(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220418BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 121
B41J2/175 501
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/175 167
(21)【出願番号】P 2019030847
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜太
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-111801(JP,A)
【文献】特開2005-041085(JP,A)
【文献】特開2006-341543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク容器と、
インクを吐出するインクヘッドと、
前記インク容器と前記インクヘッドとを接続するインク流路と、
前記インク流路に設けられ、インクが一時的に貯留される貯留室と、
前記インク流路に設けられ、駆動時には前記インク容器から前記インクヘッドに向かう方向にインクを送る送液ポンプと、
前記貯留室の圧力が、予め設定される所定の閾値圧力よりも小さいか大きいかの少なくとも一方を検知できるように構成された圧力検出機構と、
前記インクヘッド、前記送液ポンプ、および前記圧力検出機構に接続された制御装置と、を備え
たインクジェットプリンタであって、
前記制御装置は、前記貯留室の圧力が第1圧力となるように前記送液ポンプの駆動を制御し、
前記制御装置は、
前記貯留室の圧力が
前記第1圧力の場合、および、前記第1圧力よりも低く、かつ、前記第1圧力よりも低い第2圧力以上の状態である高負圧状態の範囲で、前記インクヘッドにインクを吐出させるインク消費部と、
前記インクヘッドがインク吐出動作を行った後、前記圧力検出機構の検知に基づき、前記貯留室の圧力が前記高負圧状態であるかどうかを判断する第1負圧確認部と、
前記第1負圧確認部において前記高負圧状態であると判断されなかったとき、当該
インクジェットプリンタがインク吐出動作を行なってもよいと判断する第1許可部と、
を備える、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記送液ポンプは、1駆動当たりの単位送液量が予め設定されており、
前記制御装置は、
前記第1負圧確認部が前記高負圧状態であると判断したとき、前記送液ポンプの駆動と、前記圧力検出機構の検知とに基づき、前記貯留室の圧力が前記高負圧状態であるかどうかを判断する第2負圧確認部を備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第2負圧確認部は、前記インク流路の容量、前記貯留室の容量、および前記単位送液量に基づいて予め設定される駆動閾値を超えて前記送液ポンプを駆動させたときに、前記圧力検出機構の検知に基づき前記貯留室の圧力が閾値圧力よりも小さい場合に、前記貯留室が前記高負圧状態であると判断する、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インク吐出動作が自動メンテナンス動作であるとき、
前記第2負圧確認部において高負圧状態であると判断されたときに、ユーザに前記インク容器の交換要求を通知する第1通知部を備える、請求項
2または3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記インク容器が脱着されたことを検知して記録できるように構成された容器交換記録装置を備え、
前記制御装置は、
前記第1負圧確認部において前記高負圧状態であると判断されたとき、当該判断の後に、前記容器交換記録装置が前記インク容器の脱着を記録したかどうかを確認する着脱確認部と、
前記着脱確認部において前記インク容器の脱着が記録されていたとき、前記送液ポンプを駆動して前記高負圧状態を解消する負圧解消部と、
前記負圧解消部が前記高負圧状態を解消した後、当該
インクジェットプリンタがインク吐出動作を行なってもよいと判断する第2許可部と、
を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インク吐出動作が印刷動作であるとき、
前記着脱確認部において前記インク容器の脱着が記録されていなかったときに、ユーザに前記インク容器の交換要求を通知する第2通知部を備える、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記インク容器は、脱着されたことがあるかどうかを記憶する記憶部を備えていない、請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記貯留室は、一部に開口が設けられた箱状の容器本体と、前記開口を覆うダンパ膜と、を備え、
前記ダンパ膜に設けられた押圧体と、前記ダンパ膜よりも前記貯留室とは反対側に設けられ、前記押圧体の移動に伴って位置が変更されるフィラーと、を備え
た貯留量検知機構を備え、
前記圧力検出機構は、前記フィラーが所定の範囲内に移動したか否かを検出し、前記所定の範囲内に前記フィラーが位置していないとき、前記貯留室内の圧力が前記
閾値圧力よりも大きいことを検出するように構成されたフィラーセンサである、請求項1~7のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載されたインクジェットプリンタにおいて、
前記貯留室の圧力が
前記高負圧状態の範囲で、前記インクヘッドにインクを吐出させるインク消費工程を行った
後に、
前記圧力検出機構の検知に基づき、前記貯留室内の圧力が前記高負圧状態
の範囲であるかどうかを判断する第1負圧確認工程と、
前記第1負圧確認工程において前記貯留室内の圧力が前記高負圧状態の範囲であると判断された後、前記送液ポンプの駆動と、前記圧力検出機構の検知とに基づき、前記貯留室の圧力が前記高負圧状態
の範囲であるかどうかを判断する第2負圧確認工程と、
前記第2負圧確認
工程において
前記貯留室内の圧力が前記高負圧状態
の範囲であると判断された
後、前記インク容器の脱着を記録したかどうかを確認する着脱確認工程と、
前記着脱確認
工程において前記インク容器の脱着が記録されていたとき、前記送液ポンプを駆動して前記高負圧状態を解消する負圧解消工程と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびそのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクヘッドからインクを吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。インクジェットプリンタのインクは、一般的にはインクカートリッジ等のインク容器に収容されてプリンタに搭載される。例えば、特許文献1には、インクカートリッジと、弁と、中間タンクと、2つのヘッドユニットと、これらをこの順に接続するインク供給チューブと、を含むインク供給機構を備えるプリンタが開示されている。インク供給チューブは中間タンクよりもヘッドユニットの側で分岐されて、2つのヘッドユニットに接続されている。このように、インクを共通の中間タンクに貯留してから複数のヘッドユニットに分けて供給することで、複数のヘッドユニットの背圧を一定にし、複数のヘッドユニット間の吐出特性を安定させることができる。
【0003】
