(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】急速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命の増加
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20220418BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20220418BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/42 P
H01M10/48 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018003221
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-12-14
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517440014
【氏名又は名称】ストアドット リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】クラソヴィツキー,レオニード
(72)【発明者】
【氏名】セレズニョウ,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】アロノフ,ダニエル
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-106219(JP,A)
【文献】特開2001-161037(JP,A)
【文献】特開2001-325988(JP,A)
【文献】特開2003-346909(JP,A)
【文献】特開2004-031091(JP,A)
【文献】特開2004-234897(JP,A)
【文献】特開2009-158415(JP,A)
【文献】特開2009-162750(JP,A)
【文献】特開2009-165303(JP,A)
【文献】特開2011-044333(JP,A)
【文献】特開2011-210324(JP,A)
【文献】特開2013-135510(JP,A)
【文献】特開2013-187960(JP,A)
【文献】特表2019-511103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0033469(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202945(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0307485(US,A1)
【文献】米国特許第6337560(US,B1)
【文献】米国特許第9406927(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/42
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を延長する方法であって、
C/30未満のレートで前記バッテリを完全に充電し、その後に前記バッテリを放電する第1のサイクルを実行し、その後に、
複数の充電/放電サイクルを実行する
ことによって前記バッテリの形成プロセスを実行する工程と、
最初に1.5V未満の狭い電圧範囲で、その後に、
前記バッテリの容量の指定の劣化を検出したときに、1.5V超の少なくとも1つのより広い電圧範囲で、
前記バッテリを動作させる工程と、
を含
み、
前記バッテリの動作中に、前記バッテリの推定抵抗及び/又は残留容量に関して前記少なくとも1つのより広い電圧範囲を決定する工程をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記形成プロセスにおいて、
前記第1のサイクルの前に、半セルでリチウムに関して測定したアノードの第1のリチオ化容量とカソードの第1の脱リチオ化容量のうちの低い方としてセル容量を決定する工程と、
前記決定されたセル容量(C)に到達したときに前記第1のサイクルの完全充電を終了する工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形成プロセスにおいて、前記複数の充電/放電サイクルが、少なくとも4つのサイクルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記形成プロセスにおいて、前記決定されたセル容量に到達したときに、前記複数の充電/放電サイクルの充電を終了する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記形成プロセスにおいて、各サイクルで決定される放電容量に応じて前記セル容量を調節する工程と、それに応じて各サイクルの充電を終了する工程と、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記形成プロセスにおいて、少なくとも前記第1のサイクル中に、最大C/50から最大C/30に充電電流を次第に増大させる工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記形成プロセスにおいて、前記第1のサイクルの充電が、少なくとも充電持続時間の3分の1の間、最大C/50のレートで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記形成プロセスにおいて、前記第1のサイクル中に、充電持続時間の少なくとも3分の1の間に最大C/70から最大C/50に充電電流を次第に増大させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の充電/放電サイクルにおいて、前記バッテリを最大セル容量の30~80%の間で各サイクルにおいて充電及び放電する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バッテリの動作中に、前記バッテリの低下する容量の推定に応じて充電電流を調節する工程をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バッテリの動作中に、前記バッテリの充電持続時間の最初の3分の1の間に、充電電流を次第に増加させる工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バッテリの動作中に、前記バッテリの前記低下する容量の推定に応じて前記充電電流増加を調節する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バッテリの動作中に、前記狭い範囲が、3~4V以内であり、前記少なくとも1つのより広い範囲が、1.8~4.95V以内である、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記バッテリの動作中に、前記狭い範囲が、3.1~4.3V以内であり、前記少なくとも1つのより広い範囲が、1.8~4.3V以内である、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのより広い範囲が、前記バッテリの前記狭い範囲と全動作範囲の間で電圧範囲を拡大する複数の連続した工程を含む、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記狭い範囲が、3.1~4.3V以内であり、前記連続した範囲が、3.0~4.3V、2.8~4.3V、及び2.5~4.3V以内であり、前記全範囲が、1.8~4.3V以内である、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記バッテリの動作中に、前記バッテリのアノード材料粒子中にリチウムイオンを再分布させるように設定された1~10サイクルの全電圧範囲サイクルのセットを断続的に導入する工程をさらに含む、請求項1から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から
17のいずれか一項に従って形成され、動作する、リチウムイオンバッテリ。
【請求項19】
C/30未満のレートでリチウムイオンバッテリを完全に充電し、その後に前記バッテリを放電する第1のサイクルを実行することによって前記リチウムイオンバッテリの形成プロセスを行うように制御装置によって制御される、充電/放電システムを含
み、
前記充電/放電システムが、前記第1のサイクルの前に、半セルでリチウムに関して測定したアノードの第1のリチオ化容量とカソードの第1の脱リチオ化容量のうちの低い方としてセル容量を決定するようにさらに構成され、前記制御装置が、前記決定されたセル容量(C)に到達したときに前記第1のサイクルの完全充電を終了するようにさらに構成される、システム。
【請求項20】
前記制御装置が、前記決定されたセル容量に到達したときに前記複数の充電/放電サイクルの充電を終了するようにさらに構成され、前記セル容量が、各サイクルで決定される放電容量に応じて調節され、それに応じて各サイクルの充電が終了される、請求項
19に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御装置が、少なくとも第1のサイクル中に、最大C/50から最大C/30に充電電流を次第に増大させるようにさらに構成される、請求項
19に記載のシステム。
【請求項22】
前記充電/放電システムが、前記第1のサイクルの充電を、少なくとも充電持続時間の3分の1の間、最大C/50のレートで実行するようにさらに構成される、請求項
19に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御装置が、前記第1のサイクル中に、充電持続時間の少なくとも3分の1の間に最大C/70から最大C/50に充電電流を次第に増大させるようにさらに構成される、請求項
19に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御装置が、前記複数の充電/放電サイクルにおいて前記バッテリを各サイクルの最大セル容量の30~80%の間で充電及び放電するようにさらに構成される、請求項
19に記載のシステム。
【請求項25】
急速充電リチウムイオンバッテリと、
狭い範囲から開始して、より広い範囲に到達するように、前記バッテリの健康状態に応じて前記バッテリから供給される電圧レベルの範囲を修正するように構成されるバッテリ管理ユニットと、
を含
み、
前記バッテリ管理ユニットが、前記バッテリの推定抵抗及び/又は残留容量に関して前記少なくとも1つのより広い電圧範囲を決定するようにさらに構成される、急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【請求項26】
前記バッテリ管理ユニットが、最初に1.5V未満の狭い電圧範囲で前記バッテリを動作させ、その後に、前記バッテリの容量の指定の劣化を検出したときに、1.5V超の少なくとも1つのより広い電圧範囲で前記バッテリを動作させるようにさらに構成される、請求項
25に記載の急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【請求項27】
前記バッテリ管理ユニットが、前記バッテリの低下する容量の推定に応じて充電電流を調節するようにさらに構成される、請求項
25又は26に記載の急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【請求項28】
前記バッテリ管理ユニットが、前記バッテリの充電持続時間の最初の3分の1の間に、前記充電電流を次第に増加させるようにさらに構成される、請求項
27に記載の急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【請求項29】
前記バッテリ管理ユニットが、前記バッテリの前記低下する容量の推定に応じて前記充電電流増加を調節するようにさらに構成される、請求項
27に記載の急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【請求項30】
前記狭い範囲が、3~4V以内であり、前記少なくとも1つのより広い範囲が、1.8~4.95V以内である、或いは、前記狭い範囲が、3.1~4.3V以内であり、前記少なくとも1つのより広い範囲が、1.8~4.3V以内である、請求項
26から29のいずれか一項に記載の急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【請求項31】
前記少なくとも1つのより広い範囲が、前記バッテリの前記狭い範囲と全動作範囲の間で電圧範囲を拡大する複数の連続した工程を含む、請求項
26に記載の急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【請求項32】
前記バッテリ管理ユニットが、前記バッテリのアノード材料粒子中にリチウムイオンを再分布させるように設定された1~10サイクルの全電圧範囲サイクルのセットを断続的に導入する工程をさらに含む、請求項
