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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】流入遮断装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/44 20060101AFI20220418BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20220418BHJP
   E03F 7/02 20060101ALI20220418BHJP
   E03F 5/02 20060101ALN20220418BHJP
   E03F 5/06 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
E02B7/44
E03F5/10 A
E03F7/02
E03F5/02
E03F5/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017245371
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019112790
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 正美
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄季
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴紀
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3136061(JP,U)
【文献】特開2013-253438(JP,A)
【文献】特開2016-065447(JP,A)
【文献】米国特許第04503881(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/44
E03F 5/10
E03F 7/02
E03F 5/02
E03F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外水域の水位上昇時に、流水路への流入を遮断する流入遮断装置であって、
前記流水路の途中に設けられた集水枡と、
前記集水枡に回動可能に取り付けられた蓋部材と、
前記蓋部材の上方に設けられ、前記集水枡内の水位の変動にともなって変位する浮体と、
前記蓋部材と前記浮体とを連結する連結部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記浮体の変位に連動して、保護対象エリアに接続された前記流水路への流入を遮断する遮断位置と、前記保護対象エリアに接続された前記流水路を開放する開放位置と、の間を移動可能であるとともに、
前記集水枡内に配置された支持部材であって、前記集水枡に接続された前記流水路の開口より上方の位置で、前記開放位置にある前記浮体を支持する支持部材を備える
ことを特徴とする、流入遮断装置。
【請求項2】
前記蓋部材は、
蓋本体と、
前記蓋本体より幅が狭く、前記蓋本体から少なくとも一部が張り出したアーム部と、を備え、
前記アーム部に前記連結部材が接続される
ことを特徴とする、請求項1に記載の流入遮断装置。
【請求項3】
外水域の水位上昇時に、流水路への流入を遮断する流入遮断装置であって、
前記流水路の途中に設けられた集水枡と、
前記集水枡に回動可能に取り付けられた蓋部材と、
前記蓋部材の上方に設けられ、前記集水枡内の水位の変動にともなって変位する浮体と、
前記蓋部材と前記浮体とを連結する連結部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記浮体の変位に連動して、保護対象エリアに接続された前記流水路への流入を遮断する遮断位置と、前記保護対象エリアに接続された前記流水路を開放する開放位置と、の間を移動可能であるとともに、
前記蓋部材は、
蓋本体と、
前記蓋本体より幅が狭く、前記蓋本体から少なくとも一部が張り出したアーム部と、を備え、
前記アーム部に前記連結部材が接続される
ことを特徴とする、流入遮断装置。
【請求項4】
前記アーム部の長さは、調整可能である
ことを特徴とする、請求項2または3に記載の流入遮断装置。
【請求項5】
前記連結部材の長さは、調整可能である
ことを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の流入遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海等の外水域に接続される流水路に設置され、外水域の水位上昇時に、流水路への流入を遮断する流入遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流水路には、津波や高潮などによる流入を防止するために可動式のゲートが取り付けられている。このようなゲートとして、無動力で開閉できるものが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、集水枡内に設けられたフラップゲートが開示されており、排水する際には、水の流れを受けてゲートを開くようにして揺動し、河川や海等の水面が上昇して水が逆流しようとした際には、水の流れを受けてゲートを閉じるよう揺動する。
【0004】
