IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図1
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図2
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図3A
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図3B
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図4
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図5
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図6
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図7
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図8
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図9
  • 特許-吸着剤ベースのガス濃度モニタ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】吸着剤ベースのガス濃度モニタ
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/46 20060101AFI20220418BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G01N25/46
B01J20/20 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018194707
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2019086513
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】15/800,788
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジアナー・バオ
(72)【発明者】
【氏名】クリントン・スミス
(72)【発明者】
【氏名】エリック・クッカー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・シュワルツ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145889(WO,A1)
【文献】特開2008-275588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0056016(US,A1)
【文献】特開2011-033592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0288962(US,A1)
【文献】特開2009-075105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0116024(US,A1)
【文献】特開2015-136711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0051279(US,A1)
【文献】特表2014-533195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスモニタであって、
監視環境における対象ガスの濃度に基づいて、前記対象ガスを選択的に吸着する吸着材料であって、前記吸着材料に熱を供給することなく前記対象ガスを受動的に吸着するようにされた、前記吸着材料と、
前記吸着材料と同じ材料を含む基準材料であって、前記基準材料が環境との化学的相互作用を防止するためのカプセル化層を有する、前記基準材料と、
前記吸着材料内に配置された第1のサーミスタおよび前記基準材料内に配置された第2のサーミスタと
処理装置と、
を含み、
前記第1のサーミスタは前記吸着材料の第1の温度の第1の表示を前記処理装置へ提供し、前記第2のサーミスタは前記基準材料の第2の温度の第2の表示を前記処理装置へ提供、さらに、
前記処理装置は、前記第1の温度と前記第2の温度との間の差分測定に少なくとも部分的に基づいて、前記対象ガスの濃度を決定し、
前記ガスモニタは、前記吸着材料および前記基準材料に沿ってガスが流れることを可能にするチャンバをさらに備える、ガスモニタ。
【請求項2】
前記吸着材料に熱を供給する第1の発熱体と、
前記基準材料に熱を供給する第2の発熱体と、
をさらに含み
前記第1の発熱体および前記第2の発熱体は、前記対象ガスの濃度の絶対値を決定し、または前記ガスモニタを較正するために、前記吸着材料および前記基準材料に周期的な加熱を供給する、請求項1に記載のガスモニタ。
【請求項3】
前記処理装置は、前記差分測定を前記対象ガスおよび吸着剤に対する等温曲線にマッピングすることに基づいて、前記対象ガスの前記濃度を決定する、請求項2に記載のガスモニタ。
【請求項4】
前記吸着材料が、ミクロポーラスまたはナノポーラス炭素材料を含み、前記対象ガスが二酸化炭素である、請求項1に記載のガスモニタ。
【請求項5】
前記対象ガスは、二酸化炭素、一酸化炭素、ベンゼンまたはホルムアルデヒドのうちの1つである、請求項1に記載のガスモニタ。
【請求項6】