25から31のいずれか一項に記載の急速充電リチウムイオンバッテリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 関連出願の相互参照
本願は、参照によりその全体を本明細書に組み込む、2017年1月12日出願の米国仮特許出願第62/445299号の利益を主張するものである。
【0002】
[0002] 本発明は、リチウムイオンバッテリの分野に関し、さらに詳細には、高速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を増加させる形成プロセス及び動作パターンに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リチウムイオンバッテリは、通常、様々なデバイス及び機器の電力を供給するためのエネルギー蓄積デバイスとして使用され、電解質からアノード材料中へのリチウムイオンのリチオ化(黒鉛アノードの場合にはインタカレーション)によって動作し、初期の充電及び放電サイクルにおいて、SEI(固体/電解質界面:solid-electrolyte interphase)層が、電解質成分とアノード表面上のLiイオンの間の相互作用によって形成され、セル容量、サイクル寿命、及び劣化機構に関してセルの適切な後の動作をサポートする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004] 以下は、本発明の初歩的な理解をもたらす簡潔な概要である。この概要は、必ずしも重要な要素を特定するものでも、本発明の範囲を限定するものでもなく、単に以下の説明への導入として役立つものに過ぎない。
【0005】
[0005] 本発明の1つの態様は、リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を延長する方法であって、C/30未満のレートでバッテリを完全に充電し、その後にバッテリを放電する第1のサイクルを実行し、その後に、複数の充電/放電サイクルを実行することによってバッテリの形成プロセスを実行する工程と、最初に1.5V未満の狭い電圧範囲で、その後に、バッテリの容量の指定の劣化を検出したときに、1.5V超の少なくとも1つのより広い電圧範囲で、バッテリを動作させる工程とを含む、方法を提供する。
【0006】
[0006] 本発明の上記の、追加の、且つ/又はその他の態様及び/又は利点について、以下の詳細な説明で述べるが、それらは、場合によってはこの詳細な説明からは推測することができ、且つ/又は本発明の実施によって学ぶことができるものであることもある。
【0007】
[0007] 本発明の実施形態がよりよく理解されるように、また、本発明をどのように実施することができるかを示すために、ここで、単に例示のみを目的として、添付の図面について言及する。これらの図面においては、全体を通じて、同じ番号は対応する要素又は部分を指している。
【0008】
[0008]
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0009]本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を増加させるシステム及び方法を示すハイレベル概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を増加させるシステム及び方法を示すハイレベル概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を増加させるシステム及び方法を示すハイレベル概略図である。
【
図4】[0010]本発明のいくつかの実施形態による、形成プロセスの非限定的な例を示す図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、形成プロセスの非限定的な例を示す図である。
【
図6】[0011]本発明のいくつかの実施形態による、定充電電流を使用した場合と比較したときの第1のサイクルの電流調節を使用した場合のサイクル寿命の追加の改善を示す非限定的な例を示す図である。
【
図7】[0012]本発明のいくつかの実施形態による、2つの形成プロセスの非限定的な例を示す図である。
【
図8】[0013]本発明のいくつかの実施形態による、セルサイクル構成を特徴とするSEI形成プロセスで充電される急速充電リチウムイオンセルを示すハイレベル概略図である。
【
図9】[0014]本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリの動作を示すハイレベル概略図である。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリの動作を示すハイレベル概略図である。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリの動作を示すハイレベル概略図である。
【
図12】[0015]本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリユニット又はバッテリを複数の電圧範囲で動作させるパラメータの制御を示すハイレベル概略図である。
【
図13】[0016]本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリユニット又はバッテリを複数の動作電圧での動作を示すハイレベル概略図である。
【
図14A】[0017]本発明のいくつかの実施形態による、開示する方式に従って動作するときの急速充電バッテリの改善された性能を示す結果を示す図である。
【
図14B】本発明のいくつかの実施形態による、開示する方式に従って動作するときの急速充電バッテリの改善された性能を示す結果を示す図である。
【
図15】[0018]本発明のいくつかの実施形態による、バッテリの低下する容量に応じて充電電流を調節して動作するバッテリの増加したサイクル寿命の非限定的な例を示す図である。
【
図16A】[0019]本発明のいくつかの実施形態による、セルの劣化に対応する電流調節の例を示す図である。
【
図16B】本発明のいくつかの実施形態による、セルの劣化に対応する電流調節の例を示す図である。
【
図16C】本発明のいくつかの実施形態による、セルの劣化に対応する電流調節の例を示す図である。
【
図17】[0020]本発明のいくつかの実施形態による、バッテリの動作中の充電の開始時の電流増加の非限定的な例を示す図である。
【
図18A】[0021]本発明のいくつかの実施形態による、電流調節を用いたサイクル中のセルの温度を示す図である。
【
図18B】充電電流を一定値にしたサイクル中のセルの温度を示す図である。
【
図19】[0022]本発明のいくつかの実施形態による、様々なアノード構成を示すハイレベル概略図である。
【
図20A】[0023]本発明のいくつかの実施形態による、バッテリの動作中のアノード材料粒子のリチオ化及び脱リチオ化の概略的なモデルを示す図である。
【
図20B】本発明のいくつかの実施形態による、バッテリの動作中のアノード材料粒子のリチオ化及び脱リチオ化の概略的なモデルを示す図である。
【
図20C】本発明のいくつかの実施形態による、バッテリの動作中のアノード材料粒子のリチオ化及び脱リチオ化の概略的なモデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0024] 以下の記述では、本発明の様々な態様について説明する。説明のために、本発明が十分に理解されるように、具体的な構成及び詳細を記載する。ただし、当業者には、本明細書に提示する具体的な詳細がなくても本発明を実施することができることも明らかであろう。さらに、本発明を分かりにくくしないように、周知の特徴は、省略したり簡略化したりしていることもある。特に図面に関しては、示してある詳細は、例示を目的としたものであり、本発明を例証的に説明するためのものに過ぎず、本発明の原理及び概念的態様の最も有用且つ理解の容易な説明と考えられるものを提供するために提示したものであることを強調しておく。この点で、本発明の構造的詳細については、本発明の基本的な理解に必要である以上に詳細に示そうとは試みておらず、この説明を図面と合わせて読めば、当業者には、本発明のいくつかの形態をどのように実施することができるかが明らかになる。
【0011】
[0025] 本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、以下の説明に記載する、又は図面に示す構成要素の構造及び配置の詳細への適用のみに限定されないことを理解されたい。本発明は、様々な方法で実施又は実行され得る他の実施形態、及びそれらの開示した実施形態の様々な組合せに適用可能である。また、本明細書で利用する語法及び用語は、説明のためのものであり、限定的なものとして解釈すべきではないことも理解されたい。
【0012】
[0026] 特に指定しない限り、以下の説明から明らかであるように、本明細書を通じて、「処理」、「算定」、「計算」、「決定」、「向上」などの用語を用いた説明は、コンピューティングシステムのレジスタ及び/又はメモリ内の電子量などの物理量として表現されるデータを操作し、且つ/或いはやはりコンピューティングシステムのメモリ、レジスタ、若しくはその他のそのような情報記憶装置、伝送デバイス、又は表示デバイス内の物理量として表現される他のデータに変換する、コンピュータ又はコンピューティングシステム或いはそれに類する電子コンピューティングデバイスのアクション及び/又はプロセスを指すことを理解されたい。開示するモジュール又はユニットはいずれも、少なくとも部分的にはコンピュータプロセッサによって実装することができる。
【0013】
[0027] 本発明の実施形態は、安定したSEIを形成することによって特に急速充電のシナリオにおいてより長い期間動作するリチウムイオンセルを準備するための効率的且つ経済的な方法及び機構を提供し、それにより急速充電バッテリの技術分野の改善をもたらす。
【0014】
[0028] 急速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を増加させる、方法、システム、及びバッテリモジュールを提供する。形成プロセス中に、場合によっては形成プロセス自体の特徴に応じて、セル形成を最適化するように充電電流を調節し、形成プロセスの全体構造と同様に、放電の程度も部分的にし、最適化する。動作時には、電圧範囲を最初は狭く設定し、バッテリが劣化したら拡大して、全体の寿命を最大限にする。また、動作時に、バッテリの低下する容量を基準として電流の調節を適用する。詳細な最適化の基礎として、様々な形成及び動作ストラテジを開示する。
【0015】
[0029] SEI(固体/電解質界面)形成プロセスを改善し、SEIの安定性の向上によって急速充電リチウムイオンセルにより長い寿命を与える、セル及び方法を提供する。SEI形成方法は、例えば最初のサイクルでは完全な充電及び放電を行い、その後は複数の連続したサイクルで部分的な充電及び放電を行う、或いは最初のサイクルでは部分的な充電及び放電を行い、その後も複数の連続したサイクルで部分的な充電及び放電を行うなど、SEI形成サイクルの少なくとも一部で部分的な充電及び/又は放電を行うことを特徴とする。SEI形成方法は、低電流を使用することを含むこともある。
【0016】
[0030] 開示する実施形態は、主に、例えば5C、10C、15C、30C、100C、又はそれ以上など、3~10Cレート、10~100Cレート、又は100C超の範囲の高い充電及び/又は放電レート(Cレート)を特徴とする急速充電バッテリに関する。なお、Cレートという用語は、セル/バッテリの容量の充電及び/又は放電の割合の測度であり、例えば、セルの所与の容量に対して、1Cは、セルを1時間で充電及び/又は放電することを示し、XC(例えば5C、10C、50Cなど)は、セルを1/X時間で充電及び/又は放電することを示すことに留意されたい。特定の実施形態では、充電電流という用語とCレートという用語は、開示するように所与のセル容量及び/又は決定されたセル容量に関して、非限定的に入れ替え可能に使用される。
【0017】
[0031] 発明者等は、バッテリが比較的新しく、高い容量を有しているときには狭い電圧範囲内でバッテリから電力を送達し、バッテリの抵抗が増大し、その容量が低下して始めて電圧範囲を拡大することによって、急速充電リチウムイオンバッテリの寿命を延長することができることを発見した。この動作方式は、はじめから全電圧範囲内で動作させる従来技術によるリチウムバッテリの動作とは対照的であり、それより優れている。発明者等は、開示する動作方式により、急速充電リチウムイオンバッテリの寿命が延びることを発見した。
【0018】
[0032] 狭い範囲から開始してより広い範囲に到達するようにバッテリの健康状態に応じてバッテリから供給される電圧レベルの範囲を修正して、バッテリの寿命を最大限に延ばす、急速充電リチウムイオンバッテリ、並びに充電管理モジュール及び方法を提供する。供給電圧レベルの範囲は、バッテリの容量の損失を最小限に抑え、それによりバッテリの寿命を延長するように、バッテリの抵抗に応じて決定することができる。