この中間タンクには、通常、貯留しているインクの量を検知することができる残量検知部材が設けられている。特許文献1の技術では、貯留インクが所定の量以下になったときに弁を開き、インクカートリッジから中間タンクにインクを補充するようにしている。また、弁を開いてから所定時間以上が経過しても中間タンクにインクが補充されないときに、インクカートリッジが空になったと検出するようにしている。ここで、多くのインクジェットプリンタでは、高い印刷精度を確保するため、インクカートリッジから中間タンクにインクを安定して供給できる範囲内で、インクカートリッジが空になったことを検出するよう各種の閾値を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、消耗品であるインクは価格が高いことから、インクカートリッジに収容されているインクをできる限り多く使い切ることができれば好適である。そこで本発明者は、上記のインク供給機構において、例えば、弁に代えて液送ポンプを設置することにより、インクカートリッジからインクを強制的に排出させて、従来よりもカートリッジ内の未使用インク残量を少なくすることを検討している。しかしながら、このように高い送液力でインクを使い切る場合、インクの空検知がなされるタイミングにおいてインク供給チューブ内は高い負圧状態となってしまう。したがって、プリンタが引き続き印刷やメンテナンス等においてインクを消費しようとしたとき、これまでには発生しなかった様々な弊害が生じ得ることを知見した。特に、ユーザの行動を優先し、ユーザへの負担を感じさせない範囲でカートリッジ内の未使用インク残量を少なくするには、検討の余地があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりもカートリッジ内の未使用インク残量を少なくする場合であっても、ユーザへの負担を増大させることなく、適切に印刷等のインク吐出動作を実行することができるインクジェットプリンタを提供することである。また、他の目的は、このようなインクジェットプリンタのためのコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタは、インクを収容するインク容器と、インクを吐出するインクヘッドと、前記インク容器と前記インクヘッドとを接続するインク流路と、前記インク流路に設けられ、インクが一時的に貯留される貯留室前記と、前記インク流路に設けられ、駆動時には前記インク容器から前記インクヘッドに向かう方向にインクを送る送液ポンプと、前記貯留室内の圧力が、予め設定される所定の閾値圧力よりも大きいか小さいかの少なくとも一方を検知できるように構成された圧力検出機構と、前記インクヘッド、前記送液ポンプ、および前記圧力検出機構に接続された制御装置と、を備えている。そして前記制御装置は、インク消費部と、第1負圧確認部と、第1許可部と、を備えている。インク消費部は、前記貯留室の圧力が前記第1圧力の場合、および、前記第1圧力よりも低く、かつ、前記第1圧力よりも低い第2圧力以上の状態である高負圧状態の範囲で、前記インクヘッドにインクを吐出させる。第1負圧確認部は、前記インクヘッドがインク吐出動作を行った後、前記圧力検出機構の検知に基づき、前記貯留室の圧力が前記高負圧状態であるかどうかを判断する。第1許可部は、前記第1負圧確認部において前記高負圧状態であると判断されなかったとき、当該インクジェットプリンタがインク吐出動作を行なってもよいと判断する。
【0008】
貯留室内が高負圧状態となるまでインクを使用したとき、単純には、空になったインク容器を新しいものに交換すれば、通常どおり印刷等のインク吐出動作を実行できると考えられる。しかしながら、貯留室内が高負圧状態となるまでインクを使用したときは、インク供給機構も総じて高い負圧となっており、高負圧状態を解消するための処置を適切に行わないと、インクヘッドやインク容器からインクカートリッジにインクが供給され続けるため、インクヘッドからインク供給機構に空気が混入するという不都合が生じる虞がある。また、インクジェットプリンタは、例えば、ユーザに負担を与えずに印刷状態を適正に保つために、深夜等のユーザによるプリンタの不使用時に自動メンテナンスを行うように設定されている場合がある。また、自動メンテナンスには、様々なインク吐出動作を含み得る。この場合、自動メンテナンス後のユーザの把握し得ないタイミングでインク容器が空になり、インク流路が高負圧状態となる場合が起こり得る。また、自動メンテナンスの途中でインク容器が空になり、インク流路が高負圧状態となる場合が起こり得る。さらに、ユーザの事情によっては、貯留室内が高負圧状態となったときに、空になったインク容器を新しいものに交換した後に、あるいは交換せずに、インクジェットプリンタの電源を切ることも考えられる。このような場合、プリンタは、適切なインク吐出動作を実行することができない。前記インクジェットプリンタによれば、貯留室内が高負圧状態となるまでインクを使用したとき、このようなプリンタ側の、あるいは、ユーザ側の様々な状況に対応して、プリンタがインク吐出動作を行なってもよいかどうかを適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】キャリッジ下面の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】インク供給システムの構成を示す模式図である。
【
図4】送液ポンプの内部構成を模式的に示す断面図である。
【
図5A】内部の圧力が所定の圧力よりも低い状態のダンパを模式的に示す断面図である。
【
図5B】内部の圧力が所定の圧力以上の状態のダンパを模式的に示す断面図である。
【
図7】一実施形態に係るインク供給システムの負圧解消処理を示すフローチャートである。
【
図8】他の実施形態の負圧解消処理に係るフローチャートである。
【
図9】他の実施形態の負圧解消処理に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る液体吐出装置およびそれを備えたインクジェットプリンタ(以下プリンタとする)の実施形態について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0011】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)10の正面図である。プリンタ1は、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド51から、インクジェット方式でインクを吐出することによって記録媒体5上に画像を印刷する。プリンタ1は、主走査方向Yに長く、例えば幅方向の寸法がA0判の幅方向の寸法の記録媒体に印刷が可能な、いわゆる大型のプリンタである。
【0013】
記録媒体5はロール状に巻き取られた記録紙であり、いわゆる、ロール紙である。しかしながら、記録媒体5は、ロール紙に限定されない。例えば、記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0014】
図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ20と、キャリッジ移動装置30と、搬送装置40と、インクヘッド51と、キャッピング装置60と、ワイピング装置70と、制御装置100とを備えている。
【0015】
図2は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。キャリッジ20は、インクヘッド51を搭載し、インクヘッド51を移動させるための部材である。キャリッジ20には、複数のインクヘッド51が下面を露出するように設置されている。インクヘッド51は、インクを吐出する部材である。複数のインクヘッド51は、キャリッジ20において左右方向に並んで配置されている。複数のインクヘッド51の下面には、それぞれ、複数のノズル51aが形成されている。ノズル51aは、インクが吐出される微細な孔である。インクヘッド51の下面は、それぞれ、複数のノズル51aが形成されたノズル面を構成している。ノズル面において、複数のノズル51aは前後方向に並んでノズル列を形成している。ここでは、ノズル列は、1つのインクヘッド51につき2列形成されている。ただし、インクヘッド51およびノズル51aの構成および配置は上記したものに限定されるわけではない。
【0016】
インクヘッド51の内部には、例えば圧電素子を備えたアクチュエータが設けられている。アクチュエータは、ノズル51aごとに設けられている。各アクチュエータは、ノズル51aと連通しインクが貯留される圧力室と、圧力室に面する圧電素子とを備えている。圧電素子は、印加する電圧強度を変化させることで膨張または収縮する。この圧電素子の寸法の変位に伴って圧力室の体積が変化する。そして圧力室の瞬時の体積変化によって、圧力室に貯留されているインクがノズル51aから吐出される。各アクチュエータが駆動することによって、各ノズル51aはインクを吐出する。インクヘッド51のアクチュエータは、それぞれが制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によってその駆動が制御されている。
【0017】