前記吸着材料は、バインダを有する印刷された吸着剤インクを含む、請求項1に記載のガスモニタ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
空気の質、汚染物質の欠如、製造における品質管理、および幾つかの様々な理由を保証するためには、異なる環境内のガスレベルの測定が重要である。しかし、幾つかのガスレベル監視ソリューションは、高価であるか、大型であるか、高電力消費を必要とするか、または異なる環境内での広範な使用を妨げる他の欠点を有することができる。さらに、様々な消費者装置間の接続が増加するにつれて、様々な家庭パラメータのリモートセンシングの機会が存在する。例えば、IoT接続された装置は、家庭または施設を介して分散され、互いに、中央サーバに、またはローカル制御装置に情報を提供することができる。大型、高価、または高電力を消費するガスモニタは、接続された施設では実用的ではない場合がある。従って、より小型で、安価で、低消費電力のガス監視システムは、そのような測定システムのより広範な利用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0002】
記載された実施形態およびその利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
図1図1は、幾つかの実施形態により使用できるガスモニタの実施形態の概略図である。
図2図2は、幾つかの実施形態により使用できるガスモニタの実施形態の概略図である。
図3A図3Aは、吸着剤によって吸着される対象ガスの量と、システムについての吸着熱の変化との間の関係の一例を示すグラフである。
図3B図3Bは、監視環境における対象ガスの濃度と炭素吸着剤上の対象ガスの量との間の関係の一例を示すグラフである。
図4図4は、CO濃度の変化に曝されたときの吸着材料および基準材料の温度差応答の一例を示すグラフである。
図5図5は、一実施形態による、CO濃度の変化に曝されたときの吸着材料および基準材料の温度差応答の一例を示すグラフである。
図6図6は、温度とガス濃度の関数としての吸着剤への吸着負荷の例を示すグラフである。
図7図7は、幾つかの実施形態による吸着材料の温度に基づいて対象ガスの濃度を決定する方法を示す流れ図である。
図8図8は、幾つかの実施形態による、吸着材料の温度に基づいて対象ガスの濃度を決定する方法を示す流れ図である。
図9図9は、幾つかの実施形態によるガスモニタの製造方法を示す流れ図である。
図10図10は、幾つかの実施形態により使用できるガス監視システムの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
幾つかの実施形態では、ガスモニタは、吸着材料の温度を監視して、システム内のガス濃度の変化を判断する。例えば、監視環境におけるガスの濃度が増加した場合、吸着材料は、より多くのガスを吸着し得る。次に、ガスが吸着材料によって吸着されると、吸着剤の温度が上昇することがある。従って、ガスモニタは、吸着材料の温度の監視に基づいて、ガスの濃度またはガスの濃度の変化を決定する。
【0004】
幾つかの実施形態では、ガスモニタは、吸着材料に加えて基準材料を含むことができる。基準材料は、ガスモニタと比較するための制御として作用することができる。ガスモニタは、吸着材料と基準材料との間の差分測定を決定することができる。差分測定は、他の原因による環境の変化と比較して、吸着材料の温度変化の表示を提供することができる。例えば、監視環境の気温の変化に起因する。
【0005】
幾つかの実施形態では、ガスモニタは、吸着材料と基準材料の温度差への変化を受動的に測定することができる。対象ガスの濃度が増加すると、吸着材料はより多くのガスを吸着し、温度が上昇する可能性がある。従って、差分測定が増加して、吸着材料の温度が上昇したことを示すことができる。対象ガスの濃度が減少すると、吸着材料は、対象ガスを大気に戻して温度を低下させることができる。従って、差分測定もまた減少し、吸着材料の温度が低下したことを示す。温度差測定の変化に基づいて、ガスモニタは、対象ガスの濃度が変化したか否かを決定することができる。ガスモニタは、対象ガスの濃度の変化の表示または報告を監視または警報システムに提供することができる。
【0006】
吸着材料と基準材料の温度差を測定することにより、対象ガスの濃度の変化の表示を提供することができる。しかしながら、状況によっては、ガスモニタが監視環境におけるガス濃度の絶対値を決定することが有益な場合がある。従って、幾つかの実施形態では、吸着材料および基準材料の温度を制御して、環境の絶対的特徴を監視することができる。例えば、吸着材料の温度を上げ下げすることによって、吸着材料は、それぞれ、対象ガスを吸着して放出することができる。さらに、幾つかの実施形態では、ガスモニタは、システムを加熱することによってシステムを較正し、吸着剤からすべての対象ガスを脱着することができる。対象ガスの吸着および放出は、基準材料と比較した吸着材料の温度変化率に影響を及ぼす可能性がある。ガスモニタは、吸着材料の温度の変化率の差分に基づいて、吸着材料と基準材料との間の温度差測定を決定することができる。吸着材料の温度の変化率の変化は、監視環境における対象ガスの濃度に基づく。従って、ガスモニタは、吸着材料および基準材料の温度がガスモニタによって昇降するときに、差分測定に基づいて、監視環境における対象ガス濃度の絶対測定を決定することができる。
【0007】
