、内側領域の前方を覆う状態で張設された光拡散性を有する前面シートとが備えられた照明パネルを先に提案している。ちなみに、この照明パネルは、画像を有する画像シートを前面シートの前面に設置したり、前面シートに画像を施したりすることで、後方からの光で画像を明るく表示する画像表示パネルとしても使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-77345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した照明パネルは、後面板部の前面側に嵩の低い光源を分散配置することで、大幅な薄型化を実現しているが、更なる薄型化が望まれている。パネル前面部の明るさを損なわずに外枠部の厚みを小さくして更なる薄型化を図ろうとすると、光源と前面シートとの距離が近くなり、光源の光がパネル前面部に輝点として写り込む虞がある。
【0005】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、外枠部の厚みを小さくして更なる薄型化を図る場合でも、光源の光がパネル前面部に輝点として写り込むのを回避しながら、パネル前面部を明るく発光させることのできる照明パネルを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴構成は、外枠部と、
前記外枠部で囲われた内側領域の後方を覆う状態で、且つ、前面側に多数の光源が分散配置された状態で配置された後面板部と、
前記内側領域の前方を覆う状態で張設された透光性と光拡散性を有する光拡散シートと、
前記光拡散シートの前方を覆う状態で張設された透光性と光拡散性を有し且つパネル前面部を構成する前面シートと、が備えられ、
前記前面シートが、第1ガラスヤーンで織られた第1ガラスクロスを基材に備えて構成され、
前記光拡散シートが、前記第1ガラスヤーンよりも太い第2ガラスヤーンで織られた第2ガラスクロスを基材に備えて構成されている点にある。
【0007】
本構成によれば、不燃性のガラスクロスを前面シート及び光拡散シートの基材に使用して火災等に対して高い安全性を有する照明パネルとすることができる。そして、外枠部の内側領域の後方を覆う後面板部の前面側に配設された光源の光を、外枠部の内側領域の前方を覆う状態で張設された光拡散シートにて拡散させながら前方に透過させ、その拡散された透過光を、光拡散シートの前方を覆う状態で張設された前面シートにて更に拡散させながら前方に透過させることで、後面板部の前面側に配設された光源の光を短い距離で効率良く拡散することができる。
【0008】
しかも、前方側の前面シートが、第1ガラスヤーンで織られた第1ガラスクロスを基材に備えて構成されているので、第1ガラスクロスの表面の凹凸が小さくて織り目も目立たないパネル前面部の形成に適した比較的細い(薄い)ガラスヤーンを用いることができ、パネル前面部の見栄えを向上することができる。また、もし、前面シートに画像を形成する場合には、繊細な画像を形成することができる。
他方、後方側の光拡散シートは、第1ガラスヤーンよりも太い第2ガラスヤーンで織られた第2ガラスクロスを基材に備えて構成されているので、第2ガラスヤーンとして、光の透過距離が大きくて乱反射による光拡散に適した比較的太い(厚い)ガラスヤーンを用いることができ、前面シートに比較的薄いガラスヤーンを用いることによる光拡散効果の低下を補完し、全体として良好な光拡散効果を得ることができる。
【0009】
したがって、外枠部の厚みを小さくして更なる薄型化を図る場合でも、光源の光がパネル前面部に輝点として写り込むのを回避しながら、パネル前面部を明るく発光させることができる。
【0010】
本発明において、前記前面シートを構成する前記第1ガラスヤーンは、4~8μmのガラスフィラメントの150~250本を束ねて構成され、
前記光拡散シートを構成する前記第2ガラスヤーンは、8~10μmのガラスフィラメントの350~450本を束ねて構成されていると好適である。
【0011】
また、本発明において、前記前面シートを構成する前記第1ガラスクロスは、経糸の織密度が55~75本/25mm、且つ、緯糸の織密度が50~90本/25mmに構成され、
前記光拡散シートを構成する前記第2ガラスクロスは、経糸の織密度が40~55本/25mm、且つ、緯糸の織密度が25~50本/25mmに構成されていると好適である。
【0012】
更に、本発明において、前記前面シートと前記光拡散シートとが、前後方向で間隔を空けて配置されていると好適である。
このように前面シートと光拡散シートとを配置すれば、後方側の光拡散シートを拡散しながら透過した透過光を、前面シートと光拡散シートとの間の空間で距離を稼いで拡散性を向上させた上で、前面シートにて更に拡散させながら前方に透過させることができる。
