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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】マルチスペクトルフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20220418BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G02B5/28
H01L27/146 D
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018087610
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2018200464
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】15/601,753
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ジェイ オケンファス
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-177237(JP,A)
【文献】国際公開第2016/118919(WO,A1)
【文献】特表2012-530271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0048985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタであって、
1つの第1のミラーおよび1つの第2のミラーであって、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの各々は、1つ以上の第1の1/4波長スタックを含み、前記1つ以上の第1の1/4波長スタックのうちの1つの1/4波長スタックは、第1の材料および第2の材料の交互の層の組を含み、前記第1の材料は、前記第2の材料よりも高い屈折率を有し、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの各々は、1つ以上の第2の1/4波長スタックを含み、前記1つ以上の第2の1/4波長スタックのうちの1つの1/4波長スタックは、第3の材料および第4の材料の1つ以上の交互の層を含み、前記第3の材料は、前記第4の材料よりも高い屈折率を有し、前記第1の材料、前記第2の材料、前記第3の材料、および前記第4の材料は、3つ以上の異なる材料を含む、1つの第1のミラーおよび1つの第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置される1つのスペーサと
を備え
前記光学フィルタはシングルキャビティ構成を有する、光学フィルタ。
【請求項2】
前記3つ以上の異なる材料のうちの少なくとも1つは、酸化物材料であり、
前記酸化物材料は、酸化ニオブチタン(NbTiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、二酸化ハフニウム(HfO)、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記3つ以上の異なる材料のうちの少なくとも1つは、窒化物材料、フッ化物材料、硫化物材料、セレン化物材料、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記第1のミラーおよび前記第2のミラーのうちの少なくとも1つは、水素化シリコン(Si:H)材料を含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記スペーサは、水素化シリコン(Si:H)スペーサである、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記3つ以上の異なる材料のうちの少なくとも1つは、約800nm~約1100nmのスペクトル域での2.0を超える屈折率を有する、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記3つ以上の異なる材料のうちの少なくとも1つは、約800nm~約1100nmのスペクトル域での3.0未満の屈折率を有する、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記光学フィルタは、932nmの中心波長での約0.9nm~約5.3nmの50%相対帯域幅を有する、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記光学フィルタは、800nmの中心波長での約3.75nm~約5.75nmの50%相対帯域幅を有する、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記光学フィルタは、1100nmの中心波長での約4nm~約8nmの50%相対帯域幅を有する、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記光学フィルタは、センサ素子アレイのセンサ素子の組と対応付けられる基板上に形成され、
前記光学フィルタの前記スペーサは、前記センサ素子アレイの前記センサ素子の組に対応する複数のチャネルを形成する複数の層を含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
前記光学フィルタは、センサ素子アレイのセンサ素子の組に対応する光学フィルタのアレイである、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
マルチスペクトルフィルタであって、
第1の誘電体層の1つの組であって、当該第1の誘電体層の1つの組への光の一部を反射し、1つ以上の第1の1/4波長スタックを含み、3つ以上の第1の異なる材料の1つの組を備える、第1の誘電体層の1つの組と、
スペーサ層の1つの組であって、当該スペーサ層の1つの組のうちの1つの層は、当該層の屈折率に基づいて選択され、センサ素子の1つの組のうちの前記スペーサ層の1つの組によって形成されるチャネルの1つの組のうちの1つのチャネルに対応する1つのセンサ素子へと向けられる光の波長に対応する、スペーサ層の1つの組と、
第2の誘電体層の1つの組であって、当該第2の誘電体層の1つの組への光の一部を反射し、1つ以上の第2の1/4波長スタックを含み、3つ以上の第2の異なる材料の1つの組を備える、第2の誘電体層の組と
を備え
前記マルチスペクトルフィルタはシングルキャビティ構成を有する、マルチスペクトルフィルタ。
【請求項14】
前記3つ以上の第1の異なる材料の組および前記3つ以上の第2の異なる材料の組は、共通の3つ以上の異なる材料の組である、請求項13に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項15】
前記1つ以上の第1の1/4波長スタックは、
