(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】電子デバイスモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20220418BHJP
【FI】
H01L31/04 560
(21)【出願番号】P 2017557257
(86)(22)【出願日】2016-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2016051219
(87)【国際公開番号】W WO2016116554
(87)【国際公開日】2016-07-28
【審査請求日】2018-10-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2015-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517256714
【氏名又は名称】イパレックス ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】カウク エフベルト ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】ベイレフェルト エーリク コルネリス
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】吉野 三寛
【審判官】瀬川 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241291(JP,A)
【文献】国際公開第2013/105616(WO,A1)
【文献】特表2010-504647(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1289234(KR,B1)
【文献】特開2015-70044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0023064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスカバーシート1、表側高分子材料2、電子デバイス3、裏側高分子材料4およびバックシート5を含む電子デバイスモジュールであって、前記表側高分子材料および/または裏側高分子材料は、前記電子デバイス3の表面に接着した裏側層(23、43)と、前記ガラスカバーシート1または前記バックシート5に接着した表側層(21、41)と、前記裏側層と前記表側層との間の中間層(22、42)とを含む3層構造を有し、
前記裏側層および前記表側層は、それぞれ、シランでグラフト化されたエチレンインターポリマーを含み、前記シランでグラフト化されたエチレンインターポリマーは、密度が0.905g/cm
3以下であり、前記中間層は、架橋開始剤および任意選択的な架橋助剤を利用して架橋された、密度が0.905g/cm
3以下である、グラフト化されていないエチレンインターポリマーと、UV安定剤と、任意選択的な1種または2種以上の添加剤とからなり、前記裏側層および表側層はUV安定剤を含まず、
前記密度は、ISO1183に従い測定され、
前記表側層および前記裏側層の前記シランでグラフト化されたエチレンインターポリマーは、架橋前のメルトインデックスが10~35dg/分(ASTM D-1238(190℃、2.16kg))であり、前記中間層は、架橋前のメルトインデックスが10~35dg/分(ASTM D-1238(190℃、2.16kg))である、電子デバイスモジュール。
【請求項2】
前記高分子材料は、40~90体積%の前記中間層と、全体で10~60体積%の前記表側層および前記裏側層とを含む、請求項1に記載の電子デバイスモジュール。
【請求項3】
前記高分子材料は、厚みが100~1000μm、好ましくは150~800μm、より好ましくは200~600μmである、請求項1に記載の電子デバイスモジュール。
【請求項4】
前記エチレンインターポリマーは、ASTM D-3418-03の手順を用いて示差走査熱量分析(DSC)により測定されたTgが-35℃未満である、請求項1に記載の電子デバイスモジュール。
【請求項5】
前記架橋開始剤は過酸化物である、請求項1に記載の電子デバイスモジュール。
【請求項6】
前記架橋助剤はシアヌル酸トリアリルまたはイソシアヌル酸トリアリルである、請求項1に記載の電子デバイスモジュール。
【請求項7】
前記シランは、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびこれらのシランの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の電子デバイスモジュール。
【請求項8】
前記電子デバイスは光起電力素子である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の電子デバイスモジュール。
【請求項9】
表側層、裏側層および1つの中間層を含む3層高分子フィルムであって、
前記表側層および裏側層は、それぞれ独立に、厚みが5~200μmであり、
密度が0.905g/cm
3
以下かつMI(190℃、2.16kg;ASTM D-1238)が10~35g/10分であるエチレンインターポリマーを含み、前記表側層および裏側層の前記エチレンインターポリマーは、シラン0.5重量%~10重量%がグラフトされており、
前記中間層は、厚みが40~800μmであり、
密度が0.905g/cm
3
以下かつMI(190℃、2.16kg;ASTM D-1238)が10~35g/10分であるエチレンインターポリマーを含み、前記中間層の前記エチレンインターポリマーはシランがグラフトされておらず、前記中間層は、110℃における半減期が1時間を超え、160℃における半減期が6分間未満である過酸化物を0.05重量%~10重量%含み、前記中間層はUV安定剤を0.1重量%~0.8重量%含む、前記裏側層および表側層はUV安定剤を含まず、かつ、過酸化物を0.05重量%未満含み;
前記密度は、ISO1183に従い測定された、高分子フィルム。
【請求項10】
前記各層のMI(190℃、2.16kg)は15~32の範囲にある、請求項
9に記載の高分子フィルム。
【請求項11】
前記表側層および裏側層におけるグラフトされたシランの量は0.7重量%~5重量%の範囲にある、請求項
9に記載の高分子フィルム。
【請求項12】
前記高分子フィルムの前記表側層および裏側層の少なくとも50重量%、より好ましくは前記表側層および裏側層の少なくとも75重量%または少なくとも90、95もしくは99重量%は前記シランでグラフト化されたエチレンインターポリマーからなり、
前記中間層の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75、90、95または99重量%は、前記グラフトされていないエチレンインターポリマーと、前記過酸化物と、UV安定剤とからなる、請求項
9に記載の高分子フィルム。
【請求項13】
前記シランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(-(メタ)アクリルオキシプロピル)トリメトキシシランおよびこれらのシランの混合物からなる群から選択される、請求項
9に記載の高分子フィルム。
【請求項14】
前記過酸化物は、過酸化ジクミル、過酸化t-ブチルクミル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)-ヘキサン、ジ[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]-ベンゼン、過酸化ジ-t-アミル、1,3,5-トリ-[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノール、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンn-ブチル、4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)吉草酸エステル、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)-吉草酸n-ブチル、過酸化コハク酸モノ-t-ブチル、過酸化コハク酸モノ-1-ペンチルおよび/またはアゾ開始剤、例えば、2,2’-アゾビス-(2-アセトキシプロパン)ならびにこれらの開始剤の2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項