よって、後面板部の前面側に配設された光源の光を短い距離で一層効率良く拡散することができる。
【0013】
本発明において、前記光拡散シートと前記後面板部との間に、前記光拡散シートと前記後面板部と前記外枠部とで第1空間が区画形成され、
前記光拡散シートと前記前面シートとの間に、前記光拡散シートと前記前面シートと前記外枠部とで第2空間が区画形成されていると好適である。
【0014】
このようにすれば、後方側の光拡散シートと後面板部との間に、第1空間が区画形成されているので、光源の発光熱で第1空間内の空気を温めて膨張させることができる。よって、その第1空間内の空気の膨張により、光拡散シートを前方側に膨らませ、その光拡散シートと光源との距離を極力広く確保することができる。
【0015】
更に、後方側の光拡散シートと前方側の前面シートの間に、第2空間が区画形成されているので、第1空間内の空気で温められた光拡散シートにて第2空間内の空気を温めて膨張させることができる。よって、その第2空間内の空気の膨張により、前方側の前面シートを前方側に膨らませ、その前方側の前面シートと光源との距離も極力広く確保することができる。
【0016】
すなわち、前後方向で間隔を空けて張設された両シートの夫々を光源の発光熱を利用して膨らませることで、両シートの夫々と光源との距離を極力広く確保することができる。したがって、外枠部の厚みを小さくして更なる薄型化を図る場合に、パネル前面部の明るさを損なわずに、光源の光がパネル前面部に輝点として写り込むのを一層抑制することができる。
【0017】
しかも、両シートの基材が、張力等で延び変形し難いガラスクロスにて構成されているので、光源の発光熱を利用して膨らませる使用状態で膨らみすぎず、更に、このような使用状態の繰り返し等で両シートが延びてしまうのを抑制することができ、光源の光がパネル前面部に輝点として写り込むのを回避した適切な状態で長期間に亘って使用することができる。
【0018】
本発明において、前記外枠部には、前記光拡散シート及び前記前面シートの外周縁部を個別に取り付け可能な複数のシート取付部として、相対的に内側の内側シート取付部と、相対的に外側の外側シート取付部とが形成され、
前記光拡散シートが前記内側シート取付部に取り付けられ、前記前面シートが前記外側シート取付部に取り付けられていると好適である。
【0019】
このようにすれば、外枠部に形成されたシート取付部のうちで相対的に内側の内側シート取付部には、後方側の光拡散シートが取り付けられ、シート取付部のうちで相対的に外側の外側シート取付部には、前方側の前面シートが取り付けられているので、後方側の光拡散シートを隠蔽する状態で、前方側の前面シートを取り付けることができる。よって、光拡散シートと前面シートとを、光拡散シートにて外枠部の内側領域の前方を覆う状態で、且つ、両シート間に前後方向で間隔を空ける状態で適切に張設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】照明パネルの正面図
図2】照明パネルの縦断面図
図3】(a)光拡散シート及び前面シートの基本構成を示す図、(b)ガラスヤーンの横断面図
図4】第1ガラスクロス及び第2ガラスクロスの仕様(構成)を示す表
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の照明パネルの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1図2に示すように、この照明パネルPは、パネル外周部位を構成する環状の外枠部3と、外枠部3で囲われた内側領域の後方(図2中の右方)を覆う状態で、且つ、前面側に多数のLED素子(光源の一例)1Aが分散配置された後面板部2と、外枠部3の内側領域の前方(図2中の左方)を覆う状態で張設された透光性と光拡散性を有する光拡散シート4Bと、光拡散シート4Bの前方を覆う状態で張設された透光性と光拡散性を有してパネル前面部(パネル発光面部)を構成する前面シート4Aと、を備えて構成されている。
【0022】
多数のLED素子1Aからの光を、後方側の光拡散シート4Bにて拡散させながら前方に透過させ、その拡散された透過光を、前方側の前面シート4Aにて更に拡散させながら前方に透過させることで、多数のLED素子1Aからの光を短い距離で効率良く拡散させる形態で、前面シート4Aにて構成されるパネル前面部を明るく発光させることができる。
なお、図示例では、照明パネルPが、前面シート4Aに形成された画像Gを明るく鮮明に表示可能な画像表示パネルとして構成されている場合を例示しているが、照明目的のみで使用する場合は、画像Gを形成する必要はない。
【0023】
