(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】軟弱土壌等の改質材及び残土の固化処理方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/06 20060101AFI20220418BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20220418BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220418BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20220418BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20220418BHJP
C09K 17/12 20060101ALI20220418BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20220418BHJP
C09K 17/46 20060101ALI20220418BHJP
E02F 7/00 20060101ALI20220418BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
C09K17/06 P
C02F11/00 101Z
B01J20/26 D ZAB
G21F9/28 Z
G21F9/30 501V
C09K17/12 P
C09K17/02 P
C09K17/46 P
E02F7/00 D
C09K103:00
(21)【出願番号】P 2018027837
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592048970
【氏名又は名称】日鉄セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】大石 徹
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216719(JP,A)
【文献】特開平11-188392(JP,A)
【文献】特開2000-271597(JP,A)
【文献】特開2018-030958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/
C02F 11/
B01J 20/
G21F 9/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱土壌又は汚泥の改質材であって、珪酸塩鉱物(ベントナイト又はグリーンタフを除く。以下同じ)の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末を
含む混合物であり、 珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計に対し、珪酸塩鉱物の粉末の配合割合が30~70重量%であ
り、高分子吸水ポリマーを含む場合にあっては、珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計の配合割合が85~99重量%であり、高分子吸水ポリマー以外の高分子化合物を含まないことを特徴とする改質材。
【請求項2】
軟弱土壌又は汚泥の改質材であって、珪酸塩鉱物(ベントナイト又はグリーンタフを除く。以下同じ)の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末を
含む混合物であり、 珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計に対し、珪酸塩鉱物の粉末の配合割合が30~70重量%であ
り、半水石膏を含む場合にあっては、珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計の配合割合が30~90重量%であり、高分子吸水ポリマー以外の高分子化合物を含まないことを特徴とする改質材。
【請求項3】
更に、高分子凝集剤又は高分子増粘剤を含む請求項
1又は2に記載の改質材。
【請求項4】
高分子吸水ポリマーの周囲に層状粘土鉱物焼成物の粉末が被覆されて存在する請求項
1又は2に記載の改質材。
【請求項5】
珪酸塩鉱物の粉末が、硬質砂岩、砂岩、粘板岩、泥岩、珪岩、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、カンラン岩、安山岩、玄武岩、流紋岩、結晶片岩及び蝋石から選ばれるシリカ分が50~80wt%の珪酸塩鉱物の粉末である請求項
1又は2に記載の改質材。
【請求項6】
層状粘土鉱物焼成物の粉末が、風化黒雲母、金雲母、セリサイト、ヒル石、バーミキュライト、頁岩、風化火山灰、風化軽石、及び風化凝灰岩から選ばれる鉱物を、400℃~1000℃で焼成後、粉砕したものである請求項