【0019】
[0033] 本発明の実施形態は、バッテリの出力電圧レベルを制御することによってバッテリの性能を改善する、効率的且つ経済的な方法及び機構を提供し、それにより急速充電リチウムイオンバッテリの技術分野に改善をもたらす。
【0020】
[0034] 特定の実施形態では、急速充電リチウムイオンバッテリは、任意数のセルを含むことができ、それらがそれぞれ、様々な材料のうちのいずれかで構成された、1つ又は複数のアノード、1つ又は複数のカソード、1つ又は複数のセパレータ、及び1種類又は複数種類の電解質を有する。例えば、アノードは、アノード材料粒子(例えば100~500nmの直径を有する)の形態のアノード材料で構成されることがあり、これらのアノード材料粒子は、例えばケイ素、ゲルマニウム、及び/又はスズなどのメタロイドの粒子、並びに/或いは場合によってはチタン酸リチウム(LTO)の粒子、場合によってはアルミニウム、鉛、及び/又は亜鉛の粒子を含むことがあり、さらに、ナノ粒子(例えばB4C、WC、VC、TiN)、ホウ酸塩、及び/又は1種類又は複数種類のリン酸塩などの様々な粒子表面要素(例えば10~50nm以下の直径を有する)、並びに/或いはナノ結晶、及び場合によってはポリマーコーティング(例えば導電性ポリマー、リチウムポリマー)を含むこともある。アノードは、ボールミル粉砕プロセスで調製されたアノードスラリで構成されることもあり、さらに、1種類又は複数種類の結合剤、1種類又は複数種類の可塑剤、及び/或いは1種類又は複数種類の導電性充填材などの1種類又は複数種類の添加物を含むこともある。特定の実施形態では、アノードは、黒鉛又は黒鉛系とすることがある。カソードは、層状、スピネル、及び/又はカンラン石状のフレーム構造を含むことがあり、LCO組成(LiCoO2に基づく)、NMC組成(リチウムニッケルマンガンコバルトに基づく)、NCA組成(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物に基づく)、LMO組成(LiMn2O4に基づく)、LMN組成(リチウムマンガンニッケル酸化物に基づく)、LFP組成(LiFePO4に基づく)、リチウムリッチカソード、及び/又はそれらの組合せなど、様々な組成を含むことがある。セパレータは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はその他の適当な材料など、様々な材料を含むことがある。電解質は、後述する炭酸塩系の環式又は直鎖化合物など、幅広い範囲の対応する流体のいずれかを含むことがある。
【0021】
[0035]
図1、
図2、及び
図3は、本発明のいくつかの実施形態による急速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を増加させるシステム401及び方法400を示すハイレベル概略図である。
【0022】
[0036]
図1は、本発明のいくつかの実施形態によるバッテリ形成及び動作システム401を示すハイレベル概略ブロック図である。通常はバッテリ製造工場で実行される形成プロセス200、及び通常はバッテリ90のユーザによって実行される動作プロセス300は、開示する実施形態では、主として、バッテリ90のサイクル寿命、すなわち既定の性能劣化状態に到達する(例えば容量が当初の容量の80%、又は指定値に到達する)までにバッテリ90を使用することができる充放電サイクル数を増加させるように構成され、最適化される。形成200中に、充電管理モジュールである制御装置105によって制御される充電/放電システム100は、通常は第1のサイクル120A及び後続のサイクル120Bとして特徴付けられる、バッテリ90の複数の充電及び放電ステップを含む形成サイクル120を実行するように構成される。制御装置105によって決定することができるサイクル特性の例は、充電終了(Cエンド)基準101(概略的な形成曲線上に示す例101A)、並びに番号101Bで概略的に示す充電(最大容量又は電圧)及び放電(放電深度DoD)の程度である。以下に開示する特定の実施形態は、形成プロセスを最適化するようにこれらの基準を規定する方法を提供する。例えば、発明者は、半バッテリ91のアノード及びカソードのリチオ化容量を最初に測定し、測定した量を使用して形成基準101A、101Bを規定し、任意選択で、バッテリ90の形成曲線120からのフィードバック106を提供して、形成200自体の間に形成基準101A、101Bを修正する。或いは、以下に開示する特定の実施形態は、これらの基準を規定する方法を、その後のバッテリの形成プロセス200の形成パラメータを導出する方法として提供する。動作300中に、少なくとも部分的にはバッテリ90と一体化することもできるバッテリ管理システム(BMS)などの制御装置135は、デバイス内のバッテリ90の充電及び/又は放電ウィンドウ141を、その用途に応じて決定する。充電及び/又は放電ウィンドウ141は、バッテリ90の動作曲線141Aを決定する。この動作曲線は、開示する実施形態では、通常は、狭い電圧範囲ウィンドウサイクル140から開始し、この電圧範囲ウィンドウは、バッテリ90が劣化するにつれて、バッテリが動作可能である(従来技術のデフォルト動作電圧範囲である)最大電圧範囲145まで次第に増大する(140A、…140N)。任意選択で、フィードバック137Aを制御装置135に提供して、充電ウィンドウの修正を最適化することもできる。形成プロセス200から導出されるパラメータは、以下に開示するように、動作プロセス300のサイクルを制御する際に使用することができる。
【0023】
[0037]
図2及び
図3に概略的に示すように、方法400は、バッテリの形成プロセスを実施するステップ(ステージ200)と、本発明の実施形態に従って急速充電リチウムイオンバッテリのサイクル寿命を延長するようにバッテリを動作させるステップ(ステージ300)とを含むことができる。
【0024】
[0038] 方法400は、C/30未満のレートでバッテリを完全充電する第1のサイクルを実行することによってバッテリの形成プロセス200を実施するステップと、その後にバッテリを放電するステップ(ステージ240)、その後に例えばC/5などC/10以上で複数の充電/放電サイクルを実行するステップ(ステージ245)とを含むことができる。
【0025】
[0039] 形成プロセス200では、方法400は、第1のサイクルの前に、セル容量を、リチウムに関して半セルで測定されるアノードの第1のリチオ化容量とカソードの第1の脱リチオ化容量(ステージ410)のうちの低い方として決定するステップ(ステージ405)と、第1のサイクルの充電を終了する基準である決定したセル容量(C)に到達したときに第1のサイクルの完全充電を終了するステップ(ステージ410)とをさらに含むことができる。例えば、セル容量は、以下の数式1に示すように定義することができる。
数式1
C0(mAh)=Min(セル内のカソード材料質量・Cc、セル内のアノード材料質量・Ca)
Cc(mAh/gr)=半セル内のLi金属に対するカソードの第1の脱リチオ化容量
Ca(mAh/gr)=半セル内のLi金属に対するアノードの第1のリチオ化容量
【0026】
[0040] 非限定的な例では、第1の形成サイクルをC0/30レートで実行して完全充電を行い、その後に放電を行うことができ、その後のサイクルは、C1/10レートで4サイクル以上とすることができる。ここで、C1は、第1のサイクル後に測定又は推定された放電容量である。方法400は、形成したバッテリの寿命を改善するために発明者等が発見した、後続の形成サイクルの数を増加させるステップ(ステージ420)を含むことができる。
【0027】
[0041] 形成プロセス200の特定の実施形態では、方法400は、決定したセル容量、又はその指定百分率に到達するなどの充電終了基準101に対応する、
図1に番号101Aで概略的に示す、決定したセル容量、又はその指定百分率に到達したときに、複数の充電/放電サイクルの充電を終了するステップ(ステージ425)をさらに含むことができる。形成プロセス200の特定の実施形態では、方法400は、各サイクルで決定される放電容量に応じてセル容量を調節し、それに応じて各サイクルの充電を終了するステップ(ステージ427)をさらに含むことができる。いずれの場合も、充電終了基準101(第1のサイクル120A又は後続のサイクル120Bなど、形成ステージ120のいずれかにおける)の調節は、形成プロセスの効率及び持続時間を最適化するように設定することができる。
【0028】
[0042] 非限定的な例では、第1の形成サイクルをC
0/30レートで実行して完全充電を行い、その後にC
1/10レートで4以上のサイクルを行うことができる。ここで、C
1は、第1のサイクル後に測定又は推定された放電容量である。方法400は、形成したバッテリの寿命を改善するために発明者等が発見した、後続の形成サイクルの数を例えば4充電/放電サイクル以上に増加させるステップ(ステージ420)を含むことができる。
図4は、本発明のいくつかの実施形態による形成プロセス200の非限定的な例を提供する。
図4は、CC-CV(定電流-定電圧)第1の形成サイクル120A及び後続の形成サイクル120Bを示しており、後続の形成サイクル120Bは、4サイクルである。この形成及び動作の非限定的な例は、セル容量の制限がなく、後続の形成サイクルが4未満、通常は1サイクル又は2サイクルである従来技術の形成と比較して、セル寿命の改善をもたらしたが、この形成プロセスは、かなり時間がかかり、約120時間かかる。
【0029】
[0043] 形成プロセス200の特定の実施形態では、方法400は、セル抵抗、電流変化、及び/又は電圧時間曲線の導関数(例えば1次、2次)など、様々なセルパラメータのうちのいずれかに応じて、充電中に第1のサイクルの充電ステージの電流を調節するステップ(ステージ430)をさらに含むことができる。例えば、形成プロセス200では、方法400は、少なくとも第1のサイクル中に、次第に、場合によっては指定されたしきい値に従うように、例えば最大C/50から最大C/30にCレートを次第に増加させる、すなわち充電電流を増加させるステップ(ステージ435)をさらに含むことができる。充電電流を増加させるレートは、本明細書に開示するセル測定値に対して実時間で決定することもできるし、或いは例えば初期検査、又は以前の経験、モデル化、若しくは推定に従って予め決定することもできる。
【0030】
[0044] 形成プロセス200の特定の実施形態では、方法400は、濡れ性を向上させるために、非常に低いCレートで第1のサイクルの少なくとも一部分を実行するステップ(ステージ440)をさらに含むことができる。発明者等は、低い初期形成電流(例えばC/77)にすると、バッテリの極管の電位により電極表面の電解質による濡れが向上することを発見した。少なくとも最初に小さい電流を印加することにより、正端子と負端子の間に大きな電位差が生じ、濡れプロセスが向上する。例えば、初期形成電流は、C/60、C/70、C/80、又はそれより低い充電レートのいずれかにすることができる。特定の実施形態では、第1のサイクルの充電は、少なくとも充電持続時間の3分の1の間、C/50未満のレートで実行することができる。特定の実施形態では、第1のサイクルは、第1のサイクル中に、少なくとも充電期間の3分の1の間、最大C/70から最大C/50に充電電流を次第に増大させることによって行うことができる。特定の実施形態では、低い初期形成電流は、例えば第1のサイクルの持続時間の1/10、1/5、又は1/4など、第1のサイクルのより短い一部、或いは第1のサイクルの持続時間の1/2又は2/3など、第1のサイクルのより長い一部にわたって印加することもできる。例えば、表1は、第1のサイクル120A中の電流の漸増の非限定的な例を示している。この例では、充電電流は、(非限定的な例として)5段階で次第に増大させることができ、本発明のいくつかの実施形態によれば、各段階は、ある範囲の充電電流(Cレートに関して表される)及びある範囲の持続時間によって特徴付けられる。各段階は、その特定の時間的制限により、さらに小さな段階に分解することもできるし、或いは連続した複数の段階と結合することもできる。段階ごとの変化は、線形、且つ/或いは段階的、且つ/或いはaX3+bX2+cX+d又はその他の任意の形態の多項式に従うようにすることができる。ここで、Xは、時間であり、a~dは、係数である。特定の実施形態では、電流は、第1の形成サイクル中に、任意の時間の関数によって段階的又は連続的に上昇させることもできるし、予め決定しておくこともできるし、或いは修正することもできる。表2は、本発明のいくつかの実施形態による、異なる制限を有する電流の漸増及び任意選択の電圧の増大の2つの非限定的な例を示している。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
