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特許7059129情報表示装置、情報表示プログラム及び情報表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】情報表示装置、情報表示プログラム及び情報表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/38 20180101AFI20220418BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20220418BHJP
   G06F 11/32 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G06F8/38
G06F11/34 138
G06F11/32 130
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018123463
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020004113
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 伊知郎
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-97473(JP,A)
【文献】特開2016-4576(JP,A)
【文献】和田 亮佑 ほか,「プロセスマイニングを用いたサービスの設計と運用のギャップの抽出について」,電子情報通信学会技術研究報告,一般社団法人電子情報通信学会,2018年01月11日,第117巻, 第381号,pp.97-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/048-3/0489
G06F 8/00-8/77
G06F 11/32-11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーがシステムを使用した際の画面使用データを収集して実際の画面遷移を表す実態画面遷移を生成する実態画面遷移生成部と、
設計段階で想定された設計画面遷移及び前記実態画面遷移を取り込み両者の相違点から画面遷移の想定外使用を抽出する想定外使用抽出部と、
所定の判定基準を用いて前記想定外使用における改善箇所を特定する改善箇所特定部と、
前記改善箇所を画面表示に反映する改善箇所表示部と、
を備える情報表示装置。
【請求項2】
画面の遷移元及び遷移先の情報を持つ操作ログを格納する操作ログデータベースを備え、
前記実態画面遷移生成部は、前記操作ログを収集、解析して解析結果に基づいて実際の画面遷移をグラフ化した実態フローグラフを生成する請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記操作ログデータベースは、操作ログの各レコードにユーザ名の情報を付加して操作ログを格納する請求項2に記載の情報表示装置。
【請求項4】
前記想定外使用抽出部は、設計段階で想定された想定フローグラフ及び前記実態フローグラフを所定のアルゴリズムで比較し、両者の差分から得られる部分グラフを、設計段階に想定されなかった想定外グラフとして抽出する請求項2又は3に記載の情報表示装置。
【請求項5】
前記改善箇所特定部は、前記想定外グラフの数学的特徴を計算して当該数学的特徴が所定の基準特徴を超える箇所を、前記改善箇所として特定する請求項4に記載の情報表示装置。
【請求項6】
前記改善箇所特定部は、前記数学的特徴として前記想定外グラフの各頂点間の距離を計算して最大の距離を持つ頂点間が所定の基準特徴を超える箇所を、前記改善箇所として特定して、当該改善箇所に画面間のリンク情報を生成する請求項5に記載の情報表示装置。
【請求項7】
前記リンク情報を画面遷移の発生頻度と前記想定外グラフ上のパス長と対応付けて格納するリンク情報データベースを備える請求項6に記載の情報表示装置。
【請求項8】
前記改善箇所表示部は、前記リンク情報データベースから前記リンク情報を読み出して、当該リンク情報に対応する画面間に相互リンクの表示または消去を行う請求項7に記載の情報表示装置。
【請求項9】
実態画面遷移生成部は、前記実態画面遷移を生成する際、画面遷移の出現頻度を逆数に変換する請求項1~8のいずれかに記載の情報表示装置。
【請求項10】
ユーザーがシステムを使用した際の画面使用データを収集して実際の画面遷移を表す実態画面遷移を生成する実態画面遷移生成処理と、
設計段階で想定された設計画面遷移及び前記実態画面遷移を取り込み両者の相違点から画面遷移の想定外使用を抽出する想定外使用抽出処理と、
所定の判定基準を用いて前記想定外使用における改善箇所を特定する改善箇所特定処理と、