特許文献2には、取水槽内に設けられた、フロート付きウエイトに接続された開閉壁が開示されており、取水槽内部の海水の水位上昇に基づく浮力の作用により、開閉壁が上下方向に移動する。そして、海面水位の上昇時には、海水の流入路を遮断し、水位が正常に戻れば通常状態に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-204601号公報
【文献】特開2016-118026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のフラップゲートは、河川や海等の水面が上昇して、水が排水路の排水方向に流入した場合、フラップゲートを無動力で閉じることができない、という問題がある。また、特許文献2に記載の開閉壁は、開閉壁を上下に移動させるために、開閉壁を完全に持ち上げる必要があり、そのための大規模な装置が必要となる、という問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、外水域の水位上昇時に、流水路の流水方向および流水方向とは反対方向の流入を無動力で遮断可能なコンパクトな流入遮断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の流入遮断装置は、外水域の水位上昇時に、流水路への流入を遮断する流入遮断装置であって、前記流水路の途中に設けられた集水枡と、前記集水枡に回動可能に取り付けられた蓋部材と、前記蓋部材の上方に設けられ、前記集水枡内の水位の変動にともなって変位する浮体と、前記蓋部材と前記浮体とを連結する連結部材と、を備え、前記蓋部材は、前記浮体の変位に連動して、保護対象エリアに接続された前記流水路への流入を遮断する遮断位置と、前記保護対象エリアに接続された前記流水路を開放する開放位置と、の間を移動可能であることを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明の流入遮断装置は、前記集水枡内に配置された支持部材であって、前記集水枡に接続された前記流水路の開口より上方の位置で、前記開放位置にある前記浮体を支持する支持部材を備えても良い。
【0010】
また、本発明の流入遮断装置では、前記蓋部材は、蓋本体と、前記蓋本体より幅が狭く、前記蓋本体から少なくとも一部が張り出したアーム部と、を備え、前記アーム部に前記連結部材が接続されても良い。
【0011】
また、本発明の流入遮断装置では、前記アーム部の長さは、調整可能であっても良い。さらに、本発明の流入遮断装置では、前記連結部材の長さは、調整可能であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の流入遮断装置では、外水域の水位が高くない通常時では、蓋部材が開放位置に位置し、流水が行われる。外水域の水位が上昇すると、集水枡内の水位が上昇し、蓋部材は、浮体の浮力の作用により遮断位置に移動し、流水路から保護対象エリアへの流入が防がれる。そのため、外水域の水位上昇時に、流水路の流水方向および流水方向とは反対方向の流入を無動力で遮断することができる。また、蓋部材が、集水枡に回転可能に支持されることで、遮断位置と開放位置との間で蓋部材を移動させて開閉する開閉荷重を小さくすることができる。そのため、蓋部材を移動させるための浮力を作用させる浮体を小規模にし、簡易な構成のコンパクトな装置とすることができる。
【0013】
また、本発明の流入遮断装置では、前記集水枡内に配置された支持部材であって、前記集水枡に接続された前記流水路の開口より上方の位置で、前記開放位置にある前記浮体を支持する支持部材を備えることで、外水域の水位が高くない通常時に、浮体を集水枡内の水面より上方に配置することができ、通常時の流水を阻害しないようにすることができる。
【0014】
また、本発明の流入遮断装置では、前記蓋部材は、蓋本体と、前記蓋本体より幅が狭く、前記蓋本体から少なくとも一部が張り出したアーム部と、を備え、前記アーム部に前記連結部材が接続されることで、蓋部材が、遮断位置と開放位置との間を移動する際に、蓋部材に加わる水の抵抗を低減することができ、蓋部材に作用させる浮体の浮力を低減し、浮体の規模の縮小化を図れる。
【0015】
また、本発明の流入遮断装置では、前記アーム部の長さは、調整可能とすることで、連結部材の取付位置を、蓋部材の回転軸から遠ざけた位置にすることができ、力のモーメントを大きくして、蓋部材を移動させるための浮力を作用させる浮体の規模を小さくし、コンパクトな装置とすることができる。また、本発明の流入遮断装置では、前記連結部材の長さは、調整可能とすることで、流入遮断装置が稼働する水位を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の流入遮断装置が設けられる敷地について説明する説明図である。
図2】実施例1の流入遮断装置の構成を示す平面図である。
図3】実施例1の流入遮断装置の構成を示す断面図である。
図4】実施例1の蓋部材の構成を示す構成図である。
図5】実施例1の排水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図である。
図6】実施例1の取水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図である。
図7】実施例1の排水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。
図8】実施例1の取水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。
