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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】塗料組成物及び塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20220418BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220418BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C09D175/06
C09D7/63
C09J167/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018015380
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131719
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】松藤 卓典
(72)【発明者】
【氏名】カール ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】水口 克美
(72)【発明者】
【氏名】堀井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】川合 貴史
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527486(JP,A)
【文献】特開平07-258367(JP,A)
【文献】特開2009-227801(JP,A)
【文献】特開2006-016560(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02907840(EP,A1)
【文献】特表2014-524508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価170mgKOH/g以上300mgKOH/g以下を有するハイパーブランチポリエステルである分岐ポリマーと、
イソシアネート基およびアルキルシラノール基を有し、イソシアネート官能基数が1以上である、イソシアネート化合物と、
触媒と、
を含む熱硬化型塗料組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物は、下記一般式(1)で示される前記アルキルシラノール基を1つ以上有する
[式中、R、R、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、ただし、R、R、Rは、相互に同一であってもよく、相違していてもよく、
は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、
nは1~10である]
請求項に記載の熱硬化型塗料組成物。
【請求項3】
前記触媒が金属フリー有機イオン触媒である、請求項1または2に記載の熱硬化型塗料組成物。
【請求項4】
被塗物上に、請求項1からのいずれかに記載の熱硬化型塗料組成物を塗装し、加熱して硬化塗膜を形成する、塗膜形成方法であって、
前記加熱を、被塗物温度が70℃以上90℃以下の温度で行う、塗膜形成方法。
【請求項5】
前記熱硬化型塗料組成物に含まれる触媒は、金属フリー有機イオン触媒である、請求項に記載の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。さらに本発明は、塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体外装、内装などの被塗物の表面には、種々の役割を持つ塗膜が形成されている。例えば、被塗物の最外層に設けられる塗膜には、良好な外観(例えば、平滑性)と耐擦傷性が要求されている。
【0003】
特許文献1には、不飽和結合を有する紫外線硬化性化合物、光重合開始剤、アクリル共重合体を含むクリヤー塗料組成物が開示されており、優れた外観と、耐擦傷性を有する塗膜を得ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、
(A)ベンゾトリアゾール骨格またはトリアジン骨格からなる紫外線吸収基を有する不飽和単量体(a-1)および、(a-1)と共重合可能な不飽和単量体(a-2)を所定の比率で共重合させて得られ、数平均分子量が10,000から500,000の(メタ)アクリル系共重合体である紫外線吸収重合体、
(B)1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する、多官能アクリレート、多官能ウレタンアクリレート及び多官能エポキシアクリレートから選ばれる1種以上の紫外線硬化性オリゴマー、
(C)光重合開始剤、
を含む活性エネルギー線硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-244426号公報
【文献】特開2013-204001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載されているように、優れた塗膜外観と耐擦傷性を得るためには、紫外線硬化によって塗膜を形成させることが一般的である。塗膜を形成するために、紫外線硬化を行う設備が必要である。しかし、紫外線硬化を行う設備は、特殊で複雑な装置を要するので、塗装設備費用が高くなる傾向がある。