キャリッジ移動装置30は、キャリッジ20を移動させるための装置である。キャリッジ移動装置30は、ガイドレール31と、ベルト32と、左右のプーリ33aおよび33bと、キャリッジモータ34とを備えている。ガイドレール31には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール31は、左右方向に延びている。ガイドレール31は、キャリッジ20の左右方向への移動をガイドする。ベルト32は、無端状のベルトである。ベルト32は、ガイドレール31の右側に設けられたプーリ33aおよび左側に設けられたプーリ33bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ20が固定されている。右側のプーリ33aにはキャリッジモータ34が取り付けられている。キャリッジモータ34は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ34は、制御装置100によって駆動が制御される。キャリッジモータ34が駆動するとプーリ33aが順方向または逆方向に回転し、左右のプーリ33aおよび33bの周りをベルト32が順方向または逆方向に周回走行する。これにより、キャリッジ20がガイドレール31に沿って左右方向に移動する。
【0018】
キャリッジ20の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、左右方向に延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12の周辺には、搬送装置40が備えられている。搬送装置40は、プラテン12上の記録媒体5を前後方向に移動させる装置である。搬送装置40は、ピンチローラ41と、グリットローラ42と、フィードモータ43とを備えている。ピンチローラ41はプラテン12の上方に設けられ、記録媒体5を上から押下する。ピンチローラ41は、キャリッジ20より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ42が設けられている。グリットローラ42は、ピンチローラ41の下方に配置されている。グリットローラ42は、ピンチローラ41と対向する位置に設けられている。グリットローラ42は、フィードモータ43に連結されている。グリットローラ42は、フィードモータ43の駆動力を受けて順方向または逆方向に回転可能に構成されている。フィードモータ43は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ43は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ41とグリットローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ42が順方向または逆方向に回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
【0019】
インク供給システム50は、インクを収容するインクカートリッジ10からインクヘッド51にインクを供給するシステムである。インク供給システム50は、ノズル列ごとに設けられている。したがって、プリンタ10は、複数のインク供給システム50を備えている。本実施形態では、各インク供給システム30が同じ構成である。
図3に示すように、インク供給システム50は、カートリッジ装着部52と、インク流路53と、送液ポンプ54と、ダンパ55とを備えている。
【0020】
インクカートリッジ10は、インクが収容される容器である。インクカートリッジ10は、収容されたインクの劣化等を抑制するために密閉されている。1つのインクカートリッジ10には、例えば、プロセスカラーインクおよび特色インクのうちの1つのインクが貯留されている。インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。インクカートリッジ10には、例えば、インクが収容された可撓性のパウチが内蔵されている。インクカートリッジ10は、本技術におけるインク容器の一例である。なお、このインクカートリッジ10には、カートリッジ内のインク残量を計測する専用のセンサが備えられていなくてもよい。
【0021】
カートリッジ装着部52は、インクカートリッジ10を収容して保持する要素である。カートリッジ装着部52は、インクカートリッジ10を着脱可能に構成されている。カートリッジ装着部52にインクカートリッジ10を装着することで、インクカートリッジ10からインク流路53に気密かつ安定してインクを供給することができる。カートリッジ装着部52には、カートリッジ装着部52にインクカートリッジ10が装着されたことを検知して記録できるように構成された容器交換記録装置52aが備えられている。容器交換記録装置52aは制御装置100に電気的に接続され、インクカートリッジ10が装着されたことを制御装置100に記録することができる。なお、この容器交換記録装置52aは、インクカートリッジ10からインク流路53に供給されたインク量を計測する専用のセンサを備えていなくてもよい。
【0022】
インク流路53は、カートリッジ装着部52とインクヘッド51とを接続する。インクは、インク流路53を通ってインクカートリッジ10からインクヘッド51に供給される。以下、インク流路53において、カートリッジ装着部52の側を上流側、インクヘッド51の側を下流側という場合がある。インク流路53の材質は特に限定されないが、インク流路53は、例えば、可撓性のチューブによって構成されている。
【0023】
送液ポンプ54は、インク流路53の途中に設けられている。ここでは、送液ポンプ54は、ダンパ55よりも上流側に設けられている。送液ポンプ54は、駆動時には主としてカートリッジ装着部52からインクヘッド51に向かう方向にインクを送出するように構成されている。また、送液ポンプ54は、停止時にはインク流路53を閉鎖するように構成されている。送液ポンプ54の種類は限定されないが、ここでは、チューブポンプである。送液ポンプ54は、チューブポンプの他に、例えば、ダイヤフラムポンプ等の定量ポンプであるとよい。送液ポンプ54は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって駆動が制御されている。
図4は、送液ポンプ54の内部を模式的に示す断面図である。送液ポンプ54は、内部流路54aと、円弧壁54bと、一対のローラ54cと、回転円板54dと、モータ54eとを備えている。
【0024】
内部流路54aは、可撓性のチューブで構成されている。内部流路54aの上流側の端部は、インク流路53のうち送液ポンプ54よりも上流側(インクカートリッジ10側)の部分と連続するように接続されている。内部流路54aの下流側の端部は、インク流路53のうち送液ポンプ54よりも下流側(インクヘッド51側)の部分と連続するように接続されている。円弧壁54bは、内部流路54aを円弧状に配置させるための配置基板である。円弧壁54bは、内部流路54aの外周側に円弧状となって垂直に立ち上がる壁部を備えている。円弧壁54bは、内部流路54aと接する面に、後述する回転円板54dの半径方向外側に凹む解放部を備えていてもよい。内部流路54aは、円弧壁54bに沿って配置されることで、略円弧状に曲げられている。
【0025】
一対のローラ54cは、内部流路54aを円弧壁54bに押圧する部材である。回転円板54dは、一対のローラ54cを円弧壁54bに沿って移動させるための部材である。一対のローラ54cは、回転円板54dに回転可能に支持されている。一対のローラ54cは、円弧壁54bとの間で内部流路54aを押し潰せる位置で回転円板54dに支持されている。回転円板54dが回転することにより、一対のローラ54cは、内部流路54aを押しつぶしながら円弧壁54bに沿って移動する。一対のローラ54cは、回転円板54dの回転軸を中心に公転しながら、回転円板54d上で自転する。これにより、ローラ54cの公転移動に伴って、所定量のインクが送液される。なお、少なくとも一方のローラ54cが円弧壁54bとの間で内部流路54aを押し潰すことで、インク流路53を閉鎖することができる。また、ローラ54cは、円弧壁54bの上記解放部との間では内部流路54aを押し潰すことができない。ローラ54cは、円弧壁54bの解放部に対向する位置に配置されることで、インク流路53を開放する。なおここで、インク流路53を「開放」するとは、ローラ54cが内部流路54aを全く押し潰していない状態と、ローラ54cが内部流路54aを押し潰しているが内部流路54aを水密には押し潰していない状態とを含む。また、インク流路53を「閉鎖」するとは、ローラ54cが内部流路54aを水密に押し潰している状態をいう。