前記3つ以上の第1の異なる材料の1つの組のうちの第1の材料と、前記3つ以上の第1の異なる材料の1つの組のうちの第2の材料とを含む第1の1/4波長スタックと、
前記第1の材料と、前記3つ以上の第2の異なる材料の1つの組のうちの第3の材料とを含む第2の1/4波長スタックと
を含む、請求項13に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項16】
前記チャネルの1つの組のチャネル量は、チャネル量閾値以上であり、
前記チャネル量閾値は、8チャネル、16チャネル、32チャネル、64チャネル、128チャネルのうちの1つである、
請求項13に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項17】
前記第1の誘電体層の1つの組および前記第2の誘電体層の1つの組のうちの少なくとも1つの層の厚さは、1/4波長厚さから離調される、請求項13に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項18】
前記厚さは、閾値パーセンテージによって離調され、
前記閾値パーセンテージは、10%低減、20%低減、30%低減、40%低減、50%低減、10%増加、20%増加、30%増加、40%増加、50%増加のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項19】
前記1/4波長厚さは、前記1つ以上の第1の1/4波長スタックおよび前記1つ以上の第2の1/4波長スタックの少なくとも1つに入射する光の中心波長に対応付けられる、請求項17に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項20】
前記厚さは、10%~50%の増加によって離調される、請求項17に記載のマルチスペクトルフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
マルチスペクトルセンサ装置を利用して、情報を得ることができる。例えば、マルチスペクトルセンサ装置は、電磁周波数の組に関する情報を得てもよい。マルチスペクトルセンサ装置は、情報を得るセンサ素子(例:光学センサ、分光センサ、および/または画像センサ)の組を含んでもよい。例えば、センサ素子アレイを利用して、複数周波数に関する情報を得てもよい。センサ素子アレイの特定のセンサ素子は、当該特定のセンサ素子へと向かう周波数範囲を制限するフィルタと対応付けられてもよい。フィルタは、フィルタが特定のセンサ素子へと通過させるスペクトル域の幅と対応する特定の帯域幅と対応付けられてもよい。
【発明の概要】
【0002】
いくつかの可能な実施態様によると、光学フィルタは、第1のミラーおよび第2のミラーを含んでもよい。前記第1のミラーおよび前記第2のミラー各々は、1つ以上の第1の1/4波長スタックを含んでもよい。前記1つ以上の第1の1/4波長スタックのうちの1つの1/4波長スタックは、第1の材料および第2の材料の交互の層の組を含んでもよい。前記第1の材料は、前記第2の材料よりも高い屈折率と対応付けられてもよい。前記第1のミラーおよび前記第2のミラー各々は、1つ以上の第2の1/4波長スタックを含んでもよい。前記1つ以上の第2の1/4波長スタックのうちの1つの1/4波長スタックは、第3の材料および第4の材料の1つ以上の交互の層を含んでもよい。前記第3の材料は、前記第4の材料よりも高い屈折率と対応付けられてもよい。前記第1の材料、前記第2の材料、前記第3の材料、および前記第4の材料は、3つ以上の異なる材料を含んでもよい。光学フィルタは、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置されるスペーサを含んでもよい。
【0003】
いくつかの可能な実施態様によると、マルチスペクトルフィルタは、第1の誘電体層の組であって、当該第1の誘電体層の組への光の一部を反射する第1の誘電体層の組を含んでもよい。前記第1の誘電体層の組は、1つ以上の第1の1/4波長スタックを含んでもよい。前記第1の誘電体層の組は、3つ以上の第1の異なる材料の組を含んでもよい。マルチスペクトルフィルタは、スペーサ層の組を含んでもよい。当該スペーサ層の組のうちの層は、当該層の屈折率に基づいて選択され、センサ素子の組のうちの前記スペーサ層の組によって形成されるチャネルの組のうちのチャネルに対応するセンサ素子へと向けられる光の波長に対応してもよい。マルチスペクトルフィルタは、第2の誘電体層の組であって、当該第2の誘電体層の組への光の一部を反射する第2の誘電体層の組を含んでもよい。前記第2の誘電体層の組は、1つ以上の第2の1/4波長スタックを含んでもよい。前記第2の誘電体層の組は、3つ以上の第2の異なる材料の組を含んでもよい。
【0004】
いくつかの可能な実施態様によると、光学フィルタは、基板を含んでもよい。光学フィルタは、第1のミラーおよび第2のミラーを含んでもよい。前記第1のミラーおよび前記第2のミラー各々は、複数の1/4波長スタックを含んでもよい。前記複数の1/4波長スタックは、第1の材料、第2の材料、および第3の材料を含む複数の層を含んでもよい。光学フィルタは、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置されるスペーサを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本明細書に記載の実施形態の概要図である。
図2A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図2B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図2C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図2D】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図3A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図3B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図3C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図3D】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図4A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図4B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図4C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図5A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図5B