【0007】
一方、紫外線硬化型の塗料組成物と比べて、より一般的に塗膜形成(塗膜硬化)を行える塗料組成物として、熱硬化型の塗料組成物が挙げられる。一般的に用いられる熱硬化型の塗料組成物から形成した塗膜の場合、その塗膜が有する耐擦傷性などの塗膜物性は、紫外線硬化型の塗料組成物から形成した塗膜の耐擦傷性よりも弱くなる傾向がある。
また、塗膜表面に傷が付くと塗膜外観に悪影響を及ぼすため、例えば、特許4673938号に記載されるような、傷がついてもその傷が回復する特徴を有する塗料組成物が開発されている。このような塗料組成物も優れた外観を有することができる。近年においては、更に優れた耐擦傷性を有し、もとから傷が付きにくい塗膜を形成できる塗料組成物が要求されている。
【0008】
このため、紫外線硬化型の樹脂組成物の硬化に使用され得る特殊な装置を用いることなく、より簡便であり、紫外線硬化を行うよりも低コストで塗膜形成を行うことができ、優れた耐擦傷性を有する塗膜を形成できる、塗料組成物が要求されている。
【0009】
上記現状に鑑み、本発明は、良好な塗膜外観(例えば平滑性)および意匠性(色の再現性、高光沢性など)を有し、かつ、耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成でき、簡便な方法で塗膜形成ができる塗料組成物を提供することを目的とする。
更に、本発明は、本発明の塗料組成物を用いて塗膜を形成することを含む、塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]デンドリマーおよびハイパーブランチポリマーから選択される少なくとも1種の分岐ポリマーと、
イソシアネート基およびアルキルシラノール基を有し、イソシアネート官能基数が1以上である、イソシアネート化合物と、
を含む塗料組成物。
【0011】
この態様により、良好な塗膜の外観(例えば平滑性)および意匠性を有し、かつ、耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成できる。
【0012】
[2]前記分岐ポリマーが、ハイパーブランチポリエステルである、[1]に記載の塗料組成物。
【0013】
この態様により、多分岐構造を有するポリエステルポリマーと、イソシアネート化合物を結合させることができ、多分岐構造のポリエステルポリマーが有する柔軟性を備え、イソシアネート化合物のアルキルシラノール基の自己縮合による耐擦傷性の向上および良好な塗膜硬度を備える塗膜が得られる。
【0014】
[3]前記分岐ポリマーの水酸基価が170mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である、[1]または[2]に記載の塗料組成物。
【0015】
この態様によると、より高い架橋密度を有する塗膜を形成でき、耐擦傷性の更なる向上およびより良好な塗膜硬度を奏することができる。
【0016】
[4]前記イソシアネート化合物は、下記一般式(1)で示される前記アルキルシラノール基を1つ以上有する
[式中、R、R、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、ただし、R、R、Rは、相互に同一であってもよく、相違していてもよく、
は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、
nは1~10である]
[1]~[3]のいずれか1に記載の塗料組成物。
【0017】
この態様により、アルキルシラノール基の自己縮合による耐擦傷性を更に向上でき、より良好な塗膜硬度を有する塗膜が得られる。
【0018】
[5]上記塗料組成物は、さらに、金属フリー有機イオン触媒を含む。
【0019】
この態様により、分岐ポリマーとイソシアネート化合物との間における架橋反応が促進され、より低温で塗膜形成をできる。また、塗料組成物の硬化時間をより短縮できる。
【0020】
本発明の別の態様によると、以下の塗膜形成方法が提供される。
[6]被塗物上に、上記塗料組成物を塗装し、加熱して硬化塗膜を形成する、塗膜形成方法であって、
前記塗料組成物は、触媒を有し、
前記加熱を、被塗物温度が70℃以上90℃以下の温度で行う、塗膜形成方法。
【0021】
この態様により、分岐ポリマーとイソシアネート化合物との間における反応が促進され、より低温で塗膜形成をできる。また、塗料組成物の硬化時間をより短縮できる。
【0022】
[7]前記触媒は、金属フリー有機イオン触媒である、[6]に記載の形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の塗料組成物は、良好な塗膜外観(例えば平滑性)および意匠性を有し、かつ、耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(塗料組成物)
このような技術効果を有する、本発明の塗料組成物は、デンドリマーおよびハイパーブランチポリマーから選択される少なくとも1種の分岐ポリマーと、
イソシアネート基およびアルキルシラノール基を有し、イソシアネート官能基数が1以上である、イソシアネート化合物と、
を含む塗料組成物である。
