(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】レイアウト設計装置及びレイアウト設計用プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/392 20200101AFI20220418BHJP
G06F 30/398 20200101ALI20220418BHJP
H01L 21/82 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G06F30/392
G06F30/398
H01L21/82 B
H01L21/82 T
H01L21/82 C
(21)【出願番号】P 2018182478
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】湯目 孝夫
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-151314(JP,A)
【文献】特開2000-285152(JP,A)
【文献】特開2005-149295(JP,A)
【文献】特開2006-113633(JP,A)
【文献】特開平09-069115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/30 -30/398
H01L 21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロセルを規定するマクロセル対応回路図データとマクロセル対応レイアウトデータとを含むマクロセル階層データである処理対象の階層データを、スタンダードセルによるスタンダードセル階層データへ変更するフラット化を行ってスタンダードセル対応配置データとスタンダードセル対応配線データを生成するフラット化手段と、
フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに基づき、階層再構築化の要否を判定する再構築要否判定手段と、
再構築が必要であると判定された場合に、前記フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、どのような階層とするかを定義する目的定義情報が与えられることに応じて、マクロセル階層データのマクロセル対応レイアウトデータをレイアウトデータとして再度構築する再構築手段と、
再構築が必要であると判定された場合には、前記再構築手段により得られるマクロセル対応レイアウトデータと前記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成し、再構築が不要であると判定された場合には、前記スタンダードセル対応配置データと前記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成するレイアウトデータ生成手段と
を具備することを特徴とするレイアウト設計装置。
【請求項2】
前記処理対象の階層データについてレイアウト検証を行うレイアウト検証手段と、
前記レイアウト検証手段による結果が不適となった場合に、前記処理対象の階層データに基づき、マクロセルを規定する新たなマクロセル対応回路図データ及び/または新たなマクロセル対応レイアウトデータを生成する階層データ変更手段と
を具備することを特徴とする請求項1に記載のレイアウト設計装置。
【請求項3】
フラット化手段は、全階層のフラット化または一部の階層のフラット化を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のレイアウト設計装置。
【請求項4】
前記フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、アスペクト比の調整を行うアスペクト比調整手段が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレイアウト設計装置。
【請求項5】
前記再構築手段には、再構築したマクロセル対応レイアウトデータに対応するマクロセル対応回路図データを作成する回路図データ作成手段が備えられ、
前記回路図データ作成手段によりマクロセル対応回路図データが得られると、前記処理対象の階層データのマクロセル対応回路図データと前記再構築手段により得られるマクロセル対応回路図データとを比較し、適正な回路図データが得られているか否かの検証を行うSVS検証手段と、
を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレイアウト設計装置。
【請求項6】
前記再構築手段には、目的定義情報として、回路の追加または削減を指示する情報を受けると、回路が追加または削減された領域の階層を作成する階層化手段が備えられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレイアウト設計装置。
【請求項7】
