(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】軸状部材用抜け止め部材及びその軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具
(51)【国際特許分類】
F16B 39/10 20060101AFI20220418BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
F16B39/10 Z
E04G5/08 Z
(21)【出願番号】P 2018083196
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 一雅
(72)【発明者】
【氏名】清水 貞光
(72)【発明者】
【氏名】高草木 正彦
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-079123(JP,U)
【文献】登録実用新案第3038945(JP,U)
【文献】登録実用新案第3027688(JP,U)
【文献】特開2000-328673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
E04G 27/00
F16B 21/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨大部と、この膨大部よりも直径が小さく、かつ前記膨大部から軸方向に延びている軸部とを有する軸状部材の前記軸部が、前記軸状部材を配設するための軸状部材配設部材に前記軸部を挿入するために形成された孔から抜け出すことを阻止するために、前記軸部に、前記軸状部材配設部材に対し前記膨大部とは反対側の箇所において嵌合される軸状部材用抜け止め部材であって、
前記軸部が挿入される軸部挿入部を有し、この軸部挿入部の少なくとも一部が、変形が可能となっている変形可能部の前記軸部側の先端部により形成されており、この先端部が、前記変形可能部の変形により前記軸部側へ前進移動可能となっていて、この前進移動した前記先端部により前記軸部が前記孔から抜け出し不能とな
り、
前記軸状部材配設部材は、仮設足場において作業者が乗るために並設される複数の作業布板のうち、隣接する2個の作業布板同士を連結するための連結部材であり、この連結部材の長さ方向の一方の端部に、前記2個の作業布板のうち、一方の作業布板に挿入されて、前記連結部材を水平方向に回動自在とする回動中心軸が配設され、前記連結部材の長さ方向の他方の端部に前記軸状部材が前記回動中心軸と平行又は略平行に配設され、この軸状部材は、前記2個の作業布板のうち、他方の作業布板に設けられている雌ねじ孔に前記軸部に形成されている雄ねじが螺入されるボルトとなっていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材。
【請求項2】
請求項1に記載の軸状部材用抜け止め部材において、前記連結部材と長さ寸法及び幅寸法が同じになっていて、前記回動中心軸と前記ボルトとが長さ方向の両端部に配設されることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸状部材用抜け止め部材において、前記変形可能部は、前記軸部に向かって平行又は略平行に延びる2本の切り込み部の先端同士が繋がっていることにより形成されていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材。
【請求項4】
請求項3に記載の軸状部材用抜け止め部材において、前記変形可能部は、前記軸部の軸方向へ屈曲突出した突出部を有し、この突出部の突出量をなくす又は減少させるための前記変形可能部の変形により、前記先端部が前記軸部側へ前進移動可能となっていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材。
【請求項5】
請求項4に記載の軸状部材用抜け止め部材において、前記突出部は、前記連結部材側とは反対側へ突出していることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の軸状部材用抜け止め部材において、前記軸部には小径部が設けられ、前記先端部には、前記小径部に嵌合する半円状又は略半円状の凹部が設けられていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材。
【請求項7】
請求項6に記載の軸状部材用抜け止め部材において、前記凹部は第1凹部であり、前記軸部挿入部には、前記第1凹部と前記軸部の直径方向に対向する箇所において、前記第1凹部と同じ又は略同じ大きさとなっている第2凹部が設けられていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材。