[0045] 形成プロセス200の特定の実施形態では、方法400は、後続の形成サイクル中に狭い範囲の電圧を印加するステップ(ステージ450)をさらに含むことができる。形成プロセス200の特定の実施形態では、方法400は、後続の形成サイクル中に放電電流範囲を調節するすステップ(ステージ460)をさらに含むことができる。例えば、形成プロセスの後続の充電/放電サイクル中に、各サイクルでバッテリを最大セル容量の30~80%の間に充電及び放電することができる。
【0035】
[0046]
図5は、本発明のいくつかの実施形態による、形成プロセス200の非限定的な例を示す図である。図示の非限定的な例では、第1の形成サイクルは、C
0/30レートで実施して、セルの開示する特徴及びセルの充電パラメータのうちのいずれかに関するフィードバック106に従って電流調節(ステージ430)を行って完全充電(サイクル120A)を行い、その後に部分放電を行うことができ、後続のサイクルは、C
1/10の第2のサイクル(サイクル120B-第1)及びC
2/5の2つのサイクル(120B)を含むことができる。ここで、C
1は、第1のサイクル後に測定又は推定した放電容量を示し、C
2は、第2のサイクル後に測定又は推定した放電容量を示す。この例では、寿命の改善を維持しながら、総形成時間が80時間に短縮された。
【0036】
[0047] 発明者等は、理論に束縛されるものではないが、充電電流及び/又は電圧範囲を制限及び/又は調節することにより、後により短いサイクル寿命で明らかになるように、SEIの適切な形成に寄与せず、SEIの品質を劣化させる可能性もある、電極/電解質界面における寄生プロセスを防止することができることを示唆している(例えば、Ning and Popov 2004、Cycle Life Modeling of Lithium-Ion Batteries、Journal of the Electrochemical Society、2004年、A1584-A1591ページ参照)。
【0037】
[0048] フィードバック106は、様々な所定の基準、並びに/或いは時間、抵抗、容量、電圧(電流が予め決定されている場合)、電流(電圧が予め決定されている場合)など、並びにバッテリパラメータ及び形成プロセスパラメータの時間微分などの形成プロセス中の測定パラメータに従って、充電及び/又は放電における電圧範囲及び使用電流、並びに電流電圧の段階持続時間及びその他のパラメータなど、形成プロセスパラメータ(
図1参照)の充電電流又はその他の任意のパラメータを調節する働きをすることができる。
【0038】
[0049]
図6は、第1のサイクルで一定の充電電流を使用する場合(
図4)に対する、本発明のいくつかの実施形態による、上記に開示したように第1のサイクルで電流調節(
図5のステージ430)を用いるときのサイクル寿命の追加の改善を示す非限定的な例を示す図である。この非限定的な例では、サイクル寿命が約15%改善される。
図6は、後述の動的電圧変化サイクル手順による、10Cの充電及びC/2の放電という動作条件下での、セルのサイクル寿命にわたるセルの正規化容量を示している。動作電圧範囲は、3~4.2Vの狭い範囲140から開始し、容量が低下するにつれて、最も広い電圧動作範囲145に到達するまで140A…140Nと段階的に拡大する(例えば、
図13参照)。
【0039】
[0050]
図7は、本発明のいくつかの実施形態による、2つの形成プロセス200の非限定的な例である。両プロセスとも、電流調節430を、(i)1つの第1のサイクル120Aで3~4Vの電圧範囲で、また(ii)2つの第1のサイクル120A(第1)及び120A(第2)で3~4.2Vの電圧範囲で、利用している。発明者等は、プロセス(i)は、プロセス(ii)が形成プロセスに51時間かかるのに対して39時間しかかからず、プロセス(i)の方が、プロセス(ii)よりも形成されたセルの容量が約3~3.5%(充電レートによる)低いが、プロセス(i)は約10%長いサイクル寿命を提供し、プロセス(ii)では349時間であるのに対してプロセス(i)では383時間であることを発見した。この非限定的な例は、サイクル寿命を得られる容量と交換することができることを示しており、これにより形成プロセスの開示した最適化が可能になる。なお、本明細書に開示するように形成サイクル中に部分放電(100%DoDに到達しない)を行うと、形成されたバッテリのサイクル寿命をさらに延長したことに留意されたい。いずれの変形形態も、従来技術の形成プロセスと比較して、また
図4に示すような形成プロセスと比較して、より高いセル容量及びより長いサイクル寿命、並びにより短い形成時間を提供することを強調しておく。
【0040】
[0051]
図8は、本発明のいくつかの実施形態による、セルサイクリング構成120を特徴とする、急速充電リチウムイオンセル90をSEI形成プロセス401中に充電する様子を示すハイレベル概略図である。発明者等は、第1の形成充電サイクル及び/又は後続の形成充電サイクル中に形成電圧を(充電の定電圧段階で)低下させると、効率的な形成及びアノード容量の増大をもたらすことができることを発見した。
【0041】
[0052]
図8は、SEI95がアノード92と電解質96の間の界面に形成された、カソード94、セルセパレータ98、電解質96、及びアノード92(及び/又はアノード材料粒子150、以下の
図19参照)を含むセル90を概略的に示している。SEI形成プロセスは、電解質96からアノード92に移動し、アノード表面で還元されてSEIを形成するリチウムイオンLi
+の電気化学的相互作用によってセル90を充電及び放電する第1のサイクルにわたって行う。ほとんどのLi
+はアノード92でインタカレートされるが(インタカレートされたリチウム原子はLi
~0lで示す)、一部のLi
+はアノード表面で還元され(Li
0で示す)、セル90のその後の動作中にバリヤとして機能するSEIを形成し、このバリヤが、それ以上のLi
+の還元を防止する、又は有意に低減させ、セル容量の損失を最小限に抑えた効果的なリチオ化及びLi
+の解放をサポートする。セル90は、1つ又は複数の第1のサイクル110及び後続の1つ又は複数のサイクル115における充電及び放電範囲を決定する制御装置又は充電管理モジュール105を有する、形成プロセス中にセル90を充電及び放電するように構成された充電システム100によって、第1のサイクルで充電及び放電される。なお、形成プロセスは、バッテリがエンドユーザに送達される前に、工場で行われることに留意されたい。従来技術のSEI形成プロセスは、セルを1回又は複数回完全に充電し、完全に放電することによって行うが、発明者等は、理論に束縛されるものではないが、SEI形成サイクルの少なくともいくつかで部分充電及び/又は放電を行うことにより、より良好なSEI、及びより長いセル動作寿命が提供されることを示唆する。なお、以下に開示するように(
図19参照)、開示する形成プロセスは、黒鉛系アノード92、並びに/或いはSi、Ge、及び/又はSnなどのメタロイドなど他の材料のいずれかで構成されたアノード92で行うことができることに留意されたい。
【0042】
[0053] いくつかの実施形態では、SEI形成120は、セル90を完全に充電し、その後にセル90を完全又は部分的に放電する(例えば、セル90をセル容量又はDODすなわち放電深度の100%、90%、85%、又はそれらの中間値から放電する)第1のサイクル110を実行し、その後、各サイクル115で最大セル容量の10~100%の間に充電及び放電するセル90を複数の充電/放電サイクル115を実行することによって(形成方式120A)、行うこともできる。例えば、第1のサイクル110は、例えば0.1C、0.03C、0.01C、又はその中間値で行うことができ、後続のサイクル115は、0.2C、0.1C、0.05C、又はその中間値で行うことができる。
【0043】
[0054] いくつかの実施形態では、SEI形成120は、セル90を全セル容量の30~80%まで充電し、その後にセル90を完全又は部分的に放電する(例えば、セル90をセル容量又はDoDの100%、90%、85%、又はそれらの中間値から放電する)第1のサイクル110を実行し、その後、各サイクル115でセル90を最大セル容量の100%に充電した後に完全又は部分的に放電する(例えば、セル容量又はDoDの100%、90%、85%、又はそれらの中間値から放電する)複数の充電/放電サイクル115を実行することによって(形成方式120B)、行うこともできる。例えば、第1のサイクル110は、例えば0.1C、0.03C、0.01C、又はその中間値で行うことができ、後続のサイクル115は、0.2C、0.1C、0.05C、又はその中間値で行うことができる。
【0044】
[0055]
図8は、本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンセル90がSEI形成プロセス120で充電される様子をさらに示している。形成プロセス120の図示の実施形態120C、120D、120E、120Fは、全て、従来技術の形成プロセスで使用される全電流より低い電流レベルを使用する。発明者等は、(充電の定電圧の前の段階で)形成電流を最適化することにより、効率的な形成、及びアノード容量の増大をもたらすことができることを発見した。
【0045】
[0056] 特定の実施形態では、低レベルの電流から開始して、場合によっては後の形成サイクルで全電流に到達するまで充電電流をサイクルごとに次第に増大させて、複数の形成サイクルを適用することができる。以下、非限定的な例、すなわち4以上のサイクル(図示の第1のサイクル110、第2のサイクル115A、第3のサイクル115B、及び後続のサイクル115)を有する形成方式120C、3つのサイクル(第1のサイクル110、第2のサイクル115A、及び第3のサイクル115B)を有する形成方式120D、2つのサイクル(第1のサイクル110、及び第2のサイクル115A)を有する形成方式120E、並びに低電流(場合によっては次第に増加する電流、例えば
図5を参照されたい)を使用する1つのサイクル(第1のサイクル110)を有する形成方式120Fを示す。
【0046】
[0057] 特定の実施形態では、形成プロセス120は、低下したレベルの電流を使用して1つの充電サイクル110で実施することができる。特定の実施形態では、第1のサイクル110中の充電電流レベルは、場合によってはセル抵抗、電流変化、並びに/或いは1次導関数及び/又は2次導関数などの電圧時間曲線の導関数など、形成120中のセル90の様々なパラメータの測定に従って、形成プロセス中に変化させることができる。
【0047】
[0058] 特定の実施形態では、1つ又は複数の第1のサイクル110及び/或いは1つ又は複数の後続のサイクル115におけるセル90の充電は、それぞれアノード92に送達される電荷の推定量、及びアノード92から送達される電荷の推定量に関して実施される。発明者等は、アノードに移動する電荷の量及びアノードから移動する電荷の量を管理することによって、SEI形成プロセスをより良好に制御できるようになることを発見した。特定の実施形態では、その結果得られる急速充電リチウムイオンセル90は、SEIの安定性及び機能が改善され、場合によってはアノード及びセルの容量が改善されることにより、寿命を向上させた。
【0048】
[0059]
図3に戻り、形成方法200は、以下のステージを順不同で含むことができる。この方法のステージは、方法200を実施するように構成することができる、本明細書に記載するセル90に関して実施することができる。方法200は、少なくとも部分的には、例えば充電管理モジュール105内に実装される、セル90の充電及び放電を制御する少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって実施することができる。特定の実施形態は、方法200の関連するステージを実行するように構成されたコンピュータ可読プログラムが実装されたコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品を含む。方法200は、以下のステージのいずれかなど、セル90を製造するステージ、セル90を準備するステージ、及び/又はセル90を使用するステージを含むことができる。
【0049】
[0060] 方法200は、例えばセルを完全に充電し、その後にセルを放電する第1のサイクルを実行し(ステージ220)、その後、各サイクルでセルを最大セル容量の10~100%まで充電及び放電する複数の充電/放電サイクルを実行する(ステージ225)など、アノードにSEIを形成することによって、急速充電リチウムイオンセルを使用できるように準備するステップ(ステージ210)を含む。
【0050】
[0061] 或いは、様々な実施形態では、形成計画及び要件に応じて、方法200は、全セル容量の30~70%までセルを充電し、その後にセルを放電する第1のサイクルを実行するステップ(ステージ230)と、その後、各サイクルでセルを全セル容量の70%、80%、90%、又は100%のいずれかまで充電し、その後に放電する、複数の充電/放電サイクルを実行するステップ(ステージ235)とを含むこともできる。
【0051】