前記階層化手段は、同一階層(マクロセルの階層)の領域が異なる2以上の領域に分かれることを意味する「飛び地」の回避を指示する目的定義情報を受けると、同一階層にあるべき2以上のセルが異なる領域に分かれることが無いように階層を作成することを特徴とする請求項6に記載のレイアウト設計装置。
【請求項8】
前記階層化手段は、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースの回避を指示する目的定義情報を受けると、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースが無い階層を作成することを特徴とする請求項6または7に記載のレイアウト設計装置。
【請求項9】
半導体集積回路チップのレイアウト設計を行うコンピュータを、
マクロセルを規定するマクロセル対応回路図データとマクロセル対応レイアウトデータとを含むマクロセル階層データである処理対象の階層データを、スタンダードセルによるスタンダードセル階層データへ変更するフラット化を行ってスタンダードセル対応配置データとスタンダードセル対応配線データを生成するフラット化手段、
フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに基づき階層再構築化の要否を判定する再構築要否判定手段と、
再構築が必要であると判定された場合に、前記フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、どのような階層とするかを定義する目的定義情報が与えられることに応じて、マクロセル階層データのマクロセル対応レイアウトデータをレイアウトデータとして再度構築する再構築手段、
再構築が必要であると判定された場合には、前記再構築手段により得られるマクロセル対応レイアウトデータと前記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成し、再構築が不要であると判定された場合には、前記スタンダードセル対応配置データと前記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成するレイアウトデータ生成手段
として機能させることを特徴とするレイアウト設計用プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを更に、
前記処理対象の階層データについてレイアウト検証を行うレイアウト検証手段、
前記レイアウト検証手段による結果が不適となった場合に、前記処理対象の階層データに基づき、マクロセルを規定する新たなマクロセル対応回路図データ及び/または新たなマクロセル対応レイアウトデータを生成する階層データ変更手段
として機能させることを特徴とする請求項9に記載のレイアウト設計用プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータをフラット化手段として、全階層のフラット化または一部の階層のフラット化を行うように機能させることを特徴とする請求項9または10に記載のレイアウト設計用プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを更に、
前記フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、アスペクト比の調整を行うアスペクト比調整手段として機能させることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のレイアウト設計用プログラム。
【請求項13】
前記コンピュータを更に、
前記再構築手段における、再構築したマクロセル対応レイアウトデータに対応するマクロセル対応回路図データを作成する回路図データ作成手段として機能させ、
前記回路図データ作成手段によりマクロセル対応回路図データが得られると、前記処理対象の階層データのマクロセル対応回路図データと前記再構築手段により得られるマクロセル対応回路図データとを比較し、適正な回路図データが得られているか否かの検証を行うSVS検証手段として機能させることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のレイアウト設計用プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータを更に、
前記再構築手段における、目的定義情報として、回路の追加または削減を指示する情報を受けると、回路が追加または削減された領域の階層を作成する階層化手段として機能させることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のレイアウト設計用プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータを更に、
前記階層化手段として、同一階層(マクロセルの階層)の領域が異なる2以上の領域に分かれることを意味する「飛び地」の回避を指示する目的定義情報を受けると、同一階層にあるべき2以上のセルが異なる領域に分かれることが無いように階層を作成するように機能させることを特徴とする請求項14に記載のレイアウト設計用プログラム。
【請求項16】
