(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】スイッチングノイズを軽減する制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/308 20210101AFI20220418BHJP
A61B 5/305 20210101ALI20220418BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20220418BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20220418BHJP
【FI】
A61B5/308
A61B5/305
H03M1/12 A
A61B5/367
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017217966
(22)【出願日】2017-11-13
【審査請求日】2020-10-08
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・エフラス
(72)【発明者】
【氏名】オレグ・クディッシュ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-306435(JP,A)
【文献】特開2000-059217(JP,A)
【文献】特開2012-023732(JP,A)
【文献】特表2016-521164(JP,A)
【文献】特開2007-300469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0008062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/398
H03M 1/00-1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を入力するウィルソン結合電極が差動増幅器の第1の入力に接続され、複数のアナログ生体電気信号に対応するチャンネルの何れかが選択的に前記差動増幅器の第2の入力に接続可能に構成され、前記差動増幅器の出力に基づく信号のアナログ・デジタル変換器への入力をスイッチングする2極双投スイッチを備える装置によって実行される制御方法であって、
前記複数のアナログ生体電気信号を対応の
前記チャンネルで受信するステップと、
前記生体電気信号を対応の選択イベントで多重化するステップであって、前記選択イベントが、基準電圧と第1の接続を確立することと、その後に前記第1の接続を切断し、前記生体電気信号の1つと第2の接続を確立することと、を含む、ステップと、
前記多重化された生体電気信号を
前記アナログ・デジタル変換器に出力するステップと、を含み、
前記
チャンネルの1つを前記差動増幅器の第2の入力に接続することと、前記差動増幅器の第1及び第2の出力を
前記2極双投スイッチに連係することと、
を含む、ステップと、を更に含む、
制御方法。
【請求項2】
第1の接続を確立すること及び第2の接続を確立することは、前記2極双投スイッチを第1の位置及び第2の位置にそれぞれ配置することによって達成される、請求項1に記載の
制御方法。
【請求項3】
前記差動増幅器と前記2極双投スイッチとの間にバッファを介在させることを更に含む、請求項1に記載の
制御方法。
【請求項4】
装置であって、
細長い遠位部分を有するカテーテルと、
生体電気信号を読み取るための前記遠位部分上の複数の電極と、
前記電極のそれぞれに接続される複数の入力を有し、かつ、出力を有するマルチプレクサーと、
基準信号に接続される第1の入力端子と、前記マルチプレクサーの前記出力に連係される第2の入力端子と、出力端子と、を有するスイッチと、
前記スイッチ及び前記マルチプレクサーに連係され、かつ、前記スイッチの前記第1の入力端子を介して前記スイッチの前記出力端子と前記基準信号との間に第1の接続を確立するように、その後、前記第1の接続を切断するように、そして前記スイッチの前記第2の入力端子を介して前記スイッチの前記出力端子と前記マルチプレクサーの前記出力との間に第2の接続を確立するように動作する制御回路と、を備え、
第1及び第2の入力を有し、かつ、前記スイッチの前記第1及び第2の入力端子にそれぞれ接続される第1及び第2の出力を有する差動増幅器を前記制御回路が備え、前記差動増幅器の前記第1の入力がウィルソン結合電極に接続され、前記差動増幅器の前記第2の入力が前記生体電気信号の1つに連係されている、装置。
【請求項5】
前記生体電気信号はアナログ信号であり、前記スイッチの前記出力端子に接続され、かつ、プロセッサに連係されるアナログ・デジタル変換器を更に備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチは2極双投スイッチである、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記ウィルソン結合電極は動的オフセット電圧に接続されている、請求項4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
著作権情報
本特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であっても全ての著作権を保有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生体電流の測定に関する。より詳細には、本発明は、複数のチャンネルを使用して心臓からの生体電気信号を記録するためのシステムに関する。
【0003】
関連技術の説明
本明細書で使用される特定の頭字語及び略語の意味を表1に示す。