[0062] 例えば、第1のサイクル(ステージ220及び/又は230)を0.03Cで実施し、後続のサイクル(ステージ225及び/又は235)を0.1Cで実施することもできる。
【0052】
[0063] 特定の実施形態では、セルを完全に充電し、その後にセルを放電する第1のサイクルを少なくとも実行することによって、アノードに固体/電解質界面(SEI)を形成することによって、急速充電リチウムイオンセルを使用できるように準備するステップを含むことができ、ここで、第1のサイクルの第1の印加充電電流は、例えばC/50未満、C/60未満、C/70未満など、非常に低い(ステージ250)。特定の実施形態は、充電電流をサイクルごとに次第に増大させるステップ(ステージ255)と、場合によっては1つの低電流充電サイクルで形成プロセスを実施するステップ(ステージ260)とを含む。
【0053】
[0064]
図2に戻って、方法400は、最初に例えば1.5V未満の狭い電圧範囲でバッテリ300を動作させるステップ(ステージ470)と、その後、バッテリの容量の指定の劣化が検出されたときに、例えば1.5V超の少なくとも1つのより広い電圧範囲でバッテリを動作させるステップ(ステージ480)とを含むことができる。例えば、狭い範囲は、3~4V以内とすることができ、より広い範囲のうちの少なくとも1つは、1.8から4.95V以内とすることができる。別の例では、狭い範囲は、3.1~4.3V以内とすることができ、より広い範囲のうちの少なくとも1つは、1.8から4.3V以内とすることができる。この少なくとも1つのより広い範囲は、狭い範囲(図示の140)とバッテリの全動作範囲(図示の145)の間で電圧範囲を増大させる(図示の140A…N)複数の連続したステップを含むことができる。例えば、狭い範囲140は、3.1~4.3V以内とすることができ、連続した範囲140A…140Cは、3.0~4.3V以内、2.8~4.3V以内、及び2.5~4.3V以内とすることができ、全範囲145は、1.8~4.3V以内とすることができる。
【0054】
[0065] 特定の実施形態では、バッテリ300の動作は、場合によっては形成プロセス200中に実行される調節(ステージ427)の後で、上記の数式1に示すように、例えば10C
2(充電)及びC
2/2(放電)など、後続の形成サイクル(図示のC
2)の最後のサイクルの後に測定又は推定した放電用量に関して計算したレートで、実施することができる。さらに、バッテリ300の動作中に、方法400は、バッテリの劣化する容量の推定に従って充電電流を調節するステップ(ステージ490)をさらに含むことができる。特定の実施形態では、バッテリ300の動作中に、方法400は、バッテリの充電持続時間の最初の3分の1の間に次第に充電電流を増大させるステップ(ステージ492)と、場合によっては、バッテリの劣化する容量の推定に従って充電電流の増大を調節するステップ(ステージ495)とをさらに含むことができる。電流の増大については、例えば以下の
図17を参照されたい。
【0055】
[0066]
図9~
図11は、本発明のいくつかの実施形態による、電圧範囲を次第に増大させる際に急速充電リチウムイオンバッテリ90を動作させるシステム132を示すハイレベル概略図である。システム132は、急速充電リチウムイオンバッテリ90のサイクル寿命を増加させるように構成されたシステム401の少なくとも一部とすることができる。バッテリユニット130は、バッテリ90を(例えば1つ又は複数のパック又はセルとして)含み、通常は、バッテリユニット130に接続されたデバイス82に電力を供給する際の動作電圧範囲など、様々なバッテリ動作パラメータを決定するように構成された充電管理モジュール135(
図9)を含む、且つ/又は充電管理モジュール135と関連付けられる。バッテリユニット130は、バッテリの抵抗及び容量などのバッテリ性能パラメータを監視するSOH(健康状態)及び/又はSOC(充電状態)モニタ137をさらに含む、且つ/又はSOH及び/又はSOCモニタ137と関連付けられることがある。システム132の様々な構成では、少なくとも1つの急速充電リチウムイオンバッテリ90を、以下に例示するように、初期の狭い範囲から開始して、全電圧範囲に到達するように(例えば、狭い範囲は1.5V未満、全範囲は2V超)、バッテリの健康状態、バッテリパラメータのいずれか(例えば抵抗、推定容量、充電状態など)に応じて、1つ又は複数のバッテリユニット130から供給される、或いは1つ又は複数のバッテリユニット130に供給される電圧レベルの範囲を修正するように構成された、1つ(又は複数)のバッテリ管理ユニット135と動作可能に関連付けることができる。特定の実施形態では、初期の狭い範囲は、バッテリの全動作範囲の30%、50%、70%、又は任意の中間値のいずれかとすることができる。
【0056】
[0067] いくつかの実施形態では、充電管理モジュール135及び/又はSOH/SOCモニタ137は、バッテリユニット130の外部にあって、バッテリユニット130と通信している、且つ/又は接触している、動作モジュール131(
図10に概略的に示す)の一部とすることができる。充電管理モジュール135及びSOH/SOCモニタ107の一方又は両方は、例えば動作モジュール131として、急速充電リチウムイオンバッテリ90とは別個にパッキングすることができる。
【0057】
[0068] いくつかの実施形態では、充電管理モジュール135(又は135A)及び/或いはSOH/SOCモニタ137は、充電器80及び/又はデバイス82と双方向通信していることもある動作モジュール131(
図10及び
図11に概略的に示す)の一部とすることができる。特定の実施形態(例えば
図11参照)では、充電管理の少なくとも一部は、動作モジュール131内(又は
図9に概略的に示すようにバッテリユニット130内)の充電管理モジュール135Aを補完する、又はそれに取って代わるように構成されることもある充電器80内の充電管理モジュール135Bによって実施することができる。充電器80内の充電管理モジュール135Bと動作モジュール131内の充電管理モジュール135A及び/又はバッテリユニット130内の充電管理モジュール135との間の通信は、双方向とすることができる。
【0058】
[0069] 充電管理モジュール135は、デバイス82内の電力管理モジュール84と通信して、供給電力のパラメータを調整し、デバイス82が設定された電圧範囲で適切に動作することを保証することができる。
【0059】
[0070] バッテリユニット130は、通常は充電管理モジュール135を構成することによって、初期の狭い動作範囲140から開始して、バッテリのセル抵抗が増大するにつれて後続のより広い動作範囲145に到達するように、バッテリ90の状態に応じてバッテリユニット130がサポートする電圧レベルの範囲を修正するように構成することができる。電圧範囲の修正は、バッテリ90の推定抵抗を基準として、例えばSOH/SOCモニタ137からのデータに従って、バッテリ90の容量を最大限にするように実施することができる。例えば、電圧範囲の修正は、充電電圧上限を引き上げ、且つ/又は放電電圧下限を引き下げることによって、実施することができる。いくつかの実施形態では、狭い範囲140は、3~4Vの間とすることができ、より広い範囲145は、1.8~4.95Vの間とすることができる。
【0060】
[0071] 特定の実施形態では、バッテリ管理ユニット135は、初期の狭い範囲140と全範囲145の間で電圧範囲を増大させる複数の連続したステップで電圧範囲を修正するように構成することができる。
【0061】
[0072] 特定の実施形態では、狭い範囲140の幅は、例えば範囲140が2.8~3.8V、3~4V、3.2~4.2Vである場合のように、約1Vとすることもできるし、場合によっては、それよりも小さく、例えば範囲140が2.8~3.6V、3~3.8V、3.2~4Vである場合のように、0.8Vなどにすることもできるし、場合によっては、それよりも大きく、例えば範囲140が2.8~4V、3~4.2Vである場合のように、1.2Vなどにすることもできる。
【0062】
[0073] 特定の実施形態では、狭い範囲140の幅は、例えば範囲140が1.8~4.8V、2~5Vである場合のように、約3Vとすることもできるし、場合によっては、それよりも小さく、例えば範囲140が1.8~4.3V、2~4.5V、2.2~4.7Vである場合のように、2.5Vなどにすることもできるし、場合によっては、それよりも大きく、例えば範囲140が1.6~4.8V、1.8~5Vである場合のように、3.2Vなどにすることもできる。
【0063】
[0074] 理論に束縛されるものではないが、急速充電バッテリ90は、低い抵抗を有するので、電圧範囲を(狭い範囲140からより広い範囲145に)拡大して、従来技術より容量を増大させることができるので有利である。
【0064】
[0075] 対応する充電器80によるバッテリユニット130の充電は、バッテリの様々な動作状態で、バッテリ90の放電中にデバイス82を動作させるために使用される狭い範囲140及びより広い範囲145と同様であることもある、対応する狭い範囲及びより広い範囲で実行することができる。
【0065】
[0076] 特定の実施形態は、狭い範囲から開始してより広い範囲に到達するように、バッテリの健康状態に応じてバッテリ90から供給される電圧レベルの範囲を修正するように構成された1つ又は複数の対応するバッテリ管理ユニット135を含む急速充電リチウムイオンバッテリユニット130を含む。
【0066】
[0077]
図3に戻って、動作方法300は、以下のステージを順不同で含むことができる。この方法のステージは、方法300を実施するように構成することができる、本明細書に記載するバッテリ90及び/又はバッテリユニット130に関して実施することができる。方法300は、少なくとも部分的には、例えば充電管理モジュール135内に実装される、バッテリユニット130からデバイス82へのエネルギー供給を制御する少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって実施することができる。特定の実施形態は、方法300の関連するステージを実行するように構成されたコンピュータ可読プログラムが実装されたコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品を含む。方法300は、以下のステージのいずれかなど、バッテリ90及び/又は1つ若しくは複数のバッテリユニット130を製造するステージ、それらを準備するステージ、並びに/或いはそれらを使用するステージを順不同で含むことができる。
【0067】
[0078] 方法300は、急速充電リチウムイオンバッテリを使用して、例えば狭い範囲から開始してより広い(場合によっては全)範囲に到達する(ステージ330)ように、バッテリの状態に応じてバッテリから供給される電圧レベルの範囲を修正する(ステージ310)ことによって、寿命を延長するようにバッテリの動作電圧を管理する(ステージ305)ことによって、デバイスを動作させるステップを含む。
【0068】
[0079] 特定の実施形態では、方法300は、バッテリの状態に応じて、抵抗、充電状態、容量など複数のバッテリパラメータのうちのいずれかに関して、バッテリを充電する電圧レベルの範囲を修正するステップ(ステージ315)をさらに含むことができる。この範囲を修正するステップ310(及び任意選択で315)は、バッテリの残りの容量に関して、これを最小限にする(ステージ317)ように、且つ/又はバッテリの容量フェードを最小限にするように、行うことができる。電圧範囲は、例えばバッテリの全動作範囲の30%、50%、70%、又は任意の中間値のいずれかである初期の狭い範囲から開始して(ステージ319)、初期の狭い範囲と全範囲との間で電圧範囲を増大させる複数の連続したステップで修正することができる(ステージ318)。
【0069】
[0080] 方法300は、バッテリの充電状態及び/又は健康状態を監視して、動作範囲を決定し(ステージ320)、それに応じて修正310(及び任意選択で315)を実行するステップをさらに含むことができる。
【0070】
[0081] 修正310(及び任意選択で315)は、バッテリの推定抵抗に関して、バッテリの容量を最大限にするように実施することができる。
【0071】
[0082] 修正310(及び任意選択で315)は、充電電圧上限を引き上げ(ステージ332)、且つ/又は放電電圧下限を引き下げる(ステージ334)ことによって実施することができる。
【0072】
[0083] いくつかの実施形態では、狭い範囲は、3~4Vであり、より広い範囲は、1.8~4.95Vとすることができる。いくつかの実施形態では、狭い範囲は、3.1~4.3V、3.0~4.3V、2.8~4.3V、及び2.5~4.3Vのいずれかであり、全範囲は、1.8~4.3Vとすることができる。
【0073】
[0084] 特定の実施形態では、方法300は、セル容量が低下するにつれて充電電流を低減するステップ(ステージ340)、及び/又はセル性能が劣化するにつれて定電流充電段階の持続時間を延長するステップ(ステージ350)をさらに含む。