前記コンピュータを更に、
前記階層化手段として、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースの回避を指示する目的定義情報を受けると、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースが無い階層を作成するように機能させることを特徴とする請求項14または15に記載のレイアウト設計用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レイアウト設計装置及びレイアウト設計用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレイアウト設計においては、回路図とレイアウトの階層に等価性を持たせたマクロセルとなっているため、回路図通りのレイアウトとならざるを得なかった。このため、
回路図の素子規模によって、配置面積の大小さまざまな形状のマクロセルをチップ状に配置する場合にデッドスペースが増加することになった。これによって、レイアウト面積当たりのトランジスタ集積率の低下を招来することになり、場合によっては決められたチップ面積に全てのマクロセルが収まりきらないことにつながるものであった。
【0003】
また、レイアウト設計が進行してから設計済部分に回路の追加、削減等が生じると、設計済の部分については階層構造を残したまま再配置を行う必要があり、
図1に示されるように、例えば、第1階層の主エリア91Eの一部に、切欠き状の「段差」エリア92Dが生じたり、第1階層でありながら主エリア91Eの領域とは離れた領域に「飛び地」のエリア93Fが生じたりすることがあった。
【0004】
更に、レイアウト設計が進行してから設計済部分に回路の追加等が生じた場合においては設計した階層内に既に内部配線が存在しており、配線経路の確保を下位の階層から行うことが困難であるという問題があった。
【0005】
特許文献1には、マクロセルやスタンダードセルを効率良く配置し、効率の良い配線を行う半導体集積回路のレイアウト設計が開示されている。この半導体集積回路レイアウト設計方法は、半導体集積回路のレイアウト設計に用いられるマクロセルライブラリを備え、このライブラリに、内部にファンクション機能を有し、バックバイアス機能を構成するためのファンクションTAPセルを格納しておく工程を含むというものである。
【0006】
また、特許文献2には、設計期間の短縮が可能なレイアウト設計方法を提供するために、マクロセルに配置補助領域を設定し、コア領域からマクロセル及び配置補助領域を除く最大スタンダードセル領域の面積を算出する工程を有するものが開示されている。このレイアウト設計方法では、また、複数のマクロセルを配置したフロアプラン結果を用いて実スタンダードセル領域の面積の算出、最大スタンダードセル領域の面積とスタンダードセル領域面積とに基づくフロアプランにおけるデッドスペース率の算出を行っている。更に、上記で算出したデッドスペース率に基づいてマクロセルの配置を変更するか否かを判断し、デッドスペース率と基準値とを比較し、この比較結果に基づいてデッドスペース率が基準値以下となるようにフロアプランのマクロセルの配置を変更するものである。
【0007】
更に、特許文献3には、階層化設計において余分なバッファが挿入されない最適な設計方法として、複数の階層ブロックを有する階層構造のレイアウトデータを入力し、分配回路合成用データベースを作成し、このデータベースを用いるものが開示されている。上記データベースは、フリップフロップ/ラッチ回路へ供給するクロック等の分配回路の合成に必要なネット情報を抽出して作成するものである。作成された分配回路合成用データベースを用いて、階層構造を展開した半導体集積回路全体についての分配回路を合成し、合成された分配回路を、階層構造を持ったレイアウトデータ上へマッピングすることで余分なバッファが挿入されない最適な設計方法を実現する。
【0008】
更に、特許文献4には、スタンダードセル方式LSIの階層レイアウトを行うCADにより自動配置配線処理方法を実行する場合に無駄領域を無くする技術が開示されている。このレイアウト設計方法においては、従来手法を用いて自動レイアウトを実行した後に、この自動レイアウトによる無駄領域を計算し、その結果からスタンダードセルブロック内のフィールドセル挿入数を制御して再レイアウトする。この場合に、セル段数或いはセル列数をそのままにし、フィールドスルーセルが多い(或いは少ない)レイアウトを行うか、または、セル列の段数を制御し、フィールドセルの少ない(或いは多い)レイアウトを行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-73728号公報
【文献】特開2006-277668号公報
【文献】特開2003-316843号公報
