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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】接着シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/40 20180101AFI20220418BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20220418BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20220418BHJP
   B42D 11/00 20060101ALI20220418BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C09J7/40
G09F3/00 D
G09F3/10 H
B42D11/00 E
B32B27/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017249879
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2018159051
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2017054685
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 章友
(72)【発明者】
【氏名】和田 良一
(72)【発明者】
【氏名】益本 久美子
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028050(JP,A)
【文献】特開2000-204331(JP,A)
【文献】特開2011-131582(JP,A)
【文献】特開2009-084529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
G09F 3/00
G09F 3/10
B42D 11/00
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面基材と中間基材とを有する接着シートであって、
前記表面基材と、
剥離剤が網点状に配置された網点領域と前記剥離剤が所定領域に配置されたべた塗り領域とを有する剥離剤層と、
接着剤層と、
前記中間基材とを、この順に備え、
前記表面基材において、前記網点領域と前記べた塗り領域とが前記表面基材の剥離開始端から剥離終了端に向かう剥離方向に沿って波形状に交互に形成されるとともに、前記剥離方向に交差する方向において、前記網点領域と前記べた塗り領域とが交互に形成された接着シート。
【請求項2】
請求項に記載の接着シートであって、
前記網点領域において、前記剥離剤が配置された領域の割合が単位面積当たり60%以上である接着シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接着シートであって、
前記表面基材が感熱紙である接着シート。
【請求項4】
表面基材と中間基材とを有する積層体であって、
前記表面基材と、
剥離剤が網点状に配置された網点領域と前記剥離剤が所定領域に配置されたべた塗り領域とを有する剥離剤層と、
接着剤層と、
前記中間基材とを、この順に備え、
前記表面基材において、前記網点領域と前記べた塗り領域とが前記表面基材の剥離開始端から剥離終了端に向かう剥離方向に沿って波形状に交互に形成されるとともに、前記剥離方向に交差する方向において、前記網点領域と前記べた塗り領域とが交互に形成された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材同士を剥離可能に貼り合わせた接着シート及び積層体関する。
【背景技術】
【0002】
基材同士が剥離可能に貼り合わされてなる積層体において、通常状態では接着を保持することができて、所定の剥離力によって基材同士を剥離した場合には基材表面を破壊することなく剥離可能な「疑似接着」と呼ばれる接着形態がある。
【0003】
「疑似接着」では、基材を一度剥離すると、再度接着することができなくなる。このような接着特性は、ラベル等に応用することができる。
【0004】
例えば、物流分野においては、基材同士が疑似接着された接着シートを「配送伝票」に応用している。このような配送伝票では、配送下では、基材同士が接着された状態になっており、表面基材は、「宛名・宛先」として被着体に貼着されている。そして、配送が完了した際に、配送業者が配送伝票から表面基材だけを剥がして持ち帰ることができる。すなわち、表面基材を「控え伝票」として扱うことができる。