【0074】
[0085] 特定の実施形態では、方法300は、以下で説明するように(
図20C参照)、バッテリのアノード材料粒子にリチウムイオンを再分布させるように設定されたいくつかの全電圧範囲サイクル(例えば1~10サイクル)のセットを断続的に導入するステップ(ステージ360)をさらに含む。
【0075】
[0086]
図12は、本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリユニット130又はバッテリ90を複数の電圧範囲140で動作させるパラメータの制御を示すハイレベル概略図である。セル抵抗が増大し、セル容量が低下するにつれて、以下の動作パラメータのうちのいずれかを、それに応じて変化させることができる。すなわち、動作電圧範囲を、例えば1.5V未満に及ぶ1つ又は複数の電圧範囲から、1.5V超に及ぶ1つ又は複数の電圧範囲に拡大するなど、本明細書に開示するように修正し、充電電流を、低下するバッテリ容量に対応するCレートで、又は既定のパラメータに従って、高充電電流から低充電電流に修正し、且つ/或いは定電圧ステージに対する定電流ステージの持続時間(CC/CV)を、短い持続時間から長い持続時間に修正することができる(例えば、
図16B参照)。特定の実施形態では、動作電圧範囲は、バッテリのDC(直流)抵抗値に対して修正することができ、このバッテリのDC抵抗値は、折に触れて(例えば任意の既定数のサイクル後などに)監視することができ、電圧範囲の変化及び/又は充電電流の変化をトリガする1つ又は複数のしきい値を規定するために使用することができる(以下参照)。
【0076】
[0087] 例示する動作パラメータの制御は、場合によっては指定された動作方式として、充電管理モジュール135、135Aによって実施することができ、場合によってはSOH/SOCモニタ137による監視及び/又はフィードバック137Aを組み込んで、実施することができる。例示する方式の任意の要素は、充電管理モジュール135、135Aの実施形態のいずれかにおいても、独立して適用することもできるし、或いは他の要素と組み合わせて適用することもできる。SOH/SOCモニタ137からのデータに基づいて、且つ/又はそれらとは無関係に、充電管理モジュール135、135Aは、セル抵抗が増大するにつれて、セル容量が低下するにつれて、且つ/又は時間が経過するにつれて、以下のパラメータのうちのいずれかを制御するように構成することができる。すなわち、(例えばセル容量が低下するにつれて)電圧範囲を次第に拡大し、且つ/又は充電電流(充電の定電流CCステージの充電電流)を減少させることができる。これらの変化はいずれも、次第に、且つ/又は段階的に実施することができる。なお、これらのパラメータは互いに関係し、部分的に互いに依存するが、動作の最適化は、これらのパラメータのうちの1つ又は複数を制御して、間接的にその他のパラメータを決定するように設定することができる。非限定的な例については、例えば
図16A~
図16Cを参照されたい。
【0077】
[0088]
図13は、本発明のいくつかの実施形態による、急速充電リチウムイオンバッテリユニット130又はバッテリ90の複数の電圧範囲140の動作を示すハイレベル概略図である。開示する任意の充電管理モジュール135は、連続的に、又は段階的に変化する下限と場合によっては上限とを有する様々な電圧範囲(累積的に動作パターン143に含まれる)でバッテリユニット130又はバッテリ90を動作させるように構成することができる。例えば、
図13は、セル抵抗の増大に関係する動作電圧範囲の範囲の段階的な拡大を例示している。図示の非限定的な例では、セル抵抗が指定されたしきい値を超えるにつれて、初期の狭い動作範囲140である3.1~4.3Vの電圧範囲、より広い動作範囲140Aである3.0~4.3V、さらに広い動作範囲140Bである2.8~4.3V、さらに広い動作範囲140Cである2.5~4.3V、及び全動作範囲145である1.8~4.3Vと範囲が拡大される。
図13は、さらに、初期の狭い範囲と全範囲145の間にN個の順に拡大する中間電圧範囲(140A、140B、…、140N)がある、バッテリユニット130の動作も概略的に示している。各電圧範囲から次の電圧範囲への変化は、時間、SOH、SOC、セル容量、セル抵抗など、様々なパラメータに関して適用することができる。
【0078】
[0089]
図14A及び
図14Bは、本発明のいくつかの実施形態による、開示した方式に従って動作したときに急速充電バッテリユニット130の改善された性能を示す結果を示す図である。
図14Aは、セルの動作中を通じて4つの異なる初期電圧範囲140、すなわち3.1~4.3V、3.0~4.3V、2.8~4.3V、及び2.5~4.3Vの範囲で10Cの充電レートで動作するセルのサイクル寿命(サイクル数)及びエネルギー(mWh)を示している。4つの場合全てにおいて、動作電圧範囲は、それぞれの初期電圧範囲140から、1.8~4.3Vの全範囲145に到達するまで、次第に拡大した。
図14Aに示すように、1.5V未満である初期の狭い電圧範囲140でセルを動作させると、サイクル寿命が、サイクルの最初から全電圧範囲145でセルを動作させた場合と比較して、2倍から3倍に増加する(1.2Vの初期動作電圧範囲では、サイクル寿命は、1.8Vの初期動作電圧範囲の場合と比較して2倍超であった)。さらに、初期動作範囲が狭くなるほど、得られるセルエネルギーは高くなる。なお、初期動作範囲が狭くなるほど、その結果得られる電圧範囲に関するセルの動作の柔軟性も高くなることにも留意されたい。
図14Bは、4つの動作方式のうちの2つのサイクル寿命をより詳細に示す図であり、図示の非限定的な例では、セルの約300サイクルという長いサイクル寿命を提供する、1.5V未満の最初は狭い電圧範囲140によって得られる長いサイクル寿命(図示は3.1~4.3Vのサイクルの場合。最大カットオフ電圧レベル及び最小カットオフ電圧レベルは実線で示す)と、それに対して、セルの約100サイクルという短いサイクル寿命を提供する、従来技術の最初から広い電圧範囲(図示は2.5~4.3Vの場合。最大カットオフ電圧レベル及び最小カットオフ電圧レベルは破線で示す)の場合とを示している。
【0079】
[0090]
図15は、本発明のいくつかの実施形態による、バッテリ90の劣化する容量に応じて充電電流を調節して(ステージ490)動作させるバッテリ90の増加したサイクル寿命の非限定的な例を示す図である。
図15は、上述の動的な電圧変化サイクル手順に加えて、低下するセル容量に対応する電流調節(例えば以下の
図16A参照)を行った10Cの充電及びC/2の放電の動作条件下での、1Ahのセルのサイクル寿命にわたるセル容量保持率の比較を示しており、動作電圧範囲は、3~4.2Vの狭い範囲140から始まって、容量が低下するにつれて、最も広い動作電圧範囲145に到達するまで、140A…40Nと段階的に拡大させる。
【0080】
[0091]
図16A~
図16Cは、本発明のいくつかの実施形態による、セル劣化に対応する電流調節490の例を示す図である。
図16A~
図16Cは、最大充電電流及び最小充電電流について(
図16A)、全サイクル期間に対する定電流(CC)ステージの比について(
図16B)、充電及び放電中のセルDC抵抗について(
図16C)、バッテリの同じ動作パターンを示している。
【0081】
[0092]
図16Aは、本発明のいくつかの実施形態による、最大サイクル電流及び最小サイクル電流、並びにサイクル数が上昇する間の容量低下に伴うそれらの調節の非限定的な例を示している。図示の例では、最大電流は、200番目のサイクル(矢印で示す)の後で、11A、10.3A、9.9Aの3段階で段階的に低下する。電流の調節は、セルの劣化に応じて決定することができ、例えば、セル容量の低下(初期セル容量値に対する特定のサイクルにおける容量の比)と初期最大電流(サイクル寿命の最初にセルを充電するために使用した電流)の積に、任意選択で増倍率(例えば0.85から1.2の間)を掛けた値に等しい新たな電流値を使用することができる。例えば、初期充電電流が10Aであり、セル容量低下が85%である場合には、調節後の充電電流は、8.5Aに低下させることができる(増倍率は1と仮定する)。
【0082】
[0093]
図16Bは、本発明のいくつかの実施形態による、サイクル数を増加させる間の全サイクル期間のうちのCCステージの持続時間の非限定的な例を示す図である。サイクル100から200の間のCCステージの減少した持続時間は、サイクル200で開始する電流調節によって増加させることができ、このことは、充電電流を低下させることが、実際に、CCモードの電荷を維持する助けになることを示している。特定の実施形態では、充電電流を、初期最大電流にCCと全充電時間の間の比を掛けた積に、任意選択で増倍率(例えば0.85から1.2の間)を掛けた値に等しい値に変化させることができる。例えば、初期充電電流が10Aであり、全サイクルに対するCCステージの割合が80%である場合には、調節後の充電電流を8Aに低下させて、定電流(CC)でのフルサイクリングに近づけることができる(増倍率は1と仮定する)。
【0083】
[0094]
図16Cは、本発明のいくつかの実施形態による、サイクル数を増加させる間の、充電及び放電に対するセルDC抵抗の増加の非限定的な例を示す図である。増加する抵抗曲線に沿って、電流低下、電圧範囲拡大、及びそれらの大きさのうちのいずれかをトリガする、1つ又は複数のしきい値を設定することができる。例えば、調節後の電流値は、初期最大電流に初期のDC抵抗値と後のDC抵抗値の間の比を掛けた積に、任意選択で増倍率(例えば0.85から1.2の間)を掛けた値に等しくなるように設定することができる。例えば、初期充電電流が10Aであり、DC抵抗値の比が0.72である場合には、調節後の充電電流を7.2Aに低下させることができる(増倍率は1と仮定する)。
【0084】
[0095] 特定の実施形態では、上記の考慮事項を組み合わせて、セル容量、CCステージの持続時間、DC抵抗、及び場合によっては関係する特徴の任意の組合せに従って、充電電流の調節を制御することができる。
【0085】
[0096]
図17は、本発明のいくつかの実施形態による、バッテリ動作中の充電開始時の電流増加(例えばステージ492、495参照)の非限定的な例を示す図である。発明者等は、電流増加により、バッテリの故障につながる可能性がある樹枝状結晶の形成及びリチウム濃度変化の確率を低下させることができることを発見した。特に、急速充電及び超急速充電時に用いられる高電流を使用するときには、さらなる樹枝状結晶の成長、セパレータの貫通、及び最終的にはセルの短絡を引き起こす恐れがある、アノード側でのリチウム樹枝状結晶の形成という潜在的な危険を克服する必要がある。さらに、電極/電解質界面で高電流密度を適用する間には、電極/電解質界面でリチウムイオン濃度の非常に大きな差が生じ、これによりリチウムイオンが欠乏した領域と、リチウムイオン濃度が高まった領域とが生じ、これが局所的な抵抗上昇及び局所的な加熱を引き起こし、アノード及びカソードの両方で電解質の分解を促進する恐れがある。
【0086】
[0097] 充電電流を最初から次第に増加させて、樹枝状結晶の形成及びリチウム濃度変化を防止することができる。1次増加(I=aT+b)、2次増加(I=aT2+bT+c)、又はその他の任意の多項式的増加(例えばI=aT3+bT2+cT+d)、或いはその他の増加関数形態(例えばI=a・sin(bT))など、様々な形態の電流増加を適用することができ、また最適化することもできる。これらの全てにおいて、Iは、電流値を示し、Tは、時間を示し、aからdは係数である。増加は、t1~t3がゼロと完全充電の間の連続した時点を示す表3の非限定的な例に示すように、場合によっては段階の間に中断を挟んで、ゼロから指定値まで段階的に行うこともできることは明らかである。
【0087】
【0088】
[0098] 例えば、
図17は、3つの連続したグラフで、動作中の時間に対する電圧及び電流の全体像、そのうちの1つの充電/放電サイクル、並びにそのサイクル中の電流増加を示している。この非限定的な例では、電流増加は、最終的に8Cの電流になるまで毎秒1Cの電流を追加して、段階的に行った。
【0089】
[0099]
図18Aは、本発明のいくつかの実施形態による、セルの劣化に対応した電流の調節(490)を行った場合のサイクル(バッテリ90の動作)中のセル温度を示す図であり、これに対して、
図18Bは、充電電流を一定値にした場合(電圧範囲は動的)のサイクル(バッテリ90の動作)中のセル温度を示す図である。これらの各動作パターンの2つのランの最低温度(各サイクルの放電の終了時、各グラフの下側の2本の線)と、これらの各動作パターンの同じ2つのランの最高温度(各サイクルの充電の終了時、各グラフの上側の2本の線)とが示してある。なお、電流の調節により、動作しているバッテリの温度が数度低下し(例えば平均温度が約38℃から約35℃に低下し、最高温度が約39℃から約36℃以下に低下する)、これはバッテリ90のサイクル寿命の延長にさらに貢献する可能性がある要因であることに留意されたい。