【文献】特開平8-63515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下の実施形態では、デッドスペースの低減やレイアウト設計がある程度進んだ段階における回路修正を行っても設計時間を大幅にロスすることを回避し得るレイアウト設計装置及びレイアウト設計用プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態では、マクロセルを規定するマクロセル対応回路図データとマクロセル対応レイアウトデータとを含むマクロセル階層データである処理対象の階層データを、スタンダードセルによるスタンダードセル階層データへ変更するフラット化を行ってスタンダードセル対応配置データとスタンダードセル対応配線データを生成するフラット化手段と、フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに基づき、階層再構築化の要否を判定する再構築要否判定手段と、再構築が必要であると判定された場合に、前記フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、どのような階層とするかを定義する目的定義情報が与えられることに応じて、マクロセル階層データのマクロセル対応レイアウトデータをレイアウトデータとして再度構築する再構築手段と、再構築が必要であると判定された場合には、前記再構築手段により得られるマクロセル対応レイアウトデータと前記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成し、再構築が不要であると判定された場合には、前記スタンダードセル対応配置データと前記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成するレイアウトデータ生成手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来のレイアウト設計により生じやすい「段差」と「飛び地」を説明するための平面図。
【
図2】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置を構成するコンピュータシステムのブロック図。
【
図3】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置が備える各手段のブロック図。
【
図4】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置に投入される階層データである回路図データの例を示す回路ブロック図。
【
図5】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置に投入される階層データであるレイアウト形状データの例を示す平面図。
【
図6】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置に修正データとして投入される階層データである回路図データの例を示す回路ブロック図。
【
図7】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図8】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置によるフラット化により生成されたスタンダードセル配置データの一例を示す図。
【
図9】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置によるフラット化により生成されたスタンダードセル配線データの一例を示す図。
【
図10】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置が備えるセル形状データファイルにおける内容の一例を示す図。
【
図11】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置により生成されるスタンダードセル対応配置データの一例を示す図。
【
図12】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置により生成されるスタンダードセル対応配線データの一例を示す図。
【
図13】本発明の実施形態に係るレイアウト設計装置の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下添付図面を参照して、本発明に係るレイアウト設計装置及びレイアウト設計用プログラムの実施形態を説明する。本実施形態に係るレイアウト設計装置は、ワークステーションやパーソナルコンピュータなどの計算機システムにより
図2に示すように構成することができる。このレイアウトシステムは、CPU10が主メモリ11内のプログラムやデータを用いて各部を制御するように構成されている。CPU10には、上記主メモリ11が接続される他に、バス12を介して、外部記憶コントローラ13、入力コントローラ14、表示コントローラ15、ネット接続コントローラ16が接続されている。
【0014】