図9】実施例2の流入遮断装置の構成を示す断面図であるとともに、排水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図でもある。
図10】実施例2の蓋部材の構成を示す構成図である。
図11】実施例2の排水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。
図12】実施例3の流入遮断装置の構成を示す断面図であるとともに、排水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図でもある。
図13】実施例3の排水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。
図14】別の実施例の流入遮断装置の構成を説明する説明図である。
図15】別の実施例の蓋部材を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示による流入遮断装置を実現する実施形態を、図面に示す実施例1~実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、構成を説明する。
[流入遮断装置が適用される敷地]
図1は、実施例1の流入遮断装置が設けられる敷地について説明する説明図である。以下、図1に基づいて、実施例1の流入遮断装置が適用される敷地について説明する。
【0019】
実施例1の流入遮断装置30は、例えば、外水域としての海に挟まれた半島に設けられる。一方の岸には、堤防としての第1防潮堤3が設けられる。他方の岸には、堤防としての第2防潮堤4が設けられる。陸地には、保護対象エリアの第1建屋5と第2建屋6と、が建てられている。第1建屋5と第2建屋6は、工場のほか、発電所や店舗、一般住宅などでもよい。
【0020】
第1建屋5には、第1建屋5の排水を流す流水路としての第1建屋支管15が接続される。第1建屋支管15は、流水路としての排水本管10に接続される。第2建屋6には、海からの海水を取水する流水路としての第2建屋支管16が接続される。第2建屋支管16は、流水路としての取水本管10Aに接続される。
【0021】
排水本管10は、第1防潮堤3の下方を横断して配設される。第1建屋5からの排水は、排水本管10により、第1防潮堤3の下方を通って、海に放流される。取水本管10Aは、第2防潮堤4の下方を横断して配設される。海からの海水は、取水本管10Aから取水され、第2防潮堤4の下方を通って、第2建屋6に供給される。
【0022】
実施例1における流入遮断装置30は、排水本管10と取水本管10Aとに設けられる。排水側の流入遮断装置30は、第1建屋5と、第1防潮堤3との間に設けられる。取水側の流入遮断装置30は、第2建屋6と、第2防潮堤4との間に設けられる。
【0023】
[流入遮断装置の構成]
図2は、実施例1の流入遮断装置の構成を示す平面図である。図3は、実施例1の流入遮断装置の構成を示す断面図である。図4は、実施例1の蓋部材の構成を示す構成図である。以下、図2図4に基づいて、実施例1の流入遮断装置の構成を説明する。なお、排水側の流入遮断装置30と、取水側の流入遮断装置30とは、配置される向きが異なるだけで、同様の構成であるため、排水側の流入遮断装置30について説明し、取水側の流入遮断装置30についての説明を適宜省略する。
【0024】
排水側の流入遮断装置30は、図2および図3に示すように、有底箱状の集水枡31と、集水枡31に回動可能に取り付けられた蓋部材40と、蓋部材40の上方に設けられ、集水枡31内の水位の変動にともなって変位する浮体50と、浮体50を支持する支持部材55と、蓋部材40と浮体50とを連結する連結部材60と、を備える。
【0025】
集水枡31は、コンクリート製やポリ塩化ビニル製で、有底箱状に形成され、第1底部32と、第1底部32の縁から起立する側壁33と、集水枡31の内側の空間を2つに仕切る隔壁34と、隔壁34の下端から側壁33に向けて底を形成する第2底部35と、を備える。
【0026】
集水枡31の側壁33には、排水本管10が接続される。ここで、排水本管10の排水方向で、集水枡31の上流側の排水本管10を上流側排水本管11とし、排水本管10の排水方向で、集水枡31の下流側の排水本管10を下流側排水本管12とする。
【0027】
集水枡31の側壁33には、上流側排水本管11が接続する第1開口33aと、下流側排水本管12が接続する第2開口33bと、が設けられる。第1開口33aと第2開口33bとは、略同じ高さに設置される。なお、第1開口33aと第2開口33bとは、違う高さに設置されても良い。第1開口33aの下方に、第2底部35が形成される。第2底部35には、第3開口35aが設けられる。第3開口35aは、第2底部35の略中央に、矩形状に形成される。
【0028】
隔壁34は、集水枡31の内側の空間を第1領域S1と、第2領域S2との領域を形成するように仕切る。第1領域S1は、隔壁34と、側壁33と、第2底部35とで囲まれた領域である。第2領域S2は、隔壁34と、第2底部35と、側壁33と、第1底部32とで囲まれた領域である。
【0029】
第1領域S1の上方の第1領域開口34aは、水密性の第1蓋体65で塞がれる。第1蓋体65は、例えば水密性のマンホールとすることができる。なお、第1蓋体65を設けずに、隔壁34の上端と側壁33の上端を接続する天部を設けても良い。第2領域S2の上方の第2領域開口34bは、開口を有する第2蓋体66で塞がれる。第2蓋体66は、例えばグレーチングとすることができる。