1又は2に記載の改質材。
【請求項7】
軟弱土壌又は汚泥が、建設現場で発生する残土であり、残土1m
3に対し請求項
1又は2に記載の改質材を10~300Kg混合することを特徴とする残土の固化処理方法。
【請求項8】
軟弱土壌又は汚泥が、放射性物質含有廃棄物に含有される汚泥であり、放射性物質含有廃棄物に請求項
1又は2に記載の改質材を混合して放射性物質含有廃棄物中の汚泥を固化させ、次いでこの固化汚泥と、瓦礫を分離することを特徴とする放射性物質含有廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場等で発生する軟弱土壌等を固化させてその強度を高めるために有用な改質材に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルのシールド工法等で発生する建設残土は、含水率が高く、そのままの状態では使用又はダンプトラック等による搬出作業が困難なため、固化剤等の改質材を添加して、流動性を低減させるとともに、この強度を向上させたりすることが行われている。かかる改質材としては、石膏や高分子吸水ポリマー等の吸水材系や、セメント、石灰、マグネシア等の硬化剤系やこれらの組み合わせが知られている。しかし、石膏は耐水性が弱く、水分と接する機会の多い埋め立て等の用途には適さない。高分子系吸水材は高価であるうえ、固化処理後の圧縮強度が弱く、また地表面に露出した場合には紫外線に弱く分解しやすいという問題がある。さらに、高分子系吸水材は残土中に含まれる間隙水中にカルシウ、ナトリウム、アンモニウム等の陽イオンが多く含まれると吸水性能が著しく低下する欠点を有している。セメントや石灰系の硬化剤は、固化処理後の残土をアルカリ性とするため、これで埋め立て又は盛り土等をした土地での植物の成長や地下水に悪影響を与える。
【0003】
また、原発事故等により放射性物質で汚染された放射性廃棄物が、原子力発電所のみならず、その周辺から多量に発生するが、これは安全な放射能レベルとなるまで中間貯蔵設備等で長期間保管されている。しかし、貯蔵設備の増設には限りがあり、これの減量化が強く望まれている。放射性廃棄物は、コンクリート片や木片、鉄骨、石等の瓦礫と、汚泥との混合物となっていることが多いが、放射性物質は主に汚泥中の土壌等に吸着されていて、瓦礫中には殆ど含まれない場合が多い。そこで、放射性廃棄物と中の瓦礫と汚泥を簡易に分離することができれば、厳重な管理が必要な高濃度汚染物が大幅に減量することができることになる。瓦礫と汚泥を分離するためには、汚泥を乾燥した状態又は粒状にさせると共に、乾燥後に瓦礫と強固に接着させないことが有効である。この目的のためには、従来の改質材は適しているとは言えない。
【0004】
固化材については、これまでに各種の改良提案がなされている。例えば、半水石膏を主成分とし、これに高炉セメントや中和剤としての硫酸アルミニウムを少量添加したもの(特許文献1)、高炉徐冷スラグを炭酸成分とともに使用するもの(特許文献2)、水硬性アルミナ及び炭酸リチウムより成るもの(特許文献3)、生石灰と過リン酸石灰等の中和剤とセメント等の固化助剤と石膏とからなるもの(特許文献4)など数多くの提案が挙げられる。また、泥土の処理方法としても、例えば、三種類の薬剤、すなわち石膏からなる固化材、高分子凝集剤、次いで吸水材を、順次、添加混合することなども提案されている。
【0005】
特許文献5は、水溶性高分子、無機又は有機の粉末及び無機系固化剤を含む残土の固化処理剤を開示する。ここで、水溶性高分子はアニオン性ポリアクリルアミドやグアガム等であり、無機又は有機の粉末はタルクやベントナイト等であり、無機系固化剤がセメント等であるが、全体としては上記硬化剤系に該当し、それらの有する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4070982号公報
【文献】特許第3841770号公報
【文献】特許第4462853号公報
【文献】特許第4663999号公報
【文献】特許第4506184号公報
【文献】特開平8-333571公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、建設現場等で発生する高含水の残土等を固化させてその強度を高めることができ、固化された残土の耐水性が高く、しかも実質的に中性な改質材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軟弱土壌又は汚泥の改質材であって、石灰石及び珪酸塩鉱物から選ばれる天然鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末を含む混合物であることを特徴とする改質材である。
【0009】
本発明の改質材は、次のいずれか1つ以上を満足することが望ましい。