また、本実施形態では、光拡散シート4Bと前面シート4Aとは、前後方向で間隔を空けて隣接する状態で設けられており、後方側の光拡散シート4Bを拡散しながら透過した透過光を、前面シート4Aと光拡散シート4Bとの間の後述する第2空間S2で距離を稼いで拡散性を向上させることで、多数のLED素子1Aからの光を短い距離で一層効率良く拡散させることができる。
なお、本実施形態では、多数のLED素子1Aが密に分散配置された光源板1の複数枚を並設状態で後面板部2の前面部に取り付けることで、多数のLED素子1Aが後面板部2の前面側に分散配置されている。
以下、照明パネルPの各部の具体的構成について説明を加える。
【0024】
(光源板)
前記光源板1は、上下方向及び左右方向に連設し易い矩形状に構成された小型の基板1Bの前面(前面側の一例)に、プリント配線等で電気接続された多数のLED素子1Aを密に分散配置して構成されている。
光源板1には、電源部(図示省略)又は隣接する他の光源板1と電気接続可能な電気接続部(図示省略)が備えられている。複数枚の光源板1は、電気接続部を介して互いに電気接続された状態で後面板部2に取り付けられ、共通の電源部からの電力供給により発光するように構成されている。
【0025】
多数のLED素子1Aは、所定の間隔を空けて上下方向及び左右方向に配列されている。LED素子1Aの設置間隔(ピッチ)は、LED素子1Aとして下記特性値を持つものを使用する場合、個々の必要光量の抑制と全体の消費電力の抑制との両面から10mm~20mmの範囲、例えば、上下方向の間隔を13mm~17mm、左右方向の間隔を15~19mmとすることができる。なお、LED素子1Aの厚み寸法は、0.5~1.2mmに設定されている。
【0026】
LED素子1Bの特定値(測定条件:IF=60mA)
順方向電圧(V) 2.2~ 4.0(代表値)
光束(lm) 22.0~25.0(代表値)
色温度(K) 5000~6000(代表値)
演色性 70~ 90(代表値)
指向角度 110~ 120(代表値)
【0027】
基板1Bは、矩形状の一例として、例えば、一辺が基準となる寸法(例えば30cmや60cm等)とされた正方形や長方形等の方形状に構成されている。この基板1Bは、熱良導材の一例であるアルミニウム板にて構成され、前面(正面)に配設された多数のLED素子1Aの熱を後面側(背面側)に好適に放熱する。
【0028】
(後面板部)
前記後面板部2は、照明パネルPと略同一の外郭形状を有し、照明パネルPの後面の全域を形成する板状に構成されている。後面板部2に取り付ける光源板1の枚数を選択して後面板部2の大きさ(面積)を調整することで、パネル前面部の大きさや形状の要求に対してフレキシブルに対応することができる。更に、この後面板部2は、熱良導材の一例であるアルミニウム板にて構成され、その前面に配設された複数枚の光源板1からの熱を後面側に効率良く放熱することができる。
【0029】
(前面シート及び光拡散シート)
前面シート4A及び光拡散シート4Bは、後述する基材としてのガラスクロスGCの仕様のみ相違し、その他の構成は同一であり、不燃性で透光性と光拡散性とを有するように構成されている。
両シート4A,4Bは、その基本構成として、図3(a)、(b)に示すように、不燃性のガラスクロスGCを基材に備え、その基材の表裏の両面を、透光性を有する樹脂層Jにてコーティングして構成されている。ガラスクロスGCは、ガラスフィラメント(ガラス繊維)gfの多数本を束ねたガラスヤーンGYを平織りや変形平織り等で織って構成されている。なお、図3(b)では、便宜上、ガラスヤーンGYを構成するガラスフィラメントgfの一部を省略している。
樹脂層Jは、白色系顔料や防炎剤等を含む樹脂の層であり、ウレタン樹脂の層や塩化ビニル樹脂の層等の複数の樹脂の層にて構成することができる。
【0030】
前面シート4Aは、図4の上側の表に示すように、第1ガラスヤーンGY1で織られた第1ガラスクロスGC1を基材に備えて構成され、光拡散シート4Bは、図4の下側の表に示すように、第1ガラスヤーンGY1よりも太い第2ガラスヤーンGY2で織られた第2ガラスクロスGC2を基材に備えて構成されている。ガラスヤーンGYの太さは、それの横断面積に相当し、ガラスフィラメントgfの太さ(横断面積)と集束本数とを乗じたものとすることができる。第2ガラスクロスGC2の厚み寸法は第1ガラスクロスGC1の厚み寸法よりも厚みが大きく、そのため、光拡散シート4Bの厚み寸法は前面シート4Aの厚み寸法よりも大きく構成されている。
【0031】
前面シート4Aを構成する第1ガラスクロスGC1は、4~8μのガラスフィラメントgfの150~250本を束ねて構成された第1ガラスヤーンGY1が経糸及び緯糸として平織りや変形平織り等で織られ、経糸の織密度が55~75本/25mm且つ緯糸の織密度が50~90本/25mmの織布として構成されている。この第1ガラスクロスGC1としては、例えば、図4の上側の表に記載されたガラスクロスaやガラスクロスb等を好適に用いることができる。