【0030】
蓋部材40は、図4に示すように、蓋本体41と、蓋本体41の基端側に設けられたリンク部42と、蓋本体41の先端側に延在して設けられたアーム部43と、リンク部42に取り付けられたヒンジ機構45と、を備える。
【0031】
蓋本体41は、例えばステンレス鋼などのスチール製で、第3開口35aより大きな矩形状に形成される。蓋本体41の表面には、角筒状に形成されたリブ41aを有する。リブ41aの外径は、第3開口35aより小さく形成され、リブ41aが第3開口35aに嵌るようになっている。なお、リブ41aの周縁には、止水ゴムが貼着されても良い。
【0032】
蓋本体41は、リンク部42を介して、ヒンジ機構45に取り付けられる。ヒンジ機構45は、リンク部42に溶接等で固定された円柱状の支軸46と、支軸46の両端部で拡径する拡径部47と、支軸46を支持する支軸支持部48と、支軸支持部48を保持する保持プレート49と、で構成される。
【0033】
保持プレート49は、第2底部35の下方の側壁33に、ボルトなどの締結具39によって取り付けられる。蓋部材40は、ヒンジ機構45を介して、回動可能に支持され、第3開口35aを塞ぐことができるようになっている。
【0034】
アーム部43は、例えばステンレス鋼などのスチール製で、蓋本体41より幅が狭い矩形の板状で形成される。アーム部43は、一端側が蓋本体41に固定され、他端側が蓋本体41から張り出される。アーム部43には、ボルトにより蓋本体41に固定するための孔43aが形成される。孔43aは、複数形成され、蓋本体41への取付位置を調整可能とする。すなわち、アーム部43の長さは、調整可能となる。アーム部43の先端には、フック44が設けられる。フック44は、半円環状に形成される。フック44には、連結部材60が接続される。
【0035】
浮体50は、例えば、内部を空洞化して浮力を確保した成形部材を用いることができる。なお、浮体50は、外部の成形部品が破損した場合でも、浮力を有するように、成形部材の内部に発泡スチロールを配置してもよい。また、浮体50は、発泡スチロールなどの発泡部材、水に浮遊する様々な部材を用いることもできる。
【0036】
浮体50は、集水枡31内の水位が低下した状態では、支持部材55によって支持される。図2,3に示すように、下流側排水本管12が接続する第2開口33bの上方の側壁33に1つの支持部材55が取り付けられる。この支持部材55と対向する隔壁34に、もう1つの支持部材55が取り付けられる。支持部材55は、断面がL字状のL字鋼(アングル部材、山形鋼とも称される)により形成される。支持部材55は、ボルトによって、側壁33と隔壁34とに取り付けられる。支持部材55の取付位置は、調整可能とする。支持部材55によって、浮体50は、下流側排水本管12が接続する第2開口33bより上方の位置で、支持される。
【0037】
浮体50には、円環状のフック(図示せず)が接続される。浮体50のフックと、蓋部材40のフック44とが、連結部材60によって連結される。連結部材60は、図4に示すように、例えば環状の部品を繋げて線状にした鎖などとすることができる。連結部材60の端部には、開閉可能な環状のカギ部60aが設けられる。カギ部60aは、各鎖素子60bに取付可能となっている。そして、カギ部60aをアーム部43のフック44の開口に通し、何れかの鎖素子60bに取り付けることで、連結部材60が蓋部材40に連結される。すなわち、連結部材60の長さは、調整可能となる。なお、連結部材60と浮体50との連結も、これと同様の構成とすることができる。
【0038】
集水枡31の側壁33には、図2,3に示すように、タラップ61,62が設けられる。第1領域S1の側壁33に、タラップ61が設けられる。第2領域S2の側壁33に、タラップ62が設けられる。作業者は、タラップ61によって、集水枡31の第1領域S1を点検したり補修したりすることができる。また、作業者は、タラップ62によって、集水枡31の第2領域S2を点検したり補修したりすることができる。
【0039】
取水側の流入遮断装置30の集水枡31の側壁33には、取水本管10Aが接続される。ここで、取水本管10Aの取水方向で、集水枡31の上流側の取水本管10Aを上流側取水本管11Aとし、取水本管10Aの取水方向で、集水枡31の下流側の取水本管10Aを下流側取水本管12Aとする(図6参照)。
【0040】
次に、作用を説明する。
図5は、実施例1の排水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図である。図6は、実施例1の取水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図である。図7は、実施例1の排水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。図8は、実施例1の取水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。以下、図5図8に基づいて、実施例1の流入遮断装置の作用を説明する。
【0041】
(平常時の排水側の流入遮断装置)
第1防潮堤3の外側の外水域の水位が高くない平常時の排水側の流入遮断装置30の作用を説明する。図5に示すように、集水枡31内の水位は、水位WL1となる。浮体50は、水位WL1より上方の位置で、支持部材55に支持される。そのため、浮体50は、水没せず、蓋部材40には、浮体50の浮力が作用しない。
【0042】
