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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】凍結乾燥第IX因子製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20220418BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220418BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
A61K38/36
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/26
A61P7/04
C07K14/745 ZNA
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2016558751
(86)(22)【出願日】2015-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-04-13
(86)【国際出願番号】 US2015022141
(87)【国際公開番号】W WO2015148444
(87)【国際公開日】2015-10-01
【審査請求日】2018-03-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】61/969,801
(32)【優先日】2014-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505007364
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トーミー, ブライアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーカースト-ラン, シェリー
(72)【発明者】
【氏名】レヴァイル, ブランドン ダブリュー.
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】冨永 みどり
【審判官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-513390(JP,A)
【文献】特表平09-511495(JP,A)
【文献】特表2013-534426(JP,A)
【文献】特開2006-257099(JP,A)
【文献】特表2009-513705(JP,A)
【文献】特開2014-051503(JP,A)
【文献】国際公開第2013/185113(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0116054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥前製剤であって、
(a)約220IU/バイアル~約1,000IU/バイアルの間の濃度の第IX因子(FIX)ポリペプチドであって、前記FIXポリペプチドが、C末端リシンを含まない配列番号2のFIXFc-scポリペプチド、およびC末端リシンを含まない配列番号4のFc scポリペプチドを含み、前記FIXFc-scポリペプチドおよび前記Fc scポリペプチドは、Fcのヒンジ領域内の2つのジスルフィド結合を介して一緒に結合されている、FIXポリペプチド、
(b)約3mg/mLと約15mg/mLとの間の濃度のL-ヒスチジン、
(c)約10mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度のスクロース、
(d)約20mg/mLと約100mg/mLとの間の濃度のマンニトール、及び
(e)約0.01mg/mLと約5mg/mLとの間の濃度のポリソルベート20、
を含み、
前記製剤が、約3mL未満の充填容量を有し、(a)~(e)のそれぞれが、標準凍結乾燥前製剤と比較して、前記製剤凍結乾燥することで調製される凍結乾燥体の再構成時間の低減を可能にするのに十分なバイアル毎の量(mg/バイアル)であり、ここで、再構成時間の比較の目的のために、前記製剤を凍結乾燥することで調製される凍結乾燥体および前記標準凍結乾燥前製剤を凍結乾燥することで調製される凍結乾燥体の各々がそれぞれ再構成される時の容量は同じであり、
ここで、前記標準凍結乾燥前製剤が、前記凍結乾燥前製剤と同じバイアル毎の量の(a)~(e)を含んで、5mLの充填容量を有する、前記凍結乾燥前製剤。
【請求項2】
前記製剤を凍結乾燥することで調製される凍結乾燥体および前記標準凍結乾燥前製剤を凍結乾燥することで調製される凍結乾燥体の各々がそれぞれ再構成される時の前記容量が、約5mLである、請求項1に記載の凍結乾燥前製剤。
【請求項3】
前記FIXポリペプチドが、220IU/バイアル~1,000IU/バイアルの間の濃度である、
前記L-ヒスチジンが、3mg/mLと15mg/mLとの間の濃度である、
前記スクロースが、10mg/mLと50mg/mLとの間の濃度である、
前記マンニトールが、20mg/mLと100mg/mLとの間の濃度である、または
前記ポリソルベート20が、0.01mg/mLと5mg/mLとの間の濃度である、請求項1または請求項2に記載の凍結乾燥前製剤。
【請求項4】
前記L-ヒスチジンが、約3.88mg/mLと約9.7mg/mLとの間の濃度である、前記スクロースが、約17.85mg/mLと約29.95mg/mLとの間の濃度である、または前記マンニトールが、約35.7mg/mLと59.5mg/mLとの間の濃度である、請求項1~3のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
【請求項5】
前記L-ヒスチジンが、約7.76mg/mLの濃度である、前記スクロースが、約23.8mg/mLの濃度である、前記マンニトールが、約47.6mg/mLの濃度である、または前記ポリソルベート20が、約0.2mg/mLの濃度である、請求項1~のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
【請求項6】
前記製剤が、約2.65mLのバイアル毎の充填容量を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤から凍結乾燥される、凍結乾燥
【請求項8】
請求項に記載の凍結乾燥を含むバイアル。
【請求項9】
請求項に記載の凍結乾燥を含む第1の容器、及び前記第1の容器の前記凍結乾燥製剤と組み合わされた場合に、再構成された製剤を作製するのに十分な量の再構成緩衝液を含む第2の容器を含むキット。
【請求項10】
構成して、血友病B患者の出血エピソードの頻発若しくは重症化を防止するか、または低減させるための医薬組成物を調製するための、請求項7に記載の凍結乾燥体を含む組成物
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は一般に、止血障害の治療分野に関する。
【0002】
血友病B(クリスマス病としても知られる)は、世界中で最も一般的な遺伝性出血障害の1つである。それは、インビボ及びインビトロ血液凝固活性の減少をもたらし、影響を受ける個人の生涯わたる、広範な医療監視を必要とする。介入がない場合は、影響を受ける個人は、関節における突発性出血を患うことになり、これが重度の疼痛及び消耗性の不動状態をもたらし、筋肉中への出血は、それらの組織内での血液の蓄積をもたらし、咽喉及び頚部における突発性出血は、直ちに処置されない場合、窒息を引き起こす可能性があり、腎出血、及び外科手術、軽度の不慮の外傷、または抜歯後の重度の出血もよく見られる。
【0003】
通常のインビボの血液凝固は最低でも、セリンプロテアーゼ第II因子(プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子、及び第XI因子(水溶性血漿タンパク質)を必要とし、補因子として、膜貫通タンパク質組織因子及び血漿タンパク質第V因子及び第VIII因子、フィブリノゲン、トランスグルタミナーゼ第XIII因子、リン脂質(活性化血小板を含む)、及びカルシウムを含む。カリクレイン、高分子量キニノゲン、及びXII因子を含む追加のタンパク質は、一部のインビトロ凝固テストに必要とされ、病的状態下のインビボで役割を果たすことができる。
【0004】
血友病では、特定の血液凝固因子である血漿の不足により、血液凝固が妨げられる。血友病Bは、第IX因子タンパク質の合成の減少、または活性が低減した不完全分子のいずれかより生じる可能性がある、第IX因子の欠乏により引き起こされる。血友病の治療は、不足している凝固因子を、第IX因子が非常に豊富な外来の因子濃縮物と交換することにより行われる。しかし、血液からこのような濃縮物を生成することは、以下に記載されるように、技術的困難を伴う。
【0005】
血漿からの第IX因子(血漿由来の第IX因子;pdFIX)の精製により、活性第IX因子がほぼ排他的に生じる。しかし、第IX因子は血漿内に低濃度でしか存在しないので、第IX因子を血漿からこのように精製することは、非常に困難である(5μg/mL。Andersson, Thrombosis Research 7: 451 459 (1975))。さらに、血液からの精製は、HIV及びHCVなどの感染因子の除去または不活化を必要とする。加えて、pdFIXは半減期が短く、それ故、頻繁な投薬を必要とする。組み換え第IX因子(rFIX)はまた、利用可能であるが、半減期が同じく短いという欠点があり、pdFIXと同様に頻繁な投薬を必要とする(例えば、予防のために、1週間に2~3回)。rFIXはまた、増分回収率(K値)がpdFIXと比較して低いので、pdFIXよりも高い用量のrFIXの使用が必要となる。
【0006】
死亡率の低減、関節損傷の予防、及び生活の質の改善は、血漿由来及び組み換え第IX因子の開発による重要な成果である。出血からの保護が延長されると、血友病Bの対象の治療における別の重要な進歩が表されることになる。しかし、現在まで、保護の延長を可能にする製品が開発されていない。それ故、現在の治療法よりも無難で有効である、第IX因子欠乏症に起因する血友病の治療方法の改善が、依然として必要である。
【0007】
特に、薬物製品の強度がより高く、貯蔵寿命がより長く、凍結乾燥プロセス時間が低減し、再構成時間がより短い、凍結乾燥FIX製剤の改善が依然として必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Andersson, Thrombosis Research 7: 451 459 (1975)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)FIX凝固活性を有する第IX因子(FIX)ポリペプチド、(b)緩衝薬、(c)安定剤、(d)充填剤、及び(e)界面活性剤、を含む凍結乾燥前製剤に関し、製剤は、約5mL未満、約4mL未満、または約3mL未満の充填容積を有し、(a)~(e)のそれぞれは、標準凍結乾燥前製剤と比較して、(1)凍結乾燥時のFIXポリペプチドの安定性の改善、(2)凍結乾燥時の再構成時間の低減、(3)製剤を含む、栓への飛散の低減、(4)凍結乾燥サイクル時間の低減、(5)室温での凍結乾燥前製剤から調製される凍結乾燥体の貯蔵寿命の増加、または(6)それらの任意の組み合わせ、を可能にするのに十分なバイアル毎の量(mg/バイアル)であり、標準製剤は、凍結乾燥前製剤と同じバイアル毎の量の(a)~(e)を含んで、少なくとも5mLの充填容量を有する。特定の実施形態では、製剤の充填容量は、約2.65mLである。
【0010】
一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、少なくとも100IU/バイアルのFIXポリペプチドを含む。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、約200IU/バイアル~約10,000IU/バイアルのFIXポリペプチドを含む。
【0011】
一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、野生型FIXを含む。一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、野生型FIXと結合される異種部分をさらに含む。一実施形態では、異種部分は、FIXの半減期を延長する部分である。別の実施形態では、異種部分は、ポリペプチドまたは非ポリペプチド部分を含む。一実施形態では、FIXの半減期を延長する部分は、FcRn結合パートナーまたはFc領域を含む。一実施形態では、FIXポリペプチドは、配列番号2と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または100%同一である。
【0012】
一部の実施形態では、充填容量は、約4mL、約3.5mL、約3.0mL、約2.9mL、約2.8mL、約2.7mL、約2.65mL、約2.6mL、約2.5mL、約2.4mL、約2.3mL、約2.2mL、約2.1mL、または約2.0mLである。
【0013】
一部の実施形態では、低減した再構成時間は、1.5分未満、1分未満、50秒未満、40秒未満、30秒未満、20秒未満、または10秒未満である。
【0014】
一部の実施形態では、緩衝薬は、L-ヒスチジンである。一実施形態では、緩衝薬は、約3mg/mLと約15mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である。別の実施形態では、緩衝薬は、バイアル毎に約8mgと約39mgとの間の濃度である。
【0015】
一部の実施形態では、安定剤は、スクロースである。一実施形態では、安定剤は、10mg/mLと約50mLとの間の濃度(mg/mL)である。別の実施形態では、安定剤は、バイアル毎に約27mgと約132mgとの間の濃度である。
【0016】
一部の実施形態では、充填剤は、マンニトールである。一実施形態では、充填剤は、20mg/mLと約100mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である。別の実施形態では、充填剤は、バイアル毎に約53mgとバイアル毎に約265mgとの間の濃度である。
【0017】
一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20である。一実施形態では、界面活性剤は、0.01mg/mLと約5mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である。別の実施形態では、界面活性剤は、バイアル毎に約0.03mgと約13mgとの間の濃度である。
【0018】
一態様では、本発明は、(a)約80~約2,750IU/mLのrFIXFc、(b)約7.76mg/mLのL-ヒスチジン、(c)約47.6mg/mLのマンニトール、(d)約23.8mg/mLのスクロース、及び(e)約0.2mg/mLのポリソルベート20、を含む凍結乾燥前製剤に関する。
【0019】
本発明はさらに、FIXポリペプチド、緩衝薬、安定剤、充填剤、界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせ、を含む凍結乾燥粉末に関する。
【0020】
一部の実施形態では、凍結乾燥粉末の残留水分濃度は、1%以下である。
【0021】
一実施形態では、凍結乾燥粉末は、(a)バイアル毎に約2mgとバイアル毎に約150mgとの間の量のFIXポリペプチド、(b)バイアル毎に10mgとバイアル毎に約30mgとの間の量の緩衝薬、(c)バイアル毎に70mg(mg vial)とバイアル毎に約200mgとの間の量の充填剤、(d)バイアル毎に30mgとバイアル毎に100mgとの間の量の安定剤、及び(e)バイアル毎に0.05mgとバイアル毎に約5mgとの間の量の界面活性剤、を含む。
【0022】
別の実施形態では、凍結乾燥粉末は、(a)バイアル毎に約2.2mgとバイアル毎に約125mgとの間の量の凍結乾燥FIXポリペプチド、(b)バイアル毎に約12.5mgとバイアル毎に25mgとの間の量の緩衝薬、(c)バイアル毎に約32.5mgとバイアル毎に80mgとの間の量の安定剤、(d)バイアル毎に約75mgとバイアル毎に150mgとの間の量の充填剤、及び(e)約0.1mg/mLと約2mg/mLとの間の量の界面活性剤、を含む。
【0023】
別の実施形態では、凍結乾燥粉末は、(a)約2.2~約125mg/バイアルのFIXポリペプチド、(b)約20.6mg/バイアルのL-ヒスチジン、(c)約126.1mg/バイアルのマンニトール、(d)約63.1mg/バイアルのスクロース、及び、(e)約0.53mg/バイアルのポリソルベート20、を含む。
【0024】
本発明はまた、再構成緩衝液により再構成された、本明細書に記載される凍結乾燥粉末を含む再構成された製剤に関する。
【0025】
一実施形態では、再構成された製剤は、(a)約0.9mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度のFIXポリペプチド、(b)1.5mg/mLと約7.5mg/mLとの間の濃度の緩衝薬、(c)10mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度の充填剤、(d)バイアル毎に5mg/mLと25mg/mLとの間の濃度の安定剤、及び(e)0.005mg/mLと約2.5mg/mLとの間の濃度の界面活性剤、を含む。
【0026】
別の実施形態では、再構成された製剤は、(a)約0.9mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度のFIXポリペプチド、(b)約3.88mg/mLの濃度の緩衝薬、(c)約23.8mg/mLの濃度の充填剤、(d)約11.9mg/mLの濃度の安定剤、(e)約0.1mg/mLの濃度の界面活性剤、及び(f)再構成緩衝液、を含む。
【0027】
別の実施形態では、再構成された製剤は、(a)約80IU/mLと約2,750IU/mLとの間の濃度のFIXポリペプチド、(b)約25mMの濃度の緩衝薬、(c)約131mMの濃度の充填剤、(d)約35mMの濃度の安定剤、(e)0.01%(w/v)の濃度の界面活性剤、及び(f)再構成緩衝液、を含む。
【0028】
本発明はさらに、本明細書に記載される再構成された製剤を患者に投与することを含む、FIXポリペプチドを必要とする血友病B患者に、FIXポリペプチドを投与する方法、または血友病Bの予防、治療、改善、または管理を必要とする患者において、血友病Bを予防、治療、改善、または管理する方法に関する。
【0029】
本発明はまた、本明細書に記載される凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の作製方法に関する。
【0030】