【0005】
ところが、接着シートでは、基材を剥離する際の剥離応力によって、剥離された基材がカールすることがあった。その結果、剥離された「控え伝票」としての基材が扱いにくくなることがあった。
【0006】
これに対して、疑似接着された基材同士を剥離した際に生じるカールを緩和するための技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-170203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたラベルでは、疑似接着構造を形成する接着層及び剥離層の構造に特徴を持たせることによって、カールを緩和することが試みられている。しかし、実用上は、依然として改良の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、疑似接着された基材において、剥離された後の基材のカールの抑制効果を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様によれば、表面基材と中間基材とを有する接着シートであって、前記表面基材と、剥離剤が網点状に配置された網点領域と前記剥離剤が所定領域に配置されたべた塗り領域とを有する剥離剤層と、接着剤層と、前記中間基材とを、この順に備え、前記表面基材において、前記網点領域と前記べた塗り領域とが前記表面基材の剥離開始端から剥離終了端に向かう剥離方向に沿って波形状に交互に形成されるとともに、前記剥離方向に交差する方向において、前記網点領域と前記べた塗り領域とが交互に形成された接着シートが提供される。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、疑似接着された基材において、剥離された後の基材のカールの抑制効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る接着シート10及び積層体1を説明する断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る積層体1を表面基材11側からみた平面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る接着シート製造装置100を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[接着シート及び積層体の説明]
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る接着シート10及び積層体1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る接着シート10及び積層体1を説明する断面図である。
【0014】
本実施形態において、「疑似接着」とは、通常状態では接着状態を保持することができて、所定の剥離力がかかることよって基材同士の表面を破壊することなく剥離可能な接着状態にあることをいう。
【0015】
(接着シート)
本発明の実施形態に係る接着シート10は、表面基材11と、剥離剤層12と、接着剤層13と、中間基材14とを、この順に備えるものであり、表面基材11が接着剤層13を介して中間基材14に疑似接着されている。
【0016】
本実施形態に係る接着シート10においては、表面基材11の一方の表面に剥離剤層12が形成されており、剥離剤層12は、表面基材11の表面に配置されている。剥離剤を形成する剥離剤の表面基材11への配置パターンの詳細については、後述する。
【0017】
また、本実施形態に係る接着シート10において、接着剤層13は、中間基材14の表面の所定領域に形成されている。
【0018】
本実施形態に係る接着シート10は、表面基材11と中間基材14とが剥離剤層12と接着剤層13とによって疑似接着されている。このため、表面基材11は、中間基材14から剥離することができるが、剥離後は、再び接着することができないようになっている。
【0019】
(積層体)
本発明の実施形態に係る積層体1は、上述した接着シート10における中間基材14の接着剤層13が形成された表面の反対面に、貼着層15が形成され、さらに、貼着層15を介して剥離シート16が配置されてなる。
【0020】
本実施形態に係る積層体1は、中間基材14から剥離シート16が剥離されることで露呈される貼着層15によって、被着体に貼着することができる。したがって、積層体1は、被着体に貼着した状態で、中間基材14から表面基材11を剥離することができる。
【0021】
[各層の説明]
続いて、本実施形態に係る積層体1及び接着シート10の各層について説明する。
【0022】
<表面基材>