【請求項8】
複数の作業布板により構築される仮設足場のうちの連設される2個の前記作業布板を連結するために、連結部材と、軸状部材用抜け止め部材と、軸状部材と、前記2個の作業布板のうちの一方の作業布板に挿入される回動中心軸とを含んで構成される軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具であって、
前記2個の作業布板同士を連結するための前記連結部材は、前記軸状部材を配設するための軸状部材配設部材であり、この軸状部材配設部材の長さ方向の一方の端部に、前記回動中心軸が配設されているとともに、前記軸状部材配設部材の長さ方向の他方の端部に前記軸状部材が配設され、
前記軸状部材用抜け止め部材は、膨大部と、この膨大部よりも直径が小さく、かつ前記膨大部から軸方向に延びている軸部とを有する前記軸状部材の前記軸部が、前記連結部材に前記軸部を挿入するために形成された孔から抜け出すことを阻止するために、前記軸部に、前記連結部材に対し前記膨大部とは反対側の箇所において嵌合されるものとなっているとともに、前記軸部が挿入される軸部挿入部を有し、この軸部挿入部の少なくとも一部が、変形が可能となっている変形可能部の前記軸部側の先端部により形成されており、この先端部が、前記変形可能部の変形により前記軸部側へ前進移動可能となっていて、この前進移動した前記先端部により前記軸部が前記孔から抜け出し不能となり、
前記連結部材を水平方向に回動自在とする前記回動中心軸と平行又は略平行に配設されている前記軸状部材は、前記2個の作業布板のうち、他方の作業布板に設けられている雌ねじ孔に前記軸部に形成されている雄ねじが螺入されるボルトとなっていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具。
【請求項9】
請求項8に記載の軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具において、前記一方の作業布板に対して前記回動中心軸がガイドピンとなって昇降自在となっていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具において、前記連結部材と前記回動中心軸は結合されていることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具において、前記仮設足場は、吊り下げ部材により吊り下げられる吊り足場であることを特徴とする軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトによる軸状部材の軸部が、この軸状部材を配設した軸状部材配設部材の孔から抜け出すことを阻止するための軸状部材用抜け止め部材及びその軸状部材用抜け止め部材を用いた連結具に係り、建築現場等で仮設足場を構築するために隣接配置された2個の作業布板同士を連結するための連結部材の孔からボルトの軸部が抜け出すことを阻止してこれらの作業布板を連結するために利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、建築現場等で構築される仮設足場が示されている。建築物等の構造物から吊り下げ部材で吊り下げられるこの仮設足場が多数の作業布板を並設することにより形成される場合には、隣接する2個の作業布板同士を連結するための連結具が用いられる。この連結具は、隣接する2個の作業布板同士を連結する連結部材と、この連結部材の長さ方向の一方の端部に配設され、2個の作業布板のうち、一方の作業布板に挿入されて連結部材を回動自在とする回動中心軸と、連結部材の長さ方向の他方の端部に配設された軸状部材となっているボルトとを含んで構成され、2個の作業布板のうち、他方の作業布板に設けられている雌ねじ孔に、ボルトの膨大部となっている六角頭部から軸方向に延びていて雄ねじが刻設されている軸部が螺入されることにより、隣接する2個の作業布板同士は連結される。そして、この連結具における連結部材は、軸状部材となっているボルトが配設された軸状部材配設部材となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の連結部材や、回動中心軸、ボルトにより構成される前記連結具において、ボルトの雄ねじが刻設されている軸部は、連結部材に形成されている孔に挿入されているため、この軸部の雄ねじが上述の雌ねじ孔に螺合されていないとき等において、軸部が連結部材の孔から抜け出すことを阻止するための抜け止め手段が用いられ、ボルトの軸部に、連結部材に対しボルトの六角頭部とは反対側の箇所において配置されるこの抜け止め手段は、従来において、ボルトの軸部に嵌合されるワッシャーと、この軸部に形成された小径部に係合されるE型リングとによるものとなっている。このため、ボルトの軸部にワッシャーやE型リングを取り付けるための作業を行わなければならない。