一態様では、本発明は、(a)FIXポリペプチド及び水性溶媒を含む凍結乾燥前製剤を凍結させることを含む「凍結工程」、(b)凍結された凍結乾燥前製剤から水性溶媒を除去するのに有効な量だけ、凍結された凍結乾燥前製剤の圧力を低減させることを含む「真空工程」、及び(c)崩壊温度を超えて、凍結された凍結乾燥前製剤の温度を増加させて、それにより凍結乾燥粉末を作製することを含む単一の「乾燥工程」、を含むFIXポリペプチドを凍結乾燥させる方法に関する。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、工程(a)前に、無菌濾過され、バイアルに無菌充填される。
【0031】
別の態様では、本発明は、(a)温度を、約-55℃の凍結温度まで約2時間低下させ、約2時間凍結温度を保持することにより、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥前製剤を凍結させることを含む「凍結工程」、(a′)工程(a)の凍結された凍結乾燥前製剤の温度を、約-6℃のアニーリング温度まで約1.5時間上昇させ、約3時間アニーリング温度を保持し、温度を、約-55℃まで約1.5時間低下させることを含む「アニーリング工程」、(b)工程(a′)の凍結された凍結乾燥前製剤を、常圧で2時間約-55℃に保持し、圧力を、約0.33mbarまで約2時間低下させることを含む「真空工程」、及び(c)圧力を約0.33mbarに保持しながら、工程(b)の凍結された凍結乾燥前製剤の温度を、約40℃まで3時間上昇させ、圧力を約0.33mbarに保持しながら、凍結された凍結乾燥前製剤の温度を、約25時間約40℃に保持し、それにより凍結乾燥粉末を作製することを含む単一の「乾燥工程」、を含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の作製方法に関する。
【0032】
さらなる態様では、凍結乾燥粉末は、(1)凍結乾燥時のFIXポリペプチドの安定性の改善、(2)凍結乾燥時の再構成時間の低減、(3)製剤を含む、栓への飛散の低減、(4)凍結乾燥サイクル時間の低減、(5)室温での凍結乾燥前製剤から調製される凍結乾燥体の貯蔵寿命の増加、または(6)それらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の特徴を有する。
【0033】
一態様では、本開示は、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXペプチドを含む凍結乾燥粉末を安定化させる方法を提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末に関して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定される場合に、凍結乾燥粉末が安定化する。
【0034】
別の態様では、本開示は、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の貯蔵寿命を増加させる方法を提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末の貯蔵寿命に関して、SEC及び/またはFIX凝固活性アッセイで測定した場合に、凍結乾燥粉末の貯蔵寿命が増加する。
【0035】
本開示はまた、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の再構成時間を減少させる方法を提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末の再構成時間に関して、凍結乾燥粉末の再構成時間が減少する。
【0036】
本開示は、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を作製する凍結乾燥プロセス時間を低減させる方法をさらに提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用して凍結乾燥粉末を作製する凍結乾燥プロセス時間に関して、凍結乾燥前製剤の凍結乾燥プロセス時間が低減する。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
凍結乾燥前製剤であって、
(a)FIX凝固活性を有する第IX因子(FIX)ポリペプチド、
(b)緩衝薬、
(c)安定剤、
(d)充填剤、及び
(e)界面活性剤、
含み、
前記製剤が、約5mL未満、約4mL未満、または約3mL未満の充填容量を有し、(a)~(e)のそれぞれが、標準凍結乾燥前製剤と比較して、
(1)凍結乾燥時の前記FIXポリペプチドの安定性の改善、
(2)凍結乾燥時の再構成時間の低減、
(3)前記製剤を含む、栓への飛散の低減、
(4)凍結乾燥サイクル時間の低減、
(5)室温での前記凍結乾燥前製剤から調製される凍結乾燥体の貯蔵寿命の増加、または
(6)それらの任意の組み合わせ、
を可能にするのに十分なバイアル毎の量(mg/バイアル)であり、
前記標準製剤が、前記凍結乾燥前製剤と同じバイアル毎の量の(a)~(e)を含んで、5mLの充填容量を有する、前記凍結乾燥前製剤。
(項目2)
前記充填容量が、約4mL、約3.5mL、約3.0mL、約2.9mL、約2.8mL、約2.7mL、約2.65mL、約2.6mL、約2.5mL、約2.4mL、約2.3mL、約2.2mL、約2.1mL、または約2.0mLである、項目1に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目3)
前記充填容量が約2.65mLである、項目1または2に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目4)
前記低減した再構成時間が、未満1.5分、未満1分、未満50秒、未満40秒、未満30秒、未満20秒、または未満10秒である、項目1~3のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目5)
前記低減した再構成時間が、30秒未満である、項目1~4のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目6)
前記低減した凍結乾燥サイクル時間が、約4日以下、約3日以下、約2日以下、または約1日以下である、項目1~5のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目7)
前記緩衝薬が、L-ヒスチジンである、項目1~6のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目8)
前記安定剤が、スクロースである、項目1~7のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目9)
前記充填剤が、マンニトールである、項目1~8のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目10)
前記界面活性剤が、ポリソルベート20である、項目1~9のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目11)
前記製剤が、少なくとも100IU/バイアルの前記FIXポリペプチドを含む、項目1~10のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目12)
前記製剤が、約200IU/バイアル~約10,000IU/バイアルの前記FIXポリペプチドを含む、項目1~11のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目13)
前記FIXポリペプチドが、約220IU/バイアル、約250IU/バイアル、約300IU/バイアル、約400IU/バイアル、約500IU/バイアル、約600IU/バイアル、約700IU/バイアル、約800IU/バイアル、約900IU/バイアル、約1,000IU/バイアル、約1,100IU/バイアル、約1,200IU/バイアル、約1,300IU/バイアル、約1,400IU/バイアル、約1,500IU/バイアル、約2,000IU/バイアル、約2,500IU/バイアル、約3,000IU/バイアル、約4,000IU/バイアル、約5,000IU/バイアル、約5,500IU/バイアル、約6,000IU/バイアル、約6,500IU/バイアル、約7,000IU/バイアル、約7,500IU/バイアル、約8,000IU/バイアル、約8,500IU/バイアル、約9,000IU/バイアル、約9,500IU/バイアル、または約10,000IU/バイアルを含む、項目1~12のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目14)
前記緩衝薬が、約3mg/mLと約15mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である、項目1~13のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目15)
前記緩衝薬が、約3.88mg/mLと約9.7mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である、項目1~14のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目16)
前記緩衝薬が、約7.76mg/mLの濃度(mg/mL)である、項目1~15のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目17)
前記安定剤が、10mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である、項目1~16のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目18)
前記安定剤が、約17.85mg/mLと約29.95mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である、項目1~17のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目19)
前記安定剤が、約23.8mg/mLの濃度(mg/mL)である、項目1~18のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目20)
前記充填剤が、20mg/mLと約100mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である、項目1~19のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目21)
前記充填剤が、35.7mg/mLと59.5mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である、項目1~20のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目22)
前記充填剤が、47.6mg/mLの濃度(mg/mL)である、項目1~21のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目23)
前記界面活性剤が、0.01mg/mLと約5mg/mLとの間の濃度(mg/mL)である、項目1~22のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目24)
前記界面活性剤が、0.2mg/mLの濃度(mg/mL)である、項目23に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目25)
前記FIXポリペプチドが、約80IU/mLと約2,750IU/mLとの間の濃度(IU/mL)を有する、項目1~24のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目26)
凍結乾燥前製剤であって、
(a)約80~約2,750IU/mLのrFIXFc、
(b)約7.76mg/mLのL-ヒスチジン、
(c)約47.6mg/mLのマンニトール、
(d)約23.8mg/mLのスクロース、及び
(e)約0.2mg/mLのポリソルベート20、
含む前記凍結乾燥前製剤。
(項目27)
前記製剤が、約3mL、約2.9mL、約2.8mL、約2.7mL、約2.65mL、約2.6mL、約2.5mL、約2.4mL、約2.3mL、約2.2mL、約2.1mL、または約2.0mLのバイアル毎の充填容量を有する、項目26に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目28)
前記製剤が、約2.65mLのバイアル毎の充填容量を有する、項目27に記載の凍結乾燥前製剤。
(項目29)
項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤から凍結乾燥される、凍結乾燥粉末。
(項目30)
1%未満の残留水分濃度を有する、項目29に記載の凍結乾燥粉末。
(項目31)
緩衝薬、安定剤、充填剤、界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目29または30に記載の凍結乾燥粉末。
(項目32)
前記緩衝薬が、L-ヒスチジンである、項目31に記載の凍結乾燥粉末。
(項目33)
前記安定剤が、スクロースである、項目31に記載の凍結乾燥粉末
(項目34)
前記界面活性剤が、ポリソルベート20である、項目31に記載の凍結乾燥粉末。
(項目35)
前記緩衝薬が、バイアル毎に約8mgと約39mgとの間の濃度である、項目31~34のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
(項目36)
前記緩衝薬が、バイアル毎に約20.6mgの濃度である、項目35に記載の凍結乾燥粉末。
(項目37)
前記安定剤が、バイアル毎に約27mgと約132mgとの間の濃度である、項目31~36のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
(項目38)
前記安定剤が、バイアル毎に約63.1mgの濃度である、項目37に記載の凍結乾燥粉末。
(項目39)
前記充填剤が、バイアル毎に約53mgとバイアル毎に約265mgとの間の濃度である、項目31~38のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
(項目40)
前記充填剤が、バイアル毎に約126.1mgの濃度である、項目39に記載の凍結乾燥粉末。
(項目41)
前記界面活性剤が、バイアル毎に約0.03mgと約13mgとの間の濃度である、項目31~40のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
(項目42)
前記界面活性剤が、バイアル毎に約0.53mgの濃度である、項目41に記載の凍結乾燥粉末。
(項目43)
凍結乾燥粉末であって、
(a)バイアル毎に約2mgとバイアル毎に約150mgとの間の量のFIXポリペプチド、
(b)バイアル毎に10mgとバイアル毎に約30mgとの間の量の緩衝薬、
(c)バイアル毎に70mg(mg vial)とバイアル毎に約200mgとの間の量の充填剤、
(d)バイアル毎に30mgとバイアル毎に100mgとの間の量の安定剤、及び
(e)バイアル毎に0.05mgとバイアル毎に約5mgとの間の量の界面活性剤、
を含む前記凍結乾燥粉末。
(項目44)
(a)バイアル毎に約2.2mgとバイアル毎に約125mgとの間の量の前記凍結乾燥FIXポリペプチド、
(b)バイアル毎に約12.5mgとバイアル毎に25mgとの間の量の前記緩衝薬、
(c)バイアル毎に約32.5mgとバイアル毎に80mgとの間の量の前記安定剤、
(d)バイアル毎に約75mgとバイアル毎に150mgとの間の量の前記充填剤、及び
(e)約0.1mg/mLと約2mg/mLとの間の量の前記界面活性剤、
含む、項目43に記載の凍結乾燥粉末。
(項目45)
(a)約2.2~約125mg/バイアルの前記FIXポリペプチド、
(b)約20.6mg/バイアルのL-ヒスチジン、
(c)約126.1mg/バイアルのマンニトール、
(d)約63.1mg/バイアルのスクロース、及び
(e)約0.53mg/バイアルのポリソルベート-20、
含む、項目44に記載の凍結乾燥粉末。
(項目46)
再構成緩衝液で再構成された、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)を含む再構成された製剤。
(項目47)
血友病Bを治療するために使用される、項目46に記載の再構成された製剤。
(項目48)
非経口投与に適する、項目46または47に記載の再構成製剤。
(項目49)
前記非経口投与が静脈内または皮下投与である、項目48に記載の再構成された製剤。
(項目50)
(a)約0.9mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度の前記FIXポリペプチド、
(b)1.5mg/mLと約7.5mg/mLとの間の濃度の前記緩衝薬、
(c)10mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度の前記充填剤、
(d)バイアル毎に5mg/mLと25mg/mLとの間の濃度の前記安定剤、及び
(e)0.005mg/mLと約2.5mg/mLとの間の濃度の前記界面活性剤、
含む、項目47~49のいずれか1項に記載の再構成された製剤。
(項目51)
(a)約0.9mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度の前記FIXポリペプチド、
(b)約3.88mg/mLの濃度の前記緩衝薬、
(c)約23.8mg/mLの濃度の前記充填剤、
(d)約11.9mg/mLの濃度の前記安定剤、
(e)約0.1mg/mLの濃度の前記界面活性剤、及び
(f)前記再構成緩衝液、
含む、項目50に記載の再構成された製剤。
(項目52)
(a)約80IU/mLと約2,750IU/mLとの間の濃度の前記FIXポリペプチド、
(b)約25mMの濃度の前記緩衝薬、
(c)約131mMの濃度の前記充填剤、
(d)約35mMの濃度の前記安定剤、
(e)0.01%(w/v)の濃度の前記界面活性剤、及び
(f)前記再構成緩衝液、
含む、項目49に記載の再構成された製剤。
(項目53)
項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)、または、項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤を含むバイアル。
(項目54)
前記FIXポリペプチドが、野生型FIXを含む、項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)、項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤、または項目53に記載のバイアル(the reconstituted formulation of 46 to 52, or the vial of 53)。