【0090】
[00100]
図19は、本発明のいくつかの実施形態による様々なアノード構成を示すハイレベル概略図である。
図19は、アノード活性材料粒子150を含むことがあるアノード92の表面を、非限定的に、概略的に示している。アノード活性材料粒子150は、様々な種類のものとすることができ、そのうちの少なくとも一部は、ケイ素、ゲルマニウム、及び/又はスズなどのメタロイドの粒子、並びに/或いは場合によってはアルミニウム、鉛、及び/又は亜鉛の粒子、並びに/或いはSnで装飾されたグラフェンの活性材料粒子、並びにチタン酸リチウム(LTO)の形態、それらの合金及び/又は混合物、並びに場合によっては黒鉛及び/又はグラフェンの粒子を含む。アノード活性材料粒子150は、100nmの桁(例えば100~500nm)の直径にする、且つ/或いは場合によっては10nm又は1μmの桁の直径にすることができる。アノード活性材料粒子150の少なくともいくつかは、場合によっては、例えば様々な構成のコアシェル粒子など、複合粒子155を含むことがある。アノード活性材料粒子150は、充電中にリチオ化されたリチウムを受け、放電中にリチウムイオンを解放する、様々なサイズ(例えば100nmの桁、且つ/或いは場合によっては10nm又は1μmの桁)の粒子を含む可能性がある。複合粒子155の少なくとも一部は、そのコアとして、Snで装飾されたグラフェンの活性材料粒子100をベースとすることがある。
【0091】
[00101] アノード92は、1種類又は複数種類の結合剤、及び1種類又は複数種類の添加物102、並びに任意選択でコーティング170(例えばカーボンファイバ及び/又はナノチューブ169、導電性ポリマー、リチウムポリマーなどの導電性材料)をさらに含むこともある。コーティング170は、アノード92の表面のパッチ又は一部に適用することができ、且つ/或いはアノード材料粒子150上に適用することができるコーティング160、並びに/又はコアとしてアノード材料粒子150を備えるシェルとして構成することができるコーティング164、並びに/又はカーボンファイバ及び/又はナノチューブなどの導電性材料169は、アノード材料粒子150を相互接続し、且つ/又はアノード材料粒子150をコアシェル粒子155のコアとして相互接続するように構成することができる。活性材料粒子150は、1つ又は複数のコーティング160(例えばカーボンコーティング160、導電性ポリマー、リチウムポリマーなど)でプレコーティングすることができ、その表面に結合する(場合によっては例えばB2O3、P2O5などを形成する)ホウ酸塩及び/或いは1種類又は複数種類のリン酸塩、電解質96(及び/又は電解質へのイオン液体添加物)と相互作用することができる結合分子180(概略的に示す)、並びに/或いはボールミル粉砕(例えば参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許第9406927号参照)、スラリ形成、スラリの拡散、及び拡散させたスラリの乾燥などのアノード準備プロセス145でそこに取り付けることができる、改質されたアノード活性材料粒子150Aを形成する、様々なナノ粒子112(例えばB4C、WC、VC、TiN、場合によってはSi及び/又はSnのナノ粒子)を有することができる。ナノ粒子112は、例えば10nmの桁(例えば10~50nm)など、アノード活性材料粒子150の直径より小さい直径を有することができる。例えば、アノード準備プロセス145は、例えば結合剤(例えばポリフッ化ビニリデンPVDF、スチレンブタジエンゴムSBR、又はその他の任意の結合剤)、可塑剤、及び/又は導電性充填剤などの添加物102を、水又は有機溶媒などの溶媒(アノード材料が限られた溶解度を有するもの)と混合してアノードスラリを作製するステップを含むことができ、このアノードスラリを、その後に乾燥させ、濃縮し、集電体(例えばアルミニウム又は銅などの金属)と接触した状態で位置決めする。
【0092】
[00102] 特定の実施形態では、結合分子180は、参照によりその全体を本明細書に組み込むWIPO第PCT/IL2017/051358号に開示される分子のうちのいずれかを含み、非限定的な例は、アルキルスルホン酸リチウム、ポリアルキルスルホン酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、1塩基性リン酸リチウム、アルキルヒドロキサム酸塩、及びそれらの酸性型、例えば、リチウム=4-メチルベンゼンスルホナート、リチウム=3,5-ジカルボキシベンゼンスルホネート、硫酸リチウム、リン酸リチウム、1塩基性リン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウム=4-ドデシルベンゼンスルホナート、1-プロパンスルホン酸リチウム、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-1-オクタンスルホン酸リチウム、リチウム=2,6-ジメチルベンゼン-1,4-ジスルホン酸、リチウム=2、6-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,4-ジスルホン酸、3,3’-((1,2-ジチアン-4,5-ジイル)ビス(オキシ))ビス(N-ヒドロキシプロパンアミド)、3、3’-((4-メルカプト-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(N-ヒドロキシプロパンアミド)、リチウムアニリンスルホン酸(スルホン酸は、パラ、メタ、及びオルトの位置のいずれであってもよい)、並びにアノード材料粒子をコーティングする際に適用されるポリ(リチウム-4-スチレンスルホン酸)を含む。
【0093】
[00103] 特定の実施形態は、ケイ素の活性材料、ゲルマニウムの活性材料、及び/又はスズの活性材料のいずれかを含み、場合によっては炭素材料、ホウ素、及び/又はタングステンをさらに含む、アノード材料粒子150を含む。非限定的な例として、アノード材料粒子150は、5~50重量%のSi、2~25重量%のB、及び/又は5~25重量%のW、並びに0.01~15重量%のC(例えばカーボンナノチューブCNTとして)を含むことができ、アノード材料粒子150は、5~80重量%のGe、2~20重量%のB、及び/又は5~20重量%のW、並びに0.05~5重量%のC(例えばカーボンナノチューブCNTとして)含むこともでき、アノード材料粒子150は、5~80重量%のSn、2~20重量%のB、及び/又は5~20重量%のW、並びに0.5~5重量%のC(例えばカーボンナノチューブCNTとして)含むこともでき、アノード材料粒子150は、例えば少なくとも4:1(Ge:Si)、少なくとも4:1(Sn:Si)、又は少なくとも4:1((Sn+Ge):Si)の重量比で、Si、Ge、及びSnの混合物を含むこともでき、アノード材料粒子150は、以下に開示するように、場合によってはホウ酸塩、及び/又は1種類若しくは複数種類のリン酸塩が添加された、アルミニウム、並びに/或いは亜鉛、カドミウム、及び/又は鉛のうちのいずれかを含むこともできる。
【0094】
[00104] 特定の実施形態は、B4C、WC、VC、及びTiNのうちのいずれかなど、そこに取り付けられたナノ粒子112を含み、場合によっては10~50nmの粒子サイズ範囲を有し、5~25重量%の改質されたアノード活性材料粒子150Aを提供する、アノード材料粒子150を含む。ナノ粒子112は、改質されたアノード活性材料粒子150A内に、Li2B4O7 (例えばC及びOに関して不均衡な4Li+7MeO+2B4C→2Li2B4O7+C+7Meなどによる四ホウ酸リチウム塩、ここでMeはSi、Ge、Snなどの活性材料を示す)などの化合物、又はアノード活性材料より高い酸素との親和性を有する、例えばWC、VC、TiNなどからの等価な化合物を形成するように構成することができる。
【0095】
[00105] 特定の実施形態は、(n)を複数の取り付けられたLiを示すものとして、例えばポリリン酸リチウム(Li(n)PP又はLiPP)、ポリアクリル酸リチウム(Li(n)PAA又はLiPAA)、リチウムカルボキシメチルセルロース(Li(n)CMC又はLiCMC)、アルギン酸リチウム(Li(n)Alg又はLiAlg)、及びそれらの組合せのうちのいずれかなどのリチウムポリマー、導電性ポリマー、及び/又は疎水性ポリマー、ポリアニリン又は置換ポリアニリン、ポリピロール又は置換ポリピロールなどのうちのいずれかの1つ又は複数のコーティング160を含むアノード材料粒子150を含む。
【0096】
[00106] アノード材料粒子150、150A、150Bはいずれも、炭素(例えば無定形炭素、黒鉛、グラフェンなど)及び/或いは1種類又は複数種類の遷移金属酸化物(例えばAl2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、MnOなど)の薄膜(例えば1~50nm、又は2~10nmの厚さ)でコーティングすることができる。
【0097】
[00107] 特定の実施形態では、ホウ酸塩及び/又はリン酸塩112Aは、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB、LiB(C2O4)2)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiFOB、LiBF2(C2O4))、四ホウ酸リチウム(LiB4O7)、ビス(マロン酸)ホウ酸リチウム(LiBMB)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、又は特定の実施形態ではB4Cナノ粒子112を含むアノード材料粒子150上でのホウ酸塩(B2O3)の形成につながる可能性があるその他の任意の化合物などのホウ酸塩を含む可能性がある。
【0098】
[00108] 特定の実施形態では、ホウ酸塩及び/又はリン酸塩112Aは、リン酸リチウム(LiPO4)、ピロリン酸リチウム(LiP2O7)、トリポリリン酸リチウム(LiP3O10)、又はアノード活性材料粒子150上でのリン酸塩(P2O5)の形成につながる可能性があるその他の任意の化合物などのリン酸塩を含む可能性がある。
【0099】
[00109] 特定の実施形態は、コアシェル粒子(例えば、シェルは上述の1つ又は複数のコーティング104及び可能な改質形態のいずれかによって提供される)として構成することができるアノード材料粒子150Bを含む。様々な構成を図示のアノード表面の様々な領域に概略的に示すが、実施形態は、これらの構成の任意の組合せ、並びに開示する構成のうちの任意の構成を有する任意の範囲のアノード表面を含むことができる。次いで、1つ又は複数のアノード92を、対応する1つ又は複数のカソード94、電解質96、及びセパレータ98、並びにその他のバッテリ構成要素(例えば集電体、電解質添加物(以下参照)、バッテリパウチ、接点など)と共に、リチウムイオンバッテリの一部とすることができるセル90に一体化することができる。
【0100】
[00110] 特定の実施形態では、アノード92は、アノード92全体に延びることがあり(図では、非限定的に、アノード92の一部分にしか示していない)、コア150どうしを相互接続することができる、導電性ファイバ169を含むことがある。電子伝導性は、電子伝導性材料(例えばファイバ)169と接触することがある結合剤及び添加物102、コーティング170、導電性ファイバ169、ナノ粒子112、及びプレコーティング164のうちのいずれかによって高めることができる。
【0101】
[00111] リチウムイオンセル90は、アノード材料粒子150、150A、150Bのいずれかなどの複合アノード材料を有するアノード材料で構成された1つ又は複数のアノード92(本明細書に開示する構成のいずれかのアノード92)と、電解質96と、セルセパレータ98を通したアノード92の充電中にリチウムイオンを提供する少なくともカソード94とを含むことができる。リチウムイオン(Li
+)は、アノード材料を貫通して例えば(場合によってはコアシェル粒子150Bの)アノード活性材料コア150に入るときに、(実質的に充電されていないリチウムを示すリチオ化状態のLi
~0lに)リチオ化される。粒子150Bは、汎用的に非限定的に示してあるので、以下に提示する複合アノード材料及びコアシェル粒子150Bの構成のうちの任意の構成を、アノード92で使用することができる。コアシェル粒子構成150Bでは、シェルは、少なくとも部分的には、1つ又は複数のコーティング164で形成することができ、アノード活性材料150がリチオ化時に拡大する(168)ためのギャップ167を形成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ギャップ167は、弾性又は可塑性の充填材料によって、且つ/或いはアノード材料のコア150が拡大するにつれて拡大し、それにより、
図19では非限定的にギャップ167として概略的に示す拡大(168)のための余地を効果的に提供することができるコーティング164の柔軟性によって実装することができる。両タイプのギャップ167の例を、以下に示す。これらの例は、小さなギャップ167を提供し、コーティングの柔軟性によって拡大するためのさらなる余地を与えることによって、組み合わせることができる。