【0026】
モータ54eは、回転円板54dに接続され、回転円板54dを回転させる。本実施形態におけるモータ54eは、パルス電力に同期して動作するステッピングモータである。モータ54eは、1パルスの入力に対し回転円板54dを回転させる軸の角度を精密に設定することができる。モータ54eは、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によってその駆動が制御されている。ここでモータ54eは、例えば、1パルスで約0.7°回転するステッピングモータである。例えば、モータ54eにより回転円板54dを単位駆動あたりに1/16回転(22.5°回転)させるためには、単位駆動あたりに32パルスの信号をモータ54eに入力するように設定される。ここでモータ54eは、例えば、図示しないパルス調整器を備えていてもよい。このパルス調整器は、例えば、制御装置100から1回の駆動信号を受信したときに、モータ54eに単位信号(例えば32パルス)を入力し、送液ポンプ54を単位駆動(例えば1/16回転)させるように構成されている。制御装置100は、このように送液ポンプ54を16分の1回転(単位駆動)させることを、1回の駆動とカウントする。
【0027】
図4から理解されるように、送液ポンプ54の1回の駆動(ここでは、16分の1回転)当たりの送液量は、予め定められている。送液ポンプ54が1回駆動されると、内部流路54aの容積のうちの1/16に対応する量のインクが送液ポンプ54により送液される。
【0028】
ダンパ55は、インク流路53の下流側に設けられている。ダンパ55は、インク流路53のうち、インクヘッド51の直前に設けられている。本実施形態では、インクヘッド51とダンパ55とが一体的に設けられている。
図5Aおよび
図5Bは、ダンパ55の構造を模式的に示した断面図である。ダンパ55は、インクが一時的に貯留される貯留室55bを備え、インクヘッド51におけるインクの圧力変動を緩和している。また、ダンパ55には、貯留室内の圧力を検出する圧力検出機構が設けられ、制御装置100は、圧力検出機構が検出する圧力に基づいて送液ポンプ54の動作を制御している。
【0029】
図5Aは、ダンパ55の貯留室55bの圧力が所定の圧力よりも低い状態を示している。
図5Bは、ダンパ55の内部の圧力が所定の圧力以上の状態を示している。ダンパ55は、ダンパ本体55aと、貯留室55bと、ダンパ膜55cと、内部バネ55dと、押圧部材55eと、支持バネ55fと、フィラー55gと、センサ55hとを備えている。ダンパ本体55aは本技術における容器本体の一例である。また、ダンパ55に備えられた押圧部材55eと、支持バネ55fと、フィラー55gと、センサ55hとは、フィラーセンサを構成しており、このフィラーセンサは、本技術における圧力検出機構の一例である。
【0030】
貯留室55bは、インクを貯留するための空間を備えている。貯留室55bは、ダンパ本体55aとダンパ膜55cとを備え、これらに取り囲まれた空間がインクを貯留するための空間(貯留空間)である。ダンパ本体55aは箱状であって、図示しない流入口と流出口とが形成されている。インクは、流入口を通って貯留室55b内に流入し、流出口を通って貯留室55bから流出する。この流入口はインク流路53に接続されている。この流出口は、インクヘッドに接続されている。
図5Aに示すように、貯留室55bは、開口55b1を備えている。
【0031】
ダンパ膜55cは、ダンパ本体55aの開口55b1を覆う部材である。ダンパ膜55cは、開口55b1を塞ぐように、周縁がダンパ本体55aに固定されている。ダンパ本体55aとダンパ膜55cによって、貯留室55bの内部に空間が区画されている。ダンパ膜55cは、例えば、可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパ膜55cは、貯留室55bの圧力に対応して、貯留室55bの内側および外側に向けて変形可能である。ダンパ膜55cは、貯留室55bの内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で取り付けられている。
【0032】
貯留室55bの内部には、内部バネ55dが設けられている。内部バネ55dは、ダンパ膜55cの貯留室55b側の面に接触している。内部バネ55dは、圧縮された状態で貯留室55bに配置されている。内部バネ55dは、ダンパ膜55cに対し、貯留室55bの外側に向かう弾性力を付与している。
【0033】
押圧部材55eは、ダンパ膜55cの貯留室55bとは反対側の面に設けられている。押圧部材55eは、内部バネ55dに支持されており、ダンパ膜55cの撓みとともに、貯留室55bの側および貯留室55bの外側に向けて移動可能である。
【0034】
フィラー55gは、ダンパ膜55cの撓みをセンサ55hに伝えるための部材である。フィラー55gは、ダンパ本体55aの外側に配置されている。フィラー55gは、
図5Aおよび
図5Bに示すように、断面が略コの字状に形成されている。フィラー55gは、接触部55g1と、支持部55g2と、被検出部55g3とを有している。接触部55g1は、断面視でダンパ本体55aを覆うように寸法が長く、長手方向の中心付近で押圧部材55eに対向している。支持部55g2は、支持バネ55fに固定されている。支持部55g2は、接触部55g1の支持バネ55f側の端部から、接触部55g1に対して垂直に延設されている。フィラー55gは、支持部55g2において、支持バネ55fを介してダンパ本体55aに緩やかに支持されている。被検出部55g3は、センサ55hによって検出される部位である。被検出部55g3は、接触部55g1のセンサ55h側の端部から、接触部55g1に対して垂直に延設されている。接触部55g1には、貯留室55bの圧力により押圧部材55eが接触したり、または離間したりする。これによって、被検出部55g3はダンパ膜55cの撓みに応じて移動可能に構成される。
【0035】
センサ55hは、貯留室55bの圧力が予め設定される所定の圧力よりも小さいか大きいかの少なくとも一方を検知できるように構成されている。このセンサ55hは、検知結果に対応した信号を送信できるように構成されている。センサ55hは、制御装置100に接続され、制御装置100に信号を送信する。ここでは、センサ55hは、非接触式のセンサである。センサ55hは、一対の検出部55h1と55h2とを有している。
図5Aに示すように、貯留室55bの圧力が所定の圧力を下回っているとき、フィラー55gの被検出部55g3は検出部55h1と55h2との間に位置している。例えば、このときセンサ55hは、信号を発するように構成されている。
図5Bに示すように、貯留室55bの圧力が大きくなるにしたがって、ダンパ膜55cが貯留室55bから外側に向けて撓む。このとき、押圧部材55eによって、フィラー55gは貯留室55bの外側に向けて押される。これにより、フィラー55gは、支持バネ55fを軸に回転する。そして、貯留室55bの圧力が所定の圧力より大きくなったとき、フィラー55gの被検出部55g3は、検出部55h1と55h2との間から外れた位置に移動する。例えば、このときセンサ55hは、信号を停止するように設定されている。このようなフィラーセンサによると、簡単な構成で、貯留室55bの圧力が所定の圧力を下回ったことを高精度に検出することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、センサ55hは、貯留室55bの圧力が所定の一つの圧力(閾値)よりも小さい場合を検知できるように構成されていた。しかしながら、所定の一つの圧力よりも大きい場合を検知できるように構成されていてもよい。さらに、センサ55hは、貯留室55bの圧力が所定の二つ以上の圧力(二つ以上の閾値)のそれぞれに対して、小さい場合や大きい場合等を検知できるように構成されていてもよい。この場合、一例として、検出部55h1と55h2を複数設けることや、検出部55h1と55h2と送液ポンプ54の駆動制御とを組み合わせることで、二つ以上の閾値に基づいて貯留室55bの圧力の大きさを判断することができる。また、センサ55hの信号発信動作は特に制限されず、所望の圧力情報に応じて、例えば、検知時に送信するものであっても、非検知時に送信するものであっても、閾値圧力を超えて変化したときなどに発信するものであってもよい。また、本実施形態では、センサ55hは、ダンパ55の貯留室55b内の圧力が一つの圧力よりも小さいか大きいかの少なくとも一方を検知できるように構成されていた。しかしながら、センサ55hは、例えば、任意の圧力を測定できる圧力センサであってもよい。