対象ガスの変化する濃度または対象ガスの絶対濃度の正確な測定を提供するために、適切な吸着材料および基準材料を選択することができる。幾つかの実施形態では、吸着材料は、特定の対象ガスまたは対象ガスの種類に対して適度に選択的であり得る。例えば、吸着剤は、特定のガスまたは関連するガスのファミリーの一部である一組のガスのみを吸着することができる。吸着剤は、選択性を改善するために、フィルタまたはゲッタを有するシステム内に配置することもできる。例えば、フィルタおよびゲッタは、吸着剤が対象ガス以外のガスを吸着するのを妨いでもよい。これは、対象ガスに対する吸着剤の相対的選択性を増加させる可能性がある。幾つかの実施形態では、吸着材料はまた、熱がサーミスタまたは他の温度測定装置に伝達されるように高い熱伝導率を有することができる。幾つかの実施形態では、高い熱伝導率はまた、熱源によるより良好な温度制御を提供し得る。吸着材料はまた、吸着剤への対象ガス負荷量を改善するために、大きい表面積を有してもよく、または多孔質構造であってもよい。さらに、吸着材料は、中間結合エネルギーを有していてもよい。例えば、中間結合エネルギーは、対象ガスとの可逆的相互作用(すなわち、吸着および脱着)を提供し得る。可逆的な相互作用は、時間にわたって対象ガスの絶対濃度を監視する機能をガスモニタに提供することができる。
【0008】
吸着材料に加えて、吸着材料と同様の熱特性を有する基準材料を選択することができる。同様の熱特性を有することにより、基準材料と吸着材料との間の正確な差分測定が可能になる。例えば、基準材料がより低い熱伝導率を有する場合、環境の周囲温度への変化率の差分に基づいて差分測定が形成され、ガスモニタの精度が低下する可能性がある。
【0009】
本明細書に記載されるガスモニタは、対象ガスを吸着および放出し、妥当な吸着熱を生成するように適切に選択された吸着材料を有する任意のガス測定に利用され得る。例えば、幾つかの実施形態では、ガスモニタはCOを選択的に吸着することができる。COの監視は、健康的な屋内空気の質を維持するために重要である。さらに、占有屋内空間に適したCOレベルを示す様々な規則がある。特定の部屋のCOレベルを測定することなく、基準および規制を満たすために換気要件を生成するために様々な技術を適用することができるが、建物の一部は換気過剰または換気不足の可能性がある。従って、COレベルはすべての領域で基準を満たしていないか、または過度のエネルギーが幾つかの領域を過剰に換気するために費やされる可能性がある。空気の質とエネルギーコストを改善するために、本明細書に記載されているように複数のCOモニタを配置することで、部屋の実際のCOレベルをさらに詳しく知ることができる可能性がある。一例として、ASHRAE Standard 62.1-2016は、屋内空間でのCOの濃度を屋外の空気濃度レベルより高い700ppm以下に保つ必要があることを示す。約7.5L/s/人の換気が必要であることが示唆されているが、これは屋内空気中のCOの実際の濃度を直接示すものではない。基準を達成するために必要な実際の換気は、特定の屋内空間の活動レベルおよび他の特徴に基づくことができる。従って、本明細書に記載されているようなCOセンサの配置のより広範な普及を可能にするために、装置のサイズおよび電力消費を低減することにより、より低いエネルギー消費でより良好な空気の質を達成されてもよい。
【0010】
幾つかの実施形態では、適切なバインダは、吸着材料および基準材料の熱伝導率を効果的に改善し得る。特に、高表面積の多孔質吸着剤では、大きな分子サイズ(例えば、0.1μmより大きい)のバインダは、吸着剤粒子がバインダで埋められる機会を減少させる可能性がある。幾つかの実施形態では、COの検出に炭素吸着剤を使用することができる。例えば、Entegris BrightBlack(登録商標)を吸着剤として使用することができる。幾つかの実施形態では、Entegris BrightBlack(登録商標)の代わりに他の炭素吸着剤を使用することができる。例えば、別のミクロポーラスおよびナノポーラス炭素材料を使用することができる。幾つかの実施形態では、中結合エネルギー付着基を有する他の高表面材料を使用することができる。例えば、吸着剤は、金属-有機骨格、ゼオライト、カーボンナノチューブ、グラフェン、シラン化エーロゲル、またはそのような材料の組み合わせであってもよい。COガスの炭素吸着剤に関連するバインダの例では、約0.1~0.15μmの分子サイズを有するスチレンアクリル系ポリマーラテックスまたはコロイド状シリカからの多孔質ガラス状固体バインダが適切な構造を提供し得る。幾つかの実施形態では、吸着材料に使用される炭素吸着剤は、数ナノメートル未満の孔径を有する分子ふるいとして作用し得る。従って、孔埋めは、幾つかのバインダによって制限され得る。しかし、吸着材料への対象ガス吸着の動力学を高めるために、表面ブロッキングをまだ最小限にする必要がある。従って、炭素吸着剤粒子の分散および粒子およびバインダの均質な分布は、バインダの量を最小限にして熱伝導率を改善することができる。幾つかの実施形態では、バインダおよび吸着剤は、熱伝導率を高めるために乾燥混合されてもよい。
【0011】
幾つかの実施形態では、サーミスタと印刷された吸着材料との間の接触表面積を最大にすることによって、吸着材料とサーミスタとの間の熱伝導率を改善することができる。薄い印刷された吸着剤ベッドは、吸着材料熱伝導および吸着剤/サーミスタ界面熱伝導の両方が改善できるように使用され得る。幾つかの実施形態では、穏やかな圧力でのカレンダー加工を用いて、熱伝導率をさらに高めることができる。
【0012】