外部記憶コントローラ13には、外部記憶装置23が接続されている。外部記憶装置23には、レイアウト設計用プログラムやこのプログラムが使用する階層レイアウト形状データなどの各種のデータ等が記憶されている。入力コントローラ14には、キーボードやマウスなどの情報や各種のコマンドを入力するための入力装置24が接続されている。表示コントローラ15には、LEDなどの表示部を有し、各種の情報を表示するための表示装置25が接続されている。更に、ネット接続コントローラ16には、ネットワーク28と回線接続・回線切断を行うインタフェースであるネット接続処理部26が接続されている。なお、このシステムには、出力のためにプリンタ等が設けられていても良い。
【0015】
外部記憶装置23に記憶されているレイアウト設計用プログラムを主メモリ11に読み出し、このプログラムをCPU10が実行することにより
図3に示す各手段が実現される。即ち、フラット化手段31、再構築要否判定手段32、再構築手段33、レイアウトデータ生成手段34、レイアウト検証手段35、階層データ変更手段36、アスペクト比調整手段37、SVS検証手段38である。上記再構築手段33には、回路図データ作成手段33Aと階層化手段33Bとが備えられている。
【0016】
上記のフラット化手段31は、マクロセルを規定するマクロセル対応回路図データとマクロセル対応レイアウトデータとを含むマクロセル階層データである処理対象の階層データを、スタンダードセルによるスタンダードセル階層データへ変更するフラット化を行ってスタンダードセル対応配置データとスタンダードセル対応配線データを生成するものである。
【0017】
再構築要否判定手段32は、フラット化手段31によるフラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに基づき、階層再構築化の要否を判定するものである。再構築手段33は、再構築が必要であると判定された場合に、上記フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、どのような階層とするかを定義する目的定義情報が与えられることに応じて、マクロセル階層データのマクロセル対応レイアウトデータをレイアウトデータとして再度構築するものである。
【0018】
レイアウトデータ生成手段34は、再構築が必要であると判定された場合には、上記再構築手段33により得られるマクロセル対応レイアウトデータと上記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成し、再構築が不要であると判定された場合には、上記スタンダードセル対応配置データと上記スタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成するものである。
【0019】
レイアウト検証手段35は、階層データについてレイアウト検証を行うものであり、レイアウト検証手段35は、再構築手段33による再度の構築の対象である上記処理対象の階層データについてレイアウト検証を行うものであり、また、レイアウトデータ生成手段34によって生成された階層データについてレイアウト検証を行うものである。
【0020】
階層データ変更手段36は、上記レイアウト検証手段35による結果が不適となった場合に、上記処理対象の階層データに基づき、マクロセルを規定する新たなマクロセル対応回路図データ及び/または新たなマクロセル対応レイアウトデータを生成するものである。階層データ変更手段36は、上記レイアウト検証手段35による結果が不適となった場合にも、レイアウトデータ生成手段34によって生成された階層データに対しても同様に処理を行うものである。
【0021】
アスペクト比調整手段37は、上記フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、アスペクト比の調整を行うものである。上記再構築手段33に備えられている回路図データ作成手段33Aは、再構築したマクロセル対応レイアウトデータに対応するマクロセル対応回路図データを作成するものである。
【0022】
SVS検証手段38は、上記回路図データ作成手段33Aによりマクロセル対応回路図データが得られると、上記処理対象の階層データのマクロセル対応回路図データと上記再構築手段33により得られるマクロセル対応回路図データとを比較し、適正な回路図データが得られているか否かの検証を行うものである。
【0023】
上記再構築手段33に備えられている階層化手段33Bは、目的定義情報として、回路の追加または削減を指示する情報を受けると、回路が追加または削減された領域の階層を作成するものである。
【0024】
上記階層化手段33Bは、同一階層(マクロセルの階層)の領域が異なる2以上の領域に分かれることを意味する「飛び地」の回避を指示する目的定義情報を受けると、同一階層にあるべき2以上のセルが異なる領域に分かれることが無いように階層を作成するものである。上記階層化手段33Bは、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースの回避を指示する目的定義情報を受けると、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースが無いように階層を作成するものである。
【0025】