9に記載の高分子フィルム。
【請求項15】
請求項
9~14のいずれか一項に記載のフィルムであって、共押出された3層フィルムを製造するためのプロセスであって、前記共押出プロセスは、90~130℃、好ましくは92~120℃または95~110℃の間の加工温度で、少なくとも2m/分、好ましくは5~20m/分の間の押出速度で運転される、プロセス。
【請求項16】
請求項
9~14のいずれか一項に記載のフィルムを含む物品。
【請求項17】
請求項
9~14のいずれか一項に記載のフィルムを基材上に適用することと、加熱または活性放射線の照射によって前記フィルムの前記中間層を硬化できるようにすることと、により作製された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスモジュールに関する。特に本発明は、電子デバイス、例えば、太陽電池または光起電力(PV)セルおよび高分子保護材料を含む電子デバイスモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料は、太陽電池(光起電力セルとしても知られる)、液晶パネル、エレクトロルミネッセンス素子、プラズマディスプレイ装置等(但しこれらに限定されるものではない)の電子デバイスを1または2以上含むモジュールの製造に一般に使用されている。多くの場合、このモジュールに含まれる電子デバイスは、1または2枚以上の基板(例えば、1または2枚以上のガラスカバーシート)と組み合わされている。多くの場合、この電子デバイスは2枚の基板の間に配置されており、この基板の一方または両方は、ガラス、金属、プラスチック、ゴムまたは他の材料を含む。高分子材料は、通常、モジュールの包材として使用されるか、または、モジュールの設計に応じて、モジュールのスキン層の構成要素として、例えば、太陽電池モジュールのバックシートとして使用される。これらの目的に使用される典型的な高分子材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテート、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)およびアイオノマーが挙げられる。
【0003】
この用途には特にEVAが使用されている。EVAは多くの欠点を有する。老化によって包材が黄変したり、光起電力セルおよび/またはデバイスモジュールの構造に悪影響を与える可能性のある腐食性物質(酢酸等)が生成したりする。
【0004】
国際公開第2011/153541号パンフレットには、少なくとも1つの電子デバイスおよびその電子デバイスの少なくとも1つの表面に密着している高分子材料を含む電子デバイスモジュールが開示されている。この高分子材料は、超低密度ポリエチレン(VLDPE)であってもよいエチレンインターポリマーと、グラフトされたシランとを含む。一実施形態において、この高分子材料は共押出材料であり、少なくとも1つの外側スキン層は、(i)架橋目的の過酸化物を含まず、(ii)モジュールと密着する面である。この共押出材料の外側スキンは、通常、コア層のポリマーと同一のポリマーを含む。この実施形態においては、コア層は過酸化物を含むが、外側スキン層は過酸化物を含まない。
【0005】
欧州特許出願公開第2579331号明細書には、MFRが0.1g/分~1.0g/分であるポリエチレン系樹脂が使用された太陽電池モジュール用封止材が開示されている。
【0006】
欧州特許出願公開第2804223号明細書には、外観が良好な太陽電池モジュールが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、効率が高く、かつ経済性の高い電子デバイスモジュールを提供することにある。
【0008】
他の目的は、光学的透明性が高く、モジュール内のガラス、電子デバイス表面および任意選択によりバックシートとの接着力が高い高分子材料を含み、当該高分子材料の安定性が向上しているデバイスモジュールを提供することにある。
【0009】
他の目的は、耐クリープ性が高く、かつデバイスモジュールの長い耐用年数にも耐えることができる高分子材料を含むデバイスモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、ガラスカバーシート1、表側高分子材料2、電子デバイス3、裏側高分子材料4およびバックシート5を備え、表側高分子材料および/または裏側高分子材料が、電子デバイス3の表面に接着している裏側層23、43と、ガラスカバーシート1またはバックシート5に接着している表側層21、41と、裏側層と表側層との間の中間層22、42とを備える3層構造を有する、電子デバイスモジュールであって、
裏側層および表側層は、それぞれ、シランでグラフト化されたエチレンインターポリマーを含み、このシランでグラフト化されたエチレンインターポリマーは、密度が0.905g/cm3以下であり;中間層は、架橋開始剤および任意選択的な架橋助剤を利用することにより架橋された、密度が0.905g/cm3以下である、グラフト化されていないエチレンインターポリマーと、UV安定剤と、任意選択的な1種または2種以上の添加剤とからなる、電子デバイスモジュールにより達成される。
【0011】
本発明は、シランを含む表側高分子材料および裏側高分子材料における鎖の含有率が高く、それによって基板に対する接着力が高くなるという利点を有する。好ましくは、表側高分子材料および裏側高分子材料はメルトフローレート(MFR)が高く、それによってポリマーの運動性が高くなり、短時間で高い接着力が得られる。
【0012】
同じくMFRが高いことにより、電子デバイスモジュール用フィルムを作製するためのプロセスが非常に容易かつ高速に行える。
【0013】
本発明によれば、裏側層および表側層のみ、すなわち高分子材料の電子デバイスまたはガラスカバーシートと接触する面のみが、グラフト化されたエチレンインターポリマーを含む。多量の高分子材料から構成される中間層はグラフト化されていない。中間層のグラフト化を不要とすることによって、高分子材料およびこの高分子材料を含む電子デバイスモジュールの製造プロセスをより効率的に行うことが可能になる。さらに、高価なグラフト化ポリマーの大部分をより安価なグラフト化されていないポリマーに置き換えることができるので、経済性が高い。
【0014】
「インターポリマー」という語は、少なくとも2種の異なる種類のモノマーを重合することにより調製されるポリマーを指す。インターポリマーという総称には、2種の異なるモノマーから調製されるポリマーおよび2種を超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマーが包含される。
【0015】
「エチレン系(ethylene-based)ポリマー」という語は、重合されたエチレンモノマーを50モルパーセント超(重合可能なモノマーの総量を基準とする)含むポリマーを指し、任意選択により、少なくとも1種のコモノマーを含むことができる。
【0016】
「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という語は、重合されたエチレンモノマーを50モルパーセント超(重合可能なモノマーの総量を基準とする)と、少なくとも1種のα-オレフィンとを含むインターポリマーを指す。α-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンが挙げられる。
【0017】
「エチレン性ポリマー」という語は、エチレン系ポリマーと、少なくとも1種の超長鎖分岐エチレン系ポリマーとを結合させることにより得られるポリマーを指す。
【0018】
本発明の電子デバイスモジュールは、ガラスカバーシート1、表側高分子材料2、電子デバイス3、裏側高分子材料4およびバックシート5を備える。モジュールは1種または2種以上の他の構成要素;例えば、防汚コーティングまたは保護コーティングをさらに含むことができる。
