(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】アンテナ装置、電子機器及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H01P 1/30 20060101AFI20220418BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20220418BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20220418BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20220418BHJP
H04B 1/3827 20150101ALI20220418BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20220418BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
H01P1/30 Z
H01Q21/06
H01Q3/24
H01Q1/24 Z
H04B1/3827
H04B7/06 020
H04B7/08 020
(21)【出願番号】P 2018120788
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩木 恭男
(72)【発明者】
【氏名】細川 剛
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0019952(US,A1)
【文献】特開2011-259282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0050031(US,A1)
【文献】特開2012-109670(JP,A)
【文献】特開2012-222234(JP,A)
【文献】特開2015-211056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/22- 1/397
H01Q 1/00-25/04
H04B 1/38- 1/58
H04B 7/02- 7/12
H04L 1/02- 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信回路に接続するための端子と、
複数のアレイアンテナと、
前記複数のアレイアンテナのそれぞれの温度を測定する複数の温度センサと、
前記複数の温度センサの出力に基づいて前記複数のアレイアンテナの少なくとも1つを選択する選択回路と、を具備し、
前記選択回路により選択されているアレイアンテナが前記端子を介して前記無線通信回路に接続されるアンテナ装置。
【請求項2】
前記選択回路は、温度が第1温度以上でないアレイアンテナの少なくとも1つを選択する請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記選択回路は、前記選択しているアレイアンテナの温度が前記第1温度以上になった場合、前記選択しているアレイアンテナを非選択とし、温度が前記第1温度以上でない他のアレイアンテナを前記複数のアレイアンテナから選択する請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記選択回路により選択されているアレイアンテナの温度が前記第1温度以上になった場合、警告を発生する警告発生手段をさらに具備する請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記複数の温度センサはサーミスタ、熱電対、ダイオード又はバイポーラトランジスタを具備する請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項6】
無線通信回路と、
複数のアレイアンテナと、
前記複数のアレイアンテナのそれぞれの温度を測定する複数の温度センサと、
前記複数の温度センサの出力に基づいて前記複数のアレイアンテナの少なくとも1つを選択し、選択したアレイアンテナを前記無線通信回路に接続する選択接続手段と、
を具備する電子機器。
【請求項7】
前記選択接続手段は、温度が第1温度以上でないアレイアンテナの少なくとも1つを選択する請求項6記載の電子機器。
【請求項8】
前記選択接続手段は、前記選択しているアレイアンテナの温度が前記第1温度以上になった場合、前記選択しているアレイアンテナを非選択とし、温度が前記第1温度以上でない他のアレイアンテナを前記複数のアレイアンテナから選択する請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
前記選択接続手段により選択されているアレイアンテナの温度が前記第1温度以上になった場合、警告を発生する警告発生手段をさらに具備する請求項7記載の電子機器。
【請求項10】
前記複数の温度センサはサーミスタ、熱電対、ダイオード又はバイポーラトランジスタを具備する請求項6乃至請求項9のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項11】
前記無線通信回路はマルチインプットマルチアウトプット方式の無線通信を行なうための複数のポートを具備し、
前記複数のアレイアンテナの数は前記複数のポートの数より多く、
前記選択接続手段は前記複数のアレイアンテナから前記複数のポートの数と等しい数の複数のアレイアンテナを選択し、選択した複数のアレイアンテナを前記無線通信回路の前記複数のポートにそれぞれ接続する請求項6乃至請求項10のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項12】