1) 更に、高分子吸水ポリマー、半水石膏等の吸水材を含むこと。
2) 高分子凝集剤又は高分子増粘剤を含むこと。
3) 珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末からなり、両者の合計に対する珪酸塩鉱物の粉末の配合割合が30~95重量%であること。
4) 珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末、および高分子吸水ポリマーを含み、珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計の配合割合が85~99重量%であること。
5) 高分子吸水ポリマーの周囲に層状粘土鉱物焼成物の粉末が被覆されて存在すること。
6) 珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末、および半水石膏を含み、珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計の配合割合が30~90重量%であること。
7) 天然鉱物の粉末が珪酸塩鉱物の粉末であること。
珪酸塩鉱物が、硬質砂岩、砂岩、粘板岩、泥岩、珪岩、凝灰岩、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、カンラン岩、安山岩、玄武岩、流紋岩、結晶片岩及び蝋石から選ばれるシリカ分が50~80wt%の珪酸塩鉱物であること。
8) 層状粘土鉱物焼成物が、風化黒雲母、金雲母、セリサイト、ヒル石、バーミキュライト、頁岩、風化火山灰、風化軽石、及び風化凝灰岩から選ばれる鉱物を400℃~1000℃で焼成後に粉砕したものであること。
【0010】
また、本発明は、軟弱土壌又は汚泥が、建設現場で発生する残土であり、残土1m3に対し上記いずれかの改質材を10~300Kg混合することを特徴とする残土の固化処理方法である。
【0011】
更に、本発明は、軟弱土壌又は汚泥が、放射性物質含有廃棄物に含有される汚泥であり、放射性物質含有廃棄物に上記いずれかの改質材を混合して放射性物質含有廃棄物中の汚泥を固化させ、次いでこの固化汚泥と瓦礫を分離することを特徴とする放射性物質含有廃棄物の処理方法である。
【0012】
また、本発明は、上記改質材に使用される資材であって、層状粘土鉱物焼成物の粉末と、上記吸水材が混合されていることを特徴とする改質材用資材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の処理剤は、珪酸塩鉱物粉末と層状粘土鉱物焼成物粉末を主要成分として使用するため、反応性が低く、しかも溶出イオンが少ないものとなり、水を多量に含んで軟弱な残土等をこれで固化処理すると強度及び耐水性が高く、中性を維持可能なものとすることが可能である。そのため、この処理剤で処理された残土等は埋め立て資材、土木建設資材として好適に利用できる。また、本発明の処理剤は、放射性物質含有廃棄物の減容処理にも有効である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の改質材は、珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末を含む。有利には、これらに加えて吸水材を含む。吸水材としては、高分子吸水ポリマー及び半水石膏から選ばれる1種以上が適する。更に有利には、高分子凝集剤又は増粘剤を含む。
【0015】
天然鉱物の粉末としては、石灰石の粉末又は珪酸塩鉱物の粉末が使用されるが、珪酸塩鉱物の粉末が適する。また、石灰石の粉末と珪酸塩鉱物の粉末の両方を使用してもよい。
珪酸塩鉱物の粉末としては、シリカ分の含有量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含み、80重量%以下を含有する岩石又は鉱物の粉砕物が適する。このような珪酸塩鉱物の粉砕物は、その粒度等によって建材用、鋳物用、農薬担持用等として市販されているので、入手が容易であるという利点がある。
一方、ガラス原料等で使用される結晶質石英の粉砕物、石英粒を主成分とする堆積物から精製した珪砂は、二酸化ケイ素の含有率が90重量%以上と高く、微粉末を吸入した場合には人体の呼吸器系に悪影響を及ぼす。また、硬度が高いために破砕され難く、粉砕設備の磨耗を招き粉砕コストの増加を招く。石英粒を主成分とする粉末は、電気絶縁性に優れるため、混合時の摩擦により静電気を帯びやすく、高分子吸水ポリマーとの混合性能が悪化すため、本発明の珪酸塩鉱物としては適さない。しかし、珪砂であっても、二酸化ケイ素の含有量が90重量%未満、好ましくは80重量以下であれば、珪酸塩鉱物として適する。
【0016】
天然鉱物の粉末の粒度には制限はないが、これと併用する吸水材又は高分子凝集剤・増粘剤との相分離を防ぐためには、80メッシュを90wt%以上が通過することが好ましく、100メッシュを90wt%以上が通過することがより好ましい。平均粒径(D50)としては、80~150メッシュであることがよい。