本発明の塗料組成物であれば、良好な塗膜の外観(例えば、平滑性、耐黄変性など)および意匠性(例えば、色の再現性、高光沢性など)を有し、かつ、耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成できる。また、本発明の塗料組成物であれば、長期間使用に対する耐擦傷性が優れる塗膜を形成でき、優れた耐薬品性を有する塗膜を形成できる。
さらに、本発明の塗料組成物は、熱硬化型の塗料組成物であるので、簡便な方法で塗膜を硬化(形成)できる。
【0025】
例えば、本発明の塗料組成物は、熱硬化型の塗料組成物であるので、紫外線硬化型の樹脂組成物の硬化に使用されるような特殊な装置を用いることなく、より簡便に塗膜形成、例えば、塗膜硬化を行うことができる。また、熱硬化型の塗料組成物でありながらも、良好な塗膜外観(例えば平滑性)および意匠性を有し、かつ、耐擦傷性、塗膜硬度などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成できる。
【0026】
本発明の塗料組成物は、分岐ポリマーと、本発明に係る特定のイソシアネート化合物とを含むことにより、既知の紫外線硬化型の塗料組成物から形成される塗膜と同等またはそれ以上の物性を有する塗膜を形成できる。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、分岐ポリマーと、本発明に係る特定のイソシアネート化合物との間で架橋反応が生じ、更に、本発明に係る特定のシラノール化合物内での縮合反応により、無機有機のハイブリッド化が進行し、上述の技術効果を得ることができる。
【0027】
以下、熱硬化型塗料組成物であっても、充分な架橋を形成できることを示す。
例えば、本発明の塗料組成物における硬化塗膜の架橋間分子量は、例えば500g/mol以下、例えば300g/mol以下、ある態様においては、200g/mol以下、例えば、150g/mol以下である。硬化塗膜の架橋間分子量は、例えば50g/mol以上、ある態様においては70g/mol以上である。
本発明の塗料組成物であれば、熱硬化型の塗料組成物でありながらも、このような範囲に架橋間分子量を有することができる。従って、本発明の塗料組成物から得られる塗膜は、熱硬化型の塗料組成物から形成される塗膜でありながらも、架橋密度が大きく、優れた耐擦傷性、硬度を有し、さらに緻密な塗膜を形成でき、さらには、簡便に塗膜の硬化を行える。
【0028】
本明細書において、架橋間分子量は、動的粘弾性測定装置によって得られた測定値を理論式に適用して求めた計算値であって、以下のようにして測定することができる。
本発明の硬化塗膜の架橋間分子量は、最小弾性率の値を下記ゴム粘弾性理論式にあてはめて求めた理論計算値であり、以下の式により算出できる。
Mc=3ρRT/Emin (式1)
ここで、
Mc :架橋間分子量(g/mol)、
ρ :塗膜の密度(g/m)、
R :気体定数(8.314J/K/mol)、
T :貯蔵弾性率がEminの時の絶対温度のときの絶対温度(K)、
min :温度Tのときの貯蔵弾性率の極小値(Pa)。
なお、架橋間分子量の測定に用いる塗膜は、乾燥膜厚が30μmになるように塗装し、80℃にて20分間焼き付けて硬化させたときの硬化塗膜を用いた。
【0029】
以下、本開示における塗料組成物をより詳細に説明する。
(分岐ポリマー)
本発明の塗料組成物は、デンドリマーおよびハイパーブランチポリマーから選択される少なくとも1種の分岐ポリマーを含む。分岐ポリマーは、デンドリマーおよびハイパーブランチポリマーを共に含む場合、同様の末端置換基を有するデンドリマーおよびハイパーブランチポリマーの組合せが好ましい。
なお、分岐ポリマーは、塗料組成物中では、架橋していないまたは、ほぼ架橋していない高分子であると理解される。これは構造上も、分子的にも統一されていない。
【0030】
「デンドリマー」は、分岐した鎖がさらに複数の分岐を有し、多重の分岐構造を形成し、この分岐構造が放射状に広がった構造を有する分岐ポリマーである。例えば、デンドリマーは、ポリマー中心から外側に向かって規則的に分岐を繰り返した化学構造を有するものであり、球状の立体構造を有し得る。
【0031】
「ハイパーブランチポリマー」は、上記多重の分岐構造が放射状ではなく、所定の一方向または二以上の方向に分岐状に延びる構造である。例えば、ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーと類似の化学構造を有する。しかしデンドリマーが有する、高度に規則的な分岐構造または分子量の高度な制御はなされていないことが多く、分岐は確率分布に従って形成され得る。
また、広い分子量分布を有することが多い。分岐が確率分布に従って形成され得るので、直鎖状ポリマーと比べて、圧倒的に多くの末端官能基数を有する。ハイパーブランチポリマーにおいて、分岐の鎖長は異なった長さで構成されていてよい。また、分岐構造は、線状の構造を有し、更に官能性の側基を有していてもよい。
【0032】
好ましくは、分岐ポリマーは、ハイパーブランチポリマーである。ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーと比べて、末端官能基数、官能基の種類を適宜制御でき、また、立体障害を制御しやすい。このため、ハイパーブランチポリマーの末端官能基と、本発明に係るイソシアネート化合物の反応基とを、デンドリマーと比べてより効果的に結合できるので、より良好な塗膜外観(例えば平滑性)および意匠性を有し、かつ、さらに優れた耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成できる。
