(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】速硬性セメント組成物及び速硬性モルタル
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220418BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20220418BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220418BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20220418BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20220418BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20220418BHJP
C04B 103/14 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B20/00 B
C04B22/08 Z
C04B22/10
C04B22/14 B
C04B24/22 Z
C04B103:14
(21)【出願番号】P 2018064773
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩平
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-150083(JP,A)
【文献】特開2015-120624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、粒径が2mm以下である第一の骨材と、粒径が2mm超10mm以下であり、且つ、実積率が60~80%である第二の骨材とを含
み、
前記第一の骨材及び前記第二の骨材の合計の含有量が、前記結合材100質量部に対して140~210質量部であり、
前記第一の骨材及び前記第二の骨材の質量の合計に対する前記第二の骨材の質量割合([第二の骨材の質量]/[(第一の骨材の質量)+(第二の骨材の質量)])が0.1~0.58である、速硬性セメント組成物。
【請求項2】
前記カルシウムアルミネート類の含有率が、前記結合材全質量を基準として10~40質量%である、請求項
1に記載の速硬性セメント組成物。
【請求項3】
減水剤を更に含む、請求項1
又は2に記載の速硬性セメント組成物。
【請求項4】
アルカリ金属炭酸塩を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の速硬性セメント組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の速硬性セメント組成物と、水とを含み、
前記水の含有量が、前記結合材100質量部に対して20~50質量部である、速硬性モルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬性セメント組成物及び速硬性モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
流動性の高いモルタルは、土木構造物、建築構造物等の構築若しくは補修、又は機械の設置のための基礎作製等のために用いられている。このようなモルタルには、セメント、細骨材及び混和材料を予め乾式混合したプレミックスタイプのセメント組成物が用いられることも多い。このセメント組成物は、所定量の水を加え、グラウトミキサやハンドミキサ等のミキサで混練することで、簡単に、流動性に優れ材料分離が起こり難い品質の安定したモルタルが得られるという点が優れている。
【0003】
また、セメント組成物は現場で簡単にモルタルを調製することができるため、コンクリートミキサー車が入ることができない狭小部等の施工箇所では、コンクリートの代替物としても用いられている。このようなセメント組成物として、例えば、特許文献1には特定の粒子径の骨材を一定量含むプレミックスグラウト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンクリートの代替物として用いることもできるセメント組成物は、その施工用途・場所によって速硬性が必要となる場合もある。しかしながら、このようなセメント組成物において速硬性を高めるために凝結促進成分を添加すると、速硬性は高まる一方で良好な流動性及び材料分離抵抗性の両立が困難になるという課題があった。そのため、流動性及び材料分離抵抗性に優れ、更に速硬性を有する新たなセメント組成物が求められている。
【0006】
したがって、本発明は、流動性及び材料分離抵抗性に優れ、且つ速やかに硬化する速硬性セメント組成物及び速硬性モルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、速硬成分であるカルシウムアルミネート類を使用し、且つ特定の粗粒率及び実積率を有する骨材を用いることで、速硬性を確保しつつ流動性及び材料分離抵抗性を兼ね備える速硬性セメント組成物及び速硬性モルタルが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば以下のとおりである。
[1]セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、粒径が2mm以下である第一の骨材と、粒径が2mm超10mm以下であり、且つ、実積率が60~80%である第二の骨材とを含む、速硬性セメント組成物。