【0005】
本発明の目的は、ボルト等の軸状部材の軸部が、この軸状部材を配設した軸状部材配設部材の孔から抜け出すことを簡単な作業により阻止できるようになる軸状部材用抜け止め部材を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る軸状部材用抜け止め部材は、膨大部と、この膨大部よりも直径が小さく、かつ前記膨大部から軸方向に延びている軸部とを有する軸状部材の前記軸部が、前記軸状部材を配設するための軸状部材配設部材に前記軸部を挿入するために形成された孔から抜け出すことを阻止するために、前記軸部に、前記軸状部材配設部材に対し前記膨大部とは反対側の箇所において嵌合される軸状部材用抜け止め部材であって、前記軸部が挿入される軸部挿入部を有し、この軸部挿入部の少なくとも一部が、変形が可能となっている変形可能部の前記軸部側の先端部により形成されており、この先端部が、前記変形可能部の変形により前記軸部側へ前進移動可能となっていて、この前進移動した前記先端部により前記軸部が前記孔から抜け出し不能となることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明に係る軸状部材用抜け止め部材は、軸状部材の軸部が挿入される軸部挿入部を有しており、この軸部挿入部の少なくとも一部が、変形が可能となっている変形可能部の軸部側の先端部により形成されていて、この先端部が、変形可能部の変形により軸部側へ前進移動することにより、軸状部材の軸部が軸状部材配設部材に設けられている孔から抜け出し不能となるため、軸状部材の軸部が軸状部材配設部材の孔から抜け出すことを阻止するためには、変形可能部を変形させるという簡単な作業を行えばよく、この作業を容易に実施できるため、作業効率を向上させることができる。
【0008】
以上の本発明において、軸状部材用抜け止め部材に設ける変形可能部は、変形させることにより、先端部が軸状部材の軸部側へ前進移動し、この先端部によって軸部が軸状部材配設部材に設けられている孔から抜け出し不能となるものであれば任意のものでよく、その一例の変形可能部は、軸状部材の軸部に向かって平行又は略平行に延びる2本の切り込み部の先端同士が繋がっていることにより形成されているものである。
【0009】
そして、このように変形可能部を、軸状部材の軸部に向かって平行又は略平行に延びる2本の切り込み部の先端同士が繋がっていることにより形成されているものとする場合には、変形可能部を、軸状部材の軸部の軸方向へ屈曲突出した突出部を有するものとし、この突出部の突出量をなくす又は減少させるための変形可能部の変形により、この変形可能部の先端部が軸部側へ前進移動するようにしてもよく、あるいは、変形可能部を、軸状部材の軸部側へ伸縮可能となっているものとし、この軸部を伸長させることにより、この変形可能の先端部が軸部側へ前進移動するようにしてもよい。
【0010】
前者のように変形可能部を、軸状部材の軸部の軸方向へ屈曲突出した突出部を有するものとし、この突出部の突出量をなくす又は減少させるための変形可能部の変形により、この変形可能部の先端部が軸部側へ前進移動するようにすると、突出部の突出量をなくす又は減少させるための変形可能部の変形を、ハンマー等の工具で突出部を打圧するという簡単な作業によって実現できるため、作業を短時間で容易に行える。
【0011】
また、ボルト等の軸状部材の軸部に小径部が設けられている場合には、本発明に係る軸状部材用抜け止め部材に設ける変形可能部の先端部に、この小径部に嵌合する半円状又は略半円状の凹部を設け、この凹部が小径部に嵌合することにより、軸状部材の軸部が軸状部材配設部材に設けられている孔から抜け出すことを阻止するようにしてよい。
【0012】
また、このようにした場合には、変形可能部の先端部に設ける凹部を第1凹部とし、本発明に係る軸状部材用抜け止め部材に設ける前述の軸部挿入部には、第1凹部と軸状部材の軸部の直径方向に対向する箇所において、第1凹部と同じ又は略同じ大きさとなっている第2凹部が設けてもよい。
【0013】
これによると、第1凹部と第2凹部を軸状部材の軸部に設けられている小径部に、この軸部の直径方向から互いに対向して嵌合させることができるため、軸状部材の軸部が軸状部材配設部材に設けられている孔から抜け出すことを一層有効に阻止できるようになる。
【0014】
以上の本発明に係る軸状部材用抜け止め部材は、各種の軸状部材の軸部が、この軸状部材を配設するために軸状部材配設部材に設けられている孔から抜け出すために用いることができ、本発明に係る軸状部材用抜け止め部材の用途は任意である。
【0015】