無線通信回路と、
複数のアレイアンテナと、
前記複数のアレイアンテナのそれぞれの温度を測定する複数の温度センサと、
を具備する電子機器における無線通信方法であって、
前記複数の温度センサの出力に基づいて前記複数のアレイアンテナの少なくとも1つを選択することと、
選択したアレイアンテナを前記無線通信回路に接続することと、
を具備する無線通信方法。
【請求項13】
前記選択することは、温度が第1温度以上でないアレイアンテナの少なくとも1つを選択することを具備する請求項12記載の無線通信方法。
【請求項14】
前記選択されているアレイアンテナの温度が前記第1温度以上になった場合、前記選択されているアレイアンテナを非選択とし、温度が前記第1温度以上でない他のアレイアンテナを前記複数のアレイアンテナから選択することをさらに具備する請求項13記載の無線通信方法。
【請求項15】
前記選択されているアレイアンテナの温度が前記第1温度以上になった場合、警告を発生することをさらに具備する請求項13記載の無線通信方法。
【請求項16】
前記無線通信回路はマルチインプットマルチアウトプット方式の無線通信を行なうための複数のポートを具備し、
前記複数のアレイアンテナの数は前記複数のポートの数より多く、
前記選択することは前記複数のアレイアンテナから前記複数のポートの数と等しい数の複数のアレイアンテナを選択し、選択した複数のアレイアンテナを前記無線通信回路の前記複数のポートにそれぞれ接続することを具備する請求項12乃至請求項15のいずれか一項記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アンテナ装置、電子機器及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器は無線通信機能を備えている。無線通信のための周波数は、通信する情報量が多くなるにつれて高くなっている。例えば、UHFとも呼ばれる極超短波より波長が短いマイクロ波さらにはミリ波と呼ばれる高周波数帯域が使用されるようになっている。電波は周波数が高くなると、直進性が強くなり、特定の方向のゲインが他の方向のゲインより大きくなり、電波に指向性が生じる。単体のアンテナでは指向性を制御することが難しい。複数のアンテナ素子が配列されてなるアレイアンテナは、各アンテナ素子の位相を制御することにより、ビームの方向及び幅を制御することができ、無指向性の電波を送受信することができる。
【0003】
アレイアンテナは、複数のアンテナ素子とともに増幅器等の電気回路が1つのチップに収められることがある。電気回路は動作時に熱を生じる。アレイアンテナの温度が上昇すると、送受信する信号の通信品質が低下する。また、最近の電子機器は携帯性を考慮して厚さが薄くなってきているので、アレイアンテナの電気回路から生じた熱は電子機器の筐体に伝達しやすく、アレイアンテナ付近の筐体の表面温度が高くなり、ユーザが低温火傷する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-195471号公報
【文献】特開2005-204230号公報
【文献】特開2015-019288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアレイアンテナは発熱するという課題があった。
本発明の目的は、発熱による筐体表面温度の上昇を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るアンテナ装置は、無線通信回路に接続するための端子と、複数のアレイアンテナと、前記複数のアレイアンテナのそれぞれの温度を測定する複数の温度センサと、前記複数の温度センサの出力に基づいて前記複数のアレイアンテナの少なくとも1つを選択する選択回路と、を具備する。前記選択回路により選択されているアレイアンテナが前記端子を介して前記無線通信回路に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る電子機器8の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電子機器8におけるアレイアンテナ18a、18b、18c、18dの配置の一例を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る電子機器8の構成の他の例を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る電子機器8におけるアレイアンテナ18a、18b、18c、18dの配置の他の例を示す斜視図である。
【
図5】電子機器8に含まれるアレイアンテナ18の構成の一例を示す斜視図である。
【
図6】アレイアンテナ18に含まれるアンテナ回路26の回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】電子機器8の回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】電子機器8に含まれるアンテナ選択回路60の回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】電子機器8が実行するMIMO通信の一例の原理を示す図である。
【
図10】電子機器8が実行するMIMO通信の一例を示すフローチャートである。
【
図11】アンテナ選択回路60に含まれる接続制御テーブル90の状態の一例を示す図である。
【
図12】アンテナ選択回路60に含まれる接続制御テーブル90の状態の他の一例を示す図である。
【
図13】アンテナ選択回路60に含まれる接続制御テーブル90の状態のさらに他の一例を示す図である。