【0037】
制御装置100が送液ポンプ54を駆動させると、貯留室55bにインクが供給される。制御装置100が印刷等によりインクヘッド51からインクを吐出させると、貯留室55bに貯留されているインクが消費される。高精度な印刷を安定して実施するためには、インクを貯留室55bに適切な量のインクを貯留しておくことが望ましい。制御装置100は、貯留室55bの圧力が当該適正量に対応した圧力(以下、「第1圧力」という。第1圧力は、点ではなく幅を持った圧力範囲であってもよい。)となるように、送液ポンプ54の駆動を制御する。例えば、印刷によって貯留室55bのインクが減少すると、貯留室55bの圧力が印刷に適した第1圧力よりも低くなり、センサ55hが第1信号を発信する。制御装置100は、センサ55hからの第1信号を受信して、送液ポンプ54を所定回数駆動させる。これにより、貯留室55bに所定量のインクが供給されて、貯留室55bの圧力を第1圧力以上に高められる。その結果、センサ55hは第1信号を停止し、制御装置100は、貯留室55bに適切な量のインクが貯留されたことを確認することができる。このことによって、高精度な印刷を実施することができる。
【0038】
図1に示すように、キャリッジ20の可動範囲の右端には、ホームポジションP1が設定されている。ホームポジションP1は、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。ホームポジションP1におけるキャリッジ20の下方には、キャッピング装置60が配置されている。
図1に示すように、キャッピング装置60は、キャップ61と、キャップ移動機構62と、吸引ポンプ63とを備えている。
【0039】
キャップ61は、インクヘッド51に装着可能に構成されている。キャップ61は、インクヘッド51と同数設けられている。1つのインクヘッド51には1つのキャップ61が装着される。キャップ61は、上面が開口した容器状の形状を有している。キャップ61は、ゴム等によって形成されている。インクヘッド51への装着時、キャップ61の上縁がインクヘッド51のノズル面に密着される。
【0040】
複数のキャップ61は、1つのキャップ移動機構62によって支持されている。キャップ移動機構62は、複数のキャップ61をインクヘッド51のノズル面に装着させ、または離間させるように構成されている。キャップ移動機構62は、キャップ61を下方から支持して上下方向に移動する。それにより、キャップ61は、インクヘッド51に装着され、また離間される。キャップ移動機構62は、例えば、図示しない駆動モータを備えている。キャップ移動機構62は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。なお、本実施形態では、キャップ移動機構62は、キャップ61を上下方向に移動させてインクヘッド51に装着したが、例えば、斜めにスライドさせて装着するように構成されていてもよい。
【0041】
図1に示すように、吸引ポンプ63は、複数のキャップ61に接続されている。吸引ポンプ63は、キャップ61内に溜まったインク等を吸引する。吸引ポンプ63は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
【0042】
ワイパー71は、平板状に構成されている。ワイパー71は、ここでは、平面部が前後方向を向くように設けられている。ワイパー71は、例えば、ゴムによって形成されている。ワイパー71の上端は、インクヘッド51のノズル面よりもわずかに高い位置に設定されている。そこで、インクヘッド51がワイパー71の移動経路に位置している状態で、ワイパー移動機構72がワイパー71を移動させると、ワイパー71は、インクヘッドのノズル面を払拭する。
【0043】
ワイパー移動機構72は、インクヘッド51に対し、ワイパー71を前後方向に移動させるように構成されている。ワイパー移動機構72は、例えば、図示しない駆動モータとベルトとを備えている。ワイパー移動機構72は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
【0044】
図1に示すように、プリンタ1の右端部には、操作部120が設けられている。操作部120には、機器状態等を表示する表示部と、ユーザによって操作される入力キーと、二次電源122等が設けられている。操作部120は、制御装置100から警告が発せられた場合には、表示装置として、警告画面を表示する。操作部120の表示部は、タッチパネルであって、ユーザからの指示を入力できるように構成されていてもよい。なお、プリンタ1には、二次電源122の他に、図示しない主電源が設けられている。印刷を行うときは、主電源と二次電源122とをオン(ON)にしてプリンタ1に十分な電力を供給する。しかしながら、自動メンテナンスなどの省電力で実行できる動作については、主電源をオン(ON)にし、二次電源122をオフ(OFF)にして、プリンタ1に供給する電力を少量に抑制した状態で実行することができる。
【0045】
操作部120は、制御装置100と接続されている。
図6は、本実施形態に係るプリンタ1のブロック図である。制御装置100は、キャリッジモータ34と、フィードモータ43と、インクヘッド51と、容器交換記録装置52aと、送液ポンプ54のモータ54eと、センサ55hと、キャップ移動機構62と、吸引ポンプ63と、ワイパー移動機構72と、操作部120とにそれぞれ電気的に接続されており、これらの各部との間で各種の信号を送受信することができる。また、制御装置100は、これらの各部を制御可能に構成されている。
【0046】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。例えば、印刷対象に対応する印刷データは、この記憶装置に記憶することができる。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ1の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ1の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ1と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0047】
図6に示すように、制御装置100は、印刷制御部101と、メンテナンス制御部102と、インク消費部103と、第1負圧確認部104と、第2負圧確認部105と、着脱確認部106と、負圧解消部107と、第1通知部108と、第2通知部109と、第1許可部110と、第2許可部111と、記憶部112とを備えている。これらの各部のうち、インク消費部103と、第1負圧確認部104と、第1許可部110とは、基本的に備えられることが好ましい。その他の各部は、必要に応じて備えることができる。また、制御装置100は、上記以外のその他の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。これらの各部は、回路や集積回路、マイクロプロセッサ等のハードウェアにより構成されていてもよいし、CPUがプログラムを実行することで実現されるように構成されていてもよい。制御装置100の各部の具体的な制御について、以下に説明する。
【0048】
印刷制御部101は、プリンタ1の印刷動作を制御する。印刷制御部101は、印刷において、キャリッジモータ34、フィードモータ43、インクヘッド51を駆動させ、印刷を実行する。印刷制御部101は、フィードモータ43を駆動させ、印刷データに基づいて、記録媒体5を前後方向の所定の位置に移動させる。印刷制御部101は、キャリッジモータ34を駆動させ、印刷データに基づいて、キャリッジ20を左右方向に移動させる。印刷制御部101は、インクヘッド51を駆動させ、印刷データに基づいて、左右方向の所定の位置においてインクヘッド51からインクを吐出させるように設定されている。印刷制御部101は、さらに、記録媒体5を前後方向に移動させることによって記録媒体5上の印刷位置を移動させる。これらの動作を、印刷データに基づいて繰り返すことにより、記録媒体5上に画像が印刷される。
【0049】