蓋部材40は、水位WL1より下方に位置し、水没するが、蓋部材40の重量は、蓋部材40に作用する浮力より大きい。そのため、蓋部材40は、蓋部材40の先端が集水枡31の第1底部32に当接し、第3開口35aを開放する開放位置にある。
【0043】
第1建屋5からの排水は、上流側排水本管11を通って、集水枡31の第1領域S1に流れ込む。第1領域S1に流れ込んだ排水は、第3開口35aを通って、第2領域S2に流れ込む。第2領域S2に流れ込んだ排水は、下流側排水本管12に流れ込み、海へ放流される。
【0044】
(平常時の取水側の流入遮断装置)
平常時の取水側の流入遮断装置30の作用を説明する。図6に示すように、集水枡31内の水位は、水位WL1となる。浮体50は、水位WL1より上方の位置で、支持部材55に支持される。そのため、浮体50は、水没せず、蓋部材40には、浮体50の浮力が作用しない。
【0045】
蓋部材40は、水位WL1より下方に位置し、水没するが、蓋部材40の重量は、蓋部材40に作用する浮力より大きい。そのため、蓋部材40は、蓋部材40の先端が集水枡31の第1底部32に当接し、第3開口35aを開放する開放位置にある。
【0046】
第2防潮堤4の外水域の海水は、上流側取水本管11Aを通って、集水枡31の第2領域S2に流れ込む。第2領域S2に流れ込んだ海水は、第3開口35aを通って、第1領域S1に流れ込む。第1領域S1に流れ込んだ海水は、下流側取水本管12Aに流れ込み、給水ポンプ等により、第2建屋6に供給される。
【0047】
(異常時の排水側の流入遮断装置)
第1防潮堤3の外水域の水位が上昇する異常時の排水側の流入遮断装置30の作用を説明する。この場合、排水本管10の排水方向とは逆方向から、外水域からの津波や高潮が押し寄せる。
【0048】
図7に示すように、集水枡31内の水位は、水位WL1より高い水位WL2となる。浮体50は、集水枡31内の水位の上昇により、上昇する。浮体50が上昇すると、連結部材60を介して、蓋部材40の先端が上方に引っ張られる。蓋部材40の先端が上方に引っ張られると、蓋部材40は、ヒンジ機構45の支軸46を回転軸として、上方に旋回し、第3開口35aを塞ぐ遮断位置に移動する。蓋部材40が遮断位置に移動すると、蓋部材40には、浮体50による浮力の他に、水圧が作用する。そのため、第3開口35aは、蓋部材40によって、より確実に密閉される。
【0049】
海から下流側排水本管12に流れ込んだ海水は、第2領域S2に流れ込む。第2領域S2に流れ込んだ海水は、遮断位置にある蓋部材40によって、堰き止められる。すなわち、海から第2領域S2に流れ込んだ海水は、第1領域S1、上流側排水本管11および第1建屋支管15を通って、保護対象エリアである第1建屋5に流れ込まない。
【0050】
波が第2防潮堤4を超流した場合であっても、開口を有する第2蓋体66から第2領域S2に流れ込んだ海水は、遮断位置にある蓋部材40によって、堰き止められる。すなわち、第1防潮堤3を超流した海水は、第1領域S1、上流側排水本管11および第1建屋支管15を通って、第1建屋5に流れ込まない。
【0051】
津波や高潮が治まり、集水枡31内の水位が下降すると、浮体50は、下降する。平常時の水位WL1まで下がると、蓋部材40は、蓋部材40の先端が集水枡31の第1底部32に当接し、第3開口35aを開放する開放位置に移動する。
【0052】
(異常時の取水側の流入遮断装置)
第2防潮堤4の外水域の水位が上昇する異常時の取水側の流入遮断装置30の作用を説明する。この場合、取水本管10Aの取水方向と同じ方向から、外水域からの津波や高潮が押し寄せる。
【0053】
図8に示すように、集水枡31内の水位は、水位WL1より高い水位WL2となる。浮体50は、集水枡31内の水位の上昇により、上昇する。浮体50が上昇すると、連結部材60を介して、蓋部材40の先端が上方に引っ張られる。蓋部材40の先端が上方に引っ張られると、蓋部材40は、ヒンジ機構45の支軸46を回転軸として、上方に旋回し、第3開口35aを塞ぐ遮断位置に移動する。蓋部材40が遮断位置に移動すると、蓋部材40には、浮体50による浮力の他に、水圧が作用する。そのため、第3開口35aは、蓋部材40によって、より確実に密閉される。
【0054】
海から上流側取水本管11Aに流れ込んだ海水は、第2領域S2に流れ込む。第2領域S2に流れ込んだ海水は、遮断位置にある蓋部材40によって、堰き止められる。すなわち、海から第2領域S2に流れ込んだ海水は、第1領域S1、下流側取水本管12Aおよび第2建屋支管16を通って、保護対象エリアである第2建屋6に流れ込まない。
【0055】
波が第2防潮堤4を超流した場合であっても、開口を有する第2蓋体66から第2領域S2に流れ込んだ海水は、遮断位置にある蓋部材40によって、堰き止められる。すなわち、第2防潮堤4を超流した海水は、第1領域S1、下流側取水本管12Aおよび第2建屋支管16を通って、第2建屋6に流れ込まない。
【0056】
津波や高潮が治まり、集水枡31内の水位が下降すると、浮体50は、下降する。平常時の水位WL1まで下がると、蓋部材40は、蓋部材40の先端が集水枡31の第1底部32に当接し、第3開口35aを開放する開放位置に移動する。
【0057】
実施例1の流入遮断装置30では、流水路の途中に設けられた集水枡31と、集水枡31に回動可能に取り付けられた蓋部材40と、蓋部材40の上方に設けられ、集水枡31内の水位の変動にともなって変位する浮体50と、蓋部材40と浮体50とを連結する連結部材60と、を備える。この流入遮断装置30において、蓋部材40は、浮体50の変位に連動して、保護対象エリア(第1建屋5、第2建屋6)に接続された流水路(上流側排水本管11,下流側取水本管12A)への流入を遮断する遮断位置と、保護対象エリア(第1建屋5、第2建屋6)に接続された流水路(上流側排水本管11,下流側取水本管12A)を開放する開放位置と、の間を移動可能である(図5図8)。