[2]第一の骨材及び第二の骨材の合計の含有量が、結合材100質量部に対して110~210質量部である、[1]の速硬性セメント組成物。
[3]第一の骨材及び第二の骨材の質量の合計に対する第二の骨材の質量割合([第二の骨材の質量]/[(第一の骨材の質量)+(第二の骨材の質量)])が0.1~0.9である、[1]又は[2]の速硬性セメント組成物。
[4]カルシウムアルミネート類の含有率が、結合材全質量を基準として10~40質量%である、[1]~[3]のいずれかの速硬性セメント組成物。
[5]減水剤を更に含む、[1]~[4]のいずれかの速硬性セメント組成物。
[6][1]~[5]のいずれかの速硬性セメント組成物と、水とを含み、水の含有量が、結合材100質量部に対して20~50質量部である、速硬性モルタル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流動性及び材料分離抵抗性に優れ、且つ速やかに硬化する速硬性セメント組成物及び速硬性モルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の速硬性セメント組成物は、セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、粒径が2mm以下である第一の骨材と、粒径が2mm超10mm以下であり、且つ、実積率が60~80%である第二の骨材とを含む。
【0012】
本実施形態に係る結合材は、セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類の三成分からなる。
【0013】
セメントは種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、速硬性セメント等が挙げられる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0014】
セメントの含有率は、結合材全質量を基準として35~85質量%であることが好ましく、45~81質量%であることがより好ましく、53~78質量%であることが更に好ましい。
【0015】
カルシウムアルミネート類としては、CaOをC、Al2O3をA、Na2OをN、及びFe2O3をFとして表したとき、C3A、C2A、C12A7、CA、又はCA2等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、C4AF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC3A3・CaF2やC11A7・CaF2等と表示されるカルシウムフロロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、C8NA3やC3N2A5等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アルミナセメント、並びにC3A3・CaSO4等と表示されるカルシウムサルホアルミネートを総称するものである。このカルシウムアルミネート類は、結晶質のもの、非結晶質のもの、非晶質及び結晶質が混在したもののいずれも使用可能である。カルシウムアルミネート類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、初期強度発現性をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3000cm2/g以上であることが好ましく、5000cm2/g以上であることがより好ましい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、ブレーン比表面積で8000cm2/g以下であることが好ましい。
【0016】
カルシウムアルミネート類の含有率は、結合材全質量を基準として10~40質量%であることが好ましく、12~37質量%であることがより好ましく、14~35質量%であることが更に好ましい。カルシウムアルミネート類の含有率が上記範囲内であれば、硬化をより促進し、適切な可使時間に調整しやすく、初期強度発現性も更に向上する。
【0017】
石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0018】
石膏類の含有率は、結合材全質量を基準として10~35質量%であることが好ましく、11~30質量%であることがより好ましく、13~27質量%であることが更に好ましい。石膏類の含有率が上記範囲内であれば、硬化をより促進し、適切な可使時間に調整しやすく、初期強度発現性も更に向上する。
【0019】
第一の骨材は、粒径が2mm以下の骨材である。第一の骨材としては、例えば、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。第一の骨材は、これらの中から、粗い骨材を含まない粒度に調整した珪砂、石灰石等の骨材を用いることが好ましい。第一の骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
本明細書において、粒径が2mm以下の骨材とは、骨材をふるい分けした際に2mmふるいを通過するものを指す。
【0020】
