(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】荷役物運搬機の旋回アシスト装置
(51)【国際特許分類】
B66F 19/00 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
B66F19/00 J
B66F19/00 K
(21)【出願番号】P 2018105855
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000100735
【氏名又は名称】アイコクアルファ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】村上 真司
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-238254(JP,A)
【文献】特開2013-256362(JP,A)
【文献】特開2006-213440(JP,A)
【文献】特開平09-301697(JP,A)
【文献】特開平07-165400(JP,A)
【文献】特開2007-314290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 19/00 - 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシストスイッチとアシスト駆動部とアシストタイマーとアーム先端位置検出器と荷役物重量検出器を備え、旋回の動き出しをアシストする荷役物運搬機の旋回アシスト装置において、前記アシストタイマーのアシスト時間はアーム先端位置が旋回内側から旋回外側に向けて段階的に長く設定又は演算し、前記アシスト駆動部のシリンダへの供給空気圧は荷役物重量がゼロから定格重量になるにつれて段階的に高く設定又は演算し、旋回の動き出しの速度とアシスト距離を常に夫々ほぼ同じに制御する制御部を有することを特徴とする荷役物運搬機の旋回アシスト装置。
【請求項2】
前記制御部は、アーム先端位置を検出するステップと、荷役物重量を検出するステップと、アシストタイマーのアシスト時間を演算するステップと、アシスト駆動部への供給空気圧を演算するステップと、アシスト駆動部を駆動させるステップを有することを特徴とする請求項1記載の荷役物運搬機の旋回アシスト装置。
【請求項3】
前記アシスト駆動部は、キャリパーを有し、前記キャリパーにはピストンとパッドを有したことを特徴とする請求項1記載の荷役物運搬機の旋回アシスト装置。
【請求項4】
前記旋回アシスト装置は、旋回一時ブレーキスイッチを備え、旋回アシストの機能と旋回一時ブレーキを兼用したことを特徴とする請求項3記載の荷役物運搬機の旋回アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者がアーム先端の操作部で昇降操作する荷役物運搬機において、旋回時の動き出しのアシスト(助力)装置に関するものである。特に、動き出しだけのアシストであり、一旦動き出したら、その後は作業者の力で旋回させる。
【背景技術】
【0002】
従来は、重量が重い荷役物を搬送させる荷役物運搬機には、旋回アシスト装置や旋回駆動装置があった。特許文献1では、力センサなどを用いているので、制御が複雑で高価なものとなっていた。そして、旋回時には常に駆動状態であり、作業者の力の入れ具体でアシスト量が変わるので、旋回操作の制御が難しいという不具合点があった。特許文献1は、旋回駆動装置であった。
【0003】
特許文献2では、旋回操作の出だしのみをアシストしている。出だしで旋回をアシストすれば、作業者がさほど力を必要とせず、動き出す。動き出したら作業者の力で十分である。旋回アシスト用シリンダの動作は約1秒で、また、旋回アシスト用シリンダへ供給される空気圧は常に一定であった。よって、アームの先端が旋回中心から一番遠い外側でも、一番近い内側でも、荷役物を把持していても、荷役物を把持していなくても、旋回アシスト用シリンダのアシスト時間と空気圧は一定であった。しかしながら、アシスト時間と空気圧が一定であることは、アームの先端の位置や荷役物重量によりアシスト速度やアシスト距離が変化してしまい、作業者はスムースに旋回作業ができないという不具合があった。例えば、300kgの荷役物を、アーム先端位置が半径2000mmと半径500mmの位置で旋回する速度を比較すると、半径500mmの方がアシストされる速度は早くなり、アシスト距離も長くなる。また、アーム先端位置が半径1000mmの位置で、荷役物を吊り上げていない無負荷状態と300kgの荷役物を把持している負荷状態を比較すると、無負荷状態の方がアシストの速度は早くなり、アシスト距離も長くなる。半径500mmで無負荷の状態と、半径2000mmで300kgの荷役物の負荷状態を比較すると、半径500mmで無負荷の状態の方がアシストの速度が速くなり、アシスト距離も長くなる。このように、アームの位置と荷役物の重量の違いにより、アシストされる速度とアシスト距離が違い、作業者は旋回作業がやり辛いという不具合点があった。