【0033】
ハイパーブランチポリマーとしては、骨格構造の分類上の観点から、ハイパーブランチポリカーボネート、ハイパーブランチポリエーテル、ハイパーブランチポリエステル、ハイパーブランチポリフェニレン、ハイパーブランチポリアミド、ハイパーブランチポリイミド、ハイパーブランチポリアミドイミド、ハイパーブランチポリシロキサン、ハイパーブランチポリカルボシラン等が挙げられる。また、それらハイパーブランチポリマーは、末端基を有し、末端基として、ヒドロキシル基等の活性水素を含有する官能基を少なくとも1種含んでよい。
【0034】
ある態様において、分岐ポリマーは、ハイパーブランチポリエステルである。
この態様により、多分岐構造を有するポリエステルポリマーと、本発明に係るイソシアネート化合物を結合させることができる。これにより、多分岐構造のポリエステルポリマー(ハイパーブランチポリエステル)が有する柔軟性と、例えば、本発明に係るイソシアネート化合物におけるアルキルシラノール基(ある態様ではシリケート)の自己縮合により奏される耐擦傷性の向上および良好な塗膜硬度との両立を、塗膜は有し得る。
【0035】
本発明において、ハイパーブランチポリエステルは、末端基として、例えばヒドロキシル基などの活性水素基を有してよい。このような活性水素基は、イソシアネート基と反応することができる。
【0036】
ある態様において、分岐ポリマーの水酸基価は、170mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であり、例えば、210mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であり、好ましくは、220mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である。
分岐ポリマーの水酸基価がこのような範囲内であることにより、高い架橋密度を有する塗膜を形成でき、耐擦傷性の向上および良好な塗膜硬度を奏することができる。
【0037】
ある態様においては、分岐ポリマーの水酸基価は、250mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である。本発明の分岐ポリマーとイソシアネート化合物の組合せであれば、このような範囲の水酸基価であっても、高い架橋密度を有する塗膜を形成でき、耐擦傷性の向上および良好な塗膜硬度を奏することができる。
なお、分岐ポリマーの水酸基価の測定は、JIS K0070に記載の水酸化カリウムを用いる中和滴定法によって行える。
【0038】
ある態様において、分岐ポリマーの酸価は、5mg KOH/g以上110mg KOH/g以下であり、例えば、10mg KOH/g以上90mg KOH/g以下である。分岐ポリマーの酸価がこのような範囲内であることにより、塗料組成物内での分子内架橋、例えば、ゲル化を抑制できる。酸価が上記範囲を超過すると、他の樹脂との相溶性悪化する可能性、耐水性が悪化する可能性があり、酸価が上記範囲を下回ると架橋密度が十分に上昇しない可能性がある。
【0039】
分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば、300~5000であり、例えば、400~4000であり、ある態様においては、500~3000である。
【0040】
分岐ポリマーの数平均分子量(Mn)は、例えば、300~2500であり、例えば、400~2200であり、ある態様においては、500~2000である。
【0041】
なお、分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)、分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製 HLC-8200を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した値である。測定条件は以下の通りである。
カラム TSgel Super Multipore HZ-M 3本
展開溶媒 テトラヒドロフラン
カラム注入口オーブン 40℃
流量 0.35ml
検出器 RI
標準ポリスチレン 東ソー株式会社製PSオリゴマーキット
【0042】
分岐ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、-20℃~70℃であり、ある態様においては-20~50℃である。
本明細書におけるガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)(熱分析装置SSC5200(セイコー電子製))にて以下の工程により測定した値を用いた。具体的には、昇温速度10℃/minにて20℃から150℃に昇温する工程(工程1)、降温速度10℃/minにて150℃から-50℃に降温する工程(工程2)、昇温速度10℃/minにて-50℃から150℃に昇温する工程(工程3)において、工程3の昇温時のチャートから得られる値をガラス転移温度とした。
【0043】