以上のように構成されたレイアウト設計装置に対し、マクロセルを規定するマクロセル対応回路図データとマクロセル対応レイアウトデータとを含むマクロセル階層データである処理対象の処理対象の階層データを与えて動作を行わせることができる。
【0026】
処理対象の階層データの一例を
図4と
図5に示す。
図4には、マクロセルを規定するマクロセル対応回路図データであり、本実施形態においては、上から第1階層の回路図データ、2段目が第2階層の回路図データ、第3段目が第3階層の回路図データ、・・・となっている。
図5は、上記
図4の回路図データに対応するレイアウト(形状)データの例であり、上から
図5(a)には第1階層のレイアウト形状データSH1が示され、2段目の
図5(b)には第2階層までのレイアウト形状データSH2が示され、3段目の
図5(c)には第3階層までのレイアウト形状データSH3、…が示されている。
【0027】
図5(a)に示す第1階層のレイアウト形状データSH1、
図5(b)に示す第2階層までのレイアウト形状データSH2、
図5(c)に示す第3階層までのレイアウト形状データSH3は、「セル」をトランジスタなどのデバイスの部位レベルまでパターン模様で示した一例の図である。これらの図から判るように、第1階層のレイアウト形状データSH1には第1階層のレイアウト形状データSH1のみが含まれている。第2階層までのレイアウト形状データSH2は、第1階層までのレイアウト形状データSH1に第2階層の単独のレイアウト形状データSHaを加えたものとなっている。また、第3階層までのレイアウト形状データSH3は、第2階層までのレイアウト形状データSH2に第3階層の単独のレイアウト形状データSHbを加えたものとなっている。一般的には、第N(正の整数)階層までのレイアウト形状データSHNは、第(N-1)階層までのレイアウト形状データSH(N-1)に第N階層の単独のレイアウト形状データSHxを加えたものとなっている。
【0028】
上記のように通常の設計が行われた階層データだけではなく、ある程度まで設計が進んだ段階で追加された修正データを含んだものであっても良い。
図6に、
図4と
図5の第2階層と第3階層の間に入れるべき第2.5階層の修正データである階層データ(回路図データ)の例を示す。
【0029】
以上のような処理対象の階層データは、入力装置24から入力して外部記憶装置23にファイル化しておくことができ、或いは、他のコンピュータシステム等を用いて作成したものをネットワーク28からネット接続処理部26とネット接続コントローラ16を介して取得し、外部記憶装置23にファイル化しておくことができる。
【0030】
レイアウト設計装置は、処理のスタートを指示されると
図7に示すフローチャートに対応する処理を行うので、このフローチャートを参照して動作説明を行う。上記のような処理対象の階層データを取り込み(S11)、レイアウト検証を行う(S12)。このレイアウト検証としては、よく知られたDRC(デザイン・ルール・チェック)検証やLVS(Layout versus schematic)検証等を用いることができる。
【0031】
上記ステップS12のレイアウト検証の結果が適切か不適切を判定し(S13)、不適切となると、上記処理対象の階層データに基づき、マクロセルを規定する新たなマクロセル対応回路図データ及び/または新たなマクロセル対応レイアウトデータを生成することによる階層データ変更を行って(S14)、ステップS12へ戻って処理を続ける。
【0032】
ステップS13において、適切となるとフラット化を行ってスタンダードセル対応配置データとスタンダードセル対応配線データを生成する(S15)。このフラット化においては、オペレータの指示、即ち、フラット化する階層を画面上において選択し、或いは、階層名(第○階層)などの数字などの入力に応じて或いは、プログラムによる自発的判定、即ち、処理対象の階層データに基づき、形状が凹凸のある形状やデッドスペース(セルが配置されていない所定以上の広さの空きスペース)や「飛び地」の検出を行うことによって全階層のフラット化または該当領域と周辺の所定領域を部分的にフラット化することを可能とする。フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データの一例を
図8に示す。スタンダードセル対応配置データは、回路図に従ってセルを1つ1つ順次に並べ、階層ネット名を付加したものである。階層ネット名については、フラット化手段31が一定の規則に則ってそれぞれがユニークで適宜なネームを発生する構成とすることができる。
【0033】
図8(a)は、各番目のセルの配置領域AR1、AR2、・・・、AR6、・・・と、その中の内容である「セル」を文字で示したものであり、
図8(b)は、
図8(a)の中の内容である「セル」をトランジスタなどのデバイスの部位レベルまでパターン模様で示した一例の図である。
図8(b)では、階層ネット名は、ここで示されているデータに対応付けられて、このデータの記憶領域以外に記憶されているため、記載していないものである。
【0034】
また、ステップS15において生成されたスタンダードセル対応配線データの一例を、