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図5C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図6A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図6B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図6C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図7A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図7B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図7C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図7D】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図8A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図8B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
実施形態に対する詳細の説明を、添付の図面を参照して以下に説明する。種々の図面における同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を特定するものである。
【0007】
センサ素子(例:光学センサ)を光学センサ装置に組み込んで、電磁周波数の組に関する情報(例:スペクトルデータ)を取得してもよい。例えば、光学センサ装置は、光のセンサ測定を行い得る画像センサやマルチスペクトルセンサ等を含んでもよい。光学センサ装置は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術や電荷結合素子(CCD)技術等の1つ以上のセンサ技術を利用してもよい。光学センサ装置は、それぞれ情報を取得するように構成された複数センサ素子(例:センサ素子アレイ)を含んでもよい。
【0008】
センサ素子は、当該センサ素子へ光をフィルタリングするフィルタと対応付けられてもよい。例えば、センサ素子は、センサ素子へ向かう光の一部をフィルタリングするために線形可変フィルタ(LVF)、円形可変フィルタ(CVF)、ファブリーペローフィルタ等と配列されてもよい。ファブリーペローフィルタ等のバイナリフィルタ構造では、水素化シリコン(Si:H)を、フィルタのミラー間に位置するスペーサの層として選択してもよい。ミラーは、金属層(例:銀)または誘電体層(例:交互の高指数層および低指数層(HL対)の1/4波長スタック)から製造されてもよい。例えば、マルチスペクトルフィルタは、交互の水素化シリコン層および二酸化ケイ素層の1/4波長スタックの組を含む第1のミラーと、交互の水素化シリコン層および二酸化ケイ素層の1/4波長スタックの他の組を含む第2のミラーとを含んでもよい。マルチスペクトルフィルタは、特定のフィルタ応答をもたらしてもよい。例えば、マルチスペクトルフィルタは、センサへと伝えられるスペクトル域の特定の中心波長や、センサ素子へと伝えられるスペクトル域の特定の帯域幅等と対応付けられてもよい。スペーサの厚さを変更することによって、または、スペーサの両側に位置する1/4波長スタックの量を変更することによって、フィルタ応答を変更してもよい。
【0009】
しかし、シングルキャビティタイプのフィルタのスペーサの厚さを変更することおよび/または1/4波長スタックの量を変更することは、閾値を超えるフィルタ応答の変化を引き起こし得る。例えば、2つの水素化シリコンおよび二酸化ケイ素1/4波長スタックの組から3つの水素化シリコンおよび二酸化ケイ素1/4波長スタックの組への変更によって、フィルタの帯域幅が、第1の閾値よりも大きい第1の帯域幅から、第2の閾値よりも小さい第2の帯域幅へと低下し得る。本明細書に記載の実施形態は、混合1/4波長スタック構成や変更された1/4波長スタック層厚等を利用して、マルチスペクトルフィルタ応答の変更を可能にする。例えば、本明細書に記載の実施形態は、マルチスペクトルフィルタの1/4波長スタックに3つ以上のコーティング材料を用いてもよい。この場合、マルチスペクトルフィルタのフィルタ応答は、例えば、第1の閾値よりも大きい初期帯域幅から、第1の閾値と第2の閾値との間の目標帯域幅へと変化し得る。こうして、マルチスペクトルフィルタ性能の調整におけるより高い粒度が得られる。
【0010】
図1は、本明細書に記載の実施形態100の概要図である。図1に示すように、マルチスペクトルフィルタ105(例:バイナリ構造光学フィルタアレイ)は、第1のミラー110-1と、第2のミラー110-2と、スペーサ120とを含んでもよい。
【0011】
さらに図1に示すように、第1のミラー110-1および第2のミラー110-2は、スペーサ120を挟んでもよい。言い換えると、スペーサ120は第1のミラー110-1および第2のミラー110-2を閾値距離で分けてもよく、および/または、スペーサ120の面は第1のミラー110-1および第2のミラー110-2で囲まれてもよい。いくつかの実施形態において、ミラー110は、特定の材料と対応付けられてもよい。例えば、ミラー110は、誘電体ミラー層(例:交互の水素化シリコン層および二酸化ケイ素層)の組等を含んで、光源からマルチスペクトルフィルタ105と対応付けられたセンサ素子への光の一部を反射してもよい。ミラー110は、マルチスペクトルフィルタ105の各チャネルと対応付けられたセンサ素子アレイの各センサ素子と配列されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、スペーサ120は、1つ以上のスペーサ層130を含んでもよい。例えば、スペーサ120は、スペーサ層130-1~130-5(例:水素化シリコン層等の誘電体層)の組を含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のスペーサ層130の厚さは、特定の波長のための最小のスペーサ厚を確保することと対応付けられてもよい。いくつかの実施形態において、スペーサ120は、シングルキャビティ構成と対応付けられてもよい。加えてまたは代替的に、スペーサ120は、マルチキャビティ構成と対応付けられてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、1つ以上のスペーサ層130の厚さは、バイナリ数列に基づいて関連付けられてもよい。例えば、スペーサ層130-3は、スペーサ層130-2の厚さの約半分の厚さと対応付けられてもよく、スペーサ層130-4は、スペーサ層130-3の厚さの約半分の厚さと対応付けられてもよく、スペーサ層130-5は、スペーサ層130-4の厚さの約半分の厚さと対応付けられてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、マルチスペクトルフィルタ105は、光学センサ装置と対応付けられた基板上に形成されてもよい。