【0032】
光拡散シート4Bを構成する第2ガラスクロスGC2は、8~10μmのガラスフィラメントgfの350~450本を束ねて構成された第2ガラスヤーンGY2を経糸及び緯糸として平織りや変形平織り等で織られ、経糸の織密度が40~55本/25mm且つ緯糸の織密度が25~50本/25mmの織布として構成されている。この第2ガラスクロスGC2としては、例えば、図4の下側の表に記載されたガラスクロスcやガラスクロスd等を好適に用いることができる。
【0033】
前方側の前面シート4Aを構成する第1ガラスヤーンGY1として、第1ガラスクロスGC1の表面(前面シート4Aの表面)の凹凸が小さくて織り目も目立たないパネル前面部の形成に適した比較的細い(薄い)ガラスヤーンGYを用いることができ、パネル前面部の見栄えを向上することができる。また、前面シート4Aに画像Gを形成する場合には、繊細な画像Gを形成することができる。
他方、後方側の光拡散シート4Bを構成する第2ガラスヤーンGY2として、光の透過距離が大きくて乱反射による光拡散に適した比較的太い(厚い)ガラスヤーンGYを用いることができ、前面シート4Aに比較的薄いガラスヤーンGYを用いることによる光拡散効果の低下を補完し、全体として良好な光拡散効果を得ることができる。更に、第2ガラスクロスGC2の織り目と、第1ガラスクロスGCの織り目とが光の透過方向で重なるのを抑制し、より均一な光拡散効果を得ることができる。
したがって、外枠部3の厚みを小さくして更なる薄型化を図る場合でも、LED素子1Aの光がパネル前面部に輝点として写り込むのを回避しながら、パネル前面部を明るく発光させることができる。しかも、ガラスクロスGCは不燃性であるので、火災等に対して高い安全性を有する照明パネルPとすることができる。
【0034】
ちなみに、図2に示すように、後方側の光拡散シート4Bと後面板部2との間に、当該光拡散シート4Bと後面板部2と外枠部3とで第1空間S1が略密封状態で区画形成され、後方側の光拡散シート4Bと前方側の前面シート4Aの間に、当該光拡散シート4Bと前面シート4Aと外枠部3とで第2空間S2が略密封状態で区画形成されている。
【0035】
そのため、使用時において、LED素子1Aの発光熱で第1空間S1内の空気を温めて膨張させることができ、その第1空間S1内の空気の膨張により、図2中の一点鎖線で示すように、後方側の光拡散シート4Bを前方側に膨らませ、その光拡散シート4BとLED素子1Aとの距離を極力広く確保することができる。更に、第1空間S1内の空気で温められた後方側の光拡散シート4Bにて第2空間S2内の空気を温めて膨張させることができ、その第2空間S2内の空気の膨張により、図2中の一点鎖線で示すように、前方側の前面シート4Aを前方側に膨らませ、その前方側の前面シート4AとLED素子1Aとの距離も極力広く確保することができる。
【0036】
すなわち、この照明パネルPは、前後方向で間隔を空けて張設された前面シート4A及び光拡散シート4Bの夫々をLED素子1Aの発光熱を利用して膨らませることで、両シート4A,4Bの夫々とLED素子1Aとの距離を極力広く確保することができ、外枠部3の厚みを小さくして更なる薄型化を図る場合に、LED素子1Aの光がパネル前面部に輝点として写り込むのを一層抑制することができる。しかも、両シート4A,4Bの基材が、張力等で延び変形し難いガラスクロスGCにて構成されているので、LED素子1Aの発光熱を利用して膨らませる使用状態で膨らみすぎず、更に、このような使用状態の繰り返し等で両シート4A,4Bが延びてしまうのを抑制することができ、LED素子1Aの光がパネル前面部に輝点として写り込むのを回避した適切な状態で長期間に亘って使用することができる。
【0037】
両シート4A,4Bの外周縁部4a,4bは、図2に示すように、後述するシート取付溝5に圧入状態で差し込み可能な取付部位として、弾性材8aと硬質の心材8bとを積層し、その積層体を内包する状態に巻き付けて構成されている。両シート4A,4Bの外周縁部4a,4bは、前後方向(図2中では左右方向)では、前後方向に延びる心材8bの硬さで変形が抑制され、それの直交方向(図2中では上下方向)では、弾性材8aの圧縮変形に伴って変形可能とされている。両シート4A,4Bの外周縁部4a,4bが、後述するシート取付溝5に圧入状態で差し込まれて取り付けられることで、第1空間S1及び第2空間S2が略密封状態となる。
【0038】