【
図14】アンテナ選択回路60に含まれる接続制御テーブル90の状態のさらに他の一例を示す図である。
【
図15】アンテナ選択回路60に含まれる接続制御テーブル90の状態のさらに他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
[全体構成]
図1(a)~(d)は、実施形態に係る電子機器の一例としてのデタッチャブル2-in-1型のパーソナルコンピュータ8を示す。パーソナルコンピュータ8は、取り外し可能な本体14とディスプレイユニット10から構成される。
図1(a)は、ノート型パーソナルコンピュータとして使用するために、ディスプレイユニット10を本体14の奥側の端部に取り付けた状態における斜視図である。ディスプレイユニット10の表面にLCD(Liquid Crystal Display)パネル12が配置され、ディスプレイユニット10の内部にパネル基板(図示しない)が収納される。本体14は薄い箱形の筐体を備え、筐体の上面にキーボード16が配置され、筐体の内部に回路基板(図示しない)が収納される。
図1(a)は、キーボード16を操作するユーザがLCDパネル12を見ることができるような向きでディスプレイユニット10が本体14に一定の角度で取り付けられた状態を示す。
図1(b)は、
図1(a)とは逆の向きで、すなわち、キーボード16を操作するユーザと対向する第3者がLCDパネル12を見ることができるような向きでディスプレイユニット10が本体14に対して一定の角度で取り付けられた状態を示す。
図1(c)は、パソコン8を所持するユーザがLCDパネル12を見ることができるようにディスプレイユニット10の背面と本体14のキーボード16が対向するようにディスプレイユニット10が本体14の上に重ねられ、ディスプレイユニット10と本体14がタブレットとして使用される状態を示す。
図1(d)は、ディスプレイユニット10が本体14から取り外され、ディスプレイユニット10単体がタブレットとして使用される状態を示す。
【0010】
パーソナルコンピュータ8は、複数のアレイアンテナを含む。複数のアレイアンテナはディスプレイユニット10のパネル基板に取り付けてもよいし、本体14の回路基板に取り付けてもよい。
図2は本体14の回路基板に取り付けた例を示す。
図2(a)はディスプレイユニット10単体の斜視図であり、
図2(b)は本体14単体の斜視図である。
図2(b)に示すように、本体14の手前側の端部に2つのアレイアンテナ18a、18bが設けられ、
図1(a)に示す状態で本体14の右側部の奥側にアレイアンテナ18cが設けられ、
図1(a)に示す状態で本体14の左側部の手前側にアレイアンテナ18dが設けられる。
【0011】
アレイアンテナ18a、18b、18c、18dの近傍に温度センサ20a、20b、20c、20dが配置される。温度センサ20a、20b、20c、20dが導体を含む場合、導体がアレイアンテナ18a、18b、18c、18dの特性に影響を与えることがあるので、温度センサ20a、20b、20c、20dはアレイアンテナ18a、18b、18c、18dから一定距離離れて配置される。
【0012】
2-in-1型のパーソナルコンピュータ8はデタッチャブル型に限らず、コンバーチブル型としても実現可能である。
図3(a)~(d)はコンバーチブル2-in-1型のパーソナルコンピュータ8を示す。通常のノートブック型パーソナルコンピュータと同様にディスプレイユニット10は本体14に対して取り外し不可能な状態で取り付けられているが、通常のノートブック型パーソナルコンピュータとは異なり、
図3(d)に示すように、ディスプレイユニット10は本体14に対して0度~360度まで連続に回転することができる。
図3(a)はノート型パーソナルコンピュータとして使用する状態を示す。
図3(b)はディスプレイユニット10を本体14に対して180度回転した状態を示す。
図3(c)はディスプレイユニット10を本体14に対して360度回転した状態を示す。
【0013】
複数のアレイアンテナ18a、18b、18c、18dは、
図4に示すように、LCDパネル12が形成されていない部分のディスプレイユニット10のパネル基板に取り付けられる。ノート型パーソナルコンピュータとして使用する状態において、ディスプレイユニット10の上端部の左右に2つのアレイアンテナ18a、18bが設けられ、下端部の左右に2つのアレイアンテナ18d、18cが設けられる。アレイアンテナ18a、18b、18c、18dの近傍に温度センサ20a、20b、20c、20dが配置される。
【0014】
さらに、複数のアレイアンテナの一部がディスプレイユニット10のパネル基板に、残りが本体14の回路基板に分散して取り付けてもよい。アレイアンテナ18a~18dの個数は4に限らず、2、3又は5以上でもよい。
温度センサ20a、20b、20c、20dはアレイアンテナ18a、18b、18c、18dの周囲温度を測定し、測定温度が所定温度以上であるか否かを示す検知信号を出力する。これにより、アレイアンテナ18a、18b、18c、18dの温度が許容温度以上であるか否か、すなわちアレイアンテナ18a、18b、18c、18dが発熱しているか否かが判断できる。許容温度は、送受信信号の品質の低下や低温火傷の発生が生じない温度に設定される。温度センサ20a、20b、20c、20dは、サーミスタ、熱電対等により構成される。
【0015】