(項目55)
前記FIXポリペプチドが、野生型FIXに結合された異種部分をさらに含む、項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)、項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤、または項目53に記載のバイアル(the reconstituted formulation of 46 to 52, or the vial of 53)。
(項目56)
前記異種部分が、FIXの半減期を延長する部分である、項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)、項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤、または項目53に記載のバイアル(the reconstituted formulation of 46 to 52, or the vial of 53)。
(項目57)
前記異種部分が、ポリペプチド若しくは非ポリペプチド部分を含む、項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)、項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤、または項目53に記載のバイアル(the reconstituted formulation of 46 to 52, or the vial of 53)。
(項目58)
FIXの半減期を延長する前記部分が、FcRn結合パートナー若しくはFc領域を含む、項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)、項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤、または項目53に記載のバイアル(the
reconstituted formulation of 46 to 52, or the vial of 53)。
(項目59)
前記FIXポリペプチドが、配列番号2と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、若しくは100%同一である、項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤、項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)、項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤、または項目53に記載のバイアル(the reconstituted formulation of 46 to 52, or the vial of 53)。
(項目60)
項目29~45のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末(lyophilate power)を含む第1の容器、及び前記第1の容器の前記凍結乾燥製剤と組み合わされた場合に、作製するのに十分な量の再構成緩衝液を含む第2の容器を含むキット。
(項目61)
血友病Bを治療するために使用される、項目60に記載のキット。
(項目62)
前記再構成緩衝液がNaClを含む、項目60または61に記載のキット。
(項目63)
FIXポリペプチドを必要とする血友病B患者に、FIXポリペプチドを投与する方法であって、項目46~52のいずれか1項に記載の(any one of 46 to 52)再構成された製剤を患者に投与することを含み、前記投与が、患者の出血エピソードの頻発若しくは重症化を防止するか、または低減させる、前記方法。
(項目64)
項目46~52のいずれか1項に記載の再構成された製剤を投与することにより、血友病Bの予防、治療、改善、または管理を必要とする患者において、血友病Bを予防、治療、改善、または管理する方法。
(項目65)
項目1~28のいずれか1項に記載の凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を作製する方法。
(項目66)
(a)前記FIXポリペプチド及び水性溶媒を含む凍結乾燥前製剤を凍結させることを含む「凍結工程」、
(b)前記凍結された凍結乾燥前製剤から前記水性溶媒を除去するのに有効な量だけ、前記凍結された凍結乾燥前製剤の圧力を低減させることを含む「真空工程」、ならびに
(c)前記崩壊温度を超えて、前記凍結された凍結乾燥前製剤の温度を増加させて、それにより凍結乾燥粉末を作製することを含む単一の「乾燥工程」、
を含む、FIXポリペプチドを凍結乾燥させる方法。
(項目67)
前記崩壊温度が約-1.5℃である、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記凍結乾燥前製剤が、前記凍結工程中に、約-65~約-40℃の凍結温度で凍結される、項目66または67に記載の方法。
(項目69)
前記凍結乾燥前製剤が、前記凍結工程中に、約-55℃の凍結温度で凍結される、項目66~68のいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
前記凍結温度が、前記凍結工程中に、約5℃から約-55℃に低下する、項目66~69のいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
前記凍結温度が、前記凍結工程中に、約30分から約5時間まで保持される、項目66~70のいずれか1項に記載の方法。
(項目72)
前記凍結温度が、前記凍結工程中に、約2時間保持される、項目66~71のいずれか1項に記載の方法。
(項目73)
工程(a)の前記凍結された凍結乾燥前製剤が、前記「真空工程」(b)の前に、「アニーリング工程」(a′)にさらにかけられる、項目66~72のいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
工程(a)の前記凍結された凍結乾燥前製剤の温度が、前記アニーリング工程中に、約-15℃~-約2℃のアニーリング温度に上昇する、項目73に記載の方法。
(項目75)
工程(a)の前記凍結された凍結乾燥前製剤の前記温度が、前記アニーリング工程中に、約-6℃のアニーリング温度まで上昇する、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記アニーリング温度が、前記アニーリング工程中に、約30分間~約5時間保持される、項目73~75のいずれか1項に記載の方法。
(項目77)
前記アニーリング温度が、前記アニーリング工程中に、約3時間保持される、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記凍結された凍結乾燥前製剤の前記温度が、前記アニーリング工程中に、前記アニーリング温度から約-65℃から約-40℃の温度まで低下する、項目73~77のいずれか1項に記載の方法。
(項目79)
前記凍結された凍結乾燥前製剤の前記温度が、前記アニーリング工程中に、前記アニーリング温度から-55℃の温度まで低下する、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記「真空工程」が、前記凍結された凍結乾燥前製剤を、約0.05と約1mbarとの間の真空にかけることを含む、項目66~79のいずれか1項に記載の方法。
(項目81)
前記「真空工程」の前記真空が、約0.33mbarである、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記真空が、約2時間、前記「真空工程」において保持される、項目66~81のいずれか1項に記載の方法。
(項目83)
前記「乾燥工程」が、前記凍結された凍結乾燥前製剤の前記温度を、約-55℃から約40℃の乾燥温度に上昇させることを含む、項目66~82のいずれか1項に記載の方法。
(項目84)
前記乾燥工程が、前記乾燥温度を約10時間~約40時間保持することをさらに含む、項目66~83のいずれか1項に記載の方法。
(項目85)
前記乾燥温度が、約25時間保持される、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記乾燥工程が、約0.05mbar~約1mbarの圧力で実施される、項目66~85のいずれか1項に記載の方法。
(項目87)
前記圧力が、前記乾燥工程中に、約0.33mbarで保持される、項目86に記載の方法。
(項目88)
FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を作製する方法であって、
(a)前記温度を、約-55℃の凍結温度まで約2時間低下させ、約2時間凍結温度を保持することにより、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥前製剤を凍結させることを含む「凍結工程」、
(a′)工程(a)の前記凍結された凍結乾燥前の製剤の前記温度を、約-6℃のアニーリング温度まで約1.5時間上昇させ、約3時間前記アニーリング温度を保持し、前記温度を、約-55℃まで約1.5時間低下させることを含む「アニーリング工程」、
(b)工程(a′)の前記凍結された凍結乾燥前製剤を、常圧で2時間約-55℃に保持し、前記圧力を、約0.33mbarまで約2時間低下させることを含む「真空工程」、及び
(c)前記圧力を約0.33mbarに保持しながら、工程(b)の前記凍結された凍結乾燥前製剤の前記温度を、約40℃まで3時間上昇させ、前記圧力を約0.33mbarに保持しながら、前記凍結された凍結乾燥前製剤の前記温度を、約25時間約40℃に保持し、それにより凍結乾燥粉末を作製することを含む単一の「乾燥工程」、
を含む前記方法。
(項目89)
前記凍結乾燥前製剤が、項目1~28のいずれか1項に記載の製剤である、項目66~88のいずれか1項に記載の方法。
(項目90)
前記凍結乾燥粉末が、
(1)凍結乾燥時の前記FIXポリペプチドの安定性の改善、
(2)凍結乾燥時の再構成時間の低減、
(3)前記製剤を含む、栓への飛散の低減、
(4)凍結乾燥サイクル時間の低減、
(5)室温での前記凍結乾燥前製剤から調製される凍結乾燥体の貯蔵寿命の増加、または
(6)それらの任意の組み合わせ、
からなる群から選択される1つ以上の特徴を有する、項目65~89のいずれか1項に記載の方法。
(項目91)
前記凍結乾燥前製剤が、5mL未満の充填容量である、項目65~90のいずれか1項に記載の方法。
(項目92)
前記凍結乾燥前製剤の前記充填容量が、約4mL、約3.5mL、約3.0mL、約2.9mL、約2.8mL、約2.7mL、約2.65mL、約2.6mL、約2.5mL、約2.4mL、約2.3mL、約2.2mL、約2.1mL、または約2.0mLである、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記凍結乾燥前製剤の前記充填容量が、約2.65mLである、項目91または92に記載の方法。
(項目94)
前記低減した再構成時間が、1.5分未満、1分未満、50秒未満、40秒未満、30秒未満、20秒未満、または10秒未満である、項目90~93のいずれか1項に記載の方法。
(項目95)
前記低減した再構成時間が、30秒未満である、項目90~94のいずれか1項に記載の方法。
(項目96)
前記低減した凍結乾燥サイクル時間が、約4日以下、約3日以下、約2日以下、または約1日以下である、項目90~95のいずれか1項に記載の方法。
(項目97)
前記凍結乾燥前製剤が、工程(a)前に、無菌濾過され、バイアルに無菌充填される、項目66~96のいずれか1項に記載の方法。
(項目98)
前記凍結乾燥粉末が、約45時間以下で、前記凍結乾燥前製剤から作製される、項目65~97のいずれか1項に記載の方法。
(項目99)
前記凍結乾燥粉末中の残留水分が0.7%未満である、項目65~98のいずれか1項に記載の方法。
(項目100)
前記凍結乾燥粉末中の前記残留水分が、約0.5%である、項目65~99のいずれか1項に記載の方法。
(項目101)
FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を安定化させる方法であって、項目65~100のいずれか1項に記載の方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含み、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末に関して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定される場合に、凍結乾燥粉末が安定化する、前記方法。
(項目102)
FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の貯蔵寿命を増加させる方法であって、項目65~100のいずれか1項に記載の方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含み、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末の貯蔵寿命に関して、SEC及び/またはFIX凝固活性アッセイで測定した場合に、凍結乾燥粉末の貯蔵寿命が増加する、前記方法。
(項目103)
FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の前記再構成時間を減少させる方法であって、項目65~100のいずれか1項に記載の方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含み、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末の再構成時間に関して、凍結乾燥粉末の再構成時間が減少する、前記方法。
(項目104)
FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を作製する凍結乾燥プロセス時間を低減させる方法であって、項目65~100のいずれか1項に記載の方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含み、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用して凍結乾燥粉末を作製する凍結乾燥プロセスに関して、凍結乾燥前製剤の凍結乾燥プロセス時間が低減する、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】各凍結乾燥サイクルのためのバイアルのローディングパターンを示す。数字1、2、及び3は、熱電対の位置を示す。
図2】凍結乾燥パラメータ-温度、真空、及び時間の関数として、残留水分のDOE分析からの予測プロファイラを示す。
図3】凍結乾燥パラメータ-温度及び真空の関数として、昇華中の製品温度のDOE分析からの予測プロファイラを示す。
図4】凍結乾燥パラメータ-温度及び真空状態の関数として、昇華中のバイアルマスフローのDOE分析からの予測プロファイラを示す。
図5】提案されたrFIXFc-2G凍結乾燥サイクルと類似する実施例2のDOEの実行8からの凍結乾燥データ(40℃の棚温度、250mTorr(0.33mBar)のチャンバ真空、及び25時間の乾燥時間)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、とりわけ、第IX因子(FIX)ポリペプチドを含む、凍結乾燥前製剤、再構成された製剤、及び凍結乾燥粉末組成物を提供する。本開示はまた、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を作製するための凍結乾燥法を提供する。また、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を安定化させるための方法、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の貯蔵寿命を増加させる方法、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の再構成時間を減少させる方法、及びFIXポリペプチドを含む凍結乾燥前製剤の凍結乾燥プロセス時間を低減させる方法が、提供される。加えて、本開示は、FIXポリペプチドを含む再構成された製剤を投与することにより、血友病Bの予防、治療、改善、または管理を必要とする患者において、血友病Bを予防、治療、改善、または管理する方法を提供する。
【0039】
定義
本開示中で、用語「a」または「an」ものは、そのものの1つ以上を示し、例えば、「ポリヌクレオチド」は、1つ以上のポリヌクレオチドを表すことが理解される。そのようなものであるから、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書で同じ意味で使用できる。
【0040】
さらに、「及び/または」は、本明細中で使用される場合、他方の有無にかかわらず、2つの特定の特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示と解釈されるべきである。したがって、本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用される用語「及び/または」は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、B、及び/またはC」などの語句で使用される用語「及び/または」は、次の態様:A、B、及びC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)、のそれぞれを包括することが意図される。
【0041】
態様が、文言「を含む」で本明細書に記載される場合、別途「からなる」及び/または「本質的にからなる」の用語で記載される類似の態様も提供されることが理解される。
【0042】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が関連する当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 第2版, 2002, CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 第3版, 1999, Academic Press;and the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, 改訂, 2000, Oxford University Pressは、本開示で使用される多くの用語の一般辞書を当業者に提供する。
【0043】