【0004】
【0005】
Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能なCARTO(登録商標)3システムなど、典型的なECGシステムは、複数のアナログECG信号を同時に受信する。それぞれの信号を別個のアナログ・デジタル変換器(A/D)でデジタル化するのではなく、信号はマルチプレクサーを経由して単一のアナログ・デジタル変換器に転送され得る。次いで、単一のアナログ・デジタル変換器の出力は、多重分離されて、分離したデジタル化信号を回復する。
【0006】
マルチプレクサーは、分離した信号を処理するものとして周知である。例えば、Baumgartnerらに対する米国特許第5,337,230号は、生理学的な信号計装用のフロントエンドを構成する特徴部を備える、アナログとデジタルが混在した集積回路を提案している。一実施形態では、5つの16ビットシフトレジスタはそれぞれ、各サンプル中にクロックアウトされた16ビットをデジタルマルチプレクサーに供給する。
【0007】
別の実施例では、Gauglitzに対する米国特許第5,231,990号は、複数の入力及び出力を有する生理学的モニタリング用の特定用途向け集積回路(ASIC)を記載しており、複数のASICを連結させて、監視するチャンネルの数を拡張することができる。各ASICは、患者に連結され得る複数の入力と、他のASICからの信号を受け付けるアナログ拡張入力と、を有する。ASICは、アナログマルチプレクサーと、外部のアナログ・デジタル変換器とインターフェイスをとるサンプル/ホールド回路と、を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、到来ECG信号を多重化することは、マルチプレクサーからの信号出力にスイッチングノイズをもたらす。いくつかの既存のシステムは、アナログチャンネルを微分することによって及び増幅の各段階において同相フィードバックを用いることによって、この問題を軽減しようと試みている。別の方法では、米国特許出願公開第2015/0164354号は、単一の金属電極に誘発されるアーチファクトを低減することを企図した電極構成を記載している。電極は、刺激段階中は分離され、測定段階中は接続されることができる、2つ以上の更に小さい電極から構成される。電極はセグメント化されてもよく、各セグメントには個別の電流源が提供され、セグメント内の電流を一致させ、それによりアーチファクトを低減する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示される本発明の実施形態によれば、ASICは、生理学的モニタリングシステムの用途のために、複数チャンネルからのアナログECG信号を多重化する。多重化された信号に関連するスイッチングノイズを軽減するために、電子DPDT(2極双投)スイッチがマルチプレクサーに組み込まれる。マルチプレクサーはECG信号間を切り替える。各スイッチングイベントにおいて、DPDTスイッチは、最初に基準信号に接続し、次いで到来ECG信号に接続する。
【0010】
本明細書の実施形態により方法が提供され、同方法は、複数のアナログ生体電気信号を対応のチャンネルで受信し、生体電気信号を対応の選択イベントで多重化することによって実行される。選択イベントは、基準電圧と第1の接続を確立すること、その後に第1の接続を切断すること、及び生体電気信号の1つと第2の接続を確立することを含む。方法は、多重化された生体電気信号をアナログ・デジタル変換器に出力することによって更に実行される。
【0011】
方法の一態様によれば、第1の接続を確立すること及び第2の接続を確立することは、2極双投スイッチを第1の位置及び第2の位置にそれぞれ設定することによって達成される。
【0012】
方法の更なる態様は、ウィルソン結合電極を差動増幅器の第1の入力に接続すること、生体電気信号の1つを差動増幅器の第2の入力に接続すること、並びに差動増幅器の第1及び第2の出力を2極双投スイッチに連係することを含む。
【0013】
方法の更に別の態様は、差動増幅器と2極双投スイッチとの間にバッファを介在させることを含む。
【0014】
本発明の実施形態によれば、細長い遠位部分と、生体電気信号を読み取るための遠位部分上の複数の電極と、を有するカテーテルを含む装置が更に提供される。装置は、電極のそれぞれ1つに接続される入力を有するマルチプレクサーを含む。スイッチは、基準信号に接続される第1の入力端子と、マルチプレクサーの出力に連係される第2の入力端子と、を有する。スイッチ及びマルチプレクサーに連係される制御回路は、スイッチの出力端子とスイッチの第1の入力端子を介した基準信号との間に第1の接続を確立するように、その後、第1の接続を切断するように、そしてスイッチの出力端子とスイッチの第2の入力端子を介したマルチプレクサーの出力との間に第2の接続を確立するように動作する。
【0015】
装置の別の態様では、生体電気信号はアナログ信号であり、アナログ・デジタル変換器は、スイッチの出力端子に接続され、プロセッサに連係される。
【0016】
装置の追加の態様によれば、スイッチは2極双投スイッチである。
【0017】
装置の別の態様によれば、制御回路は、第1及び第2の入力がスイッチの第1及び第2の入力端子にそれぞれ接続される差動増幅器を含む。差動増幅器の第1の入力はウィルソン結合電極に接続され、差動増幅器の第2の入力は生体電気信号の1つに連係される。
【0018】
装置の一態様によれば、ウィルソン結合電極は動的オフセット電圧に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明をより深く理解するため、本発明の詳細な説明を実例として参照するが、この説明は以下の図面と併せて読むべきものである。図中、同様の要素には同様の参照数字を付してある。