【0019】
ガラスカバーシートは電子デバイスモジュールのトップシートを構成する。ガラスカバーシートは、好ましくは光に対し十分に透明である。好ましくは、非着色タイプのガラスが使用される。ガラスカバーシートは平坦なガラスまたは構造化ガラスとすることができる。好ましくは、ガラスカバーシートは平坦なガラスである。
【0020】
ガラスカバーシートは電子デバイスモジュールを、例えば天候の影響から保護する。ガラスカバーシートの厚みは、電子デバイスモジュールを使用することになる場所に応じて当業者が選択することができる。ガラスカバーシートの典型的な厚みは約0.125~約1.25mmの範囲にある。
【0021】
電子デバイスモジュールのガラスカバーシートは表側高分子材料に接着されている。
【0022】
電子デバイスモジュールは、表側高分子材料と裏側高分子材料との間に位置する電子デバイスを含む。電子デバイスの例としては、太陽電池(光起電力素子としても知られる)、液晶パネル、エレクトロルミネッセンス素子およびプラズマディスプレイ装置が挙げられる。
【0023】
好ましくは、電子デバイスモジュールは、光起電力素子を備える。光起電力素子(太陽電池)は、光起電力効果により光を直接電気に変換する。太陽電池は光起電力モジュールの基本要素であり、それ以外ではソーラーパネルとして知られている。光起電力素子は高剛性であっても可撓性であってもよい。
【0024】
電子デバイスは、高分子材料内に十分に包含することもできるし、あるいは高分子材料を電子デバイスの一部のみに密着させる、例えば、電子デバイスの1つの外面(face surface)にラミネートすることができる。
【0025】
電子デバイスモジュールのバックシートは、第2のガラスカバーシートとすることもできるし、あるいは電子デバイスの背面とバックシートとの間に存在する裏側高分子材料の背面を支持する他の任意の種類の基材とすることができる。バックシートは、対向する電子デバイスの表面が光反応性でなければ不透明である必要はない。バックシートの厚みは本発明に重要ではなく、したがって、モジュールの全体の設計および目的に応じて幅広く変化させることができる。バックシートの典型的な厚みは約0.125~約1.25mmの範囲にある。
【0026】
表側高分子材料は、電子デバイス表面に接着されている裏側層と、ガラスカバーシート表面に接着されている表側層と、裏側層と表側層との間の中間層とを備える3層構造を有する。
【0027】
裏側高分子材料は、電子デバイス表面に接着されている裏側層と、バックシート表面に接着されている表側層と、裏側層と表側層との間の中間層とを備える3層構造を有する。
【0028】
本明細書において使用される「3層構造」という語は、互いにその表面に付着している3層を有する構造を意味すると理解される。3層構造は、裏側層、表側層ならびに裏側層と表側層との間の中間層を備える。
【0029】
本発明の高分子材料は、電子デバイスとガラスカバーシートまたはバックシートとの間にサンドイッチ配置されている。この高分子材料が、ガラスカバーシート表面に電子デバイスと向かい合うようにフィルムとして適用される場合、ガラスカバーシート表面に接するフィルムの表面は平滑であっても凹凸があっても、例えば、エンボス加工やテクスチャ形成されていてもよい。
【0030】
3層構造を有する高分子材料において、裏側層および表側層はそれぞれ、シランでグラフト化されたエチレンインターポリマーを含み、シランでグラフト化されたエチレンインターポリマーの密度は0.905g/cm3以下である。
【0031】
中間層は、密度が0.905g/cm3以下であるグラフト化されていないエチレンインターポリマーを含み、架橋開始剤および任意選択的な架橋助剤を利用することによって架橋されている。
【0032】
好ましくは、裏側層、表側層および中間層の密度は0.895g/cm3以下、好ましくは0.890g/cm3以下、最も好ましくは0.885g/cm3以下であるが、0.850g/cm3を超え、好ましくは少なくとも0.855g/cm3を超え、最も好ましくは少なくとも0.860g/cm3を超える。
【0033】
好ましくは、本発明の3層高分子材料は、40~90体積%、好ましくは70~90体積%の中間層と、全体で10~60体積%、好ましくは10~30体積%の裏側層および表側層とを含む。好ましくは、裏側層および表側層は、それぞれ高分子材料の5~30体積%、好ましくは5~15体積%である。
【0034】
好ましくは、本発明の高分子材料の厚みは100~1000μm、好ましくは150~800μm、より好ましくは200~600μmである。好ましくは、裏側層および表側層の厚みはそれぞれ5~200μm、より好ましくは10~100μm、より好ましくは20~80μmである。裏側層および表側層の厚みは同一であっても異なっていてもよい。中間層の厚みは、好ましくは40~800μm、より好ましくは100~600μm、より好ましくは200~500μmである。特に好ましい実施形態において、高分子材料の厚みは100~600μmであり、高分子材料は中間層を40~90体積%、好ましくは50~85体積%、より好ましくは60~80体積%含み、裏側層および表側層は、それぞれ、高分子材料の5~30体積%、好ましくは7.5~25体積%、より好ましくは10~20体積%である。
【0035】
3層構造の裏側層および表側層はそれぞれシランでグラフト化されたエチレンインターポリマーを含む。
【0036】
本発明の実施に有用なエチレンインターポリマーはポリオレフィンコポリマーとも称され、より具体的な詳細についてはさらに後述するが、一般に、密度は0.905g/cm3以下、好ましくは0.89g/cm3以下、より好ましくは0.885g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.88g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.875g/cm3である。ポリオレフィンコポリマーは、通常、密度が0.85g/cm3を超え、より好ましくは0.86g/cm3を超える。超低密度ポリオレフィンコポリマーは、一般に、非晶質であり、可撓性を有し、光学特性に優れる(例えば、可視光および紫外光の透過率が高く、ヘイズが低い)ことを特徴とする。
【0037】
表側層および裏側層に含まれるシランでグラフト化されたエチレンインターポリマーは、好ましくはメルトインデックス(ASTM D-1238(190℃/2.16kg))が10~35dg/分、好ましくは15~32dg/分である。
【0038】
本発明の実施に有用なポリオレフィンコポリマーは、好ましくは、ASTM D-882-02の手順により測定した割線弾性係数(2パーセント)(2 percent secant modulus)が150MPa未満、より好ましくは140MPa未満、最も好ましくは120MPa未満、例えば100MPa未満である。通常、ポリオレフィンコポリマーの割線弾性係数(2パーセント)はゼロを超えるが、弾性係数が低いほど、このコポリマーが本発明に使用するのに適したものになる。割線弾性係数は、応力-歪み線図の原点と、曲線上の対象の点とを横切る直線の傾きであり、線図の非弾性領域における材料の剛性を表すために用いられる。弾性係数の低いポリオレフィンコポリマーは本発明に使用するのに特に適しており、その理由は、応力下で安定性を付与し、例えば、応力または収縮によるクラックが生じにくい。
【0039】
本発明の実施に有用であり、メタロセン触媒や拘束幾何触媒等のシングルサイト触媒を用いて製造されたポリオレフィンコポリマーは、通常、融点が95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、よりさらに好ましくは80℃未満、よりさらに好ましくは75℃未満である。マルチサイト触媒、例えば、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒を用いて製造されたポリオレフィンコポリマーの融点は、通常、125℃未満、好ましくは120℃未満、より好ましくは115℃未満、よりさらに好ましくは110℃未満である。融点は、例えば、米国特許第5,783,638号明細書に記載されているように示差走査熱量分析(DSC)により測定される。低融点のポリオレフィンコポリマーは、多くの場合、本発明のモジュールの作製に有用な望ましい可撓性および熱可塑性を有する。