単位、接頭語、及び記号は、Syste`me International de Unites(SI)に容認される形式で表される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。別途表記のない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの方向に、左から右へ記載される。本明細書で提供される見出しは、全体として本明細書を参照することにより得ることができる本開示の様々な態様を限定するものではない。従って、直後に定義される用語は、全体として本明細書を参照することにより、より完全に定義される。
【0044】
用語「約(about)」は、本明細書で、ほぼ(approximately)、おおよそ(roughly)、およそ(around)、または領域で(in the regions of)を意味するために使用され、値は、測定システムの限界の程度によって決まることになる。用語「約」は、数値範囲と共に使用される場合、設定された数値の上及び下の境界を延長することにより、その範囲を変更する。一般に、用語「約」は、数値を、例えば、上または下の(より高いまたはより低い)10パーセントまたは20パーセントの変動で、記載された値の上及び下の数値を変更できる。別途記載のない限り、「約」の意味は、製剤または組成物のための特定値に対する許容誤差範囲内であるとみなされるべきである。
【0045】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、同じ意味で使用され、共有結合されるアミノ酸残基からなるポリマー化合物を指す。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、同じ意味で使用され、共有結合されるヌクレオチド残基からなるポリマー化合物を指す。ポリヌクレオチドは、DNA、cDNA、RNA、一本鎖、または二重鎖、ベクター、プラスミド、ファージ、またはウイルスとすることができる。
【0047】
本明細書で使用される用語「投与する」は、例えば、FIXポリペプチドを含む医薬組成物を対象に、処方するか、または与えることを意味する。投与経路の例としては、例えば、中心静脈アクセスによる、静脈内、例えば静脈内注射及び静脈内注入が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる投与経路は、皮下、筋肉内、経口、経鼻、及び肺内投与を含む。FIXポリペプチドを含む医薬組成物は、本明細書に記載されるような、1つ以上の賦形剤を含むことができる。本明細書で提供される、方法、組成物、及び医薬キットの利点は、投薬計画遵守の改善、破綻出血の低減、関節の出血からの保護の増加、関節損傷の防止、疾病率の低減、死亡率の低減、出血からの保護の延長、血栓事象の減少、及び生活の質の改善を含む。投与することは、非経口投与を含む。一部の実施形態では、非経口投与は、静脈内または皮下投与である
【0048】
本明細書で使用される用語「治療」または「治療すること」は、血友病Bを含むが、これらに限定されない、出血性疾患または障害の1つ以上の症状の改善または低減を意味する。一実施形態では、出血性疾患または障害「の治療」または、それ「治療すること」は、出血性疾患または障害の1つ以上の症状を予防することを含む。FIX欠乏症(例えば、低基準値のFIX活性)により引き起こされる出血性疾患または障害では、用語「治療」または「治療すること」は、FIX補充療法を意味する可能性がある。FIXFcポリペプチドを対象に投与することにより、対象は、約1IU/dlの、または1IU/dlを超えるFIX活性の血漿トラフ濃度を達成及び/または維持できる。他の実施形態では、「治療」または「治療すること」は、出血性疾患または障害の1つ以上の症状、例えば、突発性または制御不能の出血エピソード、の頻度が低減することを意味する。しかし、「治療」は、治癒である必要がない。
【0049】
本明細書で使用される「患者」は、制御不能な出血エピソードの少なくとも1つが発生すると知られており、制御不能な出血エピソードと関連する疾患または障害、例えば、出血性疾患または障害、例えば、血友病B、と診断されており、制御不能な出血エピソード、例えば、血友病、またはそれらの任意の組み合わせ、の影響を受けやすい個体を含む。患者はまた、特定の活動、例えば、手術、スポーツ活動、または任意の激しい活動、の前に、1つ以上の制御不能な出血エピソードの恐れがある個体を含むことができる。患者は、1%未満、0.5%未満、2%未満、2.5%未満、3%未満、または4%未満の基準値のFIX活性を有することができる。患者はまた、小児を含む。小児患者は、出生~20歳、好ましくは出生~18歳、出生~16歳、出生~15歳、出生~12歳、出生~11歳、出生~6歳、出生~5歳、出生~2歳、及び2~11歳である。
【0050】
本明細書で使用される「基準値」は、用量を投与する前の対象において、測定された最も低い血漿第IX因子濃度である。第IX因子血漿濃度は、投薬前の2時点、スクリーニング検診時及び投与直前に測定できる。あるいは、(a)前処理したFIX活性が<1%であり、検出可能なFIX抗原を有さず、ナンセンス遺伝子型を有する対象の基準値を0%と定義することができ、(b)前処理した<1%のFIX活性を有し、検出可能なFIX抗原を有する対象の基準値を0.5%に設定することができ、(c)前処理したFIX活性が1~2%の間にある対象の基準値は、Cmin(PK研究を通じて最低の活性)であり、(d)前処理したFIX活性が≧2%である対象の基準値を、2%に設定できる。投与前基準値を超える活性は、前の治療からの残留薬物と考えることができ、基準値まで低下し、rFIXFBP投与に続くPKデータから差し引くことができる。
【0051】
本明細書で使用される「トラフ」は、本発明のキメラポリペプチドまたは別の第IX因子分子の容量を投与した後に、及び、もしあれば次の容量が投与される前に、到達する最も低い血漿第IX因子活性レベルである。トラフは、本明細書では「閾値」と同じ意味で使用される。基準値の第IX因子濃度は、トラフ濃度を計算するために、測定された第IX因子濃度から差し引かれる。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「半減期」は、インビボの特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、患者に投与される半量が、動物の血行及び/または他の組織から消失するのに必要とされる所要時間により表すことができる。
【0053】
用語「長時間作用型」及び「長期持続性」は、本明細書で同じ意味で使用される。一実施形態では、用語「長時間作用性」または「長期持続性」は、rFIXFBPポリペプチドを投与した結果としてのFIX活性が、野生型FIX(例えば、BENEFIX(登録商標)または血漿由来のFIX(「pdFIX」))のFIX活性よりも長いことを示す。「より長い」FIX活性は、当該技術分野で任意の既知の方法、例えば、aPTTアッセイ、発色アッセイ、ROTEM、TGAなどで、測定できる。一実施形態では、「より長い」FIX活性は、T1/2ベータ(活性)により示すことができる。別の実施形態では、「より長い」FIX活性は、血漿に存在するFIX抗原の濃度、例えば、T1/2ベータ(抗原)により推測できる。
【0054】
本明細書で使用される用語「凍結乾燥体」、「凍結乾燥粉末」、「凍結乾燥製品」、または「製品固形物」は、フリーズドライ法により製造される製剤を表す。溶媒(例えば、水)は、真空下で昇華の後に凍結させること及び高温での残留水の脱離により除去される。医薬分野では、凍結乾燥体は、粉末または物理的に(physical)安定な固形物として存在する。凍結乾燥体は、再構成溶媒を添加した後の高速溶解を特徴とする。
【0055】
本明細書で使用される用語「凍結乾燥前製剤」または「凍結乾燥原料」は、溶媒(例えば、水)がフリーズドライ法により除去される前の液体製剤を表す。凍結乾燥前製剤の「充填容量」は、凍結乾燥前の液体製剤の合計容量である。
【0056】
本明細書で使用される「T1/2β」若しくは「T1/2ベータ」または「ベータHL」は、排出相に関連する半減期であり、t1/2β=(In2)/排泄速度定数は、終末相に関連する半減期である。T1/2ベータは、血漿中のFIX活性またはFIX抗原濃度で測定できる。活性に基づくT1/2ベータは、T1/2ベータ(活性)として示され、FIX抗原濃度に基づくT1/2ベータは、T1/2ベータ(抗原)として示すことができる。T1/2ベータ(活性)及びT1/2ベータ(抗原)の両方は、範囲または幾何平均として示すことができる。
【0057】
本明細書で使用される用語「再構成された製剤」または「再構成後組成物」は、凍結乾燥され、希釈剤の添加により再溶解される製剤を表す。希釈剤は、注射用蒸留水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)のNaCl)、グルコース溶液(例えば、5%のグルコース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%のポリソルベート20またはポリソルベート80)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)、及びそれらの組み合わせを限定なしに含有できる。
【0058】
一般の凍結乾燥プロセス
凍結乾燥またはフリーズドライは、生物材料及び医薬材料の保存のために、医薬業界で広く使用されるプロセスである。凍結乾燥サイクルとしても知られている凍結乾燥プロセスは従来、3つの異なる段階:凍結、1次乾燥、及び2次乾燥、に分けられる。本明細書で使用される「凍結乾燥すること」は、凍結工程及び乾燥工程の両方を含む、凍結乾燥のプロセス全体を指す。
【0059】
凍結乾燥では、材料中に存在する水は、凍結工程中に氷に転換され、次に、1次乾燥工程中に低圧条件下で直接昇華させることにより材料から除去される。しかし、凍結中に、すべての水が氷に変換されるわけではない。一部の水が、例えば、製剤構成成分及び/または活性成分を含有する固体のマトリックスに閉じ込められている。マトリックス内に過剰に結合された水は、2次乾燥工程中に、所望の濃度の残留水分まで低減させることができる。全ての凍結乾燥工程である、凍結、1次乾燥、及び2次乾燥、が最終製品の特性を決定している。1次乾燥は通常、凍結乾燥プロセス中の最も長い工程であり、それ故、プロセスのこの部分の最適化は、著しい経済効果を有する。
【0060】
本発明の特定の態様では、凍結乾燥プロセスは、1次乾燥工程をのみを含む。
【0061】
本発明の特定の態様では、凍結乾燥プロセスはまた、凍結工程と1次乾燥工程との間に、独立した「真空工程」を含む。
【0062】
本発明の他の態様では、凍結乾燥プロセスは、凍結工程と1次乾燥工程との間に、「アニーリング工程」をさらに含む。
【0063】
本明細書で使用される用語「アニーリング工程」は、製剤の乾燥工程前の、凍結乾燥を受けているポリペプチド製剤の凍結乾燥プロセスの工程を指し、この工程では、製剤の温度は、より低い温度からより高い温度に上昇し、次に、一定期間後に再び冷却される。
【0064】
サイクル及び製剤の最適化は従来、1次乾燥中の製品温度が崩壊温度を決して超えないことを保証するために実施されている。本明細書で使用される用語「崩壊温度」は、製品固形物がその元の構造を失い始める、フリーズドライ中の製品温度を指す。崩壊温度を超えると、製品は、製品の外観に影響をもたらし得る、ゆっくりとした散発的な発泡、膨張、起泡、空洞化、開口(fenestration)、総崩壊、収縮、及び数珠状化(beading)を呈する可能性がある。その結果、崩壊により、製品安定性が不十分さ、乾燥時間の長さ、乾燥の不均一さ、及び質感の消失がもたらされることがある。例えば、米国特許第US2010/0041870号を参照のこと。
【0065】
本発明による凍結乾燥製品は、製品の品質分析、再構成時間、再構成の品質、高い分子量、水分、ガラス転移温度(T)、及び生物学的または生化学的活性に基づいて評価できる。通常は、製品の品質分析は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、陽イオン交換HPLC(CEX-HPLC)、X線回折(XRD)、変調示差走査熱量計(mDSC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、多角度光散乱検出器(MALS)、蛍光、紫外線吸収、比濁法、キャピラリー電気泳動(CE)、SDS-PAGE、及びそれらの組み合わせ、を含むが、これらに限定されない方法を使用した、製品の分解速度分析を含む。一部の実施形態では、本発明による凍結乾燥製品は、固形物の外観を評価する工程を含む。さらに、凍結乾燥製品は、通常は再構成後の製品の生物学的または生化学的活性に基づいて評価されても良い。
【0066】
凍結乾燥第IX因子製剤
本開示は、FIXポリペプチドを含む、凍結乾燥前の、凍結乾燥された、及び再構成後の製剤または医薬組成物を提供する。
【0067】
本発明の特定の態様では、本明細書で開示される製剤は、FIXポリペプチド、緩衝薬、安定剤、充填剤、及び界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせ、を含む。製剤はまた、医薬製剤に有用な、他の任意の剤を含有できる。
【0068】
第IX因子(FIX)ポリペプチド
製剤に有用なFIXポリペプチドまたはFIXタンパク質は、別途明記のない限り、凝固での通常の役割における機能的なFIXタンパク質である。従って、FIXポリペプチドは、機能的である変異型ポリペプチド、及びこのような機能的な変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、FIXポリペプチドは、ヒト、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、及びマウスのFIXポリペプチドである。FIXの完全長ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列は、多くの機能的変異体、例えば、フラグメント、突然変異体、及び改変バージョン、であるので、既知である。FIXポリペプチドは、完全長FIX、完全長FIXマイナスN末端のMet、完全長FIXマイナスシグナル配列、成熟FIX(マイナスシグナル配列及びプロペプチド)、及びN末端に追加的なMetを有する成熟FIX、を含む。FIXは、組み換え手段(「組み換え第IX因子」または「rFIX」)で作製でき、すなわち、それは、天然のまたは血漿由来ではない。
【0069】
非常に多くの機能的なFIX変異体が知られている。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO02/040544A3号は、4頁9~30行及び15頁6~31行に、ヘパリンによる阻害に対する耐性の増加を示す突然変異体について開示する。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO03/020764A2号は、(14~24頁の)表2及び表3、ならびに12頁1~27行に、T細胞免疫原性が低減したFIX突然変異体について開示する。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO2007/149406A2号は、4頁1行~19頁11行に、タンパク質安定性の増加、インビボ及びインビトロ半減期の増加、及びプロテアーゼに対する耐性の増加を示す機能的な突然変異体FIX分子について開示する。WO2007/149406A2はまた、19頁12~20頁9行に、キメラ及び他の変異型FIXについて開示する。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO08/118507A2号は、5頁14行~6頁5行に、凝固活性の増加を示すFIX突然変異体について開示する。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO09/051717A2号は、9頁11行~20頁2行に、半減期及び/または回収率の増加をもたらす、N結合型及び/またはO結合型グリコシル化部位の数が増加するFIX突然変異体について開示する。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO09/137254A2号はまた、2頁[006]パラグラフ~5頁[011]パラグラフ、及び16頁[044]パラグラフから24頁[057]パラグラフに、グリコシル化部位の数が増加した第IX因子突然変異体について開示する。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO09/130198A2号は、4頁26行~12頁6行に、グリコシル化部位の数が増加した機能的な突然変異体FIX分子について開示する。全体として本明細書に参照により組み込まれる国際公開第WO09/140015A2号は、11頁[0043]パラグラフ~13頁[0053]パラグラフに、ポリマー(例えば、PEG)コンジュゲートのために使用できるCys残基の数が増加した(that an increased number of Cys residues)機能的なFIX突然変異体について開示する。2011年7月11日に出願され、2012年1月12日にWO2012/006624として公開された国際出願第PCT/US2011/043569号に記載されているFIXポリペプチドはまた、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
特定の実施形態では、FIXポリペプチドは、野生型FIXを含む。一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、野生型FIXと結合される異種部分をさらに含む。特定の実施形態では、異種部分は、FIXの半減期を延長する部分である。特定の実施形態では、異種部分は、ポリペプチドまたは非ポリペプチド部分を含む。
【0071】
他の実施形態では、FIXポリペプチドは、長時間作用型FIXポリペプチドである。長時間作用型FIXポリペプチドは、FIX部分及び非FIX部分、例えば、FIXポリペプチドのインビボまたはインビトロ半減期を延長できる異種部分を含むことができる。例示的な非FIX部分としては、例えば、Fc、アルブミン、PAS配列、トランスフェリン、CTP(4つのO-グリカンを有するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の28アミノ酸C末端ペプチド(CTP))、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合ポリペプチド、アルブミン結合小分子、またはそれらの任意の組み合わせ、が挙げられる。本発明の例示的な長時間作用型FIXポリペプチドとしては、例えば、第IX因子Fcポリペプチド、第IX因子アルブミンポリペプチド、第IX因子PASポリペプチド、第IX因子トランスフェリンポリペプチド、第IX因子CTPポリペプチド、第IX因子PEGポリペプチド、第IX因子HESポリペプチド、第IX因子アルブミン結合ポリペプチド(Factor IX -albumin binding polypeptide polypeptides)、または第IX因子アルブミン結合小分子ポリペプチド、が挙げられる。