その一例は、軸状部材配設部材を、仮設足場において作業者が乗るために並設される複数の作業布板のうち、隣接する2個の作業布板同士を連結するための連結部材とする場合であり、この場合には、連結部材の長さ方向の一方の端部に、2個の作業布板のうち、一方の作業布板に挿入されて、連結部材を水平方向に回動自在とする回動中心軸を配設し、連結部材の長さ方向の他方の端部に軸状部材を回動中心軸と平行又は略平行に配設し、この軸状部材を、2個の作業布板のうち、他方の作業布板に設けられている雌ねじ孔に前記軸部に形成されている雄ねじが螺入されるボルトとすることができる。
【0016】
このように軸状部材配設部材を、仮設足場において作業者が乗るために並設される複数の作業布板のうち、隣接する2個の作業布板同士を連結するための連結部材とする場合には、本発明に係る軸状部材用抜け止め部材を、回動中心軸とボルトとが配設される長さ寸法を有するものとし、この軸状部材用抜け止め部材に回動中心軸が挿入される孔を設けてもよい。
【0017】
これによると、回動中心軸とボルトは、連結部材と軸状部材用抜け止め部材の両方により連結されることになるため、これらの回動中心軸や、ボルト、連結部材、軸状部材用抜け止め部材により構成されていて、隣接する2個の作業布板を連結するためのものとなっている連結具の強度を大きくできる。
【0018】
なお、本発明に係る軸状部材用抜け止め部材は、ボルト以外の軸状部材の抜け止めのために用いることができるものであって、前述した膨大部を有する任意の軸状部材の軸部が軸状部材配設部材の孔から抜け出すことを阻止するために用いることができ、軸状部材がボルトの場合には、この膨大部は六角頭部であるが、軸状部材は、膨大部となっている頭部付きの軸やピンでもよく、あるいは、軸方向の途中に軸部よりも直径が大きくなっているフランジ部が設けられ、このフランジ部が膨大部となっている軸やピンでもよい。
【0019】
また、軸状部材の軸部が挿入される孔が設けられている軸状部材配設部材は、前述の連結部材と同様に、2個の部材同士や物品同士を連結するものでもよく、あるいは、被固定部材を固定部材に固定するために、軸状部材の軸部が挿入される孔が形成されているこの被固定部材でもよく、あるいは、機械や構造体を構成する部材自体や物品自体でもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ボルト等の軸状部材の軸部が、この軸状部材を配設した軸状部材配設部材の孔から抜け出すことを簡単な作業により阻止できるようになるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る軸状部材用抜け止め部材が構成部材となって用いられている連結具により連結される2個の作業布板の連結以前の状態で示した斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2のときにおける連結具の状態を示す正面図であって、2個の作業布板を二点鎖線で示した図である。
【
図4】
図4は、2個の作業布板が連結されたときの状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4及び
図5のときにおける連結具の状態を示す正面図であって、2個の作業布板布板を二点鎖線で示した図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る軸状部材用抜け止め部材を示す図であって、変形可能部を変形させる以前の形状を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図8】
図8は、
図7の軸状部材用抜け止め部材の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図7及び
図8の軸状部材用抜け止め部材により軸状部材である
図3及び
図6のボルトの抜け止めが行われる以前の連結具の状態を示す平面図で、ボルトを二点鎖線で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る軸状部材用抜け止め部材が構成部材となって用いられている連結具10により連結される2個の作業布板1が示されている。これらの作業布板1は、平面視が長辺と短辺からなる四角形となっているものであり、長辺の長さ方向及び短辺の長さ方向に多数の作業布板1が連設されることにより、例えば、建築作業現場や土木作業現場等において構築される仮設足場であって、作業者が乗るために吊り下げ部材により吊り下げられる吊り足場が構成される。
【0023】
図2には、
図1の一部拡大図が示されている。
図1及び