例えば、ミラー110-1は、情報(例:スペクトルデータ)を得るためにセンサ素子アレイを含む基板上に(例:蒸着プロセスおよび/またはフォトリソグラフィリフトオフプロセスにより)形成されてもよい。いくつかの実施形態において、スペーサ120は、複数波長に関する情報の取得を可能にしてもよい。例えば、第1のセンサ素子(例:センサ素子アレイの裏面入射型光学センサまたは前面入射型光学センサ)と配列されるスペーサ120の第1の部分は、第1の厚さと対応付けられてもよく、第2のセンサ素子と配列されるスペーサ120の第2の部分は、第2の厚さと対応付けられてもよい。この場合、第1の部分に対応する第1のチャネルを介して第1のセンサ素子へと、および、第2の部分に対応する第2のチャネルを介して第2のセンサ素子へと向かう光は、第1の厚さに基づいて第1のセンサ素子で第1の波長と対応し、第2の厚さに基づいて第2のセンサ素子で第2の波長と対応してもよい。こうして、マルチスペクトルフィルタ105は、光学センサ装置の複数センサ素子と配列され、複数厚さと対応付けられた複数部分と対応付けられたスペーサ(例:スペーサ120)を用いて、光学センサ装置によるマルチスペクトルセンシングを可能にする。
【0015】
上記の通り、図1は、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図1に関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0016】
図2A~2Dは、マルチスペクトルフィルタに関する特性図である。図2A~2Dは、スペーサを挟む第1の2つの1/4波長スタックの組および第2の2つの1/4波長スタックの組を有するマルチスペクトルフィルタの例を示す。
【0017】
図2Aおよびチャート200に示すように、フィルタ210は、基板と、第1の2つの1/4波長スタックの組と、スペーサと、第2の2つの1/4波長スタックの組とを含んでもよい。第1の1/4波長スタックの組は、交互の水素化シリコン(「Si_H」として示す、あるいは、Si:Hと記載することもある)層および二酸化ケイ素(「SiO2」として示す)層の層1~4を含む。スペーサは、水素化シリコンスペーサの層5を含んでもよい。第2の2つの1/4波長スタックの組は、交互の水素化シリコン層および二酸化ケイ素層の層6~9を含む。
【0018】
第1の1/4波長スタックおよび第2の1/4波長スタックの水素化シリコン層は各々、約932nmのスペクトル域で約3.7226の屈折率、約62.6nmの物理的厚さ、および約932nmの1/4波長光学厚さ(「Q.W.O.T.」として示す)と対応付けられてもよい。層の1/4波長光学厚さは、当該層の物理的厚さおよび屈折率に対応する。いくつかの実施形態において、1/4波長スタックの高指数層(例:二酸化ケイ素層等の1/4波長スタックの低指数層よりも高い指数と対応付けられた水素化シリコン層)は、閾値を超える屈折率と対応付けられてもよい。例えば、高指数層は、約800nm~約1100nmのスペクトル域で、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約3.6、約3.7等よりも大きい屈折率と対応付けられてもよい。いくつかの実施形態において、高指数材料層の屈折率と低指数材料層の屈折率との差は、閾値よりも大きく、例えば、約1.0超、約1.5超、約2.0超等であってもよい。
【0019】
第1の2つの1/4波長スタックの組および第2の2つの1/4波長スタックの組の二酸化ケイ素層は各々、約932nmのスペクトル域で約1.4664の屈折率、約158.9nmの物理的厚さ、および約932nmの1/4波長光学厚さと対応付けられてもよい。いくつかの実施形態において、1/4波長スタックの低指数層(例:二酸化ケイ素層)は、高指数層の屈折率未満、約3.0未満、約2.5未満、約2.0未満、約1.75未満、約1.5未満の屈折率等、約800nm~約1100nmのスペクトル域で閾値未満の屈折率と対応付けられてもよい。
【0020】
水素化シリコンスペーサ層は、約3.7226の屈折率、約125.2nmの物理的厚さ、および約1864nmの1/4波長光学厚さと対応付けられる。本明細書では水素化シリコンスペーサ層として記載されるが、水素化シリコンスペーサ層は、複数チャネルを形成するように選択された複数厚さの水素化シリコンの複数スペーサ層を含んでもよい。例えば、第1のケースでは、水素化シリコンスペーサ層は、複数層を用いてなり、64チャネルを形成してもよい。同様に、第2のケースでは、水素化シリコンスペーサ層は、複数層を用いてなり、128チャネルを形成してもよい。加えてまたは代替的に、スペーサ層を使用して、8チャネル、16チャネル、32チャネル、256チャネル等、他のチャネル閾値量を形成してもよい。いくつかの実施形態において、スペーサ層は、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約3.6、約3.7等よりも大きい屈折率等、約800nm~約1100nmのスペクトル域で閾値を超える屈折率と対応付けられてもよい。
【0021】
図2Bに示すように、チャート250は、フィルタ210の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ210は、基板と、基板上に形成された第1のミラー252-1と、第2のミラー252-2と、第1のミラー252-1と第2のミラー252-2との間に配置された水素化シリコンスペーサ254とを含む。第1のミラー252-1は、第1の1/4波長スタック256-1と第2の1/4波長スタック256-2とを含む。同様に、第2のミラー252-2は、第3の1/4波長スタック256-3と第4の1/4波長スタック256-4とを含む。各1/4波長スタック256-1~256-4は、高指数層/低指数層(HL)対を形成する水素化シリコン層および二酸化ケイ素層を含む。
【0022】
図2Cおよびチャート270に示すように、また、図2Dおよびチャート280に示すように、フィルタ210のフィルタ応答が提供される。例えば、フィルタ210は、約932nmの波長(「λ[nm]」として示す)で約90%超の透過率(「T[%]」として示す)と対応付けられる。図2Dおよび参照符号282に示すように、フィルタ210は、約929.35nm~約934.65nmのスペクトル域で約5.3nmの相対50%帯域幅(例:ピーク透過率を表す中心波長周辺の50%超の透過率の帯域幅)と対応付けられる。
【0023】
上記の通り、図2A~2Dは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図2A~2Dに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0024】
図3A~3Dは、マルチスペクトルフィルタに関する特性図である。図3A~3Dは、スペーサを挟む3つの第1の1/4波長スタックの組および3つの第2の1/4波長スタックの組を有するマルチスペクトルフィルタの例を示す。