【0017】
天然鉱物の粉末は、それ自体は水に対する溶解性がないか、少なく、水濡れ性が良いものが好ましく、これは土壌や汚泥中に分散して、骨材として機能すると考えられ、これを使用することにより、軟弱な残土等の固化処理後の強度を向上させる。
天然鉱物としては、珪酸塩鉱物が挙げられ、珪酸塩鉱物としては、硬質砂岩、砂岩、チャート、珪岩、凝灰岩、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、カンラン岩、蛇紋岩、安山岩、玄武岩、輝緑岩、花崗斑岩、流紋岩、軽石、片麻岩、結晶片岩、ホルンフェルス、珪灰石、蝋石等が挙げられ、好ましくは硬質砂岩、砂岩、粘板岩、泥岩、珪岩、凝灰岩、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、カンラン岩、安山岩、玄武岩、流紋岩、結晶片岩、又は蝋石が優れる。
【0018】
層状粘土鉱物焼成物としては、その構造中に結晶水を多く含み、焼成により結晶水が脱水し易い層状構造を有する岩石又は鉱物の焼成物の粉砕物が適する。このような層状粘土鉱物焼成物は、その粒度等によって建材用、農業用資材等として市販されているので、入手が容易であるという利点がある。層状粘土鉱物焼成物の粉末は、それ自体の吸水性が良いため、土壌や汚泥中に分散して、吸水材と骨材として機能すると考えられるが、これを使用することにより、軟弱な残土等の固化処理後の強度を向上させる。
上記層状粘土鉱物焼成物としては、風化黒雲母、金雲母、セリサイト、ヒル石、バーミキュライト、頁岩、風化火山灰、風化軽石、又は風化凝灰岩であるから選ばれる鉱物を400℃~1000℃で焼成したものが適する。
【0019】
層状粘土鉱物焼成物の粉末の粒度には制限はないが、これと併用する珪酸塩鉱物の粉末との相分離を防ぐためには、60メッシュを90wt%以上が通過することが好ましく、また骨材として機能させるために、300メッシュの通過が20wt%以下であることがより好ましい。平均粒径(D50)としては、200~300メッシュであることがよい。
【0020】
本発明の改質材には吸水材を配合することができ、この吸水材は、高分子吸水ポリマー及び半水石膏から選ばれる。高分子吸水ポリマーとしては、デンプン系、セルロース系、ポリアクリル酸系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系などを使用できるが、好ましくはポリアクリル酸系ポリマーである。高分子吸水ポリマーは、非水溶性であって、粉末状であることが望ましい。
高分子吸水ポリマーの吸水率は、真水に対しては自重の200倍以上であることがよい。好ましくは自重の200~600倍の範囲である。なお、食塩水に対しては、真水に比べて吸水率は落ちるが、0.5%食塩水に対しては自重の30倍以上であることが好ましい。
【0021】
半水石膏としては、脱硫の際の副生石膏など任意の半水石膏が使用できるが、不純物として鉄分を含有する副生石膏が汚泥等の有機物を多く含んだものを固化処理する場合に、硫酸還元菌による硫化水素の発生を抑制するために適する。かかる鉄分を含有する副生石膏としては、硫酸法によりチタン鉱石から酸化チタンを製造する際に副生する半水石膏が挙げられる。半水石膏は、改質材に配合される他の成分と均一に混合されるため、粉末状であることが好ましい。
【0022】
本発明の改質材には高分子凝集剤や高分子増粘剤を配合することができ、この高分子凝集剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性の材料が知られているが、低毒性などの観点から、アニオン性、ノニオン性の高分子凝集剤、特にポリアクリルアミド系の高分子凝集剤が好ましい。また、高分子増粘剤としては、セルロース誘導体を主成分とする水溶性混合物が知られており、グリオキサール付加ヒドロキシプロピルメチルセルロース系の高分子増粘剤が好ましい。高分子凝集剤又は高分子増粘剤を配合することによって、土壌中の水分バランスを適性化し、固化後における強度維持に寄与する。
【0023】
本発明の改質材は、天然鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末を必須成分として含み、上記吸水材、並びに高分子凝集剤又は高分子増粘剤を好ましい成分として含むが、必要により増量材等の他の添加材を含んでもよい。
以下、天然鉱物の粉末を珪酸塩鉱物の粉末で代表して説明する。したがって、断りがない限り、珪酸塩鉱物の粉末は石灰石の粉末の場合を含む意味と理解される。
【0024】
本発明の改質材における上記必須成分の配合割合は、珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計に対し、珪酸塩鉱物の粉末が30~95重量%であることがよく、好ましくは30~70重量%である。