図2に示されているように、それぞれの作業布板1の長辺は、作業布板1の長辺の外輪郭部材となっている2個のチャンネル部材2,3により形成されており、また、それぞれの作業布板1には、2個のチャンネル部材2,3のうち、一方のチャンネル部材2に形成された開口部2Aから作業布板1の短辺の長さ方向の寸法をもって突出したV字状受け部4が設けられており、このV字状受け部4は、チャンネル部材2の長さ方向両端部に設けられている。また、それぞれの作業布板1には、2個のチャンネル部材2,3のうち、他方のチャンネル部材3に形成された開口部から作業布板1の短辺の長さ方向の寸法をもって突出したV字状突出部5が設けられており、このV字状突出部5も、チャンネル部材3の長さ方向両端部に設けられている。そして、それぞれのV字状突出部5の上面5Aには、
図2で示す雌ねじ孔6が形成されている。
【0024】
図4には、
図1及び
図2で示されている2個の作業布板1を、すき間をなくして又は僅かなすき間を残して短辺の長さ方向に連設したときの状態が示されており、
図5は、
図4の一部拡大図である。このように複数の作業布板1を短辺の長さ方向に連設することは、V字状受け部4の上にV字状突出部5を載せ、V字状受け部4をチャンネル部材3に形成されている上述の開口部から、互いに短辺の長さ方向に隣接している2個の作業布板1A,1Bのうち、一方の作業布板1Aの内部に挿入するとともに、V字状突出部5をチャンネル部材2に形成されている上述の開口部2Aから他方の作業布板1Bの内部に挿入して行われる。このようにして2個の作業布板1A,1Bを短辺の長さ方向に連設したときには、V字状突出部5の上面5Aに設けられている雌ねじ孔6は、作業布板1Bの内部に達している。
【0025】
図1に示されているように、短辺の長さ方向に連設される2個の作業布板1同士を連結するための連結具10は、それぞれの作業布板1のチャンネル部材2において、それぞれのV字状受け部4ごとに配置されている。この連結具10の拡大された正面図は、
図1及び
図2のときを示している
図3と、
図4と
図5のときを示している
図6とに示されている。連結具10は、金属製厚板で形成された上側の連結部材11と、この連結部材11と長さ寸法及び幅寸法が同じになっていて、金属製薄板で形成された下側の軸状部材用抜け止め部材12と、細長形状となっているこれらの連結部材11と抜け止め部材12の長さ方向の一方の端部に配設されたボルト13と、他方の端部に配設されたガイドピン14とを含んで構成されている。六角頭部13Aを備えたボルト13は、膨大部となっているこの六角頭部13Aから軸方向に延びる軸部13Bを有しているため、このボルト13は、膨大部付き軸状部材、言い換えると、頭部付きの軸状部材となっている。六角頭部13Aよりも直径が小さくなっている軸部13Bを有するボルト13には、この軸部13Bの一部において、雄ねじ13Cが刻設されており、この軸部13Bは、六角頭部13Aとの接続箇所において設けられ、雄ねじ13Cと直径が同じ又は略同じになっている大径部13Dと、この大径部13Dの下側に設けられ、大径部13Dよりも直径が小さくなっている小径部13Eと、この小径部13Eの下側に設けられ、小径部13Eよりも直径が大きくて、雄ねじ13Cが刻設されている雄ねじ部13Fとからなり、この雄ねじ部13Fの直径が大径部13Dの直径と同じ又は略同じになっている。
【0026】
なお、大径部13Dにも雄ねじを刻設してもよい。これによると、本実施形態に係るボルト13を、軸部の全長に渡って雄ねじが刻設されている通常のボルトの軸部の一部を切削加工することにより、軸部に、雄ねじが刻設された大径部と、小径部と、雄ねじが刻設されている雄ねじ部とが軸方向に順番に形成されたボルトを容易かつ安価に得ることができる。
【0027】
以上において、ボルト13とガイドピン14は、互いに平行又は略平行となって連結部材11と抜け止め部材12の長さ方向の両端部に配設されており、また、前述したようにボルト13は軸状部材となっている。このため、連結部材11は、この軸状部材がこの連結部材11の長さ方向の一方の端部に配設された軸状部材配設部材となっており、連結部材11の長さ方向の他方の端部には、ガイドピン14も配設されているため、連結部材11は、ガイドピン配設部材ともなっている。
【0028】
図3に示されているように、頭部付きの軸状部材となっているボルト13の大径部13Dは、連結部材11に形成されたボルト孔11Aに上から挿入されているとともに、小径部13Eは、抜け止め部材12に形成された軸部挿入部12Aに上から挿入されており、雄ねじ部13Fは、抜け止め部材12の下側に突出している。また、ガイドピン14は、連結部材11と抜け止め部材12とに形成された孔11B,12Bに上から挿入され、ガイドピン14の上端に設けられている薄厚状頭部14Aは、連結部材11の孔11Bに溶接等で結合されている。ガイドピン14の下部には、雄ねじ14Bが刻設され、この雄ねじ14Bにナット15が螺合されて締め付けられており、これにより、ガイドピン14の下部にナット15が固定されている。
【0029】