【0025】
図3Aに示すように、チャート350は、フィルタ310の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ310は、基板と、基板上に形成された第1のミラー352-1と、第2のミラー352-2と、第1のミラー352-1と第2のミラー352-2との間に配置された水素化シリコンスペーサ354とを含む。第1のミラー352-1は、3つの1/4波長スタック356-1~356-3の組を含む。第2のミラー352-2は、3つの1/4波長スタック356-4~356-6の組を含む。各1/4波長スタック356は、HL対を形成する水素化シリコン層および二酸化ケイ素層を含む。
【0026】
図3Bおよびチャート370に示すように、また、図3Cおよびチャート380に示すように、さらに、図3Dおよびチャート390に示すように、フィルタ210のフィルタ応答およびフィルタ310のフィルタ応答が提供される。例えば、図3Cおよび参照符号392および392’に示すように、フィルタ210に対してフィルタ310の各ミラーの付加的な水素化シリコンおよび二酸化ケイ素1/4波長スタックを含むフィルタ310に基づいて、フィルタ310は、低減したピーク透過率および低減した相対50%帯域幅と対応付けられる。この場合、図3Cおよび参照符号392に示すように、フィルタ210は、約932nmでの約92%の透過率、および、5.3nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。対して、図3Cおよび参照符号392’に示すように、フィルタ310は、約932nmでの約76%のピーク透過率、および、約0.9nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。図3Dおよび参照符号396および396’に示すように、フィルタ310は、フィルタ210に対して低減した帯域外透過と対応付けられ、最小透過率は、フィルタ210に対してフィルタ310では、約0.1%から約0.005%に低減している。いくつかの実施形態において、フィルタ310の透過率は、フィルタ310の構成を基板および他の媒体(例:空気)と合わせることで、さらに向上し得る。
【0027】
これらの場合、マルチスペクトルフィルタのミラーにおける1/4波長スタック量の変更(例:各ミラーにおける2つの1/4波長スタックから各ミラーにおける3つの1/4波長スタックへの変更)によって、マルチスペクトルフィルタの光学特性が変化して、特定のスペクトル域や特定の透過率等のためのマルチスペクトルフィルタの調整を可能にする。ただし、光学特性の変化は、閾値変化を超える可能性がある。例えば、約0.9nm~約5.3nmの50%相対帯域幅と対応付けられたマルチスペクトルフィルタが望ましい。
【0028】
上記の通り、図3A~3Dは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図3A~3Dに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0029】
図4A~4Cは、マルチスペクトルフィルタに関する特性図である。図4A~4Cは、3つの第1の1/4波長スタックの組および3つの第2の1/4波長スタックの組各々に隣接して配置された付加的な低指数層(例:二酸化ケイ素層)、および、3つの第1の1/4波長スタックの組と、3つの第2の1/4波長スタックの組と、付加的な低指数層との間に配置されたスペーサを有するマルチスペクトルフィルタの例を示す。
【0030】
図4Aに示すように、チャート450は、フィルタ410の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ410は、基板と、基板上に形成された第1のミラー452-1と、第2のミラー452-2と、第1のミラー452-1と第2のミラー452-2との間に配置されたスペーサ454とを含む。第1のミラー452-1は、1/4波長スタック456-1~456-3の組と、不対の二酸化ケイ素層458-1(例:高指数水素化シリコン層または他の高指数層と対になっていない低指数二酸化ケイ素層)とを含む。同様に、第2のミラー452-2は、1/4波長スタック456-4~456-6の組と、不対の二酸化ケイ素層458-2とを含む。各1/4波長スタック456は、不対の二酸化ケイ素層458-1および458-2の間に配置され、HL対を形成する水素化シリコン層および二酸化ケイ素層を含む。二酸化ケイ素層458は対応する高指数層(例:水素化シリコン層)と不対であるが、各二酸化ケイ素層458は、それぞれのミラー452の1/4波長スタックと称してもよい。いくつかの実施形態において、フィルタ410は、センサ素子アレイのセンサ素子の組と配列された光学フィルタアレイであってもよい。
【0031】
図4Bおよびチャート470に示すように、また、図4Cおよびチャート480に示すように、フィルタ210、フィルタ310、およびフィルタ410のフィルタ応答の組が提供される。例えば、図4Bおよび参照符号492、492’、および492’’に示すように、フィルタ410の各ミラーの不対の二酸化ケイ素層の組を含むフィルタ410に基づいて、フィルタ410は、フィルタ210とフィルタ310との間の約932nmでのピーク透過率、および、フィルタ210とフィルタ310との間の50%相対帯域幅と対応付けられる。この場合、図4Bおよび参照符号492に示すように、フィルタ210は、約932nmでの90%超のピーク透過率、および、約5.3nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。図4Bおよび参照符号492’に示すように、フィルタ310は、約932nmでの約75%のピーク透過率、および、約0.9nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。対して、図4Bおよび参照符号492’’に示すように、フィルタ410は、約932nmでの約80%のピーク透過率、および、約1.4nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。
【0032】
この場合、二酸化ケイ素層の不対の組を追加することによって、マルチスペクトルフィルタの光学特性が変化して、1/4波長スタック量を変更するよりも高い粒度で特定のスペクトル域、特定の透過率、特定の帯域幅等のためにマルチスペクトルフィルタを調整することが可能になる。
【0033】
上記の通り、図4A~4Cは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図4A~4Cに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0034】
図5A~5Cは、マルチスペクトルフィルタに関する特性図である。図5A~5Cは、1/4波長スタックの混合組、および、1/4波長スタックの混合組の間に配置されたスペーサを有するマルチスペクトルフィルタの例を示す。