本発明の塗料組成物は、上記分岐ポリマーの有する性質を損なわない範囲で、更に既知の樹脂および/またはモノマーを含んでもよい。例えば、塗料組成物は、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂等を含んでもよく、これらの樹脂を2種以上組み合わせて含んでもよい。
本発明に係る分岐ポリマーに加えて添加できる樹脂は、ある態様において80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の水酸基価を有し得る。
【0044】
[イソシアネート化合物]
本発明の塗料組成物は、イソシアネート基およびアルキルシラノール基を有し、イソシアネート官能基数が1以上である、イソシアネート化合物を含む。
本発明に係るイソシアネート化合物であれば、塗膜の架橋密度を上げることができ、分岐ポリマーのゲル化を抑制でき、所望の塗膜を形成できる。さらに、分岐ポリマー鎖内部に存在する末端官能基とも良好に架橋反応を進めることができるので、本発明の塗料組成物から形成された塗膜は、良好な塗膜の外観(例えば、平滑性)および意匠性を有し、かつ、耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有することができる。
【0045】
ここで、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、本発明に係る分岐ポリマーと、本発明に係るイソシアネート化合物とを組合せることにより、分岐ポリマーの有する反応性官能基、例えば、分岐部分に存在する多数の反応性官能基と、イソシアネート化合物のイソシアネート基とが反応し、架橋が進行する。さらに、分岐ポリマーと結合した本発明に係るイソシアネート化合物は、その分子内に存在するアルキルシラノール基の縮合が進行する。
その結果、本発明の塗料組成物は、熱硬化型の塗料組成物でありながらも、既知の紫外線硬化型の塗料組成物と同程度またはそれ以上の物性を有する塗膜を形成できるものと推測される。
【0046】
本発明に係るイソシアネート化合物において、化合物内に存在するイソシアネート官能基数は、1以上であり、例えば2以上である。例えば、化合物内に存在するイソシアネート官能基数は10以下であり、ある態様においては、5以下であり、さらには3以下であり得る。
イソシアネート官能基数がこのような範囲内であることにより、例えば、本発明に係るイソシアネート化合物と、分岐ポリマーの活性水素基(例えばヒドロキシル基など)との反応性がよく、熱硬化型の塗料組成物でありながらも、既知の紫外線硬化型の塗料組成物と同程度またはそれ以上の物性を有する塗膜を形成できる。
【0047】
ある態様において、本発明に係るイソシアネート化合物は、1官能のアルキルシラノール基、2官能のアルキルシラノール基および3官能のアルキルシラノール基から選択される少なくとも1種のアルキルシラノール基を有する。
好ましくは、イソシアネート化合物は、2官能のアルキルシラノール基および3官能のアルキルシラノール基から選択される少なくとも1種のアルキルシラノール基を有する。
これにより、塗料組成物から形成される塗膜において、シラノール基の分子内縮合が生じ、より良好な塗膜の外観(例えば平滑性)を有し、かつ、さらに優れた耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成できる。
なお、分岐ポリマーの官能基などに応じて、イソシアネート化合物におけるアルキルシラノール基の官能基数を適宜選択できる。
【0048】
イソシアネート化合物に含まれるアルキルシラノール基の数は、1分子当たり1個以上である。ある態様においては、イソシアネート化合物に含まれるアルキルシラノール基の数は、1分子当たり30個以下である。
【0049】
ある態様において、本発明に係るイソシアネート化合物は、下記一般式(1)で示されるアルキルシラノール基を1つ以上有する
[式中、R、R、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、ただし、R、R、Rは、相互に同一であってもよく、相違していてもよく、
は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、
nは1~10である]。
【0050】
また、一般式(1)におけるR基は、Si原子とNCO基との間に存在する酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含む有機鎖であってもよい。ただし、これらの酸素原子、窒素原子または硫黄原子は直接Si原子とは結合しない。本発明に係るイソシアネート化合物におけるR基とイソシアネート基は隣接してもよい。また、イソシアネート化合物は、R基とイソシアネート基との間に他の炭化水素基などを有してもよい。
【0051】
ある態様において、本発明に係るイソシアネート化合物は、上記一般式(1)で示されるアルキルシラノール基を1つ以上有することにより、アルキルシラノール基内での自己縮合が生じ得る。これにより、更に耐擦傷性が向上し、より良好な塗膜硬度を有する塗膜が得られる。
【0052】
本発明の塗料組成物において、本発明に係るイソシアネート化合物の量は、塗料組成物中の分岐ポリマーの水酸基1当量に対して、0.8当量以上、1.5当量以下であってよい。ある態様において、本発明に係るイソシアネート化合物の量は、分岐ポリマーの水酸基1当量に対して、1.0当量以上、1.5当量以下である。