サーミスタは、温度に応じて抵抗値が変化する素子である。一定値の抵抗とサーミスタとを直列接続し分圧回路を構成すると、サーミスタの印加電圧(分圧電圧)が温度に応じた値となる。これにより、温度を測定することができる。なお、サーミスタは、温度による抵抗値の変化の態様により2種類に分類される。第1のタイプは温度が上昇すると、抵抗値が下がる(非線形に変化する)タイプであり、第2のタイプはある温度までは抵抗値は略一定であるが、温度がある温度を超えると、抵抗値が急激に増加するタイプである。実施形態では、第1のタイプを用いてアレイアンテナの温度そのものを検出してもよいが、送受信する信号の通信品質の低下、ユーザの低温火傷を防止する目的のためには、第2のタイプを用いてアレイアンテナの温度が許容温度以上であることを検出するだけでもよい。熱電対は、温度が上昇すると、熱起電力が増加することを利用して、温度に応じた電圧を出力する。なお、サーミスタ、熱電対の代わりに、温度により順方向電圧が変化するダイオード、バイポーラトランジスタ等を用いてもよい。ダイオード、バイポーラトランジスタ等を用いると、温度そのものを検出することができる。
【0016】
[アレイアンテナ]
アレイアンテナ18a、18b、18c、18dは全て同じ構造であり、アレイアンテナ18(18a、18b、18c、18dの総称)の斜視図を
図5に示す。アレイアンテナ18(アレイアンテナ18a、18b、18c、18dのそれぞれ)は平面状の導電体からなる複数、例えば5つのアンテナ素子24a、24b、24c、24d、24eがプラスチック等からなる直方体形状のパッケージ22の表面に形成される。パッケージ22内には増幅器、減衰器、移相器、コンバータ等のアンテナ回路(
図5には図示しないが、
図6に示す)が搭載された基板が収納される。アンテナ素子24a、24b、24c、24d、24eがアンテナ回路に電気的に接続される。
【0017】
図2、
図4は、アレイアンテナ18a、18b、18c、18dと温度センサ20a、20b、20c、20dが別体として構成された例を示すが、アレイアンテナと温度センサとを一体として構成してもよい。この場合、アレイアンテナ18a、18b、18c、18dのパッケージ22内にセンサチップを内蔵する。この場合、アレイアンテナ18a、18b、18c、18dの周囲温度ではなく、アンテナ自体の温度が測定される。
【0018】
図6はアレイアンテナ18(アレイアンテナ18a、18b、18c、18dのそれぞれ)の回路構成を示す。アレイアンテナ18はアンテナ素子24a、24b、24c、24d、24eとアンテナ回路26からなる。アンテナ回路26は各アンテナ素子24a、24b、24c、24d、24eに対応する回路部分に分割される。
図5では、説明の簡略化のため、アンテナ素子24c、24d及びそれらに対応するアンテナ回路26の回路部分の図示は省略される。
【0019】
アンテナ素子24a、24b、24c、24d、24eにより受信された信号はセレクタ46a、46b、46c、46d、46e(46c、46dは図示しない)の受信側端子を介して増幅器30a、30b、30c、30d、30e(30c、30dは図示しない)に入力される。増幅器30a、30b、…30eの出力は可変減衰器32a、32b、32c、32d、32e(32c、32dは図示しない)、可変移相器34a、34b、34c、34d、34e(34c、34dは図示しない)をこの順番に介してダウンコンバータ36a、36b、36c、36d、36e(36c、36dは図示しない)に入力される。ダウンコンバータ36a、36b、…36eの出力はセレクタ48a、48b、48c、48d、48e(48c、48dは図示しない)の受信側端子を介してマルチプレクサ/デマルチプレクサ50の第1端子、第2端子、第3端子、第4端子、第5端子に入力される。
【0020】
一方、マルチプレクサ/デマルチプレクサ50の第1端子、第2端子、第3端子、第4端子、第5端子はセレクタ48a、48b、48c、48d、48e(48c、48dは図示しない)の送信側端子を介してアップコンバータ38a、38b、38c、38d、38e(38c、38dは図示しない)に入力される。アップコンバータ38a、38b、…38eの出力は可変移相器40a、40b、40c、40d、40e(40c、40dは図示しない)、可変減衰器42a、42b、42c、42d、42e(42c、42dは図示しない)をこの順番に介して増幅器44a、44b、44c、44d、44e(44c、44dは図示しない)に入力される。増幅器44a、44b、…44eの出力はセレクタ46a、46b、…46eの送信側端子を介してアンテナ素子24a、24b、…24eに入力される。
【0021】
マルチプレクサ/デマルチプレクサ50は、
図7を参照して後述するアンテナ選択回路60から与えられる1つの送信信号を複数のアンテナ素子24a~24eのそれぞれに分配(デマルチプレクス)する。一方、マルチプレクサ/デマルチプレクサ50は、複数のアンテナ素子24a~24eのそれぞれからの複数の受信信号を1つの受信信号に合成(マルチプレクス)する。
【0022】
無線信号の周波数帯域は極超短波、マイクロ波、ミリ波、サブミリ波等を利用することができるが、一実施形態では、アレイアンテナ18a~18dはIEEE802.11adの規格をベースにしたWiGig(登録商標)用のアンテナを想定する。そのため、アレイアンテナ18a~18dのそれぞれのアンテナ素子24a~24eは60GHzの無線信号を送受信する。受信時、アンテナ素子ダウンコンバータ36a~36eまでは60GHzの受信信号が伝達され、ダウンコンバータ36a~36eにより60GHzの受信信号が低周波数、例えば10GHzの受信信号に周波数変換され、10GHzの受信信号がマルチプレクサ/デマルチプレクサ50に供給される。送信時、マルチプレクサ/デマルチプレクサ50から10GHzの送信信号がアップコンバータ38a~38eに供給され、アップコンバータ38a~38eにより10GHzの送信信号が60GHzの送信信号に周波数変換され、アップコンバータ38a~38eからアンテナ素子24a~24eまで60GHzの送信信号が伝達される。