【0004】
また、特許文献2では、押し付け用シリンダで、ライニング材をリングに押し付けるが、ライニング材とリングとの接地面積が狭く、ライニング材の摩耗が早かったり、ライニング材とリングが滑ってしまう不具合点があった。
【0005】
特許文献3では、アーム先端の位置のセンシングを行い、また、荷役物の重量をセンシングして、アーム先端の位置と荷役物の重量の値を基に演算し水平バランスの制御で使用していた。しかしながら、特許文献3は、アームの水平バランス装置で常にバランスさせる制御であり、また、旋回の作業を制御するのもではなかった。
【文献】特開平7-165400号公報
【文献】特開2007-238254号公報
【文献】特開2013-256362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、アーム先端位置や荷役物重量の違いで、旋回の動き出しの速度とアシスト距離の差が大きく、旋回アシストの操作感覚が区区となり使いにくいという点である。また、パッド(特許文献2ではライニング材)とディスク(特許文献2ではリング)が滑りやすく、パッドの摩耗が早い点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アーム先端位置に応じてアシストタイマーの時間を可変させ、また、荷役物重量に応じてアシスト駆動部への供給空気圧を可変させ、アシスト駆動部でアームの旋回に一瞬(実施例では0.7秒から1.2)駆動をかけることが最も主要な特徴とする。補足すると、旋回開始の出だしの数秒をアシスト駆動部で駆動させ、一旦動き出したら作業者の力で旋回させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の旋回アシスト装置は、アームの先端位置や荷役物重量に係らず、常に同じぐらいの旋回の動き出しの速度とアシスト距離となり、作業しやすいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例の荷役物運搬機の総体図である。(実施例1)
【
図2】
図2は、操作部の上面図である。(実施例1)
【
図3】
図3は、アシスト駆動部の側面図である。(実施例1)
【
図4】
図4は、アシスト駆動部の上面図である。(実施例1)
【
図5】
図5は、アシスト駆動部の上面図である。(実施例1)
【
図6】
図6は、アシスト駆動部の上面図である。(実施例1)
【
図7】
図7は、アシスト駆動部の上面図である。(実施例1)
【
図8】
図8は、荷役物運搬機の平面エリア図である。(実施例1)
【
図9】
図9は、平面エリアとアシスト時間の表である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0010】
アーム先端位置に応じてアシストタイマーのアシスト時間を設定し、また、荷役物重量に応じてアシスト駆動部への供給空気圧を可変させ、アシスト駆動部でアームの旋回に一瞬(実施例では0.7秒から1.2)駆動をかけることで、常に同じぐらいの旋回の動き出しの速度とアシスト距離となり、旋回操作しやすい作業を実現した。
【実施例1】
【0011】
図1は、荷役物運搬機の総体図である。台座1に旋回台2が取付けられている。旋回台2に荷役物運搬機3が取付けられている。アシスト駆動部4が、荷役物運搬機3に固定されいる。アーム5の先端には操作部6を備えており、また、吊り具7を介して荷役物8を吊っている。アーム5には、アーム先端位置検出器9を備え、アーム5の二か所の角度を検出しアーム5の先端位置を検出する。荷役物運搬機3には、荷役物重量検出器10と制御部11が内蔵されている。制御部11はアシストタイマー(図示せず)や後述するステップを制御する。昇降の駆動源が電気モータの場合は、電力量を検出し荷役物重量を測定する。作業者12は、操作部6で荷役物運搬機3を操作して、3次元に荷役物8を移動させることができる。
【0012】
図2は、操作部の上面図である。作業者がグリップ21を把持する。右旋回用のアシストスイッチ22と左旋回用のアシストスイッチ23を備えている。右旋回用のアシストスイッチ22で、後述するシリンダ32とキャリパー33が駆動し、アーム5は右に旋回する。左旋回用のアシストスイッチ23で、後述するシリンダ32とキャリパー33が駆動し、アーム5は左に旋回する。旋回の流れを一時的に停止させる旋回一時ブレーキの旋回一時ブレーキスイッチ24を備えている。昇降操作のレバーは省略している。