本実施形態では、前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)の前後幅(前後方向の長さ)は、後述する外側シート取付溝5Aの溝深さよりも大に構成され、光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の前後幅(前後方向の長さ)は、後述する内側シート取付溝5Bの溝深さよりも大に構成されている。また、前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)の前後幅は、光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の前後幅よりも大に構成されている。
【0039】
光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の前後幅を調整することで、光拡散シート4Bの前後方向での位置を調整し、第1空間S1の奥行き(前後方向の長さ)を調整することができる。前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)の前後幅を調整することで、前面シート4Aの前後方向での位置を調整することができる。前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)の前後幅と、光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の前後幅の差が、第2空間S2の奥行き(前後方向の長さ)となるので、両取付部位(外周縁部4a,4b)の相体的な前後幅を調整することで、第2空間S2の奥行きを調整することができる。両シート4A,4Bの取付部位(外周縁部4a,4b)の前後幅の調整は、硬質の心材8bの前後幅の調整等により行うことができる。
【0040】
前面シート4Aの画像Gは、例えば、インクジェットプリンタ等の印刷機にて前面シート4Aの前面又は後面或いはそれらの両面に印刷を施すことで、印刷画像層(インク層)として構成されている。なお、前面シート4Aの画像Gは、上記の他、例えば、画像Gを有する画像フィルム等を前面シート4Aの前面等に積層して貼り付けて構成されていてもよく、各種の方法にて構成することができる。
【0041】
(外枠部)
前記外枠部3は、図2に示すように、アルミニウム製の4本の同一断面形状の型材を後面板部2の外周を覆う四角形状に組み付けて構成されている。この外枠部3には、両シート4A,4Bの外周縁部4a,4bを個別に取り付け可能な前方開放の複数のシート取付溝5(シート取付部の一例)と、後面板部2が取り付け可能な内方開放の後面板取付溝6(後面板取付部の一例)とが一体的に備えられている。
【0042】
複数のシート取付溝5は、前方が開放された凹状の横断面形状で外枠部3の延在方向に延び、両シート4A,4Bの外周縁部4a,4bを前方から内部に差し込んで係合させることで、両シート4A,4Bの外周縁部4a,4bを取り付け可能に構成されている。複数のシート取付溝5として、内外方向で相対的に内側となる内側シート取付溝5Bと、内外方向で相対的に外側となる外側シート取付溝5Aが備えられている。
【0043】
外枠部3には、前方に向けて突出する第1~第3板部3a~3cが、内外方向で間隔を空けて設けられており、最も外側の第1板部3aとその内側の第2板部3bとの対向面間に有底の外側シート取付溝5Aが形成され、第2板部3bと最も内側の第3板部3cとの対向面間に有底の内側シート取付溝5Bが形成されている。
【0044】
外側シート取付溝5Aの内側端を構成する第2板部3bの先端位置(前端位置)は、内側シート取付溝5Bの内側端を構成する第3板部3cの先端位置(前端位置)よりも前方(図2中で左方)に配置されている。また、本実施形態では、第1板部3aの先端位置(前端位置)は、第2板部3bの先端位置(前端位置)よりも僅かに前方に配置されている。
【0045】
なお、第2板部3bの先端位置(前端位置)は、外側シート取付溝5Aに取り付ける前面シート4Aの位置を、それよりも前方側とするための位置規制部として機能させることができ、第3板部3cの先端位置(前端位置)も、内側シート取付溝5Bに取り付ける光拡散シート4Bの位置を、それよりも前方側とするための位置規制部として機能させることができる。
また、前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)の前後幅を、外側シート取付溝5Aの溝深さよりも小にし、前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)の全体を外側シート取付溝5Aに圧入して取り付ければ、前面シート4Aの後面が第2板部3bの先端位置(前端位置)に接当する規定の位置に前面シート4Aを配置することができる。