前記改善箇所を画面表示に反映する改善箇所表示処理と、
をコンピュータに実行させる情報表示プログラム。
【請求項11】
ユーザーがシステムを使用した際の画面使用データを収集して実際の画面遷移を表す実態画面遷移を生成する実態画面遷移生成処理と、
設計段階で想定された設計画面遷移及び前記実態画面遷移を取り込み両者の相違点から画面遷移の想定外使用を抽出する想定外使用抽出処理と、
所定の判定基準を用いて前記想定外使用における改善箇所を特定する改善箇所特定処理と、
前記改善箇所を画面表示に反映する改善箇所表示処理と、
をコンピュータに実行する情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画面遷移を行いつつ画面に情報を表示する情報表示装置、情報表示プログラム及び情報表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に電力系統における各種システムでは、給電・制御等の業務計算に必要な諸元値を画面より入力してこれらを画面に表示する。さらにシステムは、諸元値を入力した画面を操作画面として、種々の処理を実行し、処理結果を連系先へと送信する。例えば、給電業務を担うシステムの場合、需要予測・再エネ発電量予測などの不確実な要素を予測し、その後、最適化問題を解いて火力発電機等の計画を作成して、当該計画を発電所などへ通知する。
【0003】
このうち、需要予測システムを例にとって具体的に説明すると、まず需要家の契約電力や所在地などの諸元値を入力し、続いて、過去の需要実績と気象実績の相関関係を回帰分析などの統計的機械学習手法によりモデル化する。次に、得られたモデルに対して翌日以降の気象予報を入力することで翌日需要の予測値を求める。これらの操作は、入力諸元やパラメタが多く、また、得られた結果をグラフなどで確認する必要もある。そのため、電力系統における各種システムでは、操作画面を切り替えて画面遷移を行いながら、複数の操作が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-110362号公報
【文献】特開2017-182266号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】WilM.P.van der Aalst Process Mining:Data Science in Action(Second Edition),Spriger,2016,ISBN-13:978-3662498507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、電力系統におけるシステムの規模が大きくなり、画面に入力されるデータ項目数は増大し、システムを運用するユーザ(以下、単にユーザーと呼ぶ)の操作手順は複雑化している。そのため、一つの処理が単一の操作画面だけで済むことは無く、操作画面は複数にまたがらざるを得ない。しかも、システムの大規模化が進んでいるため、画面遷移は回数が増大し、画面遷移自体も多様化する傾向にある。
【0007】
その結果、オペレーションの円滑な運営が困難となり、操作ミスも発生し易くなる。そこで、無駄な遷移の少ない画面遷移を、想定画面遷移として設計段階で予め設計することが行われている。これにより、ユーザーは想定された画面遷移に従って複数の操作画面を的確に遷移していくことができ、各画面にて所定の操作を実施することが可能である。
【0008】
しかしながら、現実のシステムを取り巻く環境は変化するため、設計段階では想定しえない画面遷移が必要となることも多い。このような場合には、ユーザーは、想定された画面遷移を行うことに比べて、非効率な画面遷移を実施せざるを得ない。その結果、円滑な運営と操作ミスの回避を目的として設定された想定画面遷移が、かえって、円滑な運営の障害要因や、操作ミスの誘発要因となるおそれがある。このような状況を背景として、設計段階では想定されていなかったユースケースにより非効率な画面遷移が発生した場合、非効率な画面遷移について、自動的に改善することができる技術が必要とされる。
【0009】
本実施形態は、上記のニーズを満たすために提案されたものであり、設計段階では想定外であった画面遷移に関して自動的に改善箇所を抽出することにより、非効率な画面遷移を省いて作業性の向上を図り、オペレーションの円滑な運営と操作ミスの抑制に寄与することが可能な情報表示装置、情報表示プログラム及び情報表示方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するために、本実施形態の情報表示装置は、次の構成要素(a)~(d)を備える。
(a) ユーザーがシステムを使用した際の画面使用データを収集して実際の画面遷移を表す実態画面遷移を生成する実態画面遷移生成部。