メンテナンス制御部102は、印刷以外のインク排出動作を制御する。インク排出動作とは、印刷以外においてインクヘッド51からインクを排出させるように設定されている。インク排出動作はこれに限定されるものではないが、例えば、キャッピング装置60によるインク吸引動作と、インクヘッド51からインクを排出させるいわゆるフラッシング動作である。メンテナンス制御部102は、インク吸引動作に際し、キャップ移動機構62と吸引ポンプ63とを制御してインクヘッド51からインクを吸引する。メンテナンス制御部102は、これによって、インクヘッド51からインクを排出させる。メンテナンス制御部102は、フラッシング動作に際し、キャップ移動機構62とインクヘッド51とを制御して、キャップ61に向かってインクヘッド51からインクを吐出させる。フラッシングは、例えば、ワイピングの後にインクが混色することを防止するためなどに行われる。
【0050】
第1負圧確認部104は、貯留室55bの圧力が高負圧状態であるかどうかを判断する。例えば、印刷制御部101およびメンテナンス制御部102によるインク吐出動作によって、貯留室55bに貯留されるインク量が適正量を下回り、貯留室55bの圧力が第1圧力に到達したり、第1圧力を下回って高負圧状態となる場合がある。このようなとき、第1負圧確認部104は、センサ55hの検知に基づき、貯留室55bの圧力が高負圧状態であるかどうかを判断する。例えば、貯留室55bの圧力が第1圧力を下回ると、センサ55hは、貯留室55bの圧力が第1圧力を下回ったことを検知し、第1信号を発信する。第1負圧確認部104は、センサ55hが発信した第1信号を受信することで、貯留室55bの圧力が高負圧状態であると判断することができる。第1負圧確認部104は、センサ55hから第1信号を受信していないことで、貯留室55bの圧力が高負圧状態でないと判断することができる。第1負圧確認部104による判断内容は、例えば、記憶部112に記憶される。なお、第1負圧確認部104は、後述する第2負圧確認部105とは異なり、送液ポンプ54を駆動させることなく、センサ55hの検知のみに基づき、貯留室55bの圧力が高負圧状態であるかどうかを判断する。ここで、第1負圧確認部104は、カートリッジ装着部52に保持されたインクカートリッジ10に収容されているインク量について検知することはできない。
【0051】
第1負圧確認部104が第1信号を受信した後であっても、制御装置100がインクヘッド51からインク吐出動作を指示すると、貯留室55bに貯留されている適正量以下のインクを消費して、インクヘッド51からインクを吐出させることができる。とりわけインク流路53の長い大型のインクジェットプリンタでは、例えば、貯留室55bに印刷に適した量のインクが貯留されていない場合であっても、貯留室55bおよびインク流路53に残留するインクを使用して、インクヘッド51からインクを吐出させることができる。そこで、インク消費部103は、貯留室55bの圧力が上記の第1圧力よりも低い高負圧状態において、インクヘッド51にインクを吐出させる。インク消費部103は、貯留室55bの圧力が所定の第1圧力よりも低い第2圧力となるまでであれば、インクヘッドにインクを吐出させることができる。第2圧力については後述する。
【0052】
貯留室55bの圧力が、第1圧力から第2圧力となるために要するインク排出量(以下、「残余インク量」という。)は予め算出することができる。したがって、例えば、インク消費部103は、この残余インク量の範囲内で、インクヘッドにインクを吐出させることができる。具体的には、制御装置100が、貯留室55bの圧力が第1圧力未満であることを示す第1信号を受信したときであっても、インク吐出動作を行うタイミングとなったときに、インク消費部103は、インクヘッド51にインクを吐出させることができる。このインク吐出動作は、例えば、印刷以外のインク排出動作であることが好ましく、例えば、インク吸引動作やフラッシング動作等の自動メンテナンス動作であり得る。ただし、インク吐出動作が、貯留室55bの圧力が第2圧力未満となるインク量を吐出するものであるときには、インク消費部103は、インクヘッド51にインクを吐出させないように構成されていてもよい。インク消費部103は、例えば、第1信号を受信したのち、第2圧力とならない範囲で、メンテナンス制御部102に対して、プリンタ1が印刷以外のインク排出動作を実行可能であることを示す信号を送るように構成されていてもよい。
【0053】
なお、第1圧力よりも低く第2圧力以上である状態を、高負圧状態という。一例において、第1圧力が約-0.1MPaであるのに対し、第2圧力は約-90MPaであり得る。第2圧力の上限は、印刷を適正に行うための第1圧力の10倍以上、好ましくは100倍以上、より好ましくは500倍以上、例えば1000倍以上とすることができる。第2圧力の下限は、例えば、送液ポンプ54が停止しているときのインク流路53の気密性や、インクヘッド51およびダンパ55等の圧力耐性等を考慮して設定することができる。一例では、第2圧力は、-100MPa以上(第1圧力の1000倍)とすることができる。なお、必ずしも必要ではないが、センサ55hは、貯留室55bの圧力が第2圧力を下回ったことを検知できる位置に、他の検出部55h1と55h2とを備えていてもよい。このとき、センサ55hは、貯留室55bの圧力が第2圧力を下回ったことを検知したときに、第2信号を発信することができる。第1負圧確認部104は、センサ55hから第1信号を受信した後でも、第2信号を受信するまで、インクヘッド51にインクを吐出するように指示を送ることができる。例えば、インク消費部103は、センサ55hから第1信号を受信した後、第2信号を受信するまでの間、インクヘッド51にインクを吐出させることができる。なお、上記の「約」は±10%程度の幅を含むことを意味する。
【0054】
ところで、貯留室55bの圧力が、第1圧力から第2圧力となるのに要するインク排出量(すなわち、残余インク量)は予め規定することができる。そして「残余インク量」に対応するインクを貯留室55bに送液するために送液ポンプ54を駆動させる回数も、予め規定することができる。内部流路54aの容積にもよるものの、例えば、残余インク量をA、送液ポンプ54を1回駆動させることで送液できるインク量(単位送液量)をBとしたとき、送液ポンプ54が残余インク量分だけインクを送液するには、送液ポンプ54を、次式:駆動閾値(回)=[A/B];で表される駆動閾値だけ駆動させればよい。ここで、式中の“[ ]”は便宜的に天井関数を意味する。また、[x]は、x以上の最小整数を表す。一例では、駆動閾値は2~5回(2/16~5/16回転)程度であり、例えば3回である。したがって、貯留室55bの圧力が高負圧状態となっている場合は、第1負圧確認部104が、送液ポンプ54を3回(駆動閾値)だけ駆動させることで、貯留室55bの圧力が、例えば高負圧状態から第1圧力以上へと回復される。これに伴い、センサ55hは第1信号を停止する。これを負圧解消動作という。この負圧解消動作により高負圧状態が解消される場合は、ユーザによりインクカートリッジ10が空のものから新しいものに交換されていることを意味する。
【0055】
第2負圧確認部105は、貯留室55bが高負圧状態であると第1負圧確認部104が判断したとき、送液ポンプ54の駆動と、センサ55hの検知とに基づき、貯留室55bの圧力が高負圧状態であるかどうかを判断する。具体的には、第2負圧確認部105は、送液ポンプ54を駆動することで、上記の負圧解消動作を行う。このとき、第2負圧確認部105が送液ポンプ54を3回駆動させてもインクが送液されない場合は、高負圧状態は解消されず、センサ55hは第1信号を発信したままとなる。このことは、インクカートリッジ10が依然として空のものであることを意味する。第2負圧確認部105は、負圧解消動作を行ってもなお第1信号を受信するときに、依然として貯留室55bが高負圧状態であると判断する。また、第2負圧確認部105は、負圧解消動作を行うことで第1信号を受信しなくなったときに、高負圧状態ではないと判断する。第2負圧確認部105による判断内容は、例えば、記憶部112に記憶される。
【0056】
第1通知部108は、第2負圧確認部105において高負圧状態であると判断されたときに、ユーザにインクカートリッジ10の交換要求を通知するように構成されている。例えば、第1通知部108は、操作部120の表示部に、インクカートリッジ10の交換を要求するメッセージを表示することができる。これにより、ユーザに、インクカートリッジ10の交換を促すことができる。