以下に説明する構成は、一般に、単一の吸着材料を有するものとして記載される。幾つかの実施形態では、ガスモニタは、2つ以上の吸着材料を有することができる。例えば、基板上の異なる位置に2つ以上の吸着材料を配置して、さらなる精度を提供することができる。さらに、幾つかの実施形態では、ガスモニタは、異なるタイプの2つ以上の吸着材料を有することができる。例えば、第1の吸着材料は第1のガスを対象とし、第2の吸着材料は第2のガスを対象とすることができる。次いで、ガスモニタは、複数のガスの濃度を監視することができる。複数の吸着材料を使用する幾つかの実施形態では、各吸着材料の制御として使用される単一の基準材料部分が存在し得る。例えば、1つまたは複数の基準材料は、カーボンナノチューブに基づく構造であってもよい。基準材料は、例えば、上記吸着材料に関して記載したのと同じまたは同様のタイプの材料であってもよい。幾つかの実施形態では、1つまたは複数の他の吸着材料の対照として作用するために使用される追加の基準材料が存在し得る。幾つかの実施形態では、基準材料は、吸着材料と同じ物質であってもよいが、活性化されていないか、またはそれが監視環境と相互作用しないようにカプセル化されていてもよい。
【0013】
他のガスモニタは、他のガスを対象にするために異なる吸着材を使用してもよい。例えば、他の吸着剤は、一酸化炭素、ベンゼン、ホルムアルデヒド、または他の生物学的反応性ガスを吸着するために、前述した吸着材料の官能基を変化させるために、温度調節および表面処理の両方によって適度に選択的であり得る。一例として、ベンゼンが製造環境において監視され、安全な作業環境と機械の適切な機能を保証する。例えば、ベンゼンは、この種のアプローチを用いて選択的に吸着され得る。別の例として、ホルムアルデヒドを監視して、人が部屋で喫煙しているか否かを決定することができる。
【0014】
屋内空間の空気の質とガスの存在を測定することに加えて、吸着剤の温度変化に基づくガスモニタは、自動車、潜水艦、ボート、スタジアムなどの屋外空間、製造施設または機械内部などの空気の質を監視するために使用することができる。幾つかの実施形態では、本明細書で説明されるようなガスモニタは、他の関連する環境のための対象ガスを監視するために使用され得る。
【0015】
図1は、ガスモニタ100の例示的な実施形態を示す図である。ガスモニタは、吸着材料110および基準材料115を含む。吸着材料110および基準材料115の温度は、それぞれのサーミスタ120および125によって測定することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタ100は、他の温度測定装置を有することができる。処理装置130は、サーミスタ120および125から信号を受信することができ、温度測定の差分に基づいて、空気流150内の対象ガスの濃度を決定することができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、吸着材料110は、対象ガスを選択的に吸着する基板101上に印刷された吸着剤であってもよい。幾つかの実施形態において、吸着材料は、バインダおよび溶媒と組み合わされた後、印刷されて、高い表面積対質量比を有する多孔質構造を生成してもよい。大きい表面積は、吸着材料110の温度に対する吸着の影響を増大させる可能性がある。幾つかの実施形態では、吸着材料は、印刷された吸着剤ではなく、粉末、固体コア、または他の構造であってもよい。
【0017】
基準材料115は、吸着材料110と構造的に類似していてもよい。例えば、基準材料115は、吸着材料110と同じまたは同様の方法で基板101上に印刷することができる。例えば、基準材料115は、吸着材料110を印刷するために使用されたものと同様のバインダおよび溶媒を用いて印刷されてもよい。さらに、吸着材料110が他の構造を有する場合、基準材料115は、同様の構造または製造プロセスを有することができる。幾つかの実施形態では、基準材料115は、吸着材料110と同様の熱特性を有することができる。例えば、基準材料115は、吸着材料110と同様の大きさ、重量、熱伝導率および他の特性を有することができる。しかしながら、吸着材料110と比較して、基準材料115は、空気流150中に存在する可能性のある対象ガスまたは他のガスに応答しない可能性がある。幾つかの実施形態では、基準材料115は、対象ガス以外のガスに応答して吸着材料110と同様にふるまうことができる。幾つかの実施形態では、基準材料115は、ポリマービーズまたは金属/酸化物粒子を含み得る。
【0018】
幾つかの実施形態では、サーミスタ120およびサーミスタ125は、同様の構成要素であってもよい。例えば、サーミスタ120および125は、同一または類似の構造を有することができる。幾つかの実施形態では、サーミスタ120およびサーミスタ125は、異なる構造を有してもよい。さらに、サーミスタとして説明されているが、幾つかの実施形態では、サーミスタは、他の温度検知装置で置き換えることができる。幾つかの実施形態では、サーミスタ120および125は、吸着材料110および基準材料115内に配置されてもよい。例えば、サーミスタ120は、吸着材料110内に延在して、温度測定の精度または速度を増加させることができる。サーミスタ120および125は、処理装置130に電子的に結合することができる。例えば、サーミスタ120および125は、吸着材料110および基準材料115の温度の表示を提供することができる。
【0019】
処理装置130は、吸着材料115および基準材料110の温度を示す信号をサーミスタ120および125から受け取ることができる。処理装置は、マイクロプロセッサ、中央処理装置などの1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。幾つかの実施形態では、処理装置130は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサなどであってもよい。さらに、処理装置は、メインメモリ、ランダムアクセスメモリ、または他のコンピュータ可読記憶媒体などの1つまたは複数のメモリ装置を含むことができる。
【0020】