【0058】
これにより、外水域の水位が高くない通常時では、蓋部材40が開放位置に位置し、流水が行われる。外水域の水位が上昇すると、集水枡31内の水位が上昇し、蓋部材40は、浮体50の浮力の作用により遮断位置に移動し、流水路(上流側排水本管11,下流側取水本管12A)から保護対象エリア(第1建屋5、第2建屋6)への流入が防がれる。そのため、集水枡31内の水位が上昇した際に、津波や高潮の押し寄せる方向と、流水路(排水本管10、取水本管10A)の流水方向とが、同じ方向であっても、逆方向であっても、流水路(上流側排水本管11,下流側取水本管12A)への流入を、作業員が操作することなく、無動力で遮断することできる。
【0059】
また、蓋部材40が、集水枡31に回転可能に支持されることで、遮断位置と開放位置との間で蓋部材40を移動させて開閉する開閉荷重を小さくすることができる。そのため、蓋部材40を移動させるための浮力を作用させる浮体50を小規模にし、簡易な構成のコンパクトな装置とすることができる。
【0060】
実施例1の流入遮断装置30では、集水枡31内に配置された支持部材55であって、集水枡31に接続された流水路の開口より上方の位置で、開放位置にある浮体50を支持する支持部材55を備える(図3)。
【0061】
これにより、外水域の水位が高くない通常時に、浮体50を集水枡31内の水面より上方に配置することができる。そのため、通常時の流水を阻害しないようにすることができる。
【0062】
実施例1の流入遮断装置30では、蓋部材40は、蓋本体41と、蓋本体41より幅が狭く、蓋本体41から少なくとも一部が張り出したアーム部43と、を備え、アーム部43に連結部材60が接続される(図4)。
【0063】
これにより、蓋部材40が、遮断位置と開放位置との間を移動する際に、蓋部材40に加わる水の抵抗を低減することができる。そのため、蓋部材40に作用させる浮体50の浮力を低減し、浮体50の規模の縮小化を図れる。
【0064】
実施例1の流入遮断装置では、アーム部の長さは、調整可能である(図4)。これにより、連結部材60の取付位置を、蓋部材40の回転軸から遠ざけた位置にすることができる。そのため、力のモーメントを大きくすることができ、蓋部材を移動させるために浮力を作用させる浮体を小規模にし、コンパクトな装置とすることができる。実施例1の流入遮断装置では、連結部材60の長さは、調整可能である(図4)。これにより、流入遮断装置30が稼働する水位を任意に設定することができる。
【実施例2】
【0065】
まず、構成を説明する。
図9は、実施例2の流入遮断装置の構成を示す断面図であるとともに、排水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図でもある。図10は、実施例2の蓋部材の構成を示す構成図である。以下、図9および図10に基づいて、実施例2の流入遮断装置の構成を説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。また、排水側の流入遮断装置130と、取水側の流入遮断装置130とは、配置される向きが異なるだけで、同様の構成であるため、排水側の流入遮断装置130について説明し、取水側の流入遮断装置130についての説明を省略する。
【0066】
実施例2の流入遮断装置は、主に集水枡が隔壁を有さない点で、実施例1の流入遮断装置と異なる。集水枡131は、有底箱状に形成され、第1底部132と、第1底部132の縁から起立する側壁133と、第1底部132の上方に設けられた第2底部135と、を備える。
【0067】
集水枡131には、上流側排水本管11が接続する第1開口133aと、下流側排水本管12が接続する第2開口133bと、が設けられる。第1開口133aは、第2底部135の下方に設けられる。第2開口133bは、第2底部135の上方に設けられる。第2底部135には、第3開口135aが設けられる。第3開口135aは、第2底部135の略中央に、矩形状に形成される。
【0068】
蓋部材140は、図10に示すように、蓋本体141と、蓋本体141の基端側に設けられたリンク部42と、を備える。蓋本体141は、第3開口135aより大きな矩形状に形成される。蓋本体141の先端側には、フック144が設けられる。保持プレート49は、第2底部135の下方の側壁133に、ボルトなどの締結具39によって取り付けられる。なお、蓋本体141に角筒状に形成されたリブを設け、第3開口135aに嵌るようにしても良い。
【0069】
第2底部135は、図9に示すように、集水枡131の内側の空間を、第3領域S3と、第4領域S4との領域を形成するように仕切る。第3領域S3は、側壁133と、第2底部135とで囲まれた領域である。第4領域S4は、側壁133と、第1底部132と、第2底部135とで囲まれた領域である。
【0070】
次に、作用を説明する。
図11は、実施例2の排水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。以下、図9および図11に基づいて、実施例2の流入遮断装置の作用を説明する。なお、取水側の流入遮断装置130の作用については、排水側の流入遮断装置130と同様であるため、その説明を省略する。