図9に示す。スタンダードセル対応配線データは、セル間の配線の形状や長さを所定の規則により図で表し、階層ネット名を付加したものである。階層ネット名については、スタンダードセル対応配置データにおける場合と同様にしてフラット化手段31が発生する構成とすることができる。
【0035】
図9(a)は、各番目のセル配線の配置領域AR1、AR2、・・・、AR6、・・・と、その中の内容である「配線」を文字で示したものであり、
図9(b)は、
図9(a)の中の内容である「配線」をパターン模様で示した一例の図である。
図9(b)では、階層ネット名は、ここで示されているデータに対応付けられて、このデータの記憶領域以外に記憶されているため、記載していないものである。
【0036】
ステップS15に続いてアスペクト比の調整が行われる(S16)。この調整は、外部記憶装置23に記憶されているセル形状データファイルを用いて行うことができる。このセル形状データファイルは、デッドスペース等に配置すべき素子毎に面積形状情報が記憶されたものである。具体的には、
図10に示すように、セル名が、インバータ、NANDゲート、CAPなどであるのに対し、セル名のそれぞれに○○、○△、○△△で示されている面積情報と複数の四角形のアスペクト比(縦横比)を示す形状情報が対応付けられている。ここのセル(素子)としては、スタンダードセルに配置されるインバータ、NAND回路、NOR回路、AOI/OAI(アンドオアインバータ/オアアンドインバータ)、フリップフロップ、マルチプレクサ、ゲーテッドクロックやバッファ、遅延回路などを挙げることができる。
【0037】
処理対象の階層データには、マクロセル対応レイアウトデータが含まれているから、このデータに基づき、セル形状データファイルのデータを参照しながら適切なアスペクト比のものを選択する構成とすることができる。
【0038】
ステップS16に続いてフラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに基づき、階層再構築化の要否を判定する(S17)。階層再構築化の要否の判定は、例えばフラット化された領域のトランジスタ数が所定数を超えるか否かという判断基準を用いることができ、また、例えばフラット化された領域の大きさが設計するLSI等のチップ面積に対して何パーセント以上であるかという判断基準を用いることができ、また、例えばフラット化された領域のアスペクト比が外部記憶装置23に記憶されている階層レイアウト形状データと同一のアスペクト比であるという判断基準を用いることができる。全ての判断基準とも満たす場合に再構築が必要であると判定し、または、二つの判断基準が満たされることで再構築が不要であると判定することができる。また、処理対象の階層データに基づき、回路追加や修正がなされたものであることが検出できる場合には再構築が必要と判定することができる。更に、処理対象の階層データに基づき、配線経路の変更がなされたものであることが検出できる場合には再構築が必要と判定することができる。
【0039】
上記ステップS17において階層再構築化が不要であると判定されると、ステップS15において生成されたスタンダードセル対応配置データとスタンダードセル対応配線データに基づき新レイアウトデータを生成する(S18)。スタンダードセル対応配置データは、
図11に示すように、スタンダードセル領域AR1-X、AR2-X、AR3-X、AR4-X、・・・と示した各四角形状の領域に、「セル」をトランジスタなどのデバイスの部位レベルまでパターン模様で示したものが、回路図に合わせて並べられたものであり、しかもアスペクト比の調整が行われることから、「飛び地」や「段差」が生じることがない配置データとなる。また、スタンダードセル対応配線データは、
図12に示されるように、スタンダードセル領域AR1-X、AR2-X、AR3-X、AR4-X、・・・と示した各四角形状の領域に「配線」を、セル間を接続する屈曲することもあるパターン模様の線分で表現したものである。この配線データは、手作業による配線データの生成、自動作成、元データ(処理対象の階層データに含まれていたもの)を利用してスタンダードセル対応配置データに基づく差分として得るなどの手法により生成することができる。
【0040】
このようにして新レイアウトデータが生成されると、レイアウト検証を行う(S19)。このレイアウト検証はステップにおいて用いた手法と同じ手法を採用することができる。
【0041】
上記ステップS19のレイアウト検証の結果が適切か不適切を判定し(S20)、不適切となると、上記新レイアウトデータを変更してレイアウトデータを生成することによるレイアウトデータ変更を行って(S21)、ステップS19へ戻って処理を続ける。ステップS20において適切であると判定されると、この時点において生成されているレイアウトデータを最終結果として出力する(S22)。出力は表示装置25や備えられているときにはプリンタから行うことができる。
【0042】
一方、ステップS17において階層再構築化が要であると判定されると、