【0035】
図5Aに示すように、チャート550は、フィルタ510の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ510は、基板と、基板上に形成された第1のミラー552-1と、第2のミラー552-2と、第1のミラー552-1と第2のミラー552-2との間に配置されたスペーサ554とを含む。第1のミラー552-1は、1/4波長スタック556-1および556-2の組と、1/4波長スタック558-1と、不対の二酸化ケイ素層560-1とを含む。同様に、第2のミラー552-2は、1/4波長スタック556-3および556-4の組と、1/4波長スタック558-2と、不対の二酸化ケイ素層560-2とを含む。各1/4波長スタック556は、HL対を形成する水素化シリコンおよび二酸化ケイ素を含む。各1/4波長スタック558は、HL対を形成する酸化ニオブチタン(NbTiO)を含む。この場合、フィルタ510は、1/4波長スタックの混合組を使用し、各ミラー552は、異なるタイプのHL対を含む。1/4波長スタックの混合組を用いることで、特性制御のため1/4波長スタック量の増減を利用する他の技術よりも高い粒度でフィルタ510の特性を制御することができる。本明細書ではフィルタ510の1/4波長スタックとして酸化ニオブチタン、二酸化ケイ素、および水素化シリコンが記載されるが、他の3つ以上の材料の群を混合1/4波長スタックの組に用いてもよい。例えば、二酸化ケイ素(SiO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)、二酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、二酸化ハフニウム(HfO)等の酸化物材料、窒化ケイ素(Si3N4)等の窒化物材料、フッ化マグネシウム(MgF)等のフッ化物材料、硫化亜鉛(ZnS)等の硫化物材料、セレン化亜鉛(ZnSe)等のセレン化物材料、またはそれらの組み合わせ等を用いてもよい。
【0036】
図5Bおよびチャート570に示すように、また、図5Cおよびチャート580に示すように、フィルタ210のフィルタ応答、フィルタ310のフィルタ応答、およびフィルタ510のフィルタ応答が提供される。例えば、図5Bおよび参照符号592、592’、および592’’に示すように、不対の二酸化ケイ素層560の組を含み1/4波長スタックの混合組を用いるフィルタ510に基づいて、フィルタ510は、フィルタ210とフィルタ310との間の、約932nmでのピーク透過率および50%相対帯域幅と対応付けられる。この場合、図5Bおよび参照符号592に示すように、フィルタ210は、約932nmでの90%超のピーク透過率、および、約5.3nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。図5Bおよび参照符号592’に示すように、フィルタ310は、約932nmでの約75%のピーク透過率、および、約0.9nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。対して、図5Bおよび参照符号592’’に示すように、フィルタ510は、約932nmでの約90%のピーク透過率、および、約3.1nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。
【0037】
この場合、混合1/4波長スタックの組を用いることで、マルチスペクトルフィルタの光学特性が変化して、1/4波長スタック量を変更するよりも高い粒度で特定のスペクトル域や特定の透過率等のためにマルチスペクトルフィルタを調整することが可能になる。
【0038】
上記の通り、図5A~5Cは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図5A~5Cに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0039】
図6A~6Cは、マルチスペクトルフィルタに関する特性図である。図6A~6Cは、離調された(detuned)1/4波長スタックの組、および、離調された1/4波長スタックの組の間に配置されたスペーサを有するマルチスペクトルフィルタの例を示す。
【0040】
図6Aに示すように、チャート650は、フィルタ410の屈折率プロファイルとフィルタ610の屈折率プロファイルとの比較を表す。図示のように、フィルタ610は、基板と、基板上に形成された第1のミラー652-1と、第2のミラー652-2と、第1のミラー652-1と第2のミラー652-2との間に配置された水素化シリコンスペーサ654とを含む。第1のミラー652-1は、1/4波長スタック656-1~656-3の組と、不対の二酸化ケイ素層658-1とを含む。同様に、第2のミラー652-2は、1/4波長スタック656-4~656-6の組と、不対の二酸化ケイ素層658-2とを含む。各1/4波長スタック656は、HL対を形成する水素化シリコン層および二酸化ケイ素層を含む。いくつかの実施形態において、他の材料の組を1/4波長スタック656に用いてもよい。いくつかの実施形態において、1/4波長スタック656は、3つ以上の材料を用いた1/4波長スタックの混合組であってもよい。
【0041】
図6Aおよび参照符号660に示すように、(例:ミラー652の)フィルタ610は、(例:ミラー452の)フィルタ410の二酸化ケイ素層に対して厚さの閾値低減と対応付けられた二酸化ケイ素層を含む。参照符号662に示すように、フィルタ610は、フィルタ410の水素化シリコン層に対して厚さの閾値増加と対応付けられた水素化シリコン層を含む。いくつかの実施形態において、閾値増加または低減を選択して、1/4波長スタックを1/4波長厚さ(例:1/4波長スタックに入射するべき光の中心波長と対応付けられた厚さ)から離調することで、ピーク透過率のための選択中心波長にフィルタ610を配する、および/または、フィルタ610の50%相対帯域幅を変更してもよい。例えば、厚さの約30%増加または約30%低減が用いられる。加えてまたは代替的に、約25%~30%、約20%~40%、約10%~50%等の厚さの増加または低減をフィルタ610用に選択してもよい。
【0042】
図6Bおよびチャート670に示すように、また、図6Cおよびチャート680に示すように、フィルタ210、フィルタ310、およびフィルタ610のフィルタ応答の組が提供される。例えば、図6Bおよび参照符号692、692’、および692’’に示すように、離調された1/4波長スタック(例:変更層厚を用いた1/4波長スタック)の組を含むフィルタ610に基づいて、フィルタ610は、フィルタ210とフィルタ310との間の、約932nmでのピーク透過率および50%相対帯域幅と対応付けられる。この場合、図6Bおよび参照符号692に示すように、フィルタ210は、約932nmでの90%超のピーク透過率、および、約5.3の50%相対帯域幅と対応付けられる。図6Bおよび参照符号592’に示すように、フィルタ310は、約932nmでの約75%のピーク透過率、および、約0.9nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。対して、図6Bおよび参照符号692’’に示すように、フィルタ610は、約932nmでの約87%のピーク透過率、および、約2.0nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。