図2に示されているように、それぞれの作業布板1のチャンネル部材2の上下部を形成しているフランジ部2B,2Cのうち、上側のフランジ部2Bには、ボルト13の軸部13Bを上から挿入するための第1孔16と、ガイドピン14を上から挿入するための第2孔17とが形成されている。ナット15を固定する以前のガイドピン14を第2孔17に上から挿入し、チャンネル部材2の内部に突出したガイドピン14の雄ねじ14Bにナット15を螺合して締め付けることにより、2個の作業布板1のうち、作業布板1Bの内部において、ガイドピン14の下部にナット15が固定される。
【0030】
これにより、連結部材11や、抜け止め部材12、ボルト13、ガイドピン14により構成される連結具10は、ガイドピン14のガイド作用により、チャンネル部材2にナット15で抜け止めされながらこのチャンネル部材2に対し昇降自在となり、また、連結具10は、ガイドピン14が回動中心軸となってチャンネル部材2に対し回動自在となる。
【0031】
図4及び
図5で示したように、隣接する2個の作業布板1A,1Bを連設するためには、
図3に示されているように、連結具10をチャンネル部材2から上昇させた状態にして、V字状受け部4の上にV字状突出部5を載せ、V字状受け部4をチャンネル部材3の開口部から一方の作業布板1Aの内部に挿入するとともに、V字状突出部5をチャンネル部材2の開口部2Aから他方の作業布板1Bの内部に挿入し、この後に、連結部材11及び抜け止め部材12をガイドピン14を回動中心軸にして水平方向へ回動させ、これにより、ボルト13の位置を第1孔16の位置と一致させ、次いで、連結具10をチャンネル部材2に対して下降させ、ボルト13の膨大部となっている六角頭部13Aをレンチ等の工具で回転することにより、
図6に示されているように、ボルト13の軸部13Bに形成されている雄ねじ13CをV字状突出部5の上面5Aに形成されている雌ねじ孔6に螺入させる。これにより、
図4及び
図5で示されている2個の作業布板1A,1Bは連結具10により連結される。
【0032】
なお、
図3に示されているように、ボルト13の軸部13Bに形成されている雄ねじ13Cが雌ねじ孔6に螺入していないとき等において、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことは、抜け止め部材12の抜け止め作用により阻止されている。
【0033】
次に、連結具10を構成する部材のうち、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことを不能とするための部材となって抜け止め部材12について説明する。
【0034】
図7(A)及び(B)には、抜け止め部材12の平面図と正面図が示され、また、
図8には、抜け止め部材12の斜視図が示されており、これらの
図7及び
図8は、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことを阻止できる形状になる以前の抜け止め部材12の形状を示した図である。
図7及び
図8で示された形状を有する抜け止め部材12は、金属製板材に打ち抜き加工や押圧加工等を行うことにより製造されたものであり、抜け止め部材12の内部には、打ち抜き加工により、抜け止め部材12の長さ方向に延びていて、互いに平行又は略平行となっている2本の切り込み部20,21と、これらの切り込み部20,21の先端同士を繋いでいる繋ぎ部22が形成され、これらの切り込み部20,21と繋ぎ部22により、抜け止め部材12の内部において、
図7(A)に示されているように、平面視で抜け止め部材12の長さ方向に細長い形状となっている変形可能部23が設けられている。そして、2本の切り込み部20,21における繋ぎ部22とは反対側の基端部20A,21Aは、抜け止め部材12の長さ方向の途中に存在しているため、この変形可能部23は、この変形可能部23の外側を形成している抜け止め部材12の本体部24とこれらの基端部20A,21Aにおいて接続されたものになっている。
【0035】
また、変形可能部23は、
図7(B)に示されているように、抜け止め部材12の厚さ方向へ、言い換えると、前述した軸状部材となっているボルト13の軸部13Bの軸方向へV字状に屈曲突出した突出部23Aを有するものとなっており、このような突出部23Aは、上からの押圧加工により形成されている。また、
図7(A)に示されているように、上述の繋ぎ部22となっている変形可能部23の先端部23Bには、第1凹部25が形成されており、また、上述の本体部24には、ボルト13の軸部13Bの直径方向に第1凹部25と対向する第2凹部26が形成されており、これらの第1凹部25と第2凹部26は、ボルト13の軸部13Bに形成されている前述の小径部13Eの半径と同じ又はこの半径よりも少し大きい半円状又は略半円状のものとなっている。