(b)設計段階で想定された設計画面遷移及び前記実態画面遷移を取り込み両者の相違点から画面遷移の想定外使用を抽出する想定外使用抽出部。
(c)所定の判定基準を用いて前記想定外使用における改善箇所を特定する改善箇所特定部。
(d) 前記改善箇所を画面表示に反映する改善箇所表示部。
【0011】
本発明の実施形態には、上記各部の処理をコンピュータに実行させる情報表示として捉えた実施形態と、上記各部の処理をコンピュータが実行する情報表示方法として捉えた実施形態とが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態の適用対象となる需要予測システムの画面遷移設計を示す図
図2】第1の実施形態のブロック図
図3】第1の実施形態を適用したシステムの画面遷移を記録した操作ログ図
図4】第1の実施形態におけるリンク設定DB内のデータ例を示す図
図5】第1の実施形態のフローチャート
図6図3の操作ログ図から抽出した実態フロー遷移図
図7図1の想定フロー遷移例を示す図
図8】第1の実施形態において設計段階で想定していない想定外フローを抽出した図
図9】想定外フローに含まれる画面間の距離を計算した距離行列を示す図
図10】第1の実施形態において改善箇所にリンクを追加した画面遷移を示す図
図11】第1の実施形態において相互リンクの需要予測実行画面側イメージを示す図
図12】第4の実施形態におけるリンク設定DB内のデータ例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
(第1の実施形態)
(概要)
第1の実施形態に係る情報表示装置12は、例えば、画面遷移設計を持つ需要予測システムに適用されるものであり、パーソナルコンピュータ等の計算機から構成される装置である。情報表示装置12は、システム上に搭載されてもよいし、システム外で静的に実行されてもよい。第1の実施形態は、各構成要素が実行する処理をコンピュータに実行させる情報表示プログラムとしても捉えることができる。また、実施形態の態様としては、情報表示装置及び情報表示プログラムに加えて、各処理をコンピュータが実行する情報表示方法として捉えることも可能である。
【0014】
図1のグラフの各ノードは、需要予測システムにて遷移する画面を表し、枝は始点の画面から終点の画面への直接遷移が可能であることを示す。需要予測システムにて実施される需要予測業務には業務メニュー画面から2つの流れがある。図1の右側の流れは、業務メニュー画面から設備メニュー画面に遷移し、次に需要家編集画面へ遷移し、需要家の情報を編集する。必要があれば需要家一覧確認画面へ遷移して、ここで設定値一覧を確認し終了する。以上のような画面遷移を行う業務は、通常、日々実施されることはない。
【0015】
一方、図1の左側の流れは、毎日行われる通常業務の流れである。図1の左側のフローでは、業務メニュー画面から需要実績画面に遷移し、昨日までの実績データの傾向を確認する。次に気象実績画面へ遷移して気温等の気象の実績データを確認する。続いて、気象予報画面へ遷移して明日以降の気象予報データを確認する。最後に需要予測実行画面に遷移して予測アルゴリズムを実行し、結果に問題が無ければ終了する。
【0016】
(構成)
第1の実施形態の構成について、図2のブロック図を用いて説明する。図2に示すように、第1の実施形態には、各種の処理を実施する構成要素として、実態画面遷移生成部2、想定外使用抽出部5、判定情報入力部6、改善箇所特定部7、改善箇所表示部9及び表示閾値入力部11が設けられている。また、情報を格納するデータベースとして、操作ログDB1、実態フローDB3、想定フロー遷移DB4、リンク情報DB8及び設計画面遷移DB10が設けられている。
【0017】
(操作ログDB)
データベースのうち、操作ログDB1は、運用時の画面使用データである操作ログを格納する。操作ログとは画面の遷移元と遷移先の情報を持ち、画面遷移が発生した時間を記録するものである。このような操作ログを蓄積する機能は、一般的な計算機システムに具備されている。図3は需要予測システムの操作ログ例を示している。
【0018】
(実態画面遷移生成部及び実態フローDB)
実態画面遷移生成部2は、操作ログDB1から操作ログを収集、解析して、解析結果に基づいて実際の画面遷移をグラフ化した実態フローグラフを生成する。実態フローDB3は、実態画面遷移生成部2が抽出した実態フローグラフを格納する。
【0019】
(想定フロー遷移DB及び想定外使用抽出部)
想定フロー遷移DB4は、設計段階で想定された想定フローグラフを格納する。想定外使用抽出部5は、想定フロー遷移DB4から設計段階で想定された想定フローグラフを、実態フローDB3から実態フローグラフを、それぞれ取り込み、所定のアルゴリズムで比較して、両者の差分から得られる部分グラフを、設計段階には想定されなかった想定外グラフとして抽出する。