【0025】
本発明の改質材が、珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末と、高分子吸水ポリマーを含む場合にあっては、珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末の合計の配合割合が85~99重量%であることがよい。この場合、高分子吸水ポリマーの配合割合は、1~15重量%、好ましくは2~10重量%である。更に、高分子凝集剤又は高分子増粘剤を含む場合にあっては、珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末と高分子吸水ポリマーの合計100重量部に対して、高分子凝集剤又は高分子増粘剤の配合割合は、0.01~2重量部、好ましくは0.02~1重量部であることがよい。
【0026】
珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末と、半水石膏、又は半水石膏と高分子増粘剤を含む場合にあっては、シリカ鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物粉末の合計の配合割合が30~90重量%であることがよい。この場合、半水石膏の配合割合は、10~70重量%、好ましくは10~50重量%である。吸水材として半水石膏を使用する場合は、理論的には半水石膏が二水石膏となる量の水しか吸水できず、高分子吸水ポリマーに比べて吸水率が低いので、半水石膏は比較的多量に配合される。更に、高分子凝集剤又は高分子増粘剤を含む場合にあっては、珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末と高分子吸水ポリマーの混合物100重量部に対して、高分子凝集剤の配合割合は、0.05~2重量%あることがよく、好ましくは0.1~1重量%であり、高分子増粘剤の配合割合は、0.01~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0027】
本発明の改質材が、上記必須成分に加えて増量材等の他の材料を含む場合は、必須成分の合計を100重量%として、上記配合割合を満足することがよい。しかし、他の材料を含む場合であっても、それが少量であれば、改質材中に上記配合割合で含むことがよい。
【0028】
本発明の改質材における珪酸塩鉱物の粉末と層状粘土鉱物焼成物の粉末と高分子吸水ポリマーの存在形態には制限はなく、粉末状態で混合されていてもよいが、高分子吸水ポリマーの表面が層状粘土鉱物焼成物の粉末により被覆されて存在する形態であることがよい。
【0029】
本発明の改質材は、珪酸塩鉱物の粉末と、層状粘土鉱物焼成物の粉末を含み、必要により上記吸水材、高分子凝集剤又は高分子増粘剤、又はその他の材料を含む成分を混合することにより得ることができる。有利にはこれらの粉末をリボンミキサー、スーパーミキサー等の混合装置を用いて、攪拌、混合して得ることができる。
【0030】
本発明の改質材は、軟弱土壌又は汚泥の固化又は強度の向上に有用である。軟弱土壌又は汚泥としては、掘削工事から生じる高含水率の残土、その他の建設汚泥、鉱山等や工場から排出される汚泥や、汚泥状又は汚泥を含む放射性廃棄物などが挙げられる。好ましくは、シールド工法によるトンネル工事で排出される残土である。この残土は量が多いだけでなく、現場での再使用が困難で、遠方の埋め立て地等に搬送して、埋め立て材として使用されることが多いので、工事現場での固化が容易であることが望まれる。
【0031】
本発明の改質材は、処理すべき軟弱土壌又は汚泥(これらを総称して残土等ともいう。)の使用量は、残土等の含水率やその他の性状によって異なるが、残土等1m3に対して、10~100kgの範囲が適する。そして、処理後の残土等のコーン指数が200kN/m2以上とすることがよい。
【0032】
本発明の改質材は、放射性物質含有廃棄物の処理に有用である。放射性物質含有廃棄物は、コンクリート、木材、金属材、石材等の比較的大きな固形物からなる瓦礫の他に汚泥が混在し、これが瓦礫に付着して全体として放射性廃棄物として隔離、貯蔵されている。しかし、放射性物質は主に汚泥中の土壌等に吸着されていて、瓦礫自体は比較的放射能が低いことが多い。そこで、汚泥と瓦礫を簡易に分離することができれば、隔離、貯蔵される量を大幅に減少できる可能性がある。汚泥と瓦礫を分離するためには、汚泥が有する接着性又は粘着性を失わせるために固化させて、半乾燥状態又は粉状状態とすることが有効であるが、これがセメントのように硬化してしまうと分離が更に困難となる。本発明の改質材は、このような硬化の問題を起こすことなく、汚泥を半乾燥状態又は粉状状態として、接着性又は粘着性を失わせることができる。このための改質材としては、吸水材として半水石膏ではなく、高分子吸水ポリマーを使用したものが適する。