【0036】
このような第1凹部25と第2凹部26は、
図3及び
図6で示したガイドピン14を挿入するための孔12Bを抜け止め部材12に設ける打ち抜き加工時において、同時に形成されている。また、変形可能部23に上述した突出部23Aが押圧加工により形成されることにより、第1凹部25と第2凹部26の間には、これらの第1凹部25と第2凹部26が互いに対向した大きなすき間部27が設けられている。
【0037】
図9及び
図10には、ボルト13の軸部13Bのうち、大径部13Dと共に最大直径部となっている雄ねじ部13Fを、連結部材11のボルト孔11Aと、抜け止め部材12に設けられているすき間部27とに上から挿入する作業のときが示されており、
図9では、ボルト13は二点鎖線で示されている。上述の作業を行うときには、抜け止め部材12に設けられている変形可能部23の突出部23Aを、
図10に示されているように、連結部材11側とは反対側へ突出させて、連結部材11と抜け止め部材12を重ね合わせるとともに、連結部材11に対して抜け止め部材12を、これらの連結部材11と抜け止め部材12の長さ方向にずらせ、これにより、連結部材11のボルト孔11Aの位置と抜け止め部材12のすき間27の位置とを、連結部材11と抜け止め部材12の長さ方向に一致又は略一致させ、この後に、ボルト13の雄ねじ部13Fをボルト孔11Aとすき間部27とに挿入する作業を行う。
【0038】
以上の作業を行うことにより、
図10に示されているように、ボルト13の六角頭部13Aを連結部材11に接触させると、ボルト13の大径部13Dの位置は連結部材11のボルト孔11Aの位置と一致し、抜け止め部材12のすき間27の位置はボルト13の小径部13Eの位置と一致する。次いで、
図10の矢印Aで示されているように、変形可能部23の突出部23Aをハンマー等の工具により打圧する作業を行う。これにより、変形可能部23は、突出部23Aの屈曲突出量がなくなる又は減少する変形を行うため、変形可能部23の先端部23Bは、
図10の矢印Bで示されているように、ボルト13の軸部13B側へ前進移動し、この前進移動により、
図11に示されているように、変形可能部23の先端部23Bに設けられている第1凹部25はボルト13の小径部13Eに嵌合する。
【0039】
また、この嵌合時には、第1凹部25が小径部13Eを押すため、抜け止め部材12に設けられている第2凹部26は、第1凹部25に対してボルト13の軸部13Bの直径方向の反対側において、小径部13Eに嵌合することになる。このときには、第1凹部25が小径部13Eを押すことによってボルト13及び連結部材11は、
図10の位置から
図11の位置へずれるため、連結部材11の孔11Bの位置と抜け止め部材12の孔12Bの位置は、これらの連結部材11と抜け止め部材12の長さ方向に一致又は略一致することになる。
【0040】
このため、
図11に示されているように、連結部材11の孔11Bと抜け止め部材12の孔12Bとにガイドピン14を挿入することができ、この挿入作業後に、ガイドピン14の薄厚状頭部14Aを連結部材11の孔11Bに溶接等で結合するための作業を行うことができる。そして、この後に、ガイドピン14を、前述したように2個の作業布板1のうち、作業布板1Bのチャンネル部材2のフランジ部2Bに形成されている第2孔17に挿入し、このガイドピン14の下部にナット15を固定するための作業を行う。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る抜け止め部材12によると、ボルト13の小径部13Eには、
図11で示したように、抜け止め部材12に設けられている第1凹部25と第2凹部26が嵌合しており、この
図11のときにおける第1凹部25と第2凹部26の間隔は、ボルト13の軸部13Bにおける最大直径部となっている大径部13D及び雄ねじ部13Fの直径よりも小さいため、ボルト13の軸部13Bに設けられている前述の雄ねじ部13Fが、2個の作業布板1のうち、作業布板1AのV字状突出部5の上面5Aに設けられている雌ねじ孔6に螺合されていないときでも、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことは、ボルト13の六角頭部13Aと、ボルト13の軸部13Bに、連結部材11に対して六角頭部13Aとは反対側の箇所において嵌合されている抜け止め部材12とによって阻止される。
【0042】
これを言い換えると、ボルト13の小径部13Eに第1凹部25と第2凹部26が嵌合したときには、抜け止め部材12に、ボルト13の軸部13Bのうち、小径部13Eが挿入されている
図11の軸部挿入部12Aが形成されており、
図3及び