【0040】
使用可能なポリオレフィンコポリマーとしては、α-オレフィン含有率が、エチレンインターポリマーの重量を基準として15重量%の間、好ましくは少なくとも20重量%、よりさらに好ましくは少なくとも25重量%であるエチレン/α-オレフィンインターポリマーが挙げられる。このようなエチレンインターポリマーは、通常、α-オレフィン含有率が、インターポリマーの重量を基準として、50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満、よりさらに好ましくは35重量%未満である。α-オレフィン含有率は、Randall(Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29(2 and 3))により記載された手順を用いて13C核磁気共鳴(NMR)分光法により測定される。一般に、エチレンインターポリマーは、α-オレフィン含有率が高くなるほど、エチレンインターポリマーの密度は低くなると共に、非晶性が高くなり、これが、モジュールの保護ポリマー成分として望ましい物理的および化学的性質を生じさせる。
【0041】
α-オレフィンは、好ましくは直鎖、分岐または環状のC3~20α-オレフィンである。インターポリマーという語は、少なくとも2種のモノマーから製造されたポリマーを指す。この語は、例えば、コポリマー、ターポリマーおよびテトラポリマーを包含する。C3~20α-オレフィンの例としては、プロペン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセンおよび1-オクタデセンが挙げられる。α-オレフィンはシクロヘキサンやシクロペンタン等の環状構造も含むことができ、その結果として、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)やビニルシクロヘキサン等のα-オレフィンとなる。古典的なα-オレフィンという語の意味には包含されないが、本発明においては、ノルボルネンや類縁オレフィン等の特定の環状オレフィンもα-オレフィンであり、上述のα-オレフィンの一部または全部に替えて使用することができる。同様に、スチレンおよびその類縁オレフィン(例えば、α-メチルスチレン)も本発明においてはα-オレフィンである。但し、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにそれぞれのアイオノマーならびにアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルは、本発明においてはα-オレフィンではない。例示的なポリオレフィンコポリマーとしては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、エチレン/スチレン等が挙げられる。エチレン/アクリル酸(EAA)、エチレン/メタクリル酸(EMA)、エチレン/アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、エチレン/酢酸ビニル等は本発明のポリオレフィンコポリマーではない。例示的なターポリマーとしては、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1-オクテンおよびエチレン/ブテン/スチレンが挙げられる。コポリマーはランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。
【0042】
本発明に有用な種類のエチレンインターポリマーのより具体的な例としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、The Dow Chemical Company製FLEXOMER(登録商標)エチレン/ヘキセンポリエチレン)、均一な分岐分布を有する(homogeneously branched)直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマー(例えば、三井石油化学株式会社(Mitsui Petrochemicals Company Limited)製TAFMER(登録商標)、Borealis製Queo(登録商標)およびExxon Chemical Company製EXACT(登録商標))および均一な分岐分布を有する実質的に直鎖状の(substantially linear)エチレン/α-オレフィンコポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyより入手可能なAFFINITY(登録商標)およびENGAGE(登録商標)ポリエチレン)が挙げられ、これらについては後により詳細に説明する。より好ましいエチレンインターポリマーは、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、均一な分岐分布を有する直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーまたは均一な分岐分布を有する実質的に直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0043】
実質的に直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーは、例えば米国特許第5,272,236号明細書、米国特許第5,278,272号明細書および米国特許第5,986,028号明細書に記載されている。
【0044】
より好ましくは、エチレンインターポリマーは、超低密度ポリエチレン(VLDPE)である。
【0045】
上述のいずれかのエチレンインターポリマーのブレンド物も本発明に使用することができる。エチレンインターポリマーを、1種または2種以上の他のポリマーとブレンドするかまたはこれらで希釈することができるが、但し、このポリマーが、(i)互いに混和し、(ii)他のポリマーがポリオレフィンコポリマーの所望の性質、例えば、光学的性質や低弾性率係数に影響を、あるとしても、ほとんど与えず、かつ(iii)本発明のポリオレフィンコポリマーがブレンド物の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%を構成する。本発明の実施に有用なポリオレフィンコポリマーは、ASTM D-3418-03の手順を用いて示差走査熱量分析(DSC)で測定されたTgが-35℃未満、好ましくは-40℃未満、より好ましくは-45℃未満、よりさらに好ましくは-50℃未満である。さらに、通常、本発明の実施に使用されるポリオレフィンコポリマーはまた、ASTM D-1238の手順により測定されたメルトインデックスMI(190℃/2.16kg)が100g/10分未満、好ましくは75g/10分未満、より好ましくは50g/10分未満、よりさらに好ましくは35g/10分未満でもある。典型的なMIの最小値は1g/10分であり、より典型的には5g/10分である。
【0046】
本発明の実施に有用なエチレンインターポリマーは、SCBDI(短鎖分岐分布指数(Short Chain Branch Distribution Index))またはCDBI(組成分布分岐指数(Composition Distribution Branch Index))を有することができ、これは、全ポリマー分子のコモノマー含有量(モル)の中央値を基準として、コモノマー含有量が50パーセント以内にあるポリマー分子の重量百分率として定義される。例えばポリマーのCDBIは、当該技術分野において知られている技法、例えば、Wild et al,Journal of Polymer Science,Poly.Phys.Ed.,Vol.20,p.441(1982)または米国特許第4,798,081号明細書および米国特許第5,008,204号明細書に記載されている昇温溶離分別(本明細書においては「TREF」と略記)等により得られるデータから容易に求められる。本発明の実施に用いられるエチレンインターポリマーのSCBDIまたはCDBIは、通常50%を超え、好ましくは60%を超え、より好ましくは70%を超え、よりさらに好ましくは80%を超え、最も好ましくは90%を超える。