【
図1】開示される本発明の一実施形態により構成され動作する、生存被験体の心臓に処置を行うための例示的なシステムの描図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、多チャンネルECG信号を処理するための多重化構成の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図2に示すチャンネルの1つの電気配線略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、複数のチャンネルを図示した電気回路の一部の電気配線略図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、電気回路の電気配線略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、本発明の様々な原理が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらの詳細の全てが本発明を実施する上で必ずしも必要であるとは限らない点は当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0021】
参照により本明細書に援用される文書は本出願の一体部分と見なされるべきであり、いずれかの用語が、それらの援用された文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0022】
用語「連係する(link)」、「連係する(links)」、「結合する(couple)」、「結合する(couples)」は、間接的又は直接的接続を意味することが意図されている。したがって、第1の装置が第2の装置に結合する場合、この接続は直接の接続を経てもよく、若しくは他の装置及び接続を介して間接の接続を経てもよい。
【0023】
概論
ここで、図面を参照し、開示される本発明の一実施形態により構成され動作する、生存被験者の心臓12に対して処置を行うための例示的なシステム10の描図である
図1を最初に参照する。このシステムは、患者の脈管系を通って心臓12の腔又は脈管構造内に操作者16によって経皮挿入されるカテーテル14を備えている。通常は医師である操作者16が、カテーテルの遠位先端18を、心臓壁、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電気的活動マップが作成され得る。本発明の原理は、システム10などのシステムに制限されるものではなく、生体電気信号が複数チャンネル経由で受信される他のシステムに適用されてもよいことを理解されたい。
【0024】
システム10は、以下に説明する機能を実行するための好適なソフトウェアでプログラムされた汎用又は組込み型コンピュータプロセッサを備えることができる。したがって、システム10の、本明細書の他の図に示されている部分は、いくつかの別個の機能ブロックを含むものとして示されているが、これらのブロックは必ずしも別個の物体ではなく、むしろ例えば、プロセッサが利用できるメモリに格納されている異なる計算タスク又はデータオブジェクトを表わし得る。これらのタスクは、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサで動作するソフトウェアで実行することができる。ソフトウェアは、1つ又は複数のプロセッサに、CD-ROM又は不揮発性メモリのような有形の非一時的媒体で提供され得る。あるいは、又は加えて、システム10は、デジタル信号プロセッサ又は実配線ロジックを備えてもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0025】
例えば電気的活動マップの評価によって異常と判定された区域は、熱エネルギーの印加によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端18での1つ又は2つ以上の電極に、高周波電流をカテーテル内のワイヤを介して流すことによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が恒久的に失われる点(通常、約50℃)まで加熱する。成功裏に行われた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心室に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0026】
カテーテル14は、通常、アブレーションを行うために、操作者16がカテーテルの遠位端の操舵、位置決め、及び配向を所望の通りに行うことを可能にする、好適な制御部を有するハンドル20を備えている。操作者16を補助するために、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置された、プロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、後述のようないくつかの処理機能を果たすことができる。
【0027】
カテーテル14は、多電極カテーテルであり、これは、バルーン右側部分に示されているようなバスケットカテーテル、又は同左側部分に示されているようなスプラインカテーテルであり得る。いずれの場合にも、複数の電極32が存在し、これらは、感知電極として使用され、バスケット又はスプライン上の既知の配置、及びそれらの既知の相互関係を有する。このため、カテーテルが心臓内に配置されると、例えば、電流位置マップを構築することにより、心臓内の電極32の各々の位置が分かる。電流位置マップを生成するための1つの方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された、Bar-Talらに対する米国特許第8,478,383号に記載されている。