幾つかの実施形態では、サーミスタ120および125は、吸着材料110および基準材料115の温度の差分測定を提供するために、処理装置130に電子的に結合されてもよい。幾つかの実施形態では、処理装置130は、サーミスタ120および125からの異なる温度表示に基づいて、吸着材料110と基準材料115との間の温度差を決定することができる。幾つかの実施形態では、処理装置は、対象ガスの濃度の変化を決定するために温度差を使用することができる。例えば、処理装置130は、サーミスタ125からの温度表示と比較して、サーミスタ120からのより高い温度表示に鑑みて、対象ガスの濃度が増加したと判断することができる。さらに、処理装置130は、サーミスタ125からの温度表示と比較して、サーミスタ120からのより低い温度表示に鑑みて、対象ガスの濃度が減少したと判断することができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、処理装置130は、対象ガスの濃度の変化の信号を別のシステムに提供することができる。例えば、処理装置130は、対象ガスの濃度の変化の表示を、制御システム、警報システム、または他のシステムに提供することができる。幾つかの実施形態では、処理装置130は、吸着材料110および基準材料115に対する遠隔システムであってもよい。例えば、サーミスタ120および125は、有線または無線の電子接続を介して、吸着材料110および基準材料115の温度の表示を、遠隔地にある処理装置130へ提供することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、処理装置130は、吸着材料110と基準材料115との間の判定された温度差に基づいて、対象ガスの濃度の変化を決定することができる。しかしながら、上述したように、幾つかの実施形態では、ガスモニタは、空気流150中の対象ガスの絶対濃度を決定することができる。
【0023】
図2は、ガスモニタ200の例示的な実施形態を示す図である。ガスモニタ200は、図1を参照して説明したガスモニタ100と同様であってもよい。例えば、ガスモニタ200は、関連するサーミスタ220を有する吸着材料210と、関連するサーミスタ225を有する基準材料215とを含むことができる。サーミスタ220および225は、処理装置230に電気的に結合されて、吸着材料210および基準材料215の温度の表示を提供することができる。
【0024】
ガスモニタ100の部分と同様の、ガスモニタ200の記載された部分に加えて、ガスモニタ200は、発熱体240および245を含むことができる。発熱体240は、吸着材料210に動作可能に結合されてもよい。従って、発熱体240は、吸着材料210に熱を供給することができ、発熱体245は、基準材料215に熱を供給することができる。幾つかの実施形態では、発熱体240および発熱体245は、単一の発熱体として組み合わせることができる。さらに、幾つかの実施形態では、サーミスタ220および発熱体240は同じ要素であってもよく、サーミスタ225および発熱体245は同じ要素であってもよい。例えば、サーミスタ220は、温度の表示を提供するために抵抗を変化させ、サーミスタ220にわたって電流を供給することによって、発熱体として使用する両方ができる。サーミスタ225は、基準材料に熱を供給するために同様の方法で使用されてもよい。幾つかの実施形態では、発熱体240および245は、発熱体にわたる電流に応答して、吸着材料210および基準材料215に熱を供給する抵抗発熱体であってもよい。
【0025】
処理装置230は、発熱体を制御するために、発熱体240および発熱体245に結合されてもよい。幾つかの実施形態では、処理装置230は、発熱体210および215に周期的に電流を供給して、吸着材料210および基準材料215の温度を上昇および下降させることができる。次いで、吸着材料210および基準材料215は、提供された熱に応答して温度を変化させることができる。基準材料210は、吸着材料210とは異なる速度で温度を上昇および下降させることができる。例えば、吸着材料210は、発熱体240から提供される熱の変化に起因して温度を上昇および低下させることができるが、温度の変化に基づいて対象ガスを吸着および放出することもできる。従って、吸着材料210に関連するサーミスタ220および基準材料215に関連するサーミスタ225は、吸着材料210と基準材料215との温度の差分表示を提供することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタ200は、吸着剤を基準温度に加熱するために使用される電流の量を決定することができる。使用される電流の量は、吸着剤210上の対象ガスの量を示すことができる。従って、処理装置230は、使用される電流の量に基づいて、環境中の対象ガスの濃度を決定することができる。
【0026】
サーミスタ220および225によって提供される温度差測定に基づいて、処理装置230は、空気流250中の対象ガスの絶対濃度を決定することができる。例えば、処理装置は、サーミスタ225および220からの温度表示を、特定の温度および対象ガスの濃度における吸着材料210の温度に対する較正値のセットと比較して、対象ガスの濃度の絶対測定を決定することができる。
【0027】