【0023】
セレクタ46a~46eとセレクタ48a~48eは
図7を参照して後述するシステムコントローラ64により連動して制御される。受信時は、セレクタ46a~46eとセレクタ48a~48eにより、増幅器30a~30e、可変減衰器32a~32e、可変移相器34a~34e、ダウンコンバータ36a~36e側の回路部分が選択され、送信時は、セレクタ46a~46eとセレクタ48a~48eにより、アップコンバータ38a~38e、可変移相器40a~40e、可変減衰器42a~42e、増幅器44a~44e側の回路部分が選択される。
【0024】
送信時、アップコンバータ38a~38eから出力される送信信号の位相が可変移相器40a~40eにより調整され、位相が調整された送信信号が可変減衰器42a~42eに供給される。送信信号の振幅が可変減衰器42a~42eにより調整され、振幅が調整された送信信号が増幅器44a~44eに供給される。送信信号の電力が増幅器44a~44eにより増幅され、電力が増幅された送信信号がセレクタ46a~46eを介してアンテナ素子24a~24eに供給される。
【0025】
受信時、アンテナ素子24a~24eが受信した受信信号の電力が増幅器30a~30eにより増幅され、電力が増幅された受信信号が可変減衰器32a~32eに供給される。受信信号の振幅が可変減衰器32a~32eにより調整され、振幅が調整された受信信号が可変移相器34a~34eに供給される。受信信号の位相が可変移相器34a~34eにより調整され、位相が調整された受信信号がダウンコンバータ36a~36eに供給される。
【0026】
増幅器30a~30eにはそれぞれ異なる特性が予め設定されている。同様に、可変減衰器32a~32e、可変移相器34a~34e、可変移相器40a~40e、可変減衰器42a~42e、増幅器44a~44eにもアンテナ素子24a~24e毎にそれぞれ異なる特性が予め設定されている。
【0027】
複数のアンテナ素子24a~24eにより送受信される送受信信号それぞれに対して、位相および振幅の調整や電力の増幅を行うことにより、アレイアンテナ18の指向性を制御することができる。位相および振幅の調整量や電力の増幅量を電波環境に応じて適応的に変えてもよいが、本実施形態では指向性は固定でよく、位相および振幅の調整量や電力の増幅量は予め決めた値に設定されている。なお、可変減衰器32a~32e(又は42a~42e)と可変移相器34a~34e(又は40a~40e)はいずれか一方のみでもよい。
【0028】
[システム構成]
図7はパーソナルコンピュータ8のシステム構成の一例を示す。アレイアンテナ18a~18dそれぞれのアンテナ回路26a~26dがアンテナ選択回路60に接続される。温度センサ20a~20dの出力信号がアンテナ選択回路60に供給される。アンテナ選択回路60は無線通信回路62に接続される。一実施例では、マルチインプットマルチアウトプット(Multi Input Multi Output:MIMO)方式が採用され、無線通信回路62は複数、例えば3つの無線信号rf1、rf2、rf3をアンテナ選択回路60に対して送受信する。非MIMO方式の場合は、無線通信回路62は1つの無線信号rf1をアンテナ選択回路60に対して送受信する。MIMO方式の場合、無線信号の数は2でも、4以上でもよい。アンテナ回路26a~26dの電源は無線信号rf1、rf2、rf3に重畳して無線通信回路62から供給される。温度センサ20a~20dの電源も無線信号rf1、rf2、rf3から得られ、図示しない電源ラインを介してアンテナ選択回路60から温度センサ20a~20dに供給される。
【0029】
無線通信回路62にはシステムコントローラ64が接続され、無線通信回路62の動作はシステムコントローラ64により制御される。システムコントローラ64はプロセッサ(CPU)を含む。システムコントローラ64は、アプリケーションプログラムを実行する、又は無線通信回路62にデータ送信コマンド、データ受信コマンド等を供給する。無線通信回路62は、送信コマンドに応じて送信データを変調する、又は受信コマンドに応じて受信データを復調する。システムコントローラ64はアンテナ回路26a~26dのセレクタ46a~46dとセレクタ48a~48dを連動して切り替え、アレイアンテナ18a~18dを送信アンテナ又は受信アンテナとして作用させる。
【0030】
パーソナルコンピュータ8が備えるアレイアンテナ18の個数(この場合、4)はMIMO方式の無線信号の数(この場合、3)より多い。すなわち、無線通信に使用されていない所謂予備のアレイアンテナが存在する。実施形態では、予備のアレイアンテナ18の数は1であるが、複数でもよい。アンテナ選択回路60は、4つのアレイアンテナ18の中の3つのアレイアンテナを使って3つの無線信号を送受信させる。アンテナ選択回路60は、無線通信に使用されているアレイアンテナ18が発熱した場合、発熱したアレイアンテナを予備のアレイアンテナに切り替え、発熱したアレイアンテナを非動作状態とする。アレイアンテナは非動作状態となると、放熱するので、温度が下がる。これにより、アレイアンテナの連続使用に伴う発熱を防止することができ、パーソナルコンピュータ8の筐体のアレイアンテナ付近が高温になり、ユーザが低温火傷を負うことがない。
【0031】
システムコントローラ64には、主メモリ66、グラフィクスコントローラ70、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラ(EC/KBC)72、ストレージ76、サウンドデバイス78等が接続される。ストレージはHDD、SSD等の不揮発性の大容量の記憶装置であり、プログラム等を格納している。システムコントローラ64はストレージ76からDRAM等からなる主メモリ66にロードされる様々なプログラムを実行する。