同様に、光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の前後幅を、内側シート取付溝5Bの溝深さよりも小にし、光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の全体を内側シート取付溝5Bに圧入して取り付ければ、光拡散シート4Bの後面が第3板部3cの先端位置(前端位置)に接当する規定の位置に光拡散シート4Bを配置することができる。
ちなみに、前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)の前後幅と、光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の前後幅とを、内側シート取付溝5Bの溝深さ(浅い側の溝深さ)よりも小となる同一幅に揃えてもよい。
【0046】
このようにすれば、第1空間S1の奥行きを、第3板部3cの突出長さ(前後方向の長さ)に設定することができ、第2空間S2の奥行きを、第2板部3bの突出長さと第3板部3cの突出長さとの差に設定することができる。
すなわち、両シート4A,4Bの前後方向での位置、第1空間S1の奥行き、第2空間S2の奥行きを、外枠部3の形状にて決定される規定値に設定することができる。
なお、両シート4A,4Bの前後方向での位置、第1空間S1の奥行き、及び、第2空間S2の奥行きを規定値から変更して調整したい場合には、前面シート4Aの取付部位(外周縁部4a)や光拡散シート4Bの取付部位(外周縁部4b)の外側シート取付溝5Aや内側シート取付溝5Bへの圧入深さを調整したり、前述の如く、硬質の心材8bの前後幅の調整等により両シート4A,4Bの取付部位(外周縁部4a,4b)の前後幅を調整すればよい。
【0047】
後面板取付溝6は、内方に開放する凹状の横断面形状で外枠部3の延在方向に延び、後面板部2の外周縁部を内外方向から内部に差し込んで係合させることで、後面板部2の外周縁部を取り付け可能に構成されている。
【0048】
外枠部3には、内方に向けて突出する第4、第5板部3d,3eが前後方向で間隔を空けて設けられおり、それら第4、第5板部3d,3eとの対向面間に有底の後面板取付溝6が形成されている。本実施形態では、第5板部3eの先端位置(内端位置)は、第4板部3dの先端位置(内端位置)よりも僅かに内方(図2中で下方)に配置されている。
【0049】
なお、外枠部3には、取付金具等を用いて照明パネルPを被取付部に取り付ける場合等に利用される後方開放の後方側取付溝7(後方側取付部の一例)が一体的に備えられている。後方側取付溝7は、後方が開放された横断面形状で外枠部3の延在方向に延びている。後方側取付溝7は、入り口の幅よりも内部の幅が広く形成されたアリ溝状に構成されている。
【0050】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0051】
(1)前述の実施形態では、照明パネルPが平板状に構成されている場合を例に示したが、円弧状等に湾曲する曲面板状に構成されていてよい。
【0052】
(2)前述の実施形態では、前面シート4Aの後方に1枚の光拡散シート4Bが備えられている場合を例に示したが、2枚以上の光拡散シート4Bが備えられていてもよい。
【0053】
(3)前述の実施形態では、光源として、LED素子1Aを例に示したが、勿論、LED素子以外のものであってもよい。
【0054】
(4)前述の実施形態では、前面シート4Aと光拡散シート4Bとが、前後方向で間隔を空けて配置されている場合を例に示したが、前面シート4Aと光拡散シート4Bとが、前後方向で間隔を空けずに積層された状態で配置されていてもよい。
【0055】
(5)前述の実施形態では、光拡散シート4Bを構成する第2ガラスヤーンGY2が、前面シート4Aを構成する第1ガラスヤーンGY1よりも太く構成されている場合を例に示したが、第1ガラスヤーンGY1と第2ガラスヤーンGY2の太さ関係はこれに限らない。例えば、第2ガラスヤーンGY2が、第1ガラスヤーンGY1と同等の太さ又はそれよりも細く構成されていてもよい。
【0056】
(6)前面シート4Bや光拡散シート4Bは、前述の実施形態で示したガラスクロス(GC1,GC2)に限らず、光拡散性を有する各種の素材にて構成することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
2 後面板部
3 外枠部
4A 前面シート
4B 光拡散シート
G 画像
GC ガラスクロス
GC1 第1ガラスクロス
GC2 第2ガラスクロス
GY ガラスヤーン
GY1 第1ガラスヤーン
GY2 第2ガラスヤーン
P 照明パネル
gf ガラスフィラメント



図1
図2
図3
図4