【0047】
本発明の実施に使用されるエチレンインターポリマーは密度および弾性係数が低いため、これらのインターポリマーは、通常、接触した時点または電子デバイスモジュールを組み立てた後に(通常は間もなく)硬化または架橋する。架橋は、電子デバイスを環境から保護する機能という意味でのインターポリマーの性能に重要である。具体的には、架橋により、インターポリマーの耐熱クリープ性ならびに電子デバイスモジュールの耐熱性、耐衝撃性および耐溶媒性という観点での耐久性が向上する。架橋は多くの異なる方法のいずれか、例えば、熱により活性化される開始剤(例えば、過酸化物およびアゾ化合物);光開始剤(例えば、ベンゾフェノン);放射を用いる技法(日光、紫外光、電子線およびx線を含む);シラン(例えば、ビニルトリエトキシシランまたはビニルトリメトキシシラン);および湿気硬化を用いることによって実施することができる。
【0048】
上に述べたように、本発明による電子デバイスモジュールにはシランでグラフト化したエチレンインターポリマーが用いられる。このシランとしては、ポリオレフィンコポリマーを効果的に架橋させ、接着力を向上させるであろう任意のシランを用いることができる。
【0049】
好適なシランとしては、エチレン性不飽和ヒドロカルビル基(ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、(メタ)アクリルオキシアリル基等)および加水分解性基(例えば、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルボニルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基等)を含む不飽和シランが挙げられる。加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基が挙げられる。好ましいシランは、ポリマー上にグラフトすることができる不飽和アルコキシシランである。これらのシランおよびその調製方法は米国特許第5,266,627号明細書においてより十分に記載されている。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、((メタ)アクリルオキシプロピル)トリメトキシシランおよびこれらのシランの混合物は本発明に使用するのに好ましいシランである。フィラーが存在する場合、シランは好ましくはビニルトリエトキシシランを含む。
【0050】
グラフト化されたシランの生成は、後述するように、ポリオレフィンコポリマーまたはエチレンコポリマーを、コポリマーの少なくとも一部をシランでグラフト化するグラフトプロセスまたはグラフト法に付すことにより行われる。この分野の当業者に知られているように、この方法に用いられるビニルシランまたは不飽和シランは、ポリマー(ポリオレフィンコポリマーを含む)にグラフトされた後は、もはや不飽和ではないという点で、厳密には、もはや「ビニル」シランではないが、ビニルシランから誘導されており、その残りであるという点に基づき、依然としてグラフト化ビニルシランと称する場合がある。他の実施形態においては、適合性のあるシランでグラフト化ポリマーが別個に製造され、高分子材料のポリオレフィンコポリマーに添加される。
【0051】
本発明の実施に使用されるシランの量は、ポリオレフィンコポリマーの性質、シラン、加工条件、グラフト効率、最終用途および類似の要素に応じて幅広く変化させることができるが、通常、コポリマーの重量に対し少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.7重量%が使用される。本発明の実施に使用されるシランの最大量は、主として利便性および経済性の2点を考慮することによって制限され、通常、シランの最大量は、コポリマーの重量に対し10重量%を超えず、好ましくは5重量%を超えない。ポリオレフィンコポリマーのシランでグラフト化は、任意の従来法により、通常、ラジカル開始剤(例えば、過酸化物およびアゾ化合物)の存在下に行うかまたは電離線によって行われる。後により詳細に述べる。
【0052】
有機ラジカル開始剤が好ましく、例えば上述したもののいずれか、例えば過酸化物およびアゾ開始剤が好ましい。開始剤の量は変化させることができるが、通常、後述する量で存在する。
【0053】
シランをポリオレフィンコポリマーにグラフトするためには任意の従来法を用いることができるが、好ましい1つの方法は、ブスニーダー(Buss kneader)等の反応押出機内で、第1段階でこの2種を開始剤と一緒にブレンドすることである。グラフト条件は変化させることができるが、溶融温度は、滞留時間および開始剤の半減期に応じて、通常180~350℃、好ましくは250~320℃である。
【0054】
架橋用ラジカル開始剤の半減期は110℃で好ましくは1時間超である。架橋用ラジカル開始剤の半減期は160℃で好ましくは6分間超である。
【0055】
本発明の実施においてシランでグラフト化および/またはポリオレフィンコポリマーの架橋に使用されるラジカル開始剤としては、比較的不安定であり、容易に分解して少なくとも2個のラジカルになる、熱的に活性化される任意の化合物が挙げられる。この種の化合物の代表的なものは、過酸化物(特に、有機過酸化物)およびアゾ開始剤である。架橋剤として使用されるラジカル開始剤の中でも、過酸化ジアルキルおよびジペルオキシケタール開始剤が好ましい。これらの化合物は、例えば 、Encyclopedia of Chemical Technology,3rd edition,Vol.17,pp 27-90(1982)に記載されている。
【0056】
過酸化ジアルキルの群の中でも好ましい開始剤は:過酸化ジクミル、過酸化t-ブチルクミル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)-ヘキサン、ジ[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]-ベンゼン、過酸化ジ-t-アミル、1,3,5-トリ-[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノールおよびこれらの開始剤の2種以上の混合物である。
【0057】
ジペルオキシケタール開始剤の群の中でも好ましい開始剤は:1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)吉草酸エステル、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)吉草酸n-ブチルおよびこれらの開始剤の2種以上の混合物である。他の過酸化物開始剤、例えば、過酸化コハク酸モノ-t-ブチル、過酸化コハク酸モノ-1-ペンチルおよび/またはアゾ開始剤、例えば、2,2’-アゾビス-(2-アセトキシプロパン)も架橋されたポリマーマトリックスを得るために使用することができる。他の好適なアゾ化合物としては、米国特許第3,862,107号明細書および米国特許第4,129,531号明細書に記載されているものが挙げられる。2種以上のラジカル開始剤の混合物も本発明の範囲に含まれる開始剤として一緒に使用することができる。さらに、フリーラジカルは剪断エネルギー、熱または放射によっても生成させることができる。
【0058】
好ましいラジカル開始剤は、環状過酸化物およびペルオキシ炭酸エステルからなる群から選択される。グラフト化には、最も好ましくは、3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパンが選択される。架橋には、最も好ましくは、ペルオキシ炭酸tert-ブチル2-エチルヘキシルが選択される。
【0059】
本発明の架橋性組成物中に存在する過酸化物またはアゾ開始剤の量は幅広く変化させることができるが、最小量は、所望の程度の架橋を行うのに十分な量である。開始剤の最小量は、通常、ポリマーまたは架橋すべきポリマーの重量を基準として少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.25重量%である。本組成物に使用される開始剤の最大量は幅広く変化させることができるが、通常、コスト、効率、所望の架橋度等の要素に応じて決定される。最大量は、ポリマーまたは架橋すべきポリマーの重量を基準として、通常、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満である。