本実施形態に係る接着シート10における表面基材11としては、紙基材又は樹脂フィルム基材を用いることができる。
【0023】
紙基材としては、クラフト紙、上質紙、上質紙の表面に顔料をコートしたアート紙及びコート紙、上質紙の表面に光沢のある顔料をコートしたグロス紙、紙に金属箔を貼り合わせたホイル紙、特殊紙、グラシン紙、感熱紙などを用いることができる。本実施形態においては、表面基材11の一例として、感熱紙が用いられる。
【0024】
また、樹脂フィルム基材としては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリスチレンフィルム、合成樹脂を主原料とした紙状フィルム、ABSフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。
【0025】
表面基材11は、薄過ぎると剥離の際、カールしたり破れたりする場合がある。また、厚すぎると湾曲しにくく、剥離しにくくなる。この観点から、表面基材11の厚さは、70μm以上95μm以下が好ましく、75μm以上90μmであることがより好ましい。
【0026】
<剥離剤層>
本実施形態においては、剥離剤層12は、剥離剤が表面基材11に点在配置されている。すなわち、剥離剤層12は、表面基材11の表面に所定パターンで塗布されている。剥離剤層12の塗布パターンについては、後述する。
【0027】
剥離剤層12に用いることのできる剥離剤としては、いわゆる剥離ニスが挙げられる。剥離ニスとしては、無溶剤型シリコーン剥離剤、溶剤型シリコーン剥離剤等を用いることができる。また、表面基材11が樹脂フィルムの場合には、フィルム用シリコーン剥離剤を用いることができる。
【0028】
シリコーン剥離剤は、シリコーン含有量を調整することによって、接着剤層13との接着力を調整することができる。シリコーン含有量を多くすれば、接着力を低下させ、剥離性を高めることができる。
【0029】
本実施形態においては、一例として、剥離ニス「株式会社T&K TOKA社製、製品名:MC315 OPニス」を用いることができる。
【0030】
また、剥離剤層12を表面基材に塗布する方法としては、フレキソ印刷が挙げられ。なかでも、ライン数600、ライン上の溝容積5.5ccのアニロックスロールを用いたフレキソ印刷が挙げられる。
【0031】
シリコーン剥離剤におけるシリコーン含有量は、剥離剤樹脂組成物100質量部に対して、シリコーンを3質量部以上10質量部以下とすることができる。
【0032】
剥離剤層12による接着力の調整は、その厚みに依存しない。このため、多すぎても材料ロスにつながる。この観点から、剥離剤層12の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下が好ましく、0.7μm以上1.3μm以下であることがより好ましい。
【0033】
<中間基材>
本実施形態において、中間基材14としては、紙基材又はフィルム基材を用いることができる。紙基材として、上質紙、上質紙の表面に顔料をコートしたアート紙及びコート紙、上質紙の表面に顔料をコートした光沢のあるグロス紙、紙に金属箔とを貼り合わせたホイル紙、特殊紙、グラシン紙、感熱紙等を用いることができる。
【0034】
また、フィルム基材として、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリスチレンフィルム、合成樹脂を主原料とした紙状フィルム、ABSフィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。
【0035】
表面基材11を積層する前段階において、例えば、中間基材14の表面に印字する場合における中間基材14単独での取扱性、強度等を考慮すると、中間基材14の厚さは、35μm以上55μm以下が好ましく、40μm以上50μmであることがより好ましい。
【0036】
<接着剤層>
接着剤層13は、中間基材14の全面に配置されている。本実施形態において、接着剤層13を形成することのできる接着剤としては、ホットメルト系接着剤、エマルジョン系接着剤、ソルベント系接着剤等が挙げられる。なかでも、ホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0037】
ホットメルト接着剤は、表面基材の表面に塗布される際に、加熱されて溶融される。具体的には、160℃~180℃に加熱された状態で、ロールコータ等により塗布される。
【0038】
接着剤層13は、表面基材11との間で疑似接着を維持させる観点から、接着剤層13の塗布量は、20g/m以上30g/m以下が好ましい。また、接着剤層13の厚みは、20μm以上30μm以下が好ましい。
【0039】