【0072】
一実施形態では、FIXポリペプチドは、rFIXFc、ヒト凝固第IX因子(FIX)からなる組み換え融合タンパク質、及びヒト抗体(IgG1アイソタイプ)のFcドメインである。例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる、2011に7月11日に出願され、WO2012/006624として公開されたPCT出願第PCT/US2011/043569号を参照のこと。rFIXFcポリペプチドは、Fcのヒンジ領域内の2つのジスルフィド結合を介して、FIXFc一本鎖(FIXFc-sc)及びFc一本鎖(Fc-sc)が互いに結合されるヘテロ二量体タンパク質である。rFIXFcは、最終タンパク質生成物であるrFIXFcを形成するためにトランスフェクションされた細胞株内で組み立てる2つのタンパク質サブユニット、FIXFc-sc(642アミノ酸、配列番号2)及びFc-sc(227アミノ酸、配列番号4)を必要とする。FIXFc-sc及びFc-scをコードするポリヌクレオチド配列はそれぞれ、配列番号1及び配列番号3として提示される。
【0073】
特定の実施形態では、rFIXFcの第IX因子部分は、血漿由来の第IX因子のThr148対立形質と同一である1次アミノ酸配列を有し、内因性の第IX因子に類似する構造的及び機能的特徴を有する。rFIXFcのFcドメインは、IgG1のヒンジ、CH2、及びCH3領域を含有する。rFIXFcの集合した二量体の成熟形態は、ほぼ98キロダルトンの分子量を有する869個のアミノ酸を含有する。いくつかの実施形態では、rFIXFcポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1~642と、少なくとも90%、95%、または100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0074】
一実施形態では、FIXに結合された第2の部分は、FcRn結合パートナーである。別の実施形態では、FIXと結合されたFcRn結合パートナーは、Fcフラグメントである。FcRn結合パートナーは、FcRn受容体により特異的に結合でき、結果として起こる、FcRn結合パートナーのFcRn受容体による能動輸送を伴う、任意の分子である。従って、用語Fcは、機能的であるIgG Fcの任意の変異体を含む。FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶学に基づいて記載されている(全体として参照により本明細書に組み込まれるBurmeisterら, Nature 372:379 (1994))。FcのFcRnとの主な接触域は、CH2及びCH3ドメインとの接合部の近くにある。Fc-FcRn接触は全て、単一のIg重鎖内にある。FcRn結合パートナーとしては、例えば、IgG全体、IgGのFcフラグメント、及びFcRnの完全結合領域を含むIgGの他のフラグメントが挙げられる。主な接触部位は、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、及び314、ならびにCH3ドメインのアミノ酸残基385~387、428、及び433~436を含む。免疫グロブリン若しくは免疫グロブリンフラグメント、または領域のアミノ酸番号付けに対してなされる言及は全て、全体として参照により本明細書に組み込まれるKabatら 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U. S. Department of Public Health, Bethesda;MDに基づく。(FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの哺乳類種から単離されている。ヒトFcRn、ラットFcRn、及びマウスFcRnの配列が知られている(全体として参照により本明細書に組み込まれるStoryら, J. Exp. Med. 180: 2377 (1994))。Fcは、免疫グロブリンのヒンジ領域の有無にかかわらず、免疫グロブリンのCH2及びCH3ドメインを含むことができる。例示的なFc変異体は、全体として参照により本明細書に組み込まれるWO2004/101740及びWO2006/074199で提供される。
【0075】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、1つ以上の突然変異、及び突然変異の組み合わせを含有する可能性がある。
【0076】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、全体として参照により本明細書に組み込まれるOganesyanら, Mol. Immunol. 46:1750 (2009)に開示されるような、M252Y、S254T、T256E、及びそれらの組み合わせ;全体として参照により本明細書に組み込まれるVaccaroら, Nat. Biotechnol. 23:1283 (2005)に開示されるような、H433K、N434F、及びそれらの組み合わせ;全体として参照により本明細書に組み込まれるUS2009/0264627A1の1~2頁[0012]パラグラフならびに実施例9及び10に開示される突然変異体;ならびに全体として参照により本明細書に組み込まれるUS20090163699A1の2頁[0014]~[0021]パラグラフに開示される突然変異体、などの、半減期の増加を与える突然変異を含有する可能性がある。
【0077】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)はまた、例えば、次の突然変異を含むことができ、IgGのFc領域は、FcRnで結合されることになる、改変IgG若しくはFcフラグメントまたはそれらの部分を生じるために、よく知られた手順、例えば、部位特異的変異導入法及び同類のもの、に従って改変できる。このような改変としては、例えば、FcRnの接触部位から離れた改変、及びFcRnへの結合を維持またはさらに増強する接触部位内の改変が挙げられる。例えば、ヒトIgG1 Fc(Fcy1)における次の単一のアミノ酸残基は、FcRn:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、A330S、P331A、P331S、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、及びK447A、とのFc結合親和性の重大な損失なしに置換でき、式中、例えば、P238Aは、位置番号238で、アラニンにより置換された野生型プロリンを表す。アラニンに加えて、他のアミノ酸は、上記で特定された位置で、野生型アミノ酸と置換できる。突然変異は、Fcに単独で導入して、天然のFcと異なる100を超えるFcRn結合パートナーを生じさせることができる。さらに、これらの個々の突然変異の2つ、3つ、またはそれ以上の組み合わせは、一緒に導入して、数百以上のFcRn結合パートナーを生じさせることができる。これらの突然変異の一部は、FcRn結合パートナーに新しい機能性を付与できる。例えば、一実施形態は、N297Aを組み込み、高度に保存されたN-グリコシル化部位を除去する。この変異の影響は、免疫原性を低減させ、それによりFcRn結合パートナーの循環半減期を向上させること、ならびFcRnに対する親和性を損なうことなく、FcRn結合パートナーをFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、及びFcγRIIIA(FcyRI, FcyRIIA, FcyRIIB, and FcyRIIIA)に結合できないようにすることである(全体として参照により本明細書に組み込まれるRoutledge ら. 1995, Transplantation 60:847;全体として参照により本明細書に組み込まれるFriendら 1999, Transplantation 68:1632;全体として参照により本明細書に組み込まれるShieldsら 1995, J. Biol. Chem. 276:6591)。さらに、少なくとも3つのヒトFcγ受容体は、下側のヒンジ領域、一般にアミノ酸234~237内のIgGの結合部位を認識するようにみえる。それ故、新しい機能及び潜在的な免疫原性の減少の別の例は、例えば、ヒトIgG1のアミノ酸233~236「ELLG」の、IgG2からの対応する配列「PVA」との交換により、この領域の突然変異から生じる可能性がある。種々のエフェクター機能を媒介するFcγRI、FcγRII、及びFcγRIII(FcyRI, FcyRII, and FcyRIII)は、このような突然変異が導入されている場合に、IgG1に結合しないことが示されている(全体として参照により本明細書に組み込まれるWard及びGhetie, Therapeutic Immunology 2:77 (1995);及び全体として参照により本明細書に組み込まれるArmourら, Eur. J. Immunol. 29:2613 (1999))。上記突然変異から生じる新しい機能性のさらなる例として、FcRnに対する親和性は、場合によっては野生型のものを超えて増加させることができる。この親和性の増加により、「オン」速度の増加、「オフ」速度の減少、又はその両方を反映できる。FcRnに対する親和性の増加をもたらすと考えられる変異は、例えば、T256A、T307A、E380A、及びN434Aを含む(全体として参照により本明細書に組み込まれるShieldsら, J. Biol. Chem. 276:6591 (2001))。
【0078】
Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、表14に示されるFcアミノ酸配列(例えば、配列番号4のアミノ酸21~247)と少なくとも約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%同一であることができる。Fc(またはキメラポリペプチドのFc部分)は、表14に示されるFcアミノ酸配列(例えば、配列番号4のアミノ酸21~247)と同一とすることができる。
【0079】
上述のように、例示的な長時間作用型ポリペプチドとしては、1つ以上のアルブミンポリペプチド、アルブミン結合ポリペプチド、またはアルブミン結合小分子と結合されたFIXも挙げられる。一実施形態において、アルブミンは、ヒトアルブミンである。アルブミンまたはアルブミン結合タンパク質は、FIXのN末端若しくはFIXのC末端のいずれかに結合するか、またはFIXの2つのアミノ酸の間に挿入できる。本発明で使用できるアルブミン、例えば、そのフラグメント、の例は、例えば、米国特許第7,592,010号;米国特許第6,686,179号;及びSchulte, Thrombosis Res. 124 Suppl. 2:S6-S8 (2009)(これらのそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み込まれる)により知られている(are known.)。
【0080】
アルブミン結合ポリペプチドは、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合ペプチド、またはアルブミンに結合できるアルブミン結合抗体フラグメントを含むこと(compromise)ができるが、これらに限定されない。Kraulisら, FEBS Lett. 378:190-194 (1996)及びLinhultら, Protein Sci. 11:206-213 (2002)によって開示される連鎖球菌のタンパク質Gのドメイン3は、細菌アルブミン結合ドメインの例である。アルブミン結合ペプチドの例としては、コア配列DICLPRWGCLW(配列番号5)を有する一連のペプチドが挙げられる。例えば、Dennisら., J. Biol. Chem. 2002, 277: 35035-35043 (2002)を参照のこと。アルブミン結合抗体フラグメントの例は、参照により本明細書に組み込まれるMuller及びKontermann, Curr. Opin. Mol. Ther. 9:319-326 (2007);Rooversetら, Cancer Immunol. Immunother. 56:303-317 (2007)、及びHoltら, Prot. Eng. Design Sci., 21:283-288 (2008)で開示される。
【0081】
特定の態様では、本発明の組み換えFIXポリペプチドは、非ポリペプチド小分子、変異体、またはアルブミンに結合できるそれらの誘導体に対する少なくとも1つの結合部位を含む。このようなアルブミン結合部分の例は、Trusseletら, Bioconjugate Chem. 20:2286-2292 (2009)により開示される2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)である。
【0082】
上述のように、例示的な長時間作用型ポリペプチドとしては、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットの少なくとも1つのC末端ペプチド(CTP)、またはそれらのフラグメント、変異体、若しくは誘導体に結合されたFIXも挙げられる。CTPは、FIXのN末端またはFIXのC末端のいずれかに(FIX either the N-terminal end of FIX or to the C-terminal end of FIX)結合できる。組み換えタンパク質に結合または挿入された1つ以上のCTPペプチドは、そのタンパク質のインビボでの半減期を増加させることが知られている。例えば、本明細書に参照として組み込まれる米国特許第5,712,122号を参照のこと。例示的なCTPペプチドとしては、DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL(配列番号6)またはSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ(配列番号7)が挙げられる。例えば、参照により組み込まれる米国特許出願公開第US2009/0087411A1号を参照のこと。
【0083】
上述のように、例示的な長時間作用型ポリペプチドとしては、少なくとも1つのPAS配列、またはそれらのフラグメント、変異体、若しくは誘導体に結合されたFIXも挙げられる。PAS配列は、FIXのN末端またはFIXのC末端のいずれかに結合できる。本明細書で使用されるPASペプチドまたはPAS配列は、主にアラニン及びセリン残基を含むアミノ酸配列、または主にアラニン、セリン、及びプロリン残基を含むアミノ酸配列を意味し、アミノ酸配列は、生理的条件下でランダムコイルコンンフォメーションを形成する。従って、PAS配列は、キメラタンパク質において異種部分の一部として使用できる、アラニン、セリン、及びプロリン、を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる、ビルディングブロック、アミノ酸ポリマー、または配列カセットである。アミノ酸ポリマーはまた、アラニン、セリン、及びプロリン以外の残基がPAS配列において微量成分として付加される場合、ランダムコイルコンンフォメーションを形成できる。「微量成分」とは、アラニン、セリン、及びプロリン以外のアミノ酸が、PAS配列において、ある程度、例えば、アミノ酸の多くとも約12%、すなわち、PAS配列の100個のアミノ酸のうちの約12個、多くとも約10%、多くとも約9%、多くとも約8%、約6%、約5%、約4%、約3%、すなわち、約2%、または約1%まで付加できることを意味する。アラニン、セリン、及びプロリンとは異なるアミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群から選択できる。生理的条件下で、PASペプチドは、ランダムコイルコンンフォメーションを形成して、それにより本発明の組み換えタンパク質にインビボ及び/またはインビトロ安定性の増加をもたらすことができ、かつ凝血促進活性を有する。
【0084】
PASペプチドの非限定例としては、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号8)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号9)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号10)、APSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号11)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号12)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号13)、ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号14)、または任意の変異体、誘導体、フラグメント、若しくはそれらの組み合わせ、が挙げられる。PAS配列のさらなる例は、例えば、米国特許公開第2010/0292130A1号、PCT出願公開第WO2008/155134A1号、及び欧州発行特許EP2173890により知られている。
【0085】
上述のように、例示的な長時間作用型ポリペプチドとしては、少なくとも1つのトランスフェリンペプチド、またはそれらのフラグメント、変異体、若しくは誘導体に結合されたFIXも挙げられる。少なくとも1つのトランスフェリンペプチドは、FIXのN末端若しくはFIXのC末端のいずれかに結合するか、またはFIXの2つのアミノ酸の間に挿入できる。任意のトランスフェリンは、本発明の組み換えFIXタンパク質に結合または挿入できる。一例として、野生型ヒトTf(Tf)は、遺伝子重複に由来するようにみえる、2つの主要なドメイン、N(約330個のアミノ酸)及びC(約340個のアミノ酸)を有する、ほぼ75KDa(グリコシル化を考慮せず)の679個のアミノ酸のタンパク質である。GenBank受託番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847、及びS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov)(これらの全ては、本明細書に参照により組み込まれる)を参照のこと。
【0086】
トランスフェリンは、トランスフェリン受容体(TfR)介在性エンドサイトーシスを通じて鉄を輸送する。鉄がエンドソーム区画に放出され、Tf-TfR複合体が細胞表面上に再循環された後、Tfは、次の鉄輸送周期のために細胞外空間に再び放出される。Tfは、14~17日間を超える長い半減期を有する(Liら, Trends Pharmacol. Sci. 23:206-209 (2002))。トランスフェリン融合タンパク質は、半減期の延長、癌療法のための標的送達、経口送達、及びプロインスリンの持続的活性化について研究されている(Brandsmaら, Biotechnol. Adv., 29: 230-238 (2011);Bai ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:7292-7296 (2005);Kimら, J. Pharmacol. Exp. Ther., 334:682-692 (2010);Wangら, J. Controlled Release 155:386-392 (2011))。