【0071】
(平常時の排水側の流入遮断装置)
第1防潮堤3の外水域の水位が高くない平常時の排水側の流入遮断装置130の作用を説明する。図9に示すように、集水枡131内の水位は、水位WL1となる。浮体50は、水位WL1より上方の位置で、支持部材55に支持される。そのため、浮体50は、水没せず、蓋部材140には、浮体50の浮力が作用しない。
【0072】
蓋部材140は、水位WL1より下方に位置し、水没するが、蓋部材140の重量は、蓋部材140に作用する浮力より大きい。そのため、蓋部材140は、蓋部材140の先端が集水枡131の第1底部132に当接し、第3開口135aを開放する開放位置にある。
【0073】
第1建屋5からの排水は、上流側排水本管11を通って、集水枡131の第4領域S4に流れ込む。第4領域S4に流れ込んだ排水は、第3開口135aを通って、第3領域S3に流れ込む。第3領域S3に流れ込んだ排水は、下流側排水本管12に流れ込み、海へ放流される。
【0074】
(異常時の排水側の流入遮断装置)
第1防潮堤3の外水域の水位が上昇する異常時の排水側の流入遮断装置130の作用を説明する。この場合、排水本管10の排水方向と逆方向から、外水域からの津波や高潮が押し寄せる。
【0075】
図11に示すように、集水枡131内の水位は、水位WL1より高い水位WL2となる。浮体50は、集水枡131内の水位の上昇により、上昇する。浮体50が上昇すると、連結部材60を介して、蓋部材140の先端が上方に引っ張られる。蓋部材140の先端が上方に引っ張られると、蓋部材140は、ヒンジ機構45の支軸46を回転軸として、上方に旋回し、第3開口135aを塞ぐ遮断位置に移動する。
【0076】
なお、第3開口135aの開口を小さくすることで、蓋部材140の開閉荷重を低減することができる。実施例2では、第3開口135aの大きさを小さくすることで、小規模の浮体を使用して、蓋部材140を開放位置と、遮断位置との間で移動させることができる。
【0077】
海から下流側排水本管12に流れ込んだ海水は、第3領域S3に流れ込む。第3領域S3に流れ込んだ海水は、遮断位置にある蓋部材140によって、堰き止められる。すなわち、海から第3領域S3に流れ込んだ海水は、第4領域S4、上流側排水本管11および第1建屋支管15を通って、第1建屋5に流れ込まない。
【0078】
波が第1防潮堤3を超流した場合であっても、開口を有する第2蓋体66から第3領域S3に流れ込んだ海水は、遮断位置にある蓋部材140によって、堰き止められる。すなわち、海から第3領域S3に流れ込んだ海水は、第4領域S4、上流側排水本管11および第1建屋支管15を通って、第1建屋5に流れ込まない。
【0079】
津波や高潮が治まり、集水枡131内の水位が低下すると、浮体50は、下降する。集水枡131内の水位が平常時の水位WL1まで下がると、蓋部材140の先端が集水枡131の第1底部132に当接し、蓋部材140は、第3開口135aを開放する開放位置に移動する。
【0080】
このように、本発明は、集水枡131が隔壁を有さず、上流側排水本管11が接続する第1開口33aと、下流側排水本管12が接続する第2開口33bと、の間に蓋部材140を設けた構成にも適用でき、実施例1と同様の効果を奏する。
【実施例3】
【0081】
まず、構成を説明する。
図12は、実施例3の流入遮断装置の構成を示す断面図であるとともに、排水側の流入遮断装置の平常時の作用を説明する説明図でもある。以下、図12に基づいて、実施例3の流入遮断装置の構成を説明する。なお、実施例1または実施例2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。また、排水側の流入遮断装置230と、取水側の流入遮断装置230とは、配置される向きが異なるだけで、同じ構成であるため、排水側の流入遮断装置230について説明し、取水側の流入遮断装置230についての説明を省略する。
【0082】
実施例3の流入遮断装置は、主に蓋部材の構成が異なる点で、実施例1の流入遮断装置と異なる。集水枡231は、有底箱状に形成され、第1底部232と、第1底部232の縁から起立する側壁233と、を備える。
【0083】
集水枡231の内側の空間は、第5領域S5を形成する。第5領域S5の上方の第5領域開口234aは、開口を有する第2蓋体66で塞がれる。蓋部材140の蓋本体141は、上流側排水本管11が接続する第1開口233aより大きな矩形状に形成される。保持プレート49は、第1開口233aの下方の側壁233に、ボルトなどの締結具39によって取り付けられる。なお、蓋本体141に角筒状に形成されたリブを設け、第1開口233aに嵌るようにしても良い。
【0084】
連結部材60は、集水枡231の側壁233に取り付けられた支持部270に架け回された状態で、浮体50と、蓋部材140とに連結される。支持部270は、例えば丸鋼やパイプ等を使用することができる。支持部270は、蓋部材140が遮断位置にある状態で、蓋部材140の上方に設置される。これにより、浮体50が上昇した際に、第1開口233aを確実に塞ぐ遮断位置に蓋部材140を位置させることができる。
【0085】
次に、作用を説明する。
図13は、実施例3の排水側の流入遮断装置の異常時の作用を説明する説明図である。以下、図12および図13に基づいて、実施例3の流入遮断装置の作用を説明する。なお、取水側の流入遮断装置230の作用については、排水側の流入遮断装置230と同様であるため、その説明を省略する。
【0086】
(平常時の排水側の流入遮断装置)