【0102】
[00112]
図20A~
図20Cは、本発明のいくつかの実施形態による、バッテリの動作中のアノード材料粒子のリチオ化及び脱リチオ化の概略的なモデルを示す図である。発明者等は、理論に束縛されるものではないが、異なる範囲の動作電圧140は、アノード材料粒子150の異なる部分のリチオ化をもたらすことを示唆する。アノード材料粒子150の様々な実施形態では、リチオ化は、様々な空間的関係に従って実施することができ、例えば、カーボンファイバ169によって相互接続されたコアを有するコアシェル粒子(
図19参照)は、内側から外に向かってリチオ化することができるが、依然として、印加された動作電圧範囲に対応するリチオ化のゾーンを呈することができる。
図20A及び
図20Bは、それぞれ、電圧範囲を狭い範囲140から中間範囲140A…140Nを介して広い(従来技術の)電圧範囲145まで拡大する際にリチオ化が行われるにつれて、中心から外に向かって(コア168をギャップ167中に拡大する)、又は粒子の周辺部から内側に向かって、リチオ化を行うことができる、コアシェル粒子150及び球状粒子150のモデルを概略的に示している。発明者等は、動作電圧範囲を変化させることが、アノード材料粒子150の全体にわたって不均一なリチウムイオンの分布をもたらす可能性があり、これがアノード材料粒子150の不均一な劣化を引き起こす可能性があることを示唆する。
【0103】
[00113]
図20Cは、アノード材料粒子150中にリチウムイオンの不均一な再分布をもたらすために電圧範囲を次第に拡大することを含むパターン143に断続的に含まれる全電圧範囲動作145Aの1つ又は複数のサイクルを含む動作パターン143(例えば
図13参照)の特定の実施形態を示す図である。例えば、理論に束縛されるものではないが、狭い動作ウィンドウ140は、アノード材料粒子150の外側領域でより集中的なリチオ化及び脱リチオ化を引き起こし、対応する領域を、アノード材料粒子150の他の領域より集中的に劣化させ、それらの領域からのリチウムイオンの喪失をもたらす可能性がある。全範囲145Aのいくつかのサイクルを実行して、アノード材料粒子150の内側部分から上側層にLiイオンを再分布させて、狭い電圧範囲の動作による劣化を相殺することができる。例えば、バッテリのアノード材料粒子150内にリチウムイオンを再分布させるように設定されたいくつかの(例えば1~3、1~5、又は1~10)全電圧範囲サイクル145Aを、電圧範囲140、140A…140Nを次第に拡大する動作パターン143内に断続的に導入することができる。
【0104】
[00114] アノード材料粒子150、150A、150B、アノード92、及びセル90は、開示する原理に従って、例えば5C、10C、15C、30C、100C又はそれ以上など、3~10Cレート、10~100Cレート、又は100C超の範囲の高い充電及び/又は放電レート(Cレート)を可能にするように構成することができる。なお、Cレートという用語は、セル/バッテリの容量の充電及び/又は放電の測度であり、例えば、セルの所与の容量に対して、1Cは、セルを1時間で充電及び/又は放電することを示し、XC(例えば5C、10C、50Cなど)は、セルを1/X時間で充電及び/又は放電することを示すことに留意されたい。
【0105】
[00115] 電解質96の例は、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、VC、FEC、EMC、DMC、及びそれらの組合せなどの液体電解質、並びに/或いはポリエチレンオキシド、含フッ素ポリマー又はコポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン)、及びそれらの組合せなどの高分子電解質などの固体電解質を含むことがある。電解質96は、LiPF6、LiBF4、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiC(CF3SO2)3、LiClO4、LiTFSI、LiB(C2O4)2、LiBF2(C2O4))、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)(TMSP)、及びそれらの組合せなど、リチウム電解質塩を含む可能性がある。
【0106】
[00116] 参照によりその全体を本明細書に組み込むWIPO第PCT/IL2017/051358号に開示されるように、1種類又は複数種類のイオン液体を、電解質96に添加することもできる。非限定的な例は、特定の実施形態では10℃未満、0℃未満、又は-4℃未満の融点を有するように選択された、最大20%、最大10%、又は最大5%の例えばスルホニルイミドピペリジニウム誘導体のイオン液体を含む。
【0107】
[00117] 特定の実施形態では、1つ又は複数のカソード94は、層状、スピネル、及び/又はカンラン石状のフレーム構造に基づく材料を含むことがあり、LCO組成(LiCoO2に基づく)、NMC組成(リチウムニッケルマンガンコバルトに基づく)、NCA組成(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物に基づく)、LMO組成(LiMn2O4に基づく)、LMN組成(リチウムマンガンニッケル酸化物に基づく)、LFP組成(LiFePO4に基づく)、リチウムリッチカソード、及び/又はそれらの組合せなど、様々な組成を含むことがある。
【0108】
[00118] なお、特定の実施形態では、開示するセルの電極としてカソードとアノードを入れ換えることもでき、アノードという用語を使用することは、本発明の範囲を限定するものではないことに明示的に留意されたい。アノードという用語のいかなる言及も、いくつかの実施形態では、電極及び/又はカソードという用語で置き換えることができ、対応するセル要素を特定の実施形態で提供することができる。例えば、急速充電及び急速放電の両方を行うように構成されたセル90において、一方又は両方の電極92、94は、開示する発明の実施形態によって準備することができる。
【0109】
[00119] セパレータ98は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のいずれかなどのポリマー、ポリオレフィン、ポリプロピレン、又はポリエチレン膜などのポリマー膜など、様々な材料を含むことができる。これらの材料、その多孔性フィルム、織布又は不織布など、並びに場合によっては例えばアルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、シリカ、及び炭酸カルシウムなどの複合材料と上記の様々なポリマー構成要素とで構成された多層膜を、セパレータ98として使用することもできる。
【0110】
[00120] なお、特定の実施形態では、開示する実施形態によってカソードを準備することができ、アノードという用語を使用することは、本発明の範囲を限定するものではないことに明示的に留意されたい。アノードという用語のいかなる言及も、いくつかの実施形態では、電極及び/又はカソードという用語で置き換えることができ、対応するセル要素を特定の実施形態で提供することができる。例えば、急速充電及び急速放電の両方を行うように構成されたセル90において、一方又は両方の電極92、94は、開示する発明の実施形態によって準備することができる。
【0111】
[00121] アノード92の様々な構成を、図示のアノード表面の様々な領域に概略的に示すが、実施形態は、これらの構成の任意の組合せ、並びに開示する構成のうちの任意の構成を有する任意の範囲のアノード表面を含むことができる。次いで、1つ又は複数のアノード92を、対応する1つ又は複数のカソード94、電解質96、及びセパレータ98、並びにその他のバッテリ構成要素(例えば集電体、電解質添加物、バッテリパウチ、接点など)と共に、リチウムイオンバッテリの一部とすることができるセル90に一体化することができる。
【0112】
[00122] アノード材料粒子150、150A、150B、アノード92、及びセル90は、開示する原理に従って、例えば5C、10C、15C、30C又はそれ以上など、3~10Cレート、10~100Cレート、又は100C超の範囲の高い充電及び/又は放電レート(Cレート)を可能にするように構成することができる。なお、Cレートという用語は、セル/バッテリの容量の充電及び/又は放電の測度であり、例えば、セルの所与の容量に対して、1Cは、セルを1時間で充電及び/又は放電することを示し、XC(例えば5C、10C、50Cなど)は、セルを1/X時間で充電及び/又は放電することを示すことに留意されたい。
【0113】
[00123] 電解質96の例は、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、炭酸フルオロエチレン(FEC)、EMC(炭酸エチルメチル)、DMC(炭酸ジメチル)、VC(炭酸ビニレン)、及びそれらの組合せなどの液体電解質、並びに/或いはポリエチレンオキシド、含フッ素ポリマー又はコポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン)、及びそれらの組合せなどの高分子電解質などの固体電解質を含むことがある。電解質96は、LiPF6、LiBF4、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiC(CF3SO2)3、LiClO4、LiTFSI、LiB(C2O4)2、LiBF2(C2O4)、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)(TMSP)、及びそれらの組合せなど、リチウム電解質塩を含む可能性がある。1種類又は複数種類のイオン液体を、電解質96に添加することもできる。
【0114】
[00124] 特定の実施形態では、1つ又は複数のカソード94は、層状、スピネル、及び/又はカンラン石状のフレーム構造に基づく材料を含むことがあり、LCO組成(LiCoO2に基づく)、NMC組成(リチウムニッケルマンガンコバルトに基づく)、NCA組成(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物に基づく)、LMO組成(LiMn2O4に基づく)、LMN組成(リチウムマンガンニッケル酸化物に基づく)、LFP組成(LiFePO4に基づく)、リチウムリッチカソード、及び/又はそれらの組合せなど、様々な組成を含むことがある。セパレータ98は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はその他の適当な材料など、様々な材料を含むことができる。
【0115】
[00125] 以上の説明では、実施形態は、本発明の例又は実施態様である。「1実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「いくつかの実施形態」という表現が各所に見られるが、これらは必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。本発明の様々な特徴を1つの実施形態の文脈で説明することもあるが、これらの特徴は、別々に提供することも、或いは任意の適当な組合せで提供することもできる。逆に、本明細書では、分かりやすいように、本発明を別々の実施形態の文脈で説明することもあるが、本発明は、1つの実施形態で実施することもできる。本発明の特定の実施形態は、上記に開示する様々な実施形態の特徴を含むことができ、特定の実施形態は、上記に開示したその他の実施形態の要素を組み込むこともできる。特定の実施形態の文脈で本発明の要素を開示していても、それらの要素がその特定の実施形態でしか使用されないものと限定的に解釈すべきではない。さらに、本発明は、様々な方法で実行又は実施することができること、及び本発明は、上記の説明で概説した実施形態以外の特定の実施形態で実施することもできることを理解されたい。
【0116】
[00126] 本発明は、これらの図面、又はそれに対応する説明に限定されるものではない。例えば、流れは、図示の枠又は状態のそれぞれを経由して進む必要はなく、或いは図示及び説明したのと全く同じ順序で進む必要もない。本明細書で使用する技術用語及び科学用語の意味は、特に定義していない限り、本発明が属する技術分野の当業者として一般的な意味で理解されるものとする。限られた数の実施形態に関連して本発明を説明したが、これらの実施形態は、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではなく、好ましい実施形態のいくつかを例証するものとして理解すべきものである。他の可能な変形形態、修正形態、及び応用形態も、本発明の範囲に含まれる。したがって、本発明の範囲は、上記の説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的な均等物によって制限されるものとする。