【0087】
上述のように、例示的な長時間作用型ポリペプチドとしては、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)部分に結合されるFIXも挙げられる。
【0088】
PEG化されたFIXは、FIXと少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)分子との間に形成されたコンジュゲートを指すことができる。PEGは、幅広い種々の分子量及び平均分子量の範囲で市販されている。PEGの平均分子量の範囲の代表例としては、約200、約300、約400、約600、約1000、約1300~1600、約1450、約2000、約3000、約3000~3750、約3350、約3000~7000、約3500~4500、約5000~7000、約7000~9000、約8000、約10000、約8500~11500、約16000~24000、約35000、約40000、約60000、及び約80000ダルトンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの平均分子量は、単に例示として提供されるものであり、決して限定となることを意図するものではない。
【0089】
本発明の組み換え長時間作用型FIXタンパク質は、モノまたはポリ(例えば、2~4個の)PEG部分を含むようにPEG化できる。PEG化は、当該技術分野で既知のPEG化反応のいずれによっても実施できる。PEG化タンパク質生成物を調製するための方法は一般に、(i)本発明のペプチドが1つ以上のPEG基に結合する条件下で、ポリペプチドをポリエチレングリコール(例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体等)と反応させること、及び(ii)反応生成物(複数可)を得ること、を含むことになる。一般に、反応のための最適な反応条件は、既知のパラメータ及び所望の結果に基づいて個別的に決定されることになる。
【0090】
当業者らに利用可能ないくつかのPEG結合方法、例えば、Malik Fら, Exp. Hematol. 20:1028-35 (1992);Francis, Focus on Growth Factors 3(2):4-10 (1992);欧州特許公開第EP0401384号、同第EP0154316号、及び同第EP0401384号;ならびに国際特許出願公開第WO92/16221号、及び同第WO95/34326号がある。非限定例として、FIX変異体は、FIXの1つ以上の挿入部位にシステイン置換基を含有することができ、システインは、PEGポリマーにさらにコンジュゲートできる。Meiら, Blood 116:270-279 (2010)、及び米国特許第7,632,921号を参照のこと。
【0091】
上述のように、例示的な長時間作用型ポリペプチドとしては、少なくとも1つのヒドロキシエチルデンプン(HES)ポリマーに結合されるFIXも挙げられる。HESは、天然のアミロペクチンの誘導体であり、体内のα-アミラーゼにより分解される。HESは、有利な生物学的特性を示し、医療機関で、血液量補充剤として、及び血液希釈療法において使用される。例えば、Sommermeyerら, Krankenhauspharmazie 8:271-278 (1987);及びWeidlerら, Arzneim.-Forschung/Drug Res. 41: 494-498 (1991)を参照のこと。
【0092】
HESは、分子量分布及び置換度を主に特徴とする。HESは、1~300kD、2~200kD、3~100kD、または4~70kDの平均分子量(重量平均)を有する。ヒドロキシエチルデンプンは、0.1~3、0.1~2、0.1~0.9、または0.1~0.8の置換度、及びヒドロキシエチル基に関して、2~20個の範囲のC2置換とC6置換との比を、さらに示すことができる。約130kDの平均分子量を有するHESは、Fresenius製VOLUVEN(登録商標)である。VOLUVEN(登録商標)は、例えば、循環血液量減少の治療法及び予防法に対する治療適応症に使用される、体積補充のための人工コロイドである。当業者らが利用可能ないくつかのHES結合方法、例えば、上記の同じPEG結合方法がある。
【0093】
第IX因子凝固活性は、国際単位(複数可)(IU)として表される。1IUの第IX因子活性は、1ミリリットル正常ヒト血漿中の第IX因子の量にほぼ相当する。1段階凝固アッセイ(活性化部分トロンボプラスチン時間;aPTT)、トロンビン生成時間(TGA)、及び回転式トロンボエラストメトリ(ROTEM(登録商標))を含む、いくつかのアッセイが、第IX因子活性を測定するために利用可能である。
【0094】
緩衝薬
本発明に有用な緩衝薬は、別の酸または塩基の添加後に、選択される値の近くの溶液の酸性度(pH)を維持するために使用される弱酸または塩基とすることができる。好適な緩衝薬は、製剤のpH制御を維持することにより、医薬製剤の安定性を最大化させることができる。好適な緩衝薬はまた、生理学的適合性を確保するか、または溶解性を最適化できる。レオロジー、粘度、及び他の特性はまた、製剤のpHに依存する可能性がある。一般的な緩衝薬としては、ヒスチジン、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、及びリン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、緩衝薬は、等張剤と共に、L-ヒスチジンまたはL-ヒスチジンのL-ヒスチジン塩酸塩との混合物を含み、当該技術分野で既知の酸または塩基と共に潜在的にpH調整する。特定の実施形態では、緩衝薬は、L-ヒスチジンである。特定の実施形態では、製剤のpHは、約6と約8との間、または約6.5と約7.5との間に維持される。
【0095】
安定剤
安定剤は、その製品を安定化させるために医薬製品に添加される。このような薬剤は、いくつかの異なる手段で、タンパク質を安定化させることができる。一般的な安定剤としては、グリシン、アラニン、リシン、アルギニン、若しくはスレオニンなどのアミノ酸;グルコース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、若しくはマルトースなどの炭化水素;任意の種類及び分子量のグリセロール、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリン、若しくはデストランスなどのポリオール;またはPEGが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様では、安定剤は、凍結乾燥製剤中のFIXポリペプチドの安定性を最大化させるために選択される。特定の実施形態では、安定剤は、スクロースである。
【0096】
充填剤
充填剤は、製品に体積と質量を追加するために医薬品に添加することができ、それにより、医薬品の正確な計量及び取り扱いが容易になる。一般的な充填剤としては、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、またはステアリン酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、充填剤は、マンニトールである。
【0097】
界面活性剤
界面活性剤は、親液性及び疎液性基を有する両親媒性物質である。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、または非イオン性とすることができる。非イオン性界面活性剤の例としては、アルキルエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アミンエトキシレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、セチルアルコール若しくはオレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、ポリソルベート、または、ドデシルジメチルアミンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。
【0098】
凍結乾燥前製剤
一態様では、本開示は、
(a)FIX凝固活性を有する第IX因子(FIX)ポリペプチド、
(b)緩衝薬、
(c)安定剤、
(d)充填剤、及び
(e)界面活性剤、
を含む凍結乾燥前製剤を提供し、
製剤が、約5mL未満、約4mL未満、または約3mL未満の充填容量を有し、(a)~(e)のそれぞれが、標準凍結乾燥前製剤と比較して、
(1)凍結乾燥時のFIXポリペプチドの安定性の改善、
(2)凍結乾燥時の再構成時間の低減、
(3)製剤を含む、栓への飛散の低減、
(4)凍結乾燥サイクル時間の低減、
(5)室温での凍結乾燥前製剤から調製される凍結乾燥体の貯蔵寿命の増加、または
(6)それらの任意の組み合わせ、
を可能にするのに十分なバイアル毎の量(mg/バイアル)であり、
標準製剤が、凍結乾燥前製剤と同じバイアル毎の量の(a)~(e)を含んで、少なくとも5mLの充填容量を有する。一部の実施形態では、標準製剤は、5.3mLの充填容量または5mLの充填容量を有する。
【0099】
他の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、(1)凍結乾燥時のFIXポリペプチドの安定性の改善、(2)凍結乾燥時の再構成時間の低減、(3)製剤を含む、栓への飛散の低減、(4)凍結乾燥サイクル時間の低減、及び、(5)室温での凍結乾燥前製剤から調製される凍結乾燥体の貯蔵寿命の増加、から選択される少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、または少なくとも5つの特性を可能にする。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、(1)凍結乾燥時のFIXポリペプチドの安定性の改善を可能にする。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、(2)凍結乾燥時の再構成時間の低減を可能にする。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、(3)製剤を含む、栓への飛散の低減を可能にする。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、(4)凍結乾燥サイクル時間の低減を可能にする。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、(5)室温での凍結乾燥前製剤から調製される凍結乾燥体の貯蔵寿命の増加を可能にする。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、(6)本明細書に記載される特性の任意の組み合わせを可能にする。
【0100】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、少なくとも約100IU/バイアルのFIXポリペプチドを含む。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、少なくとも約200IU/バイアル~約10,000IU/バイアル、約200IU/バイアル~約6,000IU/バイアル、または約500IU/バイアル~約5,000IU/バイアルのFIXポリペプチドを含む。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、約220IU/バイアル、約250IU/バイアル、約300IU/バイアル、約400IU/バイアル、約500IU/バイアル、約600IU/バイアル、約700IU/バイアル、約800IU/バイアル、約900IU/バイアル、約1,000IU/バイアル、約1,100IU/バイアル、約1,200IU/バイアル、約1,300IU/バイアル、約1,400IU/バイアル、約1,500IU/バイアル、約2,000IU/バイアル、約2,500IU/バイアル、約3,000IU/バイアル、約4,000IU/バイアル、約5,000IU/バイアル、約5,500IU/バイアル、約6,000IU/バイアル、約6,500IU/バイアル、約7,000IU/バイアル、約7,500IU/バイアル、約8,000IU/バイアル、約8,500IU/バイアル、約9,000IU/バイアル、約9,500IU/バイアル、または約10,000IU/バイアルのFIXポリペプチドを含む。
【0101】
一部の実施形態では、より高濃度の凍結乾燥前製剤は、充填容量を低減させることにより達成される。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、約4.0mL、約3.5mL、約3.0mL、約2.9mL、約2.8mL、約2.7mL、約2.65mL、約2.6mL、約2.5mL、約2.4mL、約2.3mL、約2.2mL、約2.1mL、または約2.0mLの充填容量を有する。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤の充填容量は、約2.65mLである。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤の充填容量は、約5mL未満である。
【0102】
一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、追加の精製工程、例えば、第2の限界濾過工程によりさらに濃縮できる。
【0103】
特定の実施形態では、低減した再構成時間は、1.5分未満、1分未満、50秒未満、40秒未満、30秒未満、20秒未満、または10秒未満である。特定の実施形態では、低減した再構成時間は、30秒未満である。
【0104】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤の低減した凍結乾燥サイクル時間は、約4日以下、約3日以下、約2日以下、または約1日以下である。
【0105】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤中の緩衝薬の濃度は、約3mg/mLと約15mg/mLとの間、4mg/mLと12mg/mLとの間(between 4mg/mL and between 12 mg/mL)、約5mg/mLと約10mg/mLとの間、または約5.82mg/mLと約9.7mg/mLとの間にある。一実施形態では、緩衝薬は、約3.88mg/mLと約9.7mg/mLとの間の濃度である。一実施形態では、緩衝薬は、約7.76mg/mLの濃度である。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、約7.76mg/mLの濃度のL-ヒスチジンを含有する。
【0106】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤中の安定剤の濃度は、10mg/mLと約50mg/mLとの間、約13mg/mLと約40mg/mLとの間、約15mg/mLと約35mg/mLとの間、または約17.85mg/mLと約29.95mg/mLとの間にある。一実施形態では、緩衝薬は、約23.8mg/mLの濃度である。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は23.8mg/mLの濃度のスクロースを含有する。
【0107】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤中の充填剤の濃度は、約20mg/mLと約100mg/mLとの間、約30mg/mLと約70mg/mLとの間、約30mg/mLと約60mg/mLとの間、または約35.7mg/mLと約59.5mg/mLとの間にある。一実施形態では、充填剤は、約47.6mg/mLの濃度である。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、約47.6mg/mLの濃度のマンニトールを含有する。
【0108】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤中の界面活性剤の濃度は、約0.01mg/mLと約5mg/mLとの間、約0.1mg/mLと約4mg/mLとの間、約0.1mg/mLと約3mg/mLとの間、約0.01mg/mLと約2mg/mLとの間、または約0.05mg/mLと約1mg/mLとの間である。一実施形態では、界面活性剤は、約0.2mg/mLの濃度である。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、約0.2mg/mLの濃度のポリソルベート20またはポリソルベート80を含有する。
【0109】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤中のFIXポリペプチドの濃度は、約80IU/mLと約2,750IU/mLとの間にある。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤中のFIXポリペプチドの濃度は、少なくとも約100IU/mL、少なくとも約200IU/mL、少なくとも約300IU/mL、少なくとも約400IU/mL、少なくとも約500IU/mL、少なくとも約600IU/mL、少なくとも約700IU/mL、少なくとも約800IU/mL、少なくとも約900IU/mL、少なくとも約1000IU/mL、少なくとも約1500IU/mL、少なくとも約2000IU/mL、または少なくとも約2500IU/mLである。
【0110】
一態様では、本開示は、
(a)約80~約2,750IU/mLのrFIXFc、
(b)約7.76mg/mLのL-ヒスチジン、
(c)約47.6mg/mLのマンニトール、
(d)約23.8mg/mLのスクロース、及び
(e)約0.2mg/mLのポリソルベート20、
含む凍結乾燥前製剤をさらに提供する。
【0111】
特定の実施形態では、このような凍結乾燥前製剤の充填容量は、約3mL、約2.9mL、約2.8mL、約2.7mL、約2.65mL、約2.6mL、約2.5mL、約2.4mL、約2.3mL、約2.2mL、約2.1mL、または約2.0mLである。一実施形態では、このような凍結乾燥前製剤の充填容量は、約2.65mLである。
【0112】
加えて、本開示は、凍結乾燥前製剤のいずれかから凍結乾燥する凍結乾燥粉末を提供する。一部の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、本明細書に記載される任意の製剤である。