第1防潮堤3の外水域の水位が高くない平常時の排水側の流入遮断装置230の作用を説明する。図12に示すように、集水枡231内の水位は、水位WL1となる。浮体50は、水位WL1より上方の位置で、支持部材55に支持される。そのため、浮体50は、水没せず、蓋部材140には、浮体50の浮力が作用しない。
【0087】
蓋部材140は、水位WL1より下方に位置し、水没するが、蓋部材140の重量は、蓋部材140に作用する浮力より大きい。そのため、蓋部材140は、蓋部材140の先端が集水枡231の第1底部232に当接し、第1開口233aを開放する開放位置にある。
【0088】
第1建屋5からの排水は、上流側排水本管11から第1開口233aを通って、集水枡231の第5領域S5に流れ込む。第5領域S5に流れ込んだ排水は、下流側排水本管12に流れ込み、海へ放流される。
【0089】
(異常時の排水側の流入遮断装置)
第1防潮堤3の外水域の水位が上昇する異常時の排水側の流入遮断装置230の作用を説明する。この場合、排水本管10の排水方向と逆方向から、外水域からの津波や高潮が押し寄せる。
【0090】
図13に示すように、集水枡231内の水位は、水位WL1より高い水位WL2となる。浮体50は、集水枡231内の水位の上昇により、上昇する。浮体50が上昇すると、連結部材60を介して、蓋部材140の先端が上方に引っ張られる。蓋部材140の先端が上方に引っ張られると、蓋部材140は、ヒンジ機構45の支軸46を回転軸として、上方に旋回し、第1開口233aを塞ぐ遮断位置に移動する。
【0091】
海から下流側排水本管12に流れ込んだ海水は、第5領域S5に流れ込む。第5領域S5に流れ込んだ海水は、遮断位置にある蓋部材140によって、堰き止められる。すなわち、海から第5領域S5に流れ込んだ海水は、上流側排水本管11および第1建屋支管15を通って、第1建屋5に流れ込まない。
【0092】
波が第1防潮堤3を超流した場合であっても、第1防潮堤3を超流した海水は、開口を有する第2蓋体66から第5領域S5に流れ込み、遮断位置にある蓋部材140によって、堰き止められる。すなわち、海から第5領域S5に流れ込んだ海水は、上流側排水本管11および第1建屋支管15を通って、第1建屋5に流れ込まない。
【0093】
津波や高潮が治まり、集水枡231内の水位が低下すると、浮体50は、下降する。平常時の水位WL1まで下がると、蓋部材140の先端が集水枡231の第1底部232に当接し、蓋部材140は、第1開口233aを開放する開放位置に移動する。このように、本発明は、隔壁を設けずに、蓋部材が集水枡に取り付けられた流水路の開口を塞ぐものにも適用でき、実施例1と同様の効果を奏する。
【0094】
以上、本開示の流入遮断装置を実施例1~実施例3に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、各実施例の組み合わせ、設計の変更や追加等は許容される。
【0095】
実施例1~実施例3では、集水枡31,131,231に接続される流水路は、上流側排水本管11と下流側排水本管12の2つとする例を示した。しかし、集水枡に接続される流水路は、3つ以上であっても良い。
【0096】
例えば実施例1の例で示す場合では、図14に示すように、第1領域S1に、3つの上流側排水本管11が接続され、第2領域S2に、3つの下流側排水本管12が接続される。この場合、1つの蓋部材40によって、3の上流側排水本管11への流入を遮断することができる。
【0097】
実施例1~実施例3では、堤防を防潮堤3,4とする例を示した。しかし、堤防としては、防波堤、堰堤、地形の隆起部分などであっても良い。例えば、第2防潮堤4の外側が陸地で、第2防潮堤4が洪水による浸水を防止する堤防であっても良い。この場合、取水本管10Aは、雨水等の径が小さい排水管であっても良い。また、実施例1~実施例3の流水路は、円筒状のものにも、角筒状のものにも適用可能である。
【0098】
実施例1~実施例3では、第3開口35a,135aを矩形状に形成し、蓋本体41,141を矩形状に形成する例を示した。しかし、第2開口としては、円形状や多角形状など様々な形状とすることができる。また、蓋本体としては、図15に示すように、円形状にすることもできるし、多角形など様々な形状とすることもできる。
【0099】
実施例1~実施例3の流入遮断装置は、第1建屋5と第1防潮堤3との間の流水路と、第2建屋6と第2防潮堤4との間の流水路と、に設けられる例を示した。しかし、流入遮断装置としては、第1建屋5と第2建屋6と間の流水路に設けても良い。
【0100】
実施例1~実施例3の流入遮断装置は、海に挟まれた半島に設けられた流水路に設置される例を示した。しかし、流入遮断装置としては、津波時、洪水時、高潮時などの水位が上昇する際に、流入を遮断する必要がある流水路に適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
5 第1建屋(保護対象エリアの一例)
6 愛2建屋(保護対象エリアの一例)
11 上流側排水本管(流水路の一例)
12 下流側排水本管(流水路の一例)
11A 上流側取水本管(流水路の一例)
12A 下流側取水本管(流水路の一例)
15 第1建屋支管(流水路の一例)
16 第2建屋支管(流水路の一例)
30 流入遮断装置
31 集水枡
40 蓋部材
41 蓋本体
43 アーム部
50 浮体
55 支持部材
60 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15