図6でも示されているこの軸部挿入部12Aの一部は、第1凹部25が設けられている変形可能部23の先端部23Bにより形成されており、また、軸部挿入部12Aの残りの部分は、この第1凹部25とボルト13の軸部13Bの直径方向に対向する第2凹部26により形成されており、軸部挿入部12Aにおけるボルト13の軸部13Bの直径方向の寸法は、ボルト13の軸部13Bにおける最大直径部となっている大径部13D及び雄ねじ部13Fの直径よりも小さい。このため、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことを、ボルト13の六角頭部13Aと、ボルト13の軸部13Bに、連結部材11に対して六角頭部13Aとは反対側の箇所において嵌合されている抜け止め部材12とによって阻止できることになる。
【0043】
そして、このようにボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことを抜け止め部材12により阻止していても、このボルト13は、連結部材11と抜け止め部材12とに対して回転自在となっている。
【0044】
また、本実施形態では、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことを抜け止め部材12により阻止するために、ボルト13の小径部13Eに抜け止め部材12の第1凹部25と第2凹部26を嵌合させることは、抜け止め部材12に、ボルト13の軸部13Bの軸方向にV字状に屈曲突出した突出部23Aを有する変形可能部23を設け、この突出部23Aをハンマー等の工具により打圧して、突出部23Aの屈曲突出量がなくなる又は減少する変形を変形可能部23に行わせ、これにより、第1凹部25が設けられている変形可能部23の先端部23Bを前進移動させるだけの作業によって実施できるため、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことを阻止するために抜け止め部材12に対して行う作業を、変形可能部23の突出部23Aをハンマー等の工具により打圧するという簡単な作業によって行うことができ、この作業を容易かつ迅速に実施することができる。
【0045】
また、ボルト13の小径軸部13Eには、第1凹部25と第2凹部26の両方が嵌合しているため、ボルト13の軸部13Bが連結部材11のボルト孔11Aから抜け出すことを一層確実に阻止できる。
【0046】
さらに、変形可能部23を備えた抜け止め部材12を製造するための作業も、金属製板材に打ち抜き加工や押圧加工等を行うことにより、抜け止め部材12の素材となっている金属製板材に2本の切り込み部20,21や第1凹部25、第2凹部26等を設けるという簡単な作業により行える。
【0047】
また、変形可能部23の突出部23Aをハンマー等の工具により打圧すると、変形可能部23は塑性変形し、この塑性変形により、第1凹部25がボルト13の小径部13Eに嵌合した形状を維持するため、抜け止め部材12による連結部材11のボルト孔11Aからのボルト13の軸部13Bの抜け止め状態を永続的に持続させることができる。
【0048】
なお、本実施形態に係る軸状部材用抜け止め部材12は、前述した回動中心軸となっているガイドレールピン14とボルト13とを配設することができる長さ寸法を有していて、ガイドピン14が挿入される孔12Bが設けられたものとなっていたが、抜け止め部材を、ガイドピン14が挿入される孔12Bが設けられていない短寸法のものとしてもよい。
【0049】
しかし、本実施形態のように抜け止め部材12を、ガイドレールピン14とボルト13とを配設することができる長さ寸法を有するものであって、ガイドピン14を挿入できる孔12Bが設けられたものとすることにより、前述した連結具10を構成する部材のうち、2個の作業布板1を連結するための部材となっている連結部材11の強度を抜け止め部材12により補強できることになり、これにより、連結具10の強度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ボルト等の軸状部材の軸部が、この軸状部材を配設した軸状部材配設部材の孔から抜け出すことを阻止するために利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A,1B 作業布板
4 V字状受け部
5 V字状突出部
6 雌ねじ孔
10 連結具
11 軸状部材配設部材である連結部材
11A ボルト孔
11B ガイドピンを挿入するための孔
12 軸状部材用抜け止め部材
12A 軸部挿入部
12B ガイドピンを挿入するための孔
13 軸状部材であるボルト
13A 膨大部である六角頭部
13B 軸部
13C 雄ねじ
13D 大径部
13E 小径部
14 回動中心軸であるガイドピン
20,21 切り込み部
22 繋ぎ部
23 変形可能部
23A 突出部
23B 先端部
25 第1凹部
26 第2凹部