本実施形態においては、接着剤層13を形成する接着剤の一例として、株式会社MORESCO社製、製品名:モレスコメルトエクセスピールを用いることができる。
【0040】
ホットメルト接着剤は、再加熱により再度の接着が可能である。したがって、仮に、表面基材11の接着を失敗しても、廃棄にならないという利点を有する。
【0041】
また、ホットメルト接着剤は、-30℃~60℃の温度域において可撓性を有し、過度の曲げにも追従可能である。また、加熱圧着前の状態では、-30℃~60℃の温度域においてノンタック性である(すなわち、接着性が低い)。このため、ホットメルト接着剤は、セパレータ及び離型処理を施すこと無く、製造前の材料供給時にロール状に巻き取ることができるため、取り扱い性に優れる。
【0042】
<貼着層>
本実施形態において、中間基材14の接着剤層13が形成される表面とは反対側の表面には、貼着層15が形成される。本実施形態において、貼着層15は、粘着剤から形成される粘着剤層、又は接着剤から形成される接着剤層のいずれかである。
【0043】
貼着層15が粘着剤層である場合、粘着剤層を形成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等の粘着剤を用いることができる。
【0044】
粘着剤を用いる場合、使用する粘着剤の量が少ないと、被着体との粘着力を確保することが難しくなり、多すぎても材料ロスにつながる。この観点から、貼着層15の厚みは、10.5μm以上13.5μm以下であり、11.5μm以上12.5μm以下であることが好ましい。
【0045】
貼着層15が接着剤層である場合、接着剤層を形成する接着剤としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、天然ゴム系接着剤等を用いることができる。また、接着剤の形態としては、エマルジョン系接着剤、ソルベント系接着剤及びホットメルト系接着剤を使用することができる。
【0046】
接着剤を用いる場合、粘着剤と同様、使用する接着剤の量が少ないと、被着体との接着力を確保することが難しくなり、多すぎても材料ロスにつながる。この観点から、貼着層15の厚みは、10.5μm以上13.5μm以下であり、11.5μm以上12.5μm以下であることが好ましい。
【0047】
<剥離シート>
本実施形態において、剥離シート16は、剥離シート用基材の表面に、剥離シート用剥離剤層が形成されたものである。剥離シート用基材としては、グラシン紙、上質紙、樹脂フィルム等を用いることができる。
【0048】
また、剥離シート用剥離剤としては、溶剤型シリコーン剥離剤、無溶剤型シリコーン剥離剤、エマルジョン型シリコーン剥離剤を用いることができる。
【0049】
剥離シート16は、剥離シート用基材に、シリコーン剥離剤等の剥離シート用剥離剤を塗布した後、乾燥炉にて加熱し、剥離シート用剥離剤を硬化することによって得られる。
【0050】
剥離シート用基材としては、上述した表面基材11又は中間基材14として挙げた材料であれば、適用可能である。また、剥離シート用剥離剤としては、上述した剥離剤層12を形成する剥離剤が適用可能である。
【0051】
剥離シート用基材の厚みは、剥離のしやすさの観点から、34μm以上54μm以下であり、39μm以上49μm以下であることが好ましい。また、剥離シート用剥離剤層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、0.7μm以上1.3μm以下であることが好ましい。
【0052】
[剥離剤層の配置パターンの説明]
次に、本実施形態に係る接着シート10及び積層体1に適用可能な剥離剤層12の配置パターンについて詳細に説明する。
【0053】
(第1配置パターン)
図2は、本実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の第1の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。図2は、剥離シート16側からみた平面図である。
【0054】
図2には、表面基材11に剥離剤層12の配置パターンが形成されており、その上に、中間基材14が積層されており、さらに、剥離シート16が積層された様子が示されている。図2の切り欠き部分には、表面基材11に形成された剥離剤層12が露呈するように描かれている。
【0055】
本実施形態においては、剥離剤が表面基材11の表面に網点状に配置されている。網点領域においては、剥離剤が配置された領域の割合を単位面積当たり60%以上とすることができる。すなわち、表面基材11の単位面積当たりの剥離剤層12の配置面積は60%以上とすることができる。60%を下回ると、接着剤層13の接着力が効き過ぎて剥離しにくくなる。また、剥離しにくくなることにより、表面基材11を剥離した後に生じるカールが大きくなるため好ましくない。