【0020】
(改善箇所特定部及び判定情報入力部)
改善箇所特定部7は、判定情報入力部6から判定基準を受け取り、判定基準を用いて前記の想定外グラフにおける改善箇所を特定する。改善箇所特定部7が特定する改善箇所とは、想定外グラフの数学的特徴、例えば、想定外グラフの各頂点間の距離を計算して、最大の距離を持つ頂点間が所定の基準特徴つまり判定基準を超える箇所とする。また、改善箇所特定部7は、特定した改善箇所に画面間のリンク情報を生成する。
【0021】
(リンク情報DB)
リンク情報DB8は、改善箇所特定部7で生成されたリンク情報を格納する。図4にリンク情報DB8内のデータ例を示す。図4に示すように、リンク情報DB8は、画面遷移の発生頻度と想定外グラフ上のパス長と対応付けて、リンク情報を格納する。
【0022】
(設計画面遷移DB及び表示閾値入力部)
設計画面遷移DB10は、第1の実施形態の適用対象である需要予測システムの画面遷移設計そのものである。表示閾値入力部11は、画面遷移の発生頻度または想定外グラフの各頂点間の距離情報またはその両方に関する表示閾値を入力する。
【0023】
(改善箇所表示部)
改善箇所表示部9は、改善箇所であるリンク情報を画面表示に反映する。改善箇所表示部9は、リンク情報DB8からリンク情報を読み出して、リンク情報に対応する画面間に相互リンクの表示または消去を行う。また、改善箇所表示部9は、表示閾値入力部11から入力された発生頻度または距離情報またはその両方に関する表示閾値を超えるものについて、対象の画面間に相互遷移を追加して表示する。
【0024】
(作用)
第1の実施形態の動作について、図5のフローチャートをもとに説明する。ST1では最初に需要予測システムの操作ログを取得する。次にST2では実態画面遷移生成部2が実態フローを抽出する。実態画面遷移生成部2は、操作ログDB1より操作ログを読み出し、ログ中に高頻度で発生している遷移枝を抽出する。
【0025】
抽出される遷移枝の発生頻度に関して、高頻度であるとの基準としては、次のようなものがある。例えば、ログ中の存在数が所定の閾値、具体的には900回以上であることなどが考えられる。このとき、時間帯を限定した評価をしてもよい。また、全体に含まれる比率、たとえば全遷移の中で0.5%以上などの評価を、高頻度の基準としてもよい。
【0026】
さらには、プロセスマイニングとよばれるプロセスモデルを推定する機械学習アルゴリズムを用いて、高頻度の箇所を自動的に示すようにしてもよい。図5のST3では、このようにして実態画面遷移生成部2によって得られた実態フローのグラフ構造データが、実態フローDB3に格納される。
【0027】
ここで、実態画面遷移生成部2にて図6の実態フローが得られたものと仮定する。図6の実態フローは、具体的には次のような運用によって得られたものである。最初に通常運用で需要実績・気象実績・気象予報・需要予測実行の各画面を経由して需要予測を実行する(図6の左側の流れ)。
【0028】
このとき、予測結果に問題が確認され、想定外使用がなされると仮定する。予測結果に影響する要因としては、予測対象の需要家情報の不備や誤設定が考えられる。例えば契約電力量が誤っていれば、予測結果の上下限値に影響がある。また、所在地情報に誤りも予測結果に影響する。例えば、所在地情報に誤りにより、東京地域の需要家の値を九州の気象データを用いて予測してしまう等の誤りにつながる。
【0029】
さらに、予測結果に問題が確認されたということであれば、計算時間の短縮や結果の安定を図ることが要請されるので、これを実現すべく需要家をグループ化して予測することも考えられる。そこで、需要家のグループ化予測も、予測結果にて確認される問題に含めるものとする。
【0030】
上記のようにして、予測結果に問題が発生した場合、ユーザーは需要家編集画面あるいは需要家一覧画面に移動して設定し直し、再度、需要予測実行画面に戻って予測を実行しなくてはならない。現状の設計では、需要予測実行画面から需要家編集画面あるいは需要家一覧画面へ直接遷移することはできない。そのため、ユーザーは、気象予報画面・気象実績画面・需要実績画面・業務メニュー画面へと、通常の画面遷移を逆にたどる形で、画面遷移を遡る必要がある。
【0031】
次に、想定外使用抽出部5は、実態フローと想定フローを比較し、その差分を計算することで、設計段階では想定されなかったフローを見つけ出す。図5のST4では想定外使用抽出部5が、想定フロー遷移DB4から、図7に示す想定フローグラフを読み出す。図7の想定フローグラフは設計段階でユーザが通常使用すると考えられるフローを記載したものであり、図1の画面遷移設計グラフの部分集合になる。図7の例では、後戻りのない順方向のフローのみが想定されている。
【0032】