【0032】
グラフィックスコントローラ70は、種々の情報をLCDパネル12に表示させる。種々の情報はアレイアンテナの発熱に関する警告メッセージを含む。EC/KBC72は電力管理コントローラであり、キーボード16を制御するキーボードコントローラも内蔵したワンチップマイクロコンピュータとして実現されている。EC/KBC72は、電源回路74を制御してパワーオン又はパワーオフする機能を有する。システムコントローラ64は、種々のサウンドをスピーカ等のサウンドデバイス78から発生させる。種々のサウンドはアレイアンテナの発熱に関する警告を含む。なお、
図7は、LANデバイス、USBコネクタ等の発明に関係がない通常のパーソナルコンピュータが備える要素は図示省略する。
【0033】
[アンテナ選択回路60]
図8はアンテナ選択回路60の回路構成の一例を示す。アンテナ選択回路60は、無線通信回路62と接続されるポート(端子とも称する)RF1、RF2、RF3を備える。無線通信回路62から出力される無線信号rf1、rf2、rf3がそれぞれポートRF1、RF2、RF3に入力される。アレイアンテナ18a~18dの中のいずれか3つのアレイアンテナ(具体的には、アンテナ回路26のマルチプレクサ/デマルチプレクサ50)から出力される3つの無線信号rf1、rf2、rf3はそれぞれポートRF1、RF2、RF3から無線通信回路62に出力される。
【0034】
ポートRF1はオン/オフスイッチ(以下単にスイッチと称する)82-1、84-1、86-1、88-1をそれぞれ介してアレイアンテナ18a~18d(具体的には、アンテナ回路26のマルチプレクサ/デマルチプレクサ50)に接続される。ポートRF2はスイッチ82-2、84-2、86-2、88-2をそれぞれ介してアレイアンテナ18a~18dに接続される。ポートRF3はスイッチ82-3、84-3、86-3、88-3をそれぞれ介してアレイアンテナ18a~18dに接続される。
【0035】
無線信号rfの数が1又は2の場合は、アンテナ選択岐路60は1つのポートRF1又は2つのポートRF1、RF2のみを設ければよい。無線信号rfの数が4以上の場合は、アンテナ選択岐路60は対応するポートRF4、…を増設し、各ポートRF1、RF2、RF3、RF4、…をアレイアンテナ18a~18dに接続するスイッチを増設すればよい。アレイアンテナの数は無線信号の数より多ければよく、5以上であってもよい。
【0036】
スイッチ制御回路80には温度センサ20a、20b、20c、20dの検知信号が供給される。スイッチ制御回路80には接続制御テーブル90を記憶するメモリも接続される。スイッチ制御回路80は、温度センサ20a、20b、20c、20dの検知信号と接続制御テーブル90に応じて、スイッチ82-1~82-3、84-1~84-3、86-1~86-3、88-1~88-3をオン/オフする。スイッチ制御回路80はプロセッサ(CPU)により構成されてもよいし、ロジック回路により構成されてもよい。
【0037】
送受信に使用される3つのアレイアンテナそれぞれに接続される3つのスイッチはいずれか1つがオンされ、残りの2つがオフされる。送受信に使用されない1つのアレイアンテナに接続される3つのスイッチはいずれもオフされる。すなわち、各アレイアンテナ(例えばアレイアンテナ18a)に接続される3つのスイッチ(例えば、スイッチ82-1、82-2、82-3)の中の2つ以上がオンされることはない。3つのスイッチは1つだけがオンされるか、又は3つともオフされる。これにより、無線信号rf1が4つのアレイアンテナ18a~18dの中のいずれか1つのアレイアンテナを用いて送受信され、無線信号rf2が残りの3つのアレイアンテナの中のいずれか1つのアレイアンテナを用いて送受信され、無線信号rf3が残りの2つのアレイアンテナの中のいずれか1つのアレイアンテナを用いて送受信される。
【0038】
スイッチ制御回路80、接続制御テーブル90を記憶するメモリの電源も無線信号rf1、rf2、rf3から得られる。
[MIMO]
図9はMIMO通信の一例の原理を示す。ここでは、2つの無線信号によるMIMO通信を示す。
図9(a)に示すように、送信装置は2つの送信アンテナを備え、受信装置は2つの受信アンテナを備える。送信装置は同一周波数の2つの送信信号を2つの送信アンテナから同一のタイミングで送信する。複数の信号を同一周波数、同一タイミングで送信することは空間分割多重(Spatial Division Multiplexing:SDM)と称される。送信装置の第1送信アンテナから送信される第1送信信号T1は受信装置の第1受信アンテナで受信されるとともに、受信装置の第2受信アンテナでも受信される。同様に、送信装置の第2送信アンテナから送信される送信信号T2も受信装置の第1受信アンテナで受信されるとともに、受信装置の第2受信アンテナでも受信される。第1送信アンテナから第1受信アンテナまでの伝達関数をh11とし、第1送信アンテナから第2受信アンテナまでの伝達関数をh12とし、第2送信アンテナから第1受信アンテナまでの伝達関数をh21とし、第2送信アンテナから第2受信アンテナまでの伝達関数をh22とすると、受信信号R1、R2は
図9(b)に示すように表される。ここで、n1、n2は受信信号R1、R2に含まれるノイズである。受信側では受信信号R1、R2から送信信号T1、T2を推定することができる。
【0039】