なお、本明細書において、本発明の塗料組成物が複数種の分岐ポリマーを含む場合は、複数の分岐ポリマーそれぞれの水酸基価から算出される水酸基の量(当量)に対する、イソシアネート化合物の量(当量)の合計量を意味する。以下においても、特に断りのない限り、同様である。
塗料組成物はこのような量でイソシアネート化合物を有することにより、分岐ポリマー、特に、多分岐構造を有する多分岐ポリマーと、本発明に係るイソシアネート化合物とを充分に反応させることができ、分岐ポリマーの有する柔軟性と、イソシアネート化合物のアルキルシラノール基の自己縮合による優れた耐擦傷性および良好な塗膜硬度とを有する塗膜が得られる。
また、本発明の塗料組成物は、熱硬化型の塗料組成物でありながらも、既知の紫外線硬化型の塗料組成物と同程度またはそれ以上の物性を有する塗膜を形成できる。
【0053】
(触媒)
本発明の塗料組成物は、更に、触媒を含んでもよい。触媒を含むことにより、例えば、本発明に係る分岐ポリマーの反応性官能基と、イソシアネート化合物のイソシアネート基との反応をより選択的に進めることができ、より高い表面硬度、耐擦傷性を有する塗膜を得ることができる。また、より低温で塗膜形成をできるおよび/または塗料組成物の硬化時間をより短縮できる。さらに、耐熱着色安定性、薄膜硬化性に優れる塗膜を得ることができる。
【0054】
ある態様においては、イソシアネート化合物に含まれるアルキルシラノール基の加水分解縮合を促進するために、酸触媒を用いてもよい。酸触媒は、触媒作用が適度であるので、生成したポリヒドロキシシロキサンの縮合が適切な度合いで進行するためである。酸触媒としては、アルコキシシリル基の加水分解反応に対して触媒作用を有するプロトン酸類やルイス酸類であれば、任意の適切なものを使用することができる。具体的には、プロトン酸として、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸や酢酸、乳酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が、ルイス酸として、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシドまたはキレート化合物等が挙げられる。
【0055】
上記酸触媒以外にも、触媒は、用いる分岐ポリマー、本発明に係るイソシアネート化合物に応じて、適宜選択できる。ある態様において、触媒は、金属フリー有機イオン触媒である。金属フリー有機イオン触媒を用いることにより、環境への負荷を更に低減できる。金属フリー有機イオン触媒は、例えば、アミン類、イミダゾール類、イミダゾリン類、芳香族基含有触媒及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である。
ここで用語「金属フリー有機イオン触媒」は、触媒の化学構造中に、金属原子および金属イオンのいずれも含まない触媒を意味する。
【0056】
上記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等を挙げることができる。
上記イミダゾリン類としては、例えば、2-エチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリン等を挙げることができる。
【0057】
デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸などの脂肪族多価カルボン酸、安息香酸およびその塩などの芳香族基含有触媒であってもよい。
【0058】
触媒は、本発明の塗料組成物中の分岐ポリマーの樹脂固形分100質量部に対して、0.05質量部以上、3質量部以下であってよい。なお、本明細書において、本発明の塗料組成物が複数種の分岐ポリマーを含む場合、「分岐ポリマーの樹脂固形分100質量部」は、「分岐ポリマーの樹脂固形分の合計100質量部」を意味する。以下においても、分岐ポリマーの樹脂固形分100質量部と記載する場合、特に断りのない限り、同様である。
【0059】
本発明の塗料組成物は、黒顔料等の着色顔料を配合でき、ピアノブラックのような意匠を有するものに対して1コートで塗膜形成できる。これに対して、UV塗料では、着色顔料を配合すると硬化(塗膜形成)が阻害され、充分な性能を有する塗膜を得ることができない。
このように、本発明の塗料組成物は、熱硬化性でありながら、優れた外観(例えば平滑性)と耐擦傷性が得られる。例えば、黒顔料の添加方法は、市販の分散ペーストを配合してもよく、また本発明で使用する分岐ポリマーに事前に分散させ、本発明の塗料組成物を調製してもよい。
【0060】
(その他の成分)
本開示に係る塗料組成物は、本発明の塗料組成物に含まれる分岐ポリマー、イソシアネート化合物の物性を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、着色顔料、体質顔料、改質剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。さらに、塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤が添加されていることが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピー性を示すものを使用できる。例えば、このようなものとして、従来から公知のものを使用することができる。ある態様においては、粘性制御剤(レオロジーコントロール剤)として、既知のマイクロゲルおよび非水分散型アクリル樹脂の少なくとも1を含むことができる。