【0056】
(第2配置パターン)
図3は、本発明の実施形態に係る積層体1を表面基材11側からみた平面図である。また、図4は、本実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の第2の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。図4は、剥離シート16側からみた平面図である。
【0057】
第2配置パターンとする場合には、図3に示すように、積層体1に形成された配置パターンに対応した剥離方向になるように、表面基材11の一部に、ユーザに剥離方向を知らせるためのマーク11Mが印字されている。例えば、「この方向に剥がして下さい」という文字が印字されていてもよい。図3に示す、剥離開始端から剥離終了端に向かう矢印Pを剥離方向という。
【0058】
図4に示す積層体1では、剥離剤層12は、表面基材11に剥離剤が網点状に配置された網点領域12Dと、剥離剤が所定領域に配置された、べた塗り領域12Sとを有する。図4においては、紙面奥側かつ紙面右上方に向けて表面基材11が引き剥がされるように剥離方向Pが設定されている。
【0059】
第2配置パターンとして、図4に示す積層体1では、網点領域12Dとべた塗り領域12Sとがそれぞれ、表面基材11の剥離方向Pに沿って形成されており、網点領域12D及びべた塗り領域12Sがそれぞれ、剥離方向Pに交差する方向に交互に配置されている。
【0060】
(第3配置パターン)
図5は、本実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の第3の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。図5は、剥離シート16側からみた平面図である。
【0061】
第3配置パターンでは、第2配置パターンの場合と同様に、図3に示すように、積層体1に形成された配置パターンに対応した剥離方向になるように、表面基材11の一部に、ユーザに剥離方向を知らせるためのマーク11Mが印字されている。これにより、図5においては、紙面奥側かつ紙面右上方に向けて表面基材11が引き剥がされるように剥離方向Pが設定されている。
【0062】
図5に示す積層体1では、剥離剤層12は、表面基材11に剥離剤が網点状に配置された網点領域12Dと、剥離剤が所定領域に配置された、べた塗り領域12Sとが、それぞれ、表面基材11の剥離方向Pに沿って波形状に形成されており、網点領域12D及びべた塗り領域12Sがそれぞれ、剥離方向Pに交差する方向に交互に配置されている。
【0063】
(第4配置パターン)
図6は、本実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の第4の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。図6は、剥離シート16側からみた平面図である。
【0064】
第4配置パターンとする場合には、第2配置パターンの場合と同様に、図3に示すように、積層体1に形成された配置パターンに対応した剥離方向になるように、表面基材11の一部に、ユーザに剥離方向を知らせるためのマーク11Mが印字されている。これにより、図6においては、紙面奥側かつ紙面右上方に向けて表面基材11が引き剥がされるように剥離方向Pが設定されている。
【0065】
図6に示す積層体1では、剥離剤層12は、表面基材11に剥離剤が網点状に配置された網点領域12Dと、剥離剤が所定領域に配置された、べた塗り領域12Sとが剥離方向Pにおいて交互に形成されるとともに、剥離方向Pに交差する方向においても交互に形成されている。
【0066】
(第5配置パターン)
図7は、本実施形態に係る積層体1における剥離剤層12の第5の配置パターンを説明する、積層体の一部を切り欠いて示す平面図である。図7は、剥離シート16側からみた平面図である。
【0067】
第5配置パターンとする場合には、第2配置パターンの場合と同様に、図3に示すように、積層体1に形成された配置パターンに対応した剥離方向になるように、表面基材11の一部に、ユーザに剥離方向を知らせるためのマーク11Mが印字されている。これにより、図7においては、紙面奥側かつ紙面右上方に向けて表面基材11が引き剥がされるように剥離方向Pが設定されている。
【0068】
図7に示す積層体1では、剥離剤層12は、表面基材11に剥離剤が網点状に配置された網点領域12Dと、剥離剤が所定領域に配置された、べた塗り領域12Sとが剥離方向Pに沿って波形状に交互に形成されるとともに、剥離方向Pに交差する方向においても交互に形成されている。
【0069】
(効果)
図1及び図2を用いて説明した本実施形態にかかる接着シート10及び積層体1によれば、剥離剤が、表面基材11の表面に、単位面積当たり60%以上とされた網点領域として形成されている。これにより、接着剤層13の接着力の効き目を適切に抑制することができ、剥離の際における表面基材11にかかる剥離応力を抑制することができる。このため、剥離後の表面基材11のカールが発生しにくい。
【0070】
また、図3図7を用いて説明した本実施形態によれば、所定の配置パターンによって、表面基材11に形成されていることにより、表面基材11が剥離方向Pに剥離される際に、剥離方向Pに移動する、剥離された部分と粘着されている部分との境界には、剥離剤の網点領域12Dとべた塗り領域12Sとが併存している。このため、表面基材11が剥離方向Pに剥離される間に表面基材11にかかる剥離応力に局所的な斑が生じにくく、カールが発生しにくい。
【0071】
また、上述した実施形態においては、積層体1の表面基材11に所定情報を印字しておけば、積層体1から表面基材11を剥離して、表面基材11に印字された所定情報を分離することができる。
【0072】
また、中間基材14の表面基材11側の表面に所定情報を印字しておくこともできる。この場合には、表面基材11が剥離された際に、中間基材14の表面に印字された情報が露呈される。
【0073】
このような積層体1は、例えば、「配送伝票」に適用可能である。積層体1は、剥離シート16を剥離して露呈される貼着層15を介して、表面基材11と中間基材14とが疑似接着された状態で「宛名・宛先」として被着体に貼着することができる。
【0074】
この状態において、積層体1は、表面基材11を剥離することができるため、配送が完了した際には、配送業者が配送伝票から表面基材11だけを剥がして持ち帰ることができる。すなわち、表面基材を「控え伝票」として扱うことができる。
【0075】
また、製品に貼り付けられた積層体から表面基材11を剥離し、これを「応募券」等として扱うこともでき、販促用途にも適用可能である。
【0076】
[接着シートの製造方法及び装置]
<接着シート製造方法>
次に、本実施形態に係る接着シート10の製造方法について説明する。接着シートの製造方法は、剥離剤層12が形成された表面基材11の剥離剤層側の表面と、接着剤層13が形成された中間基材14の接着剤層側の表面とを対向させて圧着する工程を有する。
【0077】
この接着シート製造方法によれば、表面基材11を剥離した後にカールしにくい接着シートを製造することができる。
【0078】
<接着シート製造装置>
上述の製造方法を実行するための接着シート製造装置100について、以下、説明する。図8は、本発明の実施形態に係る接着シート製造装置100を説明する概略図である。
【0079】
接着シート製造装置100は、表面基材11の連続体が巻回されてなる表面基材ロール11Rが装着され、表面基材11の連続体を供給する供給軸101を備える。本実施形態において、表面基材11の連続体の表面には、剥離剤層12が所定の配置パターンで塗布された状態で、剥離剤層12の塗布面を内側にして巻回されている。
【0080】
また、接着シート製造装置100は、中間基材14の連続体が巻回されてなる中間基材ロール14Rが装着され、中間基材14の連続体を供給する供給軸102を備える。
【0081】
また、接着シート製造装置100は、供給軸102から供給される中間基材14の連続体に所定の印字を行う印字ユニット103と、印字後の中間基材14に接着剤層13を塗布するコータ104とを備える。コータ104は、接着剤層13を形成するためのホットメルト接着剤を所定の温度で溶融し、中間基材14の所定領域に塗布する。
【0082】
また、接着シート製造装置100は、表面基材11の連続体と中間基材14の連続体と圧着する圧着ロール105,106を備える。
【0083】
また、接着シート製造装置100は、剥離剤層12の配置パターンが形成された表面基材11の連続体にテンションをかけながら圧着ロール105,106の位置まで搬送する搬送ローラ111,112と、中間基材14の連続体にテンションをかけながら圧着ロール105,106の位置まで搬送する搬送ローラ113,114とを備える。
【0084】
また、接着シート製造装置100は、圧着によって形成された接着シート10を搬送する搬送ローラ115を備える。
【0085】
上述した接着シート製造装置100によれば、剥離剤層12の配置パターンが形成された表面基材11の連続体が供給軸101によって供給されるとともに、接着剤層13が形成された中間基材14の連続体が供給軸102によって供給され、圧着ロール105,106において、表面基材11の連続体における剥離剤層12の配置パターンと、中間基材14の連続体における接着剤層13とを対向させて圧着する。これにより、接着シート10が形成される。
【0086】
接着シート10は、図示しない後段のユニットにおいて、中間基材14の表面基材11が配置された面の反対面に貼着層15が塗布され、さらに、貼着層15を介して剥離シート16が積層される。これにより、積層体1が形成される。
【0087】
上述した接着シート製造装置100によれば、コータ104によって、ホットメルト接着剤を中間基材14の所定領域に塗布する代わりに、剥離剤層12を所定パターンにて塗布することによって疑似接着力を調整することができる。
【0088】
このため、接着シート製造装置100では、従来、溶融粘度が高く配置パターンの形成が困難であったホットメルト接着剤を用いても、良好な剥離性が得られる。したがって、表面基材11を剥離した際の表面基材11のカールを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る接着シート製造装置100によれば、接着剤層13の形成に溶融粘度の高いホットメルト接着剤を用いるため、接着剤の中間基材14への浸潤を防止できる。したがって、中間基材14に接着剤層13を形成する前に、目止め層を形成しなくともよい。
【0090】
また、本実施形態に係る接着シート製造装置100は、中間基材14に所定情報を印字することができる。これにより、表面基材11が剥離されたときに、中間基材14に印字された所定情報が露呈される。
【0091】
したがって、例えば、積層体1を製品に貼付する販促品として用いた場合には、表面基材11は「応募券」として利用でき、応募券としての表面基材11が剥離されると、中間基材14に印字された製品に関する情報、製造者の情報、挨拶文等が現れるという利用が可能である。
【0092】
[その他の実施形態]
上述した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。接着シート製造装置100では、予め剥離剤パターンが形成された表面基材11の連続体を用いるが、表面基材11の連続体に、所定の配置パターンで剥離剤層12を形成する工程及びこの工程を実行するためのユニットを備えていてもよい。
【0093】
剥離剤を所定の配置パターンで表面基材11に塗布する方法としては、グラビア塗工、インクジェット塗工等を用いることができる。
【0094】
また、接着シート製造装置100において、ホットメルト接着剤を用いて接着剤層13を形成する方法としては、カーテンコート、スロットコート、スプレーコート等を用いることができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【実施例
【0096】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0097】
[供試体の作製]
以下の方法により剥離力測定用の積層体の供試体を作製した。
使用した基材、剥離層用の剥離剤、疑似接着用の接着剤、中間基材等は下記のとおりである。
表面基材:サーマル紙1 「三菱製紙株式会社製、品番NT-100」
表面基材:サーマル紙2 「三菱製紙株式会社製、品番P220AB」
剥離剤:剥離ニス 「株式会社T&K TOKA社製、製品名:MC315 OPニス」
疑似接着用の接着剤:ホットメルト接着剤 「株式会社MORESCO社製、製品名:エクセルピールTNT-725」 中間基材:上質タック紙 「大王製紙株式会社製」
【0098】
<剥離剤層の配置パターン>
剥離剤層は、下記の配置パターンのものを用意した。
・パターン1
表面基材に網点100%(すなわち、全面網点領域)で塗布した。塗布後の表面基材と剥離剤とを合わせた層厚83μm
・パターン2(上述した第1配置パターンに相当)
表面基材に網点80%で塗布した。塗布後の表面基材と剥離剤とを合わせた厚み88μm。
・パターン3(上述した第1配置パターンに相当)
表面基材に網点70%で塗布した。塗布後の表面基材と剥離剤とを合わせた厚み83μm。
・パターン4(上述した第1配置パターンに相当)
表面基材に網点60%で塗布した。塗布後の表面基材と剥離剤とを合わせた厚み83μm。
・パターン5(上述した第1配置パターンに相当)
表面基材に網点40%で塗布した。塗布後の表面基材と剥離剤とを合わせた厚み82μm。
・パターン6(上述した第5配置パターンに相当)
表面基材にライン数600、ライン上の溝容積5.5ccのアニロックスロールを用いたフレキソ印刷により波形状に塗布した。網点領域における網点を60%とした。塗布後の表面基材と剥離剤とを合わせた厚み71μm。
【0099】
[測定方法]
<層厚>
JIS P 8118に基づいて測定した。
<表面基材の剥離力測定>
14日間常温(温度23℃、湿度50%)にて保管した後の供試体から幅50mm×長さ250mmの試験片を作製し、剥離力測定に供した。剥離力測定では、接着剤層が形成された中間基材を固定し、剥離剤層が形成された表面基材を引張試験機を用いて、下記条件にて引っ張るときの力を測定した。
剥離角度180°
剥離速度:300mm/分
なお、測定された値は、試験片の単位幅換算値(g/50mm)にて表す。また、得られた試験片の剥離力を、比較例1を基準とする指標で表した。算出方法は下記のとおりである。
剥離力指標={(測定された試験片の剥離力)/(基準となる試験片の剥離力)}×100
【0100】
<カール測定>
カールは、表面基材11を剥離した後の曲がり方(カール)を示す値であり、下記の方法により測定した。すなわち、上述した剥離力測定において、剥離された後、湾曲した表面基材の底部を基準とする両端部までの高さを測定した(単位:mm)。
得られた値を、比較例1を基準とする指標で表した。算出方法は下記のとおりである。
カール値指標={(測定された試験片のカール(mm))/(基準となる試験片のカール(mm))}×100
【0101】
[実施例、参考例及び比較例]
参考例1>
サーマル紙の表面に剥離ニスをべた塗りし、パターン1の剥離剤層が形成された第1層材を得た。また、上質紙の表面の所定領域にホットメルト接着剤を塗布して第2層材を得た。続いて、第1層材と第2層材とを、ホットメルト接着剤を用いて、加熱温度180℃の条件下において、圧着して接着シートを得た。
【0102】
接着シートの第2層材側の表面に貼着層として、強粘接着剤を塗布し、第3層材である剥離シートを配置し、積層体の供試体を得た。
【0103】
参考例2>
剥離剤層の配置パターンとしてパターン2を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を作製した。
【0104】
参考例3>
剥離剤層の配置パターンとしてパターン3を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を作製した。
【0105】
参考例4>
剥離剤層の配置パターンとしてパターン4を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を作製した。
【0106】
<実施例
剥離剤層の配置パターンとしてパターン6を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を作製した。
【0107】
<比較例1>
剥離剤層の配置パターンとしてパターン5を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を作製した。
【0108】
<比較例2>
剥離剤層をパターン1(べた塗り)として、疑似接着用の接着剤として水系エマルジョン接着剤をドットパターンで塗布した以外は、参考例1と同様にして積層体を作製した。
【0109】
<比較例3>
剥離剤層をパターン1(べた塗り)として、疑似接着用の接着剤として水系エマルジョン接着剤をドットパターンで塗布した以外は、参考例1と同様にして積層体を作製した。
【0110】
【表1】
[結果]
第1表に示すように、積層体1において、剥離剤層12を形成する剥離剤の配置パターンが、単位面積当たり60%以上の網点になっていると、接着剤層の方をパターン形成する従来品と遜色の無い程度の剥離力が得られる。
【0111】
従来品である比較例2,3の供試体は、水系エマルジョン接着剤をパターン塗布したものであるが、剥離後の表面基材の曲がり方が激しすぎて円筒状になってしまい、カールを測定することができなかった。
【0112】
これに対して、積層体1における剥離剤層12を形成する剥離剤の配置パターンが、単位面積当たり60%以上の網点になっていると、疑似接着用の接着剤としてホットメルト接着剤を用いた場合であっても、剥離力を抑えることができ、カールを抑制できる。また、剥離剤層12の網点が80%以上であれば、剥離力を抑える効果が高められる。
【0113】
また、剥離ニスをパターン6のように、第5配置パターンに示すような波形状にすることによって、剥離力を抑える効果が高められることが判る。すなわち、表面基材11のカールの高い抑制効果が得られる。
【符号の説明】
【0114】
1 積層体
10 接着シート
11 表面基材
11R 表面基材ロール
11M マーク
12 剥離剤層
12D 網点領域
12S べた塗り領域
13 接着剤層
14 中間基材
14R 中間基材ロール
15 貼着層
16 剥離シート
100 接着シート製造装置
101 供給軸
102 供給軸
103 印字ユニット
104 コータ
105,106 圧着ロール
111,112,113,114,115 搬送ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8