MIMO通信では、第1送信アンテナと第2送信アンテナから同じ情報を送信する場合、情報伝送の信頼性(伝送品質)を向上させることができる。また、第1送信アンテナと第2送信アンテナから異なる情報を送信する場合、1つの無線信号による非MIMO通信に比べて、2つの無線信号によるMINO通信では伝送速度を2倍にすることができる。
【0040】
[無線通信動作]
次に、実施形態による無線通信の一例を
図10~
図15を参照して説明する。
図10はスイッチ制御回路80の動作の一例を示すフローチャートである。
図11~
図15はスイッチ制御回路80が参照する接続制御テーブル90の内容の変遷の一例を示す。
【0041】
パーソナルコンピュータ8の電源がオンされると、
図7に示す各部が動作開始し、温度センサ20a~20dは温度を測定し、検知信号を出力する。
ステップ112で、スイッチ制御回路80は温度センサ20a~20dの出力を受信する。検知信号は測定温度が許容温度以上であるか否かを示すものでよいし、測定温度そのものを示すものでもよい。
【0042】
ステップ114で、スイッチ制御回路80は、温度センサ20a~20dからの検知信号に応じてアレイアンテナ18a~18dの使用が可であるか不可であるかを判断する。具体的には、スイッチ制御回路80はアレイアンテナ18a~18dの温度が許容温度以上でない場合、アレイアンテナ18a~18dの使用を可とし、アレイアンテナ18a~18dの温度が許容温度以上である場合、アレイアンテナ18a~18dの使用を不可とする。ステップ114で、さらに、スイッチ制御回路80は、アレイアンテナ18a~18dの使用が可であるか不可であるかを示す使用可否情報を接続制御テーブル90に書き込む。
【0043】
この時の接続制御テーブル90の一例を
図11に示す。接続制御テーブル90はアレイアンテナ18a~18d毎の接続状態情報と使用可否情報を記憶する。接続状態情報はアレイアンテナ18a~18dが無線通信回路62に接続されているか否か、すなわち無線信号の送受信に使用されているか否かを示す。接続状態情報の初期値は未接続である。使用可否情報の初期値は使用可でも使用不可でもよい。
図11の接続制御テーブル90は、アレイアンテナ18a~18dのいずれも無線通信回路62に接続されておらず、アレイアンテナ18a~18dのいずれも使用可であることを示す。
【0044】
ステップ116で、スイッチ制御回路80は接続制御テーブル90の使用可否情報を参照してスイッチ82-1~82-3、84-1~84-3、86-1~86-3、88-1~88-3をオン/オフし、ポートRF1、RF2、RF3をアレイアンテナ18a、18b、18c、18dのいずれかに接続する。
図11に示すようにアレイアンテナ18a~18dのいずれも使用可であるので、ポートRF1、RF2、RF3はどのアレイアンテナ18a、18b、18c、18dに接続してもよいが、ここでは、スイッチ82-1をオンしてポートRF1をアレイアンテナ18aに接続し、スイッチ84-2をオンしてポートRF2をアレイアンテナ18bに接続し、スイッチ86-3をオンしてポートRF3をアレイアンテナ18cに接続する。アレイアンテナ18dは無線通信回路62とは未接続であり、予備のアンテナとなる。ステップ116で、さらに、スイッチ制御回路80は、アレイアンテナ18a~18d毎の接続状態情報を接続制御テーブル90に書き込む。この時の接続制御テーブル90の一例を
図12に示す。
図12の接続制御テーブル90は、アレイアンテナ18a~18dのいずれも使用可であり、アレイアンテナ18aがポートRF1に接続され、アレイアンテナ18bがポートRF2に接続され、アレイアンテナ18cがポートRF3に接続され、予備のアレイアンテナ18dが未接続であることを示す。
【0045】
ステップ118で、無線信号rf1、rf2、rf3はそれぞれアレイアンテナ18a、18b、18cを用いて送受信され、無線通信が開始される。
ステップ122で、スイッチ制御回路80は、無線通信が開始されてから一定時間、例えば10秒経過したか否か判定する。一定時間が経過しない場合、ステップS122で動作待機となる。一定時間が経過した場合、ステップ124で、スイッチ制御回路80は温度センサ20a~20dの出力を受信する。
【0046】
ステップ126で、スイッチ制御回路80は、ステップ114と同様に、温度センサ20a~20dからの検知信号に応じてアレイアンテナ18a~18dの温度が許容温度以上であるか否かを判断する。ここでは、アレイアンテナ18aの温度が許容温度以上になったとする。アレイアンテナ18aの温度が許容温度以上であるので、アレイアンテナ18aの使用が可から不可に変化する。ステップ126で、さらに、スイッチ制御回路80は、アレイアンテナ18a~18dの使用が可であるか不可であるかを示す使用可否情報を接続制御テーブル90に書き込む(更新する)。この時の接続制御テーブル90の一例を
図13に示す。接続制御テーブル90の接続状態情報は
図12と同じであるが、アレイアンテナ18aの使用可否情報が使用可から使用不可に変更されている。
【0047】
ステップ132で、スイッチ制御回路80は、無線通信回路62に接続され無線信号の送受信を行っているアレイアンテナ(ここでは、アレイアンテナ18a、18b、18c)の少なくとも1つが使用不可であるか否か判定する。アレイアンテナ18a、18b、18cのいずれもが使用可である場合、処理はステップ122に戻る。
【0048】