【0113】
凍結乾燥粉末(lyophilate power)
本開示はまた、FIXポリペプチド、緩衝薬、安定剤、充填剤、界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む凍結乾燥粉末を提供する。
【0114】
特定の実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約8mgと約39mgとの間、バイアル毎に約9mgと約35mgとの間、バイアル毎に約10mgと約30mgとの間、バイアル毎に約12mgと約25mgとの間、バイアル毎に約15mgと約23mgとの間の緩衝薬(例えば、L-ヒスチジン)を含む。一実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約25mg、バイアル毎に約24mg、バイアル毎に約23mg、バイアル毎に約22mg、バイアル毎に約21mg、バイアル毎に約20mg、バイアル毎に約19mg、バイアル毎に約18mg、バイアル毎に約17mg、バイアル毎に約16mg、バイアル毎に約15mgの緩衝薬を含む。別の実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約20.6mgの緩衝薬を含む。一部の実施形態では、緩衝薬は、L-ヒスチジンである。
【0115】
特定の実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約27mgと約132mgとの間、バイアル毎に約30mgと約120mgとの間、バイアル毎に約40mgと約110mgとの間、バイアル毎に約50mgと約100mgとの間、バイアル毎に約60mgと約90mgとの間の安定剤を含む。一実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約68mg、バイアル毎に約67mg、バイアル毎に約66mg、バイアル毎に約65mg、バイアル毎に約64mg、バイアル毎に約63mg、バイアル毎に約62mg、バイアル毎に約61mg、バイアル毎に約60mg、バイアル毎に約59mgの安定剤を含む。別の実施形態では、凍結乾燥粉末(lyophilate power)は、バイアル毎に約63.1mgの安定剤を含む。一部の実施形態では、安定剤は、スクロースである。
【0116】
特定の実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約50mgと約265mgとの間、バイアル毎に約53mgと約265mgとの間、バイアル毎に約50mgと約250mgとの間、バイアル毎に約53mgと約265mgとの間、バイアル毎に約80mgと約200mgとの間、バイアル毎に約100mgと約150mgとの間、またはバイアル毎に約110mgと約140mgとの間の充填剤を含む。一実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約131mg、バイアル毎に約130mg、バイアル毎に約129mg、バイアル毎に約128mg、バイアル毎に約127mg、バイアル毎に約126mg、バイアル毎に約125mg、バイアル毎に約124mg、バイアル毎に約123mg、またはバイアル毎に約122mgの充填剤を含む。別の実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約126.1mgの充填剤を含む。一部の実施形態では、充填剤は、マンニトールである。
【0117】
特定の実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約0.03mgと約13mgとの間、バイアル毎に約0.05mgと約10mgとの間、バイアル毎に約0.07mgと約8mgとの間、バイアル毎に約0.1mgと約2mgとの間の界面活性剤を含む。一実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約1mg、バイアル毎に約0.9mg、バイアル毎に約0.8mg、バイアル毎に約0.7mg、バイアル毎に約0.6mg、バイアル毎に約0.5mg、バイアル毎に約0.4mg、バイアル毎に約0.3mg、バイアル毎に約0.2mg、またはバイアル毎に約0.1mgの界面活性剤を含む。別の実施形態では、凍結乾燥粉末(lyophilate power)は、バイアル毎に約0.5mgの界面活性剤を含む。一実施形態では、凍結乾燥粉末は、バイアル毎に約0.53mgの界面活性剤を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。
【0118】
特定の実施形態では、凍結乾燥粉末は、
(a)バイアル毎に約2mgとバイアル毎に約150mgとの間の量のFIXポリペプチド、
(b)バイアル毎に約10mgとバイアル毎に約30mgとの間の量の緩衝薬、
(c)バイアル毎に約70mg(mg vial)とバイアル毎に約200mgとの間の量の充填剤、
(d)バイアル毎に約30mgとバイアル毎に100mgとの間の量の安定剤、及び
(e)バイアル毎に約0.05mgとバイアル毎に約5mgとの間の量の界面活性剤、
含む。
【0119】
一部の実施形態では、凍結乾燥粉末は、
(a)バイアル毎に約2.2mgとバイアル毎に約125mgとの間の量のFIXポリペプチド、
(b)バイアル毎に約8mgとバイアル毎に約39mgとの間の量の緩衝薬、
(c)バイアル毎に約53mg(mg vial)とバイアル毎に約265mgとの間の量の充填剤、
(d)バイアル毎に約27mgとバイアル毎に132mgとの間の量の安定剤、及び
(e)バイアル毎に約0.03mgとバイアル毎に約13mgとの間の量の界面活性剤、
含む。
【0120】
特定の実施形態では、凍結乾燥粉末は、
(a)バイアル毎に約2.2mgとバイアル毎に約125mgとの間の量の凍結乾燥FIXポリペプチド、
(b)バイアル毎に約12.5mgとバイアル毎に25mgとの間の量の緩衝薬、
(c)バイアル毎に約32.5mgとバイアル毎に80mgとの間の量の安定剤、
(d)バイアル毎に約75mgとバイアル毎に150mgとの間の量の充填剤、及び
(e)約0.1mg/mLと約2mg/mLとの間の量の界面活性剤、
含む。
【0121】
一実施形態では、凍結乾燥粉末は、
(a)約2.2~約125mg/バイアルのFIXポリペプチド、
(b)約20.6mg/バイアルのL-ヒスチジン、
(c)約126.1mg/バイアルのマンニトール、
(d)約63.1mg/バイアルのスクロース、及び
(e)約0.53mg/バイアルのポリソルベート20、
含む。
【0122】
再構成された製剤
さらに、本開示は、上再構成緩衝液により再構成された上記の凍結乾燥粉末のいずれかを含む再構成された製剤を提供する。
【0123】
特定の実施形態では、再構成緩衝液は、NaCl溶液である。一部の実施形態では、再構成緩衝液は、5mLである。
【0124】
特定の実施形態では、再構成された製剤は、
(a)約0.9mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度のFIXポリペプチド、
(b)2mg/mLと約5mg/mLとの間の濃度の緩衝薬、
(c)20mg/mLと約30mg/mLとの間の濃度の充填剤、
(d)バイアル毎に8mg/mLと15mg/mLとの間の濃度の安定剤、及び
(e)0.05mg/mLと約0.4mg/mLとの間の濃度の界面活性剤、
含む。
【0125】
特定の実施形態では、再構成された製剤は、
(a)約0.9mg/mLと約50mg/mLとの間の濃度のFIXポリペプチド、
(b)約3.88mg/mLの濃度の緩衝薬、
(c)約23.8mg/mLの濃度の充填剤、
(d)約11.9mg/mLの濃度の安定剤、
(e)約0.1mg/mLの濃度の界面活性剤、及び
(f)約3.25mg/mLのNaClを含む再構成緩衝液、
含む。
【0126】
特定の実施形態では、再構成された製剤は、
(a)約80IU/mLと約2,750IU/mLとの間の濃度のFIXポリペプチド、
(b)約25mMの濃度の緩衝薬、
(c)約131mMの濃度の充填剤、
(d)約35mMの濃度の安定剤、
(e)0.01%(w/v)の濃度の界面活性剤、及び
(f)再構成緩衝液、
含む。
【0127】
製剤組成物の実施例は、表2~4でさらに提供される。
【0128】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される、凍結乾燥前製剤、凍結乾燥粉末、または再構成された製剤を含むバイアルをさらに提供する。
【0129】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される凍結乾燥粉末を含む第1の容器、及び第1の容器の凍結乾燥粉末と組み合わされた場合に、再構成された製剤を作製するのに十分な容積の再構成緩衝液を含む第2の容器を含むキットを提供する。特定の実施形態では、キットの再構成緩衝液の容積は、約5mLである。一部の実施形態では、容積は、約5.3mLである。特定の実施形態では、キットの再構成緩衝液は、NaClを含む。一部の実施形態では、キットは、血友病Bを治療するために使用される。
【0130】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載される再構成された製剤を患者に投与することを含む、FIXポリペプチドを必要とする血友病B患者に、FIXポリペプチドを投与する方法を提供し、投与は、患者の出血エピソードの頻発または重症化を防止するか、または低減させる。
【0131】
本開示は、本明細書に記載される再構成された製剤を投与することにより、血友病Bの予防、治療、改善、または管理を必要とする患者において、血友病Bを予防、治療、改善、または管理する方法をさらに提供する。
【0132】
FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の作製方法
本開示は、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の作製方法を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に記載される凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む凍結乾燥法を提供する。別の態様では、本開示は、単一の乾燥工程を含む凍結乾燥法を提供する。
【0133】
一態様では、本開示は、
(a)FIXポリペプチド及び水性溶媒を含む凍結乾燥前製剤を凍結させることを含む「凍結工程」、
(b)凍結された凍結乾燥前製剤から水性溶媒を除去するのに有効な量だけ、凍結された凍結乾燥前製剤の圧力を低減させることを含む「真空工程」、ならびに
(c)崩壊温度を超えて、凍結された凍結乾燥前製剤の温度を増加させて、それにより凍結乾燥粉末を作製することを含む単一の「乾燥工程」、
を含む、FIXポリペプチドを凍結乾燥させる方法を提供する。別の態様では、凍結乾燥プロセス時間は、標準方法、例えば、2つ以上の乾燥工程を有する凍結乾燥プロセスと比較して低減する。
【0134】
他の態様では、本発明の方法により作製される凍結乾燥粉末(lyophilate power)は、次の:(1)FIXポリペプチドの安定性が改善されること、(2)再構成時間が低減すること、(3)製剤を含む、栓への飛散の低減、または(4)室温での凍結乾燥粉末の貯蔵寿命が増加すること、のうち1つ以上の特徴を有する。
【0135】
特定の実施形態では、崩壊温度は、-1.5℃である。
【0136】
特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、凍結工程中に、約-65~約-40℃、約-65~約-45℃、約-65~約-55℃、約-60~約-40℃、約-60~約-50℃、または約-60~約-55℃の凍結温度で凍結される。特定の実施形態では、凍結乾燥前製剤は、凍結工程中に、約-55℃の凍結温度で凍結される。特定の実施形態では、凍結温度は、凍結工程中に、約5℃から約-55℃まで低下する。
【0137】
特定の実施形態では、凍結温度は、凍結工程中に、約30分~約5時間、約1時間~約5時間、約1.5時間~約5時間、約1.5時間~約4時間、約1.5時間~約3時間、または約1.5時間~約2.5時間保持する。特定の実施形態では、凍結温度は、凍結工程中に、約2時間保持される。
【0138】
特定の実施形態では、工程(a)の凍結された凍結乾燥前製剤は、「真空工程」(b)の前に、「アニーリング工程」(a′)にさらにかける。特定の実施形態では、工程(a)の凍結された凍結乾燥前製剤の温度は、アニーリング工程中に、約-15℃~約-2℃のアニーリング温度まで上昇する。特定の実施形態では、工程(a)の凍結された凍結乾燥前製剤の温度は、アニーリング工程中に、約-6℃のアニーリング温度まで上昇する。
【0139】
特定の実施形態では、アニーリング温度は、アニーリング工程中に、約2時間~約4時間保持される。特定の実施形態では、アニーリング温度は、アニーリング工程中に、約30分~約5時間、約1時間~約5時間、約2時間~約5時間、約2時間~約4時間、または約2.5時間~約3.5時間保持される。特定の実施形態では、アニーリング温度は、アニーリング工程中に、約3時間保持される。
【0140】
特定の実施形態では、凍結された凍結乾燥前製剤の温度は、アニーリング工程中に、アニーリング温度から約-65℃~約-40℃の温度まで低下する。特定の実施形態では、凍結された凍結乾燥前製剤の温度は、アニーリング工程中に、アニーリング温度から-55℃の温度まで低下する。
【0141】
特定の実施形態では、「真空工程」は、凍結された凍結乾燥前製剤を、約0.05と約1mbarとの間、約0.05と約0.50mbarとの間、約0.10と約0.50mbarとの間、約0.15と約0.50mbarとの間、約0.20と約0.50mbarとの間、または約0.25と約0.50mbarとの間の真空にかけることを含む。特定の実施形態では、「真空工程」の真空は、約0.33mbarである。
【0142】
特定の実施形態では、真空は、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、または約1時間、「真空工程」に保持される。一部の実施形態では、真空は、約2時間、「真空工程」に保持される。
【0143】
特定の実施形態では、「乾燥工程」は、凍結された凍結乾燥前製剤の温度を、約-55℃から約40℃の乾燥温度まで上昇させることを含む。特定の実施形態では、乾燥温度は、少なくとも約30℃、少なくとも約32℃、少なくとも約34℃、少なくとも約35℃、少なくとも約36℃、少なくとも約38℃、少なくとも約39℃、少なくとも約40℃である。他の実施形態では、乾燥温度は、約35℃、約40℃、約32℃、または約45℃である。
【0144】
特定の実施形態では、乾燥工程は、約10時間~約40時間、約10時間~約30時間、または約20時間~約30時間の乾燥温度を保持することをさらに含む。特定の実施形態では、乾燥温度は、約25時間保持される。
【0145】
特定の実施形態では、乾燥工程は、約0.05mbar~約1mbar、約0.05と約0.50mbarとの間、約0.10と約0.50mbarとの間、約0.15と約0.50mbarとの間、約0.20と約0.50mbarとの間、または約0.20mbar~約0.45mbarの圧力で実施される。特定の実施形態では、圧力は、乾燥工程中に、約0.33mbarに保持される。mbarの単位は、Torrまたは他の任意の単位に変換できる。例えば、1mbarは、0.75006375541921Torrに変換できる。
【0146】
一態様では、本開示は、
(a)温度を、約-55℃の凍結温度まで約2時間低下させ、約2時間凍結温度を保持することにより、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥前製剤を凍結させることを含む「凍結工程」、
(a′)工程(a)の凍結された凍結乾燥前製剤の温度を、約-6℃のアニーリング温度まで約1.5時間上昇させ、約3時間アニーリング温度を保持し、温度を、約-55℃まで約1.5時間低下させることを含む「アニーリング工程」、
(b)工程(a′)の凍結された凍結乾燥前製剤を、常圧で2時間約-55℃に保持し、圧力を、約0.33mbarまで約2時間低下させることを含む「真空工程」、及び
(c)圧力を約0.33mbarに保持しながら、工程(b)の凍結された凍結乾燥前製剤の温度を、約40℃まで3時間上昇させ、圧力を約0.33mbarに保持しながら、凍結された凍結乾燥前製剤の温度を、約25時間約40℃に保持し、
それにより凍結乾燥粉末を作製することを含む単一の「乾燥工程」、を含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を作製する方法を提供する。一部の実施形態では、凍結乾燥法は、より少ないサイクル時間を要する。
【0147】
特定の実施形態では、本明細書で記載される方法により作製された凍結乾燥粉末は、次の特徴:
(1)FIXポリペプチドの安定性が改善されること、
(2)再構成時間が低減すること、
(3)製剤を含む、栓への飛散の低減、
(4)室温での凍結乾燥粉末の貯蔵寿命が増加すること、または
(5)それらの任意の組み合わせ、
有する。
【0148】
一部の実施形態では、凍結乾燥サイクル期間は、約4.5日未満、約4日、約3.5日、約3日、約2.5日、または約2日とすることができる。他の実施形態では、凍結乾燥サイクル期間は、約3日以下である。特定の実施形態では、凍結乾燥法に使用される凍結乾燥前製剤の充填容量は、約5mL未満である。特定の実施形態では、充填容量は、約4mL、約3.5mL、約3.0mL、約2.9mL、約2.8mL、約2.7mL、約2.65mL、約2.6mL、約2.5mL、約2.4mL、約2.3mL、約2.2mL、約2.1mL、または約2.0mLである。一実施形態では、充填容量は、約2.65mLである。
【0149】
特定の実施形態では、凍結乾燥法により作製された凍結乾燥粉末の低減した再構成時間は、約1.5分未満、約1分未満、約50秒未満、約40秒未満、約30秒未満、約20秒未満、または約10秒未満である。特定の実施形態では、凍結乾燥法により作製された凍結乾燥粉末の低減した再構成時間は、約30秒未満である。
【0150】
特定の実施形態では、凍結乾燥法で使用される凍結乾燥前製剤の低減した凍結乾燥サイクル時間は、約4日以下、約3日以下、約2日以下、または約1日以下である。
【0151】
一部の実施形態では、凍結乾燥粉末は、約90時間以下、約80時間以下、約70時間以下、約60時間以下、約50時間以下、約45時間以下、約40時間以下、または約30時間以下で、凍結乾燥前製剤から作製される。特定の実施形態では、凍結乾燥粉末は、約45時間以下で、凍結乾燥前製剤から作製される。
【0152】
特定の実施形態では、凍結乾燥粉末の残留水分は、約1.0%未満、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、または約0.3%である。一部の実施形態では、凍結乾燥粉末の残留水分は、約0.5%未満である。