ガスモニタ200の構成要素は、特定の構成で示されているが、他の実施形態では、構成要素は、異なる実施形態で異なって構成されてもよい。例えば、3つの層で示されているが、幾つかの実施形態では、サーミスタ220および225、吸着材料210、基準材料215、ならびに発熱体240および245は、異なって構成されてもよい。さらに、基準材料215に対する吸着材料210の位置は異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、サーミスタ220および225ならびに発熱体240および245は、吸着材料210および基準材料215の反対側にあってもよい。さらに、幾つかの実施形態では、サーミスタ220および225、吸着材料210、基準材料215、ならびに発熱体240および245は同一平面上にあってもよい。例えば、発熱体240は、吸着材料210の一方の側にあってもよく、サーミスタ220は、印刷面における他方の側にあってもよい。幾つかの実施形態では、他の構成が使用されてもよく、例えば、ガスモニタ200の構成要素は、同心円状の構成、積み重ねられた構成、任意の数の層、またはガスモニタの構成要素がガスモニタ200を参照して説明されるように動作する他の構成で配置されてもよい。
【0028】
図3Aおよび図3Bは、吸着剤によるCOの吸着に対する、一例の炭素系吸着剤の特性の関係を示すグラフを示す。図3Aは、吸着剤によって吸着されたCOの量と、システムの吸着熱の変化との間の関係を示す。図3Aに示すように、吸着剤がより多くのCOを吸収するにつれて、吸着材料中の吸着熱が環境中のCOの気化潜熱に近づく。図3Bは、監視環境におけるCOの濃度と炭素吸着剤上のCOの量との間の関係を示す。グラフには、20℃における関係を示す第1の曲線と、30℃における関係を示す第2の曲線とが含まれている。グラフに示すように、より低い周囲温度(20℃の曲線)では、炭素吸着剤上のCOの量は、空気中の所定のCO濃度より高い。
【0029】
図4は、一実施形態による、CO濃度の変化に曝された場合の吸着材料および基準材料の温度差応答を示すグラフである。図5は、一実施形態による、CO濃度の変化に曝された場合の吸着材料および基準材料の温度差応答を示すグラフである。図5は、異なる時間スケールで、変化するCO濃度への応答を示す。図4図5の両方に見られるように、ガスモニタが曝される環境においてCO濃度が増加するにつれて、吸着材料と基準材料との間の温度差が対応して変化する。特に、COがガスモニタに曝されると、温度差が増大し、COが環境から除去されるにつれて、温度差が減少する。
【0030】
吸着剤温度は吸着熱の表示を提供するだけであるため、微分演算として作用し、絶対CO濃度を単独で定量化することはできない。この効果は、サーミスタ応答がCO濃度の導関数として現れる図4および5に見ることができる。COの絶対濃度を決定するために、ガスモニタは時間にわたってサーミスタの差分出力を積分することができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、温度差表示を積分して、時間にわたる総計の変化を決定することができる。温度差表示は、処理装置または積分回路を用いて積分されてもよい。幾つかの実施形態では、温度差表示は、修正された4線抵抗測定スキームを使用することと組み合わせて積分されてもよい。例えば、ホイートストンブリッジ構成を使用して、ノイズおよびドリフトの影響を低減して、積分信号を生成することができる。
【0032】
図6は、温度とガス濃度の関数としての吸着剤へのCOガスの吸着負荷を示すグラフである。このグラフは、様々な温度でのCO濃度の増加および減少に基づく温度変化を示す。図2に示されているように、ガスモニタは、吸着材料および基準材料の温度を変えて、吸着材料からのCOの吸着および放出を行うことができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、図6を参照して説明したように、対象ガスの既知の測定と吸着剤の温度変化とに基づいて、処理装置は、プローブ電流を加え、対象抵抗の両端に電圧を生成して、熱源を吸着材料および基準材料に加える。幾つかの実施形態では、別個の回路が高インピーダンス増幅器を用いて電圧を測定することができる。幾つかの実施形態では、プローブ電流は吸着された対象ガスを揮発させるために、吸着剤を同時に加熱することができる。例えば、処理装置は、吸着剤を交互に加熱および冷却し、絶対CO濃度測定を可能にする周期的な信号を生成するために、プローブ電流を変調することができる。COは比較的一定の蒸気圧および吸着熱を有するので、吸着剤温度の調節による絶対CO濃度定量化が可能である。吸着剤温度の調節は、対応して、吸着剤および対象ガスに関連するLangmuir等温曲線をシフトさせる。これは、吸着剤に対象ガスを選択的に吸着または放出させる可能性がある。従って、吸着材料は、図6のx軸に沿って移動することができる。COの濃度は、図6のどの曲線がサンプリングされるかを決定する。吸着/脱着から得られる吸着剤の結果的な熱応答は、サーミスタ回路を介して測定することができる。
【0034】
図7は、一実施形態による、温度差の読み取り値からの対象ガスの濃度を決定する方法700を示す流れ図である。幾つかの実施形態では、方法700は、図1を参照して説明したガスモニタ100によって実行することができる。例えば、図1の処理装置130は、方法700に関して説明した処理を実行することができる。
【0035】
ブロック710で始まり、ガスモニタは、環境内の対象ガスに曝された吸着材料の温度の表示を受け取ることができる。例えば、吸着材料の温度の表示は、吸着材料に結合されたサーミスタにプローブ電流を供給することによって生成することができる。サーミスタの両端で測定された電圧は、吸着材料の温度の表示を提供することができる。
【0036】