想定外使用抽出部5は、想定フロー遷移DB4から読みだした想定フローグラフ(図7参照)と、実態フロー遷移DB3から読み出した実態フローグラフ(図6参照)の遷移枝集合を検査する。図5のST6では、想定フローグラフの枝集合に含まれず、実態フローグラフの枝にのみ含まれる枝要素からなる想定外グラフを、想定外使用抽出部5が抽出する。本実施形態の場合は図8が想定外グラフである。
【0033】
図5において、ST7では、想定外使用抽出部5は改善箇所判定部7に想定外グラフを送信する。ST8では、改善箇所判定部7は想定外使用抽出部5より想定外グラフを受信する。ST9では判定情報入力部6が外部から判定情報を受信する。判定情報入力部6が受信する判定情報は閾値6とする。ただし、判定情報は異なる他の数値であっても、またグラフの構造等を指定するものであってもよい。
【0034】
続いて、改善箇所判定部7は想定外使用抽出部5より受信した想定外グラフに関し、前記判定情報を用いて改善箇所を判定する。すなわち、図5のST10では、改善箇所特定部7は想定外グラフの各頂点間の距離を計算して改善度計算を行い、改善箇所を判定する。各頂点間の距離は、例えば、各頂点を開始点として深さ優先探索を行うことで計算できる。想定外グラフの枝は、設計段階では想定していなかった使用パターンの一部であり、この頂点間距離が離れているほど、画面遷移が「いったりきたり」の多い画面の組合せに相当する。
【0035】
本実施形態において、深さ優先探索による頂点間距離の計算結果を図9に示す。図9は各枝の重みを1とした場合の探索結果に相当するが、各枝の重みを設定することで、重要度を反映した探索結果を得ることができる。図9より、想定外グラフの最大の距離をもつ頂点間距離は、需要予測実行画面と需要家情報編集画面の「6」である。
【0036】
図5に戻り、ST11では、改善箇所特定部7が、上記の数値つまり想定外グラフの最大の頂点間距離を、判定情報入力部6から受信した閾値6と比較する。ここでは、想定外グラフにおける最大頂点間距離が需要予測実行画面と需要家情報編集画面との間で「6」なので、閾値6以上と判定される。
【0037】
従って、需要予測実行画面と需要家情報編集画面との間が、改善箇所として特定される。図5のST12では、改善箇所特定部7が特定した改善箇所である画面間の組を、リンク情報としてリンク情報DB8に格納する。リンク情報DB8内の各々のレコードは画面の組、発生頻度、距離情報の組からなる(図4参照)。
【0038】
図5のST13では、改善箇所表示部9が、設計画面遷移DB10から図1に示した画面遷移設計を読み出す。ST14では、改善箇所表示部9がリンク情報DB8から改善箇所であるリンク情報を読み出し、改善箇所であるリンク情報を画面表示に反映する。改善箇所表示部9は、リンク情報DB8からリンク情報を読み出して、リンク情報に対応する画面間に相互リンクの表示または消去を行う。ST15では、表示閾値入力部11から入力された発生頻度または距離情報またはその両方に関する表示閾値を超えるものについて、改善箇所表示部9が、対象の画面間に相互遷移を追加して表示する。
【0039】
図10は相互遷移追加後の画面遷移である。改善箇所表示部9は、追加した画面遷移を設計画面遷移DB10に書き戻す。図11は、改善箇所表示部9がリンク情報を画面表示に反映した場合の相互リンクの需要予測実行画面側イメージである。すなわち、需要予測実行画面に需要家編集画面側へのリンクを作成するだけではなく、需要家編集画面側へも同様に需要予測実行画面へのリンクを作成する。
【0040】
(効果)
第1の実施形態では、操作ログを解析して実態フローグラフを生成する実態画面遷移生成部2と、設計段階で想定された想定フローグラフ及び実態フローグラフの相違点から想定外グラフを抽出する想定外使用抽出部5と、所定の判定基準を用いて想定外グラフにおける改善箇所としてリンク情報を特定する改善箇所特定部7と、リンク情報を画面表示に反映する改善箇所表示部9とを備えることにより、設計段階では想定外であった画面遷移に関して自動的に改善箇所を抽出することができ、非効率な画面遷移を省いて作業性の向上を図ることが可能である。これにより、オペレーションの円滑な運営と操作ミスの抑制に寄与することができる。
【0041】
また、実態画面遷移生成部2は、ユーザーがシステムを使用した操作ログを収集して実際の画面遷移を表す実態フローグラフを生成するので、使用実態を正確に反映した画面遷移を生成することが可能である。しかも、実態画面遷移生成部2は、ログ中に高頻度で発生している遷移枝を抽出するので、効率良く実態フローグラフを生成することができる。
【0042】
想定外使用抽出部5は、想定フローグラフと実態フローグラフとの差分を計算することで、設計段階では想定されなかった想定外グラフを確実に見つけ出すことができる。従って、ユーザーによる画面遷移の想定外使用を的確に抽出することが可能である。