第一の骨材の粒度は特に限定されるものではなく、適宜調整することができる。第一の骨材は、JIS A 1102:2014「骨材のふるい分け試験方法」により規定される粗粒率からその粒度を考慮することができる。モルタル時において、より良好な流動性が得られやすく、ブリーディングを抑制しやすいという観点から、第一の骨材の粗粒率は、1~4であることが好ましく、1.5~3.8であることがより好ましく、2~3.5であることが更に好ましい。
【0021】
第一の骨材の含有量は、結合材100質量部に対して25~185質量部であることが好ましく、60~150質量部であることがより好ましく、70~130質量部であることが更に好ましく、75~125質量部であることが特に好ましい。第一の骨材の含有量が上記範囲内であれば、モルタル時において、より良好な流動性が得られやすく、材料分離を抑制しやすい。
【0022】
第二の骨材は、粒径が2mm超10mm以下であり、且つ、実積率が60~80%である。第二の骨材としては、モルタル時の良好な流動性を維持しやすく、分離を抑制したまま収縮量や発熱量を更に低減できるという観点から、例えば、川砂、川砂利、豆砂利、玉砂利が好ましい。第二の骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
本明細書において、粒径が2mm超10mm以下の骨材とは、骨材をふるい分けした際に10mmふるいを通過し、2mmふるいに残留するものを指す。
【0023】
第二の骨材の粗粒率は、3.5~6であることが好ましく、4~6であることがより好ましく、4.5~5.5であることが更に好ましい。第二の骨材の粗粒率が、上記範囲内であれば、モルタル時において、より良好な流動性及び材料分離抵抗性が得られやすい。第二の骨材は、JIS A 1102:2014「骨材のふるい分け試験方法」により規定される粗粒率からその粒度を考慮することができる。
【0024】
第二の骨材の実積率は、60~80%である。第二の骨材の実積率が上記範囲外であると、流動性の低下や、材料が分離しやすくなる。モルタル時において、より良好な流動性及び材料分離抵抗性が得られやすいという観点から、第二の骨材の実積率は、62~75%であることが好ましく、64~70%であることがより好ましい。第二の骨材の実積率は、JIS A 1104:2006「骨材の単位容積質量及び実積率試験方法」により規定される方法から算出することができる。
【0025】
第二の骨材の含有量は、結合材100質量部に対して15~185質量部であることが好ましく、25~130質量部であることがより好ましく、40~110質量部であることが更に好ましく、50~100質量部であることが特に好ましい。第二の骨材の含有量が上記範囲内であれば、モルタル時において、より良好な流動性及び材料分離抵抗性が得られやすい。
【0026】
第一の骨材及び第二の骨材の質量の合計に対する第二の骨材の質量割合([第二の骨材の質量]/[(第一の骨材の質量)+(第二の骨材の質量)])は0.1~0.9であることが好ましく、0.15~0.7であることがより好ましく、0.2~0.58であることが更に好ましい。第一の骨材及び第二の骨材の質量の合計に対する第二の骨材の質量割合が上記範囲内であれば、モルタルにおいて、より良好な流動性及び材料分離抵抗性が得られやすい。
【0027】
第一の骨材及び第二の骨材の合計の含有量は、結合材100質量部に対して110~210質量部であることが好ましく、130~190質量部であることがより好ましく、140~180質量部であることが更に好ましい。第一の骨材及び第二の骨材の合計の含有量が上記範囲内であると、モルタルにおいて、より良好な流動性及び材料分離抵抗性が得られやすい。
【0028】
本実施形態の速硬性セメント組成物は、アルカリ金属炭酸塩を含んでもよい。アルカリ金属炭酸塩は、アルカリ金属(水素原子を除く周期表第一族元素)の炭酸塩又は重炭酸塩であれば特に限定されるものではない。アルカリ金属炭酸塩としては、強度発現性を更に促進させるという観点から、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。アルカリ金属炭酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0029】
アルカリ金属炭酸塩の含有量は、結合材100質量部に対して0.1~3質量部であることが好ましく、0.2~2質量部であることがより好ましく、0.3~1.5質量部であることが更に好ましい。アルカリ金属炭酸塩の含有量が上記範囲内であれば、より一層強度発現性に優れる傾向にある。
【0030】
本実施形態の速硬性セメント組成物は減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤、アクリル系減水剤が挙げられる。これらの中では、リグニンスルホン酸系減水剤及びナフタレンスルホン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0031】
減水剤の含有量は、結合材100質量部に対して0.05~1.5質量部であることが好ましく、0.1~1質量部であることがより好ましく、0.15~0.5質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性が得られやすく、硬化時の強度発現性もより向上しやすい。
【0032】
本実施形態の速硬性セメント組成物は、凝結遅延剤を含んでもよい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩及びアルカリ金属炭酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0033】