【0060】
電磁放射、例えば、太陽光、紫外(UV)光、赤外(IR)光、電子線、β線、γ線、x線、中性子線を介するラジカル架橋開始剤も用いることができる。放射は、高分子ラジカル(これらが結合することによって架橋が可能になる)を生成させることにより架橋に影響を与えると考えられている。さらなる教示がC.P.Park,”Polyolefin Foam”,Chapter 9 of Handbook of Polymer Foams and Technology,edited by D.Klempner and K.C.Frisch,Hanser Publishers,pp.198-204,Munich(1991)に記載されている。硫黄元素もEPDMやポリブタジエン等のジエン含有ポリマー用架橋剤として使用することができる。コポリマーを硬化させるために使用される放射の量は、コポリマーの化学組成、開始剤(使用する場合)の組成および量、放射の性質等に応じて変化することになるが、UV光の典型的な量は、少なくとも0.05J/cm2、より典型的には0.1J/cm2、よりさらに典型的には少なくとも0.5J/cm2であり、電子線の典型的な量は、少なくとも0.5メガラド、より典型的には少なくとも1メガラド(megarad)、よりさらに典型的には少なくとも1.5メガラドである。
【0061】
硬化または架橋を実施するために太陽光またはUV光が使用される場合、通常および好ましくは1種または2種以上の光開始剤が用いられる。この種の光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンズアントロン、ベンゾインおよびそのアルキルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ,2フェニルアセトフェノン、p-フェノキシジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシシクロヘキシルフェノン、2-ヒドロキシイソプロピルフェノンおよび1-フェニルプロパンジオン-2-(エトキシカルボキシル)オキシム等の有機カルボニル化合物が挙げられる。これらの開始剤は公知の方法で公知の量で、例えば、典型的にはコポリマーの重量を基準として少なくとも0.05重量%、より典型的には少なくとも0.1重量%、よりさらに典型的には0.5重量%で使用される。
【0062】
硬化または架橋を実施するために湿気、すなわち水が使用される場合、通常および好ましくは、1種または2種以上の加水分解/縮合触媒が用いられる。この種の触媒としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、スズオクタノエートおよび水素化スルホン酸塩(hydrogen sulfonate)(スルホン酸等)等のルイス酸が挙げられる。
【0063】
ラジカル架橋助剤(free radical crosslinking coagent)、すなわち促進剤または開始助剤としては、多官能性ビニルモノマーおよびポリマー、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリルおよびトリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ジビニルベンゼン、ポリオールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、アリルアルコール誘導体ならびに低分子量ポリブタジエンが挙げられる。硫黄架橋促進剤としては、ベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドおよびテトラメチルチウラムモノスルフィドが挙げられる。
【0064】
好ましくは、助剤は、シアヌル酸トリアリルまたはイソシアヌル酸トリアリルである。
【0065】
これらの助剤は公知の量で公知の方法で使用される。助剤の最小量は、通常、ポリマーまたは架橋すべきポリマーの重量を基準として少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%である。これらの組成物中に使用される助剤の最大量は幅広く変化させることができるが、通常、コスト、効率、所望の架橋度等の要素により決定される。最大量は、通常、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満であり、重量パーセントはポリマーまたは架橋すべきポリマーの重量を基準とする。
【0066】
本発明の高分子材料はUV安定剤を含む。UV安定剤は、PVモジュールが吸収する可能性がある電磁放射の波長を低下(例えば、360nm未満に)させるのに有用であり、Cyasorb UV2908等のヒンダードフェノールや、Cyasorb UV 3529、Hostavin N30、Univil 4050、Univin 5050、Chimassorb UV 119、Chimassorb 944 LD、Tinuvin 622 LD等のヒンダードアミン等が挙げられる。リン化合物としては、ホスホナイト(PEPQ)および亜リン酸エステル(Weston 399、TNPP、P-168およびDoverphos 9228)が挙げられる。UV安定剤には、さらに保護機能を高めるために同じくフィルムに添加することができるUV吸収剤が含まれる。吸収剤の例としては、これらに限定されるものではないが、Cyasorb UV-531等のベンゾフェノン系吸収剤、Cyasorb UV-5411等のベンゾトリアゾール系吸収剤、Cyasorb UV-1164等のトリアジン系吸収剤、Cyasorb THT6460等の混合トリアジン系/ヒンダードアミン光安定剤およびTinuvin 312等のオキサナリド(oxanalide)系吸収剤を挙げることができる。UV安定剤の量は、通常、コポリマーの重量を基準として0.1重量%~0.8重量%、好ましくは0.2重量%~0.5重量%である。
【0067】
本発明による3層構造の層は全てUV安定剤を含むことができるが、好ましくは、中間層がUV安定剤を含む。好ましい実施形態において、中間層はUV安定剤を0.1重量%~0.8重量%含み、裏側層および表側層は、UV安定剤を0.1重量%未満含み、好ましくはUV安定剤を含まない。驚くべきことに、表側高分子材料および裏側高分子材料がUV安定剤を少量含有するか、あるいはUV安定剤が存在しなくてさえも、ポリマーの基板への接着力は向上する。
【0068】
高分子材料は添加剤を含むことができる。添加剤の例としては、3価のリン化合物等の加工安定剤、スコーチ防止剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール類)(例えば、BASF製Irganox(R)1010)、密着性付与剤(cling additive)(例えば、PIB)、アンチブロッキング剤、スリップ防止剤、顔料、帯電防止剤およびフィラー(その用途に透明性が重要な場合は透明)が挙げられる。加工助剤(in-process additive)、例えば、ステアリン酸カルシウム、水等も使用することができる。上述の添加剤および他の可能性のある添加剤は、当該技術分野において一般に知られている方法および量で使用される。
【0069】
添加剤の量は、一般に、コポリマーの重量を基準として0重量%~5重量%の範囲または0.02重量%~3重量%の範囲にある。
【0070】
加工安定剤の量は、通常、コポリマーの重量を基準として0.02重量%~0.5重量%、好ましくは0.05重量%~0.15重量%である。
【0071】
本発明はまた、2つの外層および1つの中間層を含む3層高分子フィルムであって、
各外層は、独立に、厚みが5~200μmであり、密度が≦0.905g/cm3かつMI(190℃、2.16kg)が10~35g/10分であるエチレンインターポリマーを含み、各外層のエチレンインターポリマーは、0.5重量%~10重量%のシランがグラフトされており、外層は、UV安定剤を0.1重量%未満および過酸化物を0.05重量%未満含み;