【0153】
一態様では、本開示は、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXペプチドを含む凍結乾燥粉末を安定化させる方法を提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末に関して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定される場合に、凍結乾燥粉末が安定化する。
【0154】
別の態様では、本開示は、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の貯蔵寿命を増加させる方法を提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末の貯蔵寿命に関して、SEC及び/またはFIX凝固活性アッセイで測定した場合に、凍結乾燥粉末の貯蔵寿命が増加する。
【0155】
本開示はまた、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末の再構成時間を減少させる方法を提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用することにより調製される凍結乾燥粉末の再構成時間に関して、凍結乾燥粉末の再構成時間が減少する。
【0156】
本開示は、本明細書で記載される方法に従って、凍結乾燥前製剤を凍結乾燥させることを含む、FIXポリペプチドを含む凍結乾燥粉末を作製する凍結乾燥プロセス時間を低減させる方法をさらに提供し、複数の乾燥工程を含む凍結乾燥法を使用して凍結乾燥粉末を作製する凍結乾燥プロセス時間に関して、凍結乾燥前製剤の凍結乾燥プロセス時間が低減する。
【0157】
これまで本発明を詳細に記載しているが、それは、次の実施例を参照することにより、より明確に理解されるであろう。これらの実施例は、例示のみを目的として本明細書に含まれ、本発明の限定とすることを意図するものではない。本明細書で言及される全ての特許及び刊行物は、参照により明示的に組み込まれる。
【実施例
【0158】
実施例1:第IX因子-Fc薬物物質及び薬物製品組成物
rFIXFcの説明
rFIXFcは、ヒト免疫グロブリンG1(lgG1)のFcドメインに共有結合されたヒト凝固第IX因子(FIX)からなる、長時間作用型の完全組み換え融合タンパク質である。rFIXFcの第IX因子部分は、血漿由来の第IX因子のThr148対立形質と同一である1次アミノ酸配列を有し、内因性の第IX因子に類似する構造的及び機能的特徴を有する。rFIXFcのFcドメインは、IgG1のヒンジ、CH2、及びCH3領域を含有する。rFIXFcは、ほぼ98キロダルトンの分子量を有する869個のアミノ酸を含有する。
【0159】
rFIXFcは、組み換えDNA技術により、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞株で産生され、次に精製される。
【0160】
rFIXFcを含む本発明のrFIXFc薬物製品製剤は、高濃度の薬物製品、例えば、4000+IU/バイアルの薬物製品、の強度の進歩を可能にすることができる。これは、以下の比較表1に示されるような薬物物質においてより高濃度のrFIXFcタンパク質を必要とする。本発明のrFIXFc薬物製品製剤は、室温安定性の増加を可能にするために、250及び500IU/バイアルの薬物製品の強度の貯蔵寿命を増加させることができる。開発データは、250及び500IU/バイアルの薬物製品の強度は、標準薬物製品よりも、加速条件下で著しく安定であることを示唆する。
【0161】
本発明のrFIXFc薬物製品製剤はまた、凍結乾燥時に、再構成時間を減少させることができる。標準薬物製品の再構成時間は、1~2分の間で変動する。開発データは、LCM薬物製品により、再構成時間が30秒未満に低減することを示唆する。
【0162】
本発明のrFIXFc薬物製品製剤はまた、凍結乾燥プロセス時間の低減を可能にできる。現在では、凍結乾燥サイクルは~4.5日である。バイアル充填容量が小さいと、凍結乾燥サイクルは、より経済的な製造のために、~3日以下におそらく低減できる。
【0163】
薬物物質(DS)
本発明のrFIXFc製剤のための薬物物質は、標準薬物物質と同じ製剤賦形剤を使用することになる。より高い濃度は、薬物物質製造中の第2の限界濾過工程を使用して達成されることになる。表1を参照のこと。
【0164】
【表1】
【0165】
薬物製品(DP)
上記の目的を達成するために、凍結乾燥前に、バイアルの充填容量を低減させるとともに、標準薬物製品の全ての構成成分(タンパク質及び賦形剤)の濃度を2倍にした薬物製品を計画した。これにより、上述の薬物製品性能パラメータを改善しながら、患者への全ての構成成分の用量が一定のままであることが確実になる。
【0166】
以下の表2~4は、凍結乾燥原料の組成、乾燥凍結後のバイアル中の固体製品の含有量、及び再構成後の組成について詳述する。rFIXFcタンパク質濃度の広い変動に注意することが重要である。第IX因子の各バッチが、IU/mgで表すその活性において、わずかに異なるという事実により、原料は、測定された活性を使用して配合される。これにより、幅広いタンパク質濃度がもたらされ、薬物製品の異なる強度に追加されたこの変動により、以下に記載される範囲が与えられる。
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
【0170】
実施例2:第2世代rFIXFc薬物製品のための凍結乾燥サイクルパラメータの開発
要旨
本研究の目標は、本発明のrFIXFc薬物製品のための凍結乾燥サイクルの乾燥段階プロセスパラメータに関する範囲を評価することであった。
【0171】
本報告は、凍結乾燥プロセスパラメータ(乾燥棚温度、チャンバ真空レベル、及び乾燥時間)、ならびに乾燥中の製品温度への影響、結果として生じる残留水分、及び薬物製品の乾燥速度を評価する、統計的な実験計画法(DOE)研究をまとめたものである。
【0172】
第2世代rFIXFc薬物製品の予備凍結乾燥サイクル計画実験は、製剤のほぼ-1.5℃の高い崩壊温度に起因して、別個の1次及び2次乾燥工程が必要でなかったことを実証した。プラシーボの凍結乾燥プロセス中の、残留水分濃度及び製品温度における、棚温度、真空レベル、及び乾燥時間の影響を評価するために、12実験の実験計画法(DOE)研究を開発した。データの分析は、1%未満の残留水分濃度を達成するために、乾燥段階中に、30℃の最小棚温度が必要とされることを示す。分析はまた、25時間より長い乾燥時間により、バイアル中の残留水分がさらに減少せず、チャンバ真空レベルが残留水分に小さい影響しか及ぼさないことを実証した。乾燥中の製品温度は、棚温度及びチャンバ真空レベルに著しく影響を受けるが、研究の乾燥条件が最も積極的(1000mTorrのチャンバ真空で40℃棚温度)であると、崩壊温度よりも10℃下回る製品温度がもたらされた。バイアルマスフローは主に、棚温度の関数であり、真空制御を維持するために、市販の凍結乾燥装置は、0.7g/時間/バイアルの水分流速を処理できるようにする必要があるであろう。40℃の棚温度、250mTorr(0.33mbar)のチャンバ真空、及び25時間の乾燥時間を使用して、<0.5%の残留水分を有する製品を得るための凍結乾燥サイクルを提案した。
【0173】
導入
第2世代第IX因子Fc(rFIXFc-2G)薬物製品組成物を、加速貯蔵中のタンパク質の安定性の改善、再構成時間の改善、及び栓への飛散を低減させるための充填容量の低減が可能になるように計画した。再構成された製品が第1世代の組成物と同じになるように、充填容量を5.3mLから2.65mLに低減し、製剤中のタンパク質及び賦形剤の濃度を2倍にすることにより、これを達成した。充填容量を低減させる別の利益は、乾燥凍結プロセス中の、除去する必要のある水の量の減少であった。
【0174】
新しい薬物製品計画は、薬物製品プロセスの再検証を必要とするので、凍結乾燥サイクルを再開発した。プラシーボ製剤の崩壊温度を、ほぼ-1.5℃として測定した。この温度は、使用されることになる凍結乾燥サイクルが、標準rFIXFc凍結乾燥プロセスために計画されたものよりも、短縮されることを可能にするであろう。製品は、40℃を超える棚温度でさえ崩壊を経なかったので、別個の1次乾燥工程が必要とされないことが、最初の実験を通して決定された。標準薬物製品からの凍結プロファイルを使用して、真空が適用された後の1次乾燥温度への直接工程と組み合わされたサイクルを計画した。マンニトールが、固形物に結晶構造を提供して、活性バイアルと同じ外観になるので、プラシーボは、活性なrFIXFc-2Gに対する良好な代用物である。非晶質糖はまた、タンパク質よりも乾燥させることが困難であり、それ故、結果として生じた残留水分がわずかに高く、プロセスに最悪の値を提供する。また、バイアルからタンパク質を除去すると、水蒸気に対する耐性が低減し、バイアルマスフローレートに対する最悪の場合の推定値が与えられる。
【0175】
凍結乾燥プロセスパラメータ(乾燥棚温度、チャンバ真空レベル、及び乾燥時間)、ならびに薬物製品の乾燥プロセス中の製品温度、結果として生じる残留水分、及び乾燥速度に及ぼす影響を評価するために、統計的な実験計画法(DOE)研究を実施した。
【0176】
材料及び方法
本研究の目標は、第2世代rFIXFc薬物製品のための凍結乾燥サイクルの乾燥段階プロセスパラメータに関する範囲を評価することであった。JMP9のDOE研究を計画するために使用される乾燥段階パラメータ及び範囲は、表5に示される。個々の実行パラメータの設定値を示す、結果として生じる12実験のDOE計画は、表6に示される。
【0177】
【表5】
【0178】
【表6】
【0179】
研究の各凍結乾燥サイクルの場合、80個の10mLのショットバイアル(P/N:68000320)を、残留水分の評価のために、最悪の場合の充填容量を与える、表7に示されるように2.75mLの第2世代rFIXFcプラシーボで充填した。図1に示されるような各実験に対し、3つの熱電対を有する単一の棚に、充填されたバイアルを配置した。
【0180】
【表7】
【0181】
使用された凍結乾燥サイクルは、表8に示されるサイクルの変形形態であった。凍結乾燥装置の棚の乾燥温度、乾燥工程時間、及び乾燥真空レベルを、表6に示される実験計画法の表に基づいて変動させた。SP IndustriesのLyostar IIを、各凍結乾燥サイクルに対し使用し、バイアルを中段の棚に配置した。
【0182】
【表8】
【0183】
各凍結乾燥サイクルの後に、5つのバイアルを、隅及び中央の位置から選択し、手順TDMP-74を使用して残留水分に関し測定し、棚全体で平均した。熱電対を使用して、Lyostar IIのソフトウェアの流体圧力計での温度測定により、乾燥中の製品温度及びバイアルマスフローレートを測定した。第2世代rFIXFc凍結乾燥プロセスにおける乾燥パラメータの影響を評価するために、JMP9ソフトウェアを使用して、これらのアウトプットを分析した。重要な変数を決定するために、JMP段階的分析を実施し、次に、プロセスアウトプット(乾燥中の、残留水分、製品温度、及びマスフロー)がインプット変数にいかに対応するかを示す標準的な最小二乗効果スクリーニングアルゴリズムを使用して、これらの変数を分析した。
【0184】
結果及び考察(DISCUTION)
12凍結乾燥実験の結果は、表9に示される。
【0185】
【表9】
【0186】
1.残留水分における凍結乾燥サイクルパラメータの分析
2次乾燥中に、タンパク質よりも糖から残留水分を除去することが一般に困難であるので、薬物製品に対する最悪の場合の代用物として、rFIXFc-2Gプラシーボを使用した。DOE分析の結果を示す、結果として生じる予測プロファイラは、図2に示される。いくつかの所見:棚温度が、薬物製品の残留水分に最も重要な影響があることが、明らかである。このことは、強固に結合した水を除去する2次乾燥が拡散及び吸着制御されたプロセスであるという事実に基づいて予想される。モデルは、30℃よりも高い棚温度が1%より低い残留水分濃度を達成するのに必要とされることが、モデルにより高い信頼度で予測される。真空レベルは、結果として生じる残留水分に小さいが測定可能な影響を有するようにみえる。乾燥時間は、さらなる乾燥時間を追加しても、残留水分濃度が減少し続けない、25時間で始まる収穫逓減点を示すようにみえる。このタイプの挙動は、棚温度により決定される平衡境界への動力学的アプローチに合致し、残留水分は、さらなる乾燥が不可能な漸近線に近づく。この残留水分DOE分析に基づいて、乾燥棚温度は30℃以上であるべきであり、乾燥時間は、25時間以下に固定されるべきである。
【0187】
2.昇華中の製品温度の凍結乾燥サイクルパラメータの分析
rFIXFc-2G薬物製品プラシーボのフリーズドライ崩壊温度は、ほぼ-1.5℃として測定されている。実際に、これは、バルク水が凍結乾燥中にバイアルから除去される場合、製品温度がこの崩壊温度以下に維持される限り、薬物製品が、明解な固形物構造を維持することになることを意味する。棚温度及びチャンバ真空レベルの両方が、図3に示されるように、製品温度に著しい影響を及ぼしたことが、DOE分析により判定された。チャンバ真空は、昇華中に、より高い製品温度がより高い圧力に変換する、最大の効果を有する。1000mTorr(1.33mBar)でさえ、最も高い測定された製品温度は、-15.2℃であり、製品崩壊温度のほぼ13℃下回った。棚温度はまた、製品温度に適度な効果を及ぼしたが、結果は真空効果よりも顕著でない。40℃の棚温度及び1000mTorrのチャンバ真空レベルでさえ崩壊のリスクがほとんどなく、任意の実用的な凍結乾燥サイクル計画空間から崩壊の可能性が実質的に排除されることが、この分析により示される。
【0188】
3.昇華中のバイアルマスフローレートにおける凍結乾燥サイクルパラメータの分析
バイアルマスフローレート(dm/dt)は、昇華プロセス中に水がバイアルから除去されている速度の尺度である。高速乾燥は、凍結乾燥サイクルに必要とされる時間を低減するために望ましいが、水分があまりにも多いと、製造規模の凍結乾燥機の凝縮器に負担をかけ、製品チャンバの真空制御の低下がもたらされる可能性がある。プラシーボは、最悪の場合のバイアルマスフロー条件を表す。製剤中に存在するタンパク質がないので、固形物中の固形分のパーセンテージが最小化され、これにより、フリーズドライされた固形物からのマスフローに対する抵抗の低下がもたらされる。棚温度は、図4に示されるように、バイアルマスフローに著しい影響を及ぼし、温度を増加させると、より速い昇華が引き起こされる。チャンバ真空レベルは、DOE分析モデルに含まれたが、p値は0.136であり、これは95%の信頼度で重要ではない。研究で最も高い測定されたdm/dtは、0.7g/時間/バイアルであった。
【0189】
4.プラシーボDOE研究に基づく、提案された第2世代rFIXFc凍結乾燥サイクル
単一の乾燥工程を使用して、製品を崩壊温度以下に維持しながら、凍結乾燥サイクルに<0.5%の残留水分目標を達成させるように計画することが可能であることが、プラシーボDOE研究からのデータにより示唆される。提案された凍結乾燥サイクルは、表10に示され、提案されたrFIXFc-2G凍結乾燥サイクルと類似の条件下のDOEの実行8からのデータは、図5に示される。0.5%の残留水分目標は、第1世代rFIXFc薬物製品の強度シリーズの平均値であるので、これを選択した。この水分濃度は、製品が加速安定性中に水分を吸収する場合に、製品品質属性が影響を受けないように、緩衝装置を提供する。
【0190】
標準rFIXFc薬物製品凍結乾燥サイクルのために開発される場合、凍結乾燥サイクルの凍結及びアニーリング部分を使用し、別々の1次及び2次乾燥工程を、25時間40℃の棚温度及び250mTorrの真空の単一の乾燥工程で置き換えている。
【0191】
【表10】
【0192】
結言
プラシーボの、残留水分、製品温度、及びバイアルマスフローレートにおける第2世代rFIXFc薬物製品凍結乾燥プロセスパラメータを評価する12実験のDOE研究を完成させた。データの分析は、1%以下の残留水分濃度を達成するために、乾燥段階中に、30℃の最小棚温度が必要とされることを示す。また、乾燥時間が25時間より長くても、バイアル中の残留水分が著しく減少せず、真空レベルは、残留水分に小さい影響しか及ぼさないことが、分析により実証された。乾燥中の製品温度は、棚温度及びチャンバ真空レベルにより著しく影響を受ける。研究の条件が最も積極的(40℃の棚温度、1000mTorrのチャンバ真空)であると、崩壊温度よりも10℃より大きく下回る製品温度がもたらされた。
【0193】
40℃の棚温度、250mTorr(0.33mbar)のチャンバ真空、及び25時間の乾燥時間を使用して、<0.5%の残留水分を有する製品を得るための凍結乾燥サイクルを提案した。
【0194】
特定の実施形態の上述の説明は、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、過度な実験を行うことなしに、他の者が当業者の技能の範囲内の知識を適用することによって、種々の用途のためにこのような特定の実施形態を容易に変更する、及び/または適応させることができる、本発明の一般的な性質を十分に明らかにするであろう。それ故、このような適応及び変更は、本明細書に提示される教示及びガイダンスに基づいて、開示される実施形態の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書の語法または用語は、限定ではなく、説明のためのものであることを理解すべきであり、その結果、本明細書の用語または語法は、当業者が教示及びガイダンスに照らして解釈すべきである。
【0195】
本発明の広がり及び範囲は、上記実施形態のいずれによっても限定されるべきでなく、次の特許請求の範囲及びそれらの均等物にのみ従って定義されるべきである。本発明の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書で開示される本発明の実施から、当業者にとって明らかであろう。
【0196】
本明細書に記載される、全ての文献、記事、刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的及び個別的に示されるように、同程度に本明細書に参照により組み込まれる。
【0197】
本出願は、全体として参照により本明細書に組み込まれる、2014年3月24日に出願された米国仮特許出願第61/969,801号に対する優先権を主張する。
(配列表)
【0198】
【表11-1】

【表11-2】

【表11-3】

【表11-4】

【表11-5】

【表11-6】
【0199】
【表12】
【0200】
【表13】
【0201】
【表14】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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