【0061】
(被塗物)
本発明の塗料組成物は、日用品の外装材、建材、建具、床材などの建屋内装、自動車車体および自動車部品(例えば、外装部品、内装部品)、家電、スマートキー、スマートフォン、ノートパソコン等の外装材などに好適に用いられる。特に好ましくは、電気製品、電子機器部品、自動車、自動車部品である。
例えば、自動車の内装部品に用いる場合、種々のプラスチック基材及びこれらの成形品等に用いることができるが、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ABS樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック基材及びこれらの成形品に好適に用いることができ、ポリプロピレン等のポリオレフィン系基材及びその成形品に特に好適に用いることができる。
また、所望により、プライマー塗膜などの公知の塗膜を形成した被塗物を用いてもよい。
【0062】
本発明の塗料組成物から形成される塗膜は、良好な塗膜の外観(例えば、平滑性)および意匠性を有するので、例えば、金属調、ピアノブラック調等の光沢感の要求される自動車の内装部品にも適用できる。
【0063】
(塗膜形成方法)
本発明の別の態様によると、被塗物上に、上述した本発明に係る塗料組成物を塗装し、加熱して硬化塗膜を形成する、塗膜形成方法であって、
前記塗料組成物は、触媒を有し、
前記加熱を、被塗物温度が70℃以上90℃以下の温度で行う、塗膜形成方法が提供される。
【0064】
この態様により、分岐ポリマーとイソシアネート化合物との間における反応が促進され、より低温で塗膜形成をできる。また、塗料組成物の硬化時間をより短縮できる。
【0065】
例えば、触媒は、上述した触媒のうち、金属フリー有機イオン触媒を用いてもよい。これにより、環境への負荷を更に低減できる。
【0066】
本発明の塗料組成物を上記基材に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スプレー塗装、ロールコーター法、ベル塗装、ディスク塗装、カーテンコート、シャワーコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができ、通常、乾燥膜厚10μm~50μmの範囲内で塗装することができる。塗装と加熱(焼付け乾燥)との間に、常温(室温)で適当な時間静置してセッティングしてもよい。
【0067】
加熱を、被塗物温度が70℃以上90℃以下の温度で行ってよく、例えば、75℃以上90℃以下で行ってよい。温度が70℃未満であると、硬化が不充分となるおそれがある。90℃を超えると、環境負荷が大きくなるおそれがあり、また基材に対する熱負荷が生じるおそれがある。時間は硬化温度(加熱温度)により変化するが、70℃以上90℃以下の場合、20分以上、例えば25分以上60分以下が好ましい。
なお、本発明の塗料組成物であれば、触媒を用いなくても、優れた塗膜の外観(例えば、平滑性)と、塗膜物性、例えば、耐擦傷性を有することができる。
【0068】
また、被塗物である基材が、例えば、金属材料からなる基材、ファインセラミックスからなる基材である場合、被塗物温度は、例えば70℃以上150℃以下の範囲で加熱を行ってもよい。
【実施例
【0069】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
【0070】
(樹脂成分)
(P1)Basonol(登録商標) HPE 1170 B (BASF)
ハイパーブランチポリエステル
(水酸基価:280mgKOH/g、酸価:85mgKOH/g、重量平均分子量(Mw):1800、ガラス転移温度(Tg)18℃)
(P2)JR-B754 (三菱レイヨン) アクリル樹脂
(水酸基価:250mgKOH/g、酸価:3mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)40℃)
(P3)アクリル樹脂
(水酸基価:170mgKOH/g、酸価:7mgKOH/g)
【0071】
(イソシアネート化合物)
(I1)X-12-1159L (信越化学工業)
イソシアネート官能基数:2
(I2)KBE-9007 (信越化学工業)
イソシアネート官能基数:1
(I3)HDIイソシアヌレート
イソシアネート官能基数:3
【0072】
(触媒)
金属フリー有機イオン触媒:Basionics(登録商標) KAT-1 (BASF)
金属触媒:スズ触媒(ジブチルスズジラウレート)
【0073】
(添加剤)
表面調整剤:BYK310(ALTANA)
【0074】
(実施例1~4、比較例1~3)
表1に示した配合に従い、各成分を混合し、酢酸ブチルにて40%にて希釈した。金属フリー有機イオン触媒Basionics(登録商標) KAT-1はmエチルエチルケトン(MEK)にて10%溶液を調整し添加した。
得られた混合物を、ディスパーで攪拌することによって実施例1~4及び比較例1~3の塗料組成物を得た。