【0013】
図3は、アシスト駆動部の側面図である。荷役物運搬機3にステー31を介して、シリンダ32が固着されている。キャリパー33は、ステー31にスライドが可能に配設されている。シリンダ32のロッド34の先端にキャリパー33が支承されている。ディスク35が旋回台2の固定側に固着されている。キャリパー33にはパッド36とピストン37が内蔵されている。ピストン37は空気圧で制御され、ピストン37が駆動することによりパッド36がディスク35を挟持する。旋回アシスト装置は、アシストスイッチ22・23と旋回一時ブレーキスイッチ24とアシスト駆動部4と制御部11とアーム先端位置検出器9と荷役物重量検出器10とディスク35で構成されている。
【0014】
図4は、アシスト駆動部の上面図である。荷役物運搬機3とステー31は図示していない。
ディスク35が旋回台2の固定側に固着されている。キャリパー33にはパッド36とピストン37が内蔵されいる。ピストン(図示せず)は空気圧で制御され、ピストン(図示せず)が駆動することによりパッド36がディスク35を挟持する。シリンダ32には、ロッド38を備えている。ロッド34の先端には、キャリパー33が支承されている。ロッド34とシリンダ34の位置関係では、旋回動作をする時のロッド34の原位置となる。キャリパー33とディスク35の位置関係を保持する治具は省略している。説明用にディスクの印38と、印39が示してある。印38は固定点であり動きはない。印39はアーム5の方向を示しており、アーム5の位置を印39で示している。
【0015】
図5は、アシスト駆動部の上面図である。符号は、
図4と同様である。
図4の状態から、アーム5が右に旋回した状態である。印39とシリンダ32が右に旋回している。
図4の状態から、ロッド34がシリンダ32から伸長している。キャリパー33は
図4と同じ位置である。また、パッド36がディスク35を挟持した状態、又は、パッド36がディスク35を挟持状態から離間した瞬間である。
【0016】
図6は、アシスト駆動部の上面図である。符号は、
図4と同様である。
図4の状態から、アーム5が左に旋回した状態である。印39とシリンダ32が左に旋回している。
図4の状態から、ロッド34がシリンダ32内に縮退している。キャリパー33は
図4と同じ位置である。また、パッド36がディスク35を挟持した状態、又は、パッド36がディスク35を挟持状態から離間した瞬間である。
【0017】
図7は、荷役物運搬機の平面エリア図である。荷役物運搬機の旋回台2を中心にアーム5の先端がエリアA41・B42・C43・D44の範囲内で移動できる。中心のエリアは、死角でありアーム5の先端は移動できない。エリアA41・B42・C43・D44は、アーム先端位置検出器9で検出する。
【0018】
図8は、平面エリアとアシスト時間の表である。アシスト駆動部4のシリンダを駆動させる時間と各平面エリアの関係である。アーム先端位置検出器9によりアーム5の先端の位置を検出できるので、エリアを設定できる。設定したエリアA41では0.7秒、エリアB42では1.0秒、エリアC43では1.1秒、エリアD44では1.2秒である。各秒数は事前に設定してある。また、4つのエリアとしているが、エリア数を限定するものではない。また、位置を検出し、アシストタイマーのアシスト時間を瞬時に演算することも可能である。アシストタイマーのアシスト時間はアーム先端位置が旋回内側から旋回外側に向けて段階的に長く設定又は演算する。
【0019】
図9は、荷役物重量とアシスト駆動部の供給空気圧の表である。アシスト駆動部4のシリンダ32を駆動させる供給空気圧と荷役物重量の関係である。荷役物重量検出器10により荷役物8の重量を検出できるので、その重量に応じて供給空気圧を設定する。設定した供給空気圧は、荷役物重量が0kg~50kg未満の場合に0.20MPa、50kg~100kg未満の場合に0.25MPa、100kg~150kg未満の場合に0.35MPa、150kg~200kgの場合に0.45MPaである。各供給空気圧は事前に設定してある。また、4つの重量帯としているが、重量帯の数を限定するものではない。また、荷役物重量を検出し、供給空気圧を瞬時に演算することも可能である。アシスト駆動部4への供給空気圧は荷役物重量がゼロから定格重量になるにつれて段階的に高く設定又は演算する。
【0020】