アレイアンテナ18a、18b、18cの少なくとも1つが使用不可である場合、ステップ134で、スイッチ制御回路80は接続制御テーブル90の使用可否情報を参照してスイッチ82-1~82-3、84-1~84-3、86-1~86-3、88-1~88-3をオン/オフし、使用不可のアレイアンテナ(ここでは、アレイアンテナ18a)に接続されているポートRF1を使用可能である予備のアレイアンテナ(ここでは、アレイアンテナ18d)に接続し直す。すなわち、スイッチ制御回路80は、スイッチ84-2をオンのままとしてポートRF2をアレイアンテナ18bに引き続き接続し、スイッチ86-3をオンのままとしてポートRF3をアレイアンテナ18cに引き続き接続し、ポートRF1をアレイアンテナ18dに接続するようにスイッチ82-1をオフし、スイッチ88-1をオンする。アレイアンテナ18aはいずれのポートRF1、RF2、RF3とも未接続となるが、使用不可であるので、予備のアンテナとはなり得ない。ステップ134で、さらに、スイッチ制御回路80は、アレイアンテナ18a~18d毎の接続状態情報を接続制御テーブル90に書き込む。この時の接続制御テーブル90の一例を
図14に示す。
図14の接続制御テーブル90は、アレイアンテナ18aが使用不可であり、アレイアンテナ18b~18dが使用可であり、アレイアンテナ18aが未接続であり、アレイアンテナ18bがポートRF2に接続され、アレイアンテナ18cがポートRF3に接続され、アレイアンテナ18dがポートRF1に接続されることを示す。
【0049】
この後、無線信号rf1、rf2、rf3がそれぞれアレイアンテナ18d、18b、18cを用いて送受信され、無線通信が継続される。この状態では、予備のアンテナが存在しないので、もしも、アレイアンテナ18d、18b、18cのいずれかが高温になると、無線通信が継続できない。しかし、非動作状態のアレイアンテナ18aは放熱するので、時間が経過すると、温度センサ20aの測定温度が低下し、ステップ126の使用可否の決定処理においてアレイアンテナ18aが使用可となり、未接続のアレイアンテナ18aが予備のアレイアンテナとなり得る。この時の接続制御テーブル90を
図15に示す。このため、この後、アレイアンテナ18d、18b、18cのいずれかが高温になると、当該アレイアンテナは使用不可となるが、高温のアレイアンテナの代わりにアレイアンテナ18aを用いて無線通信を継続することができる。
【0050】
実施形態によれば、送受信する無線信号の数より多い数のアレイアンテナ18a~18dを設け、アレイアンテナ18a~18dの温度を測定する複数のセンサ20a~20dをアレイアンテナ18a~18d毎に設け、送受信を行っているアレイアンテナ18a~18dの温度が高くなり過ぎる前に送受信に使用するアレイアンテナ18a~18dを切り替えることにより、アレイアンテナ18a~18dの発熱を未然に防止することができる。このため、アレイアンテナの温度が高温になることによる送受信信号の通信品質の低下が生じない。また、アレイアンテナ18a~18dを内蔵するパーソナルコンピュータ8の筐体が高温になり、ユーザが低温火傷することも防止できる。
【0051】
[変形例]
システムコントローラ64はアンテナ選択回路60に接続されているので、システムコントローラ64はアンテナ選択回路60の動作、あるいは接続制御テーブル90の内容を監視することができる。そのため、無線通信回路62に接続され無線信号の送受信を行っているアレイアンテナの少なくとも1つが使用可から使用不可に変化した場合、システムコントローラ64は、ステップ134で、アレイアンテナが発熱したことをユーザに警告するメッセージをLCDパネル12で表示させ、又は警告音をサウンドデバイス78から発生させてもよい。さらに、送受信を行っているアレイアンテナの中で温度が許容温度以上に上昇したアレイアンテナの数が予備のアレイアンテナの数より多く、予備のアレイアンテナに切り替えることが不可能な場合は、上記とは異なる警告メッセージをLCDパネル12で表示させ、又は警告音をサウンドデバイス78から発生させてもよい。
【0052】
図11~
図15では無線信号rfの数は3を想定しているので、アレイアンテナ18の数は4以上であればよい。アレイアンテナ18の数が4又は5であれば、送受信を行うアレイアンテナのいずれかが高温になった場合、予備のアレイアンテナの数は1又は2であるので、高温のアレイアンテナの代わりとして予備のアレイアンテナを選択する際の選択肢はほとんどない。しかし、例えば、アレイアンテナ18の数が6以上で、予備のアレイアンテナの数が3以上の場合は、高温のアレイアンテナの代わりとして予備のアレイアンテナを選択する際の選択肢は種々考えられる。例えば、多数のアレイアンテナが均等に使用されるように順番に選択してもよいし、多数のアンテナの特性(無線特性や放熱特性等)に差がある場合は、選択する優先順位を決めておいてもよい。これを実現するため、接続制御テーブル90に優先順位を記録するフィールドを設けてもよい。あるいは、アレイアンテナ18a~18d毎の過去の発熱履歴(最高温度等)を記録するフィールドを設けてもよい。接続制御テーブル90を記憶するメモリが揮発性メモリを利用する場合は、電源オフの際、接続制御テーブル90をストレージ76に一旦保存して、電源オン時にストレージ76からメモリに書き込んでもよい。
【0053】
送受信するアレイアンテナ18を切り替えるタイミングはステップ132の使用不可の検出直後でも良いが、無線信号rfが搬送するデータが途切れる際、例えばウェブページのデータを受信している場合、1ページのデータ受信が完了するまで待ってもよい。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0055】
18a~18d…アレイアンテナ、20a~20d…温度センサ、24a~24e…アンテナ素子、26a~26d…アンテナ回路、60…アンテナ選択回路、62…無線通信回路、82-1~82-3、84-1~84-3、86-1~86-3、88-1~88-3…スイッチ、80…スイッチ制御回路、90…接続制御テーブル