【0028】
電気信号は、カテーテル14の遠位先端18に又は遠位先端18近くに配置された電極32からケーブル34を介して心臓12へと、かつ心臓12からコンソール24へと伝達され得る。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を介して、心臓12へと伝達され得る。
【0029】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、体表面電極30、並びにカテーテル14の位置座標及び配向座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってもよい。参照により本明細書に援用される、Govariらに付与された米国特許第7,536,218号において教示されているように、電極32及び体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定してもよい。温度センサ(図示せず)、通常、熱電対又はサーミスタが、カテーテル14の遠位先端18近くに搭載されてもよい。
【0030】
コンソール24には通常、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーなどの任意の既知のアブレーション技術を使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように適合され得る。そのような方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0031】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び配向を判定する磁気位置追跡配置を備える。位置決めサブシステムは、参照により本明細書に援用されている米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0032】
上述のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、これにより操作者16は、カテーテル14を観察し、その機能を調節することができる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は、通常、カテーテル14内の遠位に位置する上述の(図示しない)センサ及び複数の位置検知電極によって生成される信号を含むカテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び配向を計算し、かつ以下に更に詳細に記載される電極からの電気信号を分析するために使用される。
【0033】
簡略化のために図示されないが、通常、システム10は、他の要素を含む。例えば、システム10は、ECGモニタを含み得るが、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述の通り、システム10はまた、通常、被験者の身体の外側に取り付けられる外部から貼付された参照用パッチの上、又は心臓12内に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持されている、体内に置かれたカテーテルの上のいずれかにある、参照用位置センサも含む。システム10は、MRIユニットなどのような外部の画像診断法からの画像データを受信することができ、プロセッサ22によって取リ込み又は呼び出し、画像を生成及び表示することができる画像プロセッサを含む。
【0034】
システム10の典型的な応用例では、心臓の心室が、多電極カテーテルによって従来どおりにカテーテル処置される。バスケットカテーテル又はマルチスプラインカテーテルが適切である。そのようなカテーテルでは、各電極は、場合によってバスケット又はスプライン上の既知の位置を有する。カテーテルが適所に置かれると、必要に応じて、前述のようなカテーテル内の位置センサ(例えば、磁気位置センサ)又はインピーダンス測定を使用して電流位置マップが構成され得る。心臓内の各電極の位置は、電流位置マップから分かるか、イメージング技術を使用して決定され得る。システム10と共に使用される典型的なマルチスプラインカテーテルは、その遠位端に60個の電極を有し、その電極が、心臓内の60箇所から60組のECG信号を取得する。これらの電極は、本明細書では8つのスプラインと仮定されるスプライン上に分散される。信号は、60個の電圧対時間グラフとして表され得る。他の好適なカテーテルは、相対的に多い又は少ない電極を有し得る。
【0035】
ここで
図2を参照すると、同図は、本発明の一実施形態による、多チャンネルECG信号を処理するための多重化構成の概略図である。典型的には
図1に示されるものなどの多チャンネルカテーテルの対応の電極から来るアナログECG信号を複数のチャンネル39に含む、端子37は、マルチプレクサー41(MUX)に入力され、このマルチプレクサーはチャンネル39のそれぞれを順に選択する。マルチプレクサー41には2極双投(DPDT)スイッチ43が含まれており、このスイッチは、最初に基準信号45に接続し、次いで、選択されたチャンネル39に接続する。出力47は、アナログ・デジタル変換器49に送信される。
【0036】
ここで
図3を参照すると、同図は、本発明の一実施形態によるチャンネル39(