【0057】
着脱確認部106は、第2負圧確認部105において貯留室55bが高負圧状態であると判断されたときに、当該判断の後に、カートリッジ装着部52に備えられた容器交換記録装置52aが、インクカートリッジ10の脱着を記録したかどうかを確認する。インクカートリッジ10の脱着を記録したかどうかを確認する。着脱確認部106は、インクカートリッジ10の脱着が記録されている場合は、例えば後述の負圧解消部107に、インクカートリッジ10の脱着が記録されていることを示す信号を発信するように構成されていてもよい。インクカートリッジ10の脱着が記録されていない場合は、着脱確認部106は、例えば後述の第2通知部109に対し、インクカートリッジ10の脱着が記録されていないことを示す信号を発信するように構成されていてもよい。また、着脱確認部106による確認内容は、例えば、記憶部112に記憶される。
【0058】
第2通知部109は、着脱確認部106においてインクカートリッジ10の脱着が記録されていないと確認されたときに、ユーザにインクカートリッジ10の交換要求を通知するように構成されている。例えば、第2通知部109は、操作部120の表示部に、インクカートリッジ10の交換を要求するメッセージを表示することができる。これにより、ユーザに、インクカートリッジ10の交換を促すことができる。
【0059】
負圧解消部107は、着脱確認部106においてインクカートリッジ10の脱着が記録されていたとき、送液ポンプ54を駆動して高負圧状態を解消する。具体的には、負圧解消部107は、送液ポンプ54を駆動することで、上記の負圧解消動作を行う。負圧解消部107が負圧解消動作を行うことで、貯留室55bに残余インク量分のインクが送液されて、貯留室55bの高負圧状態が確実に解消される。これにより、負圧解消処理が完了する。を示す信号を発信することができる。負圧解消部107による負圧解消処理の終了に伴い、記憶部112に記憶された、第1負圧確認部104による判断内容と、第2負圧確認部105による判断内容と、着脱確認部106による確認内容とは、キャンセルされる。
【0060】
第1許可部110は、第1負圧確認部104において高負圧状態であると判断されなかったとき、プリンタ1がインク吐出動作を行なってもよいと判断する。これにより、プリンタは、印刷動作や自動メンテナンス動作を含む任意の動作を、適切に実施することができる。
【0061】
第2許可部111は、負圧解消部107が高負圧状態を解消したときに、当該プリンタ1がインク吐出動作を行なってもよいと判断する。負圧解消部107は貯留室55bの高負圧状態を確実に解消することができる。したがって、第2許可部111は、プリンタ1がインク吐出動作を行なってもよいと判断する。これにより、プリンタ1は、印刷動作や自動メンテナンス動作を含む任意の動作を、適切に実施することができる。
【0062】
以下では、プリンタ1において、印刷動作や自動メンテナンス動作によりインクカートリッジ10内のインクが消費され、さらに、インク消費部103によって貯留室55bが高負圧状態となったときの、プリンタ1の動作について説明する。
図7は、一実施形態におけるプリンタ1の第1処理フローである。
【0063】
S10では、プリンタ1が、例えば自動メンテナンスなどのインク吐出動作を実施するタイミングとなったことを示す。ここに開示されるプリンタ1は、インク消費部103を備えることから、貯留室55b内の圧力が所定の負圧よりも低い高負圧状態の範囲で、インクヘッド51にインクを吐出させるインク消費処理が行われることがある。したがって、プリンタ1は、S20において、第1負圧確認部104により、貯留室55b内が高負圧状態であるかどうかを検知する。貯留室55bが高負圧状態であるときに、センサ55hは第1信号を発信する。これにより、第1負圧確認部104は、貯留室55bが高負圧状態であると検知する。このような場合、プリンタ1は、続くS30~S66で示す高負圧状態解消のためのシーケンスを実施するように構成されている。
【0064】
S30では、第2負圧確認部105が、送液ポンプ54を駆動させたときに、貯留室55bが高負圧状態であることをセンサ55hが検知するかどうかを判断する。センサ55hが、貯留室55bが高負圧状態であることを検知した場合(Y)、プリンタ1は適切な負圧解消処理をする必要があることから、S40に進む。一方で、センサ55hが高負圧状態であることを検知しない場合(N)は、プリンタ1は負圧解消処理をする必要がないことから、第1許可部110は、プリンタ1がインク吐出動作を行なってもよいと判断する。これにより、高負圧状態解消のためのシーケンスは終了する。シーケンスが終了すると、プリンタ1は、印刷動作や自動メンテナンス動作を含む任意の動作を、適切に開始することができる。
【0065】
S40では、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録したかどうかを、着脱確認部106が確認する。着脱確認部106により、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録したことを確認した場合(Y)は、次工程であるS50の負圧解消処理工程に進むことができる。しかしながら、着脱確認部106により、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録したことを確認できなかった場合(N)は、そのままでは負圧解消処理工程に進めないことから、S60に進む。
【0066】
S50は、負圧解消処理工程である。ここでは、負圧解消部107が送液ポンプ54を所定の駆動閾値だけ駆動する。これにより、貯留室55bに適切な量のインクが供給されて、貯留室55bの高負圧状態を解消することができる。負圧解消処理工程が完了すると、高負圧状態解消のためのシーケンスは終了する。シーケンスが終了すると、第2許可部111は、プリンタ1がインク吐出動作を行なってもよいと判断する。これにより、プリンタ1は、印刷動作や自動メンテナンス動作を含む任意の動作を、適切に実施することができる。
【0067】
S60では、第2通知部109が、ユーザにインクカートリッジ10の交換要求を通知する。S50でインクカートリッジ10の脱着の記録が確認できなかったために、負圧解消処理工程に進めなかった。そこで、ユーザに、インクカートリッジ10の交換を促すことで、高負圧状態解消のためのシーケンスの進行を促進させることができる。インク吐出動作のうちでも、印刷動作は、ユーザの意思によって実施するものである。第2通知部109が、ユーザにインクカートリッジ10の交換要求を促すことで、ユーザの希望する印刷動作を適切かつより迅速に実行することができる。
【0068】
S62では、ユーザがインクカートリッジ10の交換を実行したかどうかを確認する。インクカートリッジ10の交換確認も、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録したかどうかを確認することで実施する。その結果、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録していた場合(Y)は、S64に進み、例えば記憶部112にインクカートリッジ10の交換を記憶する。また、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録していなかった場合(N)は、再びS30に戻り、第2負圧確認部105によって、貯留室55bが高負圧状態であるかどうかを判断する。
【0069】
S30~S66の高負圧状態解消のためのシーケンスは、シーケンスが終了するまで繰り返し続けられる。換言すれば、必要な場合に、ユーザがインクカートリッジ10の交換を行い、負圧解消処理を行うまで続けられる。ユーザがインクカートリッジ10の交換を行い、S40において、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録したことを確認した場合(Y)は、S50にて負圧解消処理を実施することができる。これにより、高負圧状態解消のためのシーケンスは終了し、プリンタ1は、印刷動作や自動メンテナンス動作を含む任意の動作を、適切に開始することができる。
【0070】