なお、表1において、イソシアネート化合物の配合量は、塗料組成物中の分岐ポリマーの水酸基価に対する当量比で示される。また、添加剤、触媒などの配合量は、塗料組成物中の分岐ポリマーの樹脂固形分100質量部に対する配合量を示す。
【0075】
(塗膜の形成)
表1で記載した塗料組成物を、乾燥膜厚が30μmとなるように、被塗物(黒色ABS樹脂製の板材)に、エアースプレー塗装して、5分間セッティング後、80℃で30分間焼き付け硬化させ、本発明の塗料組成物から塗膜を形成した。得られた各試験用塗膜について、後述の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0076】
(参考例)
反応性アクリルポリマー アートキュアRA-3602MI (根上工業社製、不揮発分50%)60重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリート=55/45の混合物(大阪有機化学工業製ビスコート#300)70重量部、イルガキュア184(BASFジャパン製)2重量部の混合物をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)で希釈し、不揮発分60%に調整し、活性エネルギー線硬化性組成物を得イソブチルアルコール(IBA)希釈性を評価するために、組成物の倍量のイソブチルアルコール(IBA)を用い、不揮発分30%まで希釈した。液は透明性を保っていた。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物を、乾燥後の塗膜の厚さが10μmになるように被塗物(黒色ABS樹脂製の板材)に、エアースプレー塗装して、5分間セッティング後、80℃で2分間加熱乾燥した。次いで、この塗膜に、出力120m W/cm2の高圧水銀灯を、光源として、照射強度150mW/cm2にて積算光量1000mJ/cm2になるように紫外線を照射し、塗膜を硬化させてハードコート層を有する積層体を作製した。
実施例1と同様の方法で後述の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0077】
(耐スチールウール摩耗性)
得られた塗膜の耐スチールウール摩耗性の評価は、大栄科学精器製作所社製 平面摩耗試験機を使用して行った。試験開始前にmicro-TRI-gloss(BYK社製光沢計)で塗膜表面に対して60°の角度の光沢度を測定する。摩擦面積が100×20mmであるため、測定箇所は試験片の摩擦試験部位の中央、中央から左右に30mmの3箇所とし、その平均を試験前部位の光沢度とする。
次に、試験片準備する。試験片は20×20mmにカットした両面テープの片面にスチールウール(日本スチールウール社ボンスターNo.0000製)を均一に圧着したものとし、これを試験機の摩擦面に接着固定し摩擦子とする。試験片を試験機にセットし、21.6N(2Kg分銅+200g摩擦子)の荷重をかけ10cmのストローク長さで、1分間に30往復する速度で50回往復させる。
試験後30分以内にmicro-TRI-gloss(BYK社製光沢計)で塗膜表面に対して60°の角度の光沢度を測定する。測定箇所は試験後試験片の摩擦試験部位の中央、中央から左右に30mmの3箇所とし、その平均を試験部位の光沢度とする。試験部位に対する試験前部位の商の百分率を摩耗試験による光沢保持率として、耐擦傷性を評価した。評価結果は、以下のとおりである。
◎(耐擦傷性が非常に良好):光沢保持率が70%以上
○(耐擦傷性が良好):光沢保持率が60%以上、且つ70%未満
△(耐擦傷性がやや弱い):光沢保持率が50%以上、且つ60%未満
×(耐擦傷性が弱い):光沢保持率が50%未満
【0078】
(平滑性)
平滑性の評価は、micro-wave-scan(BYK社製塗装表面性状測定器)を用いて得られるWaおよびWdの値を、以下の基準で評価した。
(平滑性の評価)
◎(極めて良好):WaおよびWdの値が全て、2以下である
○(良好):WaおよびWdの値のうち少なくとも1つが、2より大きく5未満である
△(やや劣る):WaおよびWdの値のうち少なくとも1つが、5より大きく10未満である
×(不良):WaおよびWdの値の少なくとも1つが、10を上回る
【0079】
【表1】
【0080】
このように、本開示は、良好な塗膜の外観(平滑性)および意匠性を有し、かつ、耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成する、塗料組成物を提供できる。また、本発明の塗料組成物であれば、長期間使用に対する耐擦傷性が優れる塗膜を形成でき、優れた耐薬品性を有する塗膜を形成できる。
【0081】
一方、比較例1は、耐擦傷性が悪く、その上、塗膜外観(例えば平滑性)も不十分であった。比較例2は、耐擦傷性が悪く、比較例3は、耐擦傷性が悪く、その上、塗膜外観(例えば平滑性)も不十分であった。
なお、参考例は、耐擦傷性が良好であり、その上、塗膜外観(例えば平滑性)も十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によると、良好な塗膜の外観(例えば平滑性)および意匠性を有し、かつ、耐擦傷性などの塗膜物性をバランスよく有する塗膜を形成できる、塗料組成物を提供できる。更に、本発明は、本発明の塗料組成物を用いて塗膜を形成することを含む、複層塗膜の形成方法を提供できる。