凝結遅延剤の含有量は、結合材100質量部に対して0.02~2質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましく、0.07~0.5質量部であることが更に好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を更に確保しやすく、初期強度発現性が低下しにくい傾向にある。
【0034】
本実施形態の速硬性セメント組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、膨張剤、発泡剤、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維が挙げられる。
【0035】
本実施形態の速硬性セメント組成物は、通常用いられる混練器具により上記した各成分を混合することで調製でき、その器具は特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサ、ハンドミキサ、傾胴ミキサ、二軸ミキサ等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の速硬性セメント組成物は、水と混合して速硬性モルタルとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、結合材100質量部に対し、20~50質量部であることが好ましく、25~45質量部であることがより好ましく、30~40質量部であることが最も好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、より流動性を確保しやすく、材料分離の発生、硬化体の収縮の増加及び初期強度発現性の低下を抑制しやすい。
【0037】
本実施形態の速硬性モルタルの調製は、通常の速硬性セメント組成物と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば上述したものを用いることができる。
【0038】
本実施形態の速硬性セメント組成物及び速硬性モルタルは、流動性及び材料分離抵抗性に優れ、且つ速やかに硬化するものとなる。そのため、このような速硬性セメント組成物及び速硬性モルタルは、土木構造物、建築構造物等の構築若しくは補修、又は機械の設置のための基礎作製等に用いることができる。また、本実施形態の速硬性セメント組成物は水以外の材料を予め混合したプレミックスタイプとして調製することもできる。そのため、本実施形態の速硬性セメント組成物及び速硬性モルタルは、コンクリートミキサー車が入ることができない狭小部や小規模なコンクリート打設箇所であっても、現場で調製してコンクリートの代替物として充填に用いることができ、且つ速やかに硬化することから工期短縮を図ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例1及び8は、参考例とする。
【0040】
実施例で用いる材料は以下のとおりである。
セメント:普通ポルトランドセメント
カルシウムアルミネート類:アルミナセメント
石膏類:無水石膏
骨材A:珪砂及び石灰石砂の混合骨材、粒径2mm以下、粗粒率2.8
骨材B:川砂、粒径2mm超10mm以下、粗粒率5.0、実積率66%
減水剤:ナフタレン系減水剤
アルカリ金属炭酸塩:炭酸リチウム
凝結遅延剤:クエン酸
【0041】
[速硬性セメント組成物の配合設計]
セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材100質量部に対して、骨材A、骨材Bを表1及び表2に示す割合とし、減水剤を0.27質量部とし、アルカリ金属炭酸塩を0.4質量部とし、凝結遅延剤を0.16質量部として配合設計した。ただし、比較例3のみ凝結遅延剤を含まない配合とした。
【0042】
[速硬性モルタルの作製]
表1又は表2で配合設計した速硬性セメント組成物6kgに表1又は表2に示した割合の水を加え、ハンドミキサ(回転数1000rpm、羽根直径100mmブレード)及び金属製円筒容器(容量15L)を用いて20℃環境下で90秒練混ぜ、速硬性モルタルを作製した。
【0043】
[評価方法]
各項目については、以下の方法で評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
・流動性評価
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」12.フロー試験に準じて、20℃環境下で速硬性モルタルのフロー値(0打)を測定した。
・不分離性試験
混練した速硬性モルタルを円筒容器の中で1分間静置し、そのときの状況を目視により確認して分離状況を評価した。円筒容器の底に骨材が沈下したものを×、わずかにブリーディングが発生したものを○、骨材の分離やブリーディングが見られなかったものを◎として評価した。
・硬化時間
速硬性モルタル2000mLをポリエチレン袋に入れて封をし、そのまま静置した。静置後、ポリエチレン袋の上から速硬性モルタルを指で押し、速硬性モルタルが変形しなくなった時の時間を硬化時間とした。
【0044】
【0045】
【0046】
表1及び表2より、特定の粗粒率及び実積率を有する骨材Bを用いた実施例では、骨材Bを用いない比較例1に比べて流動性及び分離抵抗性を両立することができ、結合材としてセメントのみを使用している比較例3と比べて、流動性及び分離抵抗性を確保しつつ、より早い時間で硬化した。