【0043】
この場合、離調された1/4波長スタックの組を用いることで、マルチスペクトルフィルタの光学特性が変化して、1/4波長スタック量を変更するよりも高い粒度で特定のスペクトル域や特定の透過率等のためにマルチスペクトルフィルタを調整することが可能になる。例えば、1/4波長スタックの厚さの離調によって、異なる1/4波長スタック量と対応付けられた帯域幅間の帯域幅や、異なる1/4波長スタック量と対応付けられた帯域幅と重複する帯域幅等、選択帯域幅を有する光学フィルタの構成が可能になる。
【0044】
上記の通り、図6A~6Cは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図6A~6Cに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0045】
図7A~7Dは、マルチスペクトルフィルタの組に関する特性図である。図7A~7Dは、1/4波長スタックの混合組を有するマルチスペクトルフィルタの例を示す。
【0046】
図7Aに示すように、チャート705は、フィルタ710の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ710は、基板と、基板上に形成された第1のミラー712-1と、第2のミラー712-2と、第1のミラー712-1と第2のミラー712-2との間に配置された水素化シリコンスペーサ714とを含む。第1のミラー712-1は、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック716-1および716-2の組と、HL対としての酸化ニオブチタンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック718-1とを含む。第2のミラー712-2は、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック716-3および716-4の組と、HL対としての酸化ニオブチタンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック718-2とを含む。この場合、1/4波長スタック718-1は、1/4波長スタック716-2と水素化シリコンスペーサ714との間に配置され、1/4波長スタック718-2は、1/4波長スタック716-3と水素化シリコンスペーサ714との間に配置される。
【0047】
図7Bに示すように、チャート735は、フィルタ740の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ740は、基板と、基板上に形成された第1のミラー742-1と、第2のミラー742-2と、第1のミラー742-1と第2のミラー742-2との間に配置された水素化シリコンスペーサ744とを含む。第1のミラー742-1は、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック746-1および746-2の組と、HL対としての酸化ニオブチタンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック748-1と、不対の二酸化ケイ素層750-1とを含む。同様に、第2のミラー742-2は、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック746-3および746-4の組と、HL対としての酸化ニオブチタンおよび二酸化ケイ素の1/4波長スタック748-2と、不対の二酸化ケイ素層750-2とを含む。この場合、1/4波長スタック748-1は、1/4波長スタック746-1および746-2の間に配置され、1/4波長スタック748-2は、1/4波長スタック746-3および746-4の間に配置される。
【0048】
図7Cに示すように、チャート755は、フィルタ760の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ760は、基板と、基板上に形成された第1のミラー762-1と、第2のミラー762-2と、第1のミラー762-1と第2のミラー762-2との間に配置された水素化シリコンスペーサ764とを含む。第1のミラー762-1は、HL対としての水素化シリコンおよび五酸化タンタル(TaO-)の1/4波長スタック766-1と、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の2つの1/4波長スタック768-1および768-2の組と、不対の五酸化タンタル層770-1とを含む。同様に、第2のミラー762-2は、HL対としての水素化シリコンおよび五酸化タンタルの1/4波長スタック766-2と、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の2つの1/4波長スタック768-3および768-4の組と、不対の五酸化タンタル層770-2とを含む。この場合、1/4波長スタック768-1および768-2は、1/4波長スタック766-1と水素化シリコンスペーサ764との間に配置され、1/4波長スタック768-3および768-4は、1/4波長スタック766-2と水素化シリコンスペーサ764との間に配置される。
【0049】
図7Dに示すように、チャート775は、フィルタ780の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ780は、基板と、基板上に形成された第1のミラー782-1と、第2のミラー782-2と、第1のミラー782-1と第2のミラー782-2との間に配置された水素化シリコンスペーサ784とを含む。第1のミラー782-1は、HL対としての水素化シリコンおよび酸化ニオブチタンの2つの1/4波長スタック786-1および786-2の組と、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の2つの1/4波長スタック788-1および788-2の組と、不対の酸化ニオブチタン層790-1とを含む。同様に、第2のミラー782-2は、HL対としての水素化シリコンおよび酸化ニオブチタンの2つの1/4波長スタック786-3および786-4の組と、HL対としての水素化シリコンおよび二酸化ケイ素の2つの1/4波長スタック788-3および788-4の組と、不対の五酸化タンタル層790-2とを含む。この場合、1/4波長スタック788-1および788-2は、1/4波長スタック786-2と水素化シリコンスペーサ784との間に配置され、1/4波長スタック788-3および788-4は、1/4波長スタック786-3と水素化シリコンスペーサ784との間に配置される。