ブロック720において、ガスモニタは、基準材料の温度の表示を受け取ることができる。例えば、基準材料の温度の表示は、基準材料に結合されたサーミスタにプローブ電流を供給することによって生成することができる。サーミスタの両端で測定された電圧は、基準材料の温度の表示を提供することができる。基準材料は、吸着材料のものと同様の物理的および熱的特性を有し得る。例えば、基準材料は、環境中の変化した温度に応答して同様の方法で温度を変化させることができる。しかし、基準材料は、監視環境に存在する可能性のある対象ガスまたは他のガスに応答しないように選択されてもよい。幾つかの実施形態では、基準材料は吸着材料と同じであってもよいが、環境との化学的相互作用を防止するためのカプセル化層を有してもよい。従って、層は、熱的に透過であるが対象ガスへの応答を防止するのに十分薄くてもよい。
【0037】
ブロック730に移り、ガスモニタは、吸着材料と基準材料との間の差分を決定することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタは、サーミスタから受け取った温度の表示を、対応する温度値に変換することができる。幾つかの実施形態では、差分は、サーミスタから受け取った電圧間の差であってもよく、対応する温度に変換されない場合がある。幾つかの実施形態では、吸着材料と基準材料との間の差分を表す信号を生成するためのフィルタ回路を設けることによって、差分を決定することができる。
【0038】
ブロック740において、ガスモニタは、温度差に基づいて対象ガスの濃度の変化を決定することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタは、温度読み取り値間の差の量に基づいて、濃度の変化量を決定することができる。ガスモニタはまた、温度差の時間の長さを判定して、濃度の絶対的な変化を決定してもよい。例えば、ガスモニタは、差分を積分して、ある時間にわたる濃度の絶対的な変化を決定することができる。
【0039】
図8は、一実施形態による、温度差読み取り値からの対象ガスの濃度を決定する方法800を示す流れ図である。幾つかの実施形態では、方法800は、図2を参照して説明したガスモニタ200によって実行することができる。例えば、図2の処理装置230は、方法800に関して説明したプロセスを実行することができる。
【0040】
ブロック810で始まり、ガスモニタは、吸着材料に動作可能に結合された発熱体を周期的に駆動することができる。幾つかの実施形態では、発熱体は、処理装置によって供給される電流によって駆動される抵抗発熱体であってもよい。発熱体は、正弦波、方形波、または別の波形で駆動されてもよい。幾つかの実施形態では、発熱体は、温度を上昇および下降させるために駆動電流でパルス出力されてもよい。幾つかの実施形態では、発熱体を駆動する期間は、約0.1Hz~約100Hzのスケールであってもよい。幾つかの実施形態では、他の駆動信号が発熱体に供給されてもよい。幾つかの実施形態では、発熱体はまた、基準材料に結合してもよく、またはガスモニタはまた、基準材料に関連する発熱体を周期的に駆動してもよい。
【0041】
ブロック820において、ガスモニタは、吸着材料と基準材料との間の温度差の表示を周期的にサンプリングすることができる。幾つかの実施形態では、吸着材料と基準材料との温度差の表示は、吸着材料および基準材料に結合されたサーミスタによって提供され得る。幾つかの実施形態では、温度差は、発熱体が駆動されるよりも高い速度でサンプリングされて、駆動サイクルの異なるポイントでの温度変化に関するデータを提供してもよい。
【0042】
ブロック830において、ガスモニタは、温度差の周期的なサンプリングに基づいて、吸着材料の対象ガスの等温曲線を特定することができる。例えば、図6を参照して説明したように、複数の等温曲線は、吸着材料上のCO量が、監視環境における異なるCO濃度での材料の温度にどのように関係するかを示す。基準材料は、発熱体に応答してその温度の関係を変化させないであろう。従って、発熱体を駆動し、吸着材料と基準材料との間の温度変化を測定することによって吸着材料の温度を変化させることによって、ガスモニタは、監視環境におけるCOの絶対濃度を決定することができる。例えば、ガスモニタは、ルックアップテーブルまたはデータアレイを使用して、温度差から等温曲線を決定することができる。他の吸着剤を使用して監視される他の対象ガスは、同様の等温曲線を有し、ガスモニタによって同様のモニタで使用され得る。
【0043】
ブロック840において、ガスモニタは、等温曲線から監視環境における対象ガスの絶対濃度を決定する。例えば、吸着材料の温度を基準材料の温度と比較することによって等温曲線が判定された後、ガスモニタは、曲線から対象ガスの対応する絶対濃度を決定することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタは次いで、別のシステムに濃度を提供し、特定の条件が満たされた場合にアラートまたはアラームを提供し、または監視環境における対象ガスの濃度を追跡するためにデータを使用してもよい。
【0044】
図9は、一実施形態による、ガスモニタを製造する方法900を示す流れ図である。例えば、図9に示す方法900を使用して、図1および2を参照して説明したガスモニタ100、200を製造することができる。ブロック910で始まり、第1のサーミスタおよび第2のサーミスタが基板に動作可能に結合される。幾つかの実施形態では、第1および第2のサーミスタは、サーミスタ用に準備された基板内のキャビティなどの位置に結合されてもよい。例えば、サーミスタ用の受容領域を提供するために、基板がエッチングされていてもよい。幾つかの実施形態では、サーミスタは、印刷プロセスによって基板上に形成されてもよく、基板にはんだ付けされてもよく、そうでなければ基板に結合されてもよい。
【0045】