中間層は、厚みが40~800μmであり、密度が≦0.905g/cm3かつMI(190℃、2.16kg)が10~35g/10分であるエチレンインターポリマーを含み、中間層のエチレンインターポリマーはシランでグラフト化されておらず、中間層は、110℃における半減期が1時間を超え、160℃における半減期が6分間未満である過酸化物を0.05重量%~10重量%含み、中間層はUV安定剤を0.1重量%~0.8重量%含む、フィルムにも関する。
【0072】
好ましくは、層のMI(190℃、2.16kg)は15~32の範囲にある。
【0073】
好ましくは、外層のグラフトされたシランの量は0.7重量%~5重量%の範囲にある。
【0074】
好ましくは、中間層の過酸化物の量は0.25重量%~3重量%の範囲にある。
【0075】
本発明の実施形態において、高分子フィルムの外層の少なくとも50重量%、より好ましくは外層の少なくとも75重量%または少なくとも90、95もしくは99重量%はシランでグラフト化されたエチレンインターポリマーからなる。好ましくは、中間層の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75、90、95または99重量%はグラフト化されていないエチレンインターポリマーと、過酸化物と、UV安定剤とからなる。
【0076】
本発明による高分子材料は共押出プロセスにより調製される。好ましい高いメルトフローレートを有するため、押出温度を低く、通常、90~130℃、好ましくは92~120℃、または95~110℃の間とすることができる。このプロセスは高速で行うことができ、押出速度を少なくとも2m/分、好ましくは5~20m/分とすることができる。
【0077】
本発明の高分子材料は、電子デバイスモジュールの組立において、当該技術分野において知られている高分子材料と同じ量を同じ方法で用いて、例えば、米国特許第6,586,271号明細書、米国特許出願公開第2001/0045229A1号明細書、国際公開第99/05206号パンフレットおよび国際公開第99/04971号パンフレットに教示されているように使用される。これらの材料は電子デバイスの「スキン層(skin)」として使用することができる、すなわち電子デバイスの片面または両面に適用するか、あるいは高分子材料で全体が包まれた電子デバイスの高分子材料として使用される。通常、高分子材料は、高分子材料から形成された層またはフィルムを、まず最初に電子デバイスの一方の外面に適用し、次いで電子デバイスのもう一方の外面に適用する、1または2以上のラミネート技法を用いて電子デバイスに適用される。他の実施形態においては、高分子材料を溶融形態で電子デバイス上に押出し、電子デバイス上で固化させることができる。本発明の高分子材料は電子デバイスの外面に良好な接着性を示す。
【0078】
好ましい実施形態において、電子デバイスモジュールは、(i)少なくとも1種の光起電力素子(通常、複数のこの種の素子が線状または面状パターンで配列している)と、(ii)少なくとも1種のガラスカバーシート(典型的には、光起電力素子の両外面を覆うガラスカバーシート)と、(iii)少なくとも1種の高分子材料と、を含む。高分子材料は、通常、ガラスカバーシートと光起電力素子との間に配置されており、高分子材料は光起電力素子およびシートの両方に良好な接着性を示す。光起電力素子に電磁放射の特定の形態、例えば、太陽光、赤外、紫外を接触させる必要がある場合、高分子材料はその放射に対し良好な、通常は極めて優れた透過性を示し、例えば、UV-VIS分光法により測定される透過率は90%を超え、好ましくは95%を超え、より好ましくは97%を超える。吸光度は250~1200ナノメートルの波長範囲で測定される。透明性の他の測定法はASTM D-1003-00の内部ヘイズ法(internal haze method)である。電子デバイスの運転に透明性が不要な場合、高分子材料は不透明なフィラーおよび/または顔料を含むことができる。
【0079】
本発明を例示を目的として詳細に説明してきたが、これらの詳細は単に例示を目的とするものであり、特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者による変形が可能であることが理解される。
【0080】
本発明は、本明細書に記載する特徴のあらゆる可能な組合せに関し、特許請求の範囲に存在する特徴の組合せが特に好ましいことにさらに留意されたい。
【0081】
「含む(comprising)」という語は他の構成要素の存在を排除しないことにさらに留意されたい。しかしながら、特定の構成要素を含む製品に関する記載が、これらの構成要素からなる製品の開示でもあることも理解すべきである。同様に、特定のステップを含むプロセスに関する記載が、これらのステップからなるプロセスの開示でもあることも理解すべきである。
【0082】
ここで以下に示す実施例を用いて本発明について説明するが、これらに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】本発明による電子デバイスモジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、表側高分子材料2に接着されたガラスカバーシート1と、電子デバイス3と、裏側高分子材料4と、バックシート5とを有するデバイスモジュールを示すものである。電子デバイス3は、ガラスカバーシート1側にある、ガラスカバーシート1に揃えられた表側層と、バックシート5側にある、バックシート5に揃えられた裏側層とを有する。高分子材料2または4の少なくとも1つは3層構造を有しており、好ましくは両方の高分子材料が3層構造を有する。高分子材料2は、好ましくは、電子デバイス3の前面に接着している裏側層23と、ガラスカバーシート1に接着している表側層21と、裏側層23と表側層21との間の中間層22とを備える。
【0085】
高分子材料4は、好ましくは、電子デバイス3の背面に接着している裏側層43と、バックシート5に接着している表側層41と、裏側層43と表側層41との間の中間層42とを備える。
【0086】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0087】
試験方法
Si含有量をISO12677に従い測定した:ポリマー試料をFonteijne pressを用いて160℃で2分間かけて厚みが1.8~2mmの板状にプレス成形する。Philips WDXRF PW2404分光器を好適な基準試料で較正する。較正データをプログラムPE Si(定量用)に記憶させる。プログラムPE Si(定量用)を用いて試料を分析し、Si含有量を算出する。Si含有量からVTMOS含有量を算出する:VTMOS(重量%)=Si(重量%)×148.25/28。
【0088】
MFRをISO1133に従い、190℃および荷重2.16kgで測定した:4~5グラムのポリマー試料をMFI専用に設計された装置に導入する。この装置は装置内に挿入された小さなダイから構成され、ダイの直径は一般に2mm前後である。材料をシリンダ内部に空洞部分を作らないように適切に充填する。溶融ポリマーを押し出す媒体として作用するピストンを挿入する。試料を規定された時間(190℃で5分間)予熱する。予熱後、2.16kgの錘をピストンに載せる。錘は溶融ポリマー上に力を印加し、溶融ポリマーは即座にダイから流出し始める。試料の溶融物を所望の時間が経過した後に採取し、正確に計量する。MFIは、ポリマーのグラム数/試験時間の合計(10分間)として表される。メルトフローインデックスはメルトフローレートおよびメルトインデックスと同義語である。これらの略称であるMFI、MFRおよびMIの方が一般的である。紛らわしいが、MFRは「メルトフロー比」を表す場合もあり、この比は異なる重量の錘を用いた場合のメルトフローレートの比である。より正確には、これは、FRR(フローレート比(flow rate ratio))または単にフロー比として報告すべきである。FRRは材料の分子量分布に影響を受けるレオロジー的挙動の指標としてよく用いられている。
【0089】