図13に示される再構築処理に移行する。再構築手段33による再構築処理は、フラット化により生成されたスタンダードセル対応配置データに対して、どのような階層とするかを定義する目的定義情報が与えられることに応じて、マクロセル階層データのマクロセル対応レイアウトデータをレイアウトデータとして再度構築するものである。
【0043】
例えば、入力手段である入力装置24から目的定義情報が与えられることに応じて処理を行う。つまり
図13に示すように、目的定義情報を取り込み(S31)、この目的定義情報を解析して、解析結果に応じた階層を作成する。目的定義情報として回路追加を指示する情報を受けると、所要領域の階層を作成する目的の定義を行う(S32)。
【0044】
前述の
図5の例では、第2.5階層の修正データが与えられているため、目的定義情報として回路追加(第2.5階層の追加)を指示する情報を受けることになる。そこで、この第2.5階層に近い前後1階層或いは前後2階層の部分をフラット化したままとし、フラット化した領域を1つあるいは複数の階層として定義する。
【0045】
また、同一階層(マクロセルの階層)の領域が異なる2以上の領域に分かれることを意味する「飛び地」の回避を指示する目的定義情報を受けると、同一階層にあるべき2以上のセルが異なる領域に分かれることが無いように階層を作成するための定義を行う。このために、例えば、階層化したい入力信号名と出力信号名を1つの階層に定義する。
【0046】
更に、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースの回避を指示する目的定義情報を受けると、半導体集積回路チップ内に素子が配置されないデッドスペースが無い階層を作成するための定義を行う。このために階層化すべきセル名を定義する。
【0047】
以上のように定義が行われた次には、上記目的定義情報に基づき、階層化すべき領域を特定する(S33)。続いて、上記で特定した領域についてのマクロセル対応レイアウトデータを生成し(S34)、上記のマクロセル対応レイアウトデータに対応する回路の接続情報を生成する(S35)。次に、このステップS35において生成された回路の接続情報と、処理対象の階層データのマクロセル対応回路図データとを用いて、これらを比較し、適正な回路図データが得られているか否かの検証であるSVS検証を行う(S36)。SVS検証は(schematic versus schematic)検証である。
【0048】
ステップS36に次いで検証結果が不適切か適切かの判定を行い(S37)、不適切となるとステップS32へ戻って処理を続ける。このようにして、ステップS37における判定結果が適切となると新レイアウトデータを生成する(S38)。新レイアウトデータは、配置データと配線データとにより構成され、配置データは、ステップS34において生成したマクロセル対応レイアウトデータであり、配線データは、手作業による配線データの生成、自動作成、元データ(処理対象の階層データに含まれていたもの)を利用してステップS35において生成した回路接続情報から得ることができる。
【0049】
このようにして新レイアウトデータが生成されると、レイアウト検証を行う(S39)。このレイアウト検証はステップにおいて用いた手法と同じ手法を採用することができる。
【0050】
上記ステップS39のレイアウト検証の結果が適切か不適切を判定し(S40)、不適切となると、上記新レイアウトデータを変更してレイアウトデータを生成することによるレイアウトデータ変更を行って(S41)、ステップS39へ戻って処理を続ける。ステップS40において適切であると判定されると、この時点において生成されているレイアウトデータを最終結果として出力する(S42)。出力は表示装置25や備えられているときにはプリンタから行うことができる。
【0051】
以上のように階層レイアウトのフラット化の処理が行われる結果、回路図とレイアウトの階層に等価性がないスタンダードセルのグルーピングによる階層の再構築、セルの位置決定が可能となり、レイアウト配置の作成時間の短縮を図ることが可能であると共にデッドスペースの削減を図ることにより必要面積の縮小が可能となり、結果としてトランジスタ集積率の向上、コンパクト化による消費電流の低減を図ることができる利点がある。
【0052】
また、配線経路接続において下層の内部配線を含めた配線接続設計が可能となり、任意の階層化(レイアウト形状による階層分け、接続関係による階層分け、回路修正を念頭に置いた階層分け等)とその階層に合致した回路接続情報の生成を行うことで、設計の後戻りが任意のときに生じても修正範囲を狭くすることが可能となっており、設計期間と検証時間の短縮を図ることが期待できる。
【符号の説明】
【0053】
11 主メモリ
12 バス
13 外部記憶コントローラ
14 入力コントローラ
15 表示コントローラ
16 ネット接続コントローラ
23 外部記憶装置
24 入力装置
25 表示装置
26 ネット接続処理部
28 ネットワーク
31 フラット化手段
32 再構築要否判定手段
33 再構築手段
33A 回路図データ作成手段
33B 階層化手段
34 レイアウトデータ生成手段
35 レイアウト検証手段
36 階層データ変更手段
37 アスペクト比調整手段
38 SVS検証手段