【0033】
本発明の放射性物質含有廃棄物の処理方法は、汚泥を含む放射性物質含有廃棄物に本発明の改質材を混合して放射性物質含有廃棄物中の汚泥を固化させ、次いでこの固化汚泥と、瓦礫を分離する方法である。本発明の改質材を混合することにより、汚泥中の水分が吸収されて固化して半乾燥状態又は粉状状態となるので、これを篩等で粉状物と塊状物とに分離すれば、放射性物質を高度に含む粉状物と、それ以外の瓦礫とに分けることができる。その場合、層状粘土鉱物焼成物の粉末として、風化黒雲母焼成物の粉末、ヒル石焼成物の粉末、バーミキュライト焼成物の粉末等の放射性セシウムの吸着効果を有する鉱物を使用すると、汚泥中の放射性セシウムを不溶化することができる。
【0034】
また、本発明の改質材用資材は、層状粘土鉱物焼成物の粉末と上記吸水材があらかじめ混合されているため、これを工事現場に持ち込み、そこで工事現場付近で比較的入手が容易な天然鉱物の粉末と混合するようにすれば、容易に本発明の改質材とすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を、実施例によって具体的に説明するが、これらによって限定されるものではない。
【0036】
実施例1
珪酸塩鉱物の粉末として、日瓢鉱山産出の硬質砂岩を、ジョークラツシャーで粗砕後、トンネルキルンを用いて乾燥し、さらにロールクラツシャー、ロッドミル、ゲージミルと、振動フルイ、サイクロンセバレータ等の分級機を用いて、実質的な付着水分0%で、粉末粒度100メッシュ通過100%、吸水率5%の粉末Aを得た。
得られた珪酸塩鉱物粉末Aの化学組成(wt%)は、蛍光X線分析の結果によると、表1のとおりであった。
【0037】
【0038】
層状粘土鉱物焼成物の粉末として、南アフリカ・パラボラ産出のバーミキュライト原石を、加熱温度800℃のバーミキュライト焼成用斜炉を用いて焼成し、さらにターボミルを用いて、実質的な付着水分0%で、粉末粒度60メッシュ通過92%、粉末粒度300メッシュ通過5%、吸水率380%の粉末Bを得た。
得られた層状粘土鉱物焼成物粉末Bの化学組成(wt%)は、蛍光X線分析の結果によると、表2のとおりであった。
【表2】
【0039】
珪酸塩鉱物粉末A100重量部に、層状粘土鉱物焼成物粉末B100重量部を添加し、スーパーミキサーを用いて混合し、改質材1を得た。
【0040】
実施例2
100重量部の改質材1に、ポリアクリル酸系吸水性ポリマー(三洋化成工業株式会社製サンフレッシュST-500D)を3重量部添加し、スーパーミキサーを用いて混合し、改質材2を得た。
なお、使用した吸水性ポリマーの純水に対する吸水量は約400g/gであり、0.5%NaCl溶液に対する吸水量は約53g/gであった。
【0041】
実施例3
100重量部の改質材2に、さらにメチルセルロース系高分子増粘剤(第一工業製薬株式会社製、ユニショツトA-10)0.5重量部を添加し、実施例1で使用したと同じ粉体混合機を用いて混合し、改質材3を得た。
【0042】
実施例4
100重量部の改質材1と、市販の半水石膏(試薬)100重量部を、実施例1で使用したと同じ粉体混合機を用いて混合し、改質材4を得た。
【0043】
実施例5
100重量部の改質材4に、実施例3で使用したと同じメチルセルロース系高分子増粘剤0.5重量部を、実施例1で使用したと同じ粉体混合機を用いて混合し、改質材5を得た。
【0044】
比較例1
実施例1で使用したと同じ珪酸塩鉱物粉末のみを比較用改質材(改質材H1)とした。
【0045】
比較例2
実施例2で使用したと同じポリアクリル酸系吸水性ポリマーの粉末のみを改質材H2とした。
【0046】
比較例3
実施例4で使用したと同じ半水石膏のみを改質材H3とした。
【0047】
実施例6
含水比75%の園芸用荒木田土に浄水を添加して、含水比130%の土壌スラリーを作成した。この土壌スラリー1kg中に実施例で得た改質材1~5を表3に示す重量で添加し、卓上ミキサーにて5分間混練した時の固化状況を調査したところ、表3のとおりであった。
【0048】
比較例4
実施例6で使用したと同じ土壌スラリー1kg中に、比較例で得た比較改質材H1~H3を表3に示す重量で添加し、卓上ミキサーにて5分間混練した時の固化状況を調査したところ、表3のとおりであった。
【0049】
各改質材の添加量、各資材の配合組成(重量部)、並びに土壌混合時の固化性能、総合評価結果を表3に示す。ここで、固化性能は固化処理後の土壌の強度A、固化処理後の土壌と容器の器壁との剥離性B、及び固化速度Cについて、評価した。強度は大、中、小で評価し、剥離性は良、中(やや悪い)、不良で評価し、固化速度は速い、中(やや遅い)、遅いで評価した。強度大は、「A;大」、剥離性良は、「B;良」、固化速度速いは、「C;速い」ように記す。総合の評価は○、△、×の順であり、○は改質材として優れることを意味する。
【0050】