上記構成において、送液ポンプは、1駆動当たりの単位送液量が予め設定されている。また制御装置100は、第1負圧確認部104が高負圧状態であると判断したとき、送液ポンプ54の駆動と、センサ55hの検知とに基づき、貯留室55bが高負圧状態であるかどうかを判断する第2負圧確認部105を備えている。これにより、第2負圧確認部105は、第1負圧確認部104による高負圧状態の確認後に、インクカートリッジ10が交換されておらず依然として空のままであるか否かを判断できる。このことにより、第1負圧確認部104による高負圧状態の確認後に、インクカートリッジ10が交換されたときに、プリンタ1は不要な負圧解消処理の実行を適切に回避することができる。
【0071】
なお、S30において、第2負圧確認部105が、高負圧状態であることを検知した場合(Y)、インクカートリッジ10がエンプティ状態であることを意味する。したがって、通常は、続くS40においてインクカートリッジ10の脱着記録を確認することができない。このことから、S30の後に、速やかに次工程に進む場合は、
図7中に点線で示したように、S40を跳ばしてS60に進んでもよい。これにより、高負圧状態解消のためのシーケンスを簡略化することができる。なお、速やかに次工程に進まない場合(S40に進むべき場合)とは、例えば、S20とS30との間でプリンタの電源(例えば2次電源)を切断した(OFFにした)のち、入力した(ONにした)場合などである。
【0072】
図8は、他の実施形態におけるプリンタ1の第2処理フローである。S20までは
図7の第1処理フローと同じである。ただし、この第2処理フローでは、インク吐出動作が自動メンテナンスである。この第2処理フローでは、自動メンテナンスを行うタイミングで貯留室55bが高負圧状態となっている。例えば、自動メンテナンスにおいて、インク吸引動作に引き続きフラッシング動作を実行しようとしたとき、インク吸引動作後に貯留室55bが高負圧状態となった場合などである。このような状態では、引き続き十分なフラッシング動作を行えない可能性がある。したがって、プリンタ1は、S30にて第2負圧確認部105が高負圧状態であることを検知した場合(Y)に、S60に進み、第2通知部109によってユーザにインクカートリッジ10の交換要求を通知するようにしてもよい。このとき、ユーザにインクカートリッジ10の交換を行うまでプリンタ1は自動メンテナンスを行うことができない。したがって、S60にてインクカートリッジ10の交換要求を通知したら、S70bに進んで、高負圧状態解消のためのシーケンスを中断(終了)させてもよい。また、S30にて第2負圧確認部105が高負圧状態であることを検知しなかった場合(N)は、第2負圧確認部105の動作により高負圧状態が解消されて、残余インクが使用できる状態であることを意味する。この場合は、負圧解消処理を行う必要がないため、S70aに進んで、高負圧状態解消のためのシーケンスを終了してもよい。S70aにてシーケンスを終了したときは、S80に進み、プリンタ1は目的の自動メンテナンスを適正に実施することができる。
【0073】
以上の第2処理フローによると、自動メンテナンス等のユーザの把握し得ないタイミングでインク容器が空になった場合に、プリンタ1が不適切な条件でインク吐出動作を実行するのを防止することができる。これにより、ユーザに負担を与えることなく、メンテナンス不良や印刷不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【0074】
図9は、他の実施形態におけるプリンタ1の第3処理フローである。S20までは
図7の第1処理フローと同じである。ただし、この第3処理フローでは、インク吐出動作が印刷動作である。また、この第3処理フローでは、S30の前にプリンタの二次電源122を切断(OFF)した後、入力(ON)する操作を実行している。例えば、第1のユーザが、印刷終了後にプリンタ1の二次電源122を切断(OFF)した後、第2のユーザが、印刷を実施するためにプリンタ1の二次電源122を入力(ON)した場合などである。この場合、第2のユーザは、第1のユーザがインクカートリッジ10を交換したかどうか、また、プリンタ1に装着されているインクカートリッジ10にインクが十分収容されているかどうか、を確認できない場合がある。したがって、プリンタ1は、S30にて第2負圧確認部105が高負圧状態であることを検知した場合(Y)に、S40に進み、着脱確認部106により、インクカートリッジ10の脱着記録がプリンタ1の記憶部112に記憶されているかどうかを確認する。そして、インクカートリッジ10の脱着記録があることを確認した場合(Y)に、次工程であるS50の負圧解消処理工程に進む。インクカートリッジ10の脱着記録を確認できなかった場合(N)に、S60に進む。S50にて負圧解消処理を行うと、高負圧状態は解消されるため、S70aに進んで、高負圧状態解消のためのシーケンスを終了してもよい。S70aにてシーケンスを終了したときは、S80に進み、プリンタ1は目的の印刷動作を適正に実施することができる。
【0075】
なお、以上のプリンタ1は、インクカートリッジ10の脱着をプリンタ1の記憶部112に記憶するようにしている。したがって、ここに開示される技術の利点をよリ明瞭に発揮させるために、インクカートリッジ10は、例えば、カートリッジ装着部52に保持されたことがあるかどうかを記憶する記憶部を備えていないものであってよい。これにより、二次電源122を切断した場合であっても、インクカートリッジ10の脱着を確認することができ、適切に高負圧状態を解消することができる。また、プリンタ1に使用するインクカートリッジ10のコストを低減させることができる。
【0076】
また、ここに開示される技術は、上記構造のプリンタ1を、上記のプリンタ1として機能させるように構成されているコンピュータプログラムを提供する。このコンピュータプログラムは、例えば、貯留室55bの圧力が所定の負圧よりも低い高負圧状態の範囲で、インクヘッド51にインクを吐出させるインク消費工程を行ったときに、センサ55hの検知に基づき、貯留室55bの圧力が高負圧状態であるかどうかを判断する第1負圧確認工程(S10)と、送液ポンプ54の駆動と、センサ55hの検知とに基づき、貯留室55bが高負圧状態であるかどうかを判断する第2負圧確認工程(S30)と、第2負圧確認部105において高負圧状態であると判断されたとき、当該判断の後に、容器交換記録装置52aがインクカートリッジ10の脱着を記録したかどうかを確認する着脱確認工程(S40、S62)と、着脱確認部106においてインクカートリッジ10の脱着が記録されていたとき、送液ポンプ54を駆動して高負圧状態を解消する負圧解消工程(S50)と、を少なくともコンピュータに実現させるものである。
【0077】
このコンピュータプログラムは、例えば、記録媒体に記録されていてもよい。換言すると、ここに開示される技術は、上記プログラムが記録された、コンピュータが読み取り可能な記録媒体を提供することができる。記録媒体としては、例えば、半導体記録媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリーカード)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク)などが例示される。また、コンピュータプログラムは、記録媒体あるいはインターネット等のネットワークを介して、プリンタ1の制御装置100に記憶させることができる。
【0078】
また、インク供給システム50の構成は、上記したものに限定されない。インク供給システム50には、適宜他の部材、例えば、バルブや循環流路などが追加されてもよく、一部の部材が削除されてもよい。また、複数のインク供給システム50の構成は、ノズル列ごとに独立して、一部または全部が異なっていてもよい。
【0079】
本実施形態では、送液ポンプはチューブポンプであったが、チューブポンプには限定されない。送液ポンプは、例えば、ダイヤフラムポンプやシリンジポンプ等であってもよい。送液ポンプの種類は、特に限定されない。
【0080】
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、例えば、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 プリンタ
10 インクカートリッジ(インク容器)
50 インク供給システム
51 インクヘッド
52 カートリッジ装着部
53 インク流路
54 送液ポンプ
55 ダンパ
55h センサ
100 制御装置
103 インク消費部
104 第1負圧確認部
105 第2負圧確認部
106 着脱確認部
107 負圧解消部
110 第1許可部
111 第2許可部