ブロック920において、吸着材料が、第1のサーミスタに結合された基板上に堆積される。幾つかの実施形態では、吸着材料は、バインダおよび溶媒と組み合わせられ、第1のサーミスタに動作可能に結合されるように印刷されてもよい。従って、第1のサーミスタは、吸着材料の温度の正確な表示を提供することができる。幾つかの実施形態では、吸着材料は、印刷された構造ではなく、粉末または他の構造から形成されてもよい。
【0046】
ブロック930において、基準材料が、第2のサーミスタに結合された基板上に堆積される。幾つかの実施形態では、基準材料は、それが対象ガスを吸着しないように選択されてもよい。基準材料は、バインダおよび溶媒と組み合わせて、第2のサーミスタに動作可能に結合されるように印刷されてもよい。従って、第2のサーミスタは、基準材料の温度の正確な表示を提供することができる。幾つかの実施形態では、基準材料および吸着材料は、同じまたは類似のバインダおよび溶媒を用いて印刷され、環境における周囲温度または発熱体に起因する温度変化の一貫性を改善する。幾つかの実施形態では、基準材料は、印刷された構造ではなく、粉末または他の構造から形成されてもよい。
【0047】
ブロック940において、サーミスタを処理装置に結合することができる。例えば、処理装置は、図1に関して説明した処理装置130および230のうちの1つであってもよい。幾つかの実施形態では、サーミスタは、基板の表面上のトレースを使用して処理装置に結合されてもよい。幾つかの実施形態では、処理装置は、基板から分離された1つまたは複数のリードを使用してサーミスタに結合されてもよい。次いで、処理装置は、サーミスタからの信号を駆動し受信して、監視環境における対象ガスの濃度を決定することができる。
【0048】
図10は、ガス監視システム1000の例示的な実施形態を示す図である。幾つかの実施形態では、ガス監視システム1000は、制御システム1040、換気システム1050、ならびに幾つかのガスモニタ1010、1020および1030を含む。例えば、ガスモニタ1010、1020および1030は、図1および図2を参照して説明したものと同様であってもよい。幾つかの実施形態では、図10に示されているものより少ないまたは追加のガスモニタ1010、1020および1030が存在し得る。ガスモニタ1010、1020および1030はそれぞれ、1つまたは複数のガスの濃度を測定することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタ1010、1020および1030は1つまたは複数の同じガスを監視する。例えば、ガスモニタ1010、1020および1030のそれぞれは、施設内の異なる位置でCOを監視することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタ1010、1020および1030は、異なるガスの濃度を測定することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、ガスモニタ1010、1020および1030は、ネットワーク1060を介して制御システム1040と通信することができる。例えば、ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、イントラネット、エクストラネット、インターネット、または別のネットワークのうちの1つを含む有線または無線ネットワークであってもよい。制御システム1040は、ガスセンサから吸着剤および基準材料の温度の表示を受信し、これらの表示に基づいて、各ガスモニタ1010、1020および1030に対する対象ガスの濃度を決定することができる。幾つかの実施形態では、ガスモニタ1010、1020および1030は、ガスモニタ1010、1020および1030でのガス濃度の表示または測定を送信する。さらに、ガスモニタ1010、1020および1030は、ガスモニタ1010、1020および1030でのガスの濃度に関する1つまたは複数の閾値に基づいて、アラートまたはアラームを送信することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、制御システム1040は、ガスモニタ1010、1020および1030から受信したデータを記録することができる。制御システム1040はまた、ガスモニタ1010、1020および1030から受信したデータに基づいて取る1つまたは複数の動作を決定してもよい。例えば、ガスモニタ1010、1020および1030のうちの1つまたは複数が閾値レベルを上回るか下回るガス濃度を示すデータを提供する場合、制御システム1040は、変化に応答するために1つまたは複数の他のシステムを起動することができる。一例として、制御システム1040が、ガスモニタ1010、1020および1030のうちの1つまたは複数によって示されるCOの濃度が閾値レベルに近づいているかそれより上であると決定した場合、制御システム1040は、換気システム1050に換気レベルを上げるコマンドを提供してもよい。幾つかの実施形態では、制御システム1040は、追加のガス濃度に対処するために追加のシステムに結合されてもよい。例えば、特定のガス濃度が検出された場合、制御システム1040は、システムを起動して、1つまたは複数の部屋を汚染除去し、1つまたは複数の部屋を監視し、そうでなければ施設におけるガス濃度による潜在的な悪影響に対処することができる。
【0051】
施設のガス監視に関して説明したが、幾つかの実施形態では、ガス監視システム1000を他の環境に配置することもできる。例えば、ガス監視システム1000は、車内に配備して室内の空気品質を管理してもよく、野外の会場に配備されてもよく、あるいは1つまたは複数の対象ガスの濃度レベルを監視し、記録し、または応答するために他の応用において配備されてもよい。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10