図2)の1つの電気配線略図である。ECG入力51及び、典型的にはウィルソン結合電極から取得され、動的オフセット55によって修正される、基準入力53は、差動増幅器57に送信され、そこからローパスフィルタ59及びバッファ61を通過する。あるいは、基準入力53は、全ての電極の平均にすることもできる。バッファ出力は、DPDTスイッチ63に提供される。閉鎖位置では、DPDTスイッチ63は、バッファ61の出力をアナログ・デジタル変換器に伝達する。開放位置では、バッファの出力は基準電圧に維持される。
【0037】
ここで
図4を参照すると、同図は、本発明の一実施形態による、複数のチャンネルを図示したASICの一部の電気配線略図である。IN0~IN15のラベルが付けられている16個のチャンネルは、セレクタ73、75を介してスイッチング回路69、71に接続する2つのバンク65、67に配列されている。回路69、71は、
図3に対して記載した回路と同様のものであり、ここでは、DPDTスイッチ72、74が、DPDTスイッチ63(
図3)の機能を有する。各チャンネルは5.88μ秒間選択され、即ち、1.47μ秒(1/4デューティサイクル)間オンに、4.41μ秒間オフに切り替えられ、典型的には1チャンネル当たり20,000個のサンプルが取得される。したがって、アナログ・デジタル変換器は、640,000サンプル/秒でサンプリングする必要がある。(アナログ・デジタル変換器は回路69、74の両方に機能を提供することに注意されたい)。整定時間は、1.47μ秒未満でなければならない。
【0038】
ここで
図5を参照すると、同図は、本発明の一実施形態によるASIC77の電気配線略図である。2つのモジュール79、81のそれぞれは、入力として心臓カテーテル(図示せず)から、それぞれCh0~Ch15、及びCH16~Ch32と表示されている、16個のチャンネルを受信する。5V基準83は、モジュール79、81のそれぞれに接続される。モジュール79、81の選択されたチャンネルは、線路85、87上でアナログ・デジタル変換器89に出力される。モジュール79、81は、線路85、87上の出力を切り替える論理回路を含む。基準83と、線路85、87上の選択されたチャンネルからの信号との両方が、アナログ・デジタル変換器89に対して切り替えられる。
図3及び
図4の説明で上述したように、各スイッチングイベントにおいて、ASIC77に含まれるDPDTスイッチ(図示せず)は、最初に基準信号に接続し、次いで到来ECG信号に接続して、電荷注入を防ぎ、短時間の整定時間を可能にする。
【0039】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組合せ及び部分的組合せ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術にはない上述の特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
複数のアナログ生体電気信号を対応のチャンネルで受信するステップと、
前記生体電気信号を対応の選択イベントで多重化するステップであって、前記選択イベントが、基準電圧と第1の接続を確立することと、その後に前記第1の接続を切断し、前記生体電気信号の1つと第2の接続を確立することと、を含む、ステップと、
前記多重化された生体電気信号をアナログ・デジタル変換器に出力するステップと、を含む、方法。
(2) 第1の接続を確立すること及び第2の接続を確立することは、2極双投スイッチを第1の位置及び第2の位置にそれぞれ配置することによって達成される、実施態様1に記載の方法。
(3) ウィルソン結合電極を差動増幅器の第1の入力に接続することと、前記生体電気信号の1つを前記差動増幅器の第2の入力に接続することと、前記差動増幅器の第1及び第2の出力を前記2極双投スイッチに連係することと、を更に含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記差動増幅器と前記2極双投スイッチとの間にバッファを介在させることを更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 装置であって、
細長い遠位部分を有するカテーテルと、
生体電気信号を読み取るための前記遠位部分上の複数の電極と、
前記電極のそれぞれに接続される複数の入力を有し、かつ、出力を有するマルチプレクサーと、
基準信号に接続される第1の入力端子と、前記マルチプレクサーの前記出力に連係される第2の入力端子と、出力端子と、を有するスイッチと、
前記スイッチ及び前記マルチプレクサーに連係され、かつ、前記スイッチの前記第1の入力端子を介して前記スイッチの前記出力端子と前記基準信号との間に第1の接続を確立するように、その後、前記第1の接続を切断するように、そして前記スイッチの前記第2の入力端子を介して前記スイッチの前記出力端子と前記マルチプレクサーの前記出力との間に第2の接続を確立するように動作する制御回路と、を備える、装置。
【0041】
(6) 前記生体電気信号はアナログ信号であり、前記スイッチの前記出力端子に接続され、かつ、プロセッサに連係されるアナログ・デジタル変換器を更に備える、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記スイッチは2極双投スイッチである、実施態様5に記載の装置。
(8) 第1及び第2の入力を有し、かつ、前記スイッチの前記第1及び第2の入力端子にそれぞれ接続される第1及び第2の出力を有する差動増幅器を前記制御回路が備え、前記差動増幅器の前記第1の入力がウィルソン結合電極に接続され、前記差動増幅器の前記第2の入力が前記生体電気信号の1つに連係されている、実施態様5に記載の装置。
(9) 前記ウィルソン結合電極は動的オフセット電圧に接続されている、実施態様8に記載の装置。