【0043】
改善箇所特定部7は、想定外グラフの各頂点間の距離を計算し、最大の距離を持つ頂点間が所定の基準特徴を超える箇所をリンク情報として特定し、改善箇所表示部がリンク情報を表示する。そのため、ユーザーは改善箇所を明確に把握することができ、作業性がより向上する。
【0044】
しかも、本実施形態では、リンク情報が、リンク情報DB8に格納されるので、リンク情報をいつでもリンク情報DB8から取り出すことができる。しかも、リンク情報は、画面遷移の発生頻度と想定外グラフ上のパス長と対応付けているので、リンク情報同士の比較も容易である。従って、改善箇所が複数にわたる場合であっても、改善箇所を確実に捉えることができる。その結果、非効率な画面遷移を徹底して排除することが可能であり、作業性が大幅に向上する。
【0045】
改善箇所表示部9は、リンク情報DB8からリンク情報を読み出し、対応する画面間に相互リンクの表示または消去を行うので、優れた作業性を確保することができる。これにより、オペレーションを円滑に運営することができ、操作ミスを確実に回避することが可能である。
【0046】
また、本実施形態では、表示閾値入力部11から入力された発生頻度または距離情報またはその両方に関する閾値を超えるものについて、改善箇所表示部9は、対象の画面間に相互遷移を追加して、追加した画面遷移を設計画面遷移DB10に書き戻す。このような処理を実施することで、該当の2画面間に相互リンク機能が発生し、両画面間の遷移が容易になる。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、実態画面遷移生成部2が操作ログDB1から実態フローグラフを抽出する際、画面遷移の出現頻度を逆数に変換する。
【0048】
これにより、第2の実施形態では、第1の実施形態のケースとは逆に頻度の少ない画面遷移を抽出することができる。従って、想定フロー遷移DB4内の想定フローグラフの枝に、該当する低頻度の遷移枝が含まれており、その遷移枝の出現頻度が所定の閾値を下回った場合に、該当する遷移枝を消去することが可能である。
【0049】
このような第2の実施形態によれば、無駄な画面遷移を想定フロー遷移DB4自体から削除するので、非効率な画面遷移が現れる機会を減らすことができる。よって、作業性がより向上し、オペレーションをスムーズに運営することができ、且つ操作ミスが発生する心配もない。
【0050】
(第3の実施形態)
図5のフローチャートは任意のタイミングで動作させることができる。システムのメンテナンス時にマニュアルで、本実施形態に係る情報表示装置を動作させることも可能であるが、定期的に情報表示装置を動作させるようにしてもよい。例えば、日単位・週単位・月単位などで画面遷移を自動的に再設計するようにしてもよい。このような実施形態によれば、非効率な画面遷移の削除を、定期的に実施することができ、優れた作業性を維持することが可能である。
【0051】
(第4の実施形態)
システムの使用者は2名以上であることが一般的である。通常、システムの運用には定型の手順はあるものの、個人ごとの傾向は避けがたい。そのため、本実施形態の効果も、個々人毎に異なる結果が得られることが望ましい。そこで、第4の実施形態では、操作ログDB1内の操作ログの各レコードに、図12のようにユーザ名の情報を付加することで、個人ごとの操作ログが抽出できるようにする。
【0052】
以上のような第4の実施形態では、抽出された個人ごとの操作ログに対して、図5のフローチャートにより本発明を適用することで個人ごとの改善箇所とリンク情報を得ることができる。従って、ログイン中のユーザ名にあわせてリンク情報を呼び出すことができ、個人の傾向を反映した画面遷移の自動改善が可能になる。
【0053】
(他の実施形態)
以上説明した実施形態は、本発明の実施形態の一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等な範囲に含まれる。
【0054】
上記の実施形態では、改善箇所表示部9がリンク情報を画面表示に反映する場合に、図11に示したように、相互リンクを張るだけとしたが、これに限らない。例えば、改善箇所表示部9は、リンク情報DB8内に蓄積されている画面の組、発生頻度、距離情報などに関しても、画面表示に反映するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…操作ログDB
2…実態画面遷移生成部
3…実態フローDB
4…想定フロー遷移DB
5…想定外使用抽出部
6…判定情報入力部
7…改善箇所特定部
8…リンク情報DB
9…改善箇所表示部
10…設計画面遷移DB
11…表示閾値入力部
12…情報表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12