図10は、制御のステップである。アーム先端位置を検出するステップ51と、荷役物重量を検出するステップ52と、アシストタイマーのアシスト時間を演算するステップ53と、アシスト駆動部への供給空気圧を演算するステップ54と、アシスト駆動部を駆動させるステップ55を制御部は有している。演算とは、予め設定した数値を読み込むことも含んでいる。アーム先端位置を検出するステップ51ではアーム5の先端位置を検出する。荷役物重量を検出するステップ52は、荷役物重量を検出する。アシストタイマーのアシスト時間を演算するステップ53は、アーム5の先端位置によりシリンダ32への空気圧供給時間であるアシスト時間を演算する。同時に、ピストン37を駆動させパッド36を離間させるタイミングも演算する。アシスト駆動部4への供給空気圧を演算するステップ54は、荷役物重量を荷役物重量検出器10の検出値に応じてアシスト駆動部4への供給空気圧を演算する。アシスト駆動部4を駆動させるステップ55は、アシストタイマーのアシスト時間を演算するステップ53とアシスト駆動部4への供給空気圧を演算するステップ54の演算結果に応じてシリンダ32とピストン37を駆動させる。演算とは、予め設定した数値を読み込むことも含んでいる。
【0021】
右旋回を説明する。
図4の状態から、アシストスイッチ22を把持すると、ピストン37が駆動しパッド36でディスク35を挟持する。次に、
図8の様にアーム5先端のエリアA~Dに応じてアシスト時間が決定する。また、
図9の様に荷役物重量に応じてシリンダ32への供給空気圧が決定する。アシスト時間と供給空気圧によりシリンダ32が伸長することで、アーム5が右に旋回する。アシスト時間が終了すると同時にピストン37が駆動しパッド36がディスク35から離間する。パッド36がディスク35から離間した瞬間が
図5である。制御は、
図10の様に行われる。一連の動作により、アーム5先端位置や荷役物重量に係らず、旋回の動き出しの速度とアシスト距離を常に夫々ほぼ同じに制御する。旋回アシストが完了すると、シリンダは縮退しシリンダは原位置に戻る。アーム5は旋回の出だしのアシストをするので、その先の旋回は作業者が行うが、出だしのアシストがされているのでさほど力を必要としない。原位置は
図4のロッドの位置で
図5と
図6の中間位置となっているが、ロッドを最も縮退した位置を原位置としても良い。その場合、右旋回は、原位置にてパッドでディスクを挟持して、その後にロッドを伸長させる。
【0022】
左旋回を説明する。
図4の状態から、アシストスイッチ23を把持すると、ピストン37が駆動しパッド33でディスク35を挟持する。次に、
図8の様にアーム5のエリアA~Dに応じてアシスト時間が決定する。また、
図9の様に荷役物重量に応じてシリンダ32への供給空気圧が決定する。アシスト時間と供給空気圧によりシリンダ32が縮退することで、アーム5が左に旋回する。アシスト時間が終了すると同時にピストン37が駆動しパッド36がディスク35から離間する。パッド36がディスク35から離間した瞬間が
図6である。制御は、
図10の様に行われる。一連の動作により、アーム5先端位置や荷役物重量に係らず、旋回の動き出しの速度とアシスト距離を常に夫々ほぼ同じに制御する。旋回アシストが完了すると、ロッド34は伸長しロッド34は原位置に戻る。アーム5は旋回の出だしのアシストをするので、その先の旋回は作業者が行うが、出だしのアシストがされているのでさほど力を必要としない。原位置は
図4のロッド34の位置で
図5と
図6の中間位置となっているが、ロッド34を最も縮退した位置を原位置としても良い。その場合、左旋回は一旦ロッド34を伸長させて、その次にパッド36でディスク35を挟持して、その後にロッド34を縮退させる。
【0023】
旋回アシスト装置は、旋回アシストの機能を備えているが、キャリパー33のパッド36でディスク35を挟持する作用で、アーム5の旋回流れを停止させる旋回一時ブレーキの機能も備えており、旋回アシスト装置と旋回一時ブレーキを兼用している。
【符号の説明】
【0024】
1 台座
2 旋回台
3 荷役物運搬機
4 アシスト駆動部
5 アーム
6 操作部
7 吊り具
8 荷役物
9 アーム先端位置検出器
10 荷役物重量検出器
11 制御部
21 グリップ
22 アシストスイッチ
23 アシストスイッチ
24 旋回一時ブレーキスイッチ
31 ステー
32 シリンダ
33 キャリパー
34 ロッド
35 ディスク
36 パッド
37 ピストン
38 印
39 印
41 エリアA
42 エリアB
43 エリアC
44 エリアD
51 アーム先端位置を検出するステップ
52 荷役物重量を検出するステップ
53 アシストタイマーのアシスト時間を演算するステップ
54 アシスト駆動部への供給空気圧を演算するステップ
55 アシスト駆動部を駆動するステップ