【0050】
上記の通り、図7A~7Dは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図7A~7Dに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0051】
図8Aおよび8Bは、マルチスペクトルフィルタの組に関する特性図である。図8Aおよび8Bは、本明細書に記載のフィルタの50%相対帯域幅の例を示す。
【0052】
図8Aおよび表800に示すように、約932nmの中心波長での本明細書に記載のフィルタの50%相対帯域幅の組が提供される。図示のように、フィルタ210は、約5.3nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。付加的な1/4波長スタックを追加してフィルタ310を形成することで、約0.9nmの50%相対帯域幅がもたらされる。本明細書に記載されるように、複数技術を用いて、より高い粒度でマルチスペクトルフィルタを調整してもよい(例:マルチスペクトルフィルタを約0.9nm~約5.3nmの50%相対帯域幅に、または、他のマルチスペクトルフィルタの組と対応付けられた他の50%相対帯域幅範囲に調整する)。例えば、フィルタ410は、約1.4nmの50%相対帯域幅となり、フィルタ510は、約3.1nmの相対帯域幅となり、フィルタ610は、2.0nmの50%相対帯域幅となり、フィルタ710は、約2.8nmの50%相対帯域幅となり、フィルタ740は、約3.1nmの50%相対帯域幅となり、フィルタ760は、約5.3nmの50%相対帯域幅となり、フィルタ780は、約3.0nmの50%相対帯域幅となる。こうして、マルチスペクトルフィルタは、1/4波長スタックミラーの3つ以上の異なる材料、離調1/4波長スタック厚、不対1/4波長スタック層等を用いて、特定のスペクトル域や透過率等を実現してもよい。
【0053】
図8Bおよびチャート850に示すように、中心波長の組での本明細書に記載のフィルタの50%相対帯域幅の組が提供される。例えば、本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタの特定の中心波長への調整(例:マルチスペクトルフィルタのスペーサ厚さの変更による)に基づいて、50%相対帯域幅が決定され得る。図示のように、約800nm~約1100nmの中心波長のスペクトル域で、各フィルタ410、510、610、710、740、760、および780は、フィルタ210および310の間の50%相対帯域幅と対応付けられる。例えば、約800nmの中心波長で、フィルタ410、510、610、710、740、760、および780は、約3.75nm~約5.75nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。同様に、約1100nmの中心波長で、フィルタ410、510、610、710、740、760、および780は、約4nm~約8nmの50%相対帯域幅と対応付けられる。
【0054】
上記の通り、図8Aおよび8Bは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、図8Aおよび8Bに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0055】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を2つの1/4波長スタックまたは3つの1/4波長スタックを有する他の光学フィルタに対するスペクトル域調整の粒度について記載したが、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の1/4波長スタック量に対してより高い調整粒度を提供してもよい。例えば、第3のコーティング材料や第4のコーティング材料等の使用または1/4波長スタックの厚さの離調によって、1つの1/4波長スタックの加減、2つの1/4波長スタックの加減、3つの1/4波長スタックの加減、4つの1/4波長スタックの加減等に対して特定のスペクトル域や透過率等のための光学フィルタの調整粒度をより向上することが可能である。
【0056】
こうして、混合1/4波長スタックの組や離調1/4波長スタックの組を用いることで、1/4波長スタック付加量を利用する他の技術に対して、透過率や帯域幅等の制御の粒度が高められる。マルチスペクトルフィルタの制御粒度の向上に基づいて、マルチスペクトルフィルタに取り付けられたセンサ素子のセンシングが向上する。
【0057】
上述の開示は例示および説明を提供するものであるが、全てを網羅している訳ではなく、実施形態を開示された形態に厳密に制限することを意図するものではない。変更および変形は、上述の開示に照らして行うことができる、または実施形態の実施から取得することができる。
【0058】
本明細書に記載するいくつかの実施形態は閾値に関するものである。本明細書に記載する、閾値を満足させるとは、閾値よりも大きい値、閾値を超える値、閾値よりも高い値、閾値以上の値、閾値未満の値、閾値よりも少ない値、閾値よりも低い値、閾値以下の値、閾値と等しい値などを指す。
【0059】
特徴の特別な組み合わせを請求項に記載し、および/または明細書に開示したが、これらの組み合わせは可能な実施形態の開示を制限することを意図するものではない。実際、これらの特徴の多くは、請求項に具体的に記載されていない方法、および/または明細書に開示されていない方法で組み合わせることができる。以下に記載する各々の従属請求項は1つの請求項のみに従属させることができるが、可能な実施形態の開示は、各々の従属請求項と請求項の範囲における他の全ての請求項との組み合わせを含んでいる。
【0060】
本明細書で使用される要素、行為または命令は、明示的な記載のない限り、重要または必須であると解釈してはならない。また、本明細書で使用する「a」および「an」の冠詞は1つ以上のアイテムを含むものとし、「1つ以上の(one or more)」と代替可能に使用することができる。さらに、本明細書で使用する「組(set)」という用語は、1つ以上のアイテム(例えば関連アイテム、非関連アイテム、関連アイテムと非関連アイテムの組み合わせなど)を含むものとし、「1つ以上の」と代替可能に使用することができる。1つのアイテムのみが意図される場合、「1つの(one)」という用語または類似の言葉が使用される。また、本明細書で使用する「有する(has,have,having)」などの用語は開放型用語であるものとする。さらに、「に基づく(based on)」という言い回しは、特に断りのない限り、「少なくとも部分的に~に基づく」ことを意味するものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B