密度をISO1183に従い測定した:試験片を空気中で秤量した後、23℃の蒸留水に浸漬して秤量する。試験片を必要に応じて完全に浸水させて保持するようにシンカーおよびワイヤーを使用する。ISO法に規定されたガイドラインに従い密度を算出する。試験片は任意の好都合なサイズとすることができる。
【0090】
光学特性をASTM D1003に従い測定した:透過率は、材料を通過することができる入射光のパーセントとして定義される。透過率の値が高いほど、その材料は透明である。ヘイズは、入射光の方向に対し2.5°を超える角度で散乱した透過光のパーセントとして定義される。ヘイズ値が30%を超える材料は光が拡散していると見なされる。試験はヘイズメーター(Procedure A)または分光計(Procedure B)のいずれかで行う。どちらの場合においても光は試験片を通過し、光検出器へと向かう。ヘイズメーターおよび分光計の値が一致しない場合はヘイズメーターの値を優先する。
【0091】
剥離強度測定例2:次に示す試験構成を用いて剥離強度を測定した:装置:Zwick Z050;制御および解析:Zwick TestXpert IIソフトウェア;ロードセル:2kNセル;移動:試験台を移動(Bench displacement);グリップの固定具:10kN手動操作式グリップ;試験速度:100mm/分;試験条件:23℃、相対湿度(RH)50%。供試体を試験配置にて45°の角度で把持する。次いで薄片を約15mmをグリップで把持する。予荷重をかけた後、装置を一定速度で移動させ、角度を90°前後に維持しながら(薄片の剛性に依存)薄片をガラスから剥離する。
【0092】
剥離強度測定例3および4:ASTM D 6862-04に基づき90°剥離試験にて剥離強度を測定した。より低い線速度(約30mm/分)を用いたが、推奨されている標準的な線速度は250mm/分である。より低い速度を用いることで試験により多くの時間を要するが、詳細で信頼性の高いデータが得られる。幅0.5~1cm(印加する剥離力に依存する)の3本の細片を測定した。
【実施例】
【0093】
実施例1
シランでグラフト化された超低密度ポリエチレンの調製(Yparex1およびYparex2)
W&P ZSK40押出機にて2種類の超低密度ポリエチレンにビニルトリメトキシシランをグラフトした。二軸押出機のホッパに原料を供給した。過酸化物のマスターバッチ(MB、VLDPE1中10%Trigonox 311)もホッパに供給した。溶融ポリマーに、二軸押出機に取り付けられた弁を介して液状ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)をポンプで投入した。
【0094】
実験の詳細:
生産速度:57.5kg/h
スクリュー速度:430rpm
トルク:40%
溶融物温度:250℃
反応帯域温度:260℃
反応帯域終端部温度:280℃
ダイ温度:310℃
2本のストランド:4mm
冷却水温度:7.5℃
VLDPE1に添加した過酸化物MB:2.2重量%
VLDPE3に添加した過酸化物MB:2.5重量%
VLDPE1に添加したVTMOS:3.85重量%
グラフト化VLDPE1に含まれるVTMOS(XRFにより測定):3.63重量%
VLDPE3に添加したVTMOS:4重量%
グラフト化VLDPE3に含まれるVTMOS(XRFにより測定):3.7重量%
グラフト化VLDPE1のMFR測定値:25g/10分(190℃、2.16kg)
グラフト化VLDPE3のMFR測定値:7g/10分(190℃、2.16kg)
【0095】
実施例2
1層フィルムの製造および評価
フィルムS5(実施例1に従いビニルトリメトキシシラン(3.6重量%)をグラフトしたVLDPE1(Yparex1))をDr.Collin製300mm幅キャストフィルムラインで製造した。Yparex1は120℃で加工した。製造後のフィルムを、アルミニウムライン密閉式袋で保管した。
【0096】
比較材料としてフィルムS6(MAHをグラフトしたLLDPE(Yparex3))およびS7(DOW Enlight)についても試験を行った。フィルムS6(MAHをグラフトしたLLDPE(Yparex3))は30cm幅のキャストフィルムラインで製造した。Yparex3は200℃で加工した。
【0097】
フィルムS5~S7を、パターン形成されたSMガラス上にラミネートし、必要に応じて1を超える層を使用した。Teflonフィルムをスペーサとして用いることによりフィルムの厚みを400~460マイクロメートルとした。試料を150℃でラミネートし、ラミネート時間を合計1400秒間とした。0.4barの真空中、30kNで加圧した。
【0098】
剥離強度および光学特性を測定した。
【0099】
結果を表2に示す。
【0100】
【0101】
表2に示す結果から、高分子材料S5は他の2種の材料と比較して良好な剥離強度および優れた光学特性を示すことが分かる(透過率が高く、かつヘイズが非常に低い)。
【0102】
実施例3
3層共押出フィルムの製造および評価
Dr.Collin製300mm幅キャストフィルムラインで次に示す寸法の3層フィルムを製造した:
第1(外)層(46μm)、第2(内)層(368μm)および第3(外)層(46μm)を有するフィルム(S1~S4)を調製した。フィルムは120℃で加工した。製造されたフィルムをアルミニウムで内張された密閉式の袋で保管した。2つの外層(1および3)は実施例1に従い調製したYparex1を含む。内層(2)は変化させる。
【0103】
フィルムをガラスとバックシートとの間にラミネートした(25分サイクル、うち18分間は155℃)。4種の異なる高分子材料のバックシート(AAA3554およびTPC3480)に対する接着性を試験した。フィルムの透過率およびヘイズも測定した。結果を表3に示す。
【0104】
【0105】
表3に示す結果から、高分子材料は全て良好な接着性を示し、特にS3およびS4は良好~非常に良好な透過率を示したことが分かる。さらに、温度サイクル試験を経た後の接着力は非常に高い水準に留まっており、これは、本発明の高分子材料が光起電力セル等の用途において安定であろうことを意味する。
【0106】
実施例4
4種の異なる高分子材料のCu含有シートに対する接着力を試験した。実施した試験は高温多湿試験および温度サイクル試験である。IEC 60068-2-78:2001に準拠する高温多湿試験においては、高分子材料を80℃、相対湿度(RH)85%の環境下に放置した。この環境下で500および1000時間経過した後に高分子材料の接着力(剥離強度)を測定した。
【0107】
JIS C-8917またはJIS C-8938に準拠する温度サイクル試験においては、高分子材料を接着させたCu含有シートを-40℃に冷却し、その後90℃に加熱した。100および200サイクル後に接着力(剥離強度)を測定した。これらの試験の結果を表4に示す。
【0108】
【0109】
表4の結果から、本発明による高分子材料S3、S4、S8およびS10は初期接着力(DH0およびTC0)が非常に高いことが分かる。
【0110】
さらに表4の結果から、本発明による高分子材料S3、S4、S8およびS10は、比較用高分子材料であるEVAを含む比較実験DおよびEに従う高分子材料と比較すると、試験(DH500およびDH1000)後の接着力の低下が少ないことが分かる。EVAはソーラーパネル用の標準的な高分子材料に一般に使用されているものである。
【0111】
試験(TC100およびTC200)を行った後の高分子材料S3、S4、S8およびS10に関する接着力の結果も、比較実験DおよびEに従う高分子材料よりも高かった。
【0112】
高分子材料S8およびS10は初期接着力(DH0)が高分子材料S9よりも高い。高分子材料S8~S10はUV吸収剤を含有している。高分子材料S9の場合、UV吸収剤が3層構造の中間層に存在するのみならず、裏側層および表側層にも存在する。試験(DH500およびDH1000)を行った後の材料S8およびS10は高分子材料S9よりも高い接着力を示す。これは、UV吸収剤の添加が多層フィルム構造の内側層にのみ有利であることを示している。
【0113】
実施例S3、S4、S8、S9およびS10はS1、S2および両EVA試料と比較して優れた光学特定を示す。また本発明による実施例は良好~非常に